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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178604
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】シミュレーション調整方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/00 20060101AFI20241218BHJP
   G06Q 99/00 20060101ALI20241218BHJP
   G06F 30/28 20200101ALN20241218BHJP
   G06F 113/08 20200101ALN20241218BHJP
【FI】
H05B3/00 330Z
G06Q99/00
G06F30/28
G06F113:08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096868
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100091524
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 充夫
(72)【発明者】
【氏名】溜池 啓輝
【テーマコード(参考)】
3K058
5B146
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
3K058AA41
3K058CA51
5B146DJ03
5L049DD02
5L050DD02
(57)【要約】
【課題】同一の解析モデルで表される複数の熱処理装置間の機差を考慮したシミュレーション調整を実施し、各熱処理装置のシミュレーションモデルを、量産を停止することなく、短時間で構築するシミュレーション調整装置及び方法を提供する。
【解決手段】
シミュレーション調整方法は、センサ部201より熱処理装置立ち上がり温度計測値を取得し(S1)、過去取得立ち上がり温度計測値に新計測値を加えて、各熱処理装置10の第1の統計量を算出し(S2)、前記各熱処理装置の第1の統計量に基づいて調整要否判定を実施し(S3)、調整要の全熱処理装置10の立ち上がり温度計測値の第2の統計量を算出し(S4)、算出した第2の統計量と立ち上がり温度計測値とに基づいてデータ同化によるシミュレーションモデルの調整を実施し(S6)、調整後シミュレーションモデルを出力する(S7)。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の解析モデルで表される複数の熱処理装置間の機差を考慮したシミュレーション調整方法であって、
シミュレーションモデルを取得し、
前記複数の熱処理装置それぞれにおいて、それぞれの温度センサより、当該熱処理装置の温度上昇開始から定常状態に至るまでの立ち上がり温度計測値をそれぞれ取得し、
前記複数の熱処理装置それぞれにおいて、当該熱処理装置の立ち上がり温度計測値、及び、過去に取得した当該熱処理装置の立ち上がり温度計測値である過去データに基づいて、当該熱処理装置の第1の統計量をデータ処理部で算出し、
前記第1の統計量及び前記シミュレーションモデルの調整実施の要否を決定する閾値に基づき、前記シミュレーションモデルの調整実施の要否を前記データ処理部で判定し、
前記複数の熱処理装置の内の少なくとも1つの熱処理装置の立ち上がり温度計測値に基づいて、第2の統計量を前記データ処理部で算出し、
前記第2の統計量と、前記シミュレーションモデルの調整実施要の前記熱処理装置の立ち上がり温度計測値とに基づいて、データ同化により前記シミュレーションモデルの調整をデータ同化部で実施し、
調整を実施した前記シミュレーションモデルを記憶装置に出力する、シミュレーション調整方法。
【請求項2】
前記第1の統計量は、
前記複数の熱処理装置それぞれの前記立ち上がり温度計測値及び前記過去データを前記データ処理部で加算し、データ数で前記データ処理部で除算することにより前記データ処理部で算出した第1の平均波形と、
前記複数の熱処理装置それぞれの前記立ち上がり温度計測値及び前記過去データと前記平均波形との間のユークリッド距離と、
前記複数の熱処理装置それぞれの前記ユークリッド距離を前記データ処理部で全て加算し、データ数で除算することにより前記データ処理部で算出したユークリッド距離平均と
である、請求項1に記載のシミュレーション調整方法。
【請求項3】
前記シミュレーションモデルの調整実施の可否の判定に用いる前記閾値として用いる値は、前記第1の統計量で算出したユークリッド距離平均である、請求項2に記載のシミュレーション調整方法。
【請求項4】
前記第2の統計量は、
前記複数の熱処理装置から取得された前記立ち上がり温度計測値を前記データ処理部で加算し、前記熱処理装置の台数で前記データ処理部で除算することにより前記データ処理部で算出した第2の平均波形と、
前記複数の熱処理装置から取得された前記立ち上がり温度計測値と前記第2の平均波形との間のユークリッド距離をそれぞれ前記データ処理部で算出し、算出した値の二乗和を、前記データ処理部で前記熱処理装置の台数で除算することにより前記データ処理部で算出した前記立ち上がり温度計測値の分散と、
である、請求項1に記載のシミュレーション調整方法。
【請求項5】
前記データ同化により、前記シミュレーションモデルの調整の際、データ同化開始時の初期アンサンブルは、前記立ち上がり温度計測値の分散で決定される正規分布に従って生成される乱数によって前記データ処理部で算出される、請求項4に記載のシミュレーション調整方法。
【請求項6】
前記シミュレーションモデルの調整において、前記複数の熱処理装置から取得された前記立ち上がり温度計測値を用いた逐次型データ同化によって、シミュレーションモデルの調整をする、請求項1または請求項5に記載のシミュレーション調整方法。
【請求項7】
同一の解析モデルで表される複数の熱処理装置間の機差を考慮したシミュレーション調整をするシミュレーション調整装置であって、
前記熱処理装置内の状態推定を実施するためのシミュレーションで用いるシミュレーションモデルを取得しし、前記複数の熱処理装置それぞれにおいて、それぞれの温度センサより、当該熱処理装置の温度上昇開始から定常状態に至るまでに取得した当該熱処理装置の立ち上がり温度計測値、及び、過去に取得した当該熱処理装置の立ち上がり温度計測値である過去データに基づいて、当該熱処理装置の第1の統計量を算出し、前記第1の統計量及び前記シミュレーションモデルの調整実施の要否を決定する閾値に基づき、前記シミュレーションモデルの調整実施の要否を判定し、前記複数の熱処理装置の内の少なくとも1つの熱処理装置の立ち上がり温度計測値に基づいて、第2の統計量を算出するデータ処理部と、
前記第2の統計量と、前記シミュレーションモデルの調整実施要の前記熱処理装置の立ち上がり温度計測値とに基づいて、データ同化により前記シミュレーションモデルの調整を実施するデータ同化部と、
調整を実施した前記シミュレーションモデルを記憶装置に出力する出力部とを備えるシミュレーション調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シミュレーション調整方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ものづくり現場における熱プロセスにおいて、プロセスを把握するために、熱流体シミュレーションを利用して熱分布と流速分布を事前に把握する取り組みが行われている。熱流体シミュレーションは、流体の運動を表すナビエ・ストークス方程式又は熱の変化を表す熱移流方程式に基づいたシミュレーションである。
【0003】
熱流体シミュレーションは、直接の測定による現象の把握が困難である熱プロセスにおいて、現象の把握に有力な手段である。高温熱処理装置の温度分布並びに流速分布を量産開始前にできる限り正確に把握することで、最適な生産が実施でき、製品の高品質化又は工場の省エネルギー化に寄与することが可能となる。また、実機試験の回数低減効果も期待でき、結果としてコストの削減にも繋がる。以上のような、直接の測定が困難な現象を正確に把握するための技術として、特許文献1がある。
【0004】
例えば特許文献1は、内燃機関の最適点火時期推定のために内燃機関を模擬した数値シミュレーションが用いられており、直接の測定が困難な現象の把握を数値シミュレーションにより実施している典型的な例である。電子制御式内燃機関のECUにおいて、点火時期制御のためにあらかじめ想定される運転条件について、トルクの最大となる点火時期をあらかじめ想定し、メモリに格納しておく必要がある。格納した点火時期マップを参照して、混合気の点火を制御することを実施する。これらの点火時期マップは、内燃機関の開発段階において予め実機を用いた適合試験を基に作成される。こういった点火時期マップは、内燃機関を模擬した数値シミュレーション装置により作成される。このように数値シミュレーション装置を用いることによって、実機による適合工程を大幅に省略することができる。
【0005】
また、特許文献2では、シミュレーションを用いた熱処理中の処理容器内の温度分布の均一性を向上する技術が提供されている。特許文献2では、処理容器内に設置された温度センサより取得されたデータを用いて、シミュレーションモデルを、熱処理装置ごとの機差を考慮したシミュレーションモデルに修正し、そのシミュレーションモデルを用いて加工設定を補正する。これにより、熱処理装置内を均一な温度分布で保つことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4376799号
【特許文献2】特開2022-168572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1のような数値シミュレーションを用いることで、熱プロセスにおける熱処理装置内状態の把握をすることができるが、シミュレーションモデルの調整にかなりの手間と時間がかかる。そのため、シミュレーションモデルの調整が多数回必要な場合において、シミュレーションによる予測を実施することが困難となる。具体的には、熱処理装置が多数存在する量産現場がある。熱処理装置は、内部構造が同様の場合でも、ヒータ及び断熱材といった機構要素の劣化、及び、組み立て精度に起因した機差が存在するため、各熱処理装置に対応したシミュレーションモデルの調整が必要となる。
【0008】
前記特許文献2の構成を用いることで、機差を有する各熱処理装置に対応するシミュレーションモデルを作成することができる。しかしながら、特許文献2の構成において、シミュレーションモデルの調整の際に用いる温度計測値は、後付けのセンサより取得される。そのため、量産を一時停止する必要がある。また、シミュレーションモデルの調整は、温度計測値を参考に、人の勘及びコツに基づいて実施され、調整を実施するタイミングも人の勘及びコツに基づいている。また、熱処理装置が複数あるような場合、それぞれの熱処理装置から温度計測値を取得し、各熱処理装置に適するようシミュレーションモデルの調整が必要となり、非常に時間が掛かる。前述した理由により、従来構成を用いたシミュレーションモデル調整方法は量産現場に適さない。
【0009】
本開示は、熱処理装置に設置したセンサより取得した立ち上がり温度計測値から、同一の解析モデルで表される複数の熱処理装置間の機差を考慮したシミュレーション調整を実施し、各熱処理装置のシミュレーションモデルを、量産を停止することなく、短時間で構築するシミュレーション調整方法及び装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様に係るシミュレーション調整方法は、同一の解析モデルで表される複数の熱処理装置間の機差を考慮したシミュレーション調整方法であって、
シミュレーションモデルを取得し、
前記複数の熱処理装置それぞれにおいて、それぞれの温度センサより、当該熱処理装置の温度上昇開始から定常状態に至るまでの立ち上がり温度計測値をそれぞれ取得し、
前記複数の熱処理装置それぞれにおいて、当該熱処理装置の立ち上がり温度計測値、及び、過去に取得した当該熱処理装置の立ち上がり温度計測値である過去データに基づいて、当該熱処理装置の第1の統計量をデータ処理部で算出し、
前記第1の統計量及び前記シミュレーションモデルの調整実施の要否を決定する閾値に基づき、前記シミュレーションモデルの調整実施の要否を前記データ処理部で判定し、
前記複数の熱処理装置の内の少なくとも1つの熱処理装置の立ち上がり温度計測値に基づいて、第2の統計量を前記データ処理部で算出し、
前記第2の統計量と、前記シミュレーションモデルの調整実施要の前記熱処理装置の立ち上がり温度計測値とに基づいて、データ同化により前記シミュレーションモデルの調整をデータ同化部で実施し、
調整を実施した前記シミュレーションモデルを記憶装置に出力する。
【0011】
本開示の別の態様に係るシミュレーション調整装置は、同一の解析モデルで表される複数の熱処理装置間の機差を考慮したシミュレーション調整をするシミュレーション調整装置であって、
前記熱処理装置内の状態推定を実施するためのシミュレーションで用いるシミュレーションモデルを取得しし、前記複数の熱処理装置それぞれにおいて、それぞれの温度センサより、当該熱処理装置の温度上昇開始から定常状態に至るまでに取得した当該熱処理装置の立ち上がり温度計測値、及び、過去に取得した当該熱処理装置の立ち上がり温度計測値である過去データに基づいて、当該熱処理装置の第1の統計量を算出し、前記第1の統計量及び前記シミュレーションモデルの調整実施の要否を決定する閾値に基づき、前記シミュレーションモデルの調整実施の要否を判定し、前記複数の熱処理装置の内の少なくとも1つの熱処理装置の立ち上がり温度計測値に基づいて、第2の統計量を算出するデータ処理部と、
前記第2の統計量と、前記シミュレーションモデルの調整実施要の前記熱処理装置の立ち上がり温度計測値とに基づいて、データ同化により前記シミュレーションモデルの調整を実施するデータ同化部と、
調整を実施した前記シミュレーションモデルを記憶装置に出力する出力部とを備える。
【発明の効果】
【0012】
本開示の前記態様にかかるシミュレーション調整方法及び装置によれば、温度変化時に前記複数の熱処理装置において機差が大きくなりやすい各熱処理装置の立ち上がり温度計測値に着目し、熱処理装置それぞれの過去からの時系列的な立ち上がり温度計測値に基づく第1の統計量を利用してシミュレーションモデルの調整実施の要否を判定し、複数の熱処理装置の立ち上がり温度計測値に基づく第2の統計量を利用してデータ同化により前記シミュレーションモデルの調整を実施することができる。この結果、各熱処理装置より取得した立ち上がり温度計測値より、同一の解析モデルで表される複数の熱処理装置間の機差を考慮したシミュレーションモデルの調整を、量産を停止せず、短時間で構築できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の実施の形態に係るシミュレーション調整装置及びセンサ部の構成例を示すブロック図
図2】センサ部の温度センサが取り付けられる熱処理装置を示す模式的な概略図
図3】シミュレーション調整方法の手順を例示するフローチャートである。
図4】温度センサから取得した立ち上がり温度計測値の一例を示す模式的なグラフ
図5】各熱処理装置の立ち上がり温度計測値時系列データを示す模式的な概略図
図6】各熱処理装置の第1の統計量算出の際に用いる時系列データのデータセットの一例を示した図
図7図3に示した各熱処理装置の第1の統計量算出S3の処理フローを例示するフローチャート
図8図3に示した判定S4の処理フローを例示するフローチャートである。
図9】全熱処理装置の第2の統計量算出の際に用いる時系列データのデータセットの一例を示した図
図10図3に示した全熱処理装置の立ち上がり温度計測値の第2の統計量算出S5の処理フローを例示するフローチャート
図11】データ同化技術を説明する図
図12】逐次型データ同化の概念図
図13図3に示した逐次型データ同化によるシミュレーションモデルの調整実施S7の処理フローを例示するフローチャート
図14】調整するシミュレーションモデルの設定を温度とした際の、調整の過程を表した図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
<シミュレーション調整装置100及びセンサ部200の構成例>
図1は、本開示の実施形態に係るシミュレーション調整方法を実施可能なシミュレーション調整装置100及びセンサ部200の構成例を示すブロック図である。
【0016】
シミュレーション調整装置100は、記憶装置110と、制御部120と、出力部の一例としての入出力部130とを備えて、同一の解析モデルで表される複数の熱処理装置10間の機差を考慮したシミュレーション調整方法を実施するものである。
【0017】
センサ部200は、温度センサ201を備える。
【0018】
入出力部130は、一例として、ディスプレイ、キーボード、マウス等のユーザーインターフェース機器が接続されており、これを介してデータのやり取りが可能である。
【0019】
記憶装置110は、プログラム111、シミュレーションモデルデータ112、モデルパラメータデータ113、時系列データ114、及び統計量データ115が記憶される。記憶装置110は、例えば、フラッシュメモリ、ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)等の半導体記憶装置、ハードディスクドライブ(HDD)等の磁気記憶装置、その他の記録媒体単独で又はそれらを組み合わせて実現される。記憶装置110は、SRAM、又はDRAM等の揮発性メモリを含んでも良い。
【0020】
制御部120は、データ処理部121、シミュレーション部122、及びデータ同化部123を備える。制御部120は、CPUを含んで構成され、情報処理を行って後述するシミュレーション調整装置100のシミュレーション調整機能を実現する。このような情報処理は、例えば、CPUが記憶装置110と、記憶装置110に格納されたプログラム111の指令に従って動作することにより実現される。CPUは、本開示のプロセッサの一例である。プロセッサは情報処理のための演算を行う演算回路を含めばよく、CPUに限定されない。例えばプロセッサは、MPU、FPGA等の回路で構成されてもよい。
【0021】
より具体的には、制御部120のうちのデータ処理部121は、後述するように各種演算処理を行って、シミュレーションモデル取得、第1の統計量算出、シミュレーションモデルの調整実施の要否判定、第2の統計量算出などを行う。
【0022】
シミュレーション部122は、シミュレーションモデルに基づいて熱処理装置内の状態推定を実施する。
【0023】
データ同化部123は、第2の統計量と、シミュレーションモデルの調整実施要の熱処理装置の立ち上がり温度計測値とに基づいて、データ同化によりシミュレーションモデルの調整を実施する。
【0024】
センサ部200の温度センサ201は、下記するように、各熱処理装置10に設置されて、温度計測可能とし、計測結果はシミュレーション調整装置100に入力される。
【0025】
<熱処理装置10の概略>
図2は、センサ部200の温度センサ201が設置される各熱処理装置10を示す概略図である。各熱処理装置10は、内部に加熱用ヒータ11が設置されており、この加熱用ヒータ11を用いて各熱処理装置10の内部を高温環境にすることで熱処理を実施する。各熱処理装置10には、温度センサ201が設置される。温度センサ201は、例えば熱電対であり、各熱処理装置10内部の温度を取得する。温度センサ201は最低1個以上設置されている必要があり、複数個設置されている場合においても、本実施の形態と同様の方法でシミュレーションの調整を実施することができる。なお、本明細書においては、温度センサ201は各熱処理装置10に1個設置されている場合のみについて説明する。また、本実施の形態においては、熱処理装置10は複数台数、N台(Nは2以上の整数。)存在することを想定している。複数台ある熱処理装置10は、加熱用ヒータ11又は断熱材といった機構要素の個体差又は劣化、また組み立て精度の差異に起因して、加工設定が同一の場合でも内部状態にばらつきが生じる。以降、このばらつきを複数の熱処理装置10間の機差と定義する。本実施の形態においては、機差を考慮し、複数の熱処理装置10それぞれの状態に対応したシミュレーション調整を実施する。
【0026】
<シミュレーションの調整方法の手順の例>
図3は、本実施の形態に係るシミュレーションの調整方法の手順を例示するフローチャートであり、同一の解析モデルで表される複数の熱処理装置10間の機差を考慮したシミュレーション調整方法である。S1からS8はシミュレーション調整装置100で実施される処理の各ステップを表す。また、ここでは、各ステップにおける図1の構成との関連についても説明する。
【0027】
まず、シミュレーション調整装置100のデータ処理部121は、シミュレーションモデルを生成する(ステップS1)。シミュレーションモデルが既に生成されている場合には、その生成済のシミュレーションモデルをデータ処理部121で取得する。シミュレーションモデルは全ての熱処理装置10を模擬しており、それぞれの熱処理装置10の熱流体シミュレーションを実施するために必要なものである。生成したシミュレーションモデルは、記憶装置110のシミュレーションモデルデータ112に記憶される。
【0028】
ステップS1に続いて、各熱処理装置10のセンサ部200の温度センサ201より、各熱処理装置10の立ち上がり温度計測値を取得する(ステップS2)。取得した各熱処理装置10の立ち上がり温度計測値は、時系列データ114に記憶される。本実施の形態において、全ての熱処理装置10は、並列に動作することを想定している。そのため、1回の熱処理でN台分のデータが取得される。
【0029】
ステップS2に続いて、各熱処理装置10の時系列データに対する各熱処理装置10の後述する第1の統計量をデータ処理部121で算出する(ステップS3)。より具体的には、熱処理装置それぞれにおいて、当該熱処理装置の立ち上がり温度計測値、及び、過去に取得した当該熱処理装置の立ち上がり温度計測値である過去データに基づいて、当該熱処理装置の第1の統計量をデータ処理部121で算出する。
【0030】
ステップS3に続いて、各熱処理装置10に対して、シミュレーションモデルの調整を実施するかどうかの判定をデータ処理部121で行う(ステップS4)。ステップS4で実施される判定処理に基づいて、複数ある熱処理装置10の内、シミュレーションモデルの調整をする熱処理装置はどれかをデータ処理部121で判定する。より具体的には、第1の統計量及び後述するシミュレーションモデルの調整実施の要否を決定する閾値に基づき、シミュレーションモデルの調整実施の要否をデータ処理部121で判定する。シミュレーションモデルの調整をしないと判定された熱処理装置10は、後述するステップにおいて処理を実行しない。シミュレーションモデルの調整をすると判定された熱処理装置10は、後述するステップにおいて処理を実行する。
【0031】
ステップS4に続いて、シミュレーションモデルの調整をすると判定された熱処理装置10について、ステップS2で取得した全ての熱処理装置10の立ち上がり温度計測値を時系列データ114より取得し、後述する第2の統計量をデータ処理部121で算出する(ステップS5)。第2の統計量のデータ処理部121での算出は、ステップS2で取得した全ての熱処理装置10の立ち上がり温度計測値を時系列データ114より取得して行うものに限らず、ステップS2で取得した全ての熱処理装置10のうちの少なくとも1つの熱処理装置10の立ち上がり温度計測値を時系列データ114より取得して行うようにしてもよい。
【0032】
ステップS5に続いて、初期アンサンブルの算出をデータ処理部121で行う(ステップS6)。初期アンサンブルは、後述するステップS7において、逐次型データ同化を用いたシミュレーションを実施する際に必要となる初期設定である。本実施の形態においては、初期アンサンブルの算出は、ステップS5で算出した第2の統計量の全熱処理装置10の立ち上がり温度計測値の分散に基づいてデータ処理部121で実施される。具体的には、初期アンサンブルは、平均を室温とし、分散をステップS5で算出した値とした正規分布に基づく乱数としてデータ処理部121で算出される。正規分布に基づく乱数を生成させる手法として、本実施の形態ではボックス・ミュラー法を用いるが、その他の乱数生成手法を用いて初期アンサンブルの算出をしてもよい。また、平均を室温としたが、室温は時系列データ114に記憶した各熱処理装置10の時系列データの立ち上がり前の温度を用いても良い。本実施の形態においては、生成する初期アンサンブル数は10とするが、計算リソースによって増減させても良い。算出した初期アンサンブルはモデルパラメータデータ113に記憶される。
【0033】
ステップS6に続いて、第2の統計量に基づく初期アンサンブルを使用し、シミュレーションモデルの調整実施要の熱処理装置10の立ち上がり温度計測値に基づいて、逐次型データ同化によるシミュレーションモデルの調整をデータ処理部121で実施する(ステップS7)。本実施の形態においては、逐次型データ同化であるアンサンブルカルマンフィルタを用いるが、その他の逐次型データ同化手法を用いてもよい。
【0034】
ステップS7に続いて、調整後、シミュレーションモデルを記憶装置110に出力する(ステップS8)。調整後シミュレーションモデルは、各熱処理装置10より取得した立ち上がり温度計測値に基づいて調整が実施されているため、それぞれの熱処理装置間の機差を考慮したシミュレーションモデルとなっている。
【0035】
以上、図3のフローチャートの各ステップを実施することによって、複数の熱処理装置10間の機差を考慮したシミュレーションモデルの調整を実施することができる。
【0036】
<ステップS2の立ち上がり温度計測値の例>
図4は、ステップS2で取得する熱処理装置10の立ち上がり温度計測値の例を示したグラフである。熱処理装置10は、熱処理の開始後、熱処理装置10内の温度が上昇を開始し、その後に定常状態へと至る。立ち上がり温度計測値は、温度が上昇し始めた点(すなわち、熱処理装置の温度上昇開始)から定常状態へと至った点までの期間の計測値である。取得した立ち上がり温度計測値は、記憶装置110の時系列データ114に記憶される。
【0037】
<時系列データ114の立ち上がり温度計測値の一例>
図5は、記憶装置110の時系列データ114に記憶された立ち上がり温度計測値の一例である。時系列データ114には、複数の熱処理装置10に備えられた温度センサ201より取得した立ち上がり温度計測値が過去から現在に至るまでの時系列データとして記憶されている。
【0038】
<ステップS3において第1の統計量をデータ処理部121で算出する際に用いるデータセットの例>
図6は、熱処理装置10の時系列データに対する各熱処理装置の第1の統計量をデータ処理部121で算出するステップS3において、各熱処理装置10の時系列データに対する当該熱処理装置の第1の統計量を算出する際に用いるデータセットの例である。破線で囲まれたデータセットが1号機の立ち上がり温度計測値の時系列データになる。ステップS3では、この例に示したようなデータセットに対しての第1の統計量算出を熱処理装置10の台数分、データ処理部121で実施する。
【0039】
<ステップS3の処理フローの例>
図7は、ステップS3の処理フローを例示するフローチャートである。
【0040】
ステップS31において、時系列データ114に記憶された各熱処理装置10の立ち上がり温度計測値を取得する。
【0041】
続いて、ステップS32において、各熱処理装置10の立ち上がり温度計測値の平均波形をデータ処理部121で算出する。各熱処理装置10の立ち上がり温度計測値の平均波形とは、各熱処理装置10の平均的な温度の立ち上がりを表した波形であり、時系列データ114に記憶された時系列データよりデータ処理部121で算出する。図5の1号機の熱処理装置10を例にした場合、1号機の熱処理装置10の立ち上がり温度計測値はK回目までのK個の時系列データが存在するため、データ処理部121での温度計測値の平均波形算出のためには、K個の前記時系列データの温度値をデータ処理部121で加算し、加算した温度値をデータ数のKでデータ処理部121で除算することで、1号機の熱処理装置10の時系列データの、温度計測値の平均波形(すなわち、第1の平均波形)をデータ処理部121で算出できる。ここで、Kは2以上の整数である。
【0042】
続いて、ステップS33において、ステップS32で算出した平均波形と各時系列データのユークリッド距離をデータ処理部121で算出する。また、平均波形と各時系列データのユークリッド距離をデータ処理部121で全て加算し、データ処理部121で時系列データの個数Kで除算した値をユークリッド距離平均としてデータ処理部121で算出する。
【0043】
続いて、ステップS34において、ステップS32、及びステップS33で算出した第1の統計量をデータ処理部121から出力し、統計量データ115に記憶する。ここで、第1の統計量とは、各熱処理装置10の立ち上がり温度計測値の平均波形、ユークリッド距離、ユークリッド距離平均である。
【0044】
続いて、ステップS35において、各熱処理装置10の第1の統計量算出の終了判定をデータ処理部121で実施する。終了判定は熱処理装置10の台数Nに基づいてデータ処理部121で実施され、実行回数がN以下の場合、再度ステップS32に戻り、次の熱処理装置10の時系列データに対する第1の統計量をデータ処理部121で算出する。
【0045】
<ステップS4の判定フローの例>
図8は、ステップS4のデータ処理部121での判定フローを例示するフローチャートである。
【0046】
ステップS41において、ステップS3でデータ処理部121で算出した各熱処理装置10の第1の統計量、具体的には、各熱処理装置10の立ち上がり温度計測値の平均波形(すなわち、第1の平均波形)、前記温度計測値の平均波形と各時系列データとのユークリッド距離、及びユークリッド距離平均を取得する。より具体的には、第1の統計量は、複数の熱処理装置10それぞれの立ち上がり温度計測値及び過去データをデータ処理部121で加算し、データ数でデータ処理部121で除算することによりデータ処理部121で算出した第1の平均波形と、複数の熱処理装置10それぞれの立ち上がり温度計測値及び過去データと平均波形との間のユークリッド距離と、複数の熱処理装置10それぞれのユークリッド距離をデータ処理部121で全て加算し、データ処理部121でデータ数で除算することによりデータ処理部121で算出したユークリッド距離平均とである。
【0047】
続いて、ステップS42において、取得した各熱処理装置10の第1の統計量を用いて判定をデータ処理部121で実施する。本実施の形態においては、閾値を設定し、時系列データK回目の立ち上がり温度計測値と平均波形とのユークリッド距離と、閾値とをデータ処理部121で比較することにより判定をデータ処理部121で実施する。閾値は、ステップS34で算出した平均波形と各時系列データとのユークリッド距離の平均値を用いる。閾値として平均波形と各時系列データとのユークリッド距離の平均値を用いてデータ処理部121で判定することによって、K回目の立ち上がり温度計測値が時系列データの中で相対的に平均からどの程度誤差が大きいのかがデータ処理部121で判定され、誤差が大きい熱処理装置10のみ、以降のステップにおいてシミュレーションモデルの調整を実施する。
【0048】
続いて、ステップS43において、ステップS4の終了判定をデータ処理部121で実施する。終了判定は熱処理装置10の台数Nに基づいてデータ処理部121で実施され、実行回数がN以下の場合、再度ステップS41に戻り、次の熱処理装置10の調整を以降実施するかの判定をデータ処理部121で行う。
【0049】
以上、ステップS4の判定をデータ処理部121で実施することにより、シミュレーション調整が不要な熱処理装置10のシミュレーションモデルの調整を以降のステップで実施せず、シミュレーション調整の時間の高速化を図ることができる。また、シミュレーション調整実施の判定基準は、各熱処理装置10の時系列データの第1の統計量からデータ処理部121で算出される閾値より決定されるため、立ち上がり温度計測値を取得するだけで設定できる。
【0050】
<ステップS5において、データ処理部121での第2の統計量を算出する際に用いるデータセットの例>
図9は、ステップS5において、ステップS2で取得した熱処理装置10の立ち上がり温度計測値の第2の統計量をデータ処理部121で算出する際に用いるデータセットの例であり、時系列データ114に記憶された1号機からN号機のK回目の立ち上がり温度計測値を用いてデータ処理部121で算出する。
【0051】
<ステップS5の処理フローの例>
図10は、ステップS2で取得した熱処理装置10の立ち上がり温度計測値を時系列データ114よりデータ処理部121で取得し、その第2の統計量をデータ処理部121で算出するステップS5の処理フローを例示するフローチャートである。
【0052】
ステップS51において、全熱処理装置10の立ち上がり温度計測値の平均波形(すなわち、第2の平均波形)を第2の統計量としてデータ処理部121で算出する。全熱処理装置10の立ち上がり温度計測値の平均波形とは、全熱処理装置10の平均的な温度の立ち上がりを表した波形であり、時系列データ114に記憶された時系列データよりデータ処理部121で算出する。本実施の形態における、全熱処理装置10の立ち上がり温度計測値の平均波形は熱処理K回目のものである。熱処理K回目の場合、1号機からN号機までのN個の立ち上がり温度計測値が存在するため、データ処理部121でN個の立ち上がり温度値を加算し、データ処理部121で加算した温度値をNで除算することで、全熱処理装置10の立ち上がり温度計測値の平均波形をデータ処理部121で算出できる。
【0053】
続いて、ステップS52において、全熱処理装置10の立ち上がり温度計測値の分散をデータ処理部121で算出する。具体的には、ステップS51で算出した全熱処理装置10の立ち上がり温度計測値平均波形(すなわち、第2の平均波形)と各熱処理装置10の立ち上がり温度計測値との間のユークリッド距離をデータ処理部121で算出し、算出した値の二乗和をデータ処理部121で求め、データ処理部121で熱処理装置10の台数Nで除算した値を分散としてデータ処理部121で算出する。算出した分散は、統計量データ115に第2の統計量として記憶される。
【0054】
<データ同化の概念>
図11はデータ同化の概念図である。データ同化では、センサより取得した計測値と、数値シミュレーションより取得した予測値を用いて、現象の推測を行う手法である。データ同化では、計測値と予測値、それぞれが誤差を有していると仮定を置き、現象の推測を統計的に実施する。本実施の形態では、データ同化部123で逐次型データ同化を用いて、シミュレーションモデルの調整をする。
【0055】
<逐次型データ同化の概念>
図12は逐次型データ同化の概念図である。逐次型データ同化では、複数の異なる初期条件のシミュレーションを時間発展させ、計測値が得られた時刻において、各シミュレーションをデータ同化部123で適宜調整しつつ、複数シミュレーションより得た結果の平均値を予測値として扱う。データ同化部123による逐次型データ同化では、条件の異なる複数のシミュレーションを並行で実施するが、これらをアンサンブルと呼ぶ。また、複数の異なるシミュレーション初期条件を決定する必要があり、これを初期アンサンブルと呼ぶ。本実施の形態では、複数の熱処理装置10の立ち上がり温度計測値から初期アンサンブルをデータ同化部123で決定することにより、センサ部200より立ち上がり温度計測値を取得するだけで逐次型データ同化によるシミュレーション調整がデータ同化部123でできる。
【0056】
<ステップ7の処理フローの例>
図13は、データ同化部123での逐次型データ同化によるシミュレーションモデルの調整を実施するステップ7の処理フローを例示するフローチャートである。
【0057】
ステップS71において、ステップS6で算出した初期アンサンブルをデータ同化部123で取得する。
【0058】
続いて、ステップS72において、調整を実施する熱処理装置10のK回目の立ち上がり温度計測値をデータ同化部123で取得する。
【0059】
ステップS73においてアンサンブルカルマンフィルタを用いて、シミュレーションモデルの調整をデータ同化部123で行う。
【0060】
続いて、ステップS74で、ステップS4においてシミュレーションモデル調整が必要と判定した全ての熱処理装置10の調整が終了したかの判定をデータ同化部123で実施し、調整が必要な熱処理装置10のシミュレーションモデルがまだ存在する場合、ステップS72に戻り、再度調整をデータ同化部123で実施する。
【0061】
<シミュレーションモデルの調整>
図14は、データ同化部123での逐次型データ同化によって調整を実施するシミュレーションモデルの設定として加熱用ヒータ11の温度を用いた場合の、シミュレーションモデルの調整の様子を表した図である。グラフの実線はアンサンブル平均値をグラフで示したものである。ステップS6で算出した初期アンサンブルを初期設定として用いて、シミュレーション部122で、複数の熱流体シミュレーションを、立ち上がり温度計測値が取得された時刻まで、実施する。立ち上がり温度計測値が取得されたタイミングで、データ同化をデータ同化部123で実施し、各アンサンブルの修正を行う。修正されたアンサンブルを用いて再度温度計測値が得られた時刻まで複数の数値シミュレーションをシミュレーション部122で時間発展し、データ同化によるアンサンブルの修正をデータ同化部123で実施する。これを立ち上がり温度計測値が得られている最後の時刻まで繰り返し実施し、最終的な各アンサンブルが持つ温度の平均値を、調整後のシミュレーションモデルの設定値としてデータ同化部123で取得する。
【0062】
<実施の形態の効果等>
本実施の形態にかかるシミュレーション調整方法及び装置によれば、温度変化時に複数の熱処理装置10において機差が大きくなりやすい各熱処理装置10の立ち上がり温度計測値に着目し、熱処理装置10それぞれの過去からの時系列的な立ち上がり温度計測値に基づく第1の統計量を利用してシミュレーションモデルの調整実施の要否を判定し、複数の熱処理装置10の立ち上がり温度計測値に基づく第2の統計量を利用してデータ同化によりシミュレーションモデルの調整を実施することができる。この結果、各熱処理装置10より取得した立ち上がり温度計測値より、同一の解析モデルで表される複数の熱処理装置10間の機差を考慮したシミュレーションモデルの調整を、量産を停止せず、短時間で構築できる。
【0063】
なお、本実施の形態においては、アンサンブルとして温度を用いたが、風速など、別のシミュレーションモデル設定上の物理量をアンサンブルに加えても問題ない。この場合においても、同様に温度計測値を用いてシミュレーションモデルの調整を行うことができる。
【0064】
また、本実施の形態におけるシミュレーション調整装置100では、熱処理装置10に設置された温度センサ201より取得した立ち上がり温度計測値を用いてシミュレーションモデルの調整をデータ同化部123で実施するため、別途、シミュレーション調整のための実験をする必要が無い。そのため、量産を停止することなくシミュレーションの調整がデータ同化部123で実施できるため、量産現場において比較的簡単にシミュレーション環境を構築することができる。
【0065】
また、温度センサ201より取得した立ち上がり温度計測値を時系列データとして保持しておくことによって、第1と第2との統計量をデータ処理部121で算出し、それを用いて判定をデータ処理部121で行うことでデータ同化部123でのシミュレーション調整のタイミングを自動的に決定することができる。これにより、調整が不要なシミュレーションモデルに対しての調整が実施されないため、シミュレーション調整にかかる時間を短縮することができる。
【0066】
なお、前記様々な実施形態又は変形例のうちの任意の実施形態又は変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。また、実施形態同士の組み合わせ又は実施例同士の組み合わせ又は実施形態と実施例との組み合わせが可能であると共に、異なる実施形態又は実施例の中の特徴同士の組み合わせも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本開示の前記態様にかかるシミュレーション調整方法及び装置は、同一の解析モデルで表される複数の熱処理装置間の機差を考慮したシミュレーションモデルを、量産を停止することなく、短時間で構築することができて、例えばものづくり現場における熱プロセスにおいて、プロセスを把握するために有用である。
【符号の説明】
【0068】
10 熱処理装置
11 加熱用ヒータ
100 シミュレーション調整装置
110 記憶装置
111 プログラム
112 シミュレーションモデルデータ
113 モデルパラメータデータ
114 時系列データ
115 統計量データ
120 制御部
121 データ処理部
122 シミュレーション部
123 データ同化部
130 入出力部
200 センサ部
201 温度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14