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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178648
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】車両前部構造及びカナード
(51)【国際特許分類】
   B62D 35/00 20060101AFI20241218BHJP
   B62D 37/02 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
B62D35/00 B
B62D37/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096948
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504136889
【氏名又は名称】株式会社ファルテック
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】山本 健太朗
(72)【発明者】
【氏名】久保田 直志
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 優汰
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 裕也
(72)【発明者】
【氏名】黒田 智
(72)【発明者】
【氏名】杉本 圭
(57)【要約】
【課題】バンパーフェイシアにカナードを高い固定強度で取り付けることのできる車両前部構造を提供する。
【解決手段】車両前部構造は、車両前部に設けられるバンパーフェイシア1の側面に取り付けられるカナード2を備えている。カナード2は、上記側面に締結されるインナーコア3と、インナーコア3に締結されるアウターシェル4とを有している。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部に設けられるバンパーフェイシアと、
前記バンパーフェイシアの側面に取り付けられるカナードと、を備えており、
前記カナードが、前記側面に締結されるインナーコアと、前記インナーコアに締結されるアウターシェルとを有している、車両前部構造。
【請求項2】
前記インナーコアは、前記バンパーフェイシアの前記側面と前記アウターシェルの裏面とによって囲まれる空間内に配置されている、請求項1に記載の車両前部構造。
【請求項3】
前記アウターシェルは、車両側面視において上下方向寸法が後方に向かうほど大きい三角形状を有しており、
前記インナーコアは、前記バンパーフェイシアと締結される少なくとも1つの前側フェイシア締結部と、前記前側フェイシア締結部より後方において前記バンパーフェイシアと締結される少なくとも2つの後側フェイシア締結部とを有している、請求項2に記載の車両前部構造。
【請求項4】
前記インナーコアは、車両前後方向における前記前側フェイシア締結部と前記後側フェイシア締結部との間に、前記アウターシェルと締結されるシェル締結部を有している、請求項3に記載の車両前部構造。
【請求項5】
前記アウターシェルは、前記バンパーフェイシアと係合する係合フランジを有し、当該係合フランジは、前記バンパーフェイシアの前記側面に沿って延設され、前記アウターシェルの内方かつ下方に向けて延出している、請求項2~4の何れか一項に記載の車両前部構造。
【請求項6】
前記係合フランジは、前側係合フランジと、後側係合フランジとを含み、
前記インナーコアが、車両前後方向における前記前側係合フランジと前記後側係合フランジとの間に、前記アウターシェルと締結されるシェル締結部を有している、請求項5に記載の車両前部構造。
【請求項7】
前記バンパーフェイシアにおける前記空間を画成する部分には、前記バンパーフェイシアの前記側面と対向して当該側面との間に前記係合フランジを保持する保持面を備えた係合リブが形成されており、
前記保持面には、前記側面に向けて突出した突起が形成されている、請求項5に記載の車両前部構造。
【請求項8】
前記突起は、前記係合リブの前端部近傍に形成されている、請求項7に記載の車両前部構造。
【請求項9】
前記係合リブは、前側係合リブと、後側係合リブとを含み、
前記突起は、前記前側係合リブの前端部近傍に形成されていると共に、前記後側係合リブの前端部近傍に形成されている、請求項8に記載の車両前部構造。
【請求項10】
前記インナーコアが、前記アウターシェルと粘着テープによって結合されている、請求項1~4の何れか一項に記載の車両前部構造。
【請求項11】
車両前部に設けられるバンパーフェイシアの側面に取り付けられるカナードであって、
前記側面に締結されるインナーコアと、前記インナーコアに締結されるアウターシェルとを有している、カナード。
【請求項12】
前記インナーコアは、前記アウターシェルの内部に配置されて前記アウターシェルと締結される、請求項11に記載のカナード。
【請求項13】
前記カナードが前記バンパーフェイシアに取り付けられた取付状態での車両側面視において、
前記アウターシェルは、上下方向寸法が後方に向かうほど大きい三角形状を有しており、
前記インナーコアは、前記バンパーフェイシアと締結される少なくとも1つの前側フェイシア締結部と、前記前側フェイシア締結部より後方において前記バンパーフェイシアと締結される少なくとも2つの後側フェイシア締結部とを有している、請求項12に記載のカナード。
【請求項14】
前記インナーコアは、前記取付状態での車両前後方向における前記前側フェイシア締結部と前記後側フェイシア締結部との間に、前記アウターシェルと締結されるシェル締結部を有している、請求項13に記載のカナード。
【請求項15】
前記アウターシェルは、前記バンパーフェイシアと係合する係合フランジを有し、当該係合フランジは、前記カナードが前記バンパーフェイシアに取り付けられた取付状態において、前記バンパーフェイシアの前記側面に沿って延設され、前記アウターシェルの内方かつ下方に向けて延出している、請求項12~14の何れか一項に記載のカナード。
【請求項16】
前記係合フランジは、前側係合フランジと、後側係合フランジとを含み、
前記インナーコアが、前記取付状態での車両前後方向における前記前側係合フランジと前記後側係合フランジとの間に、前記アウターシェルと締結されるシェル締結部を有している、請求項15に記載のカナード。
【請求項17】
前記インナーコアが、前記アウターシェルと粘着テープによって結合される、請求項11~14の何れか一項に記載のカナード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前部構造及びカナードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両前部に設けられるバンパーフェイシアの側面に、空力的付加物として、カナードが取り付けられることがある。カナードを取り付けることにより、例えば、後方に渦流を発生させてフロントホイールハウス内の空気を引き出すことで揚力を低減させたり、ダウンフォースを発生させたりすることが可能になる。特許文献1は、カナードに関連する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-77334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、カナードのバンパーフェイシアへの固定強度が低いと、外力が加わった際にカナードの姿勢が崩れて、要求された空力性能を十分に発揮できなくなる恐れがある。
【0005】
本発明の目的は、カナードをバンパーフェイシアに高い固定強度で取り付けることのできる車両前部構造と、バンパーフェイシアに高い固定強度で取り付けることのできるカナードとを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様にかかる車両前部構造は、車両前部に設けられるバンパーフェイシアの側面に取り付けられるカナードを備えている。カナードは、上記側面に締結されるインナーコアと、インナーコアに締結されるアウターシェルとを有している。
【0007】
本発明の他の態様にかかるカナードは、車両前部に設けられるバンパーフェイシアの側面に取り付けられ、上記側面に締結されるインナーコアと、インナーコアに締結されるアウターシェルとを有している。
【発明の効果】
【0008】
上記車両前部構造によれば、バンパーフェイシアにカナードを高い固定強度で取り付けることができる。上記カナードによれば、バンパーフェイシアに高い固定強度で取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態にかかる車両前部構造の正面図である。
図2】上記車両前部構造の要部斜視図である。
図3】上記車両前部構造の要部正面図である。
図4図3中のIV-IV線断面図である。
図5】上記車両前部構造の分解斜視図(外側より見た図)である。
図6】上記車両前部構造の分解斜視図(内側より見た図)である。
図7】上記車両前部構造のカナードの内部側面図である。
図8】上記車両前部構造のバンパーフェイシアの内部側面図である。
図9】上記車両前部構造の要部側面図である。
図10図9中のX-X線断面図である。
図11図9中のXI-XI線断面図である。
図12】上記バンパーフェイシアの要部正面図である。
図13図12中のXIII部の拡大図である。
図14図12中のXIV部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照しつつ実施形態について説明する。実施形態にかかる車両前部構造は、図1及び図2に示すように、車両前部に設けられるバンパーフェイシア1と、カナード2とを備えている。バンパーフェイシア1は、例えば、バンパレインフォースメントの前方に配置され、ラジエータコアのアッパーサポート、ロアサポート等のクロスメンバや、フロントフェンダーパネルに固定される。
【0011】
カナード2は、バンパーフェイシア1の左右端部における側面に取り付けられている。左右のカナード2は左右対称の構造を有しているため、以下、左側のカナード2について説明し、右側のカナード2の説明を省略する。
【0012】
カナード2は、バンパーフェイシア1の下縁に一体的に又は別部品として設けられたチンスポイラーの側端部上方に位置している。カナード2の縁部は、バンパーフェイシア1の下縁から斜め後上方に滑らかに連続して延在し、車両前面視において略垂直に立ち上がる形状を有している。カナード2は、車両側面視において三角形状を有しており、その上下方向寸法は後方に向かうほど大きくなっている。カナード2の後端縁は、フロントホイールハウスの前端縁に一致している。図3及び図4に示すように、バンパーフェイシア1の車幅方向外側の側面とカナード2の車幅方向内側の側面との間には、車両前後方向に延びる谷部が形成されている。谷部の底面は、後方へ向かうに従って高くなるように傾斜している。
【0013】
カナード2は、図5図8に示すように、インナーコア3と、アウターシェル4とを有している。インナーコア3は、車両側面視において、上下方向寸法が後方に向かうほど大きい三角形状を有している。カナード2がバンパーフェイシア1の側面に取り付けられた取付状態では、インナーコア3は、バンパーフェイシア1の側面とアウターシェル4の裏面とによって囲まれる空間内に配置され、インナーコア3を外部から視認することはできない。即ち、カナード2の外観は、アウターシェル4のみから構成される。
【0014】
アウターシェル4は、車両側面視において、上下方向寸法が後方に向かうほど大きい三角形状を有している。アウターシェル4の三角形状は、アウターシェル4の内部に配置されるインナーコア3の三角形状より大きい。アウターシェル4の内部とは、カナード2をバンパーフェイシア1の側面に取り付けた際に、バンパーフェイシア1の側面とアウターシェル4の裏面とによって囲まれる空間である。
【0015】
アウターシェル4は、インナーコア3に締結され、インナーコア3は、バンパーフェイシア1の側面に締結されている。本実施形態では、インナーコア3とアウターシェル4とは、粘着テープ5によっても結合されている。バンパーフェイシア1、インナーコア3及びアウターシェル4は、いずれも射出成形によって形成された樹脂部品である。
【0016】
バンパーフェイシア1とインナーコア3との第1締結構造について説明する。図6に示すように、インナーコア3は、バンパーフェイシア1と締結される前側フェイシア締結部6と、前側フェイシア締結部6より後方においてバンパーフェイシア1と締結される2つの後側フェイシア締結部7とを有している。フェイシア締結部6,7は、インナーコア3の三角形状の3つの頂点近傍にそれぞれ配設されている。
【0017】
フェイシア締結部6,7は、タッピングネジがねじ込まれる円柱状のボス(図10参照)として形成されている。各ボスは、インナーコア3の内面に突設されている。各ボスには十字状に三角リブが形成されており、強度が確保されている。各ボスの端面は、バンパーフェイシア1の側面、即ち、コア取付面8と当接している。
【0018】
インナーコア3の内面には、ガイド突起9も突設されている。ガイド突起9は、カナード2のバンパーフェイシア1への取り付けの際に用いられる。ガイド突起9は、2つの後側フェイシア締結部7の間で、2つの後側フェイシア締結部7より前方に位置している。ガイド突起9は、十字リブから構成されており、その長さは、フェイシア締結部6,7の3つのボスの端面によって張られる平面を貫通する長さに設定されている。インナーコア3の周縁部には、インナーコア3自体の剛性を向上させるための補強フランジが、当該周縁部から内方に向けて立設されている。
【0019】
バンパーフェイシア1の側面には、インナーコア3が取り付けられるコア取付面8が形成されている。コア取付面8は、車両側面視において上下方向寸法が後方に向かうほど大きい三角形状を有している。コア取付面8の後方には、コア取付面8よりも車両外方に張り出した張り出し部が形成されている。張り出し部は、ホイールハウスに接続されている。コア取付面8には、フェイシア締結部6,7の各ボスの位置に合わせて、3つのネジ孔11が形成されている。また、コア取付面8には、ガイド突起9の位置に合わせて前後に長いガイド孔12が形成されている。
【0020】
インナーコア3とアウターシェル4との第2締結構造について説明する。図5及び図6に示すように、インナーコア3は、車両前後方向における前側フェイシア締結部6と後側フェイシア締結部7との間に、アウターシェル4と締結されるシェル締結部13を有している。本実施形態では、シェル締結部13は、三角形状のインナーコア3の上辺に配置され、タッピングネジがねじ込まれるボス(図11参照)として形成されている。シェル締結部13の外面側には、当該ボスを補強する複数の補強リブが形成されている(図5参照)。
【0021】
図6及び図7に示すように、アウターシェル4は、インナーコア3のシェル締結部13にタップネジにより締結される締結片14を有している。締結片14は、シェル締結部13の位置に合わせて、三角形状のアウターシェル4の上辺のほぼ中央から樹脂ヒンジを介して延出されている。締結片14には、シェル締結部13のボスの位置に合わせてネジ挿通孔が形成されている。
【0022】
アウターシェル4とバンパーフェイシア1との係合構造について説明する。図6及び図7に示すように、アウターシェル4は、係合構造のアウターシェル4側の構成要素として、バンパーフェイシア1と係合する係合フランジ15を有している。係合フランジ15は、三角形状のアウターシェル4の上辺に沿って形成されており、上辺から下方に向けて延出されている。即ち、係合フランジ15は、バンパーフェイシア1の側面に沿って延設され、アウターシェル4の内方かつ下方に向けて延出している。
【0023】
図5及び図12に示すように、バンパーフェイシア1における上記空間を画成する部分には、係合構造のバンパーフェイシア1側の構成要素である係合リブ16が形成されている。具体的には、バンパーフェイシア1の側面における、コア取付面8の上辺に隣接する領域に、係合フランジ15と当接する当接面17が形成されている。当接面17は、コア取付面8よりも車幅方向内側に位置し、コア取付面8とほぼ平行に延在している。当接面17の下縁とコア取付面8の上辺とは、前下がりの傾斜面によって接続されている。係合リブ16は、当該傾斜面に立設され、当接面17に略平行に延設されている。係合フランジ15は、係合リブ16と当接面17とによって挟まれて、係合リブ16と係合する。
【0024】
本実施形態では、係合フランジ15は、前側係合フランジ15Fと、後側係合フランジ15Rとを有する。各係合フランジ15F,15Rは、バンパーフェイシア1の側面に沿って延設され、アウターシェル4の内方かつ下方に向けて延出している。一方、係合リブ16も、前側係合リブ16Fと、後側係合リブ16Rとを有する。即ち、前側係合フランジ15Fに対応して前側係合リブ16Fが形成され、後側係合フランジ15Rに対応して後側係合リブ16Rが形成されている。インナーコア3のシェル締結部13は、車両前後方向における、係合フランジ15F,15Rの間に配置されている。
【0025】
各係合リブ16F,16Rは、図12に示すように、バンパーフェイシア1の側面と対向して当該側面との間に係合フランジ15を保持する保持面18を備えている。保持面18は、カナード2がバンパーフェイシア1に取り付けられていない状態で、当接面17と車幅方向に対向する。保持面18と当接面17との間には、上記傾斜面に沿って前後に延びる係合溝が形成されている。保持面18には、バンパーフェイシア1の側面、即ち当接面17に向けて突出した突起19が形成されている。突起19は、図13に示すように前側係合リブ16Fの前端部近傍に形成されていると共に、図14に示すように後側係合リブ16Rの前端部近傍に形成されている。
【0026】
車両走行時は、走行風によって、バンパーフェイシア1からカナード2を離そうとする力がカナード2に作用する。具体的には、バンパーフェイシア1とカナード2との間に形成された上記谷部の圧力(気圧)が高まり、この圧力が、主にカナード2の車幅方向内側の側面に作用することで、カナード2をバンパーフェイシア1から車幅方向外方へ引き剥がす力が発生する。この力は、アウターシェル4をインナーコア3から離そうとし、また、アウターシェル4を介してインナーコア3をバンパーフェイシア1から離そうとする。カナード2は、第1締結構造及び第2締結構造に加え、アウターシェル4とバンパーフェイシア1との係合構造を備えることによって、上記力に対して高い強度を発揮することができる。
【0027】
カナード2のバンパーフェイシア1への取付方法について説明する。
【0028】
まず、インナーコア3とアウターシェル4とを締結する。具体的には、アウターシェル4の締結片14をインナーコア3のシェル締結部13のボスにタッピングビスで締結する。また、粘着テープ5によってインナーコア3をアウターシェル4に結合する。これにより、インナーコア3とアウターシェル4とが一体となったカナード2が完成する。
【0029】
次に、カナード2をバンパーフェイシア1に取り付ける。具体的には、ガイド突起9の先端をガイド孔12の前部に挿入しつつ、フェイシア締結部6,7の各ボスの端面をコア取付面8に当接させる。これにより、係合フランジ15が係合リブ16の前方に、係合リブ16と略平行になるように配置される。
【0030】
次に、カナード2をバンパーフェイシア1に対して後方にスライドさせ、係合フランジ15と係合リブ16とを係合させる。具体的には、前側係合フランジ15Fを、当接面17と前側係合リブ16Fの保持面18との間の係合溝に押し込みつつ、後側係合フランジ15Rを、当接面17と後側係合リブ16Rの保持面18との間の係合溝に押し込む。このとき、ガイド突起9の先端は、ガイド孔12内をガイド孔12の後部に向かって移動する。
【0031】
上記スライドにより、カナード2が所定の取付位置に到達すると、インナーコア3のフェイシア締結部6,7の位置が、バンパーフェイシア1のコア取付面8に形成されたネジ孔11の位置と一致する。ここで、コア取付面8の裏側からネジ孔11にタッピングネジを挿入し、フェイシア締結部6,7のボスに、タッピングネジを締結する(図8参照)。これにより、バンパーフェイシア1にインナーコア3、即ちカナード2が締結されると共に、係合フランジ15と係合リブ16とが係合する。また、コア取付面8の後方に形成された張り出し部とアウターシェル4の後部裏面との間に粘着テープ10(図7参照)を配設して、両者を結合する。
【0032】
上記実施形態にかかる車両前部構造の作用効果について説明する。
【0033】
(1)実施形態にかかる車両前部構造は、車両前部に設けられるバンパーフェイシア1と、バンパーフェイシア1の側面に取り付けられるカナード2と、を備えている。カナード2は、バンパーフェイシア1の側面に締結されるインナーコア3と、インナーコア3に締結されるアウターシェル4とを有している。即ち、実施形態にかかる車両前部構造によれば、バンパーフェイシア1に締結されたインナーコア3に、アウターシェル4が締結されている。このため、例えばアウターシェル4をインナーコア3に粘着テープ5のみによって結合した場合と比較して、アウターシェル4を、ひいてはカナード2を高い固定強度でバンパーフェイシア1に取り付けることができる。
【0034】
(2)例えば、カナードの外表面を構成する樹脂部品に対して、ボス等、カナードをバンパーフェイシアに締結するための厚肉構造を形成した場合には、外部から視認できる範囲にヒケが生じて、カナードの外観品質が低下する恐れがある。実施形態にかかる車両前部構造では、バンパーフェイシア1に締結されるインナーコア3が、バンパーフェイシア1の側面とアウターシェル4の裏面とによって囲まれる空間内に配置されている。即ち、カナード2がバンパーフェイシア1の側面に取り付けられた取付状態において、インナーコア3は、アウターシェル4に覆われて、外部から視認されることがない。このため、仮にヒケ等がインナーコア3に生じていても、カナード2の外観品質に影響することがない。実施形態にかかる車両前部構造によれば、カナード2の外観品質を低下させることなく、インナーコア3を肉厚構造にして、カナード2の固定強度を向上させることができる。
【0035】
(3)実施形態にかかる車両前部構造では、アウターシェル4は、車両側面視において、上下方向寸法が後方に向かうほど大きい三角形状を有している。インナーコア3は、バンパーフェイシア1と締結される1つの前側フェイシア締結部6と、前側フェイシア締結部6より後方においてバンパーフェイシア1と締結される2つの後側フェイシア締結部7とを有している。実施形態にかかる車両前部構造によれば、フェイシア締結部6,7がアウターシェル4の三角形状の各頂点により近い位置に配置されるため、少ない個数のフェイシア締結部6,7で、カナード2のバンパーフェイシア1への取付剛性を高めることができる。なお、フェイシア締結部6,7は、上記3つの頂点に近づけて配置できればよく、各々の個数は図示したものに限定されない。例えば、前側フェイシア締結部6の個数は、2つ以上であってもよく、後側フェイシア締結部7の個数は、3つ以上であってもよい。個数を減らしつつ上記3つの頂点に近づけて配置するために、後側フェイシア締結部7の個数は、前側フェイシア締結部6の個数より多いことが好ましい。
【0036】
(4)走行風により、カナード2には、カナード2をバンパーフェイシア1から離そうとする力が作用し、アウターシェル4には、アウターシェル4をインナーコア3から離そうとする力が作用する。特に後者の力は、車両前後方向における前側フェイシア締結部6と後側フェイシア締結部7との間の領域で強く作用する。実施形態にかかる車両前部構造によれば、インナーコア3が、当該領域に、即ち、車両前後方向における前側フェイシア締結部6と後側フェイシア締結部7との間に、アウターシェル4と締結されるシェル締結部13を有している。このため、アウターシェル4のインナーコア3への固定強度及び取付剛性を高めることができる。
【0037】
(5)実施形態にかかる車両前部構造では、アウターシェル4は、バンパーフェイシア1と係合する係合フランジ15を有している。係合フランジ15は、バンパーフェイシア1の側面に沿って延設され、アウターシェル4の内方かつ下方に向けて延出している。このため、アウターシェル4のうち上記谷部を形成している部分、即ち、車両走行時にアウターシェル4をインナーコア3から離そうとする力が作用する部分に、係合フランジ15を設けることができる。実施形態にかかる車両前部構造によれば、係合フランジ15によって当該部分のアウターシェル4をバンパーフェイシア1に係合させることができるので、アウターシェル4のバンパーフェイシア1への固定強度及び取付剛性を向上させることができる。また、係合フランジ15は、バンパーフェイシア1の側面に沿って延設されているため、バンパーフェイシア1とアウターシェル4との境界の隙間の拡大を抑制して、カナード2の外観品質を向上させることができる。さらに、アウターシェル4とバンパーフェイシア1とをボルト等を用いて固定した場合と比較して、部品数や組付け時の工数を削減することができる。
【0038】
(6)係合フランジ15は、前側係合フランジ15Fと、後側係合フランジ15Rとを含む。係合フランジ15を前側係合フランジ15Fと後側係合フランジ15Rとに前後に分けて配置することで、係合フランジ15の全長を短くしつつ、アウターシェル4のバンパーフェイシア1への取付剛性を効率的に向上させることができる。また、インナーコア3は、車両前後方向における係合フランジ15F,15Rの間に、アウターシェル4と締結されるシェル締結部13を有している。このため、車両走行時、アウターシェル4に作用する、アウターシェル4をインナーコア3から離そうとする力に対して、十分な強度を得ることができる。また、シェル締結部13による締結により、インナーコア3に対するアウターシェル4の移動、即ち、バンパーフェイシア1に対するアウターシェル4の移動が拘束される。これにより、係合フランジ15F,15Rのバンパーフェイシア1との係合がより確実に保持される。
【0039】
(7)バンパーフェイシア1における上記空間を画成する部分には、係合リブ16が形成されている。係合リブ16は、バンパーフェイシア1の側面と対向して当該側面との間に係合フランジ15を保持する保持面18を備えている。このため、係合フランジ15は、バンパーフェイシア1の側面(当接面17)と、係合リブ16の保持面18とに挟まれて、バンパーフェイシア1と係合する。また、保持面18には、バンパーフェイシア1の側面、即ち当接面17に向けて突出した突起19が形成されている。このため、突起19によって、係合フランジ15をバンパーフェイシア1の側面(当接面17)に押し付けることができる。これにより、バンパーフェイシア1とアウターシェル4との境界の隙間を小さくして、カナード2の外観品質を向上させることができる。
【0040】
(8)突起19は、係合リブ16の前端部近傍に形成されている。突起19を保持面18の全体に形成した場合と比較して、カナード2のバンパーフェイシア1の側面への取り付けが容易になり、カナード2の取付作業性が向上する。また、突起19を係合リブ16の前端部近傍に設けることで、バンパーフェイシア1とアウターシェル4との境界の隙間への走行風の流入を効果的に抑制することができる。これにより、走行風が隙間に入り込むことによって生じる、アウターシェル4をバンパーフェイシア1の側面から離そうとする力を抑制することができる。
【0041】
(9)係合リブ16は、前側係合リブ16Fと、後側係合リブ16Rとを含む。係合リブ16を前側係合リブ16Fと後側係合リブ16Rとに前後に分けて配置することで、係合リブ16の全長を短くしつつ、アウターシェル4のバンパーフェイシア1への取付剛性を効率的に向上させることができる。また、突起19は、前側係合リブ16Fの前端部近傍に形成されていると共に、後側係合リブ16Rの前端部近傍に形成されている。これにより、バンパーフェイシア1とアウターシェル4との境界の隙間への走行風の流入をより効果的に抑制することができる。さらに、各係合リブ16F,16Rの前端部は、後端部よりフェイシア締結部6,7から離れた位置にあるため、フェイシア締結部6,7の締結によって生じる、アウターシェル4をバンパーフェイシア1の側面に押し付ける力が相対的に低くなる傾向にある。突起19を各係合リブ16F,16Rの前端部近傍に設けることで、当該押し付け力の低下を補償することができる。
【0042】
(10)実施形態にかかる車両前部構造では、インナーコア3が、アウターシェル4と粘着テープ5によって結合されている。粘着テープ5により結合することで、重量増加を抑制しつつ、簡易な方法で、カナード2の固定強度を一層向上させることができる。また、アウターシェル4の裏面にボス等を形成する必要がないため、アウターシェル4の外観品質、即ち、カナード2の外観品質を高く維持することができる。
【0043】
上記実施形態にかかるカナード2の作用効果について説明する。
【0044】
(11)カナード2は、車両前部に設けられるバンパーフェイシア1の側面に取り付けられるものであり、上記側面に締結されるインナーコア3と、インナーコア3に締結されるアウターシェル4とを有している。カナード2によれば、バンパーフェイシア1に締結されるインナーコア3に、アウターシェル4が締結されることになるため、上記(1)と同様の効果を得ることができる。
【0045】
(12)カナード2では、インナーコア3が、アウターシェル4の内部に配置されてアウターシェル4と締結される。即ち、カナード2がバンパーフェイシア1の側面に取り付けられた取付状態において、インナーコア3は、アウターシェル4に覆われて、外部から視認されることがない。このため、カナード2によれば、上記(2)と同様の効果を得ることができる。
【0046】
(13)カナード2がバンパーフェイシア1に取り付けられた取付状態での車両側面視において、アウターシェル4は、上下方向寸法が後方に向かうほど大きい三角形状を有している。また、上記取付状態での車両側面視において、インナーコア3は、バンパーフェイシア1と締結される1つの前側フェイシア締結部6と、前側フェイシア締結部6より後方においてバンパーフェイシア1と締結される2つの後側フェイシア締結部7とを有している。このため、カナード2によれば、上記(3)と同様の効果を得ることができる。
【0047】
(14)カナード2では、インナーコア3が、上記取付状態での車両前後方向における前側フェイシア締結部6と後側フェイシア締結部7との間に、アウターシェル4と締結されるシェル締結部13を有している。このため、カナード2によれば、上記(4)と同様の効果を得ることができる。
【0048】
(15)カナード2では、アウターシェル4が、バンパーフェイシア1と係合する係合フランジ15を有している。係合フランジ15は、上記取付状態において、バンパーフェイシア1の側面に沿って延設され、アウターシェル4の内方かつ下方に向けて延出している。このため、カナード2によれば、上記(5)と同様の効果を得ることができる。
【0049】
(16)カナード2では、係合フランジ15が、前側係合フランジ15Fと、後側係合フランジ15Rとを含む。インナーコア3は、上記取付状態での車両前後方向における係合フランジ15F,15Rの間に、アウターシェル4と締結されるシェル締結部13を有している。このため、カナード2によれば、上記(6)と同様の効果を得ることができる。
【0050】
(17)カナード2では、インナーコア3が、アウターシェル4と粘着テープ5によって結合される。このため、カナード2によれば、上記(10)と同様の効果を得ることができる。
【0051】
上記実施形態は、発明の理解を容易にするために記載された単なる例示に過ぎない。発明の技術的範囲は、上記実施形態で開示した具体的な技術事項に限らず、そこから容易に導きうる様々な変形、変更、代替技術なども含むものである。
【符号の説明】
【0052】
1 バンパーフェイシア
2 カナード
3 インナーコア
4 アウターシェル
5 粘着テープ
6 前側フェイシア締結部
7 後側フェイシア締結部
13 シェル締結部
15 係合フランジ
15F 前側係合フランジ
15R 後側係合フランジ
16 係合リブ
16F 前側係合リブ
16R 後側係合リブ
18 保持面
19 突起
図1
図2
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