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特開2024-178639ワイヤボンディング装置およびワイヤボンディング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178639
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】ワイヤボンディング装置およびワイヤボンディング方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20241218BHJP
【FI】
H01L21/60 301G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096928
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥東 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】加島 健吉
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊介
【テーマコード(参考)】
5F044
【Fターム(参考)】
5F044BB01
5F044BB14
5F044BB25
5F044CC04
(57)【要約】
【課題】被接合部材を局所的に加熱しつつ、ワイヤが接合される被接合部材の部分の周囲にある部品と加熱ユニットとが干渉することを抑制可能なワイヤボンディング装置およびワイヤボンディング方法を提供する。
【解決手段】ワイヤボンディング装置100は、被接合部材90にワイヤ99を接合するワイヤボンディング装置100であって、ボンディングツール34と、ツール駆動部12と、加熱ユニット40と、加熱ユニット駆動部13とを備えている。ボンディングツール34は、ワイヤ99を支持する。ツール駆動部12は、ボンディングツール34を移動させる。加熱ユニット40は、ワイヤ99が接合される被接合部材90の部分に熱風を吹き付ける。加熱ユニット駆動部13は、加熱ユニット40をボンディングツール34とは独立して移動させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被接合部材にワイヤを接合するワイヤボンディング装置であって、
前記ワイヤを支持するボンディングツールと、
前記ボンディングツールを移動させるツール駆動部と、
前記ワイヤが接合される前記被接合部材の部分に熱風を吹き付ける加熱ユニットと、
前記加熱ユニットを前記ボンディングツールとは独立して移動させる加熱ユニット駆動部とを備える、ワイヤボンディング装置。
【請求項2】
前記加熱ユニットの温度を測定する温度計測部と、
前記ツール駆動部および前記加熱ユニット駆動部の各々を制御する第1制御部とをさらに備え、
前記第1制御部は、前記温度計測部からの出力に基づいて前記ツール駆動部を制御可能である、請求項1に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項3】
前記加熱ユニットは、
圧縮気体が流入するケースと、
前記ケースに取り囲まれており且つ前記圧縮気体を加熱することによって前記熱風を生成するヒータと、
前記ケースに接続されており且つ前記熱風を吹き出すノズルとを有しており、
前記温度計測部は、前記ノズルの温度を測定する、請求項2に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項4】
前記ケースに流入する前記圧縮気体の流量を調節する制御弁部と、
前記制御弁部を制御する第2制御部と、
前記ヒータを制御する第3制御部とをさらに備える、請求項3に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載のワイヤボンディング装置を用いたワイヤボンディング方法であって、
前記加熱ユニットから前記熱風を前記被接合部材に吹き付けることによって前記被接合部材を加熱する工程と、
加熱された前記被接合部材に前記ボンディングツールを用いて前記ワイヤを接合する工程とを備え、
前記被接合部材は、第1部分と、前記ワイヤを介して前記第1部分と電気的に接続される第2部分とを有し、
前記加熱ユニットから前記熱風を前記被接合部材に吹き付けることによって前記被接合部材を加熱する工程において、前記加熱ユニットは、前記第1部分と前記第2部分とを含む領域に前記熱風を吹き付ける、ワイヤボンディング方法。
【請求項6】
前記加熱ユニットは、
圧縮気体が流入するケースと、
前記ケースに取り囲まれており且つ前記圧縮気体を加熱することによって前記熱風を生成するヒータと、
前記ケースに接続されており且つ前記熱風を吹き出すノズルとを有しており、
前記加熱された前記被接合部材に前記ボンディングツールを用いて前記ワイヤを接合する工程は、
前記ワイヤを前記第1部分に接合する工程と、
前記第1部分に接合された前記ワイヤを前記第2部分に接合する工程とを有し、
前記ワイヤを前記第1部分に接合する工程における前記ノズルと前記第1部分との間の距離を第1距離とし、前記第1部分に接合された前記ワイヤを前記第2部分に接合する工程における前記ノズルと前記第2部分との間の距離を第2距離とした場合、
前記第1距離と前記第2距離とが異なるように前記加熱ユニットを移動させることによって、前記ワイヤを前記第1部分に接合する工程における前記第1部分の表面温度と、前記第1部分に接合された前記ワイヤを前記第2部分に接合する工程における前記第2部分の表面温度とを調節する、請求項5に記載のワイヤボンディング方法。
【請求項7】
前記加熱ユニットから前記熱風を前記被接合部材に吹き付けることによって前記被接合部材を加熱する工程において、前記ノズルの温度が予め決められた目標温度に到達した後、前記加熱された前記被接合部材に前記ボンディングツールを用いて前記ワイヤを接合する工程が実施される、請求項6に記載のワイヤボンディング方法。
【請求項8】
前記加熱ユニットから前記熱風を前記被接合部材に吹き付けることによって前記被接合部材を加熱する工程において、前記ノズルの温度が前記目標温度に到達した後予め決められた遅延時間が経過してから、前記加熱された前記被接合部材に前記ボンディングツールを用いて前記ワイヤを接合する工程が実施される、請求項7に記載のワイヤボンディング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤボンディング装置およびワイヤボンディング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの部材を互いに電気的に接続する方法として、ワイヤを用いて接続する方法がある。当該方法は、ワイヤボンディングと称される。ワイヤが接続される部材(被接合部材)は、たとえば半導体チップ上に設けられている電極および半導体装置の外部端子であるリードなどである。ワイヤは、たとえば金、銀または銅によって構成されている。ワイヤボンディングにおいて、被接合部材を含むワークがステージ上に配置される。被接合部材が加熱される。加熱された被接合部材にワイヤを接触させつつ、ワイヤと被接合部材とに荷重および超音波振動が印加される。これによって、被接合部材にワイヤが接合される。
【0003】
被接合部材を加熱するために、ステージの内部に設けられているヒータが用いられることがある。しかしながら、当該ヒータを用いて被接合部材を加熱する場合、ワイヤが接合される被接合部材の部分だけでなく、ワークを構成する全ての部品が加熱される。従って、ワーク全体の熱容量が大きくなるにつれて、ボンディング前におけるワークの加熱およびボンディング後におけるワークの冷却に必要な時間が長くなる。結果として、ワイヤを接合するために必要な時間が長くなる。また、ワークのサイズが大きくなるにつれて、ボンディング前におけるワークの加熱およびボンディング後におけるワークの冷却に必要な時間が長くなる。結果として、ワイヤを接合するために必要な時間が長くなる。
【0004】
ワイヤボンディング装置の一例として、特開2013-135111号公報(特許文献1)には、加熱ユニットとして熱風ヒータを有するワイヤボンディング装置が記載されている。当該ワイヤボンディング装置によれば、熱風ヒータは、IC(Integrated Circuit)チップ、基板(リードフレーム)またはワイヤなどに、加熱された空気またはガスを供給する。これによって、ICチップ、基板またはワイヤなどが加熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-135111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載されているワイヤボンディング装置によれば、熱風ヒータは、ボンディングヘッドまたはボンディングアームと一体となって移動する。従って、熱風ヒータは、ボンディングツールから独立して移動することができない。結果として、たとえばワイヤが接合される被接合部材の部分の周囲に部品がある場合、ワイヤを被接合部材に接合する際に、当該部品と熱風ヒータとが干渉することがある。
【0007】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、被接合部材を局所的に加熱しつつ、ワイヤが接合される被接合部材の部分の周囲にある部品と加熱ユニットとが干渉することを抑制可能なワイヤボンディング装置およびワイヤボンディング方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るワイヤボンディング装置は、被接合部材にワイヤを接合するワイヤボンディング装置であって、ボンディングツールと、ツール駆動部と、加熱ユニットと、加熱ユニット駆動部とを備えている。ボンディングツールは、ワイヤを支持する。ツール駆動部は、ボンディングツールを移動させる。加熱ユニットは、ワイヤが接合される被接合部材の部分に熱風を吹き付ける。加熱ユニット駆動部は、加熱ユニットをボンディングツールとは独立して移動させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係るワイヤボンディング装置によれば、加熱ユニット駆動部は、加熱ユニットをボンディングツールとは独立して移動させる。このため、ワイヤが接合される被接合部材の部分の周囲に部品が設けられている場合においても、加熱ユニットが当該部品に干渉しないように加熱ユニットを移動させることができる。これによって、ワイヤが接続される被接合部材の部分の周囲に設けられている部品と加熱ユニットとが干渉することを抑制可能なワイヤボンディング装置およびワイヤボンディング方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係るワイヤボンディング装置の構成を示す正面模式図である。
図2】実施の形態1に係るワイヤボンディング装置の構成を示す平面模式図である。
図3】実施の形態1に係る加熱ユニットの構成を示す一部断面模式図である。
図4】実施の形態1に係るワイヤボンディング装置の構成を示すブロック図である。
図5】実施の形態1に係るワイヤボンディング方法を概略的に示すフロー図である。
図6】ステージ上にワークを配置する工程を示す断面模式図である。
図7】ステージ上にワークを配置する工程を示す平面模式図である。
図8】駆動部が第1接合位置へ移動する工程を示す一部断面模式図である。
図9】実施の形態1に係るワイヤボンディング方法におけるワイヤボンディング装置の動作を示すタイミングチャートである。
図10】第1加熱位置において加熱ユニットが被接合部材を加熱する様子を示す模式図である。
図11】第1部分にワイヤを接合する工程を概略的に示すフロー図である。
図12】ワイヤおよび第1部分に荷重および超音波振動を印加する工程を示す一部断面模式図である。
図13】第2部分にワイヤを接合する工程を概略的に示すフロー図である。
図14】ワイヤおよび第2部分に荷重および超音波振動を印加する工程を示す一部断面模式図である。
図15】実施の形態2に係るワイヤボンディング方法を概略的に示すフロー図である。
図16】第2加熱位置において加熱ユニットが被接合部材を加熱する様子を示す模式図である。
図17】実施の形態2に係るワイヤボンディング方法におけるワイヤボンディング装置の動作を示すタイミングチャートである。
図18】ノズルと第1部分との間の距離と第1部分の表面温度との関係を示す模式図である。
図19】ノズルと第2部分との間の距離と第2部分の表面温度との関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて本開示の実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0012】
実施の形態1.
<ワイヤボンディング装置の構成>
まず、図1から図3を用いて、実施の形態1に係るワイヤボンディング装置の構成について説明する。
【0013】
図1および図2に示されるように、ワイヤボンディング装置100は、ステージ70と、ボンディング部1と、加熱部4と、駆動部11と、第2制御部22と、第1制御部21と、電気トーチ(図示しない)とを有している。ステージ70は、ワーク97を支持する。ボンディング部1は、ワーク97にワイヤ99を接合する。加熱部4は、ワーク97を加熱する。駆動部11は、ボンディング部1および加熱部4を移動させる。第1制御部21は、駆動部11を制御する。具体的には、第1制御部21は、第2制御部22からの信号に基づいて、駆動部11を制御する。別の観点から言えば、第2制御部22は、第1制御部21に信号を出力することによって、駆動部11を制御する。ワーク97は、被接合部材90と、筐体95とを有している。ワイヤボンディング装置100は、被接合部材90にワイヤ99を接合する。
【0014】
ステージ70は、平坦面79を有している。平坦面79において、ワーク97がステージ70に配置される。平坦面79に垂直な方向は、上下方向Zとされる。駆動部11は、ステージ70から離間している。上下方向Zに平行であり、且つ駆動部11からステージ70に向かう方向は、第1方向101とされる。第1方向101と反対の方向は、第2方向102とされる。駆動部11は、上下方向Zに垂直な面に沿って移動可能である。別の観点から言えば、駆動部11は、上下方向Zに垂直な面に沿ってボンディング部1および加熱部4を移動可能である。
【0015】
ボンディング部1は、駆動部11に固定されている。ボンディング部1は、ツール駆動部12と、ボンディングツール34と、カメラ15と、ワイヤ供給部31とを有している。ツール駆動部12は、第1ベース部61と、第1可動部71とを有している。第1ベース部61は、駆動部11に固定されている。第1可動部71は、第1ベース部61に接続されている。第1可動部71は、上下方向Zに沿って移動可能である。
【0016】
ボンディングツール34は、第1可動部71に取り付けられている。ボンディングツール34は、ワイヤ99を支持する。ボンディングツール34の形状は、たとえば環状である。ボンディングツール34は、上下方向Zに沿って延びている。ボンディングツール34は、たとえばキャピラリである。ボンディングツール34は、ワイヤ99の一部を取り囲む。電気トーチ(図示しない)は、放電エネルギーを用いて、ボンディングツール34から第1方向101に突出しているワイヤ99の先端を溶融させることができる。
【0017】
ワイヤ供給部31は、支持部32と、リール部33とを有している。支持部32は、第1可動部71に固定されている。リール部33は、支持部32に支持されている。リール部33は、ワイヤ99を支持する。リール部33は、たとえばワイヤ99を巻き付けられる。ワイヤ供給部31は、ワイヤ99をボンディングツール34に供給可能である。具体的には、たとえばリール部33が回転することによって、第1方向101に沿って、ワイヤ99がボンディングツール34に供給される。カメラ15は、第1可動部71に固定されている。カメラ15は、被接合部材90の表面を撮像可能である。カメラ15は、カメラ15に対して第1方向101に位置している物体を撮像可能である。
【0018】
ツール駆動部12は、ボンディングツール34、カメラ15およびワイヤ供給部31を移動させる。具体的には、ツール駆動部12は、第1可動部71を移動させることによって、上下方向Zに沿って、ボンディングツール34、カメラ15およびワイヤ供給部31を移動可能である。
【0019】
加熱部4は、駆動部11に取り付けられている。加熱部4は、ボンディング部1から離間している。加熱部4は、加熱ユニット駆動部13と、加熱ユニット40とを有している。加熱ユニット駆動部13は、第2ベース部62と、第2可動部72とを有している。第2ベース部62は、駆動部11に固定されている。第2可動部72は、第2ベース部62に接続されている。上下方向Zに垂直であり、且つ加熱ユニット駆動部13からツール駆動部12に向かう方向に平行な方向は左右方向Xとされる。上下方向Zおよび左右方向Xの各々に垂直な方向は前後方向Yとされる。第2可動部72は、上下方向Z、左右方向Xおよび前後方向Yの各々に沿って移動可能である。
【0020】
加熱ユニット40は、第2可動部72に固定されている。加熱ユニット40は、被接合部材90を加熱する部分である。加熱ユニット40は、ワイヤ99が接合される被接合部材90の部分に熱風を吹き付ける。加熱ユニット40が熱風を吹き付ける方向は、たとえば、第1方向101に対して加熱ユニット駆動部13からツール駆動部12に向かう方向に傾斜している。加熱ユニット40の詳細な構成は後述する。
【0021】
加熱ユニット駆動部13は、加熱ユニット40をボンディングツール34とは独立して移動させる。具体的には、加熱ユニット駆動部13は、第2可動部72を移動させることによって、左右方向X、前後方向Yおよび上下方向Zの各々に沿って加熱ユニット40を移動可能である。
【0022】
図1に示されるように、第1制御部21は、第2制御部22、駆動部11、ツール駆動部12および加熱ユニット駆動部13の各々に電気的に接続されている。第1制御部21は、駆動部11、ツール駆動部12および加熱ユニット駆動部13の各々を制御する。具体的には、第1制御部21は、第2制御部22からの信号に基づいて、駆動部11、ツール駆動部12および加熱ユニット駆動部13の各々を制御する。別の観点から言えば、第2制御部22は、第1制御部21に信号を出力することによって、駆動部11、ツール駆動部12および加熱ユニット駆動部13の各々を制御する。第2制御部22は、たとえばパーソナルコンピュータである。第2制御部22は、たとえばCPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro-Processing Unit)などの演算処理装置を有している。
【0023】
図3に示されるように、ワイヤボンディング装置100は、ガス流路59を有している。ガス流路59は、加熱ユニット40に接続されている。ガス流路59は、加熱ユニット40とガス供給源98とを接続する。別の観点から言えば、加熱ユニット40は、ガス流路59を介してガス供給源98に接続される。ガス流路59は、たとえばパイプまたはホースである。加熱ユニット40には、ガス供給源98から圧縮気体が供給される。圧縮気体は、たとえば空気である。
【0024】
加熱ユニット40は、ケース42と、ヒータ41と、ノズル43と、接続部44とを有している。ケース42の形状は環状である。ケース42において、流入口68と、流出口69とが設けられている。流入口68において、ケース42は、ガス流路59に接続されている。流入口68は、圧縮気体が流入するケース42の部分である。別の観点から言えば、ケース42には圧縮気体が流入する。流出口69は、流入口68とは異なっている。流出口69は、ケース42から圧縮気体が流出する部分である。
【0025】
ヒータ41は、ケース42に取り囲まれている。ヒータ41は、ケース42の内部に設けられている。具体的には、ヒータ41は、ケース42に流入する圧縮気体が接触する位置に設けられている。ヒータ41は、圧縮気体を加熱することによって熱風を生成する。ヒータ41は、たとえば電熱線である。
【0026】
流出口69において、ノズル43は、ケース42に接続されている。ノズル43は、熱風を吹き出す部分である。ノズル43の形状は管状である。ノズル43は、本体部45と、先端部43aとを有している。流出口69において、本体部45は、ケース42に接続されている。本体部45の形状は管状である。本体部45は、たとえば第1方向101に対して加熱ユニット駆動部13(図1および図2参照)からツール駆動部12(図1および図2参照)に向かう方向に湾曲している。
【0027】
先端部43aは、本体部45に接続されている。先端部43aは、本体部45に対してケース42の反対に設けられている。先端部43aは、ケース42から離間している。先端部43aの形状は、管状である。先端部43aの内径は、本体部45の内径よりも小さい。先端部43aにおいて、吹き出し口49が設けられている。吹き出し口49は、熱風を吹き出す部分である。吹き出し口49は、ステージ70(図1および図2参照)に向かって開口している。吹き出し口49が開口する方向は、たとえば第1方向101に対して加熱ユニット駆動部13からツール駆動部12に向かう方向に傾斜している。
【0028】
接続部44は、ケース42に連なっている。接続部44は、第2可動部72(図1および図2参照)に固定されている。接続部44は、ケース42と第2可動部72とを接続している。接続部44は、ケース42を支持している。
【0029】
図3に示されるように、ワイヤボンディング装置100は、第3制御部23と、制御弁部5と、温度計測部6とを有している。第3制御部23は、第2制御部22およびヒータ41の各々に電気的に接続されている。第3制御部23は、ヒータ41を制御する。具体的には、第3制御部23は、第2制御部22からの信号に基づいて、ヒータ41に電流を供給する。別の観点から言えば、第2制御部22は、第3制御部23に信号を出力することによって、ヒータ41を制御する。
【0030】
制御弁部5は、加熱ユニット40に流入する圧縮気体の流量を調整する。制御弁部5は、電磁開閉弁51と、流量調整弁52とを有している。電磁開閉弁51は、ガス流路59に取り付けられている。電磁開閉弁51は、ガス供給源98と流入口68との間に設けられる。電磁開閉弁51は、第2制御部22と電気的に接続されている。電磁開閉弁51は、ガス流路59を通ってケース42へ供給される圧縮気体の供給と遮断とを制御可能である。
【0031】
流量調整弁52は、ガス流路59に取り付けられている。流量調整弁52は、電磁開閉弁51とガス供給源98との間に設けられている。流量調整弁52は、第2制御部22と電気的に接続されている。流量調整弁52は、ガス流路59の内部を流れる気体の流量を調節可能である。
【0032】
温度計測部6は、先端部43aに取り付けられている。具体的には、温度計測部6は、先端部43aの外側に取り付けられている。温度計測部6は、ノズル43から吹き出される熱風が直接当たらない位置に取り付けられている。温度計測部6は、先端部43aの温度を測定する。別の観点から言えば、温度計測部6は、加熱ユニット40の温度を測定する。温度計測部6は、第2制御部22に電気的に接続されている。温度計測部6は、たとえば熱電対である。
【0033】
図4に示されるように、ワイヤボンディング装置100は、超音波振動子16を有している。超音波振動子16は、ボンディングツール34(図1および図2参照)に超音波振動を印加する。超音波振動子16は、第2制御部22に電気的に接続されている。カメラ15は、第2制御部22に電気的に接続されている。
【0034】
第2制御部22は、通信部25と、演算部26と、記憶部27と、A/D変換部28とを有している。通信部25は、温度計測部6、第1制御部21、カメラ15、超音波振動子16、電磁開閉弁51、流量調整弁52、第3制御部23の各々と通信する。演算部26は、通信部25に入力されたデータと記憶部27が記憶しているデータとに基づいて、予め決められた演算を行う。記憶部27は、演算部26が算出したデータを記憶する。A/D変換部28は、温度計測部6から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換する。A/D変換部28は、変換したデジタル信号を演算部26に出力する。
【0035】
第2制御部22は、ヒータ41を制御可能である。具体的には、第2制御部22は、第3制御部23に信号を出力することによって、ヒータ41に供給する電流を制御可能である。
【0036】
第2制御部22は、制御弁部5を制御可能である。具体的には、電磁開閉弁51に信号を出力することによって、電磁開閉弁51を開閉可能である。別の観点から言えば、第2制御部22は、電磁開閉弁51に信号を出力することによって、ガス供給源98からケース42への気体の供給および遮断を制御可能である。
【0037】
第2制御部22は、流量調整弁52を制御可能である。具体的には、第2制御部22は、流量調整弁52に信号を出力することによって、流量調整弁52を開閉可能である。別の観点から言えば、第2制御部22は、流量調整弁52に信号を出力することによって、ガス供給源98(図3参照)からケース42(図3参照)へ供給される気体の流量を制御可能である。
【0038】
第2制御部22は、超音波振動子16を制御可能である。具体的には、第2制御部22は、超音波振動子16に信号を出力することによって、ボンディングツール34に印加される超音波振動を制御可能である。
【0039】
第2制御部22は、カメラ15を制御可能である。具体的には、第2制御部22は、カメラ15に信号を出力することによって、カメラ15に被接合部材90の表面を撮像させることができる。
【0040】
第2制御部22は、駆動部11を制御可能である。具体的には、第2制御部22は、第1制御部21に信号を出力することによって、駆動部11の移動開始、駆動部11の停止、駆動部11の移動距離、駆動部11の速度、駆動部11の加速度などを制御可能である。第1制御部21は、第2制御部22からの出力に基づいて、駆動部11に信号を出力する。
【0041】
第2制御部22は、ツール駆動部12を制御可能である。具体的には、第2制御部22は、第1制御部21に信号を出力することによって、ツール駆動部12の移動開始、ツール駆動部12の停止、ツール駆動部12の移動距離、ツール駆動部12の速度、ツール駆動部12の加速度などを制御可能である。第1制御部21は、第2制御部22からの出力に基づいて、ツール駆動部12に信号を出力する。第2制御部22は、温度計測部6からの出力に基づいて、第1制御部21に信号を出力することによって、ツール駆動部12を制御可能である。別の観点から言えば、第1制御部21は、温度計測部6からの出力に基づいて、ツール駆動部12を制御可能である。
【0042】
第2制御部22は、加熱ユニット駆動部13を制御可能である。具体的には、第2制御部22は、第1制御部21に信号を出力することによって、加熱ユニット駆動部13の移動開始、加熱ユニット駆動部13の停止、加熱ユニット駆動部13の移動距離、加熱ユニット駆動部13の速度、加熱ユニット駆動部13の加速度などを制御可能である。第1制御部21は、第2制御部22からの出力に基づいて、加熱ユニット駆動部13に信号を出力する。
【0043】
<ワイヤボンディング方法>
次に、図5から図14を用いて、実施の形態1に係るワイヤボンディング方法について説明する。図5から図7に示されるように、まず、ステージ70の平坦面79上にワーク97が配置される(工程S10)。ワーク97は、被接合部材90と、筐体95とを有している。筐体95は、ステージ70に接する。筐体95は、第1面81と、第2面82と、第3面83とを有している。
【0044】
第1面81は、平坦面79に接する。第2面82は、第1面81の反対にある。第2面82において、凹部96が設けられている。第3面83は、上下方向Zにおいて、第1面81と第2面82との間に設けられている。第3面83は、凹部96の底面を構成している。被接合部材90は、第3面83上に設けられている。被接合部材90は、凹部96の内部に設けられている。別の観点から言えば、上下方向Zにおいて、被接合部材90は、第1面81と第2面82との間に設けられている。
【0045】
被接合部材90は、たとえば第1部材93と、第2部材94とを有している。第1部材93は、たとえば半導体チップである。第1部材93は、第1部分91を有している。第1部分91は、ワイヤ99が接合される第1部材93の部分である。第1部分91は、たとえば電極である。
【0046】
第2部材94は、第1部材93から離間している。第2部材94は、たとえば外部端子のリードである。第2部材94は、第2部分92を有している。第2部分92は、ワイヤ99が接合される第2部材94の部分である。第2部分92は、第1部分91と電気的に接続される第2部材94の部分である。
【0047】
次に、被接合部材90の位置ずれ量が算出される(工程S20)。第2制御部22は、第1制御部21に信号を出力することによって、駆動部11の待機位置からカメラ15が第1部分91を撮像できる位置に、駆動部11を移動させる。これによって、第1部分91の上方にカメラ15が位置する。第2制御部22は、カメラ15に信号を出力することによって、カメラ15に被接合部材90の第1部分91を撮像させる。カメラ15は、第2制御部22に撮像した画像データを出力する。
【0048】
第2制御部22は、画像認識を実施する。具体的には、第2制御部22は、カメラ15から出力された画像データに基づいて、機械座標系における第1部分91の座標を特定する。機械座標系は、前後方向Yに延びる軸、左右方向Xに延びる軸、上下方向Zに延びる軸で表される直交座標系である。機械座標系の原点は、特に限定されないが、たとえば駆動部11の待機位置である。
【0049】
第2制御部22は、特定された第1部分91の座標と記憶部27に予め記憶されている第1部分91の座標との差分を求めることによって、左右方向Xにおける第1部分91の位置ずれ量と、前後方向Yにおける第1部分91の位置ずれ量とを算出する。左右方向Xにおける第1部分91の位置ずれ量は、ΔX1とされる。前後方向Yにおける第1部分91の位置ずれ量は、ΔY1とされる。
【0050】
第2制御部22は、第1制御部21に信号を出力することによって、カメラ15が第1部分91を撮像できる位置からカメラ15が第2部分92を撮像できる位置へ、駆動部11を移動させる。これによって、第2部分92の上方にカメラ15が位置する。第2制御部22は、カメラ15に信号を出力することによって、カメラ15に被接合部材90の第2部分92を撮像させる。カメラ15は、第2制御部22に撮像した画像データを出力する。第2制御部22は、画像認識を実施する。具体的には、第2制御部22は、カメラ15から出力された画像データに基づいて、機械座標系における第2部分92の座標を特定する。
【0051】
第2制御部22は、特定された第2部分92の座標と記憶部27に予め記憶されている第2部分92の座標との差分を求めることによって、左右方向Xにおける第2部分92の位置ずれ量と、前後方向Yにおける第2部分92の位置ずれ量とを算出する。左右方向Xにおける第2部分92の位置ずれ量は、ΔX2とされる。前後方向Yにおける第2部分92の位置ずれ量は、ΔY2とされる。
【0052】
次に、接合位置の座標が算出される(工程S30)。具体的には、演算部26は、記憶部27に予め記憶されている第1部分91における接合位置の座標を読み出す。予め記憶されている第1部分91における接合位置の左右方向Xにおける座標は、X11とされる。予め記憶されている第1部分91における接合位置の前後方向Yにおける座標は、Y11とされる。
【0053】
演算部26は、工程S20で算出したΔX1およびΔY1の各々と、記憶部27から読み出したX11およびY11の各々とに基づいて、実際に第1部分91においてワイヤ99が接合される接合位置の座標を算出する。以下、実際に第1部分91においてワイヤ99が接合される接合位置を、第1接合位置とも称する。第1接合位置の座標は、第1部分91においてワイヤ99を接合する際における駆動部11の座標である。左右方向Xにおける第1接合位置の座標は、X1とされる。前後方向Yにおける第1接合位置の座標は、Y1とされる。
【0054】
演算部26は、X11とΔX1とを足し合わせることによって、X1を算出する。言い換えれば、X1は、X11+ΔX1である。演算部26は、Y11とΔY1とを足し合わせることによって、Y1を算出する。言い換えれば、Y1は、Y11+ΔY1である。
【0055】
演算部26は、記憶部27に予め記憶されている第2部分92における接合位置の座標を読み出す。予め記憶されている第2部分92における接合位置の左右方向Xにおける座標は、X21とされる。予め記憶されている第2部分92における接合位置の前後方向Yにおける座標は、Y21とされる。
【0056】
演算部26は、工程S20で算出したΔX2およびΔY2の各々と、記憶部27から読み出したX21およびY21の各々とに基づいて、実際に第2部分92においてワイヤ99が接合される接合位置の座標を算出する。以下、実際に第2部分92においてワイヤ99が接合される接合位置を、第2接合位置とも称する。第2接合位置の座標は、第2部分92においてワイヤ99を接合する際における駆動部11の座標である。左右方向Xにおける第2接合位置の座標は、X2とされる。前後方向Yにおける第2接合位置の座標は、Y2とされる。
【0057】
演算部26は、X21とΔX2とを足し合わせることによって、X2を算出する。言い換えれば、X2は、X21+ΔX2である。演算部26は、Y21とΔY2とを足し合わせることによって、Y2を算出する。言い換えれば、Y2は、Y21+ΔY2である。
【0058】
次に、駆動部11を第1接合位置へ移動させる(工程S40)。第2制御部22は、第1制御部21に信号を出力することによって、駆動部11を移動させる。これによって、駆動部11は、第1接合位置(X1、Y1)に移動する。
【0059】
図8に示されるように、ボンディングツール34は、第1部材93の上方に位置する。具体的には、ボンディングツール34は、第1部分91(図7参照)の上方に位置する。ワイヤ99は、ボンディングツール34に供給されている。ワイヤ99の一部は、ボンディングツール34に取り囲まれている。ワイヤ99の端部は、ボンディングツール34から第1方向101に突出している。ボンディングツール34から突出しているワイヤ99の先端が電気トーチ(図示しない)からの放電エネルギーを用いて溶融されることによって、ワイヤ99の先端においてボールが形成される。
【0060】
次に、加熱ユニット40を第1加熱位置へ移動させる(工程S50)。具体的には、第2制御部22は、加熱ユニット駆動部13へ信号を出力することによって、左右方向X、前後方向Yおよび上下方向Zの少なくとも1つの方向に沿って、加熱ユニット40を移動させる。これによって、加熱ユニット40は、第1加熱位置に移動する。第1加熱位置は、第1部分91にワイヤ99を接合する際における加熱ユニット40の位置である。第1加熱位置は、ノズル43とワーク97とが干渉しない位置である。第1加熱位置の座標は、記憶部27に予め記憶されている。なお、加熱ユニット40を第1加熱位置へ移動させる工程(S50)は、駆動部11を第1接合位置へ移動させる工程(S40)と同時に実施されてもよい。
【0061】
次に、被接合部材90を加熱する(工程S60)。具体的には、第2制御部22は、電磁開閉弁51に信号を出力することによって、加熱ユニット40へ圧縮気体の供給を開始させる。加熱ユニット40へ供給される圧縮気体の流量は、予め記憶部27に記憶されている流量である。
【0062】
図9に示されるように、加熱ユニット40へ圧縮気体の供給が開始された時点は、基準時点t0とされる。基準時点t0において、第2制御部22は、第3制御部23に信号を出力することによって、ヒータ41へ電流を供給させる。ヒータ41へ供給される電流の大きさは、予め記憶部27に記憶されている電流の大きさである。
【0063】
ヒータ41を用いて圧縮気体が加熱されることによって、熱風が生成される。これによって、ノズル43の吹き出し口49から熱風が吹き出される。ノズル43から第1部分91および第2部分92に熱風が吹き付けられることによって、第1部分91および第2部分92の各々は加熱される。
【0064】
図10に示されるように、加熱ユニット40が第1加熱位置に位置している場合におけるノズル43と第1部分91との間の距離は、第1距離L1とされる。第1距離L1は、先端部43aと第1部分91との間の最短距離である。図10において、2点鎖線で囲まれている領域Hは、加熱ユニット40が熱風を吹き付けられる領域を示している。第1加熱位置に位置している加熱ユニット40が被接合部材90を加熱する際において、領域Hは、第1部分91および第2部分92を含んでいる。別の観点から言えば、被接合部材90を加熱する工程(工程S60)において、加熱ユニット40は、第1部分91と第2部分92とを含む領域に熱風を吹き付ける。ノズル43の吹き出し口49の直径は、領域Hが第1部分91および第2部分92を含むように設定される。
【0065】
図9に示されるように、基準時点t0の前において、ノズル43の先端部43aの温度は、たとえば室温T0である。室温T0は、たとえば27℃である。以下、ノズル43の先端部43aの温度を、単にノズル43の温度とも称する。基準時点t0の前において、第1部分91の表面温度は室温T0である。基準時点t0の前において、第2部分92の表面温度は室温T0である。基準時点t0において、上下方向Zにおけるボンディングツール34の位置は、待機位置Z0とされる。
【0066】
図9に示されるように、ノズル43から第1部分91および第2部分92に熱風が吹き付けられることによって、ノズル43の先端部43a、第1部分91および第2部分92の各々の温度が室温T0から上昇する。
【0067】
温度計測部6(図3参照)は、ノズル43の温度を計測する。温度計測部6は、測定した温度に関する信号を第2制御部22に出力する。第2制御部22は、温度計測部6から出力された信号に基づいて、ノズル43の温度が予め決められた目標温度TTに到達したか否かを判定する(工程S70)。
【0068】
目標温度TTは、第1加熱位置において、ノズル43の温度が目標温度TTである状態で第1部分91および第2部分92の加熱を続けた場合に、第1部分91の表面温度が、第1部分91にワイヤ99を接合可能な温度(第1温度T1)となるように予め決定される。同様に、目標温度TTは、第1加熱位置において、ノズル43の温度が目標温度TTである状態で第1部分91および第2部分92の加熱を続けた場合に、第2部分92の表面温度が、第2部分92にワイヤ99を接合可能な温度(第2温度T2)となるように予め決定されてもよい。
【0069】
第2制御部22は、ノズル43の温度が目標温度TT未満であると判定した場合(工程S70においてNO)、工程S70の処理を繰り返す。第2制御部22は、ノズル43の温度が目標温度TT以上であると判定した場合(工程S70においてYES)、ノズル43の温度が目標温度TTに到達したと判定する。ノズル43の温度が目標温度TTに到達した時点は、第1時点t1とされる。
【0070】
被接合部材90を加熱する工程(S60)において、ヒータ41へ供給される電流の大きさおよび加熱ユニット40へ供給される圧縮気体の流量の各々は、ノズル43の温度が目標温度TTである場合に、ノズル43が実質的に熱平衡状態となるように設定される。このため、第1時点t1以降、ノズル43の温度は、実質的に目標温度TTに維持される。
【0071】
図9に示されるように、第1部分91の表面温度は、第1時点t1の後、第2時点t2において、第1温度T1に到達する。第1温度T1において、第1部分91は熱平衡状態となる。別の観点から言えば、第1時点t1以降、第1部分91の表面温度は、実質的に第1温度T1に維持される。
【0072】
第2時点t2において、第2部分92の表面温度は、第2温度T2に到達する。第2温度T2において、第2部分92は熱平衡状態となる。別の観点から言えば、第2時点t2以降、第2部分92の表面温度は、実質的に第2温度T2に維持される。
【0073】
第2制御部22は、第1時点t1から予め決められた第1遅延時間tdが経過したか否かを判定する(工程S80)。第1遅延時間tdは、第1時点t1から第2時点t2までの間の時間よりも長い。言い換えれば、第1遅延時間tdは、ノズル43の温度が目標温度TTに到達してから第1部分91が熱平衡状態となるまでの時間よりも長い。ノズル43の温度が目標温度TTに到達してから第1部分91が熱平衡状態となるまでの時間は、第1部分91を用いて実験等を行うことによって予め測定される。
【0074】
第2制御部22は、第1時点t1から経過した時間が第1遅延時間td未満であると判定した場合(工程S80においてNO)、工程S80の処理を繰り返す。第2制御部22は、第1時点t1から経過した時間が第1遅延時間td以上であると判定した場合(工程S80においてYES)、第1部分91にワイヤを接合する工程(S90)を実施する。以上によって、ノズルの温度が目標温度TTに到達した後、第1遅延時間tdが経過してから第1部分91にワイヤ99を接合する工程(S90)が実施される。
【0075】
図11に示されるように、第1部分91にワイヤを接合する工程(S90)は工程S91と、工程S92と、工程S93と、工程S94とを有している。第1部分91にワイヤを接合する工程(S90)において、まず、ボンディングツール34を降下させる(工程S91)。図12に示されるように、第2制御部22は、第1制御部21に信号を出力することによって、第1可動部71を第1方向101に沿って移動させる。これによって、ボンディングツール34は、第1方向101に沿って移動する。別の観点から言えば、ボンディングツール34およびワイヤ99が、第1部分91に近づけられる。
【0076】
第2制御部22は、ワイヤ99が第1部分91に接触したか否かを判定する(工程S92)。第2制御部22は、ワイヤ99が第1部分91に接触していないと判定した場合(工程S92においてNO)、ボンディングツール34を第1方向101に沿って移動させ続ける。第2制御部22は、ワイヤ99が第1部分91に接触したと判定した場合(工程S92においてYES)、第1制御部21に信号を出力することによって、第1可動部71を停止させる。第1可動部71が停止した時点は、第4時点t4とされる。図9に示されるように、第3時点t3から第4時点t4にかけて、ボンディングツール34は、上下方向Zにおいて、待機位置Z0から第1ツール位置Z1へ移動する。
【0077】
次に、ワイヤおよび第1部分91に荷重および超音波振動を印加する(工程S93)。具体的には、第4時点t4において、第2制御部22は、第1制御部21に信号を出力することによって、第1可動部71にワイヤ99を第1部分91へ押し付けさせる。これによって、ワイヤ99および第1部分91に荷重が印加される。荷重の方向は、第1方向101に沿う方向である。荷重の大きさは、予め決められた大きさである。
【0078】
第4時点t4において、第2制御部22は、超音波振動子16に信号を出力することによって、ボンディングツール34に超音波振動を印加する。これによって、ワイヤ99および第1部分91に超音波振動が印加される。超音波振動の振幅などの超音波振動の条件は、予め決められた条件である。
【0079】
第2制御部22は、第4時点t4から予め決められた第1印加時間taが経過したか否かを判定する(工程S94)。第2制御部22は、第4時点t4から経過した時間が第1印加時間ta未満であると判定した場合(工程S94においてNO)、工程S94の処理を繰り返す。
【0080】
第2制御部22は、第4時点t4から経過した時間が第1印加時間ta以上であると判定した場合(工程S94においてYES)、ワイヤ99および第1部分91への荷重および超音波振動の印加を停止する。具体的には、第2制御部22は、第1制御部21に信号を出力することによって、第1可動部71を用いたワイヤ99の第1部分91への押し付けを停止させる。第2制御部22は、超音波振動子16に信号を出力することによって、ワイヤ99および第1部分91への超音波振動の印加を停止させる。
【0081】
図9に示されるように、ワイヤ99および第1部分91への荷重および超音波振動の印加が停止された時点は、第5時点t5とされる。以上によって、第1部分91にワイヤ99が接合される。加熱ユニット40を第1加熱位置に移動させる工程(S50)後から第5時点t5までの間、ノズル43と第1部分91との間の距離は、第1距離L1に維持される。なお、図9において、基準時点t0から第5時点t5までの間におけるノズル43と接合位置との距離は、ノズル43と第1部分91との間の距離を示している。図9において、ノズル43と接合位置との距離が2点鎖線で表されている部分は、ノズル43と接合位置との距離が変動していることを表している。
【0082】
次に、ボンディングツール34を上昇させる(工程S100)。具体的には、第2制御部22は、第1制御部21に信号を出力することによって、第1可動部71を第2方向102に沿って移動させる。これによって、ボンディングツール34は、第2方向102に沿って、第1部分91から遠ざかる。図9に示されるように、上下方向Zにおいて、ボンディングツール34は、第1ツール位置Z1から第2ツール位置Z2へ移動する。上下方向Zにおいて、第2ツール位置Z2は、待機位置Z0と第1ツール位置Z1との間にある。
【0083】
次に、駆動部11を第2接合位置へ移動させる(工程S110)。第2制御部22は、第1制御部21へ信号を出力することによって、駆動部11を移動させる。これによって、駆動部11は、第1接合位置(X1、Y1)から第2接合位置(X2、Y2)へ移動する。ボンディングツール34は、第2部分92の上方に位置する。第2接合位置への駆動部11の移動が終了した時点は、第6時点t6とされる。なお、ボンディングツール34が上昇する工程(S100)が開始された後、ボンディングツール34の上昇が終了する前に、駆動部11が第2接合位置へ移動する工程(S110)が開始されてもよい。
【0084】
第6時点t6において、ノズル43と第2部分92との距離は、たとえば第1距離L1である。第5時点t5から第6時点t6にかけて、ノズル43と第2部分92との間の距離が第1距離L1となるように、加熱ユニット40が移動してもよい。図9において、第6時点t6から後述する第8時点t8までの間におけるノズル43と接合位置との距離は、ノズル43と第2部分92との間の距離を示している。
【0085】
次に、第2部分92にワイヤを接合する工程(S120)が実施される。図13に示されるように、第2部分92にワイヤを接合する工程(S120)は、工程S121と、工程S122と、工程S123と、工程S124とを有している。第2部分92にワイヤを接合する工程(S120)において、まず、ボンディングツール34を降下させる(工程S121)。
【0086】
図14に示されるように、第2制御部22は、第1制御部21に信号を出力することによって、第1可動部71を第1方向101に沿って移動させる。これによって、ボンディングツール34は、第1方向101に沿って移動する。別の観点から言えば、ボンディングツール34およびワイヤ99が、第2部分92に近づけられる。
【0087】
第2制御部22は、ワイヤ99が第2部分92に接触したか否かを判定する(工程S122)。第2制御部22は、ワイヤ99が第2部分92に接触していないと判定した場合(工程S122においてNO)、ボンディングツール34を第1方向101に沿って移動させ続ける。第2制御部22は、ワイヤ99が第2部分92に接触したと判定した場合(工程S122においてYES)、第1制御部21に信号を出力することによって、第1可動部71を停止させる。第1可動部71が停止した時点は、第7時点t7とされる。
【0088】
図9に示されるように、第6時点t6から第7時点t7にかけて、ボンディングツール34は、上下方向Zにおいて、第2ツール位置Z2から第3ツール位置Z3へ移動する。上下方向Zにおいて、第3ツール位置Z3は、第1ツール位置Z1と同じ位置であってもよい。
【0089】
次に、ワイヤ99および第2部分92に荷重および超音波振動が印加される(工程S123)。具体的には、第7時点t7において、第2制御部22は、第1制御部21に信号を出力することによって、第1可動部71にワイヤ99を第2部分92へ押し付けさせる。これによって、ワイヤ99および第2部分92に荷重が印加される。荷重の方向は、第1方向101に沿う方向である。荷重の大きさは、予め決められた大きさである。工程S123における荷重の大きさは、工程S93における荷重の大きさと異なっていてもよい。
【0090】
第7時点t7において、第2制御部22は、超音波振動子16に信号を出力することによって、ボンディングツール34に超音波振動を印加する。これによって、ワイヤ99および第1部分91に超音波振動が印加される。超音波振動の振幅などの超音波振動の条件は、予め決められた条件である。工程S123における超音波振動の条件は、工程S93における超音波振動の条件と異なっていてもよい。
【0091】
第2制御部22は、第7時点t7から予め決められた第2印加時間tbが経過したか否かを判定する(工程S124)。第2制御部22は、第7時点t7から経過した時間が第2印加時間tb未満であると判定した場合(工程S124においてNO)、工程S124の処理を繰り返す。
【0092】
第2制御部22は、第7時点t7から経過した時間が第2印加時間tb以上であると判定した場合(工程S124においてYES)、ワイヤ99および第2部分92への荷重および超音波振動の印加を停止する。具体的には、第2制御部22は、第1制御部21に信号を出力することによって、第1可動部71に、ワイヤ99の第2部分92への押し付けを停止させる。第2制御部22は、超音波振動子16に信号を出力することによって、ワイヤ99および第2部分92への超音波振動の印加を停止させる。
【0093】
以上によって、第1部分91に接合されたワイヤ99が第2部分92に接合される。別の観点から言えば、第1部分91と第2部分92とが電気的に接続される。ワイヤ99および第2部分92への荷重および超音波振動の印加が停止された時点は、第8時点t8とされる。図9に示されるように、第6時点t6から第8時点t8までの間、ノズル43と第2部分92との距離は、たとえば第1距離L1に維持される。基準時点t0から第8時点t8までの間、ヒータ41に供給される電流の大きさおよび加熱ユニット40に供給される圧縮気体の流量の各々は、実質的に一定に維持されていてもよい。図5に示されるように、工程S90、工程S100、工程S110および工程S120は、被接合部材90にワイヤ99を接合する工程(S1)を構成している。
【0094】
次に、被接合部材90の加熱を終了する(工程S130)。具体的には、第8時点t8において、第2制御部22は、電磁開閉弁51に信号を出力することによって、加熱ユニット40への圧縮気体の供給を停止する。第8時点t8において、第2制御部22は、第3制御部23に信号を出力することによって、ヒータ41への電流の供給を停止する。以上によって、第1部分91および第2部分92への熱風の吹き付けが停止される。これによって、ノズル43の温度、第1部分91の表面温度および第2部分92の表面温度の各々が低下する。
【0095】
次に、ボンディングツール34を待機位置まで上昇させる(工程S140)。具体的には、第2制御部22は、第1制御部21に信号を出力することによって、第1可動部71を第2方向102に沿って移動させる。これによって、ボンディングツール34は、第2方向102に沿って、第2部分92から遠ざかる。上下方向Zにおいて、ボンディングツール34は、第3ツール位置Z3から待機位置Z0へ移動する。第3ツール位置Z3から待機位置Z0への移動が完了した時点は、第9時点t9とされる。第9時点t9において、ノズルと接合位置との距離は、待機距離L0である。待機距離L0は、第1距離L1よりも長い。ボンディングツール34が上昇することによって、ワイヤ99は切断される。以上によって、第1部分91と第2部分92とがワイヤ99を用いて電気的に接続される。
【0096】
被接合部材90が、第1部分91および第2部分92の他にワイヤ99が接合される部分を有している場合、ボンディングツール34を待機位置まで上昇させる工程(S140)の後に、上述の工程S20から工程S140と同様の工程が実施されることによって、当該部分にワイヤ99が接合されてもよい。当該部分へのワイヤ99の接合は、上述のステージ70の平坦面79上にワーク97が配置される工程(S10)と被接合部材90の位置ずれ量を算出する工程(S20)との間に実施されてもよい。実施の形態1に係るワイヤボンディング方法を用いて、たとえばBGA(Ball Grid Array)およびQFP(Quad Flat Package)等の半導体装置が製造される。
【0097】
次に、実施の形態1に係るワイヤボンディング装置およびワイヤボンディング方法の作用効果について説明する。
【0098】
被接合部材90にワイヤ99を接合するワイヤボンディングにおいて、ワイヤ99が接合される被接合部材90に熱風を吹き付けることによって、被接合部材90を加熱することがある。また、ワイヤ99が接続される被接合部材90の部分の周囲にワーク97の部品が設けられていることがある。具体的には、たとえばワイヤ99が接続される被接合部材90の部分の周囲にワーク97の筐体95が設けられていることがある。ワイヤ99が接続される被接合部材90の部分の周囲に部品がある場合、当該部品と、被接合部材90に熱風を吹き付けるワイヤボンディング装置100の部分とが干渉することがある。
【0099】
実施の形態1に係るワイヤボンディング装置100は、ボンディングツール34と、加熱ユニット40と、加熱ユニット駆動部13とを有している。加熱ユニット40は、ワイヤ99が接合される被接合部材90の部分に熱風を吹き付ける。加熱ユニット駆動部13は、加熱ユニット40をボンディングツール34とは独立して移動させる。これによって、被接合部材90を局所的に加熱しつつ、ワイヤ99が接合される被接合部材90の部分の周囲にある部品と加熱ユニット40とが干渉することを抑制できる。
【0100】
実施の形態1に係るワイヤボンディング装置100は、第1制御部21と、温度計測部6とを有している。第1制御部21は、ツール駆動部12を制御する。第1制御部21は、温度計測部6の出力に基づいて、ツール駆動部12を制御可能である。温度計測部6は、加熱ユニット40の温度を計測する。このため、加熱ユニット40の温度を測定することによって、間接的に被接合部材90の温度を測定することができる。これによって、実質的に被接合部材90の温度に基づいて、ツール駆動部12を制御することができる。
【0101】
加熱ユニット40は、ケース42と、ノズル43とを有している。ケース42は、圧縮気体が流入する部分である。ノズル43は、ケース42に接続されている。ノズル43は熱風を吹き出す。温度計測部6は、ノズル43の温度を測定する。このため、温度計測部6がケース42の温度を測定する場合と比較して、加熱ユニット40から吹き出される熱風の温度をより正確に測定できる。これによって、間接的に被接合部材90の温度をより正確に測定できる。
【0102】
実施の形態1に係るワイヤボンディング方法によれば、被接合部材90は、第1部分91と、第2部分92とを有している。第2部分92は、第1部分91と電気的に接続される部分である。被接合部材90を加熱する工程(工程S60)において、加熱ユニット40は、第1部分91と第2部分92とを含む領域Hに熱風を吹き付ける。このため、第1部分91と第2部分92とを実質的に同時に加熱することができる。これによって、第1部分91と第2部分92とを別々に加熱する場合と比較して、被接合部材90を加熱する時間を短くすることができる。
【0103】
実施の形態1に係るワイヤボンディング方法によれば、被接合部材90を加熱する工程(S60)において、ノズル43の温度が目標温度TTに到達した後、被接合部材90にワイヤ99を接合する工程(S1)が実施される。このため、被接合部材90の表面温度が上昇した状態で、被接合部材90にワイヤ99を接合することができる。これによって、接合不良の発生を抑制できる。
【0104】
実施の形態1に係るワイヤボンディング方法によれば、被接合部材90を加熱する工程(S60)において、ノズル43の温度が目標温度TTに到達した後、第1遅延時間tdが経過してから、被接合部材90にワイヤ99を接合する工程(S1)が実施される。このため、被接合部材90の表面温度が十分に上昇した状態で、被接合部材90にワイヤ99を接合することができる。これによって、接合不良の発生をさらに抑制できる。
【0105】
実施の形態2.
次に、実施の形態2に係るワイヤボンディング方法の構成について説明する。実施の形態2に係るワイヤボンディング方法は、主に、駆動部11を第2接合位置へ移動した後に、加熱ユニット40を第2加熱位置へ移動させる工程を有している点において、実施の形態1に係るワイヤボンディング方法の構成と異なっており、その他の点については、実施の形態1に係るワイヤボンディング方法の構成と実質的に同一である。以下、実施の形態1に係るワイヤボンディング方法の構成と異なる点を中心に説明する。
【0106】
図15に示されるように、実施の形態2に係るワイヤボンディング方法によれば、駆動部11を第2接合位置へ移動させる工程(S110)の後に、加熱ユニット40を第2加熱位置へ移動させる(工程S150)。具体的には、第2制御部22は、加熱ユニット駆動部13へ信号を出力することによって、左右方向X、前後方向Yおよび上下方向Zの少なくとも1つの方向に沿って、加熱ユニット40を移動させる。これによって、加熱ユニット40は、第2加熱位置に移動する。第2加熱位置は、第2部分92にワイヤ99を接合する際における加熱ユニット40の位置である。第2加熱位置は、ノズル43とワーク97とが干渉しない位置である。第2加熱位置の座標は、記憶部27に予め記憶されている。
【0107】
図16に示されるように、加熱ユニット40が第2加熱位置に位置している場合におけるノズル43と第2部分92との間の距離は、第2距離L2とされる。第2距離L2は、ノズル43の先端部43aと第2部分92との間の最短距離である。第2距離L2は、たとえば第1距離L1(図10参照)よりも短い。別の観点から言えば、加熱ユニット40が第1加熱位置に位置している場合(図10参照)と比較して、ノズル43は、第2部分92に近づく。これによって、第1部分91の表面温度および第2部分92の表面温度の各々は上昇する。第2加熱位置に位置している加熱ユニット40が被接合部材90を加熱する際において、領域Hは、第1部分91および第2部分92を含んでいる。
【0108】
図17は、図9に対応している。図17に示されるように、加熱ユニット40が第2加熱位置に到達した時点は、第10時点t10とされる。図17において、第10時点t10から第8時点t8までの間におけるノズル43と接合位置との距離は、ノズル43と第2部分92との間の距離を示している。
【0109】
図17に示されるように、第10時点t10から第11時点t11にかけて、第2部分92の表面温度は、第2温度T2から第4温度T4まで上昇する。第11時点t11は、第2部分92の表面温度が第4温度T4に到達した時点である。第4温度T4において、第2部分92は熱平衡状態となる。別の観点から言えば、第2部分92の表面温度は、第11時点t11から第8時点t8までの間、実質的に第4温度T4に維持される。
【0110】
第10時点t10から第11時点t11にかけて、第1部分91の表面温度は、第1温度T1から第3温度T3まで上昇する。第3温度T3において、第1部分91は熱平衡状態となる。別の観点から言えば、第1部分91の表面温度は、第11時点t11から第8時点t8までの間、実質的に第3温度T3に維持される。
【0111】
次に、第2制御部22は、第10時点t10から予め決められた第2遅延時間teが経過したか否かを判定する(工程S160)。第2遅延時間teは、第10時点t10から第11時点t11までの間の時間よりも長い。言い換えれば、第2遅延時間teは、加熱ユニット40が第2加熱位置に移動した後から第2部分92が熱平衡状態となるまでの時間よりも長い。第10時点t10から第11時点t11までの間の時間は、第2部分92を用いて実験等を行うことによって予め測定される。
【0112】
第2制御部22は、第10時点t10から経過した時間が第2遅延時間te未満であると判定した場合(工程S160においてNO)、工程S160の処理を繰り返す。第2制御部22は、第10時点t10から経過した時間が第2遅延時間te以上であると判定した場合(工程S160においてYES)、第2部分92にワイヤを接合する工程(S120)を実施する。第2部分92にワイヤを接合する工程(S120)において、ノズル43と第2部分92との間の距離は、第2距離L2に維持される。
【0113】
以上のように、第1部分91にワイヤを接合する工程(S90)におけるノズル43と第1部分91との間の距離(第1距離L1)と、第2部分92にワイヤを接合する工程(S120)におけるノズル43と第2部分92との間の距離(第2距離L2)とが異なるように、加熱ユニット40を移動させる。これによって、第1部分91にワイヤを接合する工程(S90)における第1部分91の表面温度と、第2部分92にワイヤを接合する工程(S120)における第2部分92の表面温度とが調節される。図15に示されるように、被接合部材90にワイヤ99を接合する工程(S1)は、工程S150と、工程S160とを有している。
【0114】
次に、実施の形態2に係るワイヤボンディング装置100およびワイヤボンディング方法の作用効果について説明する。
【0115】
図18において、縦軸は、第1部分91の表面温度を示している。横軸は、ノズル43と第1部分91との間の距離を示している。P1からP4で示される点は、ノズル43の温度を一定に維持した状態で熱風を第1部分91に吹き出し、ノズル43と第1部分91との間の距離を変化させた場合の第1部分91の表面温度を示している。
【0116】
ノズル43と第1部分91との間の距離が長くなるにつれて、ノズル43から吹き出された熱風が第1部分91および第2部分92に到達する前に、熱風は拡散しやすくなる。一方で、ノズル43と第1部分91との間の距離が短くなるにつれて、ノズル43から吹き出された熱風は拡散しにくくなる。このため、効率よく第1部分91および第2部分92を加熱できる。従って、図18に示されるように、ノズル43の温度が一定である場合、ノズル43と第1部分91との間の距離が短くなるにつれて、第1部分91の表面温度は上昇する。ノズル43と第1部分91との間の距離がLbであるときの、第1部分91の表面温度はTaとされる。
【0117】
図19は、第2部分92の熱容量および材質が第1部分91の熱容量および材質と異なる場合における第2部分92の表面温度とノズル43と第2部分92との間の距離との関係を示している。図19において、縦軸は、第2部分92の表面温度を示している。横軸は、ノズル43と第2部分92との間の距離を示している。P5からP8で示される点は、ノズル43の温度を一定に維持した状態で熱風を第1部分91に吹き出し、ノズル43と第2部分92との間の距離を変化させた場合の第2部分92の表面温度を示している。P5からP8におけるノズル43の温度は、P1からP4(図18参照)におけるノズル43の温度と同じである。
【0118】
図19に示されるように、ノズル43の温度が一定である場合、ノズルと第2部分92との距離が短くなるにつれて、第2部分92の表面温度は上昇する。ノズル43と第2部分92との間の距離がLaであるとき、たとえば第2部分92の表面温度をTaとなる。別の観点から言えば、図18および図19に示されるように、ノズル43と第2部分92との間の距離がLaである場合における第2部分92の表面温度は、ノズル43と第1部分91との間の距離がLbある場合における第1部分91の表面温度と同じである。
【0119】
このように、第1部分91の熱容量および材質と第2部分92の熱容量および材質とが異なる場合であっても、ノズル43と第1部分91との間の距離およびノズル43と第2部分92との間の距離の各々を調節することによって、第1部分91の表面温度と第2部分92の表面温度とが同じ温度となるように調節することができる。
【0120】
実施の形態2に係るワイヤボンディング方法によれば、第1部分91にワイヤを接合する工程(S90)におけるノズル43と第1部分91との間の距離(第1距離L1)と、第2部分92にワイヤを接合する工程(S120)におけるノズル43と第2部分92との間の距離(第2距離L2)とが異なるように、加熱ユニット40を移動させる。これによって、第1部分91にワイヤを接合する工程(S90)における第1部分91の表面温度と、第2部分92にワイヤを接合する工程(S120)における第2部分92の表面温度とを調節する。このため、ノズル43の温度を変更することなく、第1部分91の表面温度および第2部分92の表面温度の各々を調節できる。結果として、ノズル43の温度を変更することによって第1部分91の表面温度および第2部分92の表面温度の各々を調節する場合と比較して、第1部分91の表面温度および第2部分92の表面温度の各々の調節に必要な時間を短くすることができる。
【0121】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0122】
1 ボンディング部、4 加熱部、5 制御弁部、6 温度計測部、11 駆動部、12 ツール駆動部、13 加熱ユニット駆動部、15 カメラ、16 超音波振動子、21 第1制御部、22 第2制御部、23 第3制御部、25 通信部、26 演算部、27 記憶部、28 変換部、31 ワイヤ供給部、32 支持部、33 リール部、34 ボンディングツール、40 加熱ユニット、41 ヒータ、42 ケース、43 ノズル、43a 先端部、44 接続部、45 本体部、49 吹き出し口、51 電磁開閉弁、52 流量調整弁、59 ガス流路、61 第1ベース部、62 第2ベース部、68 流入口、69 流出口、70 ステージ、71 第1可動部、72 第2可動部、79 平坦面、81 第1面、82 第2面、83 第3面、90 被接合部材、91 第1部分、92 第2部分、93 第1部材、94 第2部材、95 筐体、96 凹部、97 ワーク、98 ガス供給源、99 ワイヤ、100 ワイヤボンディング装置、101 第1方向、102 第2方向、H 領域、L0 待機距離、L1 第1距離、L2 第2距離、T0 室温、T1 第1温度、T2 第2温度、T3 第3温度、T4 第4温度、TT 目標温度、X 左右方向、Y 前後方向、Z 上下方向、Z0 待機位置、Z1 第1ツール位置、Z2 第2ツール位置、Z3 第3ツール位置、t0 基準時点、t1 第1時点、t2 第2時点、t3 第3時点、t4 第4時点、t5 第5時点、t6 第6時点、t7 第7時点、t8 第8時点、t9 第9時点、t10 第10時点、t11 第11時点、ta 第1印加時間、tb 第2印加時間、td 第1遅延時間、te 第2遅延時間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図17
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図19