(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178615
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】耐火床下地構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20241218BHJP
E04B 5/02 20060101ALI20241218BHJP
E04B 5/43 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
E04B1/94 K
E04B5/02 E
E04B5/43 Z
E04B1/94 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096885
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000183428
【氏名又は名称】住友林業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古田 佳祐
(72)【発明者】
【氏名】関 真理子
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001DE04
2E001FA12
2E001FA13
2E001GA42
2E001HA03
2E001HA21
2E001HC01
2E001HD11
(57)【要約】
【課題】施工がし易く、火災時には、目地部の隙間を介して下方からの火災加熱が床内部及び床上に広がるのを、効果的に回避できる耐火床下地構造を提供する。
【解決手段】木製の梁フレーム51に支持させて、矩形状の平面形状を有する複数の木製耐火ユニット20を、連設して設置することにより構成される耐火床下地構造10であって、木製耐火ユニット20は、ユニット本体21と、これの下面部を覆って一体として取り付けられた耐火被覆材22とを含んで構成される。隣接する各一対の木製耐火ユニット20の目地部11において対向する、耐火被覆材22の周端面22aには、厚さ方向の中間部分に、耐火材収容凹溝24が、目地部11の延長方向に延設して形成されている。耐火材収容凹溝24に、加熱発泡性耐火材及び/又は熱膨張性耐火材である耐火材25が、周端面22aから突出することなく収容されている。火災時に耐火材25が発泡及び/又は膨張して、目地部11の隙間11aを埋めることになる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床梁又は土台に支持させて、矩形状の平面形状を有する複数の木製耐火ユニットを、連設して設置することにより構成される耐火床下地構造であって、
前記木製耐火ユニットは、木製材料によるユニット本体と、該ユニット本体の下面部を覆って一体として取り付けられた、該ユニット本体と同様の矩形状の平面形状を備える耐火被覆材とを含んで構成されており、
隣接して設置された各一対の前記木製耐火ユニットの目地部において対向する、前記耐火被覆材の周端面の少なくともいずれか一方には、厚さ方向の下端縁部分を除くこれの上方部分に、耐火材として加熱発泡性耐火材及び/又は熱膨張性耐火材が収容される耐火材収容凹溝が、前記目地部の延長方向に延設して形成されていて、該耐火材収容凹溝に、前記耐火材が、前記周端面から突出することなく収容されており、
火災時には、前記耐火材が発泡及び/又は膨張して、前記目地部の隙間を埋めるようになっている耐火床下地構造。
【請求項2】
前記耐火被覆材は、単位耐火被覆材を複数の層に積層することによって形成されており、前記周端面において、最外層を除く一又は二以上の層の単位耐火被覆材の端面を、最外層の単位耐火被覆材の端面からセットバックさせて積層することによって、セットバックさせた部分により前記耐火材収容凹溝が設けられるようになっている請求項1記載の耐火床下地構造。
【請求項3】
前記耐火材が、耐火テープ、耐火コーキング材、又は耐火塗料によるものとなっている請求項1又は2記載の耐火床下地構造。
【請求項4】
前記耐火被覆材が、石膏ボード又は珪酸カルシウム板を用いて形成されている請求項1又は2記載の耐火床下地構造。
【請求項5】
請求項1記載の耐火床下地構造に用いる木製耐火ユニットであって、
矩形状の平面形状を備える木製材料によるユニット本体と、該ユニット本体の下面部を覆って一体として取り付けられた、該ユニット本体と同様の矩形状の平面形状を備える耐火被覆材とを含んで構成されており、
矩形状の平面形状の少なくとも一辺部における前記耐火被覆材の周端面には、厚さ方向の下端縁部分を除くこれの上方部分に、耐火材収容凹溝が、周方向に延設して形成されており、該耐火材収容凹溝には、耐火材として加熱発泡性耐火材及び/又は熱膨張性耐火材が、周端面から突出することなく収容されている木製耐火ユニット。
【請求項6】
前記耐火被覆材は、単位被覆材を複数の層に積層することによって形成されており、前記周端面において、最外層を除く一又は二以上の層の単位被覆材の端面を、最外層の単位被覆材の端面からセットバックさせて積層することによって、セットバックさせた部分により前記耐火材収容凹溝が設けられている請求項5記載の木製耐火ユニット。
【請求項7】
前記耐火材が、耐火テープ、耐火コーキング材、又は耐火塗料によるものとなっている請求項5又は6記載の木製耐火ユニット。
【請求項8】
前記耐火被覆材が、石膏ボード又は珪酸カルシウム板を用いて形成されている請求項5又は6記載の木製耐火ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床梁又は土台に支持させて、矩形状の平面形状を有する複数の木製耐火ユニットを、連設して設置することにより構成される耐火床下地構造、及び該耐火床下地構造に用いる木製耐火ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物には、火災加熱を受けた場合でも、構造躯体を保持できるように、防耐火性能を備えていることが求められており、準耐火構造又は耐火構造の基準が、建築基準法等において種々定められている。
【0003】
例えば建築物の床の木造化においては好ましくは耐火構造を備える木製の床として、CLT(直交集成板)やLVL(単板積層材)による木床部材の上に、石膏ボードなどの面材やコンクリートなどの湿式材料による耐火被覆材を設置した木製床が知られているが、これらの耐火被覆材は留め付けや養生が必要で、設置作業に手間がかかる。
【0004】
一方、上面部に床仕上げ材が敷設される耐火床下地構造として、隣接する各一対の柱フレーム間を連結するようにして縦横に架設された梁フレームに支持させて、矩形状の平面形状を備える複数の耐火木製床ユニットを、縦横に並べて設置することによって、準耐火構造、好ましくは耐火構造を備える木製床の下地構造を形成するものが知られている(例えば、特許文献1、
図1参照)。このような耐火床下地構造では、予め工場等において製造された複数の耐火木製床ユニットを、施工現場で縦横に並べて設置して固定するだけの簡易な作業によって、効率良く木製床の下地構造を形成することが可能になる。
【0005】
また、このような耐火木製床ユニットを用いた耐火床下地構造の場合、耐火木製床ユニットの下面側に、石膏パネルや珪酸カルシウムパネルによる不燃層を、耐火被覆材として取り付けておくことによって(例えば、特許文献2参照)、特に下方からの火災加熱に対して、効果的に耐火性能を発揮できるものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2023-016386号公報
【特許文献2】特開2022-021793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
予め工場等において製造された複数の耐火木製床ユニットを、縦横に並べて設置することにより形成される耐火床下地構造では、隣接する各一対の耐火木製床ユニットの間の目地部には、例えば1~12mm程度の僅かな隙間が残置される場合があり、残置された目地部の隙間を介して、下方からの火災加熱が床内部及び床上に広がって、耐火性能に悪影響を及ぼすと考えられることから、耐火木製床ユニットによる施工のし易さを損なうことなく、火災時には、下方からの火災加熱が目地部の隙間を介して床内部及び床上に広がるのを、効果的に回避できるようにすることが必要である。
【0008】
本発明は、耐火木製床ユニットによる施工のし易さを損なうことなく、火災時には、下方からの火災加熱が目地部の隙間を介して床内部及び床上に広がるのを、効果的に回避することのできる耐火床下地構造、及び該耐火床下地構造に用いる木製耐火ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、床梁又は土台に支持させて、矩形状の平面形状を有する複数の木製耐火ユニットを、連設して設置することにより構成される耐火床下地構造であって、前記木製耐火ユニットは、木製材料によるユニット本体と、該ユニット本体の下面部を覆って一体として取り付けられた、該ユニット本体と同様の矩形状の平面形状を備える耐火被覆材とを含んで構成されており、隣接して設置された各一対の前記木製耐火ユニットの目地部において対向する、前記耐火被覆材の周端面の少なくともいずれか一方には、厚さ方向の下端縁部分を除くこれの上方部分に、耐火材として加熱発泡性耐火材及び/又は熱膨張性耐火材が収容される耐火材収容凹溝が、前記目地部の延長方向に延設して形成されていて、該耐火材収容凹溝に、前記耐火材が、前記周端面から突出することなく収容されており、火災時には、前記耐火材が発泡及び/又は膨張して、前記目地部の隙間を埋めるようになっている耐火床下地構造を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0010】
そして、本発明の耐火床下地構造は、前記耐火被覆材が、単位耐火被覆材を複数の層に積層することによって形成されており、前記周端面において、最外層を除く一又は二以上の層の単位耐火被覆材の端面を、最外層の単位耐火被覆材の端面からセットバックさせて積層することによって、セットバックさせた部分により前記耐火材収容凹溝が設けられるようになっていることが好ましい。
【0011】
また、本発明の耐火床下地構造は、前記耐火材が、耐火テープ、耐火コーキング材、又は耐火塗料によるものとなっていることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明の耐火床下地構造は、前記耐火被覆材が、石膏ボード又は珪酸カルシウム板を用いて形成されていることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、上記の耐火床下地構造に用いる木製耐火ユニットであって、矩形状の平面形状を備える木製材料によるユニット本体と、該ユニット本体の下面部を覆って一体として取り付けられた、該ユニット本体と同様の矩形状の平面形状を備える耐火被覆材とを含んで構成されており、矩形状の平面形状の少なくとも一辺部における前記耐火被覆材の周端面には、厚さ方向の下端縁部分を除くこれの上方部分に、耐火材収容凹溝が、周方向に延設して形成されており、該耐火材収容凹溝には、耐火材として加熱発泡性耐火材及び/又は熱膨張性耐火材が、周端面から突出することなく収容されている木製耐火ユニットを提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0014】
そして、本発明の木製耐火ユニットは、前記耐火被覆材が、単位被覆材を複数の層に積層することによって形成されており、前記周端面において、最外層を除く一又は二以上の層の単位被覆材の端面を、最外層の単位被覆材の端面からセットバックさせて積層することによって、セットバックさせた部分により前記耐火材収容凹溝が設けられていることが好ましい。
【0015】
また、本発明の木製耐火ユニットは、前記耐火材が、耐火テープ、耐火コーキング材、又は耐火塗料によるものとなっていることが好ましい。
【0016】
さらに、本発明の木製耐火ユニットは、前記耐火被覆材が、石膏ボード又は珪酸カルシウム板を用いて形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の耐火床下地構造、又は耐火床下地構造に用いる木製耐火ユニットによれば、耐火木製床ユニットによる施工のし易さを損なうことなく、火災時には、下方からの火災加熱が目地部の隙間を介して床内部及び床上に広がるのを、効果的に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、複数の耐火木製床ユニットを、梁フレームに支持させて縦横に敷き並べることで、本発明の好ましい一実施形態に係る耐火床下地構造を形成する状況を説明する略示斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の好ましい一実施形態に係る耐火床下地構造を形成する、耐火木製床ユニットを例示する斜視図である。
【
図3】
図3(a)は、本発明の好ましい一実施形態に係る耐火床下地構造を説明する、
図1のA-A線に沿った要部断面図、
図3(b)は、
図3(a)のB部拡大図である。
【
図4】
図4(a)~(f)は、耐火材収容凹溝及びこれに収容される耐火材の他の形態を例示する要部断面図である。
【
図5】
図5は、複数の耐火木製床ユニットを、梁フレームに支持させて縦横に敷き並べることで、他の実施形態に係る耐火床下地構造を形成する状況を説明する略示斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5のC-C線に沿った、床仕上げ材を敷設した状態の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の好ましい一実施形態に係る耐火床下地構造10(
図3(a)、(b)参照)は、例えば
図1に示すように、隣接する各一対の柱フレーム50間を連結するようにして縦横に架設された、梁フレーム51に支持させて、例えば
図2に示す構成を備える複数の耐火木製床ユニット20を、縦横に並べて複数設置することによって、準耐火構造、好ましくは耐火構造を備える木製床の下地構造を形成するものとなっている。本実施形態の耐火床下地構造10は、予め工場等において精度良く製造された、矩形状の平面形状を有する木製耐火ユニット20を用いることで、施工現場において施工がし易くなって、簡易に形成することが可能になると共に、火災時には、目地部11の隙間11aを介して、下方からの火災加熱が床内部及び床上に広がるのを、効果的に回避できるようにする機能を備えている。
【0020】
そして、本実施形態の耐火床下地構造10は、
図1に示すように、木製の床梁又は土台(本実施形態では、梁フレーム51)に支持させて、矩形状の平面形状を有する複数の木製耐火ユニット20を、連設して設置することにより構成される耐火床下地構造であって、木製耐火ユニット20は、
図2に示すように、木製材料によるユニット本体21と、ユニット本体21の下面部を覆って一体として取り付けられた、ユニット本体21と同様の矩形状の平面形状を備える耐火被覆材22とを含んで構成されている。隣接して設置された各一対の木製耐火ユニット20の目地部11において対向する、耐火被覆材22の周端面22aの少なくともいずれか一方には、
図3(a)、(b)に示すように、厚さ方向の下端縁部分を除くこれの上方部分に、耐火材25として加熱発泡性耐火材及び/又は熱膨張性耐火材が収容される耐火材収容凹溝24が、目地部11の延長方向に延設して形成されていて、この耐火材収容凹溝24に、耐火材25が、耐火被覆材22の周端面22aから突出することなく収容されている。火災時には、この耐火材25が発泡及び/又は膨張して、目地部11の隙間11aを埋めるようになっている。なお、耐火被覆材22の耐荷重は大きくないことから、本実施形態では、梁フレーム51に載置されることになる部分の木製耐火ユニット20の下面部周縁部分においては、好ましくは耐火被覆材22は切り欠かれて除かれており、これによってユニット本体21の周縁部分が、梁フレーム51に載置されるようになっている。
【0021】
また、本実施形態では、耐火被覆材22は、好ましくは単位耐火被覆材23a,23b,23cを複数の層(本実施形態では、3層)に積層することによって形成されており、耐火被覆材22の周端面22aにおいて、最外層の単位耐火被覆材23aを除く一又は二以上の層の単位耐火被覆材(本実施形態では、第2層の単位耐火被覆材)23bの端面を、最外層の単位耐火被覆材23aの端面からセットバックさせて積層することによって、セットバックさせた部分(第2層の端面)により耐火材収容凹溝24が設けられるようになっている。
【0022】
本実施形態では、耐火床下地構造10を形成する耐火木製床ユニット20は、上述のように、矩形状の平面形状を備える木製材料によるユニット本体21と、ユニット本体21の下面部を覆って一体として取り付けられた、ユニット本体21と同様の矩形状の平面形状を備える耐火被覆材22とを含んで構成されている。
【0023】
ユニット本体21は、好ましくはCLT(直交集成板)やLVL(単板積層材)からなり、例えば梁フレーム51(
図1参照)に周縁部分を支持させて設置することが可能な大きさとして、好ましくは縦横30~1200cm程度の大きさの矩形状の平面形状を備えている。またユニット本体21は、2~50cm程度の厚さを備える木製の部材となっている。ユニット本体21の下面部には、好ましくは3層の単位耐火被覆材23a,23b,23cによる耐火被覆材22が、ユニット本体21と一体として接合されて取り付けられている。
【0024】
ユニット本体21の下面部に取り付けられる耐火被覆材22は、本実施形態では、単位耐火被覆材23a,23b,23cとして、例えばユニット本体21と同様の大きさの矩形状の平面形状を備える、好ましくは5~90mm程度の厚さの3層以上(本実施形態では、3層)の石膏ボード又は珪酸カルシウム板を、積み重ねるようにして一体として接合することによって形成されている。また、本実施形態では、単位耐火被覆材23a,23b,23cは、矩形状の平面形状を有する木製耐火ユニット20における、梁フレーム51に縦横に並べて設置された際に目地部11において対向することになる、耐火被覆材22の周端面22aの少なくとも一辺部において、上述のように底面から第2層の単位耐火被覆材23bの周端面を、最外層の第1層の単位耐火被覆材23a及び最内層の第3層の単位耐火被覆材23cの周端面から、好ましくは1~10mm程度セットバックさせた状態で、積層されている。これによって、矩形状の平面形状の少なくとも一辺部における耐火被覆材22の周端面22aには、厚さ方向下端部の第1層(最外層)の単位耐火被覆材23aによる下端縁部分を除く、これの上方部分に、例えば1~10mm程度の深さの矩形断面形状を有する耐火材収容凹溝24が、周方向に延設して形成されることになる。この耐火材収容凹溝24には、上述のように、耐火材25として加熱発泡性耐火材及び/又は熱膨張性耐火材が、耐火被覆材22の周端面22aから突出することなく収容されるようになっている。なお、耐火被覆材は、後述するように、2層の単位耐火被覆材によって形成することもでき、4層又は5層以上の単位耐火被覆材によって形成することもできる。
【0025】
ここで、本実施形態では、耐火材収容凹溝24に収容される耐火材25として、火災時に発泡及び/又は膨張して目地部11の隙間11a(
図3(a)、(b)参照)を埋めることが可能な物性を備える、好ましくは加熱発泡性耐火材や熱膨張性耐火材として公知の、種々の耐火材25を用いることができる。より具体的には、耐火材25として、薄型熱膨張性耐火被覆材、熱膨張性耐火材、発泡性耐火被覆材、1成分形変成シリコーン系シーリング材、1成分形シリル化アクリレート系シーリング材、熱膨張性シール材、変性シリコーン1成分形シーリング材等を、好ましく用いることができる。
【0026】
また、これらの耐火材25は、耐火テープや、耐火コーキング材や、耐火塗料によるものとして、耐火被覆材22の耐火材収容凹溝24に、耐火被覆材22の周端面22aから突出させることなく収容することができる。これによって、耐火木製床ユニット20の、搬送時や、梁フレーム51への据え付け時に、他のものとの接触等によって耐火材25が破損するのを回避しつつ、耐火木製床ユニット20をスムーズに積み込んだり縦横に敷き並べたりすることが可能になって、複数の耐火木製床ユニット20による耐火床下地構造10を、より効率良くスムーズに施工することが可能になる。
【0027】
本実施形態では、施工現場において、上述の構成を備える耐火木製床ユニット20を各々吊り上げて、
図1に示すように、縦横に架設された梁フレーム51に支持させるようにして、吊り上げた耐火木製床ユニット20を、好ましくは隙間が生じないように縦横に並べた状態で所定の位置に各々連設させて設置していくことによって、本実施形態の耐火床下地構造10を、簡易に且つ容易に形成することができる。また形成された耐火床下地構造10の、連設されたユニット本体21による上面には、例えばカーペットやフローリング等の公知の種々の床仕上げ材及び床仕上げ材とユニット本体21との間に床上耐火被覆材が敷設される(図示せず)ことによって、本実施形態の耐火床下地構造10により耐火性能が向上した、木製床が効率良く形成されることになる。
【0028】
そして、上述の構成を備える本実施形態の木製床の耐火床下地構造10及び耐火木製床ユニット20によれば、耐火木製床ユニット20による施工のし易さを損なうことなく、火災時には、下方からの火災加熱が目地部11の隙間11aを介して床内部及び床上に広がるのを、効果的に回避することが可能になる。
【0029】
すなわち、本実施形態によれば、耐火床下地構造10を構成する複数の耐火木製床ユニット20は、各々を予め工場等において精度良く製造することができ、施工現場では、各々の耐火木製床ユニット20を吊り上げて、縦横に並べて設置していくことで、耐火床下地構造10を、簡易に且つ容易に形成することができることに加えて、この際に、耐火材収容凹溝24に収容されている耐火材25は、耐火被覆材22の周端面22aから突出することなく収容されているので、他のものとの接触等により破損して施工のし易さが損われるのを効果的に回避でき、また火災時には、加熱発泡性耐火材や熱膨張性耐火材による耐火材25が発泡及び/又は膨張することによって、目地部11の隙間11aを埋めて強固に封止できるので、下方からの火災加熱が、目地部11の隙間11aを介して床内部及び床上に広がるのを防止して、火災時の延焼を効果的に抑制することが可能になる。
【0030】
図4(a)~(f)は、上述の耐火床下地構造10における、設置された各一対の木製耐火ユニット20の目地部11において対向する、耐火被覆材22の周端面22aの少なくともいずれか一方に設けられた、耐火材収容凹溝24及びこれに収容される耐火材25の他の形態を例示するものである。
図4(a)~(f)に示すように、耐火材収容凹溝24は、例えば2層の単位耐火被覆材23a,23bによって形成された、耐火被覆材22における第2層の単位耐火被覆材23bの端面に設けて、耐火材25を収容することもできる(
図4(a)参照)。耐火材収容凹溝24は、例えば目地部11において対向する耐火被覆材22の周端面22aの一方のみに設けて、耐火材25を収容することもできる(
図4(b)参照)。耐火材収容凹溝24は、例えば単位耐火被覆材23a,23b,23cによって形成された耐火被覆材22における、第2層及び第3層の単位耐火被覆材23b,23cの端面に跨って設けて、耐火材25を収容することもできる(
図4(c)参照)。
【0031】
また、耐火材25は、例えば耐火材収容凹溝24において、上側面に貼り付けるようにして取り付けておくこともでき(
図4(d)参照)、下側面に貼り付けるようにして取り付けておくこともできる(
図4(e)参照)。耐火被覆材22は、例えば単位耐火被覆材を複数層に積層して形成するのではなく、単一層の被覆材によって形成することもでき、この場合に耐火材収容凹溝24は、例えば耐火被覆材22の厚さ方向中間部分の周端面22aを、コ字形状に切り欠くことにより設けて、耐火材25を収容することもできる(
図4(f)参照)。
【0032】
図5及び
図6は、本発明の他の実施形態に係る耐火床下地構造10’を説明するものである。本他の実施形態の耐火床下地構造10’では、梁フレーム51に支持させて、縦横に並べて複数設置される耐火木製床ユニット20’は、これを構成するユニット本体21’が、好ましくは縦横30~1200cm程度の大きさの矩形枠状の平面形状を有すると共に、2~50cm程度の高さを備える木製材となっている。矩形枠状のユニット本体21’の下面部には、上記の実施形態の耐火木製床ユニット20と同様に、好ましくは3層の単位耐火被覆材23a,23b,23cによる耐火被覆材22が、矩形枠状のユニット本体21’に一体として接合されて取り付けられている。また、耐火被覆材22の周端面22aの少なくとも一辺部において、底面から第2層の単位耐火被覆材23bの周端面を、最外層の第1層の単位耐火被覆材23a及び最内層の第3層の単位耐火被覆材23cの周端面からセットバックさせた状態で、3層の単位耐火被覆材23a,23b,23cが積層されていることによって、耐火被覆材22の周端面22aには、下端縁部分を除くこれの上方部分に、耐火材収容凹溝24が、周方向に延設して形成されるようになっている。この耐火材収容凹溝24には、耐火材25として、加熱発泡性耐火材及び/又は熱膨張性耐火材が、耐火被覆材22の周端面22aから突出することなく収容されるようになっている。
【0033】
他の実施形態の耐火床下地構造10’では、上述の耐火床下地構造10と同様に、施工現場において、耐火木製床ユニット20’を各々吊り上げて、縦横に架設された梁フレーム51に支持させるようにして、吊り上げた耐火木製床ユニット20’を、縦横に並べた状態で所定の位置に各々連設させて設置していくことによって、簡易に且つ容易に形成できると共に、連設されたユニット本体21’の上面を覆うようにして、例えばフローリング等の公知の種々の床仕上げ材12を敷設することによって、木製床を効率良く形成することが可能になる。他の実施形態の耐火床下地構造10’では、
図6に示すように、ユニット本体21’と床仕上げ材12との間に介在させて、床上用耐火被覆材13を配設することもできる。床上用耐火被覆材13は、予め工場等において、耐火木製床ユニット20’の開口した上面を覆うようにして取り付けておき、目地部を耐火木製床ユニット20’の目地部11と同じ位置に配置することができる。
【0034】
また、本他の実施形態の耐火床下地構造10’や耐火木製床ユニット20’によっても、目地部11において対向することになる、耐火被覆材22の周端面22aの少なくとも一辺部において、上述のように底面から第2層の単位耐火被覆材23bの周端面を、最外層の第1層の単位耐火被覆材23a及び最内層の第3層の単位耐火被覆材23cの周端面から、好ましくは1~10mm程度セットバックさせた状態で、3層の単位耐火被覆材23a,23b,23cが積層されている。これによって、矩形状の平面形状の少なくとも一辺部における耐火被覆材22の周端面22aには、厚さ方向下端部の第1層の単位耐火被覆材23aによる下端縁部分を除く、これの上方部分に、例えば1~10mm程度の深さの矩形断面形状を有する耐火材収容凹溝24が、周方向に延設して形成されることになる。この耐火材収容凹溝24には、上述と同様に、耐火材25として加熱発泡性耐火材及び/又は熱膨張性耐火材が、耐火被覆材22の周端面22aから突出することなく収容されるようになっている。
【0035】
これによって、上述の実施形態の耐火床下地構造10や耐火木製床ユニット20と同様に、耐火木製床ユニット20’による施工のし易さを損なうことなく、火災時には、下方からの火災加熱が目地部11の隙間11aを介して床内部及び床上に広がるのを、効果的に回避することが可能になる。本他の実施形態の耐火床下地構造10’おいても、耐火材収容凹溝24及びこれに収容される耐火材25の他の形態として、例えば
図4(a)~(f)に示すものを採用することができる。
【0036】
なお、本発明は上記の各実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、耐火床下地構造を構成する各々の木製耐火ユニットは、ユニット本体の下面部と耐火被覆材との間に好ましくはアルミテープを介在させた状態で、これらを接合一体化して形成することもできる。これによって、床下における耐火被覆材の総厚や層数を効果的に低減することが可能になる。
【符号の説明】
【0037】
10,10’ 耐火床下地構造
11 目地部
11a 隙間
12 床仕上げ材
13 床上用耐火被覆材
20,20’ 耐火木製床ユニット
21,21’ ユニット本体
22 耐火被覆材
22a 周端面
23a 最下層の単位耐火被覆材
23b 第2層の単位耐火被覆材
23c 第3層の単位耐火被覆材
24 耐火材収容凹溝
25 耐火材
50 柱フレーム
51 梁フレーム