(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178634
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】アンテナ装置、処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 10/80 20130101AFI20241218BHJP
H01Q 1/12 20060101ALI20241218BHJP
H01Q 3/02 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
H04B10/80
H01Q1/12 B
H01Q3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096918
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100181135
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 隆史
(72)【発明者】
【氏名】大筆 想
(72)【発明者】
【氏名】星 健一
(72)【発明者】
【氏名】石井 義之
(72)【発明者】
【氏名】二階堂 瑞希
【テーマコード(参考)】
5J021
5J047
5K102
【Fターム(参考)】
5J021AA01
5J021BA01
5J021DA02
5J021DA04
5J021DA05
5J021DA07
5J021GA02
5J021HA03
5J021HA07
5J047AB05
5J047AB18
5J047BB12
5K102AA24
5K102PH31
5K102RD05
5K102RD28
(57)【要約】
【課題】基台上のアンテナをAZ軸方向に無限に回転可能にし、かつ、通信するために必要な送信電力をアンテナに伝えることのできるアンテナ装置を提供する。
【解決手段】アンテナ装置は、送受信を行うアンテナと、アンテナとの間で信号を授受するアンテナ側機器、およびアンテナを回転自在に支持する基台と、基台に設けられた基台側機器とアンテナ側機器との間で電気信号を授受するスリップリングと、基台に設けられた基台側機器とアンテナ側機器との間で光信号を授受する光ロータリージョイントと、光ロータリージョイントの各角度と各角度における送信信号の所望の電力からの変動量との対応関係、および光ロータリージョイントの実際の角度に基づいて、光ロータリージョイントの実際の角度における実際の送信信号の所望の電力からの変動量を打ち消す処理を行う増幅部と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送受信を行うアンテナと、
前記アンテナとの間で信号を授受するアンテナ側機器、および前記アンテナを回転自在に支持する基台と、
前記基台に設けられた基台側機器と前記アンテナ側機器との間で電気信号を授受するスリップリングと、
前記基台に設けられた基台側機器と前記アンテナ側機器との間で光信号を授受する光ロータリージョイントと、
前記光ロータリージョイントの各角度と前記各角度における送信信号の所望の電力からの変動量との対応関係、および前記光ロータリージョイントの実際の角度に基づいて、前記光ロータリージョイントの実際の角度における実際の送信信号の所望の電力からの変動量を打ち消す処理を行う増幅部と、
を備えるアンテナ装置。
【請求項2】
前記光ロータリージョイントの各角度と前記各角度における送信信号の所望の電力からの変動量との対応関係を示すデータテーブルを記憶する記憶部、
を備える請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記光ロータリージョイントの実際の角度を含む情報を取得する取得部、
を備える請求項1または請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記取得部は、
前記光ロータリージョイントの実際の角度を含む情報を、前記光ロータリージョイント、または前記アンテナを駆動する制御信号を生成するアンテナ駆動制御部から取得する、
請求項3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記アンテナは、
前記変動量を打ち消す処理を前記増幅部が行った後の送信信号を送信する、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
送受信を行うアンテナと、前記アンテナとの間で信号を授受するアンテナ側機器、および前記アンテナを回転自在に支持する基台と、前記基台に設けられた基台側機器と前記アンテナ側機器との間で電気信号を授受するスリップリングと、前記基台に設けられた基台側機器と前記アンテナ側機器との間で光信号を授受する光ロータリージョイントと、を備えるアンテナ装置が行う処理方法であって、
前記光ロータリージョイントの各角度と前記各角度における送信信号の所望の電力からの変動量との対応関係、および前記光ロータリージョイントの実際の角度に基づいて、前記光ロータリージョイントの実際の角度における実際の送信信号の所望の電力からの変動量を打ち消す処理を行うこと、
を含む処理方法。
【請求項7】
送受信を行うアンテナと、前記アンテナとの間で信号を授受するアンテナ側機器、および前記アンテナを回転自在に支持する基台と、前記基台に設けられた基台側機器と前記アンテナ側機器との間で電気信号を授受するスリップリングと、前記基台に設けられた基台側機器と前記アンテナ側機器との間で光信号を授受する光ロータリージョイントと、増幅部と、を備えるアンテナ装置のコンピュータに、
前記光ロータリージョイントの各角度と前記各角度における送信信号の所望の電力からの変動量との対応関係、および前記光ロータリージョイントの実際の角度に基づいて、前記光ロータリージョイントの実際の角度における実際の送信信号の所望の電力からの変動量を打ち消す前記増幅部の増幅を制御する処理を行うこと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナ装置、処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
人工衛星を追尾しながら通信するアンテナ装置は、方位角(AZ(AZimuth)角)および仰角(EL(ELevation)角)をそれぞれ調整する軸(以下、「AZ軸」、「EL軸」と記載)を持つアンテナを備え、AZ軸、EL軸を中心とする角度を調整しながら人工衛星を追尾する。特許文献1には、関連する技術として、信号の伝播にロータリージョイントを用いる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
人工衛星を追尾しながら24時間切れ目なく通信するアンテナ装置において、基台上のアンテナは、自由に向きを変更できるように、AZ軸方向に無限に回転できることが望ましい。しかしながら、基台に設けられた基台側機器と、アンテナ側に設けられたアンテナ側機器との間で、アンテナを回転させ続けている間も信号の授受を行う必要がある。そのため、一般的にその信号の授受をケーブルを介して行う場合、基台上のアンテナがAZ軸方向に回転するとケーブルがその軸方向に延びる支持部材に巻き付いてしまう。そのため、その信号の授受をケーブルを介して行う場合、基台上のアンテナのAZ軸方向の回転可能な範囲は限定され、基台上のアンテナは、AZ軸方向に無限に回転することができない。そこで、ケーブルに代わって特許文献1などに記載の光ロータリージョイントを用いてその信号の授受を行うことが考えられる。光ロータリージョイントは、複数信号を無限回転状態で伝送することのできるロータリージョイントである。そのため、光ロータリージョイントを用いた場合、基台上のアンテナのAZ軸方向の回転可能な範囲は限定されない。しかしながら、光ロータリージョイントは、大きな電力を通すことができない。そのため、光ロータリージョイントを用いた場合、通信するために必要な送信電力をアンテナに伝えることができないという問題が生じる。また、光ロータリージョイントを用いて送信電力をアンテナ上部に伝える場合、光ロータリージョイントの特性によりAZ軸方向の回転角の角度によって信号強度が変動してしまうという問題が生じる。一方で、送信電力の許容偏差は、電波法により規定されている。よって、送信電力は、一定に保つ必要がある。そこで、基台上のアンテナをAZ軸方向に無限に回転可能にし、かつ、通信するために必要な送信電力をアンテナに伝えることのできる技術が求められている。
【0005】
本開示の各態様は、上記の課題を解決することのできるアンテナ装置、処理方法、およびプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の一態様によれば、アンテナ装置は、送受信を行うアンテナと、前記アンテナとの間で信号を授受するアンテナ側機器、および前記アンテナを回転自在に支持する基台と、前記基台に設けられた基台側機器と前記アンテナ側機器との間で電気信号を授受するスリップリングと、前記基台に設けられた基台側機器と前記アンテナ側機器との間で光信号を授受する光ロータリージョイントと、前記光ロータリージョイントの各角度と前記各角度における送信信号の所望の電力からの変動量との対応関係、および前記光ロータリージョイントの実際の角度に基づいて、前記光ロータリージョイントの実際の角度における実際の送信信号の所望の電力からの変動量を打ち消す処理を行う増幅部と、を備える。
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の別の態様によれば、処理方法は、送受信を行うアンテナと、前記アンテナとの間で信号を授受するアンテナ側機器、および前記アンテナを回転自在に支持する基台と、前記基台に設けられた基台側機器と前記アンテナ側機器との間で電気信号を授受するスリップリングと、前記基台に設けられた基台側機器と前記アンテナ側機器との間で光信号を授受する光ロータリージョイントと、を備えるアンテナ装置が行う処理方法であって、前記光ロータリージョイントの各角度と前記各角度における送信信号の所望の電力からの変動量との対応関係、および前記光ロータリージョイントの実際の角度に基づいて、前記光ロータリージョイントの実際の角度における実際の送信信号の所望の電力からの変動量を打ち消す処理を行うこと、を含む。
【0008】
上記目的を達成するために、本開示の別の態様によれば、プログラムは、送受信を行うアンテナと、前記アンテナとの間で信号を授受するアンテナ側機器、および前記アンテナを回転自在に支持する基台と、前記基台に設けられた基台側機器と前記アンテナ側機器との間で電気信号を授受するスリップリングと、前記基台に設けられた基台側機器と前記アンテナ側機器との間で光信号を授受する光ロータリージョイントと、を備えるアンテナ装置のコンピュータに、前記光ロータリージョイントの各角度と前記各角度における送信信号の所望の電力からの変動量との対応関係、および前記光ロータリージョイントの実際の角度に基づいて、前記光ロータリージョイントの実際の角度における実際の送信信号の所望の電力からの変動量を打ち消す前記増幅部の増幅を制御する処理を行うこと、を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示の各態様によれば、基台上のアンテナをAZ軸方向に無限に回転可能にし、かつ、通信するために必要な送信電力をアンテナに伝えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の一実施形態によるアンテナ装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】本開示の一実施形態によるアンテナ側機器および基台側機器の構成の一例を示す図である。
【
図3】本開示の一実施形態による送信処理部の構成の一例を示す図である。
【
図4】本開示の一実施形態におけるデータテーブルの一例を示す図である。
【
図5】本開示の一実施形態によるアンテナ装置の処理フローの一例を示す図である。
【
図6】本開示の実施形態によるアンテナ装置の最小構成を示す図である。
【
図7】本開示の実施形態による最小構成のアンテナ装置の処理フローの一例を示す図である。
【
図8】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
<実施形態>
(アンテナ装置の構成)
本開示の一実施形態によるアンテナ装置1について図面を参照して説明する。アンテナ装置1は、人工衛星を追尾しながら通信する装置であって、AZ(AZimuth)軸を中心に無制限に回転することができ、所望の送信信号の大きさを実現することのできる装置である。
【0012】
図1は、本開示の一実施形態によるアンテナ装置1の構成の一例を示す図である。アンテナ装置1は、
図1に示すように、アンテナ10、アンテナ側機器20、基台30、基台側機器40、スリップリング50、および光ロータリージョイント60を備える。
【0013】
アンテナ10は、追尾対象である人工衛星などと信号を送受信する。アンテナ10は、パラボラアンテナ、カセグレンアンテナ、グレゴリアンアンテナ、リングフォーカスアンテナなど、曲面を持つ1つ以上の反射器を用いて焦点位置に受信信号を集める、または送信信号を焦点位置から反射器へ送出する機能を有する。
【0014】
アンテナ側機器20は、アンテナ10との間で信号を授受する。また、アンテナ側機器20は、スリップリング50および光ロータリージョイント60を介して、基台側機器40との間で信号を授受する。アンテナ側機器20の詳細については後述する。基台30は、アンテナ10およびアンテナ側機器20を回転自在に支持する。
【0015】
基台側機器40は、基台30内または基台30の周辺に設けられる。基台側機器40は、光ロータリージョイント60およびスリップリング50を介して、アンテナ側機器20との間で信号を授受する。基台側機器40の詳細については後述する。
【0016】
スリップリング50は、アンテナ側機器20と基台側機器40との間で、電気信号を授受する。光ロータリージョイント60は、アンテナ側機器20と基台側機器40との間で、光信号を授受する。
【0017】
ここで、アンテナ側機器20および基台側機器40の詳細について説明する。
図2は、本開示の一実施形態によるアンテナ側機器20および基台側機器40の構成の一例を示す図である。なお、
図2では、アンテナ10、スリップリング50、および光ロータリージョイント60も示されている。
【0018】
アンテナ側機器20は、
図2に示すように、受信処理部201、送信処理部202、電気/光変換部203、光/電気変換部204、およびアンテナ駆動部205を備える。
【0019】
受信処理部201は、アンテナ10から受信信号を受ける。受信処理部201は、受けた受信信号に対して所定の処理を行う。所定の処理の例としては、増幅、周波数変換(例えば、ダウンコンバート)などが挙げられる。受信処理部201は、所定の処理を実行済みの受信信号のうち、基台側機器40に送信する受信信号を電気/光変換部203に出力する。
【0020】
送信処理部202は、送信信号を所定の大きさの信号にしてアンテナ10に出力する。
図3は、本開示の一実施形態による送信処理部202の構成の一例を示す図である。送信処理部202は、
図3に示すように、記憶部2021、取得部2022、特定部2023、および増幅部2024を備える。
【0021】
記憶部2021は、アンテナ側機器20が行う種々の処理に必要な情報を記憶する。例えば、記憶部2021は、光ロータリージョイント60の各角度と、各角度における送信信号の所望の電力からの変動量とを関連付けて、データテーブルTBL1として記憶する。なお、光ロータリージョイント60の各角度と、各角度における送信信号の所望の電力からの変動量との対応は、例えば、事前に取得するなどして求めるものであってよい。また、変動量は、絶対値で示される量であってもよい。また、変動量は、所望の電力に対する倍率などの相対値で示される量であってもよい。
図4は、本開示の一実施形態におけるデータテーブルTBL1の一例を示す図である。例えば、
図4に示すデータテーブルTBL1では、光ロータリージョイント60の角度1と送信信号の所望の電力からの変動量1とが関連付けられている。また、データテーブルTBL1では、光ロータリージョイント60の角度2と送信信号の所望の電力からの変動量2とが関連付けられている。また、データテーブルTBL1では、光ロータリージョイント60の角度3と送信信号の所望の電力からの変動量3とが関連付けられている。
【0022】
取得部2022は、光ロータリージョイント60の現在の角度(実際の角度の一例)を含む情報を取得する。例えば、光ロータリージョイント60が自身の現在の角度を知ることができる場合、取得部2022は、光ロータリージョイント60から直接現在の角度を含む情報を取得する。また、光ロータリージョイント60が自身の現在の角度を知ることができない場合、アンテナ10の駆動を制御する後述するアンテナ駆動制御部405から、スリップリング50を介して、または、アンテナ駆動制御部405から制御信号を受けたアンテナ駆動部205から制御内容を受ける。そして、取得部2022は、受けた制御内容から光ロータリージョイント60の現在の角度を演算することにより特定するものであってもよい。
【0023】
なお、本開示の各実施形態において、「取得」、「受けること」などの処理は、対象物(情報を含む)そのものを直接受け取る場合に限定されず、直接受け取った物(情報を含む)を演算や加工などを行うことによって対象物となる場合も含み得る。
【0024】
特定部2023は、記憶部2021が記憶するデータテーブルTBL1において、取得部2022が取得した情報に含まれる光ロータリージョイント60の現在の角度に一致する角度を特定する。そして、特定部2023は、データテーブルTBL1において、特定した角度と関連付けられている変動量を特定する。例えば、取得部2022が取得した情報に含まれる光ロータリージョイント60の現在の角度が角度1である場合、特定部2023は、データテーブルTBL1において角度1を特定する。そして、特定部2023は、データテーブルTBL1において、特定した角度1と関連付けられている変動量1を特定する。
【0025】
増幅部2024は、特定部2023が特定した変動量を打ち消す処理を行う。例えば、増幅部2024は、送信信号を増幅する自身の増幅率を、特定部2023が特定した変動量を打ち消す増幅率に変更する。また、例えば、増幅部2024は、特定部2023が特定した変動量を打ち消す増幅器またはアッテネータを新たに追加する。増幅部2024は、特定部2023が特定した変動量を打ち消す処理を行った後の送信信号をアンテナ10に出力する。
【0026】
電気/光変換部203は、受信処理部201から電気信号を受ける。電気/光変換部203は、受けた電気信号を光信号に変換する。電気/光変換部203は、変換後の光信号を、光ロータリージョイント60に出力する。
【0027】
光/電気変換部204は、光ロータリージョイント60から光信号を受ける。光/電気変換部204は、受けた光信号を電気信号に変換する。光/電気変換部204は、変換後の電気信号を送信処理部202に出力する。
【0028】
アンテナ駆動部205は、後述するアンテナ駆動制御部405による制御の下、アンテナ10の向きが所望の向きとなるように、アンテナ10を駆動させる。具体的には、アンテナ駆動部205は、スリップリング50を介して、アンテナ駆動制御部405からアンテナ10の向きを変更させる駆動制御信号を受ける。駆動制御信号は、アンテナ10を仰角方向(EL(ELevation)軸回り)、方位角方向(AZ軸回り)へ駆動するために必要なトルクあるいは回転数を得るための電力や電気信号を含む信号である。そして、アンテナ駆動部205は、受けた駆動制御信号に応じてアンテナ10の向きを変更する。
【0029】
基台側機器40は、
図2に示すように、受信処理部401、送信処理部402、電気/光変換部403、光/電気変換部404、およびアンテナ駆動制御部405を備える。
【0030】
受信処理部401は、光/電気変換部404から電気信号を受ける。受信処理部401は、受けた電気信号に対して所定の処理を行う。所定の処理の例としては、復調処理、衛星の状態を地上で監視するために必要な情報である状態監視データ(すなわち、テレメトリ)の処理、衛星に対するアンテナの指向誤差情報の処理などが挙げられる。アンテナの指向誤差情報には、モノパルス追尾方式でアンテナを衛星に追尾させるための和信号および差信号の情報が含まれる。和信号は衛星に正対したときに信号のレベルが最大となり、衛星方向から指向がずれると信号のレベルが減少する性質をもつ信号である。差信号は、衛星に正対したときに最小となり、衛星方向から指向がずれると信号のレベルが増加し、ずれた方向により和信号に対して位相が偏移する性質をもつ信号である。アンテナの指向誤差情報の処理には、和信号および差信号からアンテナのAZ軸の角度誤差およびEL軸の角度誤差を求める処理などが挙げられる。これら所定の処理は、周知の技術を用いるものであってもよい。状態監視データには、衛星内部の温度、衛星内部の所定の場所の電圧、衛星の姿勢、衛星に搭載している機器の状態などを示す情報が含まれる。
【0031】
送信処理部402は、所定の処理を行った送信信号を、電気/光変換部403、および光ロータリージョイント60を介して、アンテナ側機器20に出力する。所定の処理の例としては、変調処理、所定の大きさの送信信号を生成する処理などが挙げられる。
【0032】
電気/光変換部403は、送信処理部402から電気信号を受ける。電気/光変換部403は、受けた電気信号を光信号に変換する。電気/光変換部403は、変換後の光信号を、光ロータリージョイント60に出力する。
【0033】
光/電気変換部404は、光ロータリージョイント60から光信号を受ける。光/電気変換部404は、受けた光信号を電気信号に変換する。光/電気変換部404は、変換後の電気信号を受信処理部401に出力する。
【0034】
アンテナ駆動制御部405は、アンテナの指向誤差情報に基づいて、アンテナ10の向きが所望の向き(すなわち、人工衛星のある方向を向く向き)となるように、アンテナ10を駆動させる駆動制御信号を生成する。アンテナの指向誤差情報とは、モノパルス追尾方式などでアンテナを対象衛星の方向に向ける場合において、アンテナが衛星方向からどれくらいずれているかを表す情報である。このアンテナの指向誤差情報は、角度誤差情報という場合もある。この角度誤差情報は、アンテナ側に備えた高次モード結合器などにより、アンテナが指向する方向と実際に衛星が存在する方向との角度誤差に基づいて、アンテナで受けた信号から和信号と差信号が生成される。この和信号と差信号は、それぞれ受信処理部401まで伝送される。そして、受信処理部401は、和信号と差信号との位相差やレベル差などからAZ軸、EL軸それぞれの角度の誤差を計算する。そして、アンテナ駆動制御部405は、生成した駆動制御信号を、スリップリング50を介してアンテナ側機器20に出力する。
【0035】
なお、アンテナ装置1が行う上述した処理は一例であって、アンテナ装置1が行う処理は上述した処理に限定されるものではない。例えば、アンテナ装置1は、以下で説明する処理を行うものであってもよい。
【0036】
(アンテナ装置が行う処理)
図5は、本開示の一実施形態によるアンテナ装置1の処理フローの一例を示す図である。次に、アンテナ装置1が行うアンテナ側機器20がアンテナ10に出力する送信信号の大きさを所望の大きさとする処理について、
図5を参照して説明する。なお、受信処理部401は、アンテナの指向誤差情報の処理を行っているものとする。また、アンテナ駆動制御部405は、受信処理部401が行うアンテナの指向誤差情報に基づいて、アンテナ10の向きが所望の向き(すなわち、人工衛星のある方向を向く向き)となるように、アンテナ10を駆動させる駆動制御信号を生成しているものとする。そして、アンテナ駆動制御部405は、生成した駆動制御信号を、スリップリング50を介してアンテナ側機器20に出力しているものとする。また、アンテナ駆動部205は、アンテナ駆動制御部405による制御の下、アンテナ10の向きが所望の向きとなるように、アンテナ10を駆動させているものとする。
【0037】
送信処理部402は、所定の処理を行った送信信号を、電気/光変換部403、および光ロータリージョイント60を介して、アンテナ側機器20に出力する。電気/光変換部403は、送信処理部402から電気信号を受ける。電気/光変換部403は、受けた電気信号を光信号に変換する。電気/光変換部403は、変換後の光信号を、光ロータリージョイント60に出力する。
【0038】
光/電気変換部204は、光ロータリージョイント60から光信号を受ける。光/電気変換部204は、受けた光信号を電気信号に変換する。光/電気変換部204は、変換後の電気信号を送信処理部202に出力する。
【0039】
取得部2022は、光ロータリージョイント60の現在の角度を含む情報を取得する(ステップS1)。特定部2023は、記憶部2021が記憶するデータテーブルTBL1において、取得部2022が取得した情報に含まれる光ロータリージョイント60の現在の角度に一致する角度を特定する(ステップS2)。そして、特定部2023は、データテーブルTBL1において、特定した角度と関連付けられている変動量を特定する(ステップS3)。
【0040】
増幅部2024は、特定部2023が特定した変動量を打ち消す処理を行う(ステップS4)。増幅部2024は、特定部2023が特定した変動量を打ち消す処理を行った後の送信信号をアンテナ10に出力する。アンテナ10は、追尾対象の人工衛星に対して、信号を送信する(ステップS5)。
【0041】
(利点)
以上、本開示の一実施形態によるアンテナ装置1について説明した。アンテナ装置1において、アンテナ10は、送受信を行う。基台30は、アンテナ10との間で信号を授受するアンテナ側機器20、およびアンテナ10を回転自在に支持する。スリップリング50は、基台30に設けられた基台側機器40とアンテナ側機器20との間で電気信号を授受する。光ロータリージョイント60は、基台30に設けられた基台側機器40とアンテナ側機器20との間で光信号を授受する。増幅部2024は、光ロータリージョイント60の各角度と各角度における送信信号の所望の電力からの変動量との対応関係、および光ロータリージョイント60の実際の角度に基づいて、光ロータリージョイント60の実際の角度における実際の送信信号の所望の電力からの変動量を打ち消す処理を行う。このアンテナ装置1により、基台上のアンテナをAZ軸方向に無限に回転可能にし、かつ、通信するために必要な送信電力をアンテナに伝えることができる。
【0042】
図6は、本開示の実施形態によるアンテナ装置1の最小構成を示す図である。アンテナ装置1は、
図6に示すように、アンテナ10、基台30、スリップリング50、光ロータリージョイント60、および増幅部2024を備える。
【0043】
アンテナ10は、送受信を行う。基台30は、アンテナ10との間で信号を授受するアンテナ側機器20、およびアンテナ10を回転自在に支持する。スリップリング50は、基台30に設けられた基台側機器40とアンテナ側機器20との間で電気信号を授受する。光ロータリージョイント60は、基台30に設けられた基台側機器40とアンテナ側機器20との間で光信号を授受する。増幅部2024は、光ロータリージョイント60の各角度と各角度における送信信号の所望の電力からの変動量との対応関係、および光ロータリージョイント60の実際の角度に基づいて、光ロータリージョイント60の実際の角度における実際の送信信号の所望の電力からの変動量を打ち消す処理を行う。
【0044】
アンテナ10は、例えば、
図1に例示されているアンテナ10が有する機能を用いて実現することができる。基台30は、例えば、
図1に例示されている基台30が有する機能を用いて実現することができる。スリップリング50は、例えば、
図1に例示されているスリップリング50が有する機能を用いて実現することができる。光ロータリージョイント60は、例えば、
図1に例示されている光ロータリージョイント60が有する機能を用いて実現することができる。増幅部2024は、例えば、
図3に例示されている増幅部2024が有する機能を用いて実現することができる。
【0045】
図7は、本開示の実施形態による最小構成のアンテナ装置1の処理フローの一例を示す図である。次に、本開示の実施形態による最小構成のアンテナ装置1の処理について
図7を参照して説明する。
【0046】
送受信を行うアンテナ10と、前記アンテナ10との間で信号を授受するアンテナ側機器20、および前記アンテナ10を回転自在に支持する基台30と、前記基台30に設けられた基台側機器40と前記アンテナ側機器20との間で電気信号を授受するスリップリング50と、前記基台30に設けられた基台側機器40と前記アンテナ側機器20との間で光信号を授受する光ロータリージョイント60と、を備えるアンテナ装置1において、増幅部2024は、光ロータリージョイント60の各角度と各角度における送信信号の所望の電力からの変動量との対応関係、および光ロータリージョイント60の実際の角度に基づいて、光ロータリージョイント60の実際の角度における実際の送信信号の所望の電力からの変動量を打ち消す処理を行う(ステップS101)。
【0047】
以上、本開示の実施形態による最小構成のアンテナ装置1について説明した。このアンテナ装置1により、基台上のアンテナをAZ軸方向に無限に回転可能にし、かつ、通信するために必要な送信電力をアンテナに伝えることができる。
【0048】
なお、本開示の実施形態における処理は、適切な処理が行われる範囲において、処理の順番が入れ替わってもよい。
【0049】
本開示の実施形態について説明したが、上述のアンテナ装置1、アンテナ側機器20、基台側機器40、その他の制御装置は内部に、コンピュータシステムを有していてもよい。そして、上述した処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。コンピュータの具体例を以下に示す。
【0050】
図8は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。コンピュータ5は、
図8に示すように、CPU(Central Processing Unit)6、メインメモリ7、ストレージ8、インターフェース9を備える。
【0051】
例えば、上述のアンテナ装置1、アンテナ側機器20、基台側機器40、その他の制御装置のそれぞれは、コンピュータ5に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ8に記憶されている。CPU6は、プログラムをストレージ8から読み出してメインメモリ7に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU6は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ7に確保する。
【0052】
ストレージ8の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ8は、コンピュータ5のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インターフェース9または通信回線を介してコンピュータ5に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ5に配信される場合、配信を受けたコンピュータ5が当該プログラムをメインメモリ7に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ8は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0053】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現してもよい。さらに、上記プログラムは、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるファイル、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0054】
本開示のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例であり、開示の範囲を限定しない。これらの実施形態は、開示の要旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、省略、置き換え、変更を行ってよい。
【0055】
なお、上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0056】
(付記1)
送受信を行うアンテナと、
前記アンテナとの間で信号を授受するアンテナ側機器、および前記アンテナを回転自在に支持する基台と、
前記基台に設けられた基台側機器と前記アンテナ側機器との間で電気信号を授受するスリップリングと、
前記基台に設けられた基台側機器と前記アンテナ側機器との間で光信号を授受する光ロータリージョイントと、
前記光ロータリージョイントの各角度と前記各角度における送信信号の所望の電力からの変動量との対応関係、および前記光ロータリージョイントの実際の角度に基づいて、前記光ロータリージョイントの実際の角度における実際の送信信号の所望の電力からの変動量を打ち消す処理を行う増幅部と、
を備えるアンテナ装置。
【0057】
(付記2)
前記光ロータリージョイントの各角度と前記各角度における送信信号の所望の電力からの変動量との対応関係を示すデータテーブルを記憶する記憶部、
を備える付記1に記載のアンテナ装置。
【0058】
(付記3)
前記光ロータリージョイントの実際の角度を含む情報を取得する取得部、
を備える付記1または付記2に記載のアンテナ装置。
【0059】
(付記4)
前記取得部は、
前記光ロータリージョイントの実際の角度を含む情報を、前記光ロータリージョイント、または前記アンテナを駆動する制御信号を生成するアンテナ駆動制御部から取得する、
付記3に記載のアンテナ装置。
【0060】
(付記5)
前記アンテナは、
前記変動量を打ち消す処理を前記増幅部が行った後の送信信号を送信する、
付記1から付記4の何れか1つに記載のアンテナ装置。
【0061】
(付記6)
送受信を行うアンテナと、前記アンテナとの間で信号を授受するアンテナ側機器、および前記アンテナを回転自在に支持する基台と、前記基台に設けられた基台側機器と前記アンテナ側機器との間で電気信号を授受するスリップリングと、前記基台に設けられた基台側機器と前記アンテナ側機器との間で光信号を授受する光ロータリージョイントと、を備えるアンテナ装置が行う処理方法であって、
前記光ロータリージョイントの各角度と前記各角度における送信信号の所望の電力からの変動量との対応関係、および前記光ロータリージョイントの実際の角度に基づいて、前記光ロータリージョイントの実際の角度における実際の送信信号の所望の電力からの変動量を打ち消す処理を行うこと、
を含む処理方法。
【0062】
(付記7)
送受信を行うアンテナと、前記アンテナとの間で信号を授受するアンテナ側機器、および前記アンテナを回転自在に支持する基台と、前記基台に設けられた基台側機器と前記アンテナ側機器との間で電気信号を授受するスリップリングと、前記基台に設けられた基台側機器と前記アンテナ側機器との間で光信号を授受する光ロータリージョイントと、増幅部と、を備えるアンテナ装置のコンピュータに、
前記光ロータリージョイントの各角度と前記各角度における送信信号の所望の電力からの変動量との対応関係、および前記光ロータリージョイントの実際の角度に基づいて、前記光ロータリージョイントの実際の角度における実際の送信信号の所望の電力からの変動量を打ち消す前記増幅部の増幅を制御する処理を行うこと、
を実行させるプログラム。
【符号の説明】
【0063】
1・・・アンテナ装置
5・・・コンピュータ
6・・・CPU
7・・・メインメモリ
8・・・ストレージ
9・・・インターフェース
10・・・アンテナ10
20・・・アンテナ側機器
30・・・基台
40・・・基台側機器
50・・・スリップリング
60・・・光ロータリージョイント
201、401・・・受信処理部
202、402・・・送信処理部
203、403・・・電気/光変換部
204、404・・・光/電気変換部
205・・・アンテナ駆動部
405・・・アンテナ駆動制御部
2021・・・記憶部
2022・・・取得部
2023・・・特定部
2024・・・増幅部