(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178632
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
F16D 48/02 20060101AFI20241218BHJP
F02D 29/00 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
F16D48/02 640L
F02D29/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096916
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 菊彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 克也
【テーマコード(参考)】
3G093
3J057
【Fターム(参考)】
3G093BA33
3J057BB02
3J057GA01
3J057GB09
3J057GB12
3J057GB13
3J057GB14
3J057GB15
3J057GB22
3J057GB36
3J057GB40
3J057GE07
3J057GE11
3J057HH01
3J057JJ01
(57)【要約】
【課題】クラッチの係合状態に応じて生じる振動を、事前に把握して抑制することが可能な車両の制御装置を提供する。
【解決手段】トルク伝達容量を連続的に変更可能なクラッチを備えた車両の制御装置であって、クラッチがトルクを伝達しない解放と、クラッチの入力側部材と出力側部材との回転数が一致する完全係合との間で、クラッチの係合状態に応じて生じる車両の振動の大きさを検出する振動レベル検出部8と、車両の振動レベルが所定の振動レベル以上と判定された場合に、所定の振動レベル以上と判定されている間のクラッチの係合状態の領域であるクラッチ係合領域を学習する振動領域学習部10と、クラッチの係合状態がクラッチ係合領域となる場合に、振動抑制制御を実行する振動抑制制御部11と、を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的に係合されることによりトルク伝達可能になるとともに、トルク伝達容量を連続的に変更可能なクラッチを備えた車両の制御装置であって、
前記クラッチがトルクを伝達しない解放と、前記クラッチの入力側部材と出力側部材との回転数が一致する完全係合との間で、前記クラッチの前記係合状態に応じて生じる前記車両の振動の大きさを検出する振動レベル検出部と、
前記車両の振動レベルが所定の振動レベル以上と判定された場合に、前記所定の振動レベル以上と判定されている間の前記クラッチの前記係合状態の領域であるクラッチ係合領域を学習する振動領域学習部と、
前記クラッチの前記係合状態が前記クラッチ係合領域となる場合に、前記クラッチの前記係合状態に応じて生じる振動を抑制するための制御を実行する振動抑制制御部と、を備えている
ことを特徴とする車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行のための駆動トルクを、トルク伝達容量を連続的に変化させることのできるクラッチを介して駆動輪に伝達する車両を制御する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジンのクランク角度をパラメータとして用いることなく車体振動を抑制することを目的としたハイブリッド車両の制御装置が開示されている。特許文献1の装置では、モータジェネレータによってエンジンを始動する際に、モータジェネレータへのトルク指令値に対して、車両の乗員が不快に感じる車体振動の周波数成分を除去するトルクフィルタを施す、トルク制御が行われる。そのトルク制御によってモータ回転数が予め定められた回転数に到達した後、モータ回転数を回転数指令値まで上昇させるための回転数制御が行われる。その回転数制御では、モータジェネレータのトルク上限値が、トルク制御時のトルク指令値に設定されるように構成されている。すなわち、特許文献1では、トルクフィルタによって特定の周波数成分を除去するトルク制御を行い、その後、トルクをトルク制御時のトルクより増大することなく回転数制御を実行している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、このような構成により、車両のエンジン始動のために入力するトルクに対する反力による振動と、エンジントルクが脈動することで生じる共振とによって生じる、エンジン始動時の車体振動の発生を抑制することができる、としている。車両に生じる振動には、上述したようなエンジン始動による振動だけでなく、例えば、エンジンなどの駆動力源と車輪との間に設けられたクラッチを介してトルクが伝達されることによって振動が生じる可能性がある。例えば、係合状態と解放状態との間で、滑りを伴ってトルクを伝達することが可能な摩擦クラッチの場合には、摩擦係数が滑り回転数(差回転数)によって変化する。そのため、滑り回転数が変化すると、伝達できるトルクが変化し、それに伴って差回転数の変化ならびに摩擦係数の変化が生じ、このような変化が短時間のうちに繰り返すことにより伝達されるトルクが大小に変化し、これが車体振動となる。このようなクラッチの係合状態に起因して生じる車体振動は、クラッチの摩擦面の変化やクラッチごとの品質のバラツキなどによって発生する差回転数が異なる場合がある。そのため、振動の発生する差回転数などを予め予測することは容易でなく、その振動を抑制するための制御には改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記の技術的課題に着目してなされたものであって、クラッチの係合状態に応じて生じる振動を、事前に把握して抑制することが可能な車両の制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するために、選択的に係合されることによりトルク伝達可能になるとともに、トルク伝達容量を連続的に変更可能なクラッチを備えた車両の制御装置であって、前記クラッチがトルクを伝達しない解放と、前記クラッチの入力側部材と出力側部材との回転数が一致する完全係合との間で、前記クラッチの前記係合状態に応じて生じる前記車両の振動の大きさを検出する振動レベル検出部と、前記車両の振動レベルが所定の振動レベル以上と判定された場合に、前記所定の振動レベル以上と判定されている間の前記クラッチの前記係合状態の領域であるクラッチ係合領域を学習する振動領域学習部と、前記クラッチの前記係合状態が前記クラッチ係合領域となる場合に、前記クラッチの前記係合状態に応じて生じる振動を抑制するための制御を実行する振動抑制制御部と、を備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の車両の制御装置は、クラッチの係合状態に応じて生じる振動レベルが所定の振動レベル以上となった場合に、その所定のレベル以上となったときのクラッチの係合状態の領域であるクラッチ係合領域を学習する。そして、クラッチの係合状態が、その係合領域に入る場合に、クラッチの係合状態の変化に起因した振動抑制制御を実行するように構成されている。そのため、クラッチが伝達するトルクの変化によって振動が生じることを抑制する。また、比較的大きな振動が生じるクラッチの係合領域を学習するので、クラッチの摩擦面の変化や品質のバラツキなどによって振動の発生する差回転数が異なる場合であっても、そのような相違に応じて振動抑制制御を実行することができる。したがって、クラッチの伝達するトルクの変化による振動の発生を事前に把握し、効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態における制御装置を搭載した車両の一例を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態における制御装置の機能構成を説明するためのブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態における制御装置によって実行されるクラッチの操作量と振動レベルとの学習を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を図に示す実施形態に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施形態は本発明を具体化した場合の一例に過ぎないのであって、本発明を限定するものではない。
【0010】
図1に、この発明の実施形態で制御対象にする車両Veの駆動系統および制御系統の一例を示してある。
図1に示す車両Veは、走行のための駆動力を出力する駆動力源1の出力トルクを、トランスアクスル2やデファレンシャルギヤ(図示せず)等を介して、駆動輪3へ伝達する構成となっている。また、駆動力源1とトランスアクスル2との間には、駆動力源1のトルクを駆動輪3に伝達するためのクラッチ4が設けられている。さらに、車両Veは、検出部5、および、コントローラ(ECU)6を備えている。
【0011】
なお、本発明の実施形態で制御対象にする車両Veは、エンジンのような内燃機関を搭載した車両や、エンジンとモータ(図示せず)とを駆動力源とするハイブリッド車両(図示せず)であってもよい。あるいは、発電機(図示せず)を駆動するための動力源としてエンジンを搭載したシリーズ方式のハイブリッド車両(図示せず)、もしくは、いわゆるレンジエクステンダーと称されるような電気自動車(図示せず)などであってもよく、従来知られている種々の車両であってよい。
【0012】
また、この発明の実施形態で制御対象にする車両Veは、
図1に示すように、駆動トルクを前輪(駆動輪)3に伝達し、前輪3で駆動力を発生させる前輪駆動車であってもよい。あるいは、車両Veは、駆動トルクを、例えばプロペラシャフト(図示せず)等を介して後輪7に伝達し、後輪7で駆動力を発生させる後輪駆動車(図示せず)であってもよい。あるいは、車両Veは、トランスファ機構(図示せず)を設けて、駆動トルクを前輪3および後輪7の両方に伝達し、それら前輪3および後輪7の両方で駆動力を発生させる四輪駆動車(図示せず)であってもよい。
【0013】
クラッチ4は、トルク伝達容量を連続的に変更可能であり、入力側部材の接触面と出力側部材の接触面との摩擦によって動力を伝達する摩擦クラッチによって構成されている。すなわち、クラッチ4は、トルクを伝達しない状態の完全解放、入力側の回転数と出力側の回転数とが同一となる状態の完全係合(締結)、および、滑りを伴ってトルクを伝達する滑り係合状態である半クラッチ状態が可能に構成されている。
【0014】
検出部5は、車両Veを制御する際に必要な各種のデータや情報を取得するための機器あるいは装置であり、例えば、電源部、マイクロコンピュータ、センサ、および、入出力インターフェース等を含んでいる。特に、本発明の実施形態における検出部5は、車両Veに生じた振動を検出するためのセンサとして、車体振動センサ5aを有している。
【0015】
車体振動センサ5aは、例えば、車室における運転席付近に設けられている。車体振動センサ5aは、運転席に着座した運転者の身体的な揺動に影響を与える車体の揺動を検出する。なお、この車体振動センサ5aによって検出した検出値を用いることに代えて、車体の振動と相関のあるパラメータを用いてもよい。例えば、トルクや回転の変動、あるいは、駆動力源1の振動などを検出することによって、代替的に車体の振動を検出するように構成されていてもよい。具体的には、駆動力源1の出力トルクの変動や、所定の出力軸における回転の変動、あるいは、駆動力源1にエンジンが用いられている場合には、エンジンのノッキングを検出するノックセンサによって、エンジンの振動を検出することにより、車体の振動を検出するように構成されていてもよい。そして、検出部5は、コントローラ6と電気的に接続されており、上記のような各種センサや機器・装置等の検出値または算出値に応じた電気信号等を検出データとしてコントローラ6に出力するように構成されている。
【0016】
コントローラ6は、例えば、マイクロコンピュータを主体にして構成される電子制御装置である。コントローラ6には、上記の検出部5で検出または算出された各種データ等が入力される。コントローラ6は、その入力された各種データおよび予め記憶させられているデータや計算式等を使用して演算を行う。そして、コントローラ6は、その演算結果を制御指令信号として出力し、上記のように車両Veを制御するように構成されている。なお、検出部5、ECU6および車両Veの走行のための各アクチュエータやセンサなどは、例えば、CANやワイヤーハーネス等によって互いに電気的に接続されており、取得した検出値または算出値に応じた電気信号を検出データとしてECU6に出力する。また、
図1では一つのコントローラ6が設けられた例を示しているが、コントローラ6は、制御する装置や機器毎に、あるいは、制御内容毎に、複数設けられていてもよい。
【0017】
このように構成された車両Veでは、駆動力源1のトルクをトランスアクスル2に伝達するためにクラッチ4を係合するときに、滑り回転数(差回転数)によって変化する摩擦係数に応じて振動が生じる場合がある。例えば、クラッチ4の係合時には、トルクの変化を滑らかにするために、係合圧(油圧)を所定の増大勾配で上昇させる。そのため、過渡的には、伝達するべきトルクより小さいトルク容量の状態が生じ、その状態ではクラッチ4が滑り係合状態になる。そのような滑り状態において、滑り回転数が変化すると、伝達できるトルクが変化し、それに伴って差回転数の変化ならびに摩擦係数の変化が生じる場合がある。このような変化が短時間のうちに繰り返されることにより伝達されるトルクが大小に変化し、これが車両Veの振動になってしまう。そのような滑り回転数の変化は、クラッチ4自体の特性に起因するものだけでなく、摩擦面の変化や品質のバラツキなどによっても生じるものであり、予め対策をすることは容易ではない。
【0018】
そこで、本発明の実施形態における制御装置では、クラッチ4の係合状態と車両Veの振動との相関関係を学習し、車両Veの振動が大きくなるクラッチ4の係合状態になるときに、クラッチ4の係合状態に応じて生じる、車両Veの振動を抑制するための制御を実行するように構成されている。
図2に示すように、コントローラ6は、振動レベル検出部8と、クラッチ操作検出部9と、振動領域学習部10と、振動抑制制御部11と、を備えている。
【0019】
振動レベル検出部8は、上述したようなクラッチ4の係合状態に応じて生じる車両Veの振動の大きさ、つまり、振動レベル(車体振動レベル)を検出する。振動レベル検出部8は、車体振動センサ5aによって検出された振動の大きさに基づき、振動の大きさが、所定の振動レベル(所定値)に達していることを判定する。所定の振動レベルは、車両Veの加速度の変化などに基づき、良好な乗り心地や快適性などを維持できるような定量的に表された値を、予め実験やシミュレーションなどによって求めることにより定められている。なお、車体振動センサ5aに替えて、上述したような他の手段によって振動を検出する場合には、その代用したパラメータに応じて所定の振動レベルが設定される。
【0020】
クラッチ操作検出部9は、クラッチ4が完全解放と完全係合との間において、どのような係合状態であるかを検出する。例えば、クラッチ操作検出部9は、クラッチ4のストローク量、クラッチペダルを備えた車両Veの場合には、そのクラッチペダルのストローク量、あるいは、クラッチ4の係合圧などを検出する。クラッチ操作検出部9は、それらの検出した値に基づいてクラッチ4の係合状態を検出あるいは推定する。
【0021】
振動領域学習部10は、車両Veの振動レベルが所定の振動レベル以上と判定された場合に、その所定の振動レベル以上と判定されたときのクラッチ4の係合状態を学習する。また、振動領域学習部10は、所定の振動レベル以上と判定されている間、常にクラッチ4の係合状態を学習する。例えば、クラッチ4の係合過渡期と、車両Veの振動レベルとの間に、
図3に示すような相関関係がある場合には、振動領域学習部10は、車両Veの振動レベルが所定の振動レベル(所定値)以上となっている区間のクラッチ操作量を学習する。具体的には、
図3に示す例では、t1時点において車両Veの振動レベルが所定の振動レベル以上となり、t2時点まで継続している。そのため、振動領域学習部10は、t1時点からt2時点までの区間のクラッチ操作量やクラッチの係合状態の範囲を、車両Veに比較的大きな振動が発生する所定領域として学習する。
【0022】
このような振動領域学習部10による学習は、クラッチ4の係合あるいは解放時に常に実行されている。すなわち、車両Veの振動レベルが所定のレベル以上となったときのクラッチ4の操作量や係合状態も適宜更新される。つまり、クラッチ4の経年変化などによってクラッチ4の特性が変化した場合であっても、その特性の変化に応じて振動レベルが所定の振動レベル以上となるクラッチの操作量や係合状態を学習するように構成されている。
【0023】
振動抑制制御部11は、クラッチ4の係合過渡期において生じる、伝達されるトルクの変化などによって生じる振動を抑制する制御を実行する。つまり、振動抑制制御部11は、クラッチ4の操作量が、振動領域学習部10によって学習した、所定の振動レベル以上となるクラッチ4の操作量の所定領域に入っているとき、および、所定領域に入ることが判った場合に、そのクラッチ4の伝達するトルクの変化に起因する振動を抑制する制御を実行する。
【0024】
例えば、駆動力源1としてエンジンが搭載されており、そのエンジンの支持および制振を行うエンジンマウントとして、液体が封入されたいわゆる液封マウントが用いられている場合には、その液封マウントの剛性を調整する。すなわち、液封マウントの内部に設けられた複数の液室同士の間に設けられているオリフィスの開度を制御し、液封マウントの剛性を下げることにより振動の発生を抑制する。また、駆動力源1としてエンジンおよびモータを備えた車両Veの場合には、モータに対して振動を抑制するようなトルクを出力するように制御する。すなわち、
図3に示すような車両Veの振動レベルの変化に対して、逆位相で変化するトルクを発生するように、つまり、トルクの変動を打ち消すようなトルクを出力するようにモータを制御する。なお、振動抑制制御は、これらの制御に限らず、従来知られている振動を抑制する制御であってよい。
【0025】
すなわち、コントローラ6は、車両Veの振動レベルが所定の振動レベル以上となった場合に、そのときのクラッチ4の操作量や係合状態の学習を開始する。その後、振動レベルが所定の振動レベルより小さくなった場合に、クラッチ4の操作量の学習を一旦終了する。そして、クラッチ4の操作量が、学習したクラッチ4の操作量、つまり、所定領域となった場合に、振動抑制制御を実行する。あるいは、クラッチ4の操作量が所定領域に達することが予測された場合に、事前に振動抑制制御を準備あるいは実行する。このとき、車両Veの振動レベルが所定の振動レベル以上となった場合には、そのときのクラッチ4の操作量を学習する。そして、以前に学習したクラッチ4の操作量を今回学習したクラッチ4の操作量によって学習補正しつつ、より最適なクラッチ4の操作量の所定領域を定めるように構成されている。なお、この所定領域が、本発明の実施形態におけるクラッチ係合領域に相当している。
【0026】
上述したように、本発明の実施形態における制御装置では、クラッチ4の操作量ごとに車両Veの振動レベルをモニターし、振動レベルが所定の振動レベル以上になる場合に、制振制御を実行するように構成されている。つまり、制御装置は、車両Veの振動レベルを検出し、その振動レベルが所定の振動レベル以上となったときの、クラッチ4の操作量を学習する。そして、クラッチ4の操作量が、その学習されたクラッチ4の操作量あるいは係合状態の領域である所定領域にある場合、もしくは、その所定領域に入ることが予測された場合に、振動抑制制御が実行されるように構成されている。そのため、クラッチ4の係合状態に応じて伝達されるトルクが変化する場合であっても、そのトルクの変化に起因した振動を抑制することができる。例えば、低車速もしくは停止時にクリープトルクを発生させるために、エンジンをアイドリング回転数以上に維持しつつ、クラッチ4をスリップ制御し、あるいは減速時にフューエルカット(F/C)のためにクラッチ4をスリップ制御してエンジン回転数をF/C回転数以上に維持する場合がある。クラッチ4においてそのような操作状態となる場合であっても、車両Veの振動を適切に抑制することができる。
【0027】
また、所定の振動レベル異常となるクラッチ操作量の学習は、常に実行されている。そのため、クラッチ4の経年変化などによってクラッチ4の特性が変化した場合などであっても、その特性の変化に応じて変化した、振動レベルが所定の振動レベル以上となるクラッチ操作量が学習される。そして、その学習されたクラッチ操作量となるときに振動抑制制御が実行されるので、クラッチ4の特性が変化した場合であっても、クラッチ4の係合状態に起因する車両Veの振動の発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 エンジン
2 トランスアクスル
3 駆動輪(前輪)
4 クラッチ
5 検出部
5a 車体振動センサ
6 コントローラ
7 後輪
8 振動レベル検出部
9 クラッチ操作検出部
10 振動領域学習部
11 振動抑制制御部
Ve 車両