(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178606
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】部材の取付構造及び車両用部品
(51)【国際特許分類】
B60R 13/04 20060101AFI20241218BHJP
F16B 21/06 20060101ALI20241218BHJP
F16B 5/10 20060101ALI20241218BHJP
F21V 21/00 20060101ALI20241218BHJP
F21S 41/19 20180101ALI20241218BHJP
【FI】
B60R13/04 Z
F16B21/06 Z
F16B5/10 A
F21V21/00 130
F21S41/19
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096874
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】小池 陽介
【テーマコード(参考)】
3D023
3J001
3J037
【Fターム(参考)】
3D023AB05
3D023AC11
3D023AD25
3D023AD35
3J001JE02
3J037AA02
3J037DA02
3J037DA12
3J037DB03
3J037DC01
(57)【要約】
【課題】工具を不要とし、着脱が容易な部材の取付構造を提供する。
【解決手段】一方の部材2に他方の部材3を着脱自在に取り付けるための部材の取付構造であって、一方の部材2の一面から突出した一対の突起部6a,6bと、他方の部材3の端部に沿って厚み方向に開口した長孔7と、他方の部材3の端部を長孔7の間で切り欠くスリット8と、他方の部材3のスリット8を挟んだ長孔7の両側に形成された一対のフック部9a,9bとを有し、一対のフック部9a,9bの一方側を一対の突起部6a,6bの一方側に掛止した状態で、一方の部材2に対して他方の部材3を回動させながら、一対のフック部9a,9bの他方側を一対の突起部6a,6bの他方側に掛止する構造を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の部材に他方の部材を着脱自在に取り付けるための部材の取付構造であって、
前記一方の部材の一面から突出した一対の突起部と、
前記他方の部材の端部に沿って厚み方向に開口した長孔と、
前記他方の部材の端部を前記長孔の間で切り欠くスリットと、
前記他方の部材の前記スリットを挟んだ前記長孔の両側に形成された一対のフック部とを有し、
前記一対のフック部の一方側を前記一対の突起部の一方側に掛止した状態で、前記一方の部材に対して前記他方の部材を回動させながら、前記一対のフック部の他方側を前記一対の突起部の他方側に掛止する構造を有する部材の取付構造。
【請求項2】
前記一方の部材の前記一対の突起部の間を連結する連結部を有し、
前記一対の突起部に前記一対のフック部が掛止された状態において、前記長孔に前記連結部が係合された状態となる請求項1に記載の部材の取付構造。
【請求項3】
前記突起部は、前記一方の部材の一面から突出した軸部と、前記軸部の先端に前記軸部よりも拡径された頭部とを有する請求項1に記載の部材の取付構造。
【請求項4】
前記頭部は、前記軸部との境界に向かって漸次縮径された形状を有する請求項3に記載の部材の取付構造。
【請求項5】
前記他方の部材は、前記一方の部材の周面と対向する一対の取付片を有し、
前記一対の突起部は、前記一対の取付片と対向する位置から各々突出して設けられ、
前記一対のフック部は、前記一対の取付片に各々設けられ、
前記一対の取付片を支点に前記一方の部材に対して前記他方の部材を回動させながら、前記取付片毎に前記一対の突起部に対して前記一対のフック部が掛止される構造を有する請求項1に記載の部材の取付構造。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載の部材の取付構造を有する車両用部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材の取付構造及び車両用部品に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両に搭載される車両用部品の中には、一方の部材に他方の部材を着脱自在に取り付けるための取付構造として、ネジなどの締結具を用いたものがある。
【0003】
しかしながら、ネジなどの締結具を用いた場合、一方の部材に他方の部材を強固に固定できるものの、工具が必要となるため、取付構造としては着脱が煩雑となる。
【0004】
一方、着脱自在な取付構造として、クリップなどの締結具を用いたものがある。(例えば、下記特許文献1を参照。)。
【0005】
具体的に、下記特許文献1に記載の発明では、灯具本体11に対して、灯具カバー12の一方の側縁をラッチ機構15を介して着脱自在に支持するとともに、他方の側縁は、灯具カバー12側に板バネを成形してなるバネ142を、灯具本体11側に軸141をそれぞれ設けて、これらにより灯具カバー12を灯具本体11に支持する。
【0006】
バネ142の断面形状を、軸141を抱き込むC字形部142aと、その開口部両端から突出する対向部142bを備えた形状とし、対向部142bはC字形部142aの開口部から一旦接近した後に離隔した形状とすることにより、灯具カバー12を灯具本体11に対して回動自在で、かつ、着脱自在に支持することを可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の発明では、車両走行時の振動等によりクリップが軸回りに回転してしまい、摩耗による粉吹きや破損、異音の発生等を招くおそれがある。
【0009】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、工具を不要とし、着脱が容易な部材の取付構造、並びに、そのような部材の取付構造を備えることによって、車両走行時の振動等に対する耐久性に優れた車両用部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
〔1〕 一方の部材に他方の部材を着脱自在に取り付けるための部材の取付構造であって、
前記一方の部材の一面から突出した一対の突起部と、
前記他方の部材の端部に沿って厚み方向に開口した長孔と、
前記他方の部材の端部を前記長孔の間で切り欠くスリットと、
前記他方の部材の前記スリットを挟んだ前記長孔の両側に形成された一対のフック部とを有し、
前記一対のフック部の一方側を前記一対の突起部の一方側に掛止した状態で、前記一方の部材に対して前記他方の部材を回動させながら、前記一対のフック部の他方側を前記一対の突起部の他方側に掛止する構造を有する部材の取付構造。
〔2〕 前記一方の部材の前記一対の突起部の間を連結する連結部を有し、
前記一対の突起部に前記一対のフック部が掛止された状態において、前記長孔に前記連結部が係合された状態となる前記〔1〕に記載の部材の取付構造。
〔3〕 前記突起部は、前記一方の部材の一面から突出した軸部と、前記軸部の先端に前記軸部よりも拡径された頭部とを有する前記〔1〕に記載の部材の取付構造。
〔4〕 前記頭部は、前記軸部との境界に向かって漸次縮径された形状を有する前記〔3〕に記載の部材の取付構造。
〔5〕 前記他方の部材は、前記一方の部材の周面と対向する一対の取付片を有し、
前記一対の突起部は、前記一対の取付片と対向する位置から各々突出して設けられ、
前記一対のフック部は、前記一対の取付片に各々設けられ、
前記一対の取付片を支点に前記一方の部材に対して前記他方の部材を回動させながら、前記取付片毎に前記一対の突起部に対して前記一対のフック部が掛止される構造を有する前記〔1〕に記載の部材の取付構造。
〔6〕 前記〔1〕~〔5〕の何れか一項に記載の部材の取付構造を有する車両用部品。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、工具を不要とし、着脱が容易な部材の取付構造、並びに、そのような部材の取付構造を備えることによって、車両走行時の振動等に対する耐久性に優れた車両用部品を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る部材の取付構造を備えた車両用部品を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す部材の取付構造を示す正面図である。
【
図3】
図2中に示す線分A-Aによる部材の取付構造の断面図である。
【
図4】
図1に示す部材の取付構造の着脱動作を説明するための正面図である。
【
図5】
図1に示す部材の取付構造の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面においては、各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがあり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0014】
本発明の一実施形態として、例えば
図1~
図5に示す部材の取付構造を備えた車両用部品1について説明する。
【0015】
なお、
図1は、部材の取付構造を備えた車両用部品1を示す斜視図である。
図2は、部材の取付構造を示す正面図である。
図3は、
図2中に示す線分A-Aによる部材の取付構造の断面図である。
図4は、部材の取付構造の着脱動作を説明するための正面図である。
図5は、部材の取付構造の変形例を示す断面図である。
【0016】
また、以下に示す図面では、XYZ直交座標系を設定し、X軸方向を車両用部品1の前後方向(奥行方向)、Y軸方向を車両用部品1の左右方向(幅方向)、Z軸方向を車両用部品1の上下方向(高さ方向)として、それぞれ示すものとする。
【0017】
本実施形態の車両用部品1は、例えば、自動二輪車や自動三輪車などの鞍乗型車両(図示せず。)の前側中央部に搭載される車両用前照灯(ヘッドランプ)に本発明を適用したものである。
【0018】
なお、以下の説明において、「前」「後」「左」「右」「上」「下」との記載は、特に断りのない限り、車両用部品1を正面(車両前方)から見たときのそれぞれの方向を意味するものとする。
【0019】
本実施形態の車両用部品1は、
図1に示すように、一方の部材となるランプユニット2に他方の部材となるグリルパーツ3を着脱自在に取り付けるための部材の取付構造を備えている。
【0020】
ランプユニット2は、光源やアウターレンズ、ヒートシンクなどを含み、光源から出射された光をレンズにより車両の前方に向けて投影する。
【0021】
一方、グリルパーツ3は、ランプユニット2の正面側のアウターレンズを覆う意匠部材である。
【0022】
グリルパーツ3は、ランプユニット2の周面と対向する一対の取付片4a,4bを有している。一対の取付片4a,4bは、ランプユニット2の周方向において上方を0°としたときに、下方の120°、240°の位置に、それぞれ対称に配置されている。
【0023】
本実施形態の部材の取付構造では、一対の取付片4a,4bを支点にランプユニット2に対してグリルパーツ3を回動させながら、一対の取付片4a,4bがランプユニット2の外周部に設けられたホルダー5に対して掛け止めにより着脱自在に取り付けられている。
【0024】
また、グリルパーツ3は、ランプユニット2の0°の位置(上部)において、ランプユニット2に対してネジ止め(図示せず。)により固定される。
【0025】
具体的に、本実施形態の部材の取付構造は、
図1~
図3に示すように、ホルダー5の一対の取付片4a,4bと対向する位置から各々突出して設けられた一対の突起部6a,6bと、各取付片4a,4bの先端部に沿って厚み方向に開口した長孔7と、各取付片4a,4bの先端部を長孔7の間で切り欠くスリット8と、各取付片4a,4bのスリット8を挟んだ長孔7の両側に形成された一対のフック部9a,9bとを有している。
【0026】
突起部6a,6bは、ホルダー5の周面(一面)から突出した軸部61と、軸部61の先端に軸部61よりも拡径された頭部62とを有している。
【0027】
本実施形態では、軸部61がホルダー5の周面から円柱状に突出され、この軸部61の先端から頭部62が球状に突出して設けられている。これにより、頭部62は、軸部61にフック部9a,9bが掛け止めされた際の抜け止めとして機能する。
【0028】
また、頭部62は、軸部61との境界に向かって漸次縮径された形状を有している。これにより、軸部61にフック部9a,9bが掛け止めされた際の頭部62と取付片4a,4bとの接触面積を極小としている。
【0029】
一対の突起部6a,6bの間には、これら一対の突起部6a,6bの間を連結する連結部63が設けられている。連結部63は、一対の突起部6a,6bを補強する機能を有している。
【0030】
本実施形態では、連結部63が長孔7に対応した形状と、各取付片4a,4bの厚みに対応した高さを有して、一対の突起部6a,6bの軸部61の間を連結するように、ホルダー5の周面から突出して設けられている。
【0031】
一対の突起部6a,6bは、ホルダー5の周面において、互いにランプユニット2の前後方向にずれた配置となっている。
【0032】
本実施形態では、一対の突起部6a,6bのうち、一方(本実施形態では下方)の突起部6aよりも他方(本実施形態では上方)の突起部6bが後方にずれた配置となっている。
【0033】
一対のフック部9a,9bは、各取付片4a,4bの先端部に位置して、互いに逆向きに向かい合った状態で配置されている。
【0034】
本実施形態では、一対のフック部9a,9bのうち、一方(本実施形態では下方)のフック部9aよりも他方(本実施形態では上方)のフック部9bが後方にずれた配置となっている。また、他方のフック部9bは、その先端が尖形となっている。
【0035】
以上のような構成を有する本実施形態の部材の取付構造では、
図4に示すように、一方のフック部9aを一方の突起部6aに掛止した状態で、一対の取付片4a,4bを支点にランプユニット2に対してグリルパーツ3を回動させながら、他方のフック部9bを他方の突起部6bに掛止する。
【0036】
また、一対の突起部6a,6bに一対のフック部9a,9bが掛止された状態において、長孔7に連結部63が係合された状態となる。
【0037】
これにより、本実施形態の車両用部品1では、ランプユニット2の正面側をグリルパーツ3が覆った状態となる。また、この状態から、グリルパーツ3の上部をランプユニット2に対してネジ止めにより固定する。
【0038】
これにより、ランプユニット2に対してグリルパーツ3を取り付けることが可能である。一方、上述したランプユニット2に対するグリルパーツ3の取付動作とは逆の動作(取外動作)によって、ランプユニット2からグリルパーツ3を取り外すことが可能である。
【0039】
本実施形態の部材の取付構造では、上述した一対の突起部6a,6bに一対のフック部9a,9bが掛止される構成のため、工具を不要とし、一対の取付片4a,4bを支点にランプユニット2に対してグリルパーツ3を回動させることで、ランプユニット2に対してグリルパーツ3を容易に着脱することが可能である。
【0040】
また、本実施形態の部材の取付構造では、上述した一対の突起部6a,6bに一対のフック部9a,9bが掛止されることで、車両走行時の振動等に対して強く、摩耗による粉吹きや破損、異音の発生等を防ぐことが可能である。
【0041】
具体的に、
図2中の矢印で示すように、車両走行時の振動により車両用部品1の上下方向及び前後方向に外力が加わる場合でも、一対の突起部6a,6bに一対のフック部9a,9bが掛止された状態を保持することが可能である。
【0042】
以上のようにして、本実施形態では、工具を不要とし、着脱が容易な部材の取付構造、並びに、そのような部材の取付構造を備えることによって、車両走行時の振動等に対する耐久性に優れた車両用部品1を提供することが可能である。
【0043】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0044】
例えば、本実施形態の部材の取付構造では、上述した連結部63の構成に限らず、例えば
図5(A)に示す連結部63のように、一対の突起部6a,6bを構成する軸部61及び頭部62の間を連結するような構成としてもよい。
【0045】
また、本実施形態の部材の取付構造では、上述した一対の突起部6a,6bの構成に限らず、例えば
図5(B)に示す突起部6a,6bのように、頭部62が軸部61との境界に向かって漸次縮径された逆テーパー形状を有する構成であってもよい。
【0046】
また、本実施形態の部材の取付構造では、上述した一方の部材となるランプユニット2に他方の部材となるグリルパーツ3を着脱自在に取り付ける構造を例示しているが、車両用部品1を構成する一方の部材と他方の部材については、特に限定されるものではなく、適宜変更することが可能である。また、一方の部材と他方の部材との間に別の部材を挟み込む構造とすることも可能である。
【0047】
また、本実施形態の部材の取付構造は、上述した車両の搭載される車両用部品1に好適に用いられるものの、それ以外にも、一方の部材に他方の部材を着脱自在に取り付ける構造に対して、本発明を幅広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
1…車両用部品 2…ランプユニット(一方の部材) 3…グリルパーツ(他方の部材) 4a,4b…取付片 5…ホルダー 6a,6b…突起部 7…長孔 8…スリット 9a,9b…フック部 61…軸部 62…頭部 63…連結部