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特開2024-178619リチウムイオン電池用被覆電極活物質粒子、リチウムイオン電池用電極及びリチウムイオン電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178619
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用被覆電極活物質粒子、リチウムイオン電池用電極及びリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20241218BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20241218BHJP
   C08L 49/00 20060101ALI20241218BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20241218BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20241218BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20241218BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20241218BHJP
【FI】
H01M4/525
C08L101/00
C08L49/00
H01M4/36 C
H01M4/62 Z
H01M4/13
H01M4/587
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096893
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519100310
【氏名又は名称】APB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】中村 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】磯村 省吾
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
【テーマコード(参考)】
4J002
5H050
【Fターム(参考)】
4J002BF011
4J002BG021
4J002BM002
4J002GQ02
5H050AA07
5H050AA12
5H050AA14
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA05
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CA22
5H050CA25
5H050CA26
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA10
5H050FA17
5H050FA18
5H050HA01
(57)【要約】
【課題】内部抵抗値の上昇を抑制することができ、容量維持率に優れるリチウムイオン電池用電極及びリチウムイオン電池を得ることができるリチウムイオン電池用被覆電極活物質粒子を提供する。
【解決手段】リチウムイオン電池用電極活物質粒子が有する表面の少なくとも一部を高分子化合物と導電性フィラーと有機溶媒とを含む被覆層で被覆してなるリチウムイオン電池用被覆電極活物質粒子であって、上記被覆層に含まれる有機溶媒の重量割合が、上記リチウムイオン電池用被覆電極活物質粒子の重量を基準として10~1000ppmであるリチウムイオン電池用被覆電極活物質粒子。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン電池用電極活物質粒子が有する表面の少なくとも一部を高分子化合物と導電性フィラーと有機溶媒とを含む被覆層で被覆してなるリチウムイオン電池用被覆電極活物質粒子であって、
前記被覆層に含まれる有機溶媒の重量割合が、前記リチウムイオン電池用被覆電極活物質粒子の重量を基準として10~1000ppmであるリチウムイオン電池用被覆電極活物質粒子。
【請求項2】
前記有機溶媒が、アセトン、トルエン、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、N,N-ジメチルホルムアミド及びN-メチル-2-ピロリドンからなる群から選ばれる1種以上である請求項1に記載のリチウムイオン電池用被覆電極活物質粒子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のリチウムイオン電池用被覆電極活物質粒子と導電助剤とを含む非結着体からなるリチウムイオン電池用電極。
【請求項4】
請求項3に記載のリチウムイオン電池用電極を備えるリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池用被覆電極活物質粒子、リチウムイオン電池用電極及びリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、高エネルギー密度、高出力密度が達成できる二次電池として、近年様々な用途に多用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、炭素数1~12の1価の脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物及びアニオン性単量体を含んでなる単量体組成物の重合体であり、酸価が30~700である重合体を含んでなる非水系二次電池活物質被覆用樹脂組成物、及び、上記活物質被覆用樹脂組成物を含んでなる被覆層を活物質の表面の少なくとも一部に有する非水系二次電池用被覆活物質が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-160294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された活物質被覆用樹脂組成物は、これをリチウムイオン電池用電極又はリチウムイオン電池に用いた場合に電極強度(特に電極柔軟性)、サイクル特性(内部抵抗値の上昇)及びレート特性(容量維持率)の観点から、改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、十分な電極柔軟性を持ち、内部抵抗値の上昇を抑制することができ、容量維持率に優れるリチウムイオン電池用電極及びリチウムイオン電池を得ることができるリチウムイオン電池用被覆電極活物質粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。
本発明は、リチウムイオン電池用電極活物質粒子が有する表面の少なくとも一部を高分子化合物と導電性フィラーと有機溶媒とを含む被覆層で被覆してなるリチウムイオン電池用被覆電極活物質粒子であって、上記被覆層に含まれる有機溶媒の重量割合が、上記リチウムイオン電池用被覆電極活物質粒子の重量を基準として10~1000ppmであるリチウムイオン電池用被覆電極活物質粒子;上記リチウムイオン電池用被覆電極活物質粒子と導電助剤とを含む非結着体からなるリチウムイオン電池用電極;上記リチウムイオン電池用電極を備えるリチウムイオン電池である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、十分な電極柔軟性を持ち、内部抵抗値の上昇を抑制することができ、容量維持率に優れるリチウムイオン電池用電極及びリチウムイオン電池を得ることができるリチウムイオン電池用被覆電極活物質粒子を提供することができる。
【0009】
<リチウムイオン電池用被覆電極活物質粒子>
本発明は、リチウムイオン電池用電極活物質粒子が有する表面の少なくとも一部を高分子化合物と導電性フィラーと有機溶媒とを含む被覆層で被覆してなるリチウムイオン電池用被覆電極活物質粒子であって、上記被覆層に含まれる有機溶媒の重量割合が、上記リチウムイオン電池用被覆電極活物質粒子の重量を基準として10~1000ppmであるリチウムイオン電池用被覆電極活物質粒子に関する。
なお、本明細書において、リチウムイオン電池と記載する場合、リチウムイオン二次電池も含む概念とする。
【0010】
本発明のリチウムイオン電池用被覆電極活物質粒子を用いたリチウムイオン電池用電極(単に電極ともいう)や、リチウムイオン電池では、リチウムイオン電池用被覆電極活物質粒子の被覆層中に所定量存在する有機溶媒が、リチウムイオン電池用被覆電極活物質粒子表面の粘着力を向上させ、また、初回充電の際に電極活物質粒子近傍で電解重合を起こし絶縁被膜を作り、この被膜が電解液の分解を抑制することにより、電極の柔軟性を向上させ、かつ内部抵抗値の上昇を抑制し、容量維持率が向上すると考えられる。
【0011】
(リチウムイオン電池用電極活物質粒子)
本発明のリチウムイオン電池用被覆電極活物質粒子(単に被覆電極活物質粒子ともいう)は、リチウムイオン電池用電極活物質粒子が有する表面の少なくとも一部を高分子化合物と導電性フィラーと有機溶媒とを含む被覆層で被覆してなる。
まずはリチウムイオン電池用電極活物質粒子(単に電極活物質粒子ともいう)について詳述する。
【0012】
電極活物質粒子としては、リチウムイオン電池用正極活物質粒子(単に正極活物質粒子ともいう)であっても、リチウムイオン電池用負極活物質粒子(単に負極活物質粒子ともいう)であってもよい。
【0013】
正極活物質粒子としては、リチウムと遷移金属との複合酸化物{遷移金属元素が1種である複合酸化物(LiCoO、LiNiO、LiAlMnO、LiMnO及びLiMn等)、遷移金属元素が2種である複合酸化物(例えばLiFeMnO、LiNi1-xCo、LiMn1-yCo、LiNi1/3Co1/3Al1/3及びLiNi0.8Co0.15Al0.05)及び遷移金属元素が3種類以上である複合酸化物[例えばLiMM’M’’(M、M’及びM’’はそれぞれ異なる遷移金属元素であり、a+b+c=1を満たす。例えばLiNi1/3Mn1/3Co1/3)等]等}、リチウム含有遷移金属リン酸塩(例えばLiFePO、LiCoPO、LiMnPO及びLiNiPO)、遷移金属酸化物(例えばMnO及びV)、遷移金属硫化物(例えばMoS及びTiS)及び導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン及びポリ-p-フェニレン及びポリビニルカルバゾール)等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
なお、リチウム含有遷移金属リン酸塩は、遷移金属サイトの一部を他の遷移金属で置換したものであってもよい。
【0014】
正極活物質粒子は、電池の電気特性の観点から、体積平均粒子径が0.01~100μmであることが好ましく、0.1~35μmであることがより好ましく、2~30μmであることが更に好ましい。
本明細書において体積平均粒子径は、マイクロトラック法(レーザー回折・散乱法)によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径(Dv50)を意味する。マイクロトラック法とは、レーザー光を粒子に照射することによって得られる散乱光を利用して粒度分布を求める方法である。なお、体積平均粒子径の測定には、日機装(株)製のマイクロトラック等を用いることができる。
【0015】
負極活物質粒子としては、炭素系材料[黒鉛(グラファイト)、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、アモルファス炭素、樹脂焼成体(例えばフェノール樹脂及びフラン樹脂等を焼成し炭素化したもの等)、コークス類(例えばピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークス等)及び炭素繊維等]、珪素系材料[珪素、酸化珪素(SiO)、珪素-炭素複合体(炭素粒子の表面を珪素及び/又は炭化珪素で被覆したもの、珪素粒子又は酸化珪素粒子の表面を炭素及び/又は炭化珪素で被覆したもの並びに炭化珪素等)及び珪素合金(珪素-アルミニウム合金、珪素-リチウム合金、珪素-ニッケル合金、珪素-鉄合金、珪素-チタン合金、珪素-マンガン合金、珪素-銅合金及び珪素-スズ合金等)等]、導電性高分子(例えばポリアセチレン及びポリピロール等)、金属(スズ、アルミニウム、ジルコニウム及びチタン等)、金属酸化物(チタン酸化物及びリチウム・チタン酸化物等)及び金属合金(例えばリチウム-スズ合金、リチウム-アルミニウム合金及びリチウム-アルミニウム-マンガン合金等)等及びこれらと炭素系材料との混合物等が挙げられる。
【0016】
負極活物質粒子は、電気容量を増加させる観点から、難黒鉛化性炭素、又は、難黒鉛化性炭素と珪素系材料との混合物であることが好ましい。
【0017】
負極活物質粒子は、電池の電気特性の観点から、体積平均粒子径が0.01~100μmであることが好ましく、0.1~60μmであることがより好ましく、2~40μmであることが更に好ましい。
【0018】
電極活物質粒子の重量割合は、被覆電極活物質粒子の重量を基準として75~90重量%であることが好ましく、78.0~80.0重量%であることがより好ましい。
【0019】
(高分子化合物)
被覆層は、高分子化合物と導電性フィラーと有機溶媒とを含む。
被覆層は、1層構成であってもよいが、電極活物質粒子の表面の少なくとも一部を被覆する第一被覆層と、上記第一被覆層の表面の少なくとも一部を被覆する第二被覆層とによる2層構成であってもよい。
被覆層が1層構成であっても、2層構成であっても後述する高分子化合物、導電性フィラーで記載した材料を適宜選択して用いることができる。
以下、高分子化合物について詳述する。
【0020】
高分子化合物としては、例えば、アクリルモノマー(a)を必須構成単量体とする重合体を含む樹脂であることが好ましい。
具体的には、被覆層を構成する高分子化合物は、アクリルモノマー(a)として、アクリル酸(a0)を含む単量体組成物の重合体であることが好ましい。上記単量体組成物において、アクリル酸(a0)の含有量は、単量体全体の重量を基準として90重量%を超え、98重量%以下であることが好ましい。被覆層の柔軟性の観点から、アクリル酸(a0)の含有量は、単量体全体の重量を基準として93.0~97.5重量%であることがより好ましく、95.0~97.0重量%であることが更に好ましい。
【0021】
被覆層を構成する高分子化合物は、アクリルモノマー(a)として、アクリル酸(a0)以外のカルボキシル基又は酸無水物基を有するモノマー(a1)を含有してもよい。
【0022】
アクリル酸(a0)以外のカルボキシル基又は酸無水物基を有するモノマー(a1)としては、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸等の炭素数3~15のモノカルボン酸;(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸等の炭素数4~24のジカルボン酸;アコニット酸等の炭素数6~24の3価~4価又はそれ以上の価数のポリカルボン酸等が挙げられる。
【0023】
被覆層を構成する高分子化合物は、アクリルモノマー(a)として、下記一般式(1)で表されるモノマー(a2)を含有してもよい。
CH=C(R)COOR (1)
[式(1)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは炭素数4~12の直鎖又は炭素数3~36の分岐アルキル基である。]
【0024】
上記一般式(1)で表されるモノマー(a2)において、Rは水素原子又はメチル基を表す。Rはメチル基であることが好ましい。
は、炭素数4~12の直鎖若しくは分岐アルキル基、又は、炭素数13~36の分岐アルキル基であることが好ましい。
【0025】
(a21)Rが炭素数4~12の直鎖又は分岐アルキル基であるエステル化合物
炭素数4~12の直鎖アルキル基としては、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基が挙げられる。
炭素数4~12の分岐アルキル基としては、1-メチルプロピル基(sec-ブチル基)、2-メチルプロピル基、1,1-ジメチルエチル基(tert-ブチル基)、1-メチルブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基(ネオペンチル基)、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-メチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、1-エチルペンチル基、2-エチルペンチル基、3-エチルペンチル基、1,1-ジメチルペンチル基、1,2-ジメチルペンチル基、1,3-ジメチルペンチル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、1-メチルヘプチル基、2-メチルヘプチル基、3-メチルヘプチル基、4-メチルヘプチル基、5-メチルヘプチル基、6-メチルヘプチル基、1,1-ジメチルヘキシル基、1,2-ジメチルヘキシル基、1,3-ジメチルヘキシル基、1,4-ジメチルヘキシル基、1,5-ジメチルヘキシル基、1-エチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、1-メチルオクチル基、2-メチルオクチル基、3-メチルオクチル基、4-メチルオクチル基、5-メチルオクチル基、6-メチルオクチル基、7-メチルオクチル基、1,1-ジメチルヘプチル基、1,2-ジメチルヘプチル基、1,3-ジメチルヘプチル基、1,4-ジメチルヘプチル基、1,5-ジメチルヘプチル基、1,6-ジメチルヘプチル基、1-エチルヘプチル基、2-エチルヘプチル基、1-メチルノニル基、2-メチルノニル基、3-メチルノニル基、4-メチルノニル基、5-メチルノニル基、6-メチルノニル基、7-メチルノニル基、8-メチルノニル基、1,1-ジメチルオクチル基、1,2-ジメチルオクチル基、1,3-ジメチルオクチル基、1,4-ジメチルオクチル基、1,5-ジメチルオクチル基、1,6-ジメチルオクチル基、1,7-ジメチルオクチル基、1-エチルオクチル基、2-エチルオクチル基、1-メチルデシル基、2-メチルデシル基、3-メチルデシル基、4-メチルデシル基、5-メチルデシル基、6-メチルデシル基、7-メチルデシル基、8-メチルデシル基、9-メチルデシル基、1,1-ジメチルノニル基、1,2-ジメチルノニル基、1,3-ジメチルノニル基、1,4-ジメチルノニル基、1,5-ジメチルノニル基、1,6-ジメチルノニル基、1,7-ジメチルノニル基、1,8-ジメチルノニル基、1-エチルノニル基、2-エチルノニル基、1-メチルウンデシル基、2-メチルウンデシル基、3-メチルウンデシル基、4-メチルウンデシル基、5-メチルウンデシル基、6-メチルウンデシル基、7-メチルウンデシル基、8-メチルウンデシル基、9-メチルウンデシル基、10-メチルウンデシル基、1,1-ジメチルデシル基、1,2-ジメチルデシル基、1,3-ジメチルデシル基、1,4-ジメチルデシル基、1,5-ジメチルデシル基、1,6-ジメチルデシル基、1,7-ジメチルデシル基、1,8-ジメチルデシル基、1,9-ジメチルデシル基、1-エチルデシル基、2-エチルデシル基等が挙げられる。これらの中では、特に、2-エチルヘキシル基が好ましい。
【0026】
(a22)Rが炭素数13~36の分岐アルキル基であるエステル化合物
炭素数13~36の分岐アルキル基としては、1-アルキルアルキル基[1-メチルドデシル基、1-ブチルエイコシル基、1-ヘキシルオクタデシル基、1-オクチルヘキサデシル基、1-デシルテトラデシル基、1-ウンデシルトリデシル基等]、2-アルキルアルキル基[2-メチルドデシル基、2-ヘキシルオクタデシル基、2-オクチルヘキサデシル基、2-デシルテトラデシル基、2-ウンデシルトリデシル基、2-ドデシルヘキサデシル基、2-トリデシルペンタデシル基、2-デシルオクタデシル基、2-テトラデシルオクタデシル基、2-ヘキサデシルオクタデシル基、2-テトラデシルエイコシル基、2-ヘキサデシルエイコシル基等]、3~34-アルキルアルキル基(3-アルキルアルキル基、4-アルキルアルキル基、5-アルキルアルキル基、32-アルキルアルキル基、33-アルキルアルキル基及び34-アルキルアルキル基等)、並びに、プロピレンオリゴマー(7~11量体)、エチレン/プロピレン(モル比16/1~1/11)オリゴマー、イソブチレンオリゴマー(7~8量体)及びα-オレフィン(炭素数5~10)オリゴマー(4~8量体)等から得られるオキソアルコールから水酸基を除いた残基のような1又はそれ以上の分岐アルキル基を含有する混合アルキル基等が挙げられる。
【0027】
被覆層を構成する高分子化合物は、アクリルモノマー(a)として、炭素数1~3の1価の脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物(a3)を含有してもよい。
エステル化合物(a3)を構成する炭素数1~3の1価の脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、1-プロパノール及び2-プロパノール等が挙げられる。
なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0028】
被覆層を構成する高分子化合物は、アクリル酸(a0)と、モノマー(a1)、モノマー(a2)及びエステル化合物(a3)のうちの少なくとも1つとを含む単量体組成物の重合体であることが好ましく、アクリル酸(a0)と、モノマー(a1)、エステル化合物(a21)及びエステル化合物(a3)のうちの少なくとも1つとを含む単量体組成物の重合体であることがより好ましく、アクリル酸(a0)と、モノマー(a1)、モノマー(a2)及びエステル化合物(a3)のうちの何れか1つとを含む単量体組成物の重合体であることが更に好ましく、アクリル酸(a0)と、モノマー(a1)、エステル化合物(a21)及びエステル化合物(a3)のうちの何れか1つとを含む単量体組成物の重合体であることが最も好ましい。
被覆層を構成する高分子化合物としては、例えば、モノマー(a1)としてマレイン酸を用いた、アクリル酸及びマレイン酸の共重合体、モノマー(a2)としてメタクリル酸2-エチルヘキシルを用いた、アクリル酸及びメタクリル酸2-エチルヘキシルの共重合体、エステル化合物(a3)としてメタクリル酸メチルを用いた、アクリル酸及びメタクリル酸メチルの共重合体等が挙げられる。
【0029】
モノマー(a1)、モノマー(a2)及びエステル化合物(a3)の合計含有量は、電極活物質粒子の体積変化抑制等の観点から、単量体全体の重量を基準として2.0~9.9重量%であることが好ましく、2.5~7.0重量%であることがより好ましい。
【0030】
被覆層を構成する高分子化合物は、アクリルモノマー(a)として、重合性不飽和二重結合とアニオン性基とを有するアニオン性単量体の塩(a4)を含有しないことが好ましい。
【0031】
重合性不飽和二重結合を有する構造としてはビニル基、アリル基、スチレニル基及び(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。
アニオン性基としては、スルホン酸基及びカルボキシル基等が挙げられる。
重合性不飽和二重結合とアニオン性基とを有するアニオン性単量体はこれらの組み合わせにより得られる化合物であり、例えばビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸及び(メタ)アクリル酸が挙げられる。
なお、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基又はメタクリロイル基を意味する。
アニオン性単量体の塩(a4)を構成するカチオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン及びアンモニウムイオン等が挙げられる。
【0032】
また、被覆層を構成する高分子化合物は、物性を損なわない範囲で、アクリルモノマー(a)として、アクリル酸(a0)、モノマー(a1)、モノマー(a2)及びエステル化合物(a3)と共重合可能であるラジカル重合性モノマー(a5)を含有してもよい。
ラジカル重合性モノマー(a5)としては、活性水素を含有しないモノマーが好ましく、下記(a51)~(a58)のモノマーを用いることができる。
【0033】
(a51)炭素数13~20の直鎖脂肪族モノオール、炭素数5~20の脂環式モノオール及び炭素数7~20の芳香脂肪族モノオールのうち少なくとも1つのモノオールと(メタ)アクリル酸から形成されるハイドロカルビル(メタ)アクリレート
上記モノオールとしては、(i)直鎖脂肪族モノオール(トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、ノナデシルアルコール、アラキジルアルコール等)、(ii)脂環式モノオール(シクロペンチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、シクロヘプチルアルコール、シクロオクチルアルコール等)、(iii)芳香脂肪族モノオール(ベンジルアルコール等)及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0034】
(a52)ポリ(n=2~30)オキシアルキレン(炭素数2~4)アルキル(炭素数1~18)エーテル(メタ)アクリレート[メタノールのエチレンオキサイド(以下EOと略記)10モル付加物(メタ)アクリレート、メタノールのプロピレンオキサイド(以下POと略記)10モル付加物(メタ)アクリレート等]
【0035】
(a53)窒素含有ビニル化合物
(a53-1)アミド基含有ビニル化合物
(i)炭素数3~30の(メタ)アクリルアミド化合物、例えばN,N-ジアルキル(炭素数1~6)又はジアラルキル(炭素数7~15)(メタ)アクリルアミド(N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジベンジルアクリルアミド等)、ジアセトンアクリルアミド
(ii)上記(メタ)アクリルアミド化合物を除く、炭素数4~20のアミド基含有ビニル化合物、例えばN-メチル-N-ビニルアセトアミド、環状アミド[ピロリドン化合物(炭素数6~13、例えば、N-ビニルピロリドン等)]
【0036】
(a53-2)(メタ)アクリレート化合物
(i)ジアルキル(炭素数1~4)アミノアルキル(炭素数1~4)(メタ)アクリレート[N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリノエチル(メタ)アクリレート等]
(ii)4級アンモニウム基含有(メタ)アクリレート{3級アミノ基含有(メタ)アクリレート[N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]の4級化物(メチルクロライド、ジメチル硫酸、ベンジルクロライド、ジメチルカーボネート等の4級化剤を用いて4級化したもの)等}
【0037】
(a53-3)複素環含有ビニル化合物
ピリジン化合物(炭素数7~14、例えば2-又は4-ビニルピリジン)、イミダゾール化合物(炭素数5~12、例えばN-ビニルイミダゾール)、ピロール化合物(炭素数6~13、例えばN-ビニルピロール)、ピロリドン化合物(炭素数6~13、例えばN-ビニル-2-ピロリドン)
【0038】
(a53-4)ニトリル基含有ビニル化合物
炭素数3~15のニトリル基含有ビニル化合物、例えば(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレン、シアノアルキル(炭素数1~4)アクリレート
【0039】
(a53-5)その他の窒素含有ビニル化合物
ニトロ基含有ビニル化合物(炭素数8~16、例えばニトロスチレン)等
【0040】
(a54)ビニル炭化水素
(a54-1)脂肪族ビニル炭化水素
炭素数2~18又はそれ以上のオレフィン(エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン等)、炭素数4~10又はそれ以上のジエン(ブタジエン、イソプレン、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン等)等
【0041】
(a54-2)脂環式ビニル炭化水素
炭素数4~18又はそれ以上の環状不飽和化合物、例えばシクロアルケン(例えばシクロヘキセン)、(ジ)シクロアルカジエン[例えば(ジ)シクロペンタジエン]、テルペン(例えばピネン及びリモネン)、インデン
【0042】
(a54-3)芳香族ビニル炭化水素
炭素数8~20又はそれ以上の芳香族不飽和化合物、例えばスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン
【0043】
(a55)ビニルエステル
脂肪族ビニルエステル[炭素数4~15、例えば脂肪族カルボン酸(モノ-又はジカルボン酸)のアルケニルエステル(例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、ビニルメトキシアセテート)]
芳香族ビニルエステル[炭素数9~20、例えば芳香族カルボン酸(モノ-又はジカルボン酸)のアルケニルエステル(例えばビニルベンゾエート、ジアリルフタレート、メチル-4-ビニルベンゾエート)、脂肪族カルボン酸の芳香環含有エステル(例えばアセトキシスチレン)]
【0044】
(a56)ビニルエーテル
脂肪族ビニルエーテル[炭素数3~15、例えばビニルアルキル(炭素数1~10)エーテル(ビニルメチルエーテル、ビニルブチルエーテル、ビニル2-エチルヘキシルエーテル等)、ビニルアルコキシ(炭素数1~6)アルキル(炭素数1~4)エーテル(ビニル-2-メトキシエチルエーテル、メトキシブタジエン、3,4-ジヒドロ-1,2-ピラン、2-ブトキシ-2’-ビニロキシジエチルエーテル、ビニル-2-エチルメルカプトエチルエーテル等)、ポリ(2~4)(メタ)アリロキシアルカン(炭素数2~6)(ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシブタン、テトラメタアリロキシエタン等)]、芳香族ビニルエーテル(炭素数8~20、例えばビニルフェニルエーテル、フェノキシスチレン)
【0045】
(a57)ビニルケトン
脂肪族ビニルケトン(炭素数4~25、例えばビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン)、芳香族ビニルケトン(炭素数9~21、例えばビニルフェニルケトン)
【0046】
(a58)不飽和ジカルボン酸ジエステル
炭素数4~34の不飽和ジカルボン酸ジエステル、例えばジアルキルフマレート(2個のアルキル基は、炭素数1~22の、直鎖、分岐鎖又は脂環式の基)、ジアルキルマレエート(2個のアルキル基は、炭素数1~22の、直鎖、分岐鎖又は脂環式の基)
【0047】
ラジカル重合性モノマー(a5)を含有する場合、その含有量は、単量体全体の重量を基準として0.1~3.0重量%であることが好ましい。
【0048】
被覆層を構成する高分子化合物の重量平均分子量の好ましい下限は3,000、より好ましい下限は5,000、更に好ましい下限は7,000である。一方、上記高分子化合物の重量平均分子量の好ましい上限は100,000、より好ましい上限は70,000である。
【0049】
被覆層を構成する高分子化合物の重量平均分子量は、以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと略記)測定により求めることができる。
装置:Alliance GPC V2000(Waters社製)
溶媒:オルトジクロロベンゼン、N-ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)
標準物質:ポリスチレン
サンプル濃度:3mg/ml
カラム固定相:PLgel 10μm、MIXED-B 2本直列(ポリマーラボラトリーズ社製)
カラム温度:135℃
【0050】
被覆層を構成する高分子化合物は、公知の重合開始剤{アゾ系開始剤[2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)等]、パーオキサイド系開始剤(ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド等)等}を使用して公知の重合方法(塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等)により製造することができる。
重合開始剤の使用量は、重量平均分子量を好ましい範囲に調整する等の観点から、モノマーの全重量に基づいて好ましくは0.01~5重量%、より好ましくは0.05~2重量%、更に好ましくは0.1~1.5重量%であり、重合温度及び重合時間は重合開始剤の種類等に応じて調整されるが、重合温度は好ましくは-5~150℃、(より好ましくは30~120℃)、反応時間は好ましくは0.1~50時間(より好ましくは2~24時間)である。
【0051】
溶液重合の場合に使用される溶媒としては、例えばエステル(炭素数2~8、例えば酢酸エチル及び酢酸ブチル)、アルコール(炭素数1~8、例えばメタノール、エタノール及びオクタノール)、炭化水素(炭素数4~8、例えばn-ブタン、シクロヘキサン及びトルエン)、アミド(例えばN,N-ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記する))及びケトン(炭素数3~9、例えばメチルエチルケトン)が挙げられ、重量平均分子量を好ましい範囲に調整する等の観点から、その使用量はモノマーの合計重量に基づいて好ましくは5~900重量%、より好ましくは10~400重量%、更に好ましくは30~300重量%であり、モノマー濃度としては、好ましくは10~95重量%、より好ましくは20~90重量%、更に好ましくは30~80重量%である。
【0052】
乳化重合及び懸濁重合における分散媒としては、水、アルコール(例えばエタノール)、エステル(例えばプロピオン酸エチル)、軽ナフサ等が挙げられ、乳化剤としては、高級脂肪酸(炭素数10~24)金属塩(例えばオレイン酸ナトリウム及びステアリン酸ナトリウム)、高級アルコール(炭素数10~24)硫酸エステル金属塩(例えばラウリル硫酸ナトリウム)、エトキシ化テトラメチルデシンジオール、メタクリル酸スルホエチルナトリウム、メタクリル酸ジメチルアミノメチル等が挙げられる。更に安定剤としてポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等を加えてもよい。
溶液又は分散液のモノマー濃度は好ましくは5~95重量%、より好ましくは10~90重量%、更に好ましくは15~85重量%であり、重合開始剤の使用量は、モノマーの全重量に基づいて好ましくは0.01~5重量%、より好ましくは0.05~2重量%である。
重合に際しては、公知の連鎖移動剤、例えばメルカプト化合物(ドデシルメルカプタン、n-ブチルメルカプタン等)及び/又はハロゲン化炭化水素(四塩化炭素、四臭化炭素、塩化ベンジル等)を使用することができる。
【0053】
被覆層を構成する高分子化合物は、該高分子化合物をカルボキシル基と反応する反応性官能基を有する架橋剤(A’){好ましくはポリエポキシ化合物(a’1)[ポリグリシジルエーテル(ビスフェノールAジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル及びグリセリントリグリシジルエーテル等)及びポリグリシジルアミン(N,N-ジグリシジルアニリン及び1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル))等]及び/又はポリオール化合物(a’2)(エチレングリコール等)}で架橋してなる架橋重合体であってもよい。
【0054】
架橋剤(A’)を用いて被覆層を構成する高分子化合物を架橋する方法としては、電極活物質粒子を、被覆層を構成する高分子化合物で被覆した後に架橋する方法が挙げられる。具体的には、電極活物質粒子と被覆層を構成する高分子化合物を含む樹脂溶液を混合し脱溶剤することにより、被覆電極活物質粒子を製造した後に、架橋剤(A’)を含む溶液を該被覆電極活物質粒子に混合して加熱することにより、脱溶剤と架橋反応を生じさせて、被覆層を構成する高分子化合物が架橋剤(A’)によって架橋される反応を電極活物質粒子の表面で起こす方法が挙げられる。
加熱温度は、架橋剤の種類に応じて調整されるが、架橋剤としてポリエポキシ化合物(a’1)を用いる場合は好ましくは70℃以上であり、ポリオール化合物(a’2)を用いる場合は好ましくは120℃以上である。
【0055】
重合反応における系内温度は通常-5~150℃、好ましくは30~120℃、反応時間は通常0.1~50時間、好ましくは2~24時間であり、重合反応の終点は、未反応単量体の量が、単量体組成物に含まれる単量体成分の合計重量に基づいて通常5重量%以下、好ましくは1重量%以下となる点であり、未反応単量体の量はガスクロマトグラフィー等の公知の単量体含有量の定量方法により確認できる。
【0056】
高分子化合物の重量割合は、被覆層が1層構成である場合、被覆電極活物質粒子の重量を基準として0.3~10.0重量%であることが好ましい。
被覆層が2層構成である場合、第一被覆層に含まれる高分子化合物の重量割合は、被覆電極活物質粒子の重量を基準として0.7~9.0重量%であることが好ましく、第二被覆層に含まれる高分子化合物の重量割合は、被覆電極活物質粒子の重量を基準として0.3~9.0重量%であることが好ましい。
【0057】
(導電性フィラー)
被覆層に含まれる導電性フィラーについて詳述する。
【0058】
導電性フィラーとしては、導電性を有する材料から選択されることが好ましい。
導電性フィラーとして好ましいものとしては、金属[アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、金、銅及びチタン等]、カーボン[グラファイト及びカーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック及びサーマルランプブラック等)等]、及びこれらの混合物等が挙げられる。
これらの導電性フィラーは1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金又は金属酸化物として用いられてもよい。
なかでも、電気的安定性の観点から、より好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン、銀、金、銅、チタン及びこれらの混合物であり、更に好ましくは銀、金、アルミニウム、ステンレス及びカーボンであり、特に好ましくはカーボンである。
またこれらの導電性フィラーとしては、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料[好ましくは、上記した導電性フィラーのうち金属のもの]をめっき等でコーティングしたものでもよい。
【0059】
導電性フィラーの形状(形態)は、粒子形態に限られず、粒子形態以外の形態であってもよく、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等、いわゆるフィラー系導電性フィラーとして実用化されている形態であってもよい。
【0060】
導電性フィラーの平均粒子径は、特に限定されるものではないが、電池の電気特性の観点から、0.01~10μm程度であることが好ましい。
本明細書中において、「導電性フィラーの粒子径」とは、導電性フィラーの輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味する。「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)等の観察手段を用い、30個の粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。
【0061】
被覆層が1層構成である場合、導電性フィラーの重量割合は、被覆電極活物質粒子の重量を基準として2~14重量%であることが好ましく、3~11重量%であることがより好ましい。
また被覆層が2層構成である場合、第一被覆層に含まれる導電性フィラーの重量割合は、被覆電極活物質粒子の重量を基準として3.0~8.0重量%であることが好ましく、第二被覆層に含まれる導電性フィラーの重量割合は、被覆電極活物質粒子の重量を基準として2.0~6.0重量%であることがより好ましい。
導電性フィラーの重量割合が上記範囲であると、被覆電極活物質粒子の二次粒子を維持し、放電容量維持率に優れたリチウムイオン電池用電極及びリチウムイオン電池を得ることができる。
【0062】
被覆層を構成する高分子化合物と導電性フィラーの比率は、被覆層が1層構成であっても2層構成であっても特に限定されるものではないが、電池の放電容量維持率等の観点から、重量比率で被覆層を構成する高分子化合物(樹脂固形分重量):導電性フィラーが1:0.01~1:50であることが好ましく、1:0.2~1:4.0であることがより好ましい。
【0063】
(有機溶媒)
被覆層は、有機溶媒を含む。
【0064】
被覆層に含まれる有機溶媒としては、高分子化合物を溶解可能な有機溶媒であれば特に限定されず、上述した高分子化合物を溶液重合で製造する際に用いる溶媒として例示したものを好適に用いることができる。
被覆層に含まれる有機溶媒は、高分子化合物を合成する際の有機溶媒(残存有機溶媒)であってもよく、被覆層を形成した後に添加した有機溶媒であってもよい。
【0065】
被覆層に含まれる有機溶媒は、得られる電極の柔軟性の観点から、アセトン、トルエン、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、N,N-ジメチルホルムアミド及びN-メチル-2-ピロリドンからなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
なかでも被覆層に含まれる有機溶媒の含有量の調整しやすさの観点から、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)が好ましい。
【0066】
被覆層に含まれる有機溶媒の重量割合は、被覆電極活物質粒子の重量を基準として10~1000ppmである。
被覆層に含まれる有機溶媒の重量割合が上記範囲であることにより、電極の柔軟性が向上し、内部抵抗値の上昇を抑制することができ、容量維持率に優れるリチウムイオン電池用電極及びリチウムイオン電池を得ることができる。
【0067】
被覆層に含まれる有機溶媒の重量割合は、例えば以下の方法により測定することができる。
プロピレングリコールモノメチルエーテルを内部標準物質とするテトラヒドロフラン溶液を作製し、測定したい各種モノマーを溶解させた検量線溶液を作製する。
上記テトラヒドロフラン溶液に被覆活物質を10倍希釈で溶解させ、GC測定装置([(株)島津製作所製]:ガスクロマトグラフGC-2010)で測定し、ピーク強度の面積比から有機溶媒の重量割合をppmオーダーで算出する。
【0068】
被覆層に含まれる有機溶媒の重量割合は、被覆電極活物質粒子の重量を基準として10~950ppmであることが好ましく、10~800ppmであることがより好ましい。
【0069】
被覆層が2層構成である場合、第一被覆層に含まれる有機溶媒と、第二被覆層に含まれる有機溶媒の合計の重量割合が、リチウムイオン電池用被覆電極活物質粒子の重量を基準として10~1000ppmである。
この場合、第一被覆層に含まれる有機溶媒の重量割合が、リチウムイオン電池用被覆電極活物質粒子の重量を基準として5~500ppmであることが好ましい。
また、第二被覆層に含まれる有機溶媒の重量割合が、リチウムイオン電池用被覆電極活物質粒子の重量を基準として5~500ppmであることが好ましい。
【0070】
(その他)
本発明のリチウムイオン電池用被覆電極活物質粒子において、被覆層は、更にセラミック粒子を含んでいてもよい。
セラミック粒子としては、金属炭化物粒子、金属酸化物粒子、ガラスセラミック粒子等が挙げられる。
【0071】
金属炭化物粒子としては、例えば、炭化ケイ素(SiC)、炭化タングステン(WC)、炭化モリブデン(MoC)、炭化チタン(TiC)、炭化タンタル(TaC)、炭化ニオブ(NbC)、炭化バナジウム(VC)、炭化ジルコニウム(ZrC)等が挙げられる。
【0072】
金属酸化物粒子としては、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、酸化アルミニウム(Al)、二酸化ケイ素(SiO)、酸化スズ(SnO)、チタニア(TiO)、ジルコニア(ZrO)、酸化インジウム(In)、Li、LiTi12、LiTi、LiTaO、LiNbO、LiAlO、LiZrO、LiWO、LiTiO、LiPO、LiMoO、LiBO、LiBO、LiCO、LiSiOや、ABO(但し、Aは、Ca、Sr、Ba、La、Pr及びYからなる群より選択される少なくとも1種であり、Bは、Ni、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Mo、Ru、Rh、Pd及びReからなる群より選択される少なくとも1種である)で表されるペロブスカイト型酸化物粒子等が挙げられる。
金属酸化物粒子としては、電解液と被覆電極活物質粒子との間で起こる副反応を好適に抑制する観点から、酸化亜鉛(ZnO)、酸化アルミニウム(Al)、二酸化ケイ素(SiO)、及び、四ほう酸リチウム(Li)が好ましい。
【0073】
ガラスセラミック粒子としては、菱面体晶系を有するリチウム含有リン酸化合物であることが好ましく、その化学式は、LiM”12(X=1~1.7)で表される。
ここでM”はZr、Ti、Fe、Mn、Co、Cr、Ca、Mg、Sr、Y、Sc、Sn、La、Ge、Nb、Alからなる群より選ばれた1種以上の元素である。また、Pの一部をSi又はBに、Oの一部をF、Cl等で置換してもよい。例えば、Li1.15Ti1.85Al0.15Si0.052.9512、Li1.2Ti1.8Al0.1Ge0.1Si0.052.9512等を用いることができる。
また、異なる組成の材料を混合又は複合してもよく、ガラス電解質等で表面をコートしてもよい。又は、熱処理によりNASICON型構造を有するリチウム含有リン酸化合物の結晶相を析出するガラスセラミック粒子を用いることが好ましい。
ガラス電解質としては、特開2019-96478号公報に記載のガラス電解質等が挙げられる。
【0074】
セラミック粒子の体積平均粒子径は、エネルギー密度の観点及び電気抵抗値の観点から、1~1000nmであることが好ましく、1~500nmであることがより好ましく、1~150nmであることが更に好ましい。
【0075】
セラミック粒子の重量割合は、被覆電極活物質粒子の重量を基準として0.5~5.0重量%であることが好ましい。
セラミック粒子を上記範囲で含有することにより、電解液と被覆電極活物質粒子との間で起こる副反応を抑制することができる。
【0076】
(被覆率)
本発明のリチウムイオン電池用被覆電極活物質粒子は、電極活物質粒子が有する表面の少なくとも一部を高分子化合物と導電性フィラーとを含む被覆層で被覆してなる。
【0077】
被覆層が1層構成の場合、サイクル特性の観点から、下記計算式で得られる被覆率が30~95%であることが好ましい。
被覆率(%)={1-[被覆電極活物質粒子のBET比表面積/(被覆前の電極活物質粒子のBET比表面積×被覆電極活物質粒子中に含まれる電極活物質粒子の重量割合+導電性フィラーのBET比表面積×被覆電極活物質粒子中に含まれる導電性フィラーの重量割合+セラミック粒子のBET比表面積×被覆電極活物質粒子中に含まれるセラミック粒子の重量割合)]}×100
【0078】
被覆層が2層構成の場合、容量維持率の観点から、下記計算式で得られる第一被覆層の被覆率が30~95%であることが好ましい。
被覆率(%)={1-[第一被覆層で被覆された電極活物質粒子のBET比表面積/(未被覆時の電極活物質粒子のBET比表面積×第一被覆層で被覆された電極活物質粒子中に含まれる電極活物質粒子の重量割合+導電性フィラーのBET比表面積×第一被覆層で被覆された電極活物質粒子中に含まれる導電性フィラーの重量割合+任意で含まれるセラミック粒子のBET比表面積×第一被覆層で被覆された電極活物質粒子中に任意で含まれるセラミック粒子の重量割合)]}×100
【0079】
被覆層が2層構成の場合、第一被覆層の表面の少なくとも一部が第二被覆層で被覆されていることが好ましい。
第二被覆層の被覆率は、電極の強度の観点から、第一被覆層に対する第二被覆層の被覆率が30~95%であることが好ましい。第二被覆層の被覆率は、第一被覆層で被覆後のサンプルのBET比表面積と第二被覆層のBET比表面積から計算により得ることができる。
被覆率(%)={1-[第二被覆層で被覆された電極活物質粒子のBET比表面積/(第一被覆層で被覆された電極活物質粒子のBET比表面積×第二被覆層で被覆された電極活物質粒子中に含まれる電極活物質粒子の重量割合+導電性フィラーのBET比表面積×第二被覆層で被覆された電極活物質粒子中に含まれる導電性フィラーの重量割合+任意で含まれるセラミック粒子のBET比表面積×第二被覆層で被覆された電極活物質粒子中に任意で含まれるセラミック粒子の重量割合)]}×100
【0080】
被覆層が2層構成の場合、電極活物質粒子の表面に第一被覆層が形成されない部分があってもよく、電極活物質粒子の表面に第二被覆層が被覆してなる部分があってもよい。
【0081】
<リチウムイオン電池用被覆電極活物質粒子の製造方法>
本発明のリチウムイオン電池用被覆電極活物質粒子は、被覆層を構成する高分子化合物、導電性フィラー及び電極活物質粒子を混合することによって製造することができる。
高分子化合物、導電性フィラー及び電極活物質粒子を混合する順番は特に限定されず、例えば、事前に混合した被覆層を構成する高分子化合物と導電性フィラーからなる樹脂組成物を電極活物質粒子とさらに混合してもよいし、高分子化合物、導電性フィラー及び電極活物質粒子を同時に混合してもよいし、電極活物質粒子に高分子化合物を混合し、さらに導電性フィラーを混合してもよい。
【0082】
本発明の被覆電極活物質粒子は、電極活物質粒子を、高分子化合物で被覆することで得ることができ、例えば、電極活物質粒子を万能混合機に入れて30~800rpmで撹拌した状態で、高分子電解質組成物を含む樹脂溶液を1~90分かけて滴下混合し、さらに導電性フィラーを混合し、撹拌したまま50~200℃に昇温し、0.007~0.04MPaまで減圧した後に10~900分保持し、その後、被覆電極活物質粒子に含まれる有機溶媒の重量割合が所定の範囲となるように有機溶媒を加えることにより得ることができる。
【0083】
電極活物質粒子と、高分子化合物及び導電性フィラーとの配合比率は特に限定されるものではないが、重量比率で電極活物質粒子:高分子化合物及び導電性フィラーの合計重量=1:0.001~0.1であることが好ましい。
【0084】
被覆層が2層構成の場合、電極活物質粒子、高分子化合物、有機溶媒、任意で導電性フィラー及び任意でセラミック粒子を混合した第一被覆層用被覆層組成物を脱溶剤して第一被覆電極活物質粒子を得る第1被覆工程と、上記第一被覆電極活物質粒子、高分子化合物、有機溶媒、任意で導電性フィラー及び任意でセラミック粒子を混合した第二被覆層用被覆層組成物を脱溶剤する第2被覆工程とを有することが好ましい。
なお、モノマーは、第一被覆層用被覆層組成物と第二被覆層用被覆層組成物の何れかに含まれていてもよいが、双方に含まれていることが好ましい。
第一被覆層用被覆層組成物、第二被覆層用被覆層組成物を脱溶剤する方法は、上述した方法を用いればよい。
【0085】
<リチウムイオン電池用電極>
本発明のリチウムイオン電池用電極は、本発明のリチウムイオン電池用被覆電極活物質粒子と導電助剤とを含む非結着体からなる。
ここで、非結着体とは、リチウムイオン電池用被覆電極活物質粒子と導電助剤とが結着剤(バインダともいう)により位置を固定されていないことを意味する。すなわち、リチウムイオン電池用被覆電極活物質粒子と導電助剤は、それぞれ外力に応じて移動できる状態である。
【0086】
本発明のリチウムイオン電池用電極は、溶剤乾燥型結着剤を含まない。
溶剤乾燥型結着剤としてはデンプン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン及びポリプロピレン等の公知のリチウムイオン電池用結着剤等が挙げられる。これらの結着剤は溶剤に溶解又は分散して用いられ、溶剤を揮発、留去することで表面が粘着性を示すことなく固体化して、被覆電極活物質粒子と導電助剤同士、及び、被覆電極活物質粒子と導電助剤と集電体とを強固に固定するものである。
【0087】
本発明のリチウムイオン電池用電極は、十分な電極柔軟性を有する。
具体的には、下記に示す降伏点ストロークが0.13mm以上である。
上記降伏点ストロークが0.13mm以上であれば、リチウムイオン電池用電極が引き伸ばされたり、歪んだりしても電気伝導性を好適に維持することができる。
上記降伏点ストロークは、0.15mm以上であることが好ましく、0.17mm以上であることがより好ましい。
【0088】
本明細書において降伏点ストロークは、以下の方法により測定し算出する。
リチウムイオン電池用電極(サンプルサイズ:直径16mmの円形)の降伏応力をISO178(プラスチック-曲げ特性の求め方)に準拠して、オートグラフ[(株)島津製作所製]を用いて測定する。
リチウムイオン電池用電極のサンプルを支点間距離5mmの治具にセットし、オートグラフにセットされたロードセル(定格荷重:20N)を1mm/minの速度で電極に向かって降下させ、ロードセルが電極に触れてから降伏点でのロードセルの降下距離(mm)を降伏点ストロークとして算出する。
【0089】
本発明のリチウムイオン電池用電極は、被覆電極活物質粒子及び導電助剤と、電解質及び溶媒を含有する電解液とを含む電極活物質層と、集電体とを備えていることが好ましい。
【0090】
(被覆電極活物質粒子)
被覆電極活物質粒子としては、本発明のリチウムイオン電池用被覆電極活物質粒子を用いる。
電極活物質層の重量を基準として、被覆電極活物質粒子を40~95重量%含むことが好ましく、60~90重量%で含むことがより好ましい。
【0091】
(導電助剤)
本発明のリチウムイオン電池用電極は、上述した被覆電極活物質粒子の被覆層中に含まれていてもよい導電性フィラーとは別に導電助剤を含んでいる。被覆層中に含まれている導電性フィラーが被覆電極活物質粒子と一体であるのに対し、導電助剤は被覆電極活物質粒子と別々に含まれている点で区別できる。
【0092】
導電助剤は、被覆層に含まれる導電性フィラーと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
本発明のリチウムイオン電池用電極に含まれる導電助剤としては、導電性フィラーとして例示したものと同じものを用いることができる。
【0093】
リチウムイオン電池用電極中に含まれる導電助剤と被覆層中に含まれる導電性フィラーの合計含有量は、特に限定されないが、電極活物質層から電解液を除いた重量を基準として0.5~20重量%であることが好ましい。
【0094】
(電解液)
電解液は、電解質及び溶媒を含有する。
【0095】
電解質としては、公知の電解液に用いられている電解質が使用でき、例えば、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiClO及びLiN(FSO等の無機アニオンのリチウム塩、LiN(CFSO、LiN(CSO及びLiC(CFSO等の有機アニオンのリチウム塩が挙げられる。これらの内、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましいのはLiN(FSOである。
【0096】
溶媒としては、公知の電解液に用いられている非水溶媒が使用でき、例えば、ラクトン化合物、環状又は鎖状炭酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状又は鎖状エーテル、リン酸エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン、スルホラン及びこれらの混合物を用いることができる。
【0097】
ラクトン化合物としては、5員環(γ-ブチロラクトン及びγ-バレロラクトン等)及び6員環(δ-バレロラクトン等)のラクトン化合物等が挙げられる。
【0098】
環状炭酸エステルとしては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート(EC)及びブチレンカーボネート(BC)等が挙げられる。
鎖状炭酸エステルとしては、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチル-n-プロピルカーボネート、エチル-n-プロピルカーボネート及びジ-n-プロピルカーボネート等が挙げられる。
【0099】
鎖状カルボン酸エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル及びプロピオン酸メチル等が挙げられる。
【0100】
環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3-ジオキソラン及び1,4-ジオキサン等が挙げられる。鎖状エーテルとしては、ジメトキシメタン及び1,2-ジメトキシエタン等が挙げられる。
【0101】
リン酸エステルとしては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸エチルジメチル、リン酸ジエチルメチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリブチル、リン酸トリ(トリフルオロメチル)、リン酸トリ(トリクロロメチル)、リン酸トリ(トリフルオロエチル)、2-エトキシ-1,3,2-ジオキサホスホラン-2-オン、2-トリフルオロエトキシ-1,3,2-ジオキサホスホラン-2-オン及び2-メトキシエトキシ-1,3,2-ジオキサホスホラン-2-オン等が挙げられる。
【0102】
ニトリル化合物としては、アセトニトリル等が挙げられる。アミド化合物としては、DMF等が挙げられる。スルホンとしては、ジメチルスルホン及びジエチルスルホン等が挙げられる。
【0103】
これらの溶媒は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0104】
電解液中の電解質の濃度は、1.2~5.0mol/Lであることが好ましく、1.5~4.5mol/Lであることがより好ましく、1.8~4.0mol/Lであることが更に好ましく、2.0~3.5mol/Lであることが特に好ましい。
このような電解液は、適当な粘性を有するので、被覆電極活物質粒子間に液膜を形成することができ、被覆電極活物質粒子に潤滑効果(被覆電極活物質粒子の位置調整能力)を付与することができる。
【0105】
(電極活物質層)
本発明のリチウムイオン電池用電極において、電極活物質層の厚みは、電池性能の観点から、150~600μmであることが好ましく、200~450μmであることがより好ましい。
【0106】
(集電体)
集電体を構成する材料としては、銅、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル及びこれらの合金等の金属材料、並びに、焼成炭素、導電性高分子材料、導電性ガラス等が挙げられる。
集電体の形状は特に限定されず、上記の材料からなるシート状の集電体、及び、上記の材料で構成された微粒子からなる堆積層であってもよい。
集電体の厚さは、特に限定されないが、50~500μmであることが好ましい。
【0107】
集電体は、樹脂集電体であってもよい。
【0108】
樹脂集電体を構成する導電性高分子材料としては例えば、樹脂に導電剤を添加したものを用いることができる。
導電性高分子材料を構成する導電剤としては、被覆層の導電性フィラーと同様のものを好適に用いることができる。
導電性高分子材料を構成する樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン(PCO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂又はこれらの混合物等が挙げられる。
【0109】
電気的安定性の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)及びポリシクロオレフィン(PCO)が好ましく、更に好ましくはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン(PMP)である。
樹脂集電体は、特開2012-150905号公報及び再表2015/005116号等に記載された公知の方法で得ることができる。
【0110】
(リチウムイオン電池用電極の製造方法)
本発明のリチウムイオン電池用電極は、例えば、被覆電極活物質粒子と、導電助剤と、電解液とを含む電極スラリーを集電体に塗布した後、乾燥させることにより、集電体上に電極活物質層を備えるリチウムイオン電池用電極を作製することができる。
具体的には、電極スラリーを、集電体上にバーコーター等の塗工装置で塗布後、不織布を活物質上に静置して吸液すること等で、溶媒を除去し、必要によりプレス機でプレスする方法等が挙げられる。
【0111】
<リチウムイオン電池>
本発明のリチウムイオン電池は、本発明のリチウムイオン電池用電極を備える。
【0112】
本発明のリチウムイオン電池用電極と、対極となる電極とを組み合わせて、セパレータと共にセル容器に収納し、電解液を注入し、セル容器を密封することでリチウムイオン電池を得ることができる。
また、集電体の一方の面に上記のリチウムイオン電池用正極を形成し、もう一方の面に負極を形成してバイポーラ(双極)型電極を作製し、バイポーラ(双極)型電極をセパレータと積層してセル容器に収納し、電解液を注入し、セル容器を密封することでもリチウムイオン電池を得ることができる。
本発明のリチウムイオン電池は、本発明のリチウムイオン電池用電極を正極、負極の双方に備えることが好ましい。
【0113】
セパレータとしては、ポリエチレン又はポリプロピレン製の多孔性フィルム、多孔性ポリエチレンフィルムと多孔性ポリプロピレンとの積層フィルム、合成繊維(ポリエステル繊維及びアラミド繊維等)又はガラス繊維等からなる不織布、及びそれらの表面にシリカ、アルミナ、チタニア等のセラミック微粒子を付着させたもの等の公知のリチウムイオン電池用のセパレータが挙げられる。
【0114】
なお、本明細書には以下の発明が記載されている。
〔1〕リチウムイオン電池用電極活物質粒子が有する表面の少なくとも一部を高分子化合物と導電性フィラーと有機溶媒とを含む被覆層で被覆してなるリチウムイオン電池用被覆電極活物質粒子であって、上記被覆層に含まれる有機溶媒の重量割合が、上記リチウムイオン電池用被覆電極活物質粒子の重量を基準として10~1000ppmであるリチウムイオン電池用被覆電極活物質粒子。
〔2〕上記有機溶媒が、アセトン、トルエン、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、N,N-ジメチルホルムアミド及びN-メチル-2-ピロリドンからなる群から選ばれる1種以上である上記〔1〕に記載のリチウムイオン電池用被覆電極活物質粒子。
〔3〕上記〔1〕又は〔2〕に記載のリチウムイオン電池用被覆電極活物質粒子と導電助剤とを含む非結着体からなるリチウムイオン電池用電極。
〔4〕上記〔3〕に記載のリチウムイオン電池用電極を備えるリチウムイオン電池。
【実施例0115】
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限り本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特記しない限り部は重量部、%は重量%を意味する。
【0116】
[電解液の作製]
エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)の混合溶媒(体積比率1:1)にLiN(FSOを2.0mol/Lの割合で溶解させて電解液を作製した。
【0117】
[樹脂集電体の作製]
2軸押出機にて、ポリプロピレン[商品名「サンアロマーPL500A」、サンアロマー(株)製]70部、カーボンナノチューブ[商品名「FloTube9000」、CNano社製]25部及び分散剤[商品名「ユーメックス1001」、三洋化成工業(株)製]5部を200℃、200rpmの条件で溶融混練して樹脂混合物を得た。
得られた樹脂混合物を、Tダイ押出しフィルム成形機に通して、それを延伸圧延することで、膜厚100μmの樹脂集電体用導電性フィルムを得た。次いで、得られた樹脂集電体用導電性フィルムを直径15mm又は16mmの円形となるように切断し、片面にニッケル蒸着を施した後、電流取り出し用の端子(5mm×3cm)を接続した樹脂集電体を得た。
なお、直径15mmの円形の樹脂集電体を正極用樹脂集電体として用い、直径16mmの円形の樹脂集電体を負極用樹脂集電体として用いた。
【0118】
(比較例1)
[被覆層組成物の調製]
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコにDMF150部を仕込み、75℃に昇温した。次いで、アクリル酸91部、メタクリル酸メチル9部及びDMF50部を配合した単量体組成物と、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.3部及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.8部をDMF30部に溶解した開始剤溶液とを4つ口フラスコ内に窒素を吹き込みながら、撹拌下、滴下ロートで2時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、75℃で反応を3時間継続した。
次いで、80℃に昇温して反応を3時間継続し、樹脂濃度30%の共重合体溶液を得た。得られた共重合体溶液を撹拌下、アセトン中に滴下して精製を行った。精製後、テフロン(登録商標)製のバットに移して150℃、0.01MPaで3時間の減圧乾燥を行い、DMFおよびアセトンを留去して高分子化合物を得た。
得られた高分子化合物をハンマーで粗粉砕した後、乳鉢にて追加粉砕して、粉末状の高分子化合物を得た。高分子化合物1部をDMF3部に溶解し、モノマーの含有量が高分子化合物のモル数を基準として0.1モル%となるようにアクリル酸:メタクリル酸メチル(重量比が91:9)を追加し、被覆層組成物を得た。
【0119】
[被覆正極活物質粒子の作製]
正極活物質粒子(LiNi0.8Co0.15Al0.05粉末、体積平均粒子径4μm)90.12部を万能混合機ハイスピードミキサーFS25[(株)アーステクニカ製]に入れ、室温、720rpmで撹拌した状態で、被覆層組成物12.56部を2分かけて滴下し、さらに5分撹拌した。
次いで、撹拌した状態で導電助剤であるアセチレンブラック[デンカ(株)製 デンカブラック(登録商標)]3.14部及びセラミック粒子(AEROSIL 200(二酸化ケイ素、BET比表面積200m/g、製品名「AEROSIL 200」、日本アエロジル(株)製)
)2.10部を分割しながら2分間で投入し、30分撹拌を継続した。
その後、撹拌を維持したまま0.01MPaまで減圧し、次いで撹拌と減圧度を維持したまま温度を140℃まで昇温し、撹拌、減圧度及び温度を13時間維持して揮発分を留去した。
得られた粉体を目開き200μmの篩で分級し、比較例1の被覆正極活物質粒子を得た。
【0120】
得られた被覆正極活物質粒子に含まれる有機溶媒の重量割合をGC測定装置([(株)島津製作所製]:ガスクロマトグラフGC-2010)で測定し、ピーク強度の面積比から有機溶媒の重量割合をppmオーダーで算出した。
【0121】
(実施例1~5、比較例2)
その後、被覆正極活物質粒子に含まれる有機溶媒の重量割合が表1に記載の重量割合となるように、有機溶媒(DMF)を追加し、万能混合機ハイスピードミキサーFS25で室温、720rpmで5分撹拌して、実施例1~5、比較例2の被覆正極活物質粒子をそれぞれ得た。
【0122】
【表1】
【0123】
[リチウムイオン電池用正極の作製]
作製した被覆正極活物質粒子98.50部と、炭素繊維[大阪ガスケミカル(株)製 ドナカーボ・ミルド S-243:平均繊維長500μm、平均繊維径13μm:電気伝導度200mS/cm]2.06部とケッチェンブラック[ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製 EC300J]1.03部とを混合して正極スラリーを作製した。
作製した正極スラリーを、Φ15(mm)の金型上に正極活物質粒子の目付量が50mg/cmになるように充填し、プレス機(HANDTAB-100T15、市橋精機(株)製)で1ton/cmの圧力で打錠成形して正極活物質層(厚さが213μm)を形成し、上記樹脂集電体の片面に積層して実施例1~5及び比較例1、2に係るリチウムイオン電池用正極(直径15mmの円形)を作製した。
【0124】
得られたリチウムイオン電池用正極について、電極強度(柔軟性)の測定を下記の通り行った。
得られたリチウムイオン電池用正極(サンプルサイズ:直径15mmの円形)の降伏応力をISO178(プラスチック-曲げ特性の求め方)に準拠して、オートグラフ[(株)島津製作所製]を用いて測定し、以下の基準で電極強度を評価した。
まず、リチウムイオン電池用正極の各サンプルを支点間距離5mmの治具にセットし、オートグラフにセットされたロードセル(定格荷重:20N)を1mm/minの速度で電極に向かって降下させ、ロードセルが電極に触れてから降伏点でのロードセルの降下距離(mm)を降伏点ストロークとして算出した。
ストロークが長ければ長いほど電極の柔軟性が高いと言える。測定結果を表2に示す。
【0125】
【表2】
【0126】
表2より、被覆層が所定の有機溶媒を含む被覆正極活物質粒子を用いた実施例1~5のリチウムイオン電池用正極では、十分な電極柔軟性を有することが確認された。
【0127】
(比較例2)
[第一被覆層用被覆層組成物の調製]
比較例1と同様の方法により、第一被覆層用被覆層組成物を得た。
【0128】
[第二被覆層用被覆層組成物の調製]
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を付した4つ口コルベンに、n-ブチルアクリレート30部、2-ヒドロキシエチルアクリレート20部、アクリロニトリル50部、トルエン390部を仕込み75℃に昇温した。トルエン10部及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.200部及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.200部を混合した。
得られた単量体混合液をコルベン内に窒素を吹き込みながら、滴下ロートで4時間かけて連続的に重合開始剤を滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.800部をトルエン12.4部に溶解した溶液を滴下ロートを用いて、重合を開始してから6~8時間目にかけて連続的に追加した。
更に、重合を2時間継続し、トルエンを488部加えて樹脂濃度10重量%の第二被覆層用被覆層組成物を得た。
【0129】
[被覆負極活物質粒子の作製]
(第一被覆層の形成)
負極活物質粒子(ハードカーボン粉末、体積平均粒子径25μm)77.3部を万能混合機ハイスピードミキサーFS25[(株)アーステクニカ製]に入れ、室温、720rpmで撹拌した状態で、第一被覆層用被覆層組成物21.2部(固形分換算で5.3部)を2分かけて滴下し、更に5分撹拌した。
次いで、撹拌した状態で導電助剤であるグラファイト(UP)[薄片状黒鉛、体積平均粒子径4.5μm]5.3部を分割しながら2分間で投入し、30分撹拌を継続した。
【0130】
(第二被覆層の形成)
更に、撹拌した状態で、WA-101-102P(アネスト岩田社製)のノズルを使用したスプレーシステムで40℃の第二被覆層用被覆層組成物59.0部(固形分換算で5.9部)を2分かけてスプレー方式で添加し(噴出量100ml/min)、更に5分撹拌した。次いで、撹拌した状態で導電助剤であるアセチレンブラック(AB)[デンカ(株)製、商品名「デンカブラック」、体積平均粒子径35nm]4.0部を分割しながら2分間で投入し、30分撹拌を継続した。
その後、撹拌を維持したまま0.01MPaまで減圧し、次いで撹拌と減圧度を維持したまま温度を140℃まで昇温し、撹拌、減圧度及び温度を13時間維持して揮発分を留去した。
得られた粉体を目開き200μmの篩いで分級し、被覆負極活物質粒子を得た。
【0131】
得られた被覆負極活物質粒子に含まれる有機溶媒の重量割合をGC測定装置([(株)島津製作所製]:ガスクロマトグラフGC-2010)で測定し、ピーク強度の面積比から有機溶媒の重量割合をppmオーダーで算出した。
【0132】
(実施例6~10、比較例3、4)
その後、被覆負極活物質粒子に含まれる有機溶媒の重量割合が表3に記載の重量割合となるように、有機溶媒(DMF:トルエン=1:1)を追加し、万能混合機ハイスピードミキサーFS25で室温、720rpmで5分撹拌して、実施例6~10の被覆負極活物質粒子をそれぞれ得た。
【0133】
【表3】
【0134】
(リチウムイオン電池用負極の作製)
作製した被覆負極活物質粒子99部と、炭素繊維[大阪ガスケミカル(株)製 ドナカーボ・ミルド S-243:平均繊維長500μm、平均繊維径13μm:電気伝導度200mS/cm]1部とを混合して負極スラリーを作製した。
作製した負極スラリーを、Φ16(mm)の金型上に負極活物質粒子の目付量が23.4mg/cmになるように充填し、プレス機(HANDTAB-100T15、市橋精機(株)製)で1ton/cmの圧力で打錠成形して負極活物質層(厚さが300μm)を形成し、上記樹脂集電体の片面に積層して実施例6~10及び比較例3、4に係るリチウムイオン電池用負極(直径16mmの円形)をそれぞれ作製した。
【0135】
得られたリチウムイオン電池用負極について、前記リチウムイオン電池用正極と同様にして電極強度(柔軟性)の測定を行った。測定結果を表4に示す。
【0136】
【表4】
【0137】
表4より、被覆層が所定の有機溶媒を含む被覆負極活物質粒子を用いた実施例6~10のリチウムイオン電池用負極では、十分な電極柔軟性を有することが確認された。
【0138】
[リチウムイオン電池の作製]
表2又は表4に記載のリチウムイオン電池用正極とリチウムイオン電池用負極とを、セパレータ(セルガード製#3501)を介して表5の通り組み合わせ、電解液を注入して、リチウムイオン電池を作製した。
【0139】
<内部抵抗上昇率の測定>
25℃下、充放電測定装置「HJ-SD8」[北斗電工(株)製]を用いて以下の方法によりリチウムイオン電池の評価を行った。
定電流定電圧方式(0.1C)で4.2Vまで充電した後、10分間の休止後、定電流方式(0.1C)で2.5Vまで放電した。定電流定電圧方式(CCCVモードともいう)で0.1Cにおける放電0秒後の電圧及び電流並びに0.1Cにおける放電10秒後の電圧及び電流を測定し、以下の式で内部抵抗を算出した。内部抵抗が小さいほど優れた電池特性を有することを意味する。
なお、放電0秒後の電圧とは、放電したと同時に計測される電圧(放電時電圧ともいう)である。
[内部抵抗(Ω・cm)]=[(0.1Cにおける放電0秒後の電圧)-(0.1Cにおける放電10秒後の電圧)]÷[(0.1Cにおける放電0秒後の電流)-(0.1Cにおける放電10秒後の電流)]×[電極の対向面積(cm)]
内部抵抗の測定につき、20サイクルの繰り返し試験を行い、2サイクル目の内部抵抗(初期内部抵抗)と20サイクル目の内部抵抗を比較して(20サイクル目の内部抵抗/2サイクル目の内部抵抗)、「内部抵抗上昇率(%)」を求めた。
【0140】
<容量維持率の測定>
25℃下、充放電測定装置「HJ-SD8」[北斗電工(株)製]を用いて以下の方法によりリチウムイオン電池につき充放電試験を行った。
定電流定電圧方式(0.1C)で4.2Vまで充電した後、10分間の休止後、定電流方式(0.1C)で2.5Vまで放電した。
このとき放電した容量を[放電容量(mAh)]とした。
20サイクルの繰り返し試験を行い、20サイクル容量維持率(%)を求めた。
【0141】
【表5】
【0142】
表5より、実施例の被覆電極活物質粒子を用いて作製したリチウムイオン電池用電極を正極及び負極に備えるリチウムイオン電池では、内部抵抗値の上昇を抑制することができ、容量維持率に優れることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明の被覆電極活物質粒子は、特に、定置用電源、携帯電話、パーソナルコンピューター、ハイブリッド自動車及び電気自動車用等に用いられるリチウムイオン電池等の電極活物質粒子として有用である。