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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178621
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20241218BHJP
   A01G 22/05 20180101ALI20241218BHJP
   A01G 22/60 20180101ALI20241218BHJP
【FI】
A01G7/00 601C
A01G22/05 A
A01G22/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096897
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】泉 正男
(72)【発明者】
【氏名】神舎 敏也
(72)【発明者】
【氏名】蒲田 幸平
(72)【発明者】
【氏名】青木 慎一
(72)【発明者】
【氏名】井口 敬寛
(72)【発明者】
【氏名】小林 良一
【テーマコード(参考)】
2B022
【Fターム(参考)】
2B022AA03
2B022AB15
2B022AB17
2B022DA03
2B022DA08
(57)【要約】
【課題】消費電力の低減と収穫量の向上とを両立する。
【解決手段】照明装置10は、植物の育成用の光を照射する光源部110を備える。育成用の光は、610nm以上680nm以下の範囲の赤色光と、685nm以上780nm以下の範囲の遠赤色光と、を含む。赤色光に対する遠赤色光の放射照度の比率は、0.94以上2.06以下である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の育成用の光を照射する光源部を備え、
前記光は、
610nm以上680nm以下の範囲の赤色光と、
685nm以上780nm以下の範囲の遠赤色光と、を含み、
前記赤色光に対する前記遠赤色光の放射照度の比率は、0.94以上2.06以下である、
照明装置。
【請求項2】
前記赤色光の放射照度は、0.085W/m以上であり、
前記遠赤色光の放射照度は、0.093W/m以上である、
請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記光源部は、
前記赤色光を発する複数の赤色発光素子と、
前記遠赤色光を発する複数の遠赤色発光素子と、を含む、
請求項1に記載の照明装置。
【請求項4】
前記複数の赤色発光素子及び前記複数の遠赤色発光素子は、1以上の円周上に均等に配置されている、
請求項3に記載の照明装置。
【請求項5】
前記光源部を収容する電球型筐体を備える、
請求項1~4のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項6】
前記植物は、イチゴ又は菊である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~3には、赤色光及び遠赤色光を利用した電照栽培方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-46575号公報
【特許文献2】特開2012-39901号公報
【特許文献3】特開2012-165665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、消費電力の低減と収穫量の向上とを両立することができる照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る照明装置は、植物の育成用の光を照射する光源部を備え、前記光は、610nm以上680nm以下の範囲の赤色光と、685nm以上780nm以下の範囲の遠赤色光と、を含み、前記赤色光に対する前記遠赤色光の放射照度の比率は、0.94以上2.06以下である。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る照明装置によれば、消費電力の低減と収穫量の向上とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施の形態に係る電照栽培システムの概略図である。
図2図2は、実施の形態に係る照明装置の一部切り欠き斜視図である。
図3図3は、実施例1に係る照明装置から照射される光の分光分布図である。
図4図4は、実施例2に係る照明装置から照射される光の分光分布図である。
図5図5は、比較例1に係る照明装置から照射される光の分光分布図である。
図6図6は、実施例1及び2並びに比較例1に係る照明装置からの放射照度比率を示す図である。
図7図7は、電照栽培の実験条件を説明するための図である。
図8図8は、イチゴの収穫量を月毎に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下では、本発明の実施の形態に係る照明装置について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する趣旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0009】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0010】
また、本明細書において、要素の形状を示す用語、及び、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
【0011】
また、本明細書において、「第1」、「第2」などの序数詞は、特に断りの無い限り、構成要素の数又は順序を意味するものではなく、同種の構成要素の混同を避け、区別する目的で用いられている。
【0012】
(実施の形態)
[電照栽培システム]
まず、本実施の形態に係る電照栽培システム1の概要について、図1を用いて説明する。
【0013】
図1に示す電照栽培システム1は、植物2に光を照射して植物2の栽培を行うシステムである。光によって植物2の成長の促進及び/又は抑制を行うことができ、収穫期及び収穫量等の調整が可能になる。
【0014】
植物2は、野菜、果物等の食用植物、観賞植物又は工芸用植物等である。例えば、植物2は、イチゴである。あるいは、植物2は、菊であってもよい。
【0015】
電照栽培システム1は、いわゆるビニルハウス又はプラスチックハウス等の温室、又は、植物工場等に利用される。電照栽培システム1は、例えば、温室内に植えられた複数の植物2の栽培を行う。図1に示すように、電照栽培システム1は、複数の照明装置10を備える。
【0016】
複数の照明装置10はそれぞれ、植物2の育成用の光を照射することができる。複数の照明装置10は、互いに異なる照射範囲(一部が重なっていてもよい)に向けて光を照射する。複数の照明装置10はいずれも、電源配線(例えば、ケーブル)によって電源(図示せず)に接続されており、電源から電源配線を介して供給される電力を用いて光を照射する。
【0017】
[照明装置]
次に、照明装置10の具体的な構成について、図2を用いて説明する。
【0018】
図2は、本実施の形態に係る照明装置10の一部切り欠き斜視図である。具体的には、グローブ13の一部を切り欠いた状態を表している。図2に示すように、照明装置10は、電球型ランプであり、電球型筐体11を備える。また、照明装置10は、光源部110と、制御部130と、を備える。
【0019】
電球型筐体11は、光源部110及び制御部130を収容する。図2に示すように、電球型筐体11は、本体筐体12と、グローブ13と、口金14と、を備える。本体筐体12、グローブ13及び口金14が互いに組み合わさることによって、照明装置10の外郭筐体(電球型筐体11)を構成している。
【0020】
本体筐体12は、グローブ13側から口金14側にかけて開口面積が漸次小さくなる円錐台筒形状を有する。本体筐体12の内部には、制御部130が収容されている。本体筐体12は、例えば、金属材料を用いて形成されており、熱伝導性が高い。このため、本体筐体12は、光源部110で発生する熱を放熱するヒートシンクとしても機能する。
【0021】
グローブ13は、光源部110を覆う透光性のカバーである。グローブ13は、光源部110の各々から発せられる光をランプ外部に取り出すように構成されている。グローブ13は、開口を有する中空部材であり、開口とは反対側の頂部が閉塞された形状を有する。グローブ13は、例えば、ランプ軸を軸とする中空の回転体であり、開口が絞られた略半球状に構成されているが、これに限定されない。グローブ13の開口の縁が本体筐体12に接着剤によって固定されている。接着剤は、例えばシリコーン樹脂などである。
【0022】
グローブ13は、例えば、シリカガラスなどのガラス材料、又は、アクリル(PMMA)若しくはポリカーボネート(PC)などの樹脂材料などからなる透光性材料を用いることができる。グローブ13には、光を拡散させるための拡散処理が施されていてもよい。例えば、グローブ13の内面又は外面に、光拡散膜(光拡散層)、又は、複数の光拡散ドット若しくは微小凹凸などを形成してもよい。あるいは、グローブ13は、内部を視認可能なように透明な(クリア)材料から形成されていてもよい。
【0023】
口金14は、光源部110を発光させるための電力を外部の電源から受電する受電部である。口金14は、例えば、照明器具のソケットに取り付けられる。口金14は、ソケットを介して受電した電力を、リード線(図示せず)を介して制御部130に供給する。本実施の形態では、口金14は、ねじ込み式のエジソンタイプの口金(E口金)であり、例えば、E26、E17又はE16などである。あるいは、口金14は、差し込み式の口金であってもよい。
【0024】
光源部110は、植物2の育成用の光を照射する。光は、赤色光と遠赤色光とを含む。本明細書では、赤色光は、分光スペクトルにおいて、610nm以上680nm以下の範囲全域の波長成分を意味する。遠赤色光は、分光スペクトルにおいて、685nm以上780nm以下の範囲全域の波長成分を意味する。
【0025】
図2に示すように、光源部110は、複数の赤色発光素子112と、複数の遠赤色発光素子114と、基板116と、を含む。
【0026】
赤色発光素子112は、赤色光を発する発光素子である。赤色発光素子112は、例えばLED(Light Emitting Diode)であるが、これに限らない。赤色発光素子112は、レーザ素子又は有機EL(Electroluminescence)素子であってもよい。
【0027】
例えば、赤色発光素子112は、610nm以上680nm以下の範囲内に発光強度のピークを有する狭帯域の光を発する。「狭帯域の光」は、例えば、半値幅が60nm以下、50nm以下、40nm以下、30nm以下、20nm以下、又は、10nm以下の光である。あるいは、赤色発光素子112は、610nm以上680nm以下の範囲の全域に亘って所定強度以上の強度を有するブロードな光を発してもよい。なお、所定強度以上の強度とは、最大強度の50%以上であってもよく、40%以上であってもよく、30%以上であってもよく、20%以上であってもよい。
【0028】
遠赤色発光素子114は、遠赤色光を発する発光素子である。遠赤色発光素子114は、例えばLEDであるが、これに限らない。遠赤色発光素子114は、レーザ素子又は有機EL素子であってもよい。
【0029】
例えば、遠赤色発光素子114は、685nm以上780nm以下の範囲内に発光強度のピークを有する狭帯域の光を発する。あるいは、遠赤色発光素子114は、685nm以上780nm以下の範囲の全域に亘って所定強度以上の強度を有するブロードな光を発してもよい。
【0030】
なお、光源部110は、赤色発光素子112の光出射側に配置されたフィルタであって、610nm未満の光、及び、680nmより大きい光の少なくとも一方を除去するフィルタを備えてもよい。また、光源部110は、遠赤色発光素子114の光出射側に配置されたフィルタであって、685nm未満の光、及び、780nmより大きい光の少なくとも一方を除去するフィルタを備えてもよい。
【0031】
基板116は、赤色発光素子112及び遠赤色発光素子114が実装された基板である。基板は、例えば、プリント配線基板であり、複数の赤色発光素子112及び遠赤色発光素子114を電気的に接続する配線を含む。配線は、例えば銅などの金属を用いて形成されたパターン配線である。
【0032】
本実施の形態では、複数の赤色発光素子112及び複数の遠赤色発光素子114は、1以上の円周上に均等に配置されている。1以上の円周は、例えば、互いの中心が共通である複数の円周(すなわち、同心円)であるが、これに限らない。図2では、例えば、同心円を構成する2つの仮想的な円周に沿って、複数の赤色発光素子112及び複数の遠赤色発光素子114が配置されている。
【0033】
円周上における均等な配置の例としては、複数の赤色発光素子112及び複数の遠赤色発光素子114が円の中心を軸とする点対称又は回転対称な配置である。例えば、図2には、4回対称になるように、複数の赤色発光素子112及び複数の遠赤色発光素子114が配置されている例が示されている。これにより、基板116を平面視した場合に、赤色発光素子112及び遠赤色発光素子114の配置の偏りを減らすことができ、赤色光及び遠赤色光の照度分布の偏りを抑えることができる。なお、複数の赤色発光素子112及び複数の遠赤色発光素子114の配置は、特に限定されない。また、照明装置10は、配光を制御するレンズ等の光学素子を備えてもよい。
【0034】
制御部130は、光源部110の点灯及び消灯を制御する。制御部130は、電源(図示せず)から供給される電力を光源部110に供給する点灯回路部を含む。点灯回路部は、例えば、基板と、当該基板に実装された複数の回路素子とによって構成される。複数の回路素子は、集積回路(IC)素子、抵抗、ダイオード、トランジスタ、トランス、コイル、コンデンサ等の少なくとも1つを含む。複数の回路素子が電気的に接続されることによって、AC/DCコンバータ、昇圧回路、降圧回路等が構成されて、複数の赤色発光素子112及び複数の遠赤色発光素子114の各々に電力を供給することができる。
【0035】
制御部130は、制御用のマイクロコントローラを含んでもよい。マイクロコントローラは、例えば、プログラムが格納された不揮発性メモリ、プログラムを実行するための一時的な記憶領域である揮発性メモリ、入出力ポート、プログラムを実行するプロセッサ等を含んでいる。また、制御部130は、プログラム可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又は、LSI内の回路セルの接続及び設定が再構成可能なリコンフィギュラブルプロセッサであってもよい。制御部130が実行する機能の少なくとも一部は、ソフトウェアで実現されてもよく、ハードウェアで実現されてもよい。
【0036】
本実施の形態では、制御部130は、複数の赤色発光素子112及び複数の遠赤色発光素子114を全て同時に点灯及び消灯する。つまり、赤色発光素子112及び遠赤色発光素子114の各々の発光時間(点灯時間)及び消灯時間が同じになる。植物2には、赤色光と遠赤色光とが同時に同じ期間照射される。なお、制御部130は、赤色発光素子112と遠赤色発光素子114とを独立して制御してもよい。
【0037】
[育成用の光]
続いて、上述した照明装置10が照射する植物2の育成用の光の特徴について、具体的な実施例とともに説明する。
【0038】
上述したように、育成用の光は、610nm以上680nm以下の範囲の赤色光と、685nm以上780nm以下の範囲の遠赤色光と、を含んでいる。赤色光は、植物2の休眠を抑制して成長を促進することができる。一方で、赤色光は、植物2の花芽分化を抑制するため、開花、果実形成が遅延し、収穫時期が遅れるという問題がある。これに対して、遠赤色光は、赤色光による花芽分化の抑制効果を打ち消すことができる。このため、育成用の光は、赤色光と遠赤色光とを適切な放射照度の比率で含むことによって、投入電力に応じた効果的な電照栽培が可能になり、消費電力の低減と収穫量の向上との両立を図ることができる。
【0039】
具体的には、赤色光に対する遠赤色光の放射照度の比率は、0.94以上2.06以下である。赤色光に対する遠赤色光の放射照度の比率は、照明装置10が照射する育成用の光に含まれる赤色光の放射照度を1としたときの、照明装置10が照射する育成用の光に含まれる遠赤色光の放射照度で表される。以下では、赤色光に対する遠赤色光の放射照度の比率を“FR/R比率”と記載する。FR/R比率は、1より大きくてもよい。すなわち、遠赤色光の放射照度が赤色光の放射照度より大きくてもよい。これにより、適切な収穫時期で収穫量の向上を図ることができる。あるいは、FR/R比率は、1.1以上であってもよく、1.2以上であってもよく、1.5以上であってよく、1.8以上であってもよい。
【0040】
また、赤色光の放射照度は、0.085W/m以上である。遠赤色光の放射照度は、0.093W/m以上である。このように、赤色光及び遠赤色光の各々の放射照度が約0.1W/m又はそれ以上であることにより、特にイチゴの電照栽培に有用である。
【0041】
赤色光及び遠赤色光の各々の放射照度は、育成用の光の分光分布図(横軸が波長、縦軸が分光放射照度を表す)における面積で表される。具体的には、赤色光の放射照度は、610nm以上680nm以下の範囲の面積であり、例えば、図3図5における斜線の網掛けで表される範囲に相当する。遠赤色光の放射照度は、685nm以上780nm以下の範囲の面積であり、例えば、図3図5におけるドットの網掛けで表される範囲に相当する。
【0042】
ここで、図3及び図4は、実施例1及び2に係る照明装置から照射される光の分光分布図である。図5は、比較例1に係る照明装置から照射される光の分光分布図である。具体的には、図3図5はそれぞれ、FR/R比率が1.8、1.0、0.5を目標値として設計された照明装置からの光のスペクトルを表している。FR/R比率は、光源部110が含む赤色発光素子112及び遠赤色発光素子114の個数比、種類及び/又は供給する電力量等を調整することによって異ならせることができる。
【0043】
図3及び図4に示すように、実施例1及び2に係る照明装置からの育成用の光はいずれも、分光放射照度が極大値になる第1ピークP1及び第2ピークP2を有する。第1ピークP1のピーク波長(分光放射照度が極大値になるときの波長)は、610nm以上680nm以下である。また、第2ピークP2のピーク波長は、685nm以上780nm以下である。また、実施例1及び2に係る育成用の光の分光スペクトルでは、第1ピークP1と第2ピークP2との間に、分光放射照度の谷が存在する。
【0044】
具体的には、実施例1に係る育成用の光では、第1ピークP1のピーク波長は、620nm以上660nm以下であるが、640nm以上650nm以下であってもよい。図3に示す例では、第1ピークP1のピーク波長は、約645nmである。
【0045】
また、実施例1に係る育成用の光では、第1ピークP1のピーク波長における分光放射照度(第1ピーク分光放射照度)は、約11mW・m-2・nm-1以上、約14mW・m-2・nm-1以下であるが、約12mW・m-2・nm-1以上、約13mW・m-2・nm-1以下であってもよい。図3に示す例では、第1ピーク分光放射照度は、約12.7mW・m-2・nm-1である。
【0046】
また、実施例1に係る育成用の光では、第2ピークP2のピーク波長は、720nm以上760nm以下であるが、740nm以上750nm以下であってもよい。図3に示す例では、第2ピークP2のピーク波長は、約745nmである。
【0047】
また、実施例1に係る育成用の光では、第2ピークP2のピーク波長における分光放射照度(第2ピーク分光放射照度)は、第1ピーク分光放射照度よりも大きい値である。具体的には、第2ピーク分光放射照度は、約16mW・m-2・nm-1以上、約20mW・m-2・nm-1以下であるが、約17mW・m-2・nm-1以上、約18mW・m-2・nm-1以下であってもよい。図3に示す例では、第2ピーク分光放射照度は、約17.8mW・m-2・nm-1である。
【0048】
また、実施例1に係る育成用の光では、第1ピーク分光放射照度に対する第2ピーク分光放射照度の比率は、1以上2以下であるが、1.1以上1.8以下であってもよく、1.3以上1.6以下であってもよい。図3に示す例では、第1ピーク分光放射照度に対する第2ピーク分光放射照度の比率は、約1.4である。
【0049】
また、実施例1に係る育成用の光における第1ピークP1と第2ピークP2との間の谷の極小波長(分光放射照度が極小値となるときの波長)は、660nm以上700nm以下であるが、670nm以上690nm以下であってもよい。図3に示す例では、極小波長は、約680nmである。
【0050】
また、実施例1に係る育成用の光では、第1ピークP1と第2ピークP2との間の谷の極小波長における分光放射照度(極小分光放射照度)は、約1mW・m-2・nm-1以上、約4mW・m-2・nm-1以下であるが、約2mW・m-2・nm-1以上、約3mW・m-2・nm-1以下であってもよい。図3に示す例では、極小分光放射照度は、約2.8mW・m-2・nm-1である。
【0051】
また、実施例1に係る育成用の光では、第1ピーク分光放射照度に対する極小分光放射照度の比率は、0.1以上0.5以下であるが、0.4以下であってもよく、0.3以下であってもよい。図3に示す例では、第1ピーク分光放射照度に対する極小分光放射照度の比率は、約0.2である。
【0052】
また、実施例1に係る育成用の光では、波長が610nmのときの分光放射照度は、約2mW・m-2・nm-1以上、約6mW・m-2・nm-1以下であるが、約3mW・m-2・nm-1以上、約5mW・m-2・nm-1以下であってもよい。図3に示す例では、波長が610nmのときの分光放射照度は、約4.3mW・m-2・nm-1である。
【0053】
また、実施例1に係る育成用の光では、第1ピーク分光放射照度に対する波長が610nmのときの分光放射照度の比率は、0.2以上0.6以下であるが、0.5以下であってもよく、0.4以下であってもよい。図3に示す例では、第1ピーク分光放射照度に対する波長が610nmのときの分光放射照度の比率は、約0.35である。
【0054】
また、実施例1に係る育成用の光では、波長が780nmのときの分光放射照度は、約3mW・m-2・nm-1以下であるが、約2mW・m-2・nm-1以下であってもよい。図3に示す例では、波長が780nmのときの分光放射照度は、約1.3mW・m-2・nm-1である。
【0055】
また、実施例1に係る育成用の光では、第2ピーク分光放射照度に対する波長が780nmのときの分光放射照度の比率は、0.0以上0.3以下であるが、0.2以下であってもよく、0.1以下であってもよい。図3に示す例では、第2ピーク分光放射照度に対する波長が780nmのときの分光放射照度の比率は、約0.07である。
【0056】
また、図4に示すように、実施例2に係る育成用の光では、第1ピークP1のピーク波長は、620nm以上660nm以下であるが、640nm以上650nm以下であってもよい。図4に示す例では、第1ピークP1のピーク波長は、約640nmである。
【0057】
また、実施例2に係る育成用の光では、第1ピークP1のピーク波長における分光放射照度(第1ピーク分光放射照度)は、約12mW・m-2・nm-1以上、約15mW・m-2・nm-1以下であるが、約13mW・m-2・nm-1以上、約14mW・m-2・nm-1以下であってもよい。図4に示す例では、第1ピーク分光放射照度は、約13.2mW・m-2・nm-1である。
【0058】
また、実施例2に係る育成用の光では、第2ピークP2のピーク波長は、720nm以上760nm以下であるが、740nm以上750nm以下であってもよい。図4に示す例では、第2ピークP2のピーク波長は、約740nmである。
【0059】
また、実施例2に係る育成用の光では、第2ピークP2のピーク波長における分光放射照度(第2ピーク分光放射照度)は、第1ピーク分光放射照度よりも小さい値である。具体的には、第2ピーク分光放射照度は、約8mW・m-2・nm-1以上、約10mW・m-2・nm-1以下であるが、約9mW・m-2・nm-1以上、約11mW・m-2・nm-1以下であってもよい。図4に示す例では、第2ピーク分光放射照度は、約9.5mW・m-2・nm-1である。
【0060】
また、実施例2に係る育成用の光では、第1ピーク分光放射照度に対する第2ピーク分光放射照度の比率は、0.5以上1以下であるが、0.6以上0.9以下であってもよく、0.7以上0.8以下であってもよい。図4に示す例では、第1ピーク分光放射照度に対する第2ピーク分光放射照度の比率は、約0.72である。
【0061】
また、実施例2に係る育成用の光における第1ピークP1と第2ピークP2との間の谷の極小波長(分光放射照度が極小値となるときの波長)は、660nm以上700nm以下であるが、670nm以上690nm以下であってもよい。図4に示す例では、極小波長は、約685nmである。
【0062】
また、実施例2に係る育成用の光では、第1ピークP1と第2ピークP2との間の谷の極小波長における分光放射照度(極小分光放射照度)は、約1mW・m-2・nm-1以上、約4mW・m-2・nm-1以下であるが、約2mW・m-2・nm-1以上、約3mW・m-2・nm-1以下であってもよい。図4に示す例では、極小分光放射照度は、約2.5mW・m-2・nm-1である。
【0063】
また、実施例2に係る育成用の光では、第1ピーク分光放射照度に対する極小分光放射照度の比率は、0.1以上0.5以下であるが、0.4以下であってもよく、0.3以下であってもよい。図4に示す例では、第1ピーク分光放射照度に対する極小分光放射照度の比率は、約0.19である。
【0064】
また、実施例2に係る育成用の光では、波長が610nmのときの分光放射照度は、約2mW・m-2・nm-1以上、約6mW・m-2・nm-1以下であるが、約3mW・m-2・nm-1以上、約5mW・m-2・nm-1以下であってもよい。図4に示す例では、波長が610nmのときの分光放射照度は、約4.9mW・m-2・nm-1である。
【0065】
また、実施例2に係る育成用の光では、第1ピーク分光放射照度に対する波長が610nmのときの分光放射照度の比率は、0.2以上0.6以下であるが、0.5以下であってもよく、0.4以下であってもよい。図4に示す例では、第1ピーク分光放射照度に対する波長が610nmのときの分光放射照度の比率は、約0.37である。
【0066】
また、実施例2に係る育成用の光では、波長が780nmのときの分光放射照度は、約3mW・m-2・nm-1以下であるが、約2mW・m-2・nm-1以下であってもよく、1mW・m-2・nm-1以下であってもよい。図4に示す例では、波長が780nmのときの分光放射照度は、約0.6mW・m-2・nm-1である。
【0067】
また、実施例2に係る育成用の光では、第2ピーク分光放射照度に対する波長が780nmのときの分光放射照度の比率は、0.0以上0.3以下であるが、0.2以下であってもよく、0.1以下であってもよい。図4に示す例では、第2ピーク分光放射照度に対する波長が780nmのときの分光放射照度の比率は、約0.06である。
【0068】
なお、実施例1及び2に係る育成用の光はいずれも、ピーク波長が430nm以上490nm以下である第3ピークを含むが、第3ピークを含まなくてもよい。また、実施例1及び2に係る育成用の光は、610nm未満の波長成分の光を含んでいなくてもよい。また、数値範囲の例をいくつか例示したが、数値範囲の上限値及び下限値の一方は必須でなくてもよい。また、同種の複数の数値範囲例の上限値及び下限値が組み合わせられてもよい。
【0069】
図6は、実施例1及び2並びに比較例1に係る照明装置からの放射照度比率を示す図である。なお、実施例1-1及び1-2はそれぞれ、図3に示す分光スペクトルの光(FR/R比率の目標値が1.8)を照射するように設計された2つの照明装置である。実施例2-1及び2-2はそれぞれ、図4に示す分光スペクトルの光(FR/R比率の目標値が1.0)を照射するように設計された2つの照明装置である。比較例1-1及び比較例1-2はそれぞれ、図5に示す分光スペクトルの光(FR/R比率の目標値が0.5)を照射するように設計された2つの照明装置である。
【0070】
図6は、各照明装置からの光に含まれる赤色光の放射照度と遠赤色光の放射照度とを測定し、得られた測定値に基づいてFR/R比率を算出した結果を示している。測定位置は、水平面距離が0.0m、0.5m、1.0m、1.5mの4ヶ所である。水平面距離は、所定の平面(測定面)から上方1.0mの位置に設置された照明装置の直下点を0.0mとし、当該直下点からの平面内での距離によって表される。
【0071】
図6に示すように、FR/R比率は、水平面距離によって異なっている。ここでは、水平面距離が長くなる程、FR/R比率が大きくなっているが、これに限定されない。赤色発光素子112及び遠赤色発光素子114の個数、配置等によって、水平面距離が短い程、FR/R比率が大きくなっていてもよい。
【0072】
[電照栽培結果]
以下では、本実施の形態に係る照明装置10を用いた電照栽培の実験結果について説明する。
【0073】
図7は、電照栽培の実験条件を説明するための図である。図7には、2つの照明装置10A及び10Bと、電照栽培の対象となる複数の植物2とを上面視で表している。植物2はイチゴである。照明装置10A及び10Bをそれぞれ中心として、その両側に存在する区域21A、22A、21B、22Bの各々に、10株ずつ植物2(イチゴ)が植えられている。区域21A及び22Aはいずれも、照明装置10Aからの水平面距離が1.5mの円形範囲30A内に配置されている。区域21B及び22Bはいずれも、照明装置10Bからの水平面距離が1.5mの円形範囲30B内に配置されている。円形範囲30Aは、照明装置10Aからの育成用の光が照射される照射範囲に相当する。円形範囲30Bは、照明装置10Bからの育成用の光が照射される照射範囲に相当する。
【0074】
照明装置10Aは、図3に示したFR/R比率の目標値が1.8である実施例1に係る照明装置10である。照明装置10Bは、図4に示したFR/R比率の目標値が1.0である実施例2に係る照明装置10である。また、図5に示したFR/R比率の目標値が0.5である比較例1に係る照明装置、及び、比較例2に係る白熱電球の各々についても、図7に示した条件で電照栽培を行った。
【0075】
電照栽培では、11月から2月又は3月にかけて、毎日、夜間に約2時間~約3時間、各照明装置を点灯させた。赤色光及び遠赤色光は、同時に同じ期間、植物2に照射される。毎日の点灯時間や点灯の終了時期等は、植物2(イチゴ)の成長具合に応じて適宜調整した。なお、各実施例及び各比較例において、点灯及び消灯のタイミング、点灯時間等は同じ条件とした。
【0076】
図8は、イチゴの収穫量を月毎に示す図である。図8では、照明装置毎(実施例及び比較例毎)の月毎の収穫量を区画毎に表している。また、区画毎の収穫量を合計することで、照明装置毎の月毎の収穫量と、11月から3月にかけての収穫量の合計と、を表している。
【0077】
比較例2に係る白熱電球は、一般的に電照栽培で使用されている電球である。白熱電球では、十分な収穫量を得ることができる一方で、消費電力が高いという問題がある。これに対して、実施例1及び2に係る照明装置では、LED等の発光素子を利用しているため、消費電力を低減することができる。また、図8に示すように、実施例1及び2に係る照明装置では、白熱電球を用いた場合の収穫量と同等以上の収穫量が確保できている。一方で、比較例1に係る照明装置では、収穫量が白熱電球を用いた場合の収穫量よりも少なくなっている。
【0078】
このように、実施例1及び2に係る照明装置によれば、消費電力の低減と収穫量の向上とを両立することができる。具体的には、FR/R比率が0.94以上2.06以下であれば、消費電力の低減と収穫量の向上とを両立することができる。
【0079】
また、現状の電照栽培では、複数の白熱電球が利用されており、全ての白熱電球の寿命が同時に切れるとは限らない。一般的には、白熱電球の寿命が切れたものから順次、新しい白熱電球に置き換えることが行われている。図8に示したように、実施例1及び2に係る照明装置の収穫量が比較例2に係る白熱電球の収穫量と同等以上であるため、既存の白熱電球を照明装置に置き換えることが可能になる。このとき、実施例1又は2に係る照明装置は、既存の白熱電球と同じ使い方ができる。つまり、点灯及び消灯のタイミング等は、白熱電球と同じでよい。
【0080】
この結果、多くの白熱電球に混じって実施例1又は2に係る照明装置が利用されたとしても、局所的に収穫量及び収穫時期のばらつきが起こりにくく、安定した収穫を実現することができる。一度に全ての白熱電球を置き換える場合に比べて、初期コストを低減することができ、かつ、作業性の悪化を抑制することができる。
【0081】
[まとめ]
以上のように、本発明の第1態様に係る照明装置は、例えば、上述した照明装置10であり、植物2の育成用の光を照射する光源部110を備える。育成用の光は、610nm以上680nm以下の範囲の赤色光と、685nm以上780nm以下の範囲の遠赤色光と、を含む。赤色光に対する遠赤色光の放射照度の比率は、0.94以上2.06以下である。
【0082】
これにより、投入電力に応じた効果的な電照栽培が可能になるので、消費電力の低減と収穫量の向上とを両立することができる。
【0083】
また、本発明の第2態様に係る照明装置は、第1態様に係る照明装置であって、赤色光の放射照度は、0.085W/m以上であり、遠赤色光の放射照度は、0.093W/m以上である。
【0084】
これにより、特に植物2がイチゴの場合に、効率良く電照栽培が可能である。
【0085】
また、本発明の第3態様に係る照明装置は、第1態様又は第2態様に係る照明装置であって、光源部110は、赤色光を発する複数の赤色発光素子112と、遠赤色光を発する複数の遠赤色発光素子114と、を含む。
【0086】
これにより、赤色光及び遠赤色光の各々を発する発光素子を個別に設けることで、赤色光及び遠赤色光の最適化が容易になる。このため、消費電力を抑えながら、収穫量の向上を実現することができる。
【0087】
また、本発明の第4態様に係る照明装置は、第3態様に係る照明装置であって、複数の赤色発光素子112及び複数の遠赤色発光素子114は、1以上の円周上に均等に配置されている。
【0088】
これにより、赤色光及び遠赤色光の照度分布の偏りを抑制することができるので、収穫量のばらつきの発生を抑制することができる。
【0089】
また、本発明の第5態様に係る照明装置は、第1態様~第4態様のいずれか1つに係る照明装置であって、光源部110を収容する電球型筐体11を備える。
【0090】
これにより、電球型ランプを利用した既存の電力インフラ設備を利用することができるので、既存の電照栽培システムへの導入が容易になる。
【0091】
また、本発明の第6態様に係る照明装置は、第1態様~第5態様のいずれか1つに係る照明装置であって、植物2は、イチゴ又は菊である。
【0092】
これにより、植物2がイチゴの場合は、11月頃から2月頃又は3月頃にかけて、また、植物2が菊の場合は、親株に対して一年を通して毎日、電照栽培が行われる。長期にわたる電照栽培における消費電力の低減が期待できるので、極めて有用である。
【0093】
(その他)
以上、本発明に係る照明装置について、上記の実施の形態などに基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。
【0094】
例えば、光源部110は、赤色発光素子112及び遠赤色発光素子114の代わりに、赤色光及び遠赤色光の両方を発する1種類の発光素子(LED)を備えてもよい。例えば、育成用の光を発する発光素子は、610nm以上780nm以下の範囲の全域に亘って所定強度以上の強度を有するブロードな光を育成用の光として発する。あるいは、育成用の光を発する発光素子は、610nm以上680nm以下の範囲内と、685nm以上780nm以下の範囲内との各々に発光強度のピークを有する狭帯域の光を育成用の光として発してもよい。
【0095】
また、例えば、照明装置10は、電球型ランプでなくてもよい。照明装置10は、シーリングライト、ダウンライト、スポットライト、ライトバー等の所定の構造物に固定された照明装置であってもよい。
【0096】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0097】
2 植物
10、10A、10B 照明装置
11 電球型筐体
110 光源部
112 赤色発光素子
114 遠赤色発光素子
116 基板
130 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8