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特開2024-178616ハニカムコアを含む放熱板およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178616
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】ハニカムコアを含む放熱板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/50 20060101AFI20241218BHJP
【FI】
B64G1/50 600
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096886
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124811
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 資博
(74)【代理人】
【識別番号】100088959
【弁理士】
【氏名又は名称】境 廣巳
(74)【代理人】
【識別番号】100097157
【弁理士】
【氏名又は名称】桂木 雄二
(74)【代理人】
【識別番号】100187724
【弁理士】
【氏名又は名称】唐鎌 睦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】持田 則彦
(57)【要約】
【課題】より高い放熱効率および剛性を実現できる新たな放熱板を提供する。
【解決手段】宇宙機に搭載される放熱板10は、宇宙空間と輻射結合する表面板101と、ベース板102と、複数のセルからなり表面板101とベース板102とをセルの高さ方向に接続するハニカムコア120と、を含み、表面板101がベース板102に対して少なくとも一つの凸部101cを有する。ハニカムコア120には流入口RIおよび流出口ROを有する熱輸送パイプが所定パターンで埋め込まれ、流入口RIから流入した熱輸送流体が熱輸送パイプを通して流動し流出口ROから流出する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
宇宙機に搭載される放熱板であって、
宇宙空間と輻射結合する表面板と、
ベース板と、
複数のセルからなり、前記表面板と前記ベース板とを前記セルの高さ方向に接続するハニカムコアと、
を含み、前記表面板が前記ベース板に対して少なくとも一つの凸部を有する放熱板。
【請求項2】
前記表面板が複数の凸部を有する請求項1に記載の放熱板。
【請求項3】
前記ハニカムコアが前記宇宙機に取り付けるための取付部を有し、前記取付部が他の部分より厚い熱伝導性箔のハニカムコアからなる請求項1または2に記載の放熱板。
【請求項4】
前記ハニカムコアが前記宇宙機に取り付けるための取付部を有し、前記取付部が他の部分よりセルサイズの小さいハニカムコアからなる請求項1または2に記載の放熱板。
【請求項5】
前記ハニカムコアに熱輸送流体の流入口および流出口を有する熱輸送パイプが所定パターンで埋め込まれ、前記流入口から流入した熱輸送流体が前記熱輸送パイプを通して流動し、前記流出口から流出する請求項1または2に記載の放熱板。
【請求項6】
前記熱輸送パイプの周囲のセルが他の部分よりセルサイズの小さいハニカムコアからなる請求項5に記載の放熱板。
【請求項7】
前記ハニカムコアに前記宇宙機に取り付けるための取付部が設けられ、前記取付部が他の部分よりセルサイズの小さいハニカムコアからなる請求項6に記載の放熱板。
【請求項8】
請求項1または2に記載の放熱板を製造する方法であって、
3次元造形装置により熱伝導性材料を積層して前記ベース板、前記表面板および前記ハニカムコアを一体形成する放熱板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は宇宙空間と輻射結合する放熱板に関する
【背景技術】
【0002】
人工衛星等の宇宙機に搭載される放熱板は小型軽量で高い放熱効率および剛性を要求される。このために放熱板の主な構造としてハニカムパネルが採用される。特に、特許文献1には、ヒートパイプを埋め込んだハニカムサンドイッチパネルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-053100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたヒートパイプは熱伝導を利用して熱を輸送するために、高い放熱効果を得ることができない。またヒートパイプによりハニカムパネルの剛性を高めることができるが、それ以上の剛性を得ることができない。
【0005】
そこで本発明の目的は、より高い放熱効率および剛性を実現できる新たな放熱板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示における放熱板は、宇宙機に搭載される放熱板であって、宇宙空間と輻射結合する表面板と、ベース板と、複数のセルからなり、前記表面板と前記ベース板とを前記セルの高さ方向に接続するハニカムコアと、を含み、前記表面板が前記ベース板に対して少なくとも一つの凸部を有する。
本開示における放熱板を製造する方法であって、3次元造形装置により熱伝導性材料を積層して前記ベース板、前記表面板および前記ハニカムコアを一体形成する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、より高い放熱効率および剛性を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は本開示の第1態様に係る放熱板の表面側からみた斜視図である。
図2図2図1の放熱板の裏側からみた斜視図である。
図3図3図1の放熱板の裏側から内部構造をみた透視斜視図である。
図4図4図1の放熱板の平面図である。
図5図5図1の放熱板の正面図である。
図6図6図1の放熱板の側面図である。
図7図7図4における放熱板の第1例を模式的に示すI-I線断面図である。
図8図8図4における放熱板の第1例を模式的に示すII-II線断面図である。
図9図9図5における放熱板の第1例を模式的に示すIII-III線断面図である。
図10図10図5における放熱板の第2例を模式的に示すIII-III線断面図である。
図11図11図5における放熱板の第3例を模式的に示すIII-III線断面図である。
図12図12図11における放熱板の第3例を模式的に示すIV-IV線断面図である。
図13図13図11における放熱板の一部を側面および平面でそれぞれ拡大した模式図である。
図14図14は本開示の第2態様に係る放熱板の平面図である。
図15図15図14の放熱板の側面図である。
図16図16は本開示の第3態様に係る放熱板の側面図である。
図17図17は本開示の第4態様に係る放熱板の側面図である。
図18図18は本開示の第5態様に係る放熱板の側面図である。
図19図19は本開示に係る放熱板を搭載した衛星の液浸冷却ネットワークシステムの一例を示す模式的構成図である。
図20図20図19における圧力容器(ネットワークグリッド)の概略的構成を示す斜視図である。
図21図21図19に例示した液浸冷却ネットワークシステムにおける軸流ポンプの概略的構成を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.実施形態
本発明の一実施形態による放熱板は、ハニカムコアが表面板とベース板とに挟まれた構成を有し、表面板がベース板に対して一つあるいは複数の凸部を有する。表面板が凸部を有することで、高い放熱効率および剛性を達成することができる。
【0010】
以下、図1図12を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている構成要素は単なる例示であって、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨ではない。
【0011】
まず、図1図6を参照して放熱板10の外観および内部構造について説明する。以下説明の便宜上、放熱板10の幅および奥行き方向をそれぞれXおよびY方向とし、放熱板10の高さ方向をZ方向とする。Z方向がハニカムコアのセルの高さ方向である。
【0012】
図1図2および図4図6に明示されるように、放熱板10は表面板101とベース板102とが取付部103Aおよび103Bで接合した矩形状を有する。表面板101はZ方向に凸部101cを有し、ベース板102はXY平面に広がる平板形状を有する。ここでは一例として四角錐台形状の凸部101cを示す。
【0013】
取付部103Aおよび103Bは放熱板10のX方向の両端に設けられ、それぞれに所定数のボルト穴104Aおよび104Bが等間隔に設けられている。また放熱板10のY方向の一方の側面にはパイプ継手105および106が側面から突出して固定されている。後述するように、パイプ継手105および106は熱輸送流体の流入口RIおよび流出口ROにそれぞれ対応する。
【0014】
図3および図4に示すように、表面板101とベース板102との間にある内部空間には熱輸送パイプ110がハニカムコア120に埋め込まれた状態で配置されている。熱輸送パイプ110の両端はパイプ継手105および106にそれぞれ連結されている。これによりパイプ継手105から流入した熱輸送流体は熱輸送パイプ110を通ってパイプ継手106から流出する。熱輸送流体が熱輸送パイプ110を流動することで熱輸送流体の熱がハニカムコア120を通して表面板101から排熱される。
【0015】
表面板101、ベース板102および熱輸送パイプ110はハニカムコア120により機械的に接続され一体化している。以下、表面板101およびベース板102を接続するハニカムコア120の構成例について説明する。
【0016】
<第1例>
図7図9は取付部のセル箔厚を厚くしたハニカムコア120の構成例を示す。図7および図8はそれぞれ図4におけるI―I線断面図およびII-II線断面図であり、図9図5におけるIII-III線断面図である。この第1例では、表面板101とベース板102とがハニカムコア120によりZ方向(セル高さ方向)に接続されている。したがって、取付部103Aおよび103Bではハニカムコアのセルの高さが低く、表面板101の凸部101cではセルの高さが徐々に高くなっている。たとえば、放熱板101の高さ(厚さ)は10~30mm程度で、熱輸送パイプ110の径は5mm程度である。
【0017】
さらに第1例によるハニカムコア120は、取付部103Aおよび103Bが凸部101cの箔薄ハニカムコア120Cよりセル箔厚が厚いハニカムコア120Aおよび120Bで形成されている。ただし、箔厚ハニカムコア120Aおよび120Bの箔厚は箔薄ハニカムコア120Cのそれとは相対的に厚く、それぞれの箔厚は要求される放熱板10の強度および重量を考慮して決定される。以下、主に取付部103Aおよび103Bのハニカムコアの構造について説明する。
【0018】
図8および図9に示すように、取付部103Aおよび103Bにおける各ボルト穴104Aおよび104Bは金属ブロック121Aに形成されている。取付部103Aおよび103Bにおける金属ブロック121Aおよび121Bの周囲は、厚い箔厚のハニカムコア120Aおよび120Bが形成されている。これによって取付部103Aおよび103Bの強度を向上させることができる。
【0019】
<第2例>
図10は、取付部103Aおよび103Bだけでなく熱輸送パイプ110の周囲のセル箔厚も厚くしたハニカムコア120の構成例を示す。図10図4におけるI―I線断面図である。この第2例によるハニカムコア120は、上述した第1例と同様に、凸部101cが箔薄ハニカムコア120Cにより形成され、取付部103Aおよび103Bがセル箔厚ハニカムコア120Aおよび120Bにより形成され、さらに熱輸送パイプ110の周囲が箔厚ハニカムコア120Dにより形成されている。
【0020】
箔厚ハニカムコア120Aおよび120Bにより取付部103Aおよび103Bの強度を向上させることができる。また、箔厚ハニカムコア120Dが熱輸送パイプ110を囲むことで、放熱板10全体の強度を向上させることができる。さらに熱輸送パイプ110の熱が箔厚ハニカムコア120Dを通して表面板101へ伝導するので放熱効率を更に向上させることができる。
【0021】
ただし、箔厚ハニカムコア120A、120Bおよび120Dの箔厚と箔薄ハニカムコア120Cの箔厚とは相対的に異なる寸法であり、要求される放熱板10の強度および重量を考慮して決定すればよい。
【0022】
<第3例>
図11図13は、コアサイズが場所によって異なるハニカムコア120の構成例を示す。図11図5におけるIII-III線断面図であり、図12図11におけるIV―IV線断面図であり、図13はセルサイズが異なる部分を模式的に示す拡大図である。第1例および第2例で説明したように、表面板101とベース板102とがハニカムコア120によりZ方向(セル高さ方向)に接続されている。したがって、取付部103Aおよび103Bではハニカムコアのセルの高さが低く、表面板101の凸部101cではセルの高さが徐々に高くなっている。
【0023】
第3例によるハニカムコア120は、取付部103Aおよび103Bと熱輸送パイプ110の周囲におけるセルサイズがその他の部分より小さい。言い換えれば、取付部103Aおよび103Bと熱輸送パイプ110の周囲は高密度ハニカムコア130A、130Bおよび130Cで形成され、その他は低密度ハニカムコア131で形成される。
【0024】
図11おおび図12に示すように、取付部103Aおよび103Bにおける各ボルト穴104Aおよび104Bは金属ブロック121Aに形成されている。金属ブロック121Aおよび121Bの周囲は高密度ハニカムコア130Aおよび130Bが形成されている。高密度ハニカムコア130Aおよび130Bはセルサイズが小さいので高い強度を有する。なお、図11では高密度ハニカムコアの部分が斜めクロスのハッチングで記載されているが、これはハニカムコアの密度の差異を図面上で明確にするためであり、あくまで便宜上の記載である。
【0025】
図13に示すように、高密度ハニカムコア130Cは熱輸送パイプ110を囲んでいる。これにより熱輸送パイプ110および放熱板10全体の強度を向上させることができる。さらに熱輸送パイプ110の熱が高密度ハニカムコア130Cを通して表面板101へ伝導するので放熱効率を更に向上させることができる。
【0026】
2.他の実施形態
上述した実施形態では、表面板101がベース板102に対して一つの凸部を有する例を示した。本発明はこれに限定されるものではなく表面板101が複数の凸部を有することもできる。表面板101が複数の凸部を有することで、さらに高い放熱効率および剛性を得ることができる。以下、複数の凸部を有する放熱板をいくつか例示する。ただし、上述した実施形態と同一の機能を有する部材には同一の参照番号を付して説明は省略する。
【0027】
図14および図15に例示するように、放熱板20の表面板201は2つの凸部201c1および201c2を有する。表面板201とベース板102とは、上述したようにハニカムコア120(図示せず。)により機械的に接続されている。またハニカムコア120には熱輸送パイプ210が埋め込まれている。ここでは、熱輸送パイプ210が2つの凸部201c1および201c2に対応した形状を有するものとする。言うまでもなく、上記実施形態における熱輸送パイプ110と同様の形状であってもよい。
【0028】
図15に示すように、表面板201に2つの凸部201c1および201c2が形成される場合には、互いに向かい合う凸部の面とベース板102との傾斜角度θは互いの面が相手側の面からの輻射をできるだけ避けるように設定されることが望ましい。少なくともθ<45°であることが望ましい。
【0029】
表面板の凸部の形状は、上記実施形態で例示した四角錐台に限定されるものではない。以下、凸部の形状をいくつか例示する。
【0030】
図16に例示するように表面板201は四角錐形状の凸部201d1および201d2を有してもよい。また図17に例示するように表面が湾曲したドーム形状の凸部201e1および201e2を有してもよい。
【0031】
さらに表面板201に3以上の凸部が形成されてもよい。図18に例示するように、3つの凸部201f1~201f3を有することもできる。あるいは、凸部が複数列段違いに配列されても良いし、ランダムに配列されてもよい。また図15図18の側面図であれば、2の倍数、3の倍数の個数の凸部が形成されてもよい。いずれにしても、表面板201の表面積が増大して放熱効率を向上させることができる。
【0032】
3.製造方法
上述した放熱板10あるいは20は3次元造形装置(以下、3Dプリンタという。)を用いて熱伝導性材料(たとえばアルミニウム等)を順次積層することにより形成可能である。3Dプリンタを用いることで、ハニカムコア120の諸元(セルサイズ、箔厚、コアの高さ、凸部の個数等)を自由に調整することができ上記放熱板10あるいは20を形成可能となる。また、放熱板を構成する表面板、ベース板およびハニカムコアを一体的に積層形成できるので、それぞれを貼り合わせる工程が不要となる。このために接着剤(エポキシ接着剤等)が不要となるために高温域で使用可能となる。さらに放熱板を高い精度で一体形成できるので、軽量で高い剛性を得ることができる。
【0033】
なお、垂直方向に重力がかかる環境で3Dプリンタを使用する場合、水平方向にある程度の長い部材をそのまま積層させることはできない。そこで放熱板10あるいは20の設計段階で、3Dプリンタによる各部分の積層が水平方向に対して45°以上の傾斜をもつように予め設計することが望ましい。
【0034】
たとえば図9において、3Dプリンタにより放熱板10をY方向に積層する場合、各部材がX方向に対して45°以上の傾斜となるように設計する。図9では、熱輸送パイプ110が45°以上の傾斜となるように配管ルートが決定されている。また金属ブロック121Aおよび121Bは各辺が45°以上の傾斜となるように配置される。第2例および図11に示す第3例でも同様である。
【0035】
4.適用例
上述した放熱板10あるいは20は、衛星のラジエータに適用することができる。以下適用例について説明する。
【0036】
図19に例示するように、宇宙機である衛星300には、宇宙空間に排熱するためのラジエータ301aおよび301bと、各種ミッション機器302aおよび302bとが搭載されているものとする。ラジエータ301aおよび301bの各々は上述した実施形態による放熱板10あるいは20が採用される。放熱板10あるいは20は、取付部103Aおよび103Bのボルト孔104Aおよび104Bを通して衛星300の本体取付部にボルトで固定される。
【0037】
また、衛星300内の主要なコンピュータ等の電子機器は液浸冷却用の圧力容器G1~G3内の冷媒(熱輸送流体)に浸漬されている。各圧力容器Giには冷媒入口ILと冷媒出口OLとが設けられている(iは1以上の任意の整数であるが、ここではi=1,2または3)。圧力容器G1~G3、ラジエータ301、制御バルブVL1およびVL2は、冷媒が流動する複数の可撓性パイプ303を通して熱輸送ネットワークを構成する。
【0038】
熱輸送ネットワークは各圧力容器で効率的に液浸冷却が実行されるように構成されていればよい。ラジエータ301で熱交換された冷媒が各圧力容器へ流入し、各圧力容器から流出した冷媒がラジエータ301へ戻るように構成される。特に制御バルブ(VL1およびVL2)は、冷却が必要な圧力容器へ必要な冷媒量が供給されるように制御される。
【0039】
図19において、制御バルブVL1はラジエータ301aの冷媒出口ROから流出した冷媒を圧力容器G1とG3の間で分配する。制御バルブVL1から圧力容器G1の冷媒入口ILへ流入した冷媒は、圧力容器G1の電子機器を液浸冷却し冷媒出口OLから制御バルブVL2へ流出する。制御バルブVL1から圧力容器G3の冷媒入口ILへ流入した冷媒は、圧力容器G3の電子機器を液浸冷却し冷媒出口OLからラジエータ301aの冷媒入口RIへ流入する。
【0040】
ラジエータ301bの冷媒出口ROから流出した冷媒は、圧力容器G2の冷媒入口ILへ流入し、圧力容器G2の電子機器を液浸冷却して冷媒出口OLから制御バルブVL2へ流出する。制御バルブVL2は圧力容器G1およびG2から流入した冷媒をラジエータ301bの冷媒入口RIへ流出させる。
【0041】
熱輸送ネットワークに冷媒を循環させるための強制流動生成器はラジエータ301の冷媒出口に接続された可撓性パイプ303に設けられる。ここでは強制流動生成器として軸流ポンプP1がラジエータ301aの冷媒出口ROと制御バルブVL1とを接続する可撓性パイプ303に設けられる。また軸流ポンプP2がラジエータ301bの冷媒出口ROと圧力容器G2の冷媒入口ILとを接続する可撓性パイプ303に設けられる。
【0042】
このようにラジエータ301aおよび301bに上述した実施形態による放熱板10あるいは20を採用することで、小型軽量で高い剛性と高い放熱効率を実現できる。
【0043】
ミッション機器302aと接続する電子機器(ミッションエッジ)が圧力容器G1に、ミッション機器302bと接続する電子機器(ミッションエッジ)が圧力容器G2に、衛星全体の制御を行う電子機器(OBC:On Board Computer)が圧力容器G3に、それぞれ内蔵されているものとする。各圧力容器の電子機器は衛星内ネットワークNETを通して他の圧力容器の電子機器あるいはミッション機器302a、302bと通信可能である。さらに後述するように、圧力容器G3のOBCは、衛星内ネットワークNETあるいは別のネットワークを通して制御バルブVL1、VL2を制御する。
【0044】
以下、圧力容器G1~G3の各々を「圧力容器G」と記し、圧力容器Gの構造について図20を参照しながら説明する。
【0045】
図20に例示するように、液浸冷却用の圧力容器Gは、密閉された円筒状の容器本体401からなり、容器本体401の底面に蓋402が固定され、圧力容器内部に冷媒403が密封される。蓋402には冷媒が容器内部へ流入する冷媒入口ILと外部へ流出する冷媒出口OLが設けられている。圧力容器Gの内部には蓋402に固定された支持部404が設けられ、支持部404に電子機器405が固定されている。したがって、冷媒は冷媒入口ILから流入し、電子機器405の上を流動して熱あるいは気泡を移動させ、冷媒出口OLから外部へ流出する。
【0046】
また蓋402には、衛星内ネットワークNETに接続するための端子406および407が設けられる。電子機器405は、端子406および407を通して他の圧力容器内の電子機器Gあるいはミッション機器と通信可能である。
【0047】
なお、冷媒403は電気絶縁性および熱伝導性を有する液体であって、特に中性子線を減速遮蔽するために水素原子を含むことが望ましい。このような冷媒403として、たとえば代替フロンやポリエステル等の液体を用いることができる。
【0048】
図21に例示するように、軸流ポンプPは可撓性パイプ303内に設けられる。軸流ポンプPはモータ311とモータ311の回転軸に取り付けられたファン312とからなる。ファン312を回転させることで可撓性パイプ303内に冷媒の流動313を生成する。モータ311の回転速度は、主要な制御を行う圧力容器に設けられた制御部により制御することが出来る。
【0049】
以上、実施の形態を参照して本開示を説明したが、本開示は上述の実施の形態に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。そして、各実施の形態は、適宜他の実施の形態と組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は宇宙機のラジエータに適用可能である。
【符号の説明】
【0051】
10、20 放熱板
101、201 表面板
101c 凸部
102 ベース板
103A、103B 取付部
104A、104B ボルト穴
105 パイプ継手
106 パイプ継手
110、210 熱輸送パイプ
120 ハニカムコア
120A、120B、120D 箔厚ハニカムコア
120C 箔薄ハニカムコア
121A、121B 金属ブロック
130A、130B、130C 高密度ハニカムコア
131 低密度ハニカムコア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21