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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178618
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】鋳型の熱間特性の評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/18 20060101AFI20241218BHJP
   G01N 3/08 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
G01N3/18
G01N3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096890
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078190
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 三千雄
(74)【代理人】
【識別番号】100115174
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 正博
(72)【発明者】
【氏名】鉄山
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA02
2G061AB03
2G061AC03
2G061BA04
2G061CA05
2G061CB02
2G061EA01
2G061EA02
2G061EB02
2G061EB05
2G061EC04
(57)【要約】
【課題】鋳型の熱間特性の優れた評価方法を提供し、また、熱間での圧縮強度を直接に測定することの出来る評価方法を提供し、更には、テストピースに対する測定バラツキを少なくして、熱間特性をより一層正確に評価することの出来る方法を提供する。
【解決手段】鋳型造型に使用される鋳物砂組成物にて形成されたテストピース10を熱間曝熱処理することにより、鋳物砂組成物からなる鋳型の熱間特性を評価するに際して、テストピース10として、高さ(h)と直径(d)との比(h/d)が1.2~1.8の範囲内にある、連続した外表面を有する円柱体を用いると共に、かかる円柱体の軸方向の両端部に耐熱シート6,8を配置してなる形態において、上下の耐熱性支持体にて挟持せしめて、所定の熱間曝熱処理が実施されるようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳型造型に使用される鋳物砂組成物にて形成されたテストピースを用いて、それを熱間曝熱処理することにより、かかる鋳物砂組成物からなる鋳型の熱間特性を評価するに際して、
前記テストピースとして、高さ(h)と直径(d)との比(h/d)が1.2~1.8の範囲内にある、連続した外表面を有する円柱体を用いると共に、かかる円柱体が、その軸方向の両端部に耐熱シートを配置してなる形態において、上下の耐熱性支持体にて挟持されて、所定の熱間曝熱処理が実施されるようにしたことを特徴とする鋳型の熱間特性の評価方法。
【請求項2】
前記テストピースに対して、熱間曝熱処理を実施する一方、かかるテストピースの軸方向に圧縮荷重を加えて、該圧縮荷重を、前記上下の耐熱性支持体のうちの上側の耐熱性支持体に連結したロードセルにて測定することにより、該テストピースが破断するときの熱間圧縮強度を求めることを特徴とする請求項1に記載の鋳型の熱間特性の評価方法。
【請求項3】
前記上下の耐熱性支持体のうちの上側の耐熱性支持体の上端部に取り付けた錘にて、前記テストピースに対して、その軸方向に定荷重を加えつつ、かかるテストピースを熱間曝熱処理する一方、かかる熱間曝熱処理にて上下方向に変位する前記上側の耐熱性支持体又は錘の位置を検知する変位計を用いて、該テストピースが破断するまでの時間と軸方向の長さ変化とを測定することを特徴とする請求項1に記載の鋳型の熱間特性の評価方法。
【請求項4】
前記テストピースの上端部と前記上側の耐熱性支持体の下端部との間に配置される前記耐熱シートが、ガラスウールからなる耐熱クッション材にて構成されていることを特徴とする請求項1に記載の鋳型の熱間特性の評価方法。
【請求項5】
前記テストピースの下端部と前記下側の耐熱性支持体の上端部との間に配置される前記耐熱シートが、セラミック糸の耐熱織布にて構成されると共に、該耐熱織布が、該テストピースの下端部に貼布されていることを特徴とする請求項1に記載の鋳型の熱間特性の評価方法。
【請求項6】
前記耐熱性支持体が、石英棒にて構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の鋳型の熱間特性の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳型の熱間特性の評価方法に係り、特に、熱間での圧縮強度の測定や、破断時間と変位との関係の測定を、有利に行うことの出来る手法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、鋳物砂組成物を用いて造型された鋳型に、所定の金属溶湯を注湯して、目的とする鋳物を製造する工程において、発生する鋳物欠陥等の問題の解消を図るべく、かかる鋳型の熱間強度や、なりより性の如き柔軟性を評価することが行われてきている。
【0003】
例えば、特開2009-300347号公報においては、従来より、その図8に示される如き構造の装置を用いて、熱間クリープ試験を実施し、熱間抗圧力やなりより性の評価が行われていることが、指摘されている。即ち、そこでは、押圧ロッドにてテストピースに一定の圧縮荷重が加えられる一方、かかる定荷重が加えられたテストピースが、600℃~1200℃の範囲内の温度に加熱された可動式電気炉の窒素ガス気流中若しくは大気雰囲気中に晒されることにより、熱間曝熱せしめられて、その評価が行われているのであり、また、そこで用いられるテストピースとしては、所定長さの円柱形状を呈するものが示されている(図10参照)。
【0004】
しかしながら、そのような従来の熱間クリープ試験手法では、テストピースの熱間強度が直接には測定することが出来ない問題があることに加えて、テストピースを曝熱処理した時に、テストピースに対し、その中心部に応力を集中させることが困難となるのであって、そのために、測定値が大きくバラツキ、測定結果に誤差が生じ、信頼性に欠ける等の問題を内在するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-300347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決すべき課題とするところは、鋳型の熱間特性の優れた評価方法を提供することにあり、また他の課題とするところは、熱間での圧縮強度を直接に測定することの出来る評価方法を提供することにあり、更には、テストピースに対する測定バラツキを少なくして、熱間特性をより一層正確に評価することの出来る方法を提供することにもある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして、本発明は、上述した課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものであるが、また、以下に記載の各態様は、任意の組み合せにおいて、採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載及び図面に開示の発明思想に基づいて認識され得るものであることが、理解されるべきである。
【0008】
そこで、本発明は、先ず、前記した課題を解決すべく、鋳型造型に使用される鋳物砂組成物にて形成されたテストピースを用いて、それを熱間曝熱処理することにより、かかる鋳物砂組成物からなる鋳型の熱間特性を評価するに際して、前記テストピースとして、高さ(h)と直径(d)との比(h/d)が1.2~1.8の範囲内にある、連続した外表面を有する円柱体を用いると共に、かかる円柱体が、その軸方向の両端部に耐熱シートを配置してなる形態において、上下の耐熱性支持体にて挟持されて、所定の熱間曝熱処理が実施されるようにしたことを特徴とする鋳型の熱間特性の評価方法を、その要旨とするものである。
【0009】
なお、かかる本発明に従う鋳型の熱間特性の評価方法の好ましい態様の一つによれば、前記テストピースに対して、熱間曝熱処理を実施する一方、かかるテストピースの軸方向に圧縮荷重を加えて、該圧縮荷重を、前記上下の耐熱性支持体のうちの上側の耐熱性支持体に連結したロードセルにて測定することにより、該テストピースが破断するときの熱間圧縮強度を求めることを特徴としている。
【0010】
また、本発明に従う鋳型の熱間特性の評価方法の好ましい態様の他の一つによれば、前記上下の耐熱性支持体のうちの上側の耐熱性支持体の上端部に取り付けた錘にて、前記テストピースに対して、その軸方向に定荷重を加えつつ、かかるテストピースを熱間曝熱処理する一方、かかる熱間曝熱処理にて上下方向に変位する前記上側の耐熱性支持体又は錘の位置を検知する変位計を用いて、該テストピースが破断するまでの時間と軸方向の長さ変化とを測定することを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明に従う評価方法の好ましい別の態様の一つによれ、前記テストピースの上端部と前記上側の耐熱性支持体の下端部との間に配置される前記耐熱シートが、ガラスウールからなる耐熱クッション材にて構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
更にまた、本発明に従う評価方法にあっては、好ましくは、前記テストピースの下端部と前記下側の耐熱性支持体の上端部との間に配置される前記耐熱シートが、セラミック糸の耐熱織布にて構成されると共に、該耐熱織布が、該テストピースの下端部に貼布されていることを特徴としている。
【0013】
加えて、本発明にあっては、前記耐熱性支持体は、石英棒にて構成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明に従う鋳型の熱間特性の評価方法によれば、高さ/直径の比が特定範囲内にある、連続した外表面を有する円柱体形状のテストピースを用いると共に、その軸方法の両端部に耐熱シートを配置して、上下の耐熱性支持体にて挟持せしめてなる形態において、所定の熱間曝熱処理を実施して、熱間特性を評価するようにしたものであるところから、曝熱処理に際して、テストピースの両端部が、効果的に保護されつつ、高温時の応力がテストピースの中央部位に効果的に集中せしめられ得ることとなるのであり、以て、測定結果のバラツキも効果的に抑制され得て、目的とする鋳型の熱間特性を、簡単に且つ高精度に、評価することが可能となったのである。
【0015】
また、テストピースを挟持する上側の耐熱性支持体に連結したロードセルにて、テストピースの軸方向に加えられる圧縮荷重が測定されるようにすることにより、かかるテストピースが破断するときの熱間圧縮強度を、直接的に且つ容易に測定することが可能となるのである。
【0016】
さらに、テストピースを挟持する上側の耐熱性支持体又は錘の位置を検知する変位計を用いて、かかる錘により定荷重が加えられたテストピースが熱間曝熱処理にて破断するまでの時間に対し、その軸方向の長さ変化を測定することにより、鋳型の柔軟性の如き熱間特性の評価も、有利に行うことが可能となったのである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に用いられるテストピースの形態を示す説明図であって、(a)は、テストピース単体の高さと直径について説明する斜視説明図であり、(b)は、テストピースの軸方向の両端部に耐熱シートを配置してなる形態を示す正面説明図である。
図2】本発明に従ってテストピースの熱間圧縮強度を測定するための装置の概略を示す説明図である。
図3】本発明に従ってテストピースの熱間変位量と破断時間を測定するための装置の概略を示す説明図である。
図4図2に示される装置を用いて測定された、曝熱処理時間に対する圧縮強度の関係を示すグラフである。
図5図3に示される装置を用いて得られた、曝熱処理時間に対するテストピースの長さ変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の構成を更に具体的に明らかにするために、本発明の代表的な実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0019】
先ず、図1には、本発明に従う評価方法において採用されるテストピース(試験片)の形態が概略的に示されている。そこにおいて、10は、鋳型造型に用いられる鋳物砂組成物にて形成されたテストピースであって、かかるテストピース10は、図面からも明らかなように、切り欠きやスリット等のない、従って連続した外表面を有する実円柱体、換言すれば、完全な円柱形状を呈するように、形成されている。
【0020】
なお、かくの如き形状のテストピース10を作製するに際しては、従来から公知の手法が適宜に採用され得るところであり、例えば、上述の如きテストピース10の形状に対応する成形キャビティを有する成形型を用い、かかる成形キャビティ内に評価対象となる鋳型造型に用いられる鋳物砂組成物を充填して、硬化せしめた後、その得られた硬化物を成形型から取り出すことにより、作製する手法等が採用されることとなる。また、そこで用いられる鋳物砂組成物にあっても、鋳型造型に用いられるものであれば、その種類が何等限定されるものではなく、フェノール樹脂の如き熱硬化性樹脂等からなる有機系粘結剤で被覆された砂(RCS)や、無機系粘結剤で被覆された砂が、何れも、その対象とされるものである。
【0021】
そして、本発明にあっては、かかるテストピース10として、図1(a)に示される如く、軸方向の長さである高さ(h)と、軸直角方向における大きさとなる直径(d)との比(h/d)において、その比(h/d)が1.2~1.8の範囲内にある円柱体が、用いられることとなる。これにより、曝熱処理(高温)時における負荷された応力(荷重)を、テストピース10の軸方向における中央部位に効果的に集中せしめることが出来ることとなるのであり、以て、測定値のバラツキを少なくして、測定精度を有利に高めることが可能となるのである。なお、かかる比率(h/d)の値が1.2よりも小さくなると、熱間圧縮強度の測定においても、また破断時間や最大変位量の測定においても、測定値のバラツキが大きくなる問題があり、一方、かかるh/dの値が1.8よりも大きくなると、曝熱処理によってテストピース10が全体的に崩れやすくなって、圧縮強度の測定が困難となったりする他、破断時間や最大変位量の測定においても、それらの測定バラツキが大きくなる等の問題を惹起することとなる。
【0022】
また、本発明にあっては、そのようなテストピース10におけるh/dの比率を1.2~1.8の範囲内とすると共に、テストピース10の軸方向の両端部には、それぞれ耐熱シートを配置して、上下の耐熱性支持体にて挟持せしめてなる形態において、所定の熱間曝熱処理が実施されるようにすることによって、本発明の目的が、より良く達成され得るようになっている。そして、そこで用いられる耐熱シートとしては、曝熱処理に堪え得る耐熱性を有する公知の各種の材料が用いられることとなるが、特に、本発明にあっては、図1(b)に示される如く、テストピース10の下端部には、セラミック糸からなる耐熱織布6が、0.15mm~0.30mm程度の厚さにおいて、耐熱シートとして配置されると共に、テストピース10の上端部には、ガラスウールからなる耐熱クッション材8が、1.00mm~1.80mm程度の厚さにおいて、耐熱シートして配置されることとなる。なお、それら耐熱織布6や耐熱クッション材8は、それぞれ、テストピース10の下面や上面に接着剤にて接着されて、保持され得るようになっている。
【0023】
このような耐熱織布6や耐熱クッション材8の如き耐熱シートを、テストピース10の軸方向両側にそれぞれ配置して、後述の如く、上下の耐熱性支持体にて挟持せしめることによって、曝熱処理時に、テストピース10の軸方向の両端部が高温の熱にて先に崩れて、テストピース10に応力(荷重)を有効に作用させ難くなるのを阻止し、以て、測定値のバラツキの抑制に効果的に寄与し得ることとなるのである。
【0024】
そして、かくの如きテストピース10を用いて、所定の熱間曝熱処理を実施することにより、鋳型の熱間特性の評価を行うための装置の一例が、図2に示されている。即ち、かかる図2では、テストピース10に対して、例えば600℃~1200℃程度の温度での熱間曝熱処理を実施する一方、かかるテストピース10の軸方向に圧縮荷重を加えて、テストピース10が破断するときの熱間圧縮強度を求めることが出来るようになっているのである。
【0025】
具体的には、図2において、12は、位置固定に保持される上台座であり、14は、上下方向に移動可能とされた下台座であり、16は、筒状形状を呈する上下方向に移動可能な電気炉である。そして、下台座14上には、耐熱性支持体である、所定長さの円柱体形状の下側石英棒18が立設されている一方、上台座12の下側には、圧縮強度を測定するためのロードセル20が取り付けられており、このロードセル20の下側に、移動自由な取付け台座22を介して、耐熱性支持体である、所定長さの円柱体形状の上側石英棒24が、垂下した形態において、取り付けられている。
【0026】
そして、かかる装置構成において、下側石英棒18の上面に、図1(b)に示される如き構成のテストピース10が、耐熱織布6を介して載置された後、下台座14が上方に移動させられることによって、テストピース10の上端が、耐熱クッション材8を介して、上側石英棒24の下面に当接せしめられることとなるのであり、これにより、かかるテストピース10を、それら下側石英棒18と上側石英棒24との間において挟持せしめてなる状態となる。更に、その状態において、電気炉16が上方に移動せしめられて、かかる電気炉16内にテストピース10が位置せしめられることにより、曝熱処理が実施される一方、下台座14の上方への移動により、テストピース10に圧縮荷重を加えて、そのときの圧力が、上側石英棒24及び取付け台座22を介して、ロードセル20にて測定されて、目的とする熱間圧縮強度が、求められることとなるのである。
【0027】
また、図3には、テストピース10に対して、その軸方向に、錘26により定荷重を加えつつ、かかるテストピース10を熱間曝熱処理をして、かかるテストピース10が破断するまでの時間とその軸方向の長さ変化とを測定するための装置構成が、示されている。そこにおいて、移動自由な取付け台座22上には、上側石英棒24を介して、テストピース10に所定の定荷重(例えば、2.5kg)を加えるための錘26が、載置されており、更にこの錘26に対して、その上下方向の位置(変位)を検知する変位計である、デジマチックインジケータ28が、そのプローブを当接してなる形態において、位置固定に配置せしめられて、定荷重下において、熱間曝熱処理時間の経過により変化する、テストピース10の軸方向長さを、測定し得るようになっている。
【0028】
すなわち、かかる図3に示される装置構成において、テストピース10の熱間変位量と破断時間の測定を行うに際しては、下台座14を上方に移動させて、下側石英棒18上に載置したテストピース10を上側石英棒24の下端面に密着せしめ、耐熱織布6及び耐熱クッション材8を介して、それら下側石英棒18と上側石英棒24との間に挟持させてなる形態において、電気炉16を上昇せしめて、錘26による定荷重の負荷の下、かかるテストピース10の曝熱処理(例えば、600℃~1200℃の温度において)を実施して、それに基づくところのテストピース10の軸方向の熱間変位量、換言すれば軸方向長さのマイナス変化を、デジマチックインジケータ28にて、テストピース10が破断するまで測定することにより、熱間変位量と破断時間の関係が求められることとなるのである。
【0029】
そして、そのような図2図3に示される如き構成の装置を用いて測定された結果が、それぞれ、図4及び図5に示されている。即ち、図4には、曝熱処理の経過時間(秒)と圧縮強度との関係が示されており、その圧縮強度のピーク値が、テストピース10が破断するときの熱間圧縮強度と認識されるものである。なお、かかる熱間圧縮強度の測定においては、テストピース10を挟持させてなる状態において、25秒間保持した後、下台座14を更に上昇せしめることにより、テストピース10に対して、圧縮荷重が作用せしめられている。また、図5には、曝熱処理の経過時間(秒)と、テストピース10の軸方向長さのマイナス変化、即ちマイナス変位量(mm)との関係が示されており、曝熱時間の経過に従い、テストピース10のマイナス変位量が漸次大きくなり、そのマイナス変位量の最大値の点が、テストピース10の破断点として、認識され得るものである。
【0030】
このようにして、テストピース10の熱間圧縮強度や曝熱処理時間に対する熱間変位量を測定して、鋳型の熱間特性を評価することにより、熱間での圧縮強度が直接的に測定することが出来ることとなることは勿論、テストピース10の両端が高温で曝熱されても、テストピース10の両端と上側・下側石英棒24,18との間には、それぞれ耐熱シート(8,6)を介在せしめてなる形態において、当接/密着させられるようになっていることに加えて、テストピース10の高さと直径との比率(h/d)が1.2~1.8となるサイズにおいて構成されていることにより、高温時の応力がテストピース10の軸方向の中央部に効果的に集中せしめることが可能となるのであり、これによって、テストピース10毎の測定のバラツキを、有利に少なく為し得て、測定精度を効果的に高め得ることとなったのである。
【0031】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、それは、あくまでも、例示に過ぎないものであって、本発明は、上記の如き記載によって、何等の制約をも受けるものでないことが、理解されるべきである。
【0032】
例えば、図3に示される装置構成においては、テストピース10の曝熱処理による軸方向の長さ変化を測定するために、上側石英棒24及び取付け台座22を介して、錘26の上下方向の変化を、かかる錘26に対してデジマチックインジケーター28のプローブを接触させることにより、その変位量を検出し得るようになっているが、上側石英棒24の上下方向の変位を、所定の変位計にて、直接的に測定したり、或いは上側石英棒24と共に、上下方向に変位する取付け台座22の変位量を測定することにより、上側石英棒24の変位量を間接的に測定するようにすることも可能である。
【0033】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、何れも、本発明の範疇に属するものであることは、言うまでもないところである。
【実施例0034】
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、本発明の特徴を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、また、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことが、理解されるべきである。なお、以下の実施例中、「部」及び「百分率」は、何れも、質量基準にて示されるものである。
【0035】
-ノボラック型フェノール樹脂の製造-
温度計、撹拌装置及びコンデンサーを備えた反応容器に、フェノールの940部、47%ホルマリンの428部、及びシュウ酸の2.8部をそれぞれ投入した。次いで、反応容器を徐々に昇温して、還流温度に到達せしめた後、90分間還流して反応させ、更に、反応液温度が170℃になるまで、加熱しつつ減圧濃縮することにより、ノボラック型フェノール樹脂の850部を得た。
【0036】
-鋳物砂組成物の製造-
(1)RCS1の製造
150℃に加熱した再生珪砂(SiO2 含有量:88%)の7000部に、上記ノボラック型フェノール樹脂の140部を加えて、スピードミキサで50秒間混練した後、ヘキサメチレンテトラミンの21部を水105部に溶解してなる溶液を添加して、砂が個々の粒子に分離するようになるまで混練し、更にステアリン酸カルシウムの7部を添加して、15秒間混合した後、ミキサから取り出すことにより、鋳物砂組成物である樹脂被覆砂としてのRCS1を得た。
(2)RCS2の製造
150℃に加熱した新砂(オーストラリア産天然硅砂、商品名:フラタリーサンド)の3500部と再生珪砂(SiO2 含有量:88%)の3500部に、上記ノボラック型フェノール樹脂の140部を加えて、スピードミキサで50秒間混練した後、ヘキサメチレンテトラミン21部を水105部に溶解してなる溶液を添加して、砂が個々の粒子に分離するようになるまで混練し、更にステアリン酸カルシウムの7部を添加して、15秒間混合した後、ミキサから取り出すことにより、鋳物砂組成物であるRCS2を得た。
(3)RCS3の製造
150℃に加熱した新砂(オーストラリア産天然硅砂、商品名:フラタリーサンド)の7000部に、上記ノボラック型フェノール樹脂の140部を加えて、スピードミキサで50秒間混練した後、ヘキサメチレンテトラミンの21部を水105部に溶解してなる溶液を添加して、砂が個々の粒子に分離するようになるまで混練し、更にステアリン酸カルシウムの7部を添加して、15秒間混合した後、ミキサから取り出すことにより、目的とする樹脂被覆砂たるRCS3を得た。
【0037】
-テストピース(10)の作製-
型割面に、直径×高さのサイズが16mm×20mm、12mm×20mm、10mm×20mm、又は20mm×20mmである成形キャビティの6個が、直列に形成されてなる、半割可能な金型を準備した。次いで、この金型を用いて、それぞれの金型に、上記で得られたRCS1、RCS2又はRCS3を、室温で振動させながら充填せしめ、そして金型表面に溢れて盛り上がった各RCSをヘラで擦り切った後、予め260℃に加熱調整された電気炉に、6分間静置した。そして、その6分間が経過した後に、金型を電気炉の外に取り出し、型開きすることにより、形成されたテストピース(10)を脱型し、その後、室温まで冷却して、以下の試験に供した。なお、各RCSについてのテストピース(10)は、それぞれ、12個準備して、TP1~TP12の番号を付して、各測定に用いた。
【0038】
-熱間圧縮強度の測定-
上記で作製された各種のテストピース(10)の各12個を用いて、図2に示される装置構成において、空気雰囲気中、1000℃×25秒の曝熱処理を実施した後の熱間圧縮強度(MPa)を求め、12個のテストピース(10)の熱間圧縮強度の測定バラツキを評価した。
【0039】
-最大変位量・破断時間の測定-
各種RCSを用いて作製された各種テストピース(10)の各12個について、図3に示される装置構成にて、空気雰囲気中において、1000℃×2.5kgf(錘26の質量)の定荷重曝熱処理を実施して、各12個のテストピース(10)における最大変位量(mm)及び破断時間(秒)の測定値のバラツキを評価した。
【0040】
-測定結果-
上記の熱間圧縮強度の評価結果を、下記表1に示し、また上記の最大変位量及び破断時間の測定結果を、それぞれ、下記表2及び表3に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
-測定結果の検討-
上記表1に示される、各種テストピース(10)の12個についての、1000℃×25秒曝熱処理後の熱間圧縮強度の測定値の対比から明らかな如く、本発明に従って、テストピース(10)の軸方向の両端部に耐熱シート(6,8)を配置すると共に、h/dが本発明の範囲内にあるテストピース(10)を用いることによって、実験例1~4に示される如く、熱間圧縮強度値のバラツキが小さい、従って標準偏差の小さな測定値が得られていることが認められる。
【0045】
これに対して、テストピース(10)の両端部に、耐熱シート6,8を配置しない比較例1や、h/dの比率が、本発明で規定する範囲未満となる比較例3においては、標準偏差が大きく、従って、測定値のバラツキが大きいことが認められる。なお、比較例2においては、h/dの比率が、本発明の規定範囲よりも大きなテストピース(10)を用いた場合の結果を示しているが、そこでは、テストピース(10)が脆く、曝熱処理によって、テストピース(10)が崩壊して、熱間圧縮強度を測定することが出来ない場合があり、またその測定値も、極端に低くなって、正常な熱間圧縮強度値を得ることが困難であることが認められる。
【0046】
また、図3に示される装置構成において、同時に測定された最大変位量及び破断時間の結果を示す表2及び表3から明らかな如く、本発明に従って、テストピース(10)の軸方向両端部に、耐熱シート(6,8)を配置すると共に、テストピース(10)のh/dの比率が本発明の範囲内である実験例5,6,7及び8においては、12個のテストピース(10)についての最大変位量(mm)も、更に破断時間(秒)にあっても、それらの標準偏差は小さく、従って、バラツキの少ない測定値が得られていることを認めることが出来る。
【0047】
これに対して、比較例4,5及び6において示される12個のテストピース(10)についての最大変位量(mm)や破断時間(秒)についての測定結果においては、標準偏差が著しく大きくなり、従って測定値のバラツキが大きくなり、そのために正確な測定値を得がたいことを認めることが出来る。
【符号の説明】
【0048】
6 耐熱織布
8 耐熱クッション材
10 テストピース
12 上台座
14 下台座
16 電気炉
18 下側石英棒
20 ロードセル
22 取付け台座
24 上側石英棒
26 錘
28 デジマチックインジケータ
図1
図2
図3
図4
図5