(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178631
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】測定方法、剥離方法及び剥離強度測定装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20241218BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
H01L21/66 R
H01L21/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096915
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000146722
【氏名又は名称】ヤマハロボティクスホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】戸張 優太
(72)【発明者】
【氏名】菊地 広
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 隼
【テーマコード(参考)】
4M106
【Fターム(参考)】
4M106AA01
4M106BA11
4M106CA54
4M106DH05
(57)【要約】
【課題】 半導体チップを基板から容易に剥離することである。
【解決手段】 本発明の一態様に係る測定方法は、第1鋭角(5b)である刃角を有する第1ツール部(5)と、第1ツール部上に設けられた第2ツール部(6)とを有するブレード(4)を用いて、基板(2)の主面(2a)に接合された半導体チップ(3)を剥離して接合強度を測定する測定方法であって、半導体チップの面取り加工された外周端部(3a)に向かって、第1ツール部を主面に沿って挿入させること、第1ツール部を外周端部に挿入させた状態で、第1ツール部上に設けられた第2ツール部を半導体チップの外周端部に接触させて、半導体チップに対して基板から離れる方向に力を作用させることにより半導体チップを基板から剥離すること、及び第1ツール部又は第2ツール部が半導体チップに接触した接触点(CP2)から半導体チップと基板とが剥離している点までの長さに基づいて、基板と半導体チップとの接合強度を測定することを含む。
【選択図】
図6C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1鋭角である刃角を有する第1ツール部と、前記第1ツール部上に設けられた第2ツール部とを有するブレードを用いて、基板の主面に接合された半導体チップを剥離して接合強度を測定する測定方法であって、
前記半導体チップの面取り加工された外周端部に向かって、前記第1ツール部を前記主面に沿って挿入させること、
前記第1ツール部を前記外周端部に挿入させた状態で、前記第1ツール部上に設けられた前記第2ツール部を前記半導体チップの前記外周端部に接触させて、前記半導体チップに対して前記基板から離れる方向に力を作用させることにより前記半導体チップを前記基板から剥離すること、及び
前記第1ツール部又は第2ツール部が前記半導体チップに接触した接触点から前記半導体チップと前記基板とが剥離している点までの長さに基づいて、前記基板と前記半導体チップとの接合強度を測定することを含む、
測定方法。
【請求項2】
前記外周端部が傾斜面に面取り加工されている請求項1に記載の測定方法。
【請求項3】
前記第2ツール部は、第2鋭角である刃角を有する請求項2に記載の測定方法。
【請求項4】
前記第1ツール部の前記第1鋭角の角度は、前記第2ツール部の前記第2鋭角の角度よりも小さい請求項3に記載の測定方法。
【請求項5】
前記第1ツール部の前記第1鋭角の角度は、前記傾斜面と前記主面とが成す角の角度よりも小さい請求項3に記載の測定方法。
【請求項6】
前記第1ツール部を前記主面に沿って挿入させることは、前記第1ツール部を前記第2ツール部よりも先に前記外周端部に接触させることを含む請求項1に記載の測定方法。
【請求項7】
前記第1ツール部を前記主面に沿って挿入させることは、前記第2ツール部を前記第1ツール部よりも先に前記外周端部に接触させることを含む請求項1に記載の測定方法。
【請求項8】
前記第1ツール部を前記主面に沿って挿入させることは、前記第1ツール部を前記第2ツール部に対して相対的に移動させることを含む請求項1に記載の測定方法。
【請求項9】
前記第1ツール部を前記主面に沿って挿入させることは、前記第1ツール部及び前記第2ツール部を互いの相対的位置を固定して移動させることを含む請求項1に記載の測定方法。
【請求項10】
前記第1ツール部及び前記第2ツール部のそれぞれの幅方向の長さは、前記半導体チップの面取り加工された前記外周端部の幅方向の長さよりも大きい請求項1に記載の測定方法。
【請求項11】
前記基板は、半導体ウエハである請求項1から10の何れか1項に記載の測定方法。
【請求項12】
前記測定方法は、前記基板の主面に対して静電力で接合された前記半導体チップを剥離することを含む請求項1から10の何れか1項に記載の測定方法。
【請求項13】
第1鋭角である刃角を有する第1ツール部と、前記第1ツール部上に設けられた第2ツール部とを有するブレードを用いて、基板の主面に接合された半導体チップを剥離する剥離方法であって、
前記半導体チップの面取り加工された外周端部に向かって、前記第1ツール部を前記主面に沿って挿入させること、及び、
前記第1ツール部を前記外周端部に挿入させた状態で、前記第1ツール部上に設けられた前記第2ツール部を前記半導体チップの前記外周端部に接触させて、前記半導体チップに対して前記基板から離れる方向に力を作用させることにより前記半導体チップを前記基板から剥離すること、
を含む剥離方法。
【請求項14】
基板の主面に接合された半導体チップを剥離する剥離装置であって、
第1鋭角である刃角を有する第1ツール部及び前記第1ツール部上に設けられた第2ツール部を有するブレードと、
前記基板と前記半導体チップとの接合強度を測定する測定部と、
を備え、
前記第2ツール部は、
前記半導体チップの面取り加工された外周端部に向かって、前記第1ツール部が前記主面に沿って挿入した状態で、前記第2ツール部が前記半導体チップの前記外周端部に接触して前記半導体チップに対して前記基板から離れる方向に力を作用させ、
前記測定部は、
前記第1ツール部又は第2ツール部が前記半導体チップに接触した接触点から前記半導体チップと前記基板とが剥離している点までの長さに基づいて前記基板と前記半導体チップとの接合強度を測定する、
剥離強度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定方法、剥離方法及び剥離強度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
接合された2つの基板の接合面に対して、ブレードを挿入して基板を剥離させ、剥離長さに基づいて接合強度を測定する方法が知られている。例えば、特許文献1には、このようなブレード挿入法によって基板の接合強度を評価することが開示されている。具体的には、基板を剥離することによって生じた基板間のクラックの長さ、ブレードの厚さ、及び、2つの基板のそれぞれの厚さなどの値から、基板の接合強度を評価することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような2つの基板の接合面に対して、一枚刃のブレードを用いてブレード挿入法を行う際に、基板同士の接合が強固な場合、あるいは、剥離しても基板同士が再接合しようとする場合など、基板同士が剥離しにくい場面がある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、半導体チップを基板から容易に剥離することが可能となる測定方法、剥離方法及び剥離強度測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る測定方法は、第1鋭角である刃角を有する第1ツール部と、第1ツール部上に設けられた第2ツール部とを有するブレードを用いて、基板の主面に接合された半導体チップを剥離せて接合強度を測定する測定方法であって、半導体チップの面取り加工された外周端部に向かって、第1ツール部を主面に沿って挿入させること、第1ツール部を外周端部に挿入させた状態で、第1ツール部上に設けられた第2ツール部を半導体チップの外周端部に接触させて、半導体チップに対して基板から離れる方向に力を作用させることにより半導体チップを基板から剥離すること、及び第1ツール部又は第2ツール部が半導体チップに接触した接触点から半導体チップと基板とが剥離している点までの長さに基づいて、基板と半導体チップとの接合強度を測定することを含む。
【0007】
この態様によれば、基板の主面に接合された半導体チップに対して、半導体チップの面取り加工された外周端部に向かって、第1ツール部を主面に沿って挿入させ、第1ツール部上に設けられた第2ツール部を半導体チップの外周端部に接触させて、半導体チップに対して基板から離れる方向に力を作用させる。すなわち、基板上に接合された外周端部が面取り加工された半導体チップに対して、接合面に進入しやすい刃角を有する第1ツール部と、半導体チップを基板から離れる方向に力を作用させる第2ツール部とを用いて剥離を行う。その結果、半導体チップを基板から容易に剥離することが可能になる。したがって、半導体チップと基板との接合強度を容易に測定することができる。
【0008】
本発明の一態様に係る剥離方法は、第1鋭角である刃角を有する第1ツール部と、第1ツール部上に設けられた第2ツール部とを有するブレードを用いて、基板の主面に接合された半導体チップを剥離する剥離方法であって、半導体チップの面取り加工された外周端部に向かって、第1ツール部を主面に沿って挿入させること、及び、第1ツール部を外周端部に挿入させた状態で、第1ツール部上に設けられた第2ツール部を半導体チップの外周端部に接触させて、半導体チップに対して基板から離れる方向に力を作用させることにより半導体チップを基板から剥離すること、を含む。
【0009】
この態様によれば、基板の主面に接合された半導体チップに対して、半導体チップの面取り加工された外周端部に向かって、第1ツール部を主面に沿って挿入させ、第1ツール部上に設けられた第2ツール部を半導体チップの外周端部に接触させて、半導体チップに対して基板から離れる方向に力を作用させる。すなわち、基板上に接合された外周端部が面取り加工された半導体チップに対して、接合面に進入しやすい刃角を有する第1ツール部と、半導体チップを基板から離れる方向に力を作用させる第2ツール部とを用いて剥離を行う。その結果、半導体チップを基板から容易に剥離することが可能になる。
【0010】
本発明の一態様に係る剥離強度測定装置は、
基板の主面に接合された半導体チップを剥離する剥離装置であって、第1鋭角である刃角を有する第1ツール部と、第1ツール部上に設けられた第2ツール部とを有するブレードを備え、第2ツール部は、半導体チップの面取り加工された外周端部に向かって、第1ツール部が主面に沿って挿入した状態で、第2ツール部が半導体チップの外周端部に接触して半導体チップに対して基板から離れる方向に力を作用させ、第1ツール部又は第2ツール部が半導体チップに接触した接触点から半導体チップと基板とが剥離している点までの長さに基づいて、基板と半導体チップとの接合強度を測定する測定部を有する。
【0011】
この態様によれば、基板上に接合された外周端部が面取り加工された半導体チップに対して、接合面に進入しやすい刃角を有する第1ツール部と、半導体チップを基板から離れる方向に力を作用させる第2ツール部とを用いて剥離を行う。このようなブレードを備えた剥離装置を用いれば、半導体チップを基板から容易に剥離することが可能となる。したがって、両者の接合強度を容易に測定することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、半導体チップを基板から容易に剥離することが可能になる測定方法、剥離方法及び剥離強度測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係る測定方法が適用可能な半導体モジュールの一例を示した断面図である。
【
図2】第1実施形態に係る測定方法に用いられる接合強度測定装置の一例を示したブロック図である。
【
図3】第1実施形態に係る測定方法に用いられるブレードの一例を示した斜視図である。
【
図4】第1実施形態に係る測定方法を示すフローチャートである。
【
図5】第1実施形態に係る測定方法を実行する際の一例を示した図である。
【
図6A】第1実施形態に係る測定方法の実行途中の一例を示した断面図である。
【
図6B】第1実施形態に係る測定方法の実行途中の一例を示した断面図である。
【
図6C】第1実施形態に係る測定方法の実行途中の一例を示した断面図である。
【
図7】第1実施形態に係る測定方法の実行途中の他の例を示した断面図である。
【
図8A】第2実施形態に係る測定方法の実行途中の一例を示した断面図である。
【
図8B】第2実施形態に係る測定方法の実行途中の一例を示した断面図である。
【
図8C】第2実施形態に係る測定方法の実行途中の一例を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明に係る各実施形態について説明する。各実施形態の図面は例示であり、各部の寸法や形状は模式的なものであり、本願発明の技術的範囲を当該各実施形態に限定して解するべきではない。
【0015】
<第1実施形態>
図1において、以下相対的な方向関係の説明のため、紙面右方向をX軸正方向、紙面奥方向をY軸正方向、紙面上方向をZ軸正方向と呼ぶ。また、紙面左方向をX軸負方向、紙面手前方向をY軸負方向、紙面下方向をZ軸負方向と呼ぶ。
【0016】
図1は、第1実施形態に係る測定方法が適用可能な半導体モジュールの一例を示した断面図である。半導体モジュール1は、半導体ウエハ2及び半導体チップ3を含む。半導体チップ3の外周端部3aは、面取り加工されている。外周端部3aの面取り加工は、例えば、半導体ウエハ2の主面2aに対して傾斜面3bを有するように加工されてよい。なお、半導体チップ3の一方の面は、半導体ウエハ2の主面2aに対して静電力で接合されてよい。なお、以下の説明においては、第1実施形態に係る測定方法に適用し得る基板として半導体ウエハ2を例に説明するが、基板としては他に各種金属、合金の他、ガラス、セラミックス、樹脂等を材料とした基板でもよい。
【0017】
<第1実施形態に係る測定方法に用いられる剥離強度測定装置>
図2は第1実施形態に係る測定方法に用いられる剥離強度測定装置の一例を示した図である。第1実施形態に係る剥離強度測定装置は、半導体ウエハ2から半導体チップ3を剥離するブレード4と、半導体ウエハ2と半導体チップ3との接合強度を測定する測定部7を備える。後述する、
図4に示したステップS1~S5は、第1実施形態に係る剥離強度測定装置を用いて行った例を説明したものとする。なお、測定部7は、例えば、エッジセンサ、表面電位測定センサ等を含む測定装置でよい。
【0018】
図3は、第1実施形態に係る測定方法に用いられるブレードの一例を示した斜視図である。ブレード4は、第1ツール部5及び第2ツール部6を含む。ブレード4は、例えば、第1刃面5aを有する第1ツール部5と、その上に設けられた第2刃面6aを有する第2ツール部6とを有する。なお、第2ツール部6の幅方向の長さは、第1ツール部5の幅方向の長さより大きくかつ、第1及び第2ツール部5、6が互いの相対位置を固定して設けてよい。このような構成とすることで、第1及び第2ツール部5、6が互いに座屈することを防止する効果を高めることが可能となる。また、後述するように第1及び第2ツール部5、6は互いに相対移動可能に構成されてもよい。
【0019】
図4は、第1実施形態に係る測定方法を示すフローチャートである。第1実施形態に係る測定方法は、ステップS1~S5に沿って進行する。以下、
図4、
図5及び
図6A~6Cを適宜参照しながらフローチャートの説明を行う。
【0020】
図5は、第1実施形態に係る測定方法を実行する際の一例を示した図である。半導体モジュール1に対して、ブレード4を挿入方向(X軸正方向)に挿入する。第1ツール部5及び第2ツール部6の、それぞれの幅方向(Y軸正方向)の長さは、半導体チップ3の面取り加工された外周端部3aの幅方向(Y軸正方向)の長さ、すなわち傾斜面3bの幅方向の長さよりも大きくてよい。このような構成とすることで、半導体チップ3の傾斜面3bの幅方向(Y軸正方向)に対して、接触面積が少なく全体に線接触して剥離を行うことで、摩擦が少ない状態で剥離をすることができる。
【0021】
図6Aは、第1実施形態に係る測定方法の実行途中の一例を示した断面図である。半導体チップ3の面取り加工された外周端部3aに向かって、ブレード4を挿入させる。すなわち、傾斜面3bに向かって、第1鋭角5bである刃角を有する第1ツール部5を主面2aに沿ってX軸正方向に挿入させる。
【0022】
第1ツール部5の第1鋭角5bの刃角は、半導体チップ3の傾斜面3bが主面2aと成す角3cよりも小さくなるように設定されている。また、第2ツール部6の第2鋭角6bの刃角は、第1鋭角5bの刃角よりも大きくなるように設定されている。このような角度の関係を採用することにより、半導体チップ3と半導体ウエハ2との間に第1ツール部5がより容易に侵入しやすくなり、また、第2ツール部6によって半導体チップ3に対して半導体ウエハ2から離れる方向により容易に力を作用させることができる。なお、
図6Aに示した、第1鋭角5b、第2鋭角6b及び成す角3cの組合せは一例であり、これらの角度の相対的な大きさは、その他の組合せが採用されてよい。
【0023】
ステップS1においては、第1ツール部5を挿入する。
図6Bに示した通り、第1ツール部5を半導体チップ3の外周端部3aに挿入する。このとき、第1ツール部5の第1刃面5aは、半導体チップ3の傾斜面3bに接触してよい。
【0024】
図6Bは、第1実施形態に係る測定方法の実行途中の一例を示した断面図である。第1ツール部5を外周端部3aに挿入させた状態で、第1ツール部5の第1刃面5aは、半導体チップ3の傾斜面3bと接触点CP1において接触し、Y軸正方向に沿って線接触する。このとき、第1ツール部5の第1刃面5aと垂直方向(X軸正方向とZ軸正方向の間方向)に剥離力PF1が作用することで、半導体チップ3を半導体ウエハ2の主面2aから剥離していく。なお、第1ツール部5を外周端部3aに挿入させた状態とは、平面視において第1刃面5aと外周端部3aとがオーバーラップしている状態(図示せず)であり、第1ツール部5が半導体チップ3と接触している状態を含む。
【0025】
ステップS2においては、第2ツール部6を接触させる。
図6Cに示した通り、第2ツール部6を半導体チップ3の傾斜面3bに接触させる。
【0026】
図6Cは、第1実施形態に係る測定方法の実行途中の一例を示した断面図である。第1ツール部5を外周端部3aに挿入させた状態で、第2ツール部6の第2刃面6aは、半導体チップ3の傾斜面3bと接触点CP2において接触し、Y軸正方向に沿って線接触する。このとき、第2ツール部6の第2刃面6aと垂直方向(X軸正方向とZ軸正方向の間方向)に剥離力PF2が作用することで、半導体チップ3を半導体ウエハ2の主面2aから剥離していく。その後、ブレード4をX軸正方向に進行させていくことで、半導体チップ3は、半導体ウエハ2の主面2aから徐々に剥離していく。なお、第1ツール部5を外周端部3aに挿入させた状態とは、平面視において第1刃面5aと外周端部3aとがオーバーラップしている状態(図示せず)であり、第1ツール部5が半導体チップ3と接触していない状態も含む。
【0027】
ステップS3においては、半導体チップ3の剥離を行う。
図6Cにおいて、ブレード4をX軸正方向に進行させていくことで、半導体チップ3を、半導体ウエハ2の主面2aから徐々に剥離させていく。例えば、ブレード4を半導体チップ3と接触させて所定距離だけX軸正方向に進行させ、半導体チップ3を半導体ウエハ2の主面2aから剥離させる。
【0028】
ステップS4においては、剥離長さを測定する。例えば、ブレード4を半導体チップ3と接触させて所定距離だけX軸正方向に進行させ、ブレード4と半導体チップ3との接触点から、半導体チップ3と半導体ウエハ2との剥離している点までの長さを測定する。
【0029】
ステップS5においては、接合強度を測定する。接合強度の測定は、例えば、予め取得したブレード4の厚み、半導体ウエハ2の厚み、半導体チップ3の厚み及びステップS4において測定した剥離長さを用いて、接合強度として算出された値を測定値として用いる。なお、接合強度の測定は、測定部7を用いて行われてよい。
【0030】
半導体チップ3と半導体ウエハ2との接合強度は、接合面の結合エネルギーを用いて評価することができる。その結合エネルギーは、以下式により算出することが可能である。
【数1】
結合エネルギーγは、u=ブレードの全体の厚み、l=剥離長さ、w=半導体チップの厚み、ヤング率E*により求められる。
【0031】
上記態様によれば、第1ツール部5の第1鋭角5bの刃角を、半導体チップ3の傾斜面3bが主面2aと成す角よりも小さくなるように設定することで、第1ツール部5と半導体チップ3との接触面積を少なくして摩擦力が小さくなり、進入しやすくなる。また、第2ツール部6の第2鋭角6bの刃角を、第1鋭角5bの刃角よりも大きくなるように設定することで、半導体チップ3を半導体ウエハ2から離れる方向に作用させる。このような第1ツール部5及び第2ツール部6を有するブレード4を用いれば、面取り加工された半導体チップ3を半導体ウエハ2から容易に剥離することが可能になる。
【0032】
図7は、第1実施形態に係る測定方法の実行途中の他の例を示した断面図である。第1ツール部5が、第2ツール部6に対して相対的に移動可能に構成されてよい。
図7に示した例では、第1ツール部5が第2ツール部6に対して相対的に移動しており、言い換えれば、初期位置からギャップGsaを介して相対的にずれている段階を示している。このような構成とすることで、半導体ウエハ2の主面2aから接触点CP3までの高さを一定に保持した状態で、第1ツール部5を挿入することで、半導体チップ3の反りを抑制しつつ剥離を行うことが可能になる。
【0033】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る測定方法は、第1実施形態に係る測定方法と比べて、半導体チップ30の外周端部30aに対する面取り加工の深さがX軸正方向に長い点で異なる。言い換えれば、第1実施形態とは異なり、第1ツール部5が半導体チップ3の外周端部3aに接触するよりも先に、第2ツール部6が半導体チップ3の外周端部3aに接触する態様を示している。以下第2実施形態に係る測定方法の説明において、第1実施形態に係る測定方法と同一内容については説明を省く。
【0034】
図8Aは、第2実施形態に係る測定方法の実行途中の一例を示した断面図である。第1ツール部50を外周端部30aに挿入させた状態で、第2ツール部60の第2刃面60aは、半導体チップ30の傾斜面30bと接触点CP10において接触し、Y軸正方向に沿って線接触する。第2実施形態に係る測定方法においては、ブレード40を主面20aに沿ってX軸正方向に進行させていくことで、第2ツール部60が先に傾斜面30bと接触する。
【0035】
図8Bは、第2実施形態に係る測定方法の実行途中の一例を示した断面図である。
図8Bにおいては、ブレード40による剥離させる力が十分ではなく、半導体チップ30は半導体ウエハ20の主面20aに対して接合したままである。このとき、第1ツール部50を外周端部30aに挿入させた状態で、第1ツール部50の第1刃面50aは、半導体チップ30の傾斜面30bと接触点CP20において接触し、Y軸正方向に沿って線接触する。また、第2ツール部60の第2刃面60aは、半導体チップ30の傾斜面30bと接触点CP30において接触し、Y軸正方向に沿って線接触する。このような構成とすることで、接触点CP20及び接触点CP30において、第1ツール部50及び第2ツール部60は、それぞれ半導体チップ30に対して剥離力PF20、PF30を作用させることで、半導体チップ30を半導体ウエハ20の主面20aから剥離することができる。
【0036】
図8Cは、第2実施形態に係る測定方法の実行途中の一例を示した断面図である。第1ツール部50を外周端部30aに挿入させた状態で、第2ツール部60の第2刃面60aは、半導体チップ30の傾斜面30bと接触点CP40において接触し、Y軸正方向に沿って線接触し、第2刃面60aと垂直方向(X軸正方向とZ軸正方向の間方向)に剥離力PF40が作用することで、半導体チップ30を半導体ウエハ20の主面20aから剥離していく。その後、ブレード40をX軸正方向に進行させていくことで、半導体チップ30は、半導体ウエハ20の主面20aから徐々に剥離していく。
【0037】
上記態様によれば、面取り加工の深さがX軸正方向に長くブレード40による剥離させる力が十分でない場合でも、第1鋭角50bの刃角よりも大きくなるように設定された第2鋭角60bの刃角を有する第2ツール部60を用いて、半導体チップ30を半導体ウエハ20から離れる方向に作用させる。その上でさらに、半導体チップ30の傾斜面30bが主面20aと成す角よりも小さくなるように設定された第1鋭角50bの刃角を有する第1ツール部50を用いて、第1ツール部50と半導体チップ30との接触面積を少なくして摩擦力を小さくして進入させることで、半導体チップ30を半導体ウエハ20から容易に剥離することが可能になる。
【0038】
以上、第1実施形態及び第2実施形態に係る測定方法について説明した。本発明に係る実施形態の剥離方法について、第1実施形態に係る測定方法と関連する
図1~
図6Cを用いて説明する。
【0039】
<本発明に係る実施形態の剥離方法の一例>
本発明に係る実施形態の剥離方法の一例として、
図1及び
図3に示した、半導体モジュール1及びブレード4を用いて行われてよい。本発明に係る実施形態の剥離方法の一例では、第1実施形態に係る測定方法と同様に、
図4に示したステップS1~S3の順に行う、ステップS1~S2まで、第1実施形態に係る測定方法と同一内容のため説明を省く。本発明に係る実施形態の剥離方法の一例では、
図6Cに示した、ブレード4をX軸正方向に進行させていくことで、半導体チップ3が半導体ウエハ2の主面2aから完全に剥離させてもよい。
【0040】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。即ち、各実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、各実施形態が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、各実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【0041】
(付記1)
本実施形態に係る測定方法は、第1鋭角である刃角を有する第1ツール部と、第1ツール部上に設けられた第2ツール部とを有するブレードを用いて、基板の主面に接合された半導体チップを剥離せて接合強度を測定する測定方法であって、半導体チップの面取り加工された外周端部に向かって、第1ツール部を主面に沿って挿入させること、第1ツール部を外周端部に挿入させた状態で、第1ツール部上に設けられた第2ツール部を半導体チップの外周端部に接触させて、半導体チップに対して基板から離れる方向に力を作用させることにより半導体チップを基板から剥離すること、及び第1ツール部又は第2ツール部が半導体チップに接触した接触点から半導体チップと基板とが剥離している点までの長さに基づいて、基板と半導体チップとの接合強度を測定することを含む。
【0042】
(付記2)
上記付記1に記載の測定方法において、外周端部が傾斜面に面取り加工されている。
【0043】
(付記3)
上記付記1又は付記2の何れか1項に記載の測定方法において、第2ツール部は、第2鋭角である刃角を有する。
【0044】
(付記4)
上記付記1から付記3の何れか1項に記載の測定方法において、第1ツール部の第1鋭角の角度は、第2ツール部の第2鋭角の角度よりも小さい。
【0045】
(付記5)
上記付記1から付記4の何れか1項に記載の測定方法において、第1ツール部の第1鋭角の角度は、傾斜面と主面とが成す角の角度よりも小さい。
【0046】
(付記6)
上記付記1から付記5の何れか1項に記載の測定方法において、第1ツール部を主面に沿って挿入させることは、第1ツール部を第2ツール部よりも先に外周端部に接触させることを含む。
【0047】
(付記7)
上記付記1から付記6の何れか1項に記載の測定方法において、第1ツール部を主面に沿って挿入させることは、第2ツール部を第1ツール部よりも先に外周端部に接触させることを含む。
【0048】
(付記8)
上記付記1から付記7の何れか1項に記載の測定方法において、第1ツール部を主面に沿って挿入させることは、第1ツール部を第2ツール部に対して相対的に移動させることを含む。
【0049】
(付記9)
上記付記1から付記8の何れか1項に記載の測定方法において、第1ツール部を主面に沿って挿入させることは、第1ツール部及び第2ツール部を互いの相対的位置を固定して移動させることを含む。
【0050】
(付記10)
上記付記1から付記9の何れか1項に記載の測定方法において、第1ツール部及び第2ツール部のそれぞれの幅方向の長さは、半導体チップの面取り加工された外周端部の幅方向の長さよりも大きい。
【0051】
(付記11)
上記付記1から付記10の何れか1項に記載の測定方法において、基板は、半導体ウエハである。
【0052】
(付記12)
上記付記1から付記11の何れか1項に記載の測定方法において、測定方法は、基板の主面に対して静電力で接合された半導体チップを剥離することを含む。
【0053】
(付記13)
本実施形態に係る剥離方法は、第1鋭角である刃角を有する第1ツール部と、第1ツール部上に設けられた第2ツール部とを有するブレードを用いて、基板の主面に接合された半導体チップを剥離する剥離方法であって、半導体チップの面取り加工された外周端部に向かって、第1ツール部を主面に沿って挿入させること、及び、第1ツール部を外周端部に挿入させた状態で、第1ツール部上に設けられた第2ツール部を半導体チップの外周端部に接触させて、半導体チップに対して基板から離れる方向に力を作用させることにより半導体チップを基板から剥離すること、を含む。
【0054】
(付記14)
本実施形態に係る剥離強度測定装置は、基板の主面に接合された半導体チップを剥離する剥離装置であって、第1鋭角である刃角を有する第1ツール部と、第1ツール部上に設けられた第2ツール部とを有するブレードを備え、第2ツール部は、半導体チップの面取り加工された外周端部に向かって、第1ツール部が主面に沿って挿入した状態で、第2ツール部が半導体チップの外周端部に接触して半導体チップに対して基板から離れる方向に力を作用させ、第1ツール部又は第2ツール部が半導体チップに接触した接触点から半導体チップと基板とが剥離している点までの長さに基づいて、基板と半導体チップとの接合強度を測定する測定部を有する。
【符号の説明】
【0055】
1,10…半導体モジュール
2,20…半導体ウエハ
2a,20a…主面
3,30…半導体チップ
3a,30a…外周端部
3b,30b…傾斜面
3c…成す角
4,40…ブレード
5,50…第1ツール部
5a,50a…第1刃面
5b…第1鋭角
6,60…第2ツール部
6a,60a…第2刃面
6b…第2鋭角
7…測定部
CP1~CP3,CP10~CP40…接触点
PF1~PF3,PF10~PF40…剥離力