(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178645
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】回転電機のステータの焼き嵌め構造
(51)【国際特許分類】
H02K 5/10 20060101AFI20241218BHJP
H02K 1/18 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
H02K5/10 Z
H02K1/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096942
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津田 利昭
【テーマコード(参考)】
5H601
5H605
【Fターム(参考)】
5H601AA08
5H601DD01
5H601GA02
5H601JJ04
5H601KK14
5H605CC01
5H605GG04
(57)【要約】
【課題】ケースの内側にステータを嵌合する焼き嵌めにより生じるステータの位置ずれを抑制する。
【解決手段】略円筒形状のステータ2の外周面2aが焼き嵌めによってケース3の内側へ嵌合される回転電機1のステータ2の焼き嵌め構造10であって、ケース3は、ステータ2の周囲に、低剛性部31と、低剛性部31より径方向の剛性が高い高剛性部32とを備え、低剛性部31における焼き嵌め代が高剛性部32における焼き嵌め代より大きくなるように、ケース3の内径及びステータ2の外径の少なくとも一方が調整されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円筒形状のステータの外周面が焼き嵌めによってケースの内側へ嵌合される回転電機のステータの焼き嵌め構造であって、
前記ケースは、前記ステータの周囲に、低剛性部と、前記低剛性部より径方向の剛性が高い高剛性部とを備え、
前記低剛性部における焼き嵌め代が前記高剛性部における焼き嵌め代より大きくなるように、前記ケースの内径及び前記ステータの外径の少なくとも一方が調整されていることを特徴とする回転電機のステータの焼き嵌め構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、略円筒形状のステータの外周面が焼き嵌めによってケースの内側へ嵌合される回転電機のステータの焼き嵌め構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、略円筒形状のステータの外周面が焼き嵌めによってハウジングの内側に嵌合される回転電機のステータの焼き嵌め構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気自動車やハイブリッド車などのパワーユニットにおいて、モータジェネレータの略円筒形状のステータの外周面を焼き嵌めによってケースの内側に嵌合する構造が採用されることがある。このようなステータの焼き嵌め構造では、焼き嵌め時にケースの径方向の剛性に応じて反発力が発生する。そのため、ケースの径方向の剛性が全周に渡って均一ではない場合、ケースから径方向内側へ向かう反発力が全周に渡って均一とはならないため、焼き嵌め後のステータに位置ずれが発生することがある。このようなステータの位置ずれが発生すると、ロータとステータの間のエアギャップが周方向に均一とならず、回転軸の芯ずれを引き起こす一因となることもある。
【0005】
このようなステータの位置ずれを回避するために、径方向の剛性が全周に渡って均一なケースを作成し、焼き嵌めを行った後に別体ケースに組み付ける方法が考えられる。しかし、このような方法では、部品点数が増えるためにコストが増加し、パワーユニットの組み立て作業の手間も増えることになる。
【0006】
そこで、本発明は、ケースの内側にステータを嵌合する焼き嵌めにより生じるステータの位置ずれを抑制できる回転電機のステータの焼き嵌め構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る回転電機のステータの焼き嵌め構造は、略円筒形状のステータの外周面が焼き嵌めによってケースの内側へ嵌合される回転電機のステータの焼き嵌め構造であって、前記ケースは、前記ステータの周囲に、低剛性部と、前記低剛性部より径方向の剛性が高い高剛性部とを備え、前記低剛性部における焼き嵌め代が前記高剛性部における焼き嵌め代より大きくなるように、前記ケースの内径及び前記ステータの外径の少なくとも一方が調整されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、ケースの内側にステータを嵌合する焼き嵌めにより生じるステータの位置ずれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態の回転電機のステータの焼き嵌め構造を軸方向に見た状態を示す図である。
【
図3】焼き嵌めを行う前の状態のケースを軸方向に見た状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、
図1~3を参照しながら、本開示の実施形態の回転電機のステータの焼き嵌め構造10について説明する。
図1は、ステータの焼き嵌め構造10を軸方向に見た状態を示す図である。
図2は、
図1におけるA-A線断面図である。
図1~2に示すように、ステータの焼き嵌め構造10は、焼き嵌めによって回転電機1のステータ2の外周面2aをケース3の内側へ嵌合している。
【0011】
ステータ2は、ロータ4と組み合わされて回転電機1を構成する。ステータ2及びロータ4は、いずれも略円筒形状を有する。円筒形状の回転軸5はロータ4に嵌合されており、回転軸5とロータ4は一体となって回転することができる。回転電機1は、電動機として用いられてもよいし、発電機として用いられてもよい。回転電機1は、例えば、電気自動車やハイブリッド車に搭載されて走行用動力源を生成する電動機として機能すると共に、回生トルク等で発電を行う発電機として機能する回転電機であってもよい。
【0012】
図1に示すように、ケース3は、ステータ2の周囲に、低剛性部31と、低剛性部31より径方向の厚さが大きい高剛性部32を備える。高剛性部32の径方向の厚さが低剛性部31の径方向の厚さより大きいため、高剛性部32の径方向の剛性は低剛性部31の径方向の剛性より高くなっている。低剛性部31はケース3の全周360度のうち約270度を占め、高剛性部32はケース3の全周360度のうち約90度を占める。
【0013】
図3は、焼き嵌めを行う前の状態のケース3を軸方向に見た状態を示す図である。
図3に示すように、焼き嵌めを行う前の状態のケース3では、ケース3の低剛性部31の内径r1より高剛性部32の内径r2の方が大きくなっている。そして、低剛性部31の内周面31aと高剛性部32の内周面32aの境界には、段差33が設けられている。このように焼き嵌めを行う前の状態のケース3では、低剛性部31の内径r1より高剛性部32の内径r2の方が大きくなっているため、ステータ2をケース3に嵌合する焼き嵌めを行う際の焼き嵌め代は、低剛性部31より高剛性部32の方が小さい。
【0014】
ステータ2をケース3に嵌合する焼き嵌めを行う際には、ケース3の径方向の剛性に応じて、ケース3から径方向内側へ向かって反発力が生じる。低剛性部31の径方向の剛性をk1、低剛性部31の焼き嵌め代をx1とすると、低剛性部31の焼き嵌めにより生じる反発力f1について、以下の式1の関係が成り立つ。
【0015】
f1=k1x1 ・・・式1
【0016】
そして、高剛性部32の径方向の剛性をk2、高剛性部32の焼き嵌め代をx2とすると、高剛性部32の焼き嵌めにより生じる反発力f2について、以下の式2の関係が成り立つ。
【0017】
f2=k2x2 ・・・式2
【0018】
低剛性部31の径方向の剛性k1と高剛性部32の径方向の剛性k2は、ケース3の形状からCAE(Computer-Aided Engineering)等により計算することができる。そして、低剛性部31の反発力f1と高剛性部32の反発力f2が等しくなるように低剛性部31の内径r1と高剛性部32の内径r2が調整されている。その結果、焼き嵌めの際にケース3から径方向内側へ向かって生じる反発力は全周に渡って均一となる。このように焼き嵌めの際にケース3から径方向内側へ向かって生じる反発力が全周に渡って均一となるため、ステータの焼き嵌め構造10は、焼き嵌めにより生じるステータ2の位置ずれを抑制することができる。
【0019】
<実施形態の補足>
本開示の回転電機のステータの焼き嵌め構造は、上述した形態に限定されず、本開示の要旨の範囲内において種々の形態にて実施できる。例えば、高剛性部の焼き嵌め代を低剛性部の焼き嵌め代より小さくする手段として、ケースの高剛性部の内径と低剛性部の内径を同一として、ステータの外径について、低剛性部に対向する部分の外径を高剛性部に対向する部分の外径より小さくする構造を採用してもよい。また、高剛性部の焼き嵌め代を低剛性部の焼き嵌め代より小さくする手段として、ケースの高剛性部の内径を低剛性部の内径より大きくすると共に、ステータの外径について、低剛性部に対向する部分の外径を高剛性部に対向する部分の外径より小さくする構造を採用してもよい。
【符号の説明】
【0020】
1 回転電機、2 ステータ、2a 外周面、3 ケース、4 ロータ、5 回転軸、10 ステータの焼き嵌め構造、31 低剛性部、31a 内周面、32 高剛性部、32a 内周面、33 段差。