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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178622
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】積層体、包装材料及び包装体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20241218BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241218BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20241218BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B27/00 H
B32B9/00 A
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096898
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】田中 亮太
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AB02
3E086AC07
3E086AC22
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA15
3E086BA25
3E086BA29
3E086BA33
3E086BB01
3E086BB02
3E086BB05
3E086BB22
3E086BB41
3E086BB51
3E086BB52
3E086BB55
3E086BB62
3E086BB68
3E086BB71
3E086BB85
3E086CA01
3E086CA11
3E086CA35
3E086DA08
4F100AA17
4F100AA17A
4F100AA19
4F100AA19A
4F100AA20
4F100AA20A
4F100AK04
4F100AK04B
4F100AK04C
4F100AK07
4F100AK07B
4F100AK07C
4F100AK42
4F100AK42B
4F100AK51
4F100AK51D
4F100AK51E
4F100AT00B
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100CB00
4F100CB00D
4F100CB00E
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4F100CB03
4F100CB03C
4F100EH66
4F100EH66A
4F100EJ42
4F100GB15
4F100JD02
4F100JD02E
4F100JJ03
4F100JK06
4F100JL11
4F100JL12
4F100JL12C
(57)【要約】
【課題】リサイクル適性、ヒートシール適性、及び内容物の視認性に優れる積層体を提供すること。
【解決手段】第一の無機酸化物蒸着層と、基材層と、シーラント層と、がこの順で積層された構造を有し、基材層及びシーラント層が共にポリエチレンを、又は共にポリプロピレンを含む、積層体。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の無機酸化物蒸着層と、基材層と、シーラント層と、がこの順で積層された構造を有し、
前記基材層及び前記シーラント層が共にポリエチレンを、又は共にポリプロピレンを含む、積層体。
【請求項2】
前記基材層と前記シーラント層との間にさらに中間層を備え、前記基材層、前記中間層及び前記シーラント層がいずれもポリエチレンを、又はいずれもポリプロピレンを含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記基材層が二軸延伸フィルムである、請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記中間層上に形成された第二の無機酸化物蒸着層をさらに備える、請求項2に記載の積層体。
【請求項5】
前記基材層と前記中間層とが第一の接着剤層を介して積層され、前記中間層と前記シーラント層とが第二の接着剤層を介して積層され、前記第二の接着剤層がガスバリア性接着剤を含む、請求項2に記載の積層体。
【請求項6】
積層体に占めるポリエチレン又はポリプロピレンの割合が90質量%以上である、請求項1に記載の積層体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の積層体を含む包装材料。
【請求項8】
スタンディングパウチである、請求項7に記載の包装材料。
【請求項9】
請求項7に記載の包装材料と、前記包装材料に収容された内容物とを備える包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、それを用いた包装材料、及び包装体に関する。より詳しくは、本発明は、材料のリサイクル適性に優れる環境負荷の小さな積層体、それを用いた包装材料及び包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
包装袋は、包装する内容物の性質、内容物の量、内容物の変質を防ぐための後処理、包装袋を運搬する形態、包装袋を開封する方法、廃棄する方法などによって、さまざまな素材が組み合わせて用いられている。
【0003】
たとえば、積層したフィルムを用いるフレキシブルパッケージの包装袋においては、包装袋の機械的強度を得るためにポリプロピレンやポリエステルなどの二軸延伸フィルムと、包装袋として内容物を封止するためにポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体などのシーラントフィルムとを組み合わせて用いられている。また、内容物の劣化を抑制するため、それらのフィルムにアルミ箔や、エチレンビニルアルコール共重合体を積層することなども行われている。
【0004】
上記の機能分離した各種素材を用いた積層体は、内容物の包装から、輸送、保管、開封などの各過程での適性に重点をおいて設計されたものである。しかしながら、近年の環境問題への意識の高まりから、各種製品の省資源、リサイクル適性などの機能に重点がおかれるようになり、包装袋に用いられる積層体にも同様の機能が求められてきている。一般に、包装材料に含まれる主要な樹脂の割合が90質量%以上であるとリサイクル性が高いと考えられているが、従来の包装材料の多くは複数の樹脂材料や場合により紙、金属材料を含んで構成されており、かつこの基準を満たしていないため、リサイクルされていないのが現状である。
【0005】
特許文献1には、基材及びヒートシール層をいずれもポリエチレンから構成した例が記載されている。基材及びヒートシール層を同一素材とした、このようなポリエチレン構成の積層体や、或いはポリプロピレン構成の積層体は、上記リサイクル性の基準をクリアし易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2020-517502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ポリエチレンフィルム(PEフィルム)やポリプロピレンフィルム(PPフィルム)等は、従来基材として使用されてきた二軸延伸ポリアミドフィルム(ONyフィルム)、二軸延伸ポリエステルフィルム(PETフィルム)等と比較して融点が低いため、製袋加工時に高温でヒートシールを行えないという事情がある。良好なヒートシール適性を得るためには、積層体には基材として使用されるPEフィルムやPPフィルムをヒートシールの熱から保護するための保護層のような構成が必要となる。
【0008】
一方、積層体には実用性の観点から内容物の視認性が良好なことが求められる場合があるため、基材上に設ける保護層は視認性を低下させないようなものである必要がある。
【0009】
特許文献1では、酸素及び水蒸気に対する良好なバリア性を基材に付与する目的で、基材上に1.0~3.6の光学密度を有する金属層(具体例としてはアルミニウムの層)を設けることが提案されている。しかしながらそのような金属層を設けると、内容物の良好な視認性を維持することは難しい。また、金属層がリサイクル性を低下させる可能性もある。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、リサイクル適性、ヒートシール適性、及び内容物の視認性に優れる積層体を提供することを目的とする。
本発明はまた、当該積層体を用いた包装材料及び包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面は、例えば以下の態様を含む。
[1]
第一の無機酸化物蒸着層と、基材層と、シーラント層と、がこの順で積層された構造を有し、
前記基材層及び前記シーラント層が共にポリエチレンを、又は共にポリプロピレンを含む、積層体。
[2]
前記基材層と前記シーラント層との間にさらに中間層を備え、前記基材層、前記中間層及び前記シーラント層がいずれもポリエチレンを、又はいずれもポリプロピレンを含む、[1]に記載の積層体。
[3]
前記基材層が二軸延伸フィルムである、[1]又は[2]に記載の積層体。
[4]
前記中間層上に形成された第二の無機酸化物蒸着層をさらに備える、[2]に記載の積層体。
[5]
前記基材層と前記中間層とが第一の接着剤層を介して積層され、前記中間層と前記シーラント層とが第二の接着剤層を介して積層され、前記第二の接着剤層がガスバリア性接着剤を含む、[2]又は[4]に記載の積層体。
[6]
積層体に占めるポリエチレン又はポリプロピレンの割合が90質量%以上である、[1]~[5]のいずれか一に記載の積層体。
[7]
[1]~[6]のいずれか一に記載の積層体を含む包装材料。
[8]
スタンディングパウチである、[7]に記載の包装材料。
[9]
[7]又は[8]に記載の包装材料と、前記包装材料に収容された内容物とを備える包装体。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、リサイクル適性、ヒートシール適性、及び内容物の視認性に優れる積層体が提供される。
また、本発明によれば、当該積層体を用いた包装材料及び包装体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の積層体の一実施形態を示す断面模式図である。
図2】本発明の積層体の一実施形態を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、場合により図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
<積層体>
図1は、本発明の積層体の一実施形態を示す断面模式図である。図1に示す積層体1は、基材層10と、第一の接着剤層40と、中間層20と、第二の接着剤層50と、シーラント層30とを備える。
基材層10はその外面10a側に第一の無機酸化物蒸着層11を有し、中間層20はその一方の面に第二の無機酸化物蒸着層14を有する。
基材層10はその内面10b側に印刷層12を有し、中間層20はその第二の無機酸化物蒸着層14上にガスバリア性被覆層15を備える。
基材層10、中間層20及びシーラント層30は、リサイクル適性(樹脂素材の溶融を経た再形成のしやすさ)の観点から、同一の素材からなることが好ましい。同一の素材からなるとは、例えばこれらの層が共にポリエチレンフィルムから構成されることや、共にポリプロピレンフィルムから構成されることを言う。以下、各層について説明する。
【0016】
(基材層)
基材層10はポリエチレン又はポリプロピレンを含む層であり、ポリエチレンフィルム又はポリプロピレンフィルムから構成される層であってよい。
ポリエチレンフィルムは、ポリエチレンを70質量%以上、或いは85質量%以上含むフィルムであってよく、ポリエチレンを100質量%含むフィルムであってもよい。
ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレンを70質量%以上、或いは85質量%以上含むフィルムであってよく、ポリプロピレンを100質量%含むフィルムであってもよい。
【0017】
ポリエチレンとしては、蒸着加工、印刷加工、製袋加工、充填適性等の観点から、高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。また、延伸適性を含む製膜性や耐衝撃性、透明性(視認性)の観点から、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)及び超低密度ポリエチレン(VLDPE)が挙げられる。
【0018】
柔軟性などの物性を向上させるために、例えば、共押出法により形成される、高密度ポリエチレン(HDPE)/中密度ポリエチレン(MDPE)/低密度ポリエチレン(LDPE)/中密度ポリエチレン(MDPE)/高密度ポリエチレン(HDPE)のような多層構成フィルムを、基材層10として用いてもよい。
【0019】
ポリプロピレンとしては、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、ターポリマー等が挙げられ、用途や要求性能に合わせてポリマー種を適宜選択することができる。例えば透明性の観点からは、ホモポリマー又はランダムコポリマーを用いることができる。積層体の剛性や耐熱性等を重視する場合にはホモポリマーを用いることができ、耐衝撃性等を重視する場合にはランダムコポリマーを用いることができる。ポリプロピレンとして、バイオマス由来のポリプロピレンや、メカニカルリサイクル又はケミカルリサイクルされたポリプロピレンを用いてもよい。
【0020】
易接着性やシール性を付与する目的で、コア層であるホモポリマー上に、共押出法によりコポリマーやターポリマーをスキン層として形成した多層構成フィルムを、基材層10として用いてもよい。
【0021】
基材層10を構成するフィルムは、延伸フィルムであってよく、無延伸フィルムであってよい。但し、耐衝撃性、耐熱性、耐水性、寸法安定性等の観点から、フィルムは延伸フィルムであってよい。これによりホット充填を施す用途に、積層体をより好適に用いることができる。延伸方法としては特に限定されず、インフレーションによる延伸、一軸延伸、二軸延伸等、寸法が安定したフィルムが供給可能であれば、どのような方法でもよい。
【0022】
基材層10の厚さは特に限定されない。用途に応じ、当該厚さを6μm以上200μm以下とすることができるが、優れた耐衝撃性と優れたガスバリア性とを得る観点から、9μm以上50μm以下であってよく、12μm以上38μm以下であってよい。
【0023】
基材層10を構成するフィルムには、第一の無機酸化物蒸着層との密着性を向上させるため、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理等の各種前処理を施してよい。
【0024】
基材層10を構成するフィルムは、基材層としての所期の性能を損なわない範囲で、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃化剤、無機充填材、有機充填剤、染料、顔料等を含むことができる。
【0025】
(第一の無機酸化物蒸着層)
第一の無機酸化物蒸着層11は、製袋や充填密封時にヒートシールする際の不具合を防止し、ヒートシール適性を確保するために設けられる。具体的には、基材層10とヒートシールバーとが接した場合の、シワなどの外観上の不具合や、基材層10の熱溶着によるヒートシールバーへの付着(とられ)の発生を抑制することができる。第一の無機酸化物蒸着層11は基材層10に耐熱性を付与するものであり、積層体1の最外層として設けられてよい。
【0026】
第一の無機酸化物蒸着層11の構成としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化錫等の無機酸化物(金属酸化物)からなる蒸着層が挙げられる。透明性及びバリア性の観点から、無機酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化珪素、及び酸化マグネシウムからなる群より選択されてよい。さらに、コストを考慮すると、酸化アルミニウム、酸化珪素から選択されてよい。加工時に引っ張り延伸性に優れる観点から、第一の無機酸化物蒸着層11は酸化珪素を含む層であることがより好ましい。第一の無機酸化物蒸着層11を用いることで、積層体1のリサイクル適性及び内容物の視認性に影響を与えない範囲のごく薄い層で、基材層10に耐熱性を付与することができる。
【0027】
第一の無機酸化物蒸着層11として酸化珪素を選択した場合のO/Si比は1.7以上であることが望ましい。O/Si比が1.7以上であるとケイ素原子の未結合手の含有割合が抑制されて良好な透明性が得られ易い。また、O/Si比は2.0以下であることが好ましい。O/Si比が2.0以下であるとSiOの結晶性が高くなって蒸着層が硬くなり過ぎることを防ぐことができ、良好な引張り耐性が得られる。これらの効果をより十分に得る観点から、O/Si比は1.75以上1.9以下であることが好ましく、1.8以上1.85以下であることがより好ましい。
【0028】
第一の無機酸化物蒸着層11として酸化アルミニウムを選択した場合のO/Al比は1.4以上であることが望ましい。O/Al比が1.4以上であるとアルミニウム原子の未結合手の含有割合が抑制されて良好な透明性が得られ易い。また、O/Al比は1.7以下であることが好ましい。O/Al比が1.7以下であるとAlOの結晶性が高くなって蒸着層が硬くなり過ぎることを防ぐことができ、良好な引張り耐性が得られる。これらの効果をより十分に得る観点から、O/Al比は1.4以上1.7以下であることが好ましく、1.5以上1.55以下であることがより好ましい。
【0029】
第一の無機酸化物蒸着層の厚さは、5nm以上50nm以下であることが好ましい。厚さが5nm以上であると、十分な耐熱性を基材層に付与することができる。また、厚さが50nm以下であると、層の内部応力による変形によりクラックが発生することを抑制し、耐熱性の低下を抑制することができると共に、リサイクル適性及び内容物の視認性も維持し易い。この観点から、当該厚さは10nm以上、又は20nm以上であることがより好ましく、40nm以下、又は35nm以下であることがより好ましい。
【0030】
積層体は、包装する内容物の重量に応じて、厚さが変更される。軽量の内容物を包装する場合には、コストを考慮して薄くし、重量物を充填する場合には、強度を考慮して厚くするのが一般的である。積層体の厚さが増すにつれて、シーラント層のヒートシール面が熱溶融するのに必要な熱量が増加する。このため、第一の無機酸化物蒸着層11の厚さは、積層体の総厚に比例して変化させることが好ましい。積層体の総厚に対する第一の無機酸化物蒸着層11の厚さの割合は、0.001%以上0.1%以下であることが好ましい。この割合が0.001%以上であると、所望の耐熱性が得られやすく、より優れたヒートシール性を得ることができ、0.1%以下であると、リサイクル適性及び内容物の視認性を維持しつつ、第一の無機酸化物蒸着層11の材料の無駄を抑制できると共に、ヒートシールに必要な熱量の増加を抑制できる。
【0031】
第一の無機酸化物蒸着層11は、例えば真空成膜で形成することができる。真空成膜では、物理気相成長法あるいは化学気相成長法を用いることができる。物理気相成長法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。化学気相成長法としては、熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
上記真空成膜では、抵抗加熱式真空蒸着法、EB(Electron Beam)加熱式真空蒸着法、誘導加熱式真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、デュアルマグネトロンスパッタリング法、プラズマ化学気相堆積法(PECVD法)等が特に好ましく用いられる。ただし、生産性を考慮すれば真空蒸着法が優れている。真空蒸着法の加熱手段としては電子線加熱方式や抵抗加熱方式、誘導加熱方式のいずれかの方式を用いることが好ましい。
【0033】
第一の無機酸化物蒸着層11を基材層10上に形成する際には、後述のアンカーコート層を基材層10上に形成してもよい。また、第一の無機酸化物蒸着層11の保護を目的として、オーバーコート層を第一の無機酸化物蒸着層11上に形成してもよい。オーバーコート層は、後述のガスバリア性被覆層を形成する材料から特に耐熱性に優れる材料を用いて形成することができる。また、滑り性や印字適性の観点から、マットニス剤等を用いてオーバーコート層を形成してもよい。
【0034】
(印刷層)
印刷層12は、基材層10において、第一の無機酸化物蒸着層11が形成される側である外面10aとは反対側、すなわち中間層20と積層される側である内面10bに形成することができる。印刷層12(画像)の形成方法は、特に限定されることなく通常のグラビア印刷やフレキソ印刷などにより、それぞれに応じたインキにより形成することができる。インキとしては、溶剤系インキと、水系インキとがあるが、環境面から水系インキを用いることが好ましい。また、基材層10の内面10bには、印刷層12の密着性を向上させるために、コロナ処理やプラズマ処理などの表面処理を行ってもよい。
【0035】
(中間層)
中間層20はポリエチレン又はポリプロピレンを含む層であり、ポリエチレンフィルム又はポリプロピレンフィルムから構成される層であってよい。
ポリエチレンフィルムは、ポリエチレンを70質量%以上、或いは85質量%以上含むフィルムであってよく、ポリエチレンを100質量%含むフィルムであってもよい。
ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレンを70質量%以上、或いは85質量%以上含むフィルムであってよく、ポリプロピレンを100質量%含むフィルムであってもよい。
【0036】
ポリエチレンとしては、蒸着加工、印刷加工、製袋加工、充填適性等の観点から、高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。また、延伸適性を含む製膜性や耐衝撃性、透明性(視認性)の観点から、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)及び超低密度ポリエチレン(VLDPE)が挙げられる。
【0037】
柔軟性などの物性を向上させるために、例えば、共押出法により形成される、高密度ポリエチレン(HDPE)/中密度ポリエチレン(MDPE)/低密度ポリエチレン(LDPE)/中密度ポリエチレン(MDPE)/高密度ポリエチレン(HDPE)のような多層構成フィルムを、中間層20として用いてもよい。
【0038】
ポリプロピレンとしては、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、ターポリマー等が挙げられ、用途や要求性能に合わせてポリマー種を適宜選択することができる。例えば透明性の観点からは、ホモポリマー又はランダムコポリマーを用いることができる。積層体の剛性や耐熱性等を重視する場合にはホモポリマーを用いることができ、耐衝撃性等を重視する場合にはランダムコポリマーを用いることができる。ポリプロピレンとして、バイオマス由来のポリプロピレンや、メカニカルリサイクル又はケミカルリサイクルされたポリプロピレンを用いてもよい。
【0039】
易接着性やシール性を付与する目的で、コア層であるホモポリマー上に、共押出法によりコポリマーやターポリマーをスキン層として形成した多層構成フィルムを、中間層20として用いてもよい。
【0040】
中間層20を構成するフィルムは、延伸フィルムであってよく、無延伸フィルムであってよい。但し、耐衝撃性、耐熱性、耐水性、寸法安定性等の観点から、フィルムは延伸フィルムであってよい。これによりホット充填を施す用途に、積層体をより好適に用いることができる。延伸方法としては特に限定されず、インフレーションによる延伸、一軸延伸、二軸延伸等、寸法が安定したフィルムが供給可能であれば、どのような方法でもよい。
【0041】
中間層20の厚さは特に制限されない。用途に応じ、当該厚さを9μm以上50μm以下とすることができるが、12μm以上35μm以下であることが好ましく、12μm以上30μm以下であることがより好ましい。中間層20の厚さを9μm以上とすることにより、積層体の強度及び耐熱性を向上でき、中間層20の厚さを50μm以下とすることにより、積層体の加工適性を向上できる。
【0042】
中間層20を構成するフィルムには、第二の無機酸化物蒸着層等との密着性を向上させるため、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理等の各種前処理を施してよい。
【0043】
中間層20を構成するフィルムは、中間層としての所期の性能を損なわない範囲で、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃化剤、無機充填材、有機充填剤、染料、顔料等を含むことができる。
【0044】
(第二の無機酸化物蒸着層)
積層体1において、中間層20の少なくとも一方の面には、第二の無機酸化物蒸着層14が形成されていてよい。本実施形態において、第二の無機酸化物蒸着層14は、中間層20の第二の接着剤層50に対向する面に形成されているが、反対面に形成してもよい。第二の無機酸化物蒸着層14は、積層体1に酸素バリア性及び水蒸気バリア性を付与する。
【0045】
第二の無機酸化物蒸着層14の構成は、第一の無機酸化物蒸着層11の項にて示したとおりである。第二の無機酸化物蒸着層14を用いることで、積層体1のリサイクル性に影響を与えない範囲のごく薄い層で、高いバリア性を得ることができる。
【0046】
第二の無機酸化物蒸着層14として酸化珪素を選択した場合のO/Si比は1.7以上であることが望ましい。O/Si比が1.7以上であるとケイ素原子の未結合手の含有割合が抑制されて良好な透明性が得られ易い。また、O/Si比は2.0以下であることが好ましい。O/Si比が2.0以下であるとSiOの結晶性が高くなって蒸着層が硬くなり過ぎることを防ぐことができ、良好な引張り耐性が得られる。また、O/Si比が2.0以下であるとフィルムの収縮にも追従しやすく、バリア性の低下を抑制することができる。これらの効果をより十分に得る観点から、O/Si比は1.75以上1.9以下であることが好ましく、1.8以上1.85以下であることがより好ましい。
【0047】
第二の無機酸化物蒸着層14として酸化アルミニウムを選択した場合のO/Al比は1.4以上であることが望ましい。O/Al比が1.4以上であるとアルミニウム原子の未結合手の含有割合が抑制されて良好な透明性が得られ易い。また、O/Al比は1.7以下であることが好ましい。O/Al比が1.7以下であるとAlOの結晶性が高くなって蒸着層が硬くなり過ぎることを防ぐことができ、良好な引張り耐性が得られる。また、O/Al比が1.7以下であるとフィルムの収縮にも追従しやすく、バリア性の低下を抑制することができる。これらの効果をより十分に得る観点から、O/Al比は1.4以上1.7以下であることが好ましく、1.5以上1.55以下であることがより好ましい。
【0048】
酸化アルミニウムからなる蒸着層の膜厚は、5nm以上30nm以下であることが好ましい。膜厚が5nm以上であると、十分なガスバリア性を得ることができる。また、膜厚が30nm以下であると、薄膜の内部応力による変形によりクラックが発生することを抑制し、ガスバリア性の低下を抑制することができる。なお、膜厚が30nmを超えると、材料使用量の増加、及び膜形成時間の長時間化等に起因してコストが増加し易いため、経済的観点からも好ましくない。上記と同様の観点から、蒸着層の膜厚は、7nm以上15nm以下であることがより好ましい。
【0049】
酸化珪素からなる蒸着層の膜厚は、10nm以上50nm以下であることが好ましい。膜厚が10nm以上であると、十分なガスバリア性を得ることができる。また、膜厚が50nm以下であると、薄膜の内部応力による変形によりクラックが発生することを抑制し、ガスバリア性の低下を抑制することができる。なお、膜厚が50nmを超えると、材料使用量の増加、及び膜形成時間の長時間化等に起因してコストが増加し易いため、経済的観点からも好ましくない。上記と同様の観点から、蒸着層の膜厚は、20nm以上40nm以下であることがより好ましい。
【0050】
第二の無機酸化物蒸着層14の形成方法は、第一の無機酸化物蒸着層11の項にて示したとおりである。
【0051】
(アンカーコート層)
中間層20の第二の無機酸化物蒸着層14が形成される側の面に、公知のアンカーコート剤を用いて、アンカーコート層を形成してもよい。これにより、無機酸化物からなる蒸着層の密着性を向上させることができる。アンカーコート剤としては、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂等を例示できる。耐熱性及び層間接着強度の観点からは、ポリエステル系ポリウレタン樹脂が好ましい。
【0052】
アンカーコート剤として、ポリビニルアルコール系樹脂を用いてもよい。ポリビニルアルコール系樹脂としては、ビニルエステル単位がケン化されてなるビニルアルコール単位を有するものであればよく、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)が挙げられる。
【0053】
アンカーコート剤としてポリビニルアルコール系樹脂を用いる場合、アンカーコート層の形成方法としては、ポリビニルアルコール系樹脂溶液を用いた塗布や、多層押出等が挙げられる。多層押出の場合は、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン等の接着性樹脂を介して積層してよい。
【0054】
(ガスバリア性被覆層)
ガスバリア性の向上及び第二の無機酸化物蒸着層14の保護を目的として、第二の無機酸化物蒸着層14上に、ガスバリア性被覆層15を設けてもよい。特に限定されるものではないが、ガスバリア性被覆層15は、水酸基含有高分子化合物を含んでよく、具体的には、水酸基含有高分子化合物及びその加水分解物の少なくともいずれかと、金属アルコキシド、シランカップリング剤及びそれらの加水分解物からなる群より選択される少なくとも1種と、を含有する組成物の加熱乾燥物であってよい。
【0055】
ガスバリア性被覆層15は、例えば、水酸基含有高分子化合物と、金属アルコキシド及び/又はシランカップリング剤とを、水或いは水/アルコール混合液に添加して得られる組成物(以下、オーバーコート剤という)を用いて形成することができる。オーバーコート剤は、例えば、水溶性高分子である水酸基含有高分子化合物を水系(水或いは水/アルコール混合)溶媒で溶解させた溶液と、金属アルコキシド及び/又はシランカップリング剤とを直接、或いは予めこれらを加水分解させるなどの処理を行ったものとを混合して調製することができる。
【0056】
水酸基含有高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。これらの中でもポリビニルアルコール(PVA)をガスバリア性被覆層のオーバーコート剤に用いた場合、ガスバリア性が特に優れるので好ましい。
【0057】
金属アルコキシドとしては、下記一般式(I)で表わされる化合物が挙げられる。
M(OR(Rn-m …(I)
上記一般式(I)中、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1~8の1価の有機基であり、メチル基、エチル基等のアルキル基であることが好ましい。MはSi、Ti、Al、Zr等のn価の金属原子を示す。mは1~nの整数である。なお、R又はRが複数存在する場合、R同士又はR同士は同一でも異なっていてもよい。
【0058】
金属アルコキシドとしては、具体的には、テトラエトキシシラン〔Si(OC〕、トリイソプロポキシアルミニウム〔Al(O-2’-C〕などが挙げられる。テトラエトキシシラン及びトリイソプロポキシアルミニウムは、加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定であるので好ましい。
【0059】
シランカップリング剤としては、下記一般式(II)で表される化合物が挙げられる。
Si(OR11(R123-p13 …(II)
上記一般式(II)中、R11はメチル基、エチル基等のアルキル基を示し、R12はアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルケニル基、アクリロキシ基で置換されたアルキル基、又は、メタクリロキシ基で置換されたアルキル基等の1価の有機基を示し、R13は1価の有機官能基を示し、pは1~3の整数を示す。なお、R11又はR12が複数存在する場合、R11同士又はR12同士は同一でも異なっていてもよい。R13で示される1価の有機官能基としては、グリシジルオキシ基、エポキシ基、メルカプト基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、又は、イソシアネート基を含有する1価の有機官能基が挙げられる。
【0060】
シランカップリング剤としては、具体的には、ビニルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のシランカップリング剤などが挙げられる。
【0061】
また、シランカップリング剤は、上記一般式(II)で表される化合物が重合した多量体であってもよい。多量体としては三量体が好ましく、より好ましくは1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートである。これは、3-イソシアネートアルキルアルコキシシランの縮重合体である。この1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートは、イソシア部には化学的反応性はなくなるが、ヌレート部の極性により反応性は確保されることが知られている。一般的には、3-イソシアネートアルキルアルコキシランと同様に接着剤などに添加され、接着性向上剤として知られている。よって1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートを、水酸基含有高分子化合物に添加することにより、水素結合によりガスバリア性被覆層の耐水性を向上させることができる。3-イソシアネートアルキルアルコキシランは反応性が高く、液安定性が低いのに対し、1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートは、ヌレート部はその極性により水溶性ではないが、水系溶液中に分散しやすく、液粘度を安定に保つことができる。また、耐水性能は3-イソシアネートアルキルアルコキシランと1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートとは同等である。
【0062】
1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートは、3-イソシアネートプロピルアルコキシシランの熱縮合により製造されるものもあり、原料の3-イソシアネートプロピルアルコキシシランが含まれる場合もあるが、特に問題はない。より好ましくは、1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルプロピル)イソシアヌレートであり、さらに好ましくは1,3,5-トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートである。このメトキシ基は加水分解速度が速く、またプロピル基を含むものは比較的安価に入手し得ることから1,3,5-トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートは実用上有利である。
【0063】
オーバーコート剤における金属アルコキシドの量は、蒸着層との密着性及びガスバリア性維持の観点から、水酸基含有高分子化合物1質量部に対して1~4質量部とすることができ、2~3質量部であってよい。同様に、シランカップリング剤の量は、水酸基含有高分子化合物1質量部に対して0.01~1質量部とすることができ、0.1~0.5質量部であってよい。金属アルコキシドとしてシラン化合物(アルコキシシラン)を用いる場合、オーバーコート剤におけるシラン化合物(金属アルコキシドとシランカップリング剤)の量は、水酸基含有高分子化合物1質量部に対して1~4質量部とすることができ、2~3質量部であってよい。
【0064】
オーバーコート剤には、ガスバリア性を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、あるいは、分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤などの公知の添加剤を必要に応じて加えることも可能である。
【0065】
オーバーコート剤は、例えば、ディッピング法、ロールコート法、グラビアコート法、リバースグラビアコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法、グラビアオフセット法等により塗布することができる。オーバーコート剤を塗布してなる塗膜は、例えば、熱風乾燥法、熱ロール乾燥法、高周波照射法、赤外線照射法、UV照射法、又はそれらの組み合わせにより乾燥させることができる。
【0066】
上記塗膜を乾燥させる際の温度は、例えば、温度50~150℃とすることができ、温度70~100℃とすることが好ましい。乾燥時の温度を上記範囲内とすることで、蒸着層やガスバリア性被覆層にクラックが発生することをより一層抑制でき、優れたバリア性を発現することができる。
【0067】
ガスバリア性被覆層は、水酸基含有高分子化合物(例えばポリビニルアルコール系樹脂)及びシラン化合物を含むオーバーコート剤を用いて形成されてよい。オーバーコート剤には、必要に応じて酸触媒、アルカリ触媒、光重開始剤等を加えてよい。
【0068】
シラン化合物としては、シランカップリング剤、ポリシラザン、シロキサン等が挙げられ、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。
【0069】
ガスバリア性被覆層の厚さは、50~1000nmであることが好ましく、100~500nmであることがより好ましい。ガスバリア性被覆層の厚さが50nm以上であると、より十分なガスバリア性を得ることができる傾向があり、1000nm以下であると、十分な柔軟性を保持できる傾向がある。
【0070】
(シーラント層)
シーラント層30は、基材層10の構成材料よりも融点が低い材料から構成されており、ヒートシール性を有するものである。シーラント層30はポリエチレン又はポリプロピレンを含む層であり、ポリエチレンフィルム又はポリプロピレンフィルムから構成される層であってよい。
ポリエチレンフィルムは、ポリエチレンを70質量%以上、或いは85質量%以上含むフィルムであってよく、ポリエチレンを100質量%含むフィルムであってもよい。
ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレンを70質量%以上、或いは85質量%以上含むフィルムであってよく、ポリプロピレンを100質量%含むフィルムであってもよい。
【0071】
ポリエチレンとしては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いることができる。また、剛性を付与するなどの目的で、中間層20側を高密度ポリエチレン(HDPE)や中密度ポリエチレン(MDPE)とし、ヒートシール側を低密度ポリエチレン(LDPE)となるように共押出された積層構成のフィルムも、シーラント層30として使用可能である。
【0072】
ポリプロピレンとしては、ホモポリプロピレン樹脂(PP)、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等を使用することができる。
【0073】
シーラント層30の厚さは特に制限されない。内容物の重量、包装材料の形状、加工適性等に応じ、当該厚さを30μm以上150μm以下とすることができる。
【0074】
シーラント層30を構成するフィルムは、シーラント層としての所期の性能を損なわない範囲で、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等の各種添加材を含むことができる。
【0075】
(接着剤層)
第一の接着剤層40は、少なくとも1種類の接着剤を含有した層であり、基材層10と中間層20との間に設けられて両者を接合する。中間層20を用いない場合は、第一の接着剤層40は、基材層10とシーラント層30との間に設けられて両者を接合してもよい。第二の接着剤層50は、少なくとも1種類の接着剤を含有した層であり、中間層20とシーラント層30との間に設けられて両者を接合する。例えば、1液硬化型、もしくは2液硬化型ウレタン系接着剤等のいずれの接着剤も第一の接着剤層40及び第二の接着剤層50に使用できる。また、溶剤型接着剤及び無溶剤型接着剤のいずれも、第一の接着剤層40及び第二の接着剤層50に使用できる。これらの接着剤は、バリア性をさらに高める目的で、層状無機化合物を含んでもよい。
【0076】
第一の接着剤層40は、基材層に印刷層を設ける場合にラミネート時の印刷画像の寸法変化を抑制する観点から、無溶剤型接着剤を用いて形成されてよい。無溶剤型接着剤としては、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤等が挙げられるが、耐衝撃性の観点から、ウレタン系接着剤が好ましく、2液硬化型のウレタン系接着剤が特に好ましい。
【0077】
2液硬化型のウレタン系無溶剤型接着剤は、主剤であるポリオール成分と、硬化剤であるポリイソシアネート成分とを含む。
【0078】
ポリオール成分は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリウレタンポリオールからなる群から選択される1種又は2種以上の混合物であってよい。
【0079】
ポリエステルポリオールは、例えば、多価カルボン酸、多価カルボン酸のジアルキルエステル及びこれらの混合物と、グリコール系溶媒とのエステル反応生成物であってよい。多価カルボン酸は、例えば、コハク酸、グルタール酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、コルク酸、アゼライン酸、セバチン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸であってよい。グリコール系溶媒は、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオールであってよい。
【0080】
ポリエーテルポリオールは、例えば、オキシラン化合物と、低分子ポリオールとの重合体であってよい。オキシラン化合物は、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフランであってよい。低分子ポリオールは、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリンであってよい。
【0081】
ポリエーテルエステルポリオールは、例えば、多価カルボン酸、多価カルボン酸のジアルキルエステル及びこれらの混合物と、ポリエーテルポリオールとの反応によって得られたものであってよい。
【0082】
ポリウレタンポリオールは、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオールと、ポリイソシアネート単量体との反応生成物であってよい。
【0083】
ポリイソシアネート成分は、脂肪族系ポリイソシアネート、芳香族系ポリイソシアネート、及び、それらの混合物であってよい。
【0084】
脂肪族系ポリイソシアネートは、例えば、ポリイソシアネート単量体、ポリイソシアネート誘導体、ポリイソシアネート末端プレポリマーであってよい。ポリイソシアネート単量体は、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートであってよい。ポリイソシアネート誘導体は、1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートであってよい。
【0085】
芳香族系ポリイソシアネートは、例えば、ポリイソシアネート単量体、ポリイソシアネート誘導体、ポリイソシアネート末端プレポリマーであってよい。ポリイソシアネート単量体は、例えば、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートであってよい。ポリイソシアネート誘導体は、例えば、ポリイソシアネート単量体から誘導されたイソシアヌレート体であってよい。ポリイソシアネート末端プレポリマーは、ポリイソシアネート単量体と、ポリプロピレングリコールなどの2官能ポリオール化合物との反応で得られる末端イソシアネート基含有の2官能ポリイシシアネートであってよい。また、ポリイソシアネート末端プレポリマーは、ポリイソシアネート単量体と、トリメチロールプロパンなどの3官能以上のポリオール化合物との反応により得られる末端イソシアネート基含有の多官能ポリイソシアネートであってよい。
【0086】
第二の接着剤層50は、内容物への耐性の観点から、溶剤型接着剤を用いて形成されてよい。溶剤型接着剤としては、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤等が挙げられるが、耐衝撃性の観点から、ウレタン系接着剤が好ましく、2液硬化型のウレタン系接着剤が特に好ましい。溶剤型接着剤に用いられる溶剤としては特に制限されないが、例えば酢酸エチル、メタノール、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、エタノール等が挙げられる。
【0087】
各接着剤層の塗工量(単位面積当たりの重量)は、0.5g/m以上3.0g/m以下が好ましく、1.0g/m以上2.0g/m以下がより好ましい。接着剤層の塗工量が0.5g/m以上であれば、層間でのデラミネーションの抑制効果を高められる。接着剤層の塗工量が3.0g/m以下であれば、積層体の加工時において巻きズレが生じることを抑制できると共に、積層体の外観品質を良好なものとすることが可能であり、加えて、適正なラミネート強度が得られる。
【0088】
接着剤は、硬化後にガスバリア性を発現し得る接着剤(ガスバリア性接着剤)であってもよい。すなわち、接着剤層はガスバリア性接着剤を含んでよく、ガスバリア性接着剤の硬化物であると言ってもよい。特に、ガスバリア性を発現する接着剤で第二の無機酸化物蒸着層に接触する接着剤層を形成すると、第二の無機酸化物蒸着層のクラック発生によるガスバリア性の低下をさらに抑制することが可能である。これにより、積層体1のガスバリア性能をさらに向上できる。ガスバリア性接着剤としては、エポキシ系接着剤、ポリエステル・ポリウレタン系接着剤、ポリアミン系接着剤等が挙げられる。具体例としては、三菱ガス化学社製の「マクシーブ」、DIC社製の「Paslim」等が挙げられる。
【0089】
例えば、積層体が2層(基材層及びシーラント層)である場合、両層の接着には無溶剤型及び溶剤型のいずれの接着剤を使用してもよい。内容物への耐性やバリア性が必要な場合は、溶剤型の接着剤やガスバリア接着剤を使用することができる。
例えば、積層体が3層(基材層、中間層及びシーラント層)であるの場合、第一の接着剤層(基材層と中間層の間)には無溶剤型接着剤を、第二の接着剤層(中間層とシーラント層の間)には溶剤型接着剤を使用することができる。
【0090】
第一の接着剤層40及び第二の接着剤層50の厚さは、0.5μm以上6μm以下であることが好ましく、0.8μm以上5μm以下であることがより好ましく、1.0μm以上4.5μm以下であることがさらに好ましい。第一の接着剤層40及び第二の接着剤層50の厚さを0.5μm以上とすることにより、第一の接着剤層40及び第二の接着剤層50の接着性を向上することができる。第一の接着剤層40及び第二の接着剤層50の厚さを6μm以下とすることにより、積層体1の加工適性を向上することができる。
【0091】
第一の接着剤層40及び第二の接着剤層50は、例えば、ダイレクトグラビアロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、リバースロールコート法、フォンテン法及びトランスファーロールコート法などの公知の各種方法により形成できる。
【0092】
上記のように構成された本実施形態の積層体1は、基材層10、中間層20、及びシーラント層30がいずれもポリエチレンで、又はいずれもポリプロピレンで構成されていることにより、積層体1に占めるポリエチレン又はポリプロピレンの割合が90質量%以上となっている。これにより、積層体1は、高いリサイクル性を有する。積層体1に占めるポリエチレン又はポリプロピレンの割合(質量%)は、下記式(1)により算出できる。
(基材層10の質量+中間層20の質量+シーラント層30の質量)/積層体1全体の質量×100 …(1)
【0093】
<包装材料>
積層体1を折り曲げてシーラント層30を対向させた状態で、或いはシーラント層30を対向させつつ2枚の積層体1を重ねた状態で、内容物の充填部を残して周縁部のシーラント層30をヒートシールにより接合すると、積層体1からなる包装材料(包装袋)を形成できる。折り曲げた底フィルムを挟みつつ上記の様な接合を行うことにより、包装材料としてスタンディングパウチを形成できる。その他、ピロー包装、四方シール、三方シール、ガゼット袋など、各種包装袋として用いることができる。このように、積層体1は、各種包装材料に適用できる。
【0094】
<包装体>
包装体は、上記の包装材料と、包装材料に収容された内容物とを備える。内容物としては、例えば食品系では液体調味料、飲料、ゼリー等が挙げられ、非食品系では洗剤、シャンプー、コンディショナー、化粧水、乳液、除菌液等が挙げられる。
【0095】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、積層体は、印刷層、中間層、第二の無機酸化物蒸着層及びガスバリア性被覆層のうちの一層以上を備えていなくてもよい。積層体が中間層を備えない場合、第二の接着剤層は不要であり、第二の無機酸化物蒸着層は基材層上に設けられてよい。また、積層体がガスバリア性被覆層を備えない場合、積層体は図2に示すものであってもよい。
【0096】
図2に示す積層体2は、積層体1からガスバリア性被覆層15を除いたものである。積層体2では、ガスバリア性被覆層15を除く代わりに、硬化後にガスバリア性を発現し得る接着剤(上述したガスバリア性接着剤)を用いて形成された第二の接着剤層60を備える。これにより、第二の無機酸化物蒸着層14のクラック発生によるガスバリア性の低下を抑制することが可能である。
【実施例0097】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0098】
(基材層の準備)
各例で使用した基材層の物性については、表1及び2にまとめて示す。なお、各層の層構成(積層順)は表1及び2に示すとおりである。
【0099】
(アンカーコート剤の調製)
アクリルポリオールとトリレンジイソシアネートとを、アクリルポリオールのOH基の数に対してトリレンジイソシアネートのNCO基の数が等量となるように混合し、全固形分(アクリルポリオール及びトリレンジイソシアネートの合計量)が5質量%になるよう酢酸エチルで希釈した。希釈後の混合液に、さらにβ-(3,4エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシランを、アクリルポリオール及びトリレンジイソシアネートの合計量100質量部に対して5質量部となるように添加し、これらを混合することでアンカーコート剤を調製した。
【0100】
(オーバーコート剤の調製)
下記のA液、B液及びC液を、それぞれ70/20/10の質量比で混合することで、オーバーコート剤を調製した。
A液:テトラエトキシシラン(Si(OC)17.9gとメタノール10gに0.1N塩酸72.1gを加えて30分間攪拌して加水分解させた固形分5質量%(SiO換算)の加水分解溶液。
B液:ポリビニルアルコールの5質量%水/メタノール溶液(水:メタノールの質量比は95:5)。
C液:1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルプロピル)イソシアヌレートを水/イソプロピルアルコールの混合液(水:イソプロピルアルコールの質量比は1:1)で固形分5質量%に希釈した加水分解溶液。
【0101】
(中間フィルムAの作製)
両面にコロナ処理を施した厚さ32μmの無延伸ポリエチレンフィルム(HDPEフィルム)を準備した。その一方の面に上述したアンカーコート剤をグラビアコート法により塗布、乾燥し、厚さ0.1μmのアンカーコート層を設けた。次に、電子線加熱方式による真空蒸着装置により、酸化珪素からなる厚さ50nmの透明な蒸着層(第二の無機酸化物蒸着層)をアンカーコート層上に形成した。蒸着層のO/Si比は、蒸着材料種を調整することにより1.8とした。以上により中間フィルムAを得た。
【0102】
(中間フィルムBの作製)
両面にコロナ処理を施した厚さ20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)を準備した。その一方の面に上述したアンカーコート剤をグラビアコート法により塗布、乾燥し、厚さ0.1μmのアンカーコート層を設けた。次に、電子線加熱方式による真空蒸着装置により、酸化珪素からなる厚さ50nmの透明な蒸着層(第二の無機酸化物蒸着層)をアンカーコート層上に形成した。蒸着層のO/Si比は、蒸着材料種を調整することにより1.8とした。蒸着層の上に上述したオーバーコート剤をグラビアコート法により塗布して乾燥し、ガスバリア機能を有する厚さ0.3μmのガスバリア性被覆層(オーバーコート層)を形成した。以上により中間フィルムBを得た。
【0103】
(無溶剤型接着剤の調製)
DICグラフィックス社製のディックドライ2K-SF-220A 100質量部に対し、DICグラフィックス社製のディックドライHA-233B 85質量部を40℃で加温しながら混合して、無溶剤型接着剤(ウレタン系NS接着剤)を調製した。
【0104】
(溶剤型接着剤Aの調製)
三井化学社製のタケラックA525を100質量部に対し、三井化学社製のタケネートA52を11質量部及び酢酸エチル84質量部を混合して、ウレタン系接着剤である溶剤型接着剤A(ウレタン系DL接着剤)を調製した。
【0105】
(溶剤型接着剤B(ガスバリア性接着剤)の調製)
酢酸エチルとメタノールとを質量比1:1で混合した溶媒23質量部に、三菱ガス化学社製のマクシーブC93T 16質量部と、三菱ガス化学社製のマクシーブM-100 5質量部と混合して、ガスバリア性接着剤である溶剤型接着剤B(ガスバリア接着剤)を調製した。
【0106】
(実施例1)
基材層として、表1に示す両面がコロナ処理された厚さ30μmの無延伸ポリエチレンフィルム(HDPEフィルム)を準備した。基材層の外面側のコロナ処理面に、電子線加熱方式による真空蒸着装置により、酸化珪素からなる厚さ40nmの透明な蒸着層(第一の無機酸化物蒸着層)を形成した。蒸着層のO/Si比は、蒸着材料種を調整することにより1.8とした。一方、基材層の内面側のコロナ処理面に、ウレタン系インキを使用してグラビア印刷法により印刷層(厚さ1μm)を形成した。
【0107】
次に、無溶剤型接着剤を用いたドライラミネート法により、基材層の印刷層が形成された面と、シーラント層のコロナ処理面とを接着した。該接着剤層を第一の接着剤層とした。第一の接着剤層の厚さは1.8μmであった。
シーラント層としては、厚さ120μmの片面コロナ処理済無延伸ポリエチレンフィルム(LLDPE)を準備した。以上により積層体を得た。
【0108】
(実施例2)
基材層の外面側のコロナ処理面に、電子線加熱方式による真空蒸着装置により、酸化アルミニウムからなる厚さ10nmの透明な蒸着層(第一の無機酸化物蒸着層)を形成した。蒸着層のO/Al比は、蒸着材料種を調整することにより1.8とした。
このこと以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
【0109】
(実施例3)
基材層として、両面がコロナ処理された厚さ25μmの二軸延伸ポリエチレンフィルム(LLDPEフィルム)を準備した。このこと以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
【0110】
(実施例4)
基材層として、両面がコロナ処理された厚さ25μmの二軸延伸ポリエチレンフィルム(LLDPEフィルム)を準備した。このこと以外は、実施例2と同様にして積層体を得た。
【0111】
(実施例5)
基材層として、表1に示す両面がコロナ処理された厚さ20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)を準備した。基材層の外面側のコロナ処理面に、電子線加熱方式による真空蒸着装置により、酸化珪素からなる厚さ40nmの透明な蒸着層(第一の無機酸化物蒸着層)を形成した。蒸着層のO/Si比は、蒸着材料種を調整することにより1.8とした。一方、基材層の内面側のコロナ処理面に、ウレタン系インキを使用してグラビア印刷法により印刷層(厚さ1μm)を形成した。
【0112】
次に、溶剤型接着剤Aを用いたドライラミネート法により、基材層の印刷層が形成された面と、シーラント層のコロナ処理面とを接着した。該接着剤層を第一の接着剤層とした。第一の接着剤層の厚さは1.8μmであった。
シーラント層としては、厚さ60μmの片面コロナ処理済無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)を準備した。以上により積層体を得た。
【0113】
(実施例6)
基材層の外面側のコロナ処理面に、電子線加熱方式による真空蒸着装置により、酸化アルミニウムからなる厚さ10nmの透明な蒸着層(第一の無機酸化物蒸着層)を形成した。蒸着層のO/Al比は、蒸着材料種を調整することにより1.8とした。
このこと以外は、実施例5と同様にして積層体を得た。
【0114】
(比較例1)
第一の無機酸化物蒸着層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
【0115】
(比較例2)
第一の無機酸化物蒸着層を形成しなかったこと以外は、実施例3と同様にして積層体を得た。
【0116】
(比較例3)
第一の無機酸化物蒸着層を形成しなかったこと以外は、実施例5と同様にして積層体を得た。
【0117】
(実施例7)
基材層として、表2に示す両面がコロナ処理された厚さ30μmの無延伸ポリエチレンフィルム(HDPEフィルム)を準備した。基材層の外面側のコロナ処理面に、電子線加熱方式による真空蒸着装置により、酸化珪素からなる厚さ40nmの透明な蒸着層(第一の無機酸化物蒸着層)を形成した。蒸着層のO/Si比は、蒸着材料種を調整することにより1.8とした。一方、基材層の内面側のコロナ処理面に、ウレタン系インキを使用してグラビア印刷法により印刷層(厚さ1μm)を形成した。
【0118】
次に、無溶剤型接着剤を用いたドライラミネート法により、基材層の印刷層が形成された面と、中間フィルムAの蒸着層が形成されていない面とを接着した。該接着剤層を第一の接着剤層とした。第一の接着剤層の厚さは1.8μmであった。
【0119】
シーラント層として、厚さ120μmの片面コロナ処理済無延伸ポリエチレンフィルム(LLDPE)を準備した。第二の接着剤層として溶剤型接着剤Bを用いたドライラミネート法により、中間フィルムAの蒸着層が形成されている面と、シーラント層のコロナ処理面とを接着した。第二の接着剤層の厚さは2.1μmであった。以上により積層体を得た。
【0120】
(実施例8)
基材層の外面側のコロナ処理面に、電子線加熱方式による真空蒸着装置により、酸化アルミニウムからなる厚さ10nmの透明な蒸着層(第一の無機酸化物蒸着層)を形成した。蒸着層のO/Al比は、蒸着材料種を調整することにより1.8とした。
このこと以外は、実施例7と同様にして積層体を得た。
【0121】
(実施例9)
基材層として、両面がコロナ処理された厚さ25μmの二軸延伸ポリエチレンフィルム(LLDPEフィルム)を準備した。このこと以外は、実施例7と同様にして積層体を得た。
【0122】
(実施例10)
基材層として、両面がコロナ処理された厚さ25μmの二軸延伸ポリエチレンフィルム(LLDPEフィルム)を準備した。このこと以外は、実施例8と同様にして積層体を得た。
【0123】
(実施例11)
基材層として、表1に示す両面がコロナ処理された厚さ20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)を準備した。基材層の外面側のコロナ処理面に、電子線加熱方式による真空蒸着装置により、酸化珪素からなる厚さ40nmの透明な蒸着層(第一の無機酸化物蒸着層)を形成した。蒸着層のO/Si比は、蒸着材料種を調整することにより1.8とした。一方、基材層の内面側のコロナ処理面に、ウレタン系インキを使用してグラビア印刷法により印刷層(厚さ1μm)を形成した。
【0124】
次に、溶剤型接着剤Aを用いたドライラミネート法により、基材層の印刷層が形成された面と、中間フィルムBのガスバリア性被覆層が形成されていない面とを接着した。該接着剤層を第一の接着剤層とした。第一の接着剤層の厚さは1.8μmであった。
【0125】
シーラント層として、厚さ60μmの片面コロナ処理済無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)を準備した。第二の接着剤層として溶剤型接着剤Aを用いたドライラミネート法により、中間フィルムBのガスバリア性被覆層が形成されている面と、シーラント層のコロナ処理面とを接着した。第二の接着剤層の厚さは3.5μmであった。以上により積層体を得た。
【0126】
(実施例12)
基材層の外面側のコロナ処理面に、電子線加熱方式による真空蒸着装置により、酸化アルミニウムからなる厚さ10nmの透明な蒸着層(第一の無機酸化物蒸着層)を形成した。蒸着層のO/Al比は、蒸着材料種を調整することにより1.8とした。
このこと以外は、実施例11と同様にして積層体を得た。
【0127】
(比較例4)
第一の無機酸化物蒸着層を形成しなかったこと以外は、実施例7と同様にして積層体を得た。
【0128】
(比較例5)
第一の無機酸化物蒸着層を形成しなかったこと以外は、実施例9と同様にして積層体を得た。
【0129】
(比較例6)
第一の無機酸化物蒸着層を形成しなかったこと以外は、実施例11と同様にして積層体を得た。
【0130】
<評価>
各例の積層体に対し以下の評価を行った。結果を表1及び2に示す。
【0131】
(リサイクル性)
上記式(1)に基づき、各例の積層体に占めるポリエチレン又はポリプロピレンの割合(質量%)を算出した。いずれの例もポリエチレン又はポリプロピレンの含有割合が90質量%以上であった。
【0132】
(耐熱性の評価)
積層体から10cm角のシートを2枚切り出し、第一の無機酸化物蒸着層側又は基材層側同士を対向させて重ねた。この状態で、2枚のシートを上下面からPETフィルムに挟み込み、評価用の試料を準備した。次に、ヒートシールテスターの上下面のシール温度を100~200℃に設定して、以下の条件にて試料に熱を加えた。そして、2枚のシート同士の表面溶着温度(シール強度が2N/15mm以上となる温度)と、各積層体のシーラント層の下限シール温度とを対比した。2枚のシート同士の表面溶着温度が高く、シーラント層の下限シール温度との差が大きいほど、ヒートシール適性に優れていると言える。
-シール条件-
加熱回数:3回、シール時間:0.5s、シール待機時間:0.5s
冷却回数:3回、冷却時間:0.5s、冷却待機時間:0.5s
【0133】
(製袋適性評価)
フィルムロール形態の積層体から、製袋機(トタニ技研工業製)を用いて、本体部材と、第一の無機酸化物蒸着層側又は基材層側同士を対向するように二つ折りとした底部材からなる自立袋(スタンディングパウチ)の製袋を行った。そして、シーラント層の下限シール温度と上記底部材の対向面の表面溶着温度を確認し、以下の基準にて評価を行った。
〇評価:シーラント層の下限シール温度と上記表面溶着温度の差が20℃超であった。
×評価:シーラント層の下限シール温度と上記表面溶着温度の差が20℃以下であった。
【0134】
(内容物の視認性評価)
上記製袋適性評価にて作製した包装材料(包装袋)は、いずれの例においても内容物の視認性に優れていた。
【0135】
(ボイル・レトルト殺菌処理評価)
製袋適性評価が〇評価であった積層体(実施例)から、15cm×15cmの三方パウチを作製し、内容物として水100gを充填した後封止した。そして、ポリエチレン構成の積層体を用いたものにはボイル処理を(処理条件:95℃30分)、ポリプロピレン構成の積層体を用いたものにはレトルト処理を(処理条件:121℃30分、貯湯式、圧力0.2MPa)、それぞれ行い、それら殺菌処理後のシーラント層の溶着状況を確認した。評価は以下の基準にて行った。
〇評価:シーラント層同士の溶着は認められなかった。
×評価:シーラント層同士の溶着が認められた。
【0136】
【表1】
【0137】
【表2】
【0138】
表1に示されるように、実施例の積層体は、リサイクル適性、ヒートシール適性、及び内容物の視認性に優れる一方で、比較例の積層体は少なくともヒートシール適性に劣っていた。
【符号の説明】
【0139】
1,2…積層体、10…基材層、10a…基材層外面、10b…基材層内面、11…第一の無機酸化物蒸着層、12…印刷層、14…第二の無機酸化物蒸着層、15…ガスバリア性被覆層、20…中間層、30…シーラント層、40…第一の接着剤層、50,60…第二の接着剤層。
図1
図2