(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017865
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】表示装置、超音波画像診断システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/00 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
A61B8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120788
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000189486
【氏名又は名称】上田日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117226
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 俊一
(72)【発明者】
【氏名】芝田 宏靖
(72)【発明者】
【氏名】原 智子
(72)【発明者】
【氏名】横沢 麻里菜
(72)【発明者】
【氏名】西村 光弘
(72)【発明者】
【氏名】岸田 黎香
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601DD01
4C601DD09
4C601DD14
4C601EE11
4C601GD04
4C601JC02
4C601JC09
4C601JC16
4C601KK25
4C601KK28
4C601KK31
4C601LL26
(57)【要約】
【課題】手軽に且つ、高精度に組織等のサイズを計測するとともに、計測対象組織等の計測時における状況をユーザが確認可能な表示装置、超音波画像診断システム及びプログラムを提供する。
【解決手段】被検体を撮影して対応する超音波診断画像データを生成する超音波診断画像処理プローブ装置10から超音波診断画像データを取得して、被検体の体積等のパラメータを計測するとともに、当該計測結果と被検体の超音波診断画像を同期させつつ略リアルタイムに同時表示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に所定周波数帯の音波を送信するとともに当該音波の被検体におけるエコーを受信することにより前記被検体を撮影した複数の超音波診断画像フレームからなる超音波診断画像データを生成する超音波診断画像処理プローブ装置から前記超音波診断画像データを取得して表示する表示装置であって、
(1)前記音波により前記被検体を第1方向に走査した場合に、当該第1方向の走査に伴うエコーに基づき、前記超音波診断画像処理プローブ装置にて撮影される前記被検体の第1断面画像に対応する第1超音波診断画像データと、(2)前記音波により前記被検体を前記第1方向とは異なる第2方向に走査した場合に、当該第2方向の走査に伴うエコーに基づき、前記超音波診断画像処理プローブ装置にて撮影される前記被検体の第2断面画像に対応する第2超音波診断画像データと、を取得する取得手段と、
前記取得した第1及び第2超音波診断画像データの各々に所定の信号処理を施し、前記第1及び第2断面画像において前記被検体の写り込んだ画像領域を各々抽出する抽出手段と、
前記抽出した画像領域に基づき、当該被検体の長さ、面積、体積及び体重の少なくとも1つを含むパラメータの値を計測する計測手段と、
前記計測したパラメータの値とともに、(1)当該計測に用いた前記第1及び第2断面画像及び(2)これらから生成したトレース画像の少なくとも一方を表示手段に同時表示させる表示制御手段と、
を有することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記抽出手段が、
前記取得された第1及び第2超音波診断画像データに所定の信号処理を施し、前記第1及び第2断面画像の各々において前記被検体の写り込んだ画像領域を抽出し、
前記計測手段が、
前記第1及び第2断面画像の各々から抽出された前記画像領域に基づき、前記被検体の横方向、縦方向及び奥行き方向の各サイズを計測して、当該計測値に基づき、前記パラメータとして当該被検体の体積を計測する、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第1及び第2断面画像の撮影タイミングが異なる場合に、
前記計測手段が、
(1)前記被検体の横方向、縦方向及び奥行き方向のいずれか1の方向におけるサイズであって、前記第1及び第2断面の双方にて計測値が同一となるべき1の方向における被検体の特定方向サイズを、第1タイミングにて撮影された第1断面画像から第1計測値として計測する一方、(2)前記特定方向サイズを、第2タイミングにて撮影された前記第2断面画像から第2計測値として計測するとともに、前記第1及び第2計測値の比率に応じて、前記1の方向とは異なる方向における前記被検体のサイズを推定し、当該推定値に基づき、前記パラメータとして当該被検体の体積を計測する、請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記パラメータの計測対象となる被検体の種別を特定する特定手段と、
(A)前記特定された種別の被検体の写り込んだ画像領域を前記超音波診断画像データから抽出するための抽出条件情報と、(B)前記特定された種別の被検体の前記パラメータを前記抽出された画像領域に基づき計測するための計測条件情報と、を含む条件情報が、前記被検体の種別毎に予め記憶された条件情報記憶手段をさらに有し、
前記抽出手段が、
前記第1及び第2断面画像の各々に対応する超音波診断画像データに対して、前記特定された種別の被検体に対応する前記抽出条件情報に基づく信号処理を施し、第1及び第2断面画像の各々において当該特定された種別の被検体の写り込んだ画像領域を抽出し、
前記計測手段が、
前記第1及び第2断面画像から抽出された前記画像領域の各々と、前記特定された種別の被検体に対応する前記計測条件情報と、に基づき、当該被検体の横方向、縦方向及び奥行き方向の各サイズを計測して、当該計測値に基づき、前記パラメータとして当該被検体の体積を算出する、請求項2又は3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記表示制御手段が、
前記第1及び第2計測値の比率に応じて前記第1断面画像及び当該第1断面画像に対応するトレース画像の少なくとも一方を調整することにより前記第2タイミングに対応する補完第1断面画像を生成し、(1)当該補完第1断面画像と、(2a)前記第2タイミングにて撮影された前記第2断面画像及び(2b)当該第2断面画像に対応するトレース画像の少なくとも一方と、(3)前記被検体の体積計測値と、を同期させつつ略リアルタイムに同時表示させる、請求項3に記載の表示装置。
【請求項6】
前記パラメータの計測対象となる被検体の種別を特定する特定手段と、
(A)前記特定された種別の被検体の写り込んだ画像領域を前記超音波診断画像データから抽出するための抽出条件情報と、(B)前記特定された種別の被検体の前記パラメータを前記抽出された画像領域に基づき計測するための計測条件情報と、(C)前記補完第1断面画像を生成するための生成条件情報と、を含む条件情報が、前記被検体の種別毎に予め記憶された条件情報記憶手段をさらに有し、
前記抽出手段が、
前記第1及び第2断面画像の各々に対応する超音波診断画像データに対して、前記特定された種別の被検体に対応する前記抽出条件情報に基づく信号処理を施し、第1及び第2断面画像の各々において当該特定された種別の被検体の写り込んだ画像領域を抽出し、
前記計測手段が、
前記第1及び第2断面画像から抽出された前記画像領域の各々と、前記特定された種別の被検体に対応する前記計測条件情報と、に基づき、当該被検体の横方向、縦方向及び奥行き方向の各サイズを計測して、当該計測値に基づき前記パラメータとして前記被検体の体積を算出し、
前記表示制御手段が、
前記特定された種別の被検体に対応する前記生成条件情報に基づき、前記第1及び第2計測値の比率に応じて(1)前記第1断面画像及び(2)当該第1断面画像に対応するトレース画像の少なくとも一方を調整することにより前記補完第1断面画像を生成する、請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記被検体が被検者の膀胱である場合に、
前記取得手段が、
前記第1及び第2断面画像に対応する超音波診断画像データとして、(A)前記第1タイミングにて撮影された膀胱の横断面画像及び(B)前記第2タイミングにて撮影された膀胱の縦断面画像の各々に対応する前記超音波診断画像データを取得し、
前記計測手段が、
前記膀胱の横断面及び縦断面の各断面画像から抽出された画像領域に基づき、前記パラメータとして膀胱内の尿量を計測し、
前記表示制御手段が、
前記第1及び第2計測値の比率に応じて(a)前記第2タイミングにおける膀胱の横断面画像及び(b)当該横断面画像に対応するトレース画像の少なくとも一方を推定しつつ、当該推定結果に応じて前記補完第1断面画像を生成するとともに、(1)当該生成した補完第1断面画像と、(2A)前記第2タイミングにて撮影された前記縦断面画像及び(2B)当該縦断面画像に対応するトレース画像の少なくとも一方と、(3)前記尿量の計測値を同期させつつ略リアルタイムに同時表示する、請求項5又は6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記被検体が被検者子宮内の胎児である場合に、
前記取得手段が、
前記第1及び第2断面画像に対応する超音波診断画像データとして、(A)前記第1タイミングにて撮影された子宮内胎児の横断面画像及び(B)前記第2タイミングにて撮影された子宮内胎児の縦断面画像の各々に対応する前記超音波診断画像データを取得し、
前記計測手段が、
前記子宮内胎児の横断面及び縦断面の各断面画像から抽出された画像領域に基づき、(1)胎児の躯幹前後径、(2)躯幹横径、(3)脊椎長、(4)児頭大横径を計測しつつ、当該計測結果に基づき胎児の推定体重を前記パラメータとして計測し、
前記表示制御手段が、
前記第1及び第2計測値の比率に応じて(1)前記第2タイミングにおける子宮内胎児の横断面画像及び(2)当該横断面画像に対応するトレース画像の少なくとも一方を推定しつつ、当該推定結果に応じて前記補完第1断面画像を生成するとともに、(1)当該生成した補完第1断面画像と、(2A)前記第2タイミングにて撮影された前記縦断面画像及び(2B)当該縦断面画像に対応するトレース画像の少なくとも一方と、(3)前記推定体重の計測値を同期させつつ略リアルタイムに同時表示する、請求項5又は6に記載の表示装置。
【請求項9】
被検体に所定周波数帯の音波を送信するとともに当該音波の被検体におけるエコーを受信することにより前記被検体を撮影した複数の超音波診断画像フレームからなる超音波診断画像データを生成する超音波診断画像処理プローブ装置と、
前記超音波診断画像処理プローブ装置において生成された前記超音波診断画像データを有線又は無線により取得して、当該データに基づき被検体の超音波診断画像を表示する表示装置と、
を有する超音波画像診断システムであって、
前記表示装置が、
(1)前記音波により前記被検体を第1方向に走査した場合に、当該第1方向の走査に伴うエコーに基づき、前記超音波診断画像処理プローブ装置にて撮影される前記被検体の第1断面画像に対応する第1超音波診断画像データと、(2)前記音波により前記被検体を前記第1方向とは異なる第2方向に走査した場合に、当該第2方向の走査に伴うエコーに基づき、前記超音波診断画像処理プローブ装置にて撮影される前記被検体の第2断面画像に対応する第2超音波診断画像データと、を取得する取得手段と、
前記取得した第1及び第2超音波診断画像データの各々に所定の信号処理を施し、前記第1及び第2断面画像において前記被検体の写り込んだ画像領域を各々抽出する抽出手段と、
前記抽出した画像領域に基づき、当該被検体の長さ、面積、体積及び体重の少なくとも1つを含むパラメータの値を計測する計測手段と、
前記計測したパラメータの値とともに、(1)当該計測に用いた前記第1及び第2断面画像及び(2)これらから生成したトレース画像の少なくとも一方を表示手段に同時表示させる表示制御手段と、
を有することを特徴とする超音波画像診断システム。
【請求項10】
前記超音波診断画像処理プローブ装置が、
X軸及びY軸の各方向に沿って十字型に配列された複数の前記振動子によって構成される振動子アレイを有し、
前記取得手段が、
前記X軸及びY軸のいずれか一方の軸に沿って配列された振動子群を用いて生成された前記第1断面画像データと、(b)他方の軸に沿って配列された前記振動子群を用いて生成された前記第2断面画像データと、を取得する、請求項9に記載の超音波画像診断システム。
【請求項11】
被検体に所定周波数帯の音波を送信するとともに当該音波の被検体におけるエコーを受信することにより前記被検体を撮影した複数の超音波診断画像フレームからなる超音波診断画像データを生成する超音波診断画像処理プローブ装置から前記超音波診断画像データを取得して表示する表示装置として機能するコンピュータを、
(1)前記音波により前記被検体を第1方向に走査した場合に、当該第1方向の走査に伴うエコーに基づき、前記超音波診断画像処理プローブ装置にて撮影される前記被検体の第1断面画像に対応する第1超音波診断画像データと、(2)前記音波により前記被検体を前記第1方向とは異なる第2方向に走査した場合に、当該第2方向の走査に伴うエコーに基づき、前記超音波診断画像処理プローブ装置にて撮影される前記被検体の第2断面画像に対応する第2超音波診断画像データと、を取得する取得手段、
前記取得した第1及び第2超音波診断画像データの各々に所定の信号処理を施し、前記第1及び第2断面画像において前記被検体の写り込んだ画像領域を各々抽出する抽出手段、
前記抽出した画像領域に基づき、当該被検体の長さ、面積、体積及び体重の少なくとも1つを含むパラメータの値を計測する計測手段、
前記計測したパラメータの値とともに、(1)当該計測に用いた前記第1及び第2断面画像及び(2)これらから生成したトレース画像の少なくとも一方を表示手段に同時表示させる表示制御手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療等の分野において利用する超音波画像診断システムに関し、特に、超音波画像診断システムを構成するプローブ装置単体にて超音波診断画像データを生成する超音波診断画像処理プローブ装置から超音波診断画像データを取得して表示する表示装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療等の分野においては人体内の各種組織(例えば、臓器、骨、筋肉、脂肪、腫瘍等(以下「組織等」という。)を含む被検体の状態を観察、診断するため、超音波画像診断装置が広く用いられている。この種の超音波画像診断装置は、一般に超音波プローブ装置と本体装置を備えている。超音波プローブ装置は、被検体に対して所定周波数帯の音波(「超音波」ともいう。)を送信し、被検体で反射した音波(すなわち、エコー)を受信する。本体装置は、超音波プローブ装置にて受信されたエコーに基づき生成された受信信号に基づいて被検体を撮影した複数の超音波診断画像フレーム(例えばBモード画像等)からなる超音波診断画像データを生成し、当該生成したデータに基づき超音波診断画像を表示する構成となっている。
【0003】
また、最近では、超音波診断画像データを生成するための機能を携帯型の超音波プローブ装置内に集約し、超音波プローブ装置単体で生成した超音波診断画像データを、スマートフォンやタブレット型情報通信端末装置、PC(パーソナルコンピュータ)等の一般的な画像表示装置(以下、「表示装置」ともいう。)に無線送信するとともに、表示装置にて表示させることにより、利用場所を限定されることなく低コストに超音波画像診断を実施可能とする超音波画像診断システムも実用化されている(例えば、非特許文献1)。このような超音波診断画像データ生成機能を内蔵した超音波プローブ装置(以下、一般的な超音波プローブ装置と区別するため、「超音波診断画像処理プローブ装置」という。)は、被検体から受信したエコーの受信結果に基づきプローブ装置単体にて超音波診断画像データを生成し、当該生成した超音波診断画像データを表示装置に無線送信する。一方、表示装置は、超音波診断画像処理プローブ装置から受信した超音波診断画像データに基づき超音波診断画像を表示する構成になっている。
【0004】
ここで、被検者(患者)の健康状態を適切に管理、把握するためには、各種臓器を含む組織等のサイズを計測し、或いは、膀胱内の残尿量を計測することが重要となる。このため、従来から超音波画像診断装置又はシステムにより各種組織等(すなわち、被検体となる観察対象組織等)の長さや面積、体積(若しくは容積。以下、「体積」という。)等のパラメータ値を計測することが広く行われている。実際に従来の超音波画像診断装置等により各種組織等のパラメータを計測しようとする場合、超音波診断画像処理プローブ装置等にて撮影された超音波診断画像を手作業にて解析し、計測対象となる組織等のパラメータ値を計測する必要があり、計測作業が煩雑となる。
【0005】
また、在宅医療や介護の現場においては、例えば被検者膀胱内の尿量(すなわち、膀胱内体積)を計測し、管理することが重要となる。従来の超音波画像診断システム等により被検者膀胱内の尿量を計測しようとすると、膀胱の横断面及び縦断面の超音波診断画像を超音波画像診断装置等で各々撮影しつつ、膀胱の左右方向、上下方向及び前後方向(すなわち、奥行き方向)の各内径を手作業にて計測して、当該計測結果に基づき、膀胱内の体積を算出する必要があり、計測作業が非常に煩雑となる。この種の煩雑さを解消する1の方法としては、特許文献1に記載のシステムのように三次元分散走査線によって超音波を対象組織等(例えば、膀胱)に円錐形で放射して当該対象臓器を三次元で走査しつつ、当該対象組織等の体積を自動計測する方法が考えられる。
【0006】
しかしながら、この特許文献1のシステムは、臓器体積を迅速且つ高精度に計測できるものの装置が複雑化して重くなるので利用場所を選ぶとともに、高価となるため、在宅医療や介護等の現場において手軽に被検者膀胱内の尿量(すなわち、膀胱内体積)を計測するような場面で利用することが難しい。このため、近年では超音波を用いつつ簡易な装置構成で被検者膀胱内の尿量を手軽に計測可能な尿量計測装置も提案されている(特許文献2)。この尿量計測装置は、4つの超音波プローブチャネルのみで被検者の膀胱内の尿量を簡易に計測可能な構成を有している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】日本経済新聞電子版、「テルモ、ワイヤレスの超音波診断装置 点滴など支援」、2020年12月8日、<URL:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ079PC0X01C20A2000000/>
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4430532号
【特許文献2】WO2020/100942
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載の装置は、被検者膀胱内の尿量を容易に計測可能である一方、実際に計測のために利用した超音波診断画像(例えば、サイズの計測に用いた横断面画像や縦断面画像等)を表示する機能を有しておらず、計測時の音波照射位置の調整が難しくなる。また、実際の医療等の現場においては、パラメータの計測結果とともに、当該計測で利用した超音波診断画像を表示し、当該計測タイミングにおける被検体の状態をユーザ(例えば、医師、看護師、介護士等の操作者)が、確認可能とすることが望まれるが、上記機能を有しない特許文献1及び2の装置では、このような利用形態を実現することが難しい。
【0010】
本発明は、以上説明した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、手軽に且つ、高精度に組織等のパラメータを計測するとともに、計測対象組織等の計測時における状況をユーザが確認可能な表示装置、超音波画像診断システム及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上述した課題を解決するため、本発明の表示装置は、被検体に所定周波数帯の音波を送信するとともに当該音波の被検体におけるエコーを受信することにより前記被検体を撮影した複数の超音波診断画像フレームからなる超音波診断画像データを生成する超音波診断画像処理プローブ装置から前記超音波診断画像データを取得して表示する表示装置であって、(1)前記音波により前記被検体を第1方向に走査した場合に、当該第1方向の走査に伴うエコーに基づき、前記超音波診断画像処理プローブ装置にて撮影される前記被検体の第1断面画像に対応する第1超音波診断画像データと、(2)前記音波により前記被検体を前記第1方向とは異なる第2方向に走査した場合に、当該第2方向の走査に伴うエコーに基づき、前記超音波診断画像処理プローブ装置にて撮影される前記被検体の第2断面画像に対応する第2超音波診断画像データと、を取得する取得手段と、前記取得した第1及び第2超音波診断画像データの各々に所定の信号処理を施し、前記第1及び第2断面画像において前記被検体の写り込んだ画像領域を各々抽出する抽出手段と、前記抽出した画像領域に基づき、当該被検体の長さ、面積、体積及び体重の少なくとも1つを含むパラメータの値を計測する計測手段と、前記計測したパラメータの値とともに、(1)当該計測に用いた前記第1及び第2断面画像及び(2)これらから生成したトレース画像の少なくとも一方を表示手段に同時表示させる表示制御手段と、を有している。
【0012】
この構成により、本発明の表示装置は、(A)パラメータの計測に用いた第1及び第2断面画像及びこれらから生成したトレース画像の少なくとも一方と、(B)当該画像に基づき計測されたパラメータの値と、を同時表示することができる。この結果、本発明によれば、計測時の音波照射位置の調整を容易化して高精度なサイズ計測を実現できるとともに、ユーザは、パラメータ計測において実際に利用した第1及び第2断面画像を計測結果と対比しながら確認できる。この結果、計測時における被検体の状態をユーザが適切に把握して、被検者の健康を適切に維持することができる。
【0013】
また、本発明の表示装置は、超音波診断画像処理プローブ装置側において生成された超音波診断画像データを取得しつつ、当該超音波診断画像データに基づき、第1及び第2断面画像及びこれらから生成したトレース画像の少なくとも一方を表示するともに、被検体の長さ、面積、体積及び体重の少なくとも1つを含むパラメータの値を計測して、同時表示する構成になっている。このため、表示装置自体は、タブレット型情報通信端末装置、スマートフォン、ラップトップPC等、携帯性の高い一般的な情報処理装置に専用のアプリケーションプログラムをインストールするだけで、簡単に実現できる。この結果、本発明によれば、利用場所を選ばず、手軽に被検体のパラメータを高精度に計測できるとともに、ユーザは、その計測に用いた第1及び第2断面画像を計測結果と対比しつつ確認できる。なお、第1及び第2断面画像は、被検体となる組織等に応じて利用する画像を変更する必要があり、例えば、被検者の膀胱や肝臓、膵臓、肝臓、胆嚢、脾臓、子宮、卵巣、腹部大動脈、各種組織等に発生した腫瘍の他、被検者子宮内の胎児を被検体とする場合には、当該被検体の横断面画像及び縦断面画像の組み合わせを利用する必要がある。また、表示装置において第1及び第2断面画像とパラメータの計測値を同時表示する際の表示形態は任意であり、例えば、表示装置のディスプレイの表示領域を3分割して、各表示領域に各々、第1及び第2断面画像と、計測結果を同時表示する構成としてもよい。さらに、本発明において計測に用いた各断面画像はBモード画像等の超音波診断画像をそのまま表示してもよく、各断面画像から生成したトレース画像を表示する構成としてもよい。また、計測値の表示形態は任意であり、文字及び画像の少なくとも一方を用いて、ユーザが計測結果を認識可能に表示すれば、どのような表示形態を用いてもよい。
【0014】
(2)また、上記構成において、前記抽出手段が、前記取得された第1及び第2超音波診断画像データに所定の信号処理を施し、前記第1及び第2断面画像の各々において前記被検体の写り込んだ画像領域を抽出し、前記計測手段が、前記第1及び第2断面画像の各々から抽出された前記画像領域に基づき、前記被検体の横方向、縦方向及び奥行き方向の各サイズを計測して、当該計測値に基づき、前記パラメータとして当該被検体の体積を計測する、構成としてもよい。なお、本明細書において横方向、縦方向、奥行き方向というときは、被検者体部の前面側(臍側)から見て、左右方向を横方向とし、上下方向を縦方向と定義する。また、臍側を前、背中側を後とし、奥行き方向というときは、前後方向を指すものと定義して説明を行う。
【0015】
この構成により、本発明の超音波診断画像処理プローブ装置は、被検体の第1及び第2断面画像から高精度に被検体の三次元的なサイズを計測しつつ、高精度に被検体の体積を算出して表示できるので、例えば、膀胱内の現在の尿量値を高精度に計測して、計測に用いた断面画像とともに表示することも可能となる。なお、(1)第1及び第2断面画像から被検体の写り込んだ画像領域を抽出するタイミング及び(2)抽出した画像領域に基づき被検体の各方向のサイズを計測するタイミングに関しては任意であり、第1方向の電子走査完了タイミングから第2方向の電子走査開始タイミングまでの間に一度、第1断面画像にて被検体の写り込んだ画像領域を抽出し、当該画像領域に基づき、第1断面画像に含まれる画像領域から計測可能な被検体のサイズを計測して、計測結果を記憶し、第2方向の電子走査に移行する構成としてもよく、第1及び第2方向の電子走査を行って、第1及び第2断面画像のデータを先に生成した後、各断面画像に対応するデータをバッファリングして、一度に第1及び第2断面画像から被検体の写り込んだ画像領域を抽出し、第1及び第2断面画像の各々に含まれる画像領域から被検体の各方向のサイズを一度に計測する構成としてもよい。
【0016】
(3)また、請求項2に記載の構成において、前記第1及び第2断面画像の撮影タイミングが異なる場合に、前記計測手段が、(1)前記被検体の横方向、縦方向及び奥行き方向のいずれか1の方向におけるサイズであって、前記第1及び第2断面の双方にて計測値が同一となるべき1の方向における被検体の特定方向サイズを、第1タイミングにて撮影された第1断面画像から第1計測値として計測する一方、(2)前記特定方向サイズを、第2タイミングにて撮影された前記第2断面画像から第2計測値として計測するとともに、前記第1及び第2計測値の比率に応じて、前記1の方向とは異なる方向における前記被検体のサイズを推定し、当該推定値に基づき、前記パラメータとして当該被検体の体積を計測する構成としてもよい。
【0017】
例えば、膀胱内の尿量を計測する場合、第1及び第2断面画像として膀胱の横断面画像及び縦断面画像を撮影して、横断面画像から膀胱の左右径及び上下径を計測するとともに縦断面画像から膀胱の前後径及び上下径を計測しつつ、当該計測結果に基づき膀胱内体積(すなわち、尿量)を計測する必要がある。このとき、第1タイミングにて撮影される横断面画像から計測される上下径と、第2タイミングにて撮影される縦断面画像から計測される上下径は、膀胱等の場合、等しくなる。従って、上下径を特定方向サイズとしつつ、上下径計測値の比率に応じて、第2タイミングにおける左右径を推定し、当該推定値を用いて尿量を計測することにより、高精度に尿量を計測できる。なお、この点に関しては、後に詳述する。
【0018】
(4)また、請求項2又は3に記載の構成において、前記パラメータの計測対象となる被検体の種別を特定する特定手段と、(A)前記特定された種別の被検体の写り込んだ画像領域を前記超音波診断画像データから抽出するための抽出条件情報と、(B)前記特定された種別の被検体の前記パラメータを前記抽出された画像領域に基づき計測するための計測条件情報と、を含む条件情報が、前記被検体の種別毎に予め記憶された条件情報記憶手段をさらに有し、前記抽出手段が、前記第1及び第2断面画像の各々に対応する超音波診断画像データに対して、前記特定された種別の被検体に対応する前記抽出条件情報に基づく信号処理を施し、第1及び第2断面画像の各々において当該特定された種別の被検体の写り込んだ画像領域を抽出し、前記計測手段が、前記第1及び第2断面画像から抽出された前記画像領域の各々と、前記特定された種別の被検体に対応する前記計測条件情報と、に基づき、当該被検体の横方向、縦方向及び奥行き方向の各サイズを計測して、当該計測値に基づき、前記パラメータとして当該被検体の体積を算出する構成としてもよい。
【0019】
この構成により、本発明の表示装置は、各種の組織等を被検体としつつパラメータを計測して、断面画像とともに同時表示する場合に、対象組織等の種別を特定しつつ、当該特定された種別の組織等に対応する条件情報を用いて、画像領域を抽出し、パラメータを高精度に計測し、表示することができる。なお、本発明において、被検体となる組織等の種別を特定する手法は、任意であり、例えば、パラメータの計測に先立ち、ユーザに被検体となる組織等の種別を選択させて、被検体となる組織等の種別を特定するようにしてもよく、超音波診断画像処理プローブ装置にて撮影された超音波診断画像データに基づき、被検体が何の組織であるのかを自動的に特定するようにしてもよい。後者の方法を採用する場合には、超音波診断画像データに写り込んだ組織等を自動識別するための機械学習モデルを表示装置に予め搭載しておき、超音波診断画像処理プローブ装置から取得した超音波診断画像データと機械学習モデルに基づき、被検体の種別を自動的に特定する構成を採用するか、或いは、図示せぬネットワーク上のサーバ装置に機械学習モデルを予め用意しておき、表示装置から当該サーバ装置に超音波診断画像データを送信して、サーバ装置にて被検体となる組織等の種別を特定させる構成を採用すればよい。
【0020】
(5)また、請求項3に記載の構成において、前記表示制御手段が、前記第1及び第2計測値の比率に応じて前記第1断面画像及び当該第1断面画像に対応するトレース画像の少なくとも一方を調整することにより前記第2タイミングに対応する補完第1断面画像を生成し、(1)当該補完第1断面画像と、(2)前記第2タイミングにて撮影された前記第2断面画像及び当該第2断面画像に対応するトレース画像の少なくとも一方と、(3)前記被検体の体積計測値と、を同期させつつ略リアルタイムに同時表示させる構成としてもよい。
【0021】
この構成により、本発明の表示装置は、第1及び第2断面画像の撮影タイミングが異なる場合であっても、第2断面画像の撮影タイミング(すなわち、第2タイミング)に対応する補完第1断面画像を生成して、第2タイミングにて撮影された第2断面画像と、補完第1断面画像と、体積(パラメータ)の計測値を同期させつつ略リアルタイムに同時表示できる。この結果、本発明によれば、第2断面画像の撮影中に第2断面画像が変化した場合であっても、当該変化に追随させつつ補完第1断面画像を生成して、計測結果とともに略リアルタイムに同時表示できるので、計測時における被検体の状態をユーザが的確に把握して、被検者の健康を適切に維持、管理することができる。
【0022】
(6)また、請求項5に記載の構成において、前記パラメータの計測対象となる被検体の種別を特定する特定手段と、(A)前記特定された種別の被検体の写り込んだ画像領域を前記超音波診断画像データから抽出するための抽出条件情報と、(B)前記特定された種別の被検体の前記パラメータを前記抽出された画像領域に基づき計測するための計測条件情報と、(C)前記補完第1断面画像を生成するための生成条件情報と、を含む条件情報が、前記被検体の種別毎に予め記憶された条件情報記憶手段をさらに有し、前記抽出手段が、前記第1及び第2断面画像の各々に対応する超音波診断画像データに対して、前記特定された種別の被検体に対応する前記抽出条件情報に基づく信号処理を施し、第1及び第2断面画像の各々において当該特定された種別の被検体の写り込んだ画像領域を抽出し、前記計測手段が、前記第1及び第2断面画像から抽出された前記画像領域の各々と、前記特定された種別の被検体に対応する前記計測条件情報と、に基づき、当該被検体の横方向、縦方向及び奥行き方向の各サイズを計測して、当該計測値に基づき前記パラメータとして前記被検体の体積を算出し、前記表示制御手段が、前記特定された種別の被検体に対応する前記生成条件情報に基づき、前記第1及び第2計測値の比率に応じて(1)前記第1断面画像及び(2)当該第1断面画像に対応するトレース画像の少なくとも一方を調整することにより前記補完第1断面画像を生成する構成としてもよい。
【0023】
この構成により、本発明の表示装置は、各種の組織等を被検体としつつ体積を計測して、断面画像とともに同時表示する場合に、対象組織等の種別を特定しつつ、当該特定された種別の組織等に対応する条件情報を用いて画像領域を抽出し、その体積を高精度に計測できるとともに、被検体となる組織等の種別に応じて適切に補完第1断面画像を生成して、第2断面画像及び計測結果とともに略リアルタイムに同時表示できる。この結果、本構成によれば、現在撮影中の第2断面画像の変化に追随して適切な補完第1断面画像を随時生成しながら、計測結果とともに同時表示して、計測時における被検体の状態をユーザが的確に把握可能にできる。なお、本構成において、被検体となる組織等の種別を特定する手法は、上記と同様に任意である。
【0024】
(7)また、請求項5又は6に記載の構成において、前記被検体が被検者の膀胱である場合に、前記取得手段が、前記第1及び第2断面画像に対応する超音波診断画像データとして、(A)前記第1タイミングにて撮影された膀胱の横断面画像及び(B)前記第2タイミングにて撮影された膀胱の縦断面画像の各々に対応する前記超音波診断画像データを取得し、前記計測手段が、前記膀胱の横断面及び縦断面の各断面画像から抽出された画像領域に基づき、前記パラメータとして膀胱内の尿量を計測し、前記表示制御手段が、前記第1及び第2計測値の比率に応じて(a)前記第2タイミングにおける膀胱の横断面画像及び(b)当該横断面画像に対応するトレース画像の少なくとも一方を推定しつつ、当該推定結果に応じて前記補完第1断面画像を生成するとともに、(1)当該生成した補完第1断面画像と、(2A)前記第2タイミングにて撮影された前記縦断面画像及び(2B)当該縦断面画像に対応するトレース画像の少なくとも一方と、(3)前記尿量の計測値を同期させつつ略リアルタイムに同時表示する構成としてもよい。
【0025】
この構成により、本発明の表示装置は、被検者膀胱内の尿量(パラメータ)を高精度に計測できるとともに、第2タイミングにて撮影された縦断面画像の変化状況に合わせて、随時補完第1断面画像としての横断面画像を生成し、尿量の計測結果とともに同時表示できるので、被検者膀胱内尿量の状態をユーザが的確に把握し、被検者の健康状態を適切に維持、管理することができる。
【0026】
(8)また、請求項5又は6に記載の構成において、前記被検体が被検者子宮内の胎児である場合に、
前記取得手段が、
前記第1及び第2断面画像に対応する超音波診断画像データとして、(A)前記第1タイミングにて撮影された子宮内胎児の横断面画像及び(B)前記第2タイミングにて撮影された子宮内胎児の縦断面画像の各々に対応する前記超音波診断画像データを取得し、
前記計測手段が、
前記子宮内胎児の横断面及び縦断面の各断面画像から抽出された画像領域に基づき、(1)胎児の躯幹前後径、(2)躯幹横径、(3)脊椎長、(4)児頭大横径を計測しつつ、当該計測結果に基づき胎児の推定体重を前記パラメータとして計測し、
前記表示制御手段が、
前記第1及び第2計測値の比率に応じて(1)前記第2タイミングにおける子宮内胎児の横断面画像及び(2)当該横断面画像に対応するトレース画像の少なくとも一方を推定しつつ、当該推定結果に応じて前記補完第1断面画像を生成するとともに、(1)当該生成した補完第1断面画像と、(2A)前記第2タイミングにて撮影された前記縦断面画像及び(2B)当該縦断面画像に対応するトレース画像の少なくとも一方と、(3)前記推定体重の計測値を同期させつつ略リアルタイムに同時表示する構成としてもよい。
【0027】
この構成により、ユーザは被検者子宮内の胎児の状態のリアルタイムな変化状況と胎児の推定体重(パラメータ)を確認可能になり、胎児の発育状態を正確に把握することができる。
【0028】
(9)また、本発明の超音波画像診断システムは、被検体に所定周波数帯の音波を送信するとともに当該音波の被検体におけるエコーを受信することにより前記被検体を撮影した複数の超音波診断画像フレームからなる超音波診断画像データを生成する超音波診断画像処理プローブ装置と、前記超音波診断画像処理プローブ装置において生成された前記超音波診断画像データを有線又は無線により取得して、当該データに基づき被検体の超音波診断画像を表示する表示装置と、を有する超音波画像診断システムであって、前記表示装置が、(1)前記音波により前記被検体を第1方向に走査した場合に、当該第1方向の走査に伴うエコーに基づき、前記超音波診断画像処理プローブ装置にて撮影される前記被検体の第1断面画像に対応する第1超音波診断画像データと、(2)前記音波により前記被検体を前記第1方向とは異なる第2方向に走査した場合に、当該第2方向の走査に伴うエコーに基づき、前記超音波診断画像処理プローブ装置にて撮影される前記被検体の第2断面画像に対応する第2超音波診断画像データと、を取得する取得手段と、前記取得した第1及び第2超音波診断画像データの各々に所定の信号処理を施し、前記第1及び第2断面画像において前記被検体の写り込んだ画像領域を各々抽出する抽出手段と、前記抽出した画像領域に基づき、当該被検体の長さ、面積、体積及び体重の少なくとも1つを含むパラメータの値を計測する計測手段と、前記計測したパラメータの値とともに、(1)当該計測に用いた前記第1及び第2断面画像及び(2)これらから生成したトレース画像の少なくとも一方を表示手段に同時表示させる表示制御手段と、を有している。
【0029】
(10)また、請求項9に記載の構成において前記超音波診断画像処理プローブ装置が、X軸及びY軸の各方向に沿って十字型に配列された複数の前記振動子によって構成される振動子アレイを有し、前記取得手段が、前記X軸及びY軸のいずれか一方の軸に沿って配列された振動子群を用いて生成された前記第1断面画像データと、(b)他方の軸に沿って配列された前記振動子群を用いて生成された前記第2断面画像データと、を取得する構成としてもよい。
【0030】
本構成により、X軸及びY軸のいずれか一方の軸(例えば、X軸)に沿って配列された振動子群を用いて被検体を第1方向(例えば、横方向)に走査(例えば、電子走査)するとともに、他方の軸(例えばY軸)に沿って配列された振動子群を用いて被検体を第2方向(例えば、縦方向)に走査して、被検体の第1及び第2断面画像を撮影しつつ、対応する超音波診断画像データを生成できるので、適切な位置に対して、一度超音波診断画像処理プローブ装置を着接させるだけで、一度に被検体の第1及び第2断面画像を撮影して、被検体の体積を計測でき、計測時におけるユーザの操作負担を軽減できる。
【0031】
(11)また、本発明のプログラムは、被検体に所定周波数帯の音波を送信するとともに当該音波の被検体におけるエコーを受信することにより前記被検体を撮影した複数の超音波診断画像フレームからなる超音波診断画像データを生成する超音波診断画像処理プローブ装置から前記超音波診断画像データを取得して表示する表示装置として機能するコンピュータを、(1)前記音波により前記被検体を第1方向に走査した場合に、当該第1方向の走査に伴うエコーに基づき、前記超音波診断画像処理プローブ装置にて撮影される前記被検体の第1断面画像に対応する第1超音波診断画像データと、(2)前記音波により前記被検体を前記第1方向とは異なる第2方向に走査した場合に、当該第2方向の走査に伴うエコーに基づき、前記超音波診断画像処理プローブ装置にて撮影される前記被検体の第2断面画像に対応する第2超音波診断画像データと、を取得する取得手段、前記取得した第1及び第2超音波診断画像データの各々に所定の信号処理を施し、前記第1及び第2断面画像において前記被検体の写り込んだ画像領域を各々抽出する抽出手段、前記抽出した画像領域に基づき、当該被検体の長さ、面積、体積及び体重の少なくとも1つを含むパラメータの値を計測する計測手段、前記計測したパラメータの値とともに、(1)当該計測に用いた前記第1及び第2断面画像及び(2)これらから生成したトレース画像の少なくとも一方を表示手段に同時表示させる表示制御手段、として機能させる構成を有する。
【発明の効果】
【0032】
本発明の超音波診断画像処理プローブ、超音波画像診断システム及びプログラムは、組織等の詳細な観察に利用可能であり、且つ、手軽、高精度に組織等のパラメータを計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明に係る超音波画像診断システムの第1実施形態における構成例を示すシステム構成図である。
【
図2】第1実施形態の表示装置において、横断面画像フレームから被検体(膀胱)の左右径及び上下径を計測する際の原理を説明する図である。
【
図3】第1実施形態の表示装置において、縦断面画像フレームから被検体(膀胱)の前後径及び上下径を計測する際の原理を説明する図である。
【
図4】第1実施形態の表示装置において、被検体となる被検者膀胱の補完横断面画像を生成する際の生成原理を説明する図であり、(A)には、横断面画像の超音波診断画像データから画像領域抽出処理により抽出された膀胱の写り込んだ画像領域の境界をトレースして得られるトレース画像(すなわち膀胱の横断面形状)を示すとともに、(B)には、縦断面画像の超音波診断画像データから画像領域抽出処理により抽出される膀胱の写り込んだ画像領域の境界をトレースして得られるトレース画像(すなわち膀胱の縦断面形状)を示している。
【
図5】第1実施形態の超音波診断画像処理プローブ装置の構成例を示すブロック図である。
【
図6】第1実施形態の表示装置の構成例を示すブロック図である。
【
図7】第1実施形態の表示装置において尿量の計測結果と当該計測に用いた超音波診断画像を同時表示する際の一表示例を示す図である。
【
図8】第1実施形態の表示装置のデータ処理部において実行される計測時処理を示すフローチャート(その1)である。
【
図9】第1実施形態の表示装置のデータ処理部において実行される計測時処理を示すフローチャート(その2)である。
【
図10】第1実施形態の表示装置のデータ処理部において実行される画像領域抽出処理を示すフローチャートである。
【
図11】第2実施形態の表示装置にて血管の短軸断面画像と長軸断面画像を同期させつつ略リアルタイムに同時表示する際の原理を説明する図であり、(A)及び(B)には、各々、血管の短軸断面画像及び長軸断面画像から生成したトレース画像を示し、(C)には表示例を示している。
【
図12】第2実施形態の表示装置において被検者子宮内の胎児の推定体重を計測する際の原理を説明する図である。
【
図13】変形例1の超音波診断画像処理プローブ装置に搭載する振動子アレイを送受信面側から見た正面図である。
【
図14】変形例3の表示装置にて着接位置調整時に表示する画像の一例を示す図であり、(A)及び(B)には、各々、位置調整に成功した状態及び失敗した状態の表示例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、被検体となる被検者体内の組織等に対して所定周波数の音波(超音波)を送信するとともに、当該音波の被検体におけるエコーを受信し、被検体の長さ、面積、体積及び体重の少なくとも1つを含むパラメータの値を計測するとともに、当該計測に用いた超音波診断画像と計測結果を略リアルタイムに同時表示する超音波画像診断システムに対し、本発明に係る表示装置、超音波画像診断システム及びプログラムを適用した場合の実施形態である。但し、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。また、本発明の表示装置等において被検体となる被検者体内の具体的な組織等の種別に関しては任意であり、心臓や腎臓、膵臓、前立腺等の臓器、骨や筋肉、脂肪といった組織、若しくは、いずれかの組織等に発生した腫瘍の他、被検者子宮内の胎児も被検体となり得る。但し、以下に説明する第1実施形態においては、説明を具体化するため被検体を、被検者の膀胱として、被検者膀胱内の尿量(すなわち、膀胱内の体積)を計測する場合を例に説明を行い、他の被検体のパラメータを計測する場合に関しては第2実施形態の項にて説明を行う。
【0035】
[A]第1実施形態
[A1]超音波画像診断システム1の構成及び概要
まず、
図1を用いて、本発明の第1実施形態における超音波画像診断システム1の構成及び概要について説明する。なお、
図1は、本実施形態の超音波画像診断システム1の一構成例を示すシステム構成図である。
【0036】
図1に示すように本実施形態の超音波画像診断システム1は、(1)ユーザが携帯可能な構成を有するとともに、所定周波数帯(例えば、2MHz~22MHzのいずれかの周波数帯)を有する音波を送信することにより被検体を走査(例えば、電子走査)し、当該音波の被検体(本実施形態においては、被検者の膀胱)におけるエコーを受信して、当該受信したエコーに基づき、被検体を撮影した複数の超音波診断画像フレームからなる超音波診断画像データを生成する超音波診断画像処理プローブ装置10と、(2)超音波診断画像処理プローブ装置10と有線又は無線にて通信接続される表示装置20と、を有し、超音波診断画像処理プローブ装置10によって生成された超音波診断画像データを表示装置20が取得して、当該取得した超音波診断画像データに基づき、患者(被検者)膀胱内の尿量(すなわち膀胱内体積)を計測し、表示装置20において当該計測結果と、計測に用いた超音波診断画像を同期させつつ略リアルタイムに同時表示させるためのものである。すなわち、本実施形態においては、被検者の膀胱内体積(尿量)が計測対象のパラメータとなる。なお、超音波診断画像処理プローブ装置10の送信する音波の周波数帯及び装置形状に関しては任意であり、例えば、(1)2~7.5MHzの音波を用いたセクター型やコンベックス型の他、(2)2~12MHzの音波を用いたリニア型、(3)2~22MHzの音波を用いたシングル型等を採用するようにしてもよい。また、被検者の膀胱以外を被検体としてパラメータの値を計測する場合には、被検体となる組織等に応じて利用する周波数帯と形状を変更するようにしても良く、広帯域な周波数の音波(例えば、2~25MHz程度の周波数帯の音波)を送受信可能な振動子アレイ11(
図5参照)及び駆動部12(
図5参照)を用いて、被検体となる組織等に応じてアタッチメントを着脱し、装置形状及び利用する音波の周波数帯を変更可能な構成としてもよい。
【0037】
ここで、上述のように従来の音波を用いて自動的に被検者の尿量を計測する装置は、尿量の計測時、実際に計測のため利用した超音波診断画像を同期させつつ略リアルタイムに同時表示する機能を有しておらず、尿量の計測時における被検体の状態をユーザが確認できない。この結果、尿量計測時における音波照射位置の高精度な調整が難しいのみならず、計測時における被検者の健康状態をユーザが的確に把握して被検者の健康を維持、管理することが難しくなる。
【0038】
そこで、本実施形態の超音波画像診断システム1においては、概略以下の方法を採用することとした。
(1)まず、表示装置20には、超音波診断画像処理プローブ装置10において生成された超音波診断画像データを有線又は無線にて取得し、当該超音波診断画像データを後述する記憶部250(
図6参照)に記憶(バッファリング)しつつ、対応する超音波診断画像(すなわち膀胱の超音波診断画像)を表示させる機能を設ける。また、表示装置20には、例えばiPad(登録商標)、iPad mini(登録商標)等のタブレット型情報通信端末装置やスマートフォン、一般的なラップトップPC等の画像表示装置を用いる。これにより、本実施形態の超音波画像診断システム1は、ユーザの携帯性を損なうことなく、低コストに画像診断を実施できるとともに、高精度に被検者膀胱内の尿量を計測することができる。
(2)ユーザは、本機能により表示装置20に表示された膀胱の超音波診断画像を視認しつつ、画像診断を行い、或いは、尿量の計測に適した位置に音波を照射するため、超音波診断画像処理プローブ装置10を着接させる位置を調整し、尿量計測に適した着接位置を決定する。なお、尿量計測時の位置決めは、各被検者の最初の計測時に一度、表示装置20にて超音波診断画像データを表示させつつ、超音波診断画像処理プローブ装置10の着接位置を決定し、当該決定した位置にシール等でマーキングしておけば、2回目以降の位置決めは不要となるので、尿量計測時に位置決めのため超音波診断画像を表示させることは必須とならない。
(3)ここで、膀胱の超音波診断画像から実際に膀胱内の尿量を計測するためには、膀胱の横断面及び縦断面の各断面画像を撮影して、各断面画像に対応する超音波診断画像データに基づき膀胱の左右方向、上下方向及び奥行き方向の各内径(すなわち、サイズ)を計測し、当該計測結果に基づき膀胱内の尿量を算出することが必要となる。なお、本実施形態の表示装置20において、膀胱内の尿量を計測する際の原理に関しては後に詳述する。
(4)このため、本実施形態においてユーザは、被検者に対する超音波診断画像処理プローブ装置10の当て方を調整しつつ、まず、超音波診断画像処理プローブ装置10により被検者膀胱の横断面画像及び縦断面画像のいずれか一方(以下、「第1断面画像」ともいう。)を撮影する。この結果、超音波診断画像処理プローブ装置10においては、被検者膀胱の第1断面画像(例えば、横断面画像)に対応する超音波診断画像データが生成され、表示装置20に送信されることとなる。
(5)表示装置20は、このようにして超音波診断画像処理プローブ装置10から取得した第1断面画像(例えば、膀胱の横断面画像)に対応する超音波診断画像データを記憶部250に記憶して、後に尿量計測に利用可能な状態に維持する。
(6)次いで、ユーザが、第1断面とは異なる第2断面(例えば、縦断面)側から被検者膀胱を撮影すると、表示装置20は、超音波診断画像処理プローブ装置10にて撮影及び生成された第2断面画像(例えば縦断面画像)に対応する超音波診断画像データを取得して、記憶部250に記憶させつつ、当該データに基づき撮影中の第2断面の超音波診断画像を略リアルタイムに表示させる。なお、第1及び第2断面は、横断面、縦断面のいずれを割り当ててもよいが、本実施形態においては、横断面を第1断面、縦断面を第2断面とするものとして説明を行う。すなわち、本実施形態においては、ユーザが先に横断面画像を撮影し、表示装置20は、当該横断面画像に対応する超音波診断画像データ(以下、「横断面画像データ」ともいう。)を超音波診断画像処理プローブ装置10から先に取得して、記憶部250に記憶させるとともに、横断面画像の撮影完了後、縦断面画像の撮影に移行すると、表示装置20は、当該撮影中の縦断面画像に対応する超音波診断画像データ(以下、「縦断面画像データ」ともいう。)を取得して、当該データに基づき縦断面画像を略リアルタイムに表示させるものとする。
(7)このとき、表示装置20は、(A)記憶部250に記憶済の横断面画像データと、(B)超音波診断画像処理プローブ装置10から取得中の縦断面画像データに基づき膀胱の左右方向、上下方向及び奥行き方向の各内径(すなわち、サイズ)を計測するとともに、当該計測した内径に基づき膀胱内の尿量を略リアルタイムに算出(計測)し、現在撮影中の縦断面画像と同期させつつ、当該計測結果を略リアルタイムに同時表示させる。
(8)また、このとき、表示装置20は、記憶部250に記憶済の横断面画像データに基づき、現在撮影中の縦断面画像及び尿量の計測結果と同期させつつ横断面画像を、略リアルタイムに同時表示する。
【0039】
ここで、一般的な超音波画像診断システム等により被検体の横断面及び縦断面の各断面画像を撮影する場合、例えば、先に横断面を撮影及び表示した後に縦断面の撮影を開始し、或いは、縦断面の撮影及び表示後、横断面の撮影を開始するといった手順を踏む必要がある。このため、両断面の撮影タイミングが必然的にずれてしまい、両断面の画像を同時表示させること自体が難しくなる。特に、被検体を被検者の膀胱としつつ膀胱内の尿量を計測する場合、腎臓から膀胱に対して常時尿が流れ込むため、時間経過に伴い、膀胱内の尿量及び超音波診断画像が随時変化することとなる。この結果、上記のように横断面画像の撮影後に縦断面画像を撮影する方法を採用すると、縦断面画像の撮影タイミングでは、既に、膀胱内の尿量が変化して横断面画像も変化している可能性が高まる。従って、現在撮影中の縦断面画像と横断面画像及び膀胱内尿量の計測結果を同期させつつ略リアルタイムに同時表示させようとしても、そのままでは的確な画像表示を実現することが難しい。
【0040】
例えば、時刻t1から所定の撮影時間「α」(例えば、数秒~数十秒程度)横断面画像を撮影し、時刻T1(T1=t1+α)において横断面画像の撮影を終了して、その後所定の時間間隔(例えば、数分~十数分間)を開けた時刻t2から縦断面画像の撮影を開始して、現在撮影中の縦断面画像を略リアルタイムに表示させるケースを想定する。この場合、時刻T1からt2までの間に数mLの尿が膀胱に流れ込むことになる。このため、時刻t2の時点では、既に膀胱内の尿量が変化して、横断面画像自体も変化してしまう。縦断面の撮影中においても同様に尿が流れ込み、常時膀胱内の尿量が変化するとともに横断面画像自体も僅かに変化する。従って、(1)時刻t1において撮影され、記憶済の横断面画像データに対応する横断面画像と、(2)時刻t2から撮影を開始し、現在撮影及び表示中の縦断面画像を並べて表示したとしても、同じ時刻における横断面画像と縦断面画像を的確に同期させつつ略リアルタイムに同時表示できたことにはならない可能性が高くなる(すなわち、表示画像における対応関係の正確性が低くなる)。従って、縦断面画像の撮影中に膀胱の横断面画像と縦断面画像を同期させつつ略リアルタイムに同時表示させるためには何らかの対策を施すことが必要になる。また、膀胱内の尿量に関しても、時間の経過に伴って変化するので、撮影中の縦断面画像に追随して略リアルタイムに正確な尿量を計測するためには、単に時刻t1において撮影された横断面画像の超音波診断画像データを用いるだけでは十分でなく、何らかの対策を講じることが好ましい。この点については、他の組織等に関しても同様である。
【0041】
そこで、本実施形態の表示装置20は、後述する補完画像生成処理を実行することにより、縦断面画像の撮影タイミング(すなわち、時刻t2~現在までのタイミング)における横断面画像を予測しつつ生成し、当該生成した横断面画像(以下「補完横断面画像」という。)を時刻t2~現在における横断面画像として用いて尿量計測を行うとともに、この補完横断面画像を撮影中の縦断面画像と同時表示することにより、(1)撮影中の縦断面画像と、(2)当該縦断面画像の撮影タイミングにおける正確な横断面画像及び(3)尿量計測値と、を同期させつつ略リアルタイムに同時表示させる方法を採用することとした。
【0042】
この構成により、本実施形態の表示装置20は、尿量の非常に高精度な計測結果と正確な横断面画像を縦断面画像に同期させつつ略リアルタイムに同時表示することが可能となり、高精度な尿量計測を実現しつつ、尿量計測時における被検者の膀胱の状態をユーザが的確に確認可能として、被検者の健康を適切に維持及び管理することが可能となる。
【0043】
[A2]尿量の計測原理
次いで、
図2及び3を用いて、本実施形態の表示装置20において被検者膀胱内の尿量を計測する際の計測原理について説明する。なお、
図2及び3は、各々、被検体となる膀胱の横断面画像及び縦断面画像から膀胱内の尿量を計測する際の計測原理を説明する図である。また、
図2及び3において、(A)には、解剖図、(B)には、尿量計測時における超音波診断画像処理プローブ装置10の着接位置及び走査方向、(C)には、実際に撮影される横断面画像及び縦断面画像を示している。さらに
図3においては、画像と臓器の位置関係把握を容易にするため、(D)として、縦断面画像と同方向から見た際の解剖図を示している。
【0044】
(1)膀胱の左右径及び上下径の計測手法について
図2(B)に示すように、被検者の膀胱に対して当該被検者体部の前側から音波を送信しつつ、膀胱を横方向に走査した場合、超音波診断画像処理プローブ装置10は、膀胱からのエコーに基づき、
図2(C)に示すような膀胱の横断面画像フレームを撮影しつつ対応する横断面画像データを生成して、順次表示装置20に送信する。この結果、表示装置20の後述する記憶部250(
図6参照)には、時刻t1~T1の間に撮影された各横断面画像フレームに対応する横断面画像データが順次蓄積され、尿量の計測及び横断面画像の表示に利用可能な状態に維持されることとなる。
【0045】
このとき撮影される横断面画像フレームにおいて、長軸方向の青い点線にて示される最大径「a」が、膀胱の左右径(内径)を示すとともに、長軸に直行する短軸方向の黄色い点線にて示される最大径「c」が膀胱の上下径(内径)を示すものとなる。このため、本実施形態において表示装置20は、超音波診断画像処理プローブ装置10から取得し、記憶した横断面画像データに画像領域抽出処理を施すことにより、横断面画像フレームにおいて膀胱の写り込んだ画像領域を抽出しつつ、当該画像領域における膀胱の重心位置(すなわち、長軸と短軸の交点位置)を特定して、長軸及び短軸方向の最大径を計測することで膀胱の左右径「a」及び上下径「c」を計測する。なお、画像領域抽出処理については、動作の項にて詳述する。
【0046】
(2)膀胱の前後径及び上下径の計測手法について
図3(B)に示すように被検者の膀胱に対して被検者体部の前側から音波を送信しつつ、膀胱を縦方向に走査した場合、超音波診断画像処理プローブ装置10は、膀胱からのエコーに基づき、
図3(C)に示すような膀胱の縦断面画像フレームを撮影しつつ対応する縦断面画像データを生成して、順次表示装置20に送信する。この結果、表示装置20は、当該縦断面画像データを記憶部250に順次バッファリングしつつ、尿量の計測、補完横断面画像の生成及び縦断面画像の表示に利用可能な状態に維持する。
【0047】
このとき撮影される縦断面画像フレームにおいて、長軸方向の青い点線にて示される最大径「b」が、膀胱の前後径(内径)を示すとともに、この点線に直行する短軸方向の黄色い点線にて示される最大径「c」が膀胱の上下径を示している。このため、本実施形態において表示装置20は、超音波診断画像処理プローブ装置10から取得し、バッファリングされた縦断面画像データに画像領域抽出処理を施しつつ、縦断面画像フレームにおいて膀胱の写り込んだ画像領域を抽出し、当該画像領域における膀胱の重心位置(すなわち、長軸と短軸の交点位置)を特定して、長軸及び短軸方向の最大径を計測することで膀胱の前後径「b」及び上下径「c」を計測する。なお、本実施形態において各径「a」、「b」及び「c」の計測基準を定義付ける計測条件データは、予め表示装置20の記憶部250に記憶しておく構成とすればよい。
【0048】
ここで、一般に、膀胱内の尿量は、下記式1によって算出される。
膀胱内尿量(mL)=(a×b×c)/2(cm)・・・(式1)
なお、「a」、「b」及び「c」は、各々、膀胱の左右径、前後径、上下径を示している。また、膀胱に関しては、基本的に横断面画像と縦断面画像で上下径「c」が同値となるため、縦横いずれの断面画像に基づき上下径「c」を計測するかは任意であるが、本実施形態においては、説明を具体化するため、横断面画像からは、左右径「a」のみを計測し、前後径「b」及び上下径「c」に関しては縦断面画像から計測するものとして説明を行う。さらに、上記式1は、あくまでも尿量算出式の一例であり、式1以外の算出式を用いるようにしてもよい。
【0049】
そして、本実施形態において表示装置20は、この式1に「a」、「b」及び「c」の各計測値を代入して、被検者膀胱内の尿量を算出する。なお、(1)横断面及び縦断面に対応する超音波診断画像データから被検体の写り込んだ画像領域を抽出するタイミング及び(2)抽出した画像領域に基づき被検体の各方向の径(すなわち、「a」、「b」及び「c」)を計測するタイミングに関しては任意であり、横方向の走査完了タイミング(すなわち横断面画像の撮影完了タイミング)から縦方向の走査開始タイミング(すなわち、縦断面画像の撮影開始タイミング)までの間に一度、横断面画像データから被検体の写り込んだ画像領域を抽出し、当該画像領域に基づき、膀胱の左右径「a」を計測して、計測結果を記憶部250に記憶した後、縦方向の走査に移行する構成としてもよく、横方向及び縦方向の走査を行い、各走査により得られた横断面及び縦断面の各々に対応する超音波診断画像データを先に取得してバッファリングした後、横断面画像及び縦断面画像の各々に対応する超音波診断画像データから被検体の写り込んだ画像領域を抽出して、各径「a」、「b」及び「c」の値を一度に計測しつつ、尿量を計測する構成としてもよい。但し、本実施形態においては略リアルタイムな尿量計測を実現するため、前者の方法を採用するとともに、次述する方法で生成する補完横断面画像の生成過程にて算出される補完横断面画像の左右径「a2」と、撮影中の縦断面画像フレームから計測される前後径「b2」及び上下径「c2」を用いて尿量を計測するものとして説明を行う。
【0050】
[A3]補完横断面画像の生成原理
次いで、本実施形態の表示装置20において補完横断面画像を生成する際の原理について、
図4を用いて説明する。なお、
図4は、被検体となる被検者膀胱の補完横断面画像を生成する際の生成原理を説明する図であり、(A)には、横断面画像データに対して画像領域抽出処理を施して抽出された膀胱写り込んだ画像領域の境界をトレースして得られるトレース画像(すなわち膀胱の横断面形状)を示すとともに、(B)には、縦断面画像データに画像領域抽出処理を施して抽出された膀胱の写り込んだ画像領域の境界をトレースして得られるトレース画像(すなわち膀胱の縦断面形状)を示している。また、以下においては、説明の理解を容易にするため、時刻t1においてユーザが超音波診断画像処理プローブ装置10を
図2(B)のように被検者腹部に着接させつつ膀胱の横断面画像の撮影を開始して時刻T1まで横断面画像を撮影するとともに、時刻t1から所定時間経過後の時刻t2においてユーザが
図3(B)のように超音波診断画像処理プローブ装置10を被検者腹部に着接させて膀胱の縦断面画像の撮影を開始したものとして説明を行う。
【0051】
ここで、(A)時刻t1~T1の間に撮影された各横断面画像フレームから抽出した膀胱の画像領域に基づき計測される膀胱の左右径(
図2(C)の長軸長)を「a1」、同画像領域に基づいて計測される膀胱の上下径(
図2(C)の短軸長)を「c1」と定義するとともに、(B)時刻t2から撮影される各縦断面画像フレームから抽出した膀胱の画像領域に基づいて計測される前後径(
図3(C)の長軸長)を「b2」、同画像領域に基づいて計測される上下径(
図3(C)の短軸長)を「c2」と定義する。なお、時刻t1~T1の間における膀胱の左右径「a1」及び上下径「c1」は、この期間に撮影された横断面画像フレームの各々から抽出された各画像領域の長軸長及び短軸長の平均値を用いるようにしてもよいが、本実施形態においては、長軸長が最大となる横断面画像フレームから抽出した画像領域に基づき計測した長軸長「a」及び短軸長「c」を時刻t1~T1における膀胱の左右径「a1」及び上下径「c1」として利用するものとして説明を行う。なお、例えば、本実施形態の上下径計測値「c1」及び「c2」は、各々、本発明の「第1及び第2計測値」に相当する。
【0052】
一般に、超音波画像診断システム1において膀胱を観察する場合、超音波診断画像処理プローブ装置10を被検体に着接させる角度と押し込み量に応じて、横断面画像に映り込む膀胱の断面積が大きくなったり、小さくなったり変化する。このため、時刻t1~T1の間に撮影された横断面画像フレームに基づき膀胱のサイズを適切に計測しようとすると、当該横断面画像フレーム群において膀胱の最大断面が写り込んだ横断面画像フレームを用いることが望ましくなる。従って、本方法を採用することにより、横断面画像フレームに写り込んだ膀胱のサイズを適切に計測しつつ、尿量計測に利用することができる。
【0053】
このとき、時刻t1~T1の間に撮影された横断面画像フレームから計測される上下径「c1」と、時刻t2以降に撮影される縦断面画像フレームに基づき計測される上下径「c2」は、同じ被検体(同一被検者の膀胱)の同じ径(すなわち上下径)を示している。上記のように膀胱に関しては、本来両者は同値となり、「c1=c2」の関係が成立する。従って、この関係性が崩れて「c1≠c2」となっている場合には、横断面画像の撮影期間(すなわち時刻t1~T1までの期間)から現在(すなわち、現在撮影及び表示中の縦断面画像フレームの撮影時刻)に至るまでの間に膀胱が膨張又は収縮していると推定される。膀胱は、
図3(A)に示すような円錐形状を有し、横断面側から見ると楕円にて近似可能であるため(
図4(A)参照)、膀胱が膨張する場合には、上下径の変化した比率「c2/c1」と同じ比率で左右径も変化する。
【0054】
以上の関係から現在撮影中の縦断面画像フレームの撮影タイミング(時刻t2~)における膀胱の本当の左右径「a2」は、時刻t1における左右径「a1」にこの上下径の変化の比率を乗じて下記式2によって推定できる。
【0055】
時刻t2~における左右径a2≒a1×(c1/c2)(cm)・・・(式2)
【0056】
そこで、本実施形態の表示装置20は、時刻t1~T1にて撮影、生成された横断面画像データに基づき、左右径「a1」及び上下径「c1」を計測するとともに、現在撮影中の縦断面画像フレームに基づき、前後径「b2」及び上下径「c2」を計測する。そして、表示装置20は、当該計測結果に基づき、現在表示中の縦断面画像フレーム撮影時における膀胱左右径の推定値「a2」を式2に基づき算出して、各計測値を一時記憶して後に利用可能な状態に維持させる。なお、本実施形態の膀胱上下径「c」及び左右径「a」は、各々、例えば、本発明の「特定方向サイズ」及び「1の方向とは異なる方向における前記被検体のサイズ」に相当する。
【0057】
このようにして、現在表示中の縦断面画像フレーム撮影タイミングにおける膀胱左右径推定値「a2」を算出して記憶すると、表示装置20は、(1)当該算出した左右径推定値「a2」と、(2)表示中の縦断面画像フレームのデータに基づき計測される上下径の実測値「c2」に基づき、補完画像生成処理を実行して補完横断面画像を生成する。このとき、表示装置20は、時刻t1~T1において撮影された横断面画像フレームにおいて膀胱の最大断面が得られる横断面画像フレームにおいて膀胱断面の左右径及び上下径が、各々、「a2」及び「c2」となるように横断面画像フレームを調整する(すなわち、膀胱断面のサイズを拡大又は縮小する)。これにより、表示装置20は、現在表示中の縦断面画像フレームの撮影タイミングにおける膀胱の横断面を推定して対応した補完横断面画像を生成する。なお、補完横断面画像は、Bモード画像等の横断面画像フレームにおいて膀胱の写り込んだ画像領域のサイズを調整してBモード画像等の形式で生成するようにしてもよいが、本実施形態においては、説明を具体化するため、横断面画像フレームから抽出された画像領域をトレースしたトレース画像(
図4(A)参照)のサイズを調整しつつ補完横断面画像を生成するものとして説明を行う。
【0058】
そして、本実施形態の表示装置20は、(1)以上の手法により生成した補完横断面画像(すなわち、現在表示中の縦断面画像フレームの撮影タイミングにおける実際の膀胱サイズを推定して作成した横断面画像)と、(2)現在撮影中の縦断面画像フレームと、を同時表示させる。その後、表示する縦断面画像フレームが更新される都度、表示装置20は、同様の処理を繰り返すことにより、随時各縦断面画像フレームに対応する補完横断面画像を更新生成して、縦断面画像フレームと同時表示する。本構成により本実施形態の表示装置20は、撮影中の縦断面画像と、そのタイミングにおける膀胱の正確な横断面画像を同期させつつ、略リアルタイムに同時表示させることが可能になる。なお、このとき、時刻t1~T1において実際に撮影された横断面画像及びトレース画像の少なくとも一方をさらに並べて表示する構成としてもよい。本構成により、ユーザは時刻t1~T1において実際に撮影された横断面画像と補完横断面画像を見比べて、時刻t1からt2までの間にどの程度横断面画像が変化したのかを、対比しつつ確認することが可能となる。また、本実施形態においては、本方法により、時刻t1からt2までの間における膀胱の膨張又は縮小を加味して、正確な横断面画像(すなわち補完横断面画像)を推定しつつ、実際に撮影中の縦断面画像と同時表示する構成を採用したが、表示する横断面画像に高い正確性を求めない場合には、時刻t1において実際に撮影された横断面画像と、撮影中の縦断面画像を同時表示することも可能である。
【0059】
また、このとき、表示装置20は、上記手法により得られ、記憶済の左右径推定値「a2」と、撮影及び表示中の縦断面画像フレームから計測される上下径「c2」と、前後径「b2」と、を上記式1に代入することで、現在表示中の縦断面画像フレームの撮影タイミングにおける被検者膀胱内の尿量を高精度に計測し、当該計測結果を縦断面画像及び補完横断面画像とともに表示させ、常に更新することで高精度な尿量計測値と、撮影中の縦断面画像及び対応する補完横断面画像を同期させつつ略リアルタイムに同時表示することが可能となる。ユーザはこのようにして表示された画像を確認しながら、膀胱内の尿量を確認し、或いは、断面画像を確認して、着接位置のさらなる調整や画像診断を行う。この結果、本実施形態の超音波画像診断システム1によれば、高精度な尿量計測が実現できるとともに、計測時における膀胱の状態をユーザが的確に確認可能にして被検者の健康状態を適切に維持、管理することができる。なお、この際の表示形態は上記のように任意である。また、尿量計測時の具体的な動作については動作の項にて詳述する。
【0060】
[A4]超音波画像診断システム1の概略構成
超音波診断画像処理プローブ装置10は、例えば、一列に配列された128個の超音波振動子112からなる振動子アレイ11(
図5参照)を有し、この振動子アレイ11により被検体に音波を送信するとともに被検体からのエコーを受信して、当該受信したエコーに基づき被検体を撮影した複数の超音波診断画像フレーム(例えば、横断面画像フレーム又は縦断面画像フレーム)からなる超音波診断画像データを生成し、当該生成した超音波診断画像データを有線又は無線にて表示装置20に送信して、表示装置20にて表示させる機能を有する。
【0061】
係る機能を実現するため、本実施形態の超音波診断画像処理プローブ装置10は、例えば、USB(Universal Serial Bus)等の有線通信インターフェースやIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11a、b、c、n、ac、ax等の無線LAN(Local Area Network)規格に準拠した通信チップ、或いは、IEEE802.15.1(Bluetooth(登録商標))に規格に準拠した通信チップやアンテナ等を含む無線通信インターフェースを有し、これらの通信インターフェースを介して有線又は無線にて通信接続された表示装置20に自機の生成した超音波診断画像データを送信する。
【0062】
また、超音波診断画像処理プローブ装置10は、(1)横方向の走査開始の指示入力を行うための横方向走査開始ボタン、(3)縦方向の走査開始の指示入力を行うための縦方向走査開始ボタン、(4)走査停止の指示入力を行うための走査停止ボタン等の各種ボタンを含むボタンによって構成される操作部14(
図5参照)を有している。なお、本実施形態の超音波画像診断システム1を画像診断のみに用い、尿量計測を行わない場合、横方向走査開始ボタン及び縦方向走査開始ボタンを別個に設ける必要はなく、これらに換えて、1つの走査開始ボタンを設けて、当該ボタンの操作タイミングから走査終了ボタンが操作されるまで音波の送信とエコーの受信を繰り返し、当該期間中被検体を撮影した超音波診断画像データを生成して順次表示装置20に送信することにより、表示装置20にて対応する画像を表示させるようにすればよい。また、この場合に超音波診断画像処理プローブ装置10は、超音波診断画像データとともに被検体の心拍音等を検知して、音声を含む超音波診断画像データを生成し、又は、超音波診断画像データと同期した音声データを生成して超音波診断画像データととともに表示装置20に送信する構成としてもよい。さらに、操作部14にスクリーンキャプチャボタンを設け、当該ボタンの操作タイミングにて、撮影された1又は数枚のフレーム画像を超音波診断画像データから抜き出して、超音波診断画像データとともに、表示装置20に送信する構成とすることが好ましい。
【0063】
表示装置20は、一般的なタブレット型情報通信端末装置やスマートフォン、ラップトップ型のPC等、携帯性の高い情報通信端末装置であり、超音波診断画像処理プローブ装置10に搭載された無線通信インターフェースと同一の通信プロトコルに従って超音波診断画像処理プローブ装置10と通信可能な通信インターフェースを有している。
【0064】
ここで、本実施形態に特徴的な事項として本実施形態の表示装置20は、超音波診断画像処理プローブ装置10から超音波診断画像データ(抜き出した超音波診断画像フレーム及び音声データを含んでもよい)に対応したデータを取得して、当該超音波診断画像データに基づき超音波診断画像を表示するためのアプリケーションプログラム(以下、「表示アプリ」ともいう。)が搭載されており、この表示アプリに従い、(1)被検体の超音波診断画像を表示して、被検体を詳細に観察及び診断するための観察モードと、(1)被検者膀胱内の尿量を計測しつつ、尿量の計測結果と当該計測に用いた超音波診断画像(すなわち補完横断面画像及び撮影中の縦断面画像を後述する表示部230(
図6参照)に同時表示する計測モードと、を任意に切り替えつつ、利用可能な構成になっており、操作部260(
図6参照)に対する入力操作に応じて、この表示アプリに従い、両動作モードのいずれか一方を選択しつつ、必要な処理を実行する構成になっている。なお、これら動作モードの選択は、表示装置20が、表示アプリに従い、例えば、「画像診断ボタン」及び「尿量計測ボタン」とともに各モードを説明する文字列等を表示部230に表示させて、当該表示に従ってユーザが操作部260に行った入力操作に応じて動作モードを選択しつつ、当該選択されたモードにて処理を実行する構成としてもよい。
【0065】
(1)観察モード下における表示装置20について
観察モードが選択された場合に表示装置20は、超音波診断画像処理プローブ装置10から超音波診断画像データを取得して、当該超音波診断画像データを記憶部250(
図6参照)にバッファリングしつつ、当該超音波診断画像データに基づき、被検体の超音波診断画像をユーザが閲覧可能に表示させる。なお、この際における動作は基本的に従来の超音波診断画像処理プローブ装置と表示装置を組み合わせたシステム(例えば、非特許文献1)と同様である。また、この場合に表示装置20が超音波診断画像データの取得及び表示を開始するトリガとなる具体的な操作内容については任意であり、例えば、超音波診断画像処理プローブ装置10と表示装置20を有線接続する構成を採用する場合には、ケーブルにて両装置10及び20が接続され、両装置10及び20間に通信コネクションが確立されたことをトリガとして、超音波診断画像処理プローブ装置10が超音波診断画像データの送信を開始して、表示装置20が対応する超音波診断画像の表示を開始するようにすればよい。また、例えば、両装置10及び20を無線にて通信接続する構成を採用する場合には、超音波診断画像処理プローブ装置10の操作部14に超音波診断画像データの「送信開始指示ボタン」を設け、当該ボタンの操作時に超音波診断画像処理プローブ装置10側から通信コネクションの確立要求を送信して、通信コネクションの確立をトリガとして超音波診断画像処理プローブ装置10から表示装置20に超音波診断画像データを順次送信しつつ表示装置20にて画像表示を開始する構成を採用してもよく、表示装置20にて所定の入力操作(例えば、超音波診断画像の表示要求操作)が行われたことをトリガとして表示装置20側から超音波診断画像処理プローブ装置10に通信コネクションの確立要求を送信し、両装置10及び20間に通信コネクションが確立されたことをトリガとして超音波診断画像処理プローブ装置10から表示装置20に超音波診断画像データを送信する構成としてもよい。なお、観察モードにおいて表示装置20が超音波診断画像を表示する際の表示形態は任意であり、例えば、動画像としての超音波診断画像を表示する領域と、スクリーンキャプチャ機能によって抜き出された超音波診断画像フレームを表示する領域を分けて、各領域に動画像と抜き出された超音波診断画像フレームを同時に表示する構成としてもよく、操作部260(
図6参照)に対する入力操作に応じて動画像と抜き出された超音波診断画像フレームを切り替えつつ表示する構成としてもよい。また、動画像又は抜き出された超音波診断画像フレームの表示領域においてピンチイン又はピンチアウト操作を行うことによって、画像内の少なくとも一部を拡大又は縮小表示する構成としてもよく、フリック操作に応じて抜き出された超音波診断画像フレームを次の抜き出された超音波診断画像フレームに切り替えつつ表示する方法を採用してもよい。各入力操作は、もちろんキーボードやマウス等に対する入力操作にて代替可能である。
【0066】
(2)計測モード下における表示装置20について
計測モードが選択された場合に表示装置20は、まず、超音波診断画像処理プローブ装置10にて撮影された各横断面画像フレームに対応する横断面画像データ(
図2(B)及び(C)参照)を取得するとともに、記憶部250に記憶させ、同時表示及び尿量計測に利用可能な状態に維持する。このとき、表示装置20は、超音波診断画像処理プローブ装置10から受信した横断面画像データを記憶部250にバッファリングしつつ、位置決めのため、横断面画像を表示させる。なお、この際のデータ取得及び表示開始のトリガは観察モードの場合と同様に任意である。
【0067】
その後、ユーザが縦断面画像の撮影のため、超音波診断画像処理プローブ装置10の当て方を
図3(B)のように変化させて、縦方向走査開始ボタンを操作すると、超音波診断画像処理プローブ装置10にて生成された各縦断面画像フレームに対応する縦断面画像データが順次表示装置20に送信される。表示装置20は、このようにして送信された縦断面画像データを取得して、随時表示更新を行いながら撮影中の縦断面画像フレームを表示させる。このとき、表示装置20は、表示アプリに従い上記原理により、各縦断面画像フレーム毎に補完横断面画像を生成するとともに、膀胱内の尿量をリアルタイムに計測して、撮影中の縦断面画像フレームと同時表示させる。そして、表示装置20は、縦断面画像フレームの更新に合わせて補完横断面画像及び尿量計測値を更新表示させる。なお、この同時表示状態の終了方法は任意であり、例えば、ユーザが操作部14の走査停止ボタンを操作し、又は、表示装置20の操作部260に対して表示終了操作を行った時点で表示を終了するようにしてもよい。また、表示アプリは、表示装置20にプリインストールされる必要はなく、利用前に予めダウンロードして実行可能になっていればよい。
【0068】
[A5]超音波診断画像処理プローブ装置10の構成
次いで、
図5を用いて本実施形態の超音波診断画像処理プローブ装置10の構成について説明する。なお、
図5は、本実施形態の超音波診断画像処理プローブ装置10の構成例を示すブロック図である。
【0069】
図5に示すように、本実施形態の超音波診断画像処理プローブ装置10は、振動子アレイ11と、駆動部12と、音波受信部13と、上記各種のボタンを含む操作部14と、記憶部15と、有線又は無線の通信インターフェース用通信チップ及びアンテナ等により構成される通信部16と、制御部17と、を備え、各部には図示せぬ内蔵バッテリから駆動に必要な電力が供給される構成になっている。
【0070】
振動子アレイ11は、図示せぬ筐体の先端部等の位置に配設され、送受信面111に沿って一列に配列された128個の超音波振動子112を備えている。複数の超音波振動子112は、各々が例えば、圧電素子等の素子によって構成され、制御部17の後述する信号処理部171から供給される送信信号に対応する電気信号が駆動部12から入力されると、当該入力された電気信号(「駆動信号」ともいう。)に基づき振動し、駆動信号に対応する周波数帯の音波を送信するとともに、当該音波の被検体におけるエコーを受信した際に得られる振動に基づき電気信号を発生させ、出力信号として音波受信部13に出力する。
【0071】
駆動部12は、アンプ等の回路により構成され、制御部17による制御の下、信号処理部171から供給される送信信号を増幅しつつ駆動信号を生成して振動子アレイ11に供給する。
【0072】
音波受信部13は、振動子アレイ11から供給される出力信号を増幅するアンプやA/D(アナログ/デジタル)変換器等を有し、振動子アレイ11から供給される出力信号をデジタル信号に変換して信号処理部171、統制部172及び画像処理部173に供給する。この音波受信部13に内蔵されたアンプは統制部172による制御の下、増幅率を変更可能になっており、統制部172は、このアンプの増幅率を変更することにより、超音波診断画像の輝度レベルを変更可能となっている。
【0073】
記憶部15は、NAND型又はNOR型のフラッシュメモリやROM(read only memory)、RAM(Random Access Memory)等を組み合わせて構成され、制御部17が実行するプログラムが記録される。また、記憶部15は、制御部17が超音波診断画像データ等を生成する際のワークエリアとしても用いられる。なお、記憶部15は、スクリーンキャプチャボタンの操作タイミングにおいて撮影された超音波診断画像フレームを抜き出した場合に当該抜き出した超音波診断画像フレームのデータを一時記録する構成とすることが好ましい。
【0074】
制御部17は、例えば、超音波処理用LSI(Large Scale Integration)やFPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、CPU(Central Processing Unit)等により構成される。そして、制御部17は、記憶部15に記録されたプログラムに基づく処理を実行することにより、又は、回路上に予めプログラミングされた処理を実行することにより、信号処理部171と、統制部172と、画像処理部173と、を実現する。
【0075】
(信号処理部171)
信号処理部171は、操作部14における入力操作に応じて統制部172から供給される制御コマンドに基づき、音波による電子走査を制御する。例えば、横方向走査開始ボタン及び縦方向走査開始ボタンが操作された場合に、信号処理部171は、駆動部12に対する送信信号の供給を開始して、音波による電子走査を振動子アレイ11に開始させる。一方、走査停止ボタンの操作時には、駆動部12に対する送信信号の供給を停止して、電子走査を停止させる。また、信号処理部171は、音波受信部13から供給される出力信号に対応するデジタルデータに対してフィルタリング処理等の処理を施して、画像処理部173に供給する。
【0076】
(統制部172)
統制部172は、操作部14に対するユーザの入力操作に応じて超音波診断画像処理プローブ装置10の各部に制御コマンドを供給し、超音波診断画像処理プローブ装置10の各部を統合制御する。また、統制部172は、記憶部15及び画像処理部173と連動しつつ、通信部16を介した超音波診断画像データ(抜き出した超音波診断画像フレームや音声データを含んでもよい。)の表示装置20への送信を制御する。このとき、統制部172は、表示装置20との間において通信コネクションを確立するための処理を実行する。なお、この際の具体的な処理は、利用する通信インターフェースの種別に応じて変化するが、具体的な処理自体は従来の通信インターフェースと同様である。このようにして確立された通信コネクションを介して、記憶部15にバッファリングされた超音波診断画像データが順次表示装置20に送信されることとなる。
【0077】
(画像処理部173)
画像処理部173は、以下の処理1及び2を実行する。
<処理1>
画像処理部173は、信号処理部171から供給されるデータに基づき、被検体を撮影した超音波診断画像データを生成しつつ記憶部15にバッファリングさせる処理を実行する。
【0078】
<処理2>
画像処理部173は、表示装置20からの要求に応じて通信部16及び統制部172と連動しつつ記憶部15にバッファリングされた超音波診断画像データを、統制部172によって確立された通信コネクションを介して表示装置20に送信する。係る画像処理部173の機能により、横断面画像及び縦断面画像が表示装置20にて表示され、超音波診断画像処理プローブ装置10の着接位置の調整或いは画像診断に利用可能に表示される。なお、画像処理部173は、統制部172からスクリーンキャプチャボタンが操作されたことを示す制御コマンドが供給された場合に、当該タイミングにて撮影された超音波診断画像フレームを抜き出しつつ、記憶部15に一時記録させ、超音波診断画像データとともに表示装置20に送信可能な状態に維持させる構成にすることが好ましい。
【0079】
[A6]表示装置20の構成
次いで、
図6及び7を用いて、本実施形態の表示装置20の構成について説明する。なお、
図6は、本実施形態の表示装置20の構成例を示すブロック図であり、
図7は、表示装置20において尿量の計測結果と当該計測に用いた超音波診断画像を同時表示する際の一表示例を示す図である。
【0080】
図6に示すように本実施形態の表示装置20は、(1)通信部210と、(2)表示制御部220と、(3)液晶ディスプレイパネルや有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイパネル等により構成される表示部230と、(4)現在日時を特定するタイマ240と、(5)記憶部250と、(6)表示部230上に配設されたタッチパネルや、キーボード、マウス等により構成され、操作者の入力操作を受け付け、対応する入力コマンドを、バスBを介して各部に供給する操作部260と、(7)装置管理制御部270と、(8)データ処理部280と、を有している。なお、上記の各部は、バスBによって相互に接続され、各構成要素間におけるデータの転送が実行される。
【0081】
通信部210は、USB等の有線通信インターフェースやIEEE802.11系若しくは802.15系の無線通信インターフェースであり、装置管理制御部270及びデータ処理部280と連動しつつ、超音波診断画像処理プローブ装置10の通信部16と通信コネクションを確立し、超音波診断画像処理プローブ装置10とバスBの間のデータの授受を仲介する。具体的には通信部210は超音波診断画像処理プローブ装置10から送信された超音波診断画像データを受信し、バスBを介して各部に供給する。なお、通信部210は超音波診断画像処理プローブ装置10の通信部16と同一の通信プロトコルに従って通信可能とすることが必要となる。
【0082】
表示制御部220は、表示部230を構成するディスプレイパネルの駆動回路等で構成され、装置管理制御部270及びデータ処理部280と連動しつつ、表示部230に対する以下の表示制御を行う。
<制御1>
ホーム画面を含むGUI(Graphical User Interface)の表示部230に対する表示制御。
<制御2>
観察モード下において超音波診断画像処理プローブ装置10から取得した超音波診断画像データに基づく被検体の超音波診断画像の表示制御。
<制御3>
計測モード下の着接位置調整時における横断面画像及び縦断面画像の表示制御。
<制御4>
計測モード下の尿量計測結果及び各断面画像の同期表示制御。
なお、例えば、本実施形態の表示制御部220は、装置管理制御部270及びデータ処理部280と連動して、本発明の「表示制御手段」を構成するともに、表示部230は、「表示手段」を構成する。
【0083】
記憶部250は、例えば、NAND型又はNOR型のフラッシュメモリや、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(solid state drive)等と、ワークエリアとして利用するRAM254と、を組み合わせて構成され、その記憶領域内にプログラム記憶部251と、条件データ記憶部252と、画像データ記憶部253と、が設けられている。なお、記憶部250は、内蔵型の記憶装置を用いてもよく、microSD(登録商標)等の外付けタイプのメモリや外付けHDD等を用いてもよい。
【0084】
プログラム記憶部251には、OS(Operating System)やBIOS(Basic Input Output System)、ドライバプログラム等、表示装置20の各部を制御するためのプログラムの他、上記表示アプリが記憶される。
【0085】
条件データ記憶部252には、(1)膀胱の形状モデル等、超音波診断画像データに基づき被検の写り込んだ画像領域を抽出するための抽出条件に対応する抽出条件データと、(2)尿量の計算式(すなわち式1及び2)等パラメータの計測条件に対応する計測条件データと、(3)補完横断面画像生成時に利用する各種の条件(例えば、式2等)に対応する生成条件データと、が記憶される。
【0086】
画像データ記憶部253には、超音波診断画像処理プローブ装置10にて生成された超横断面画像データ及び縦断面画像データの少なくとも一部が記憶される。この画像データ記憶部253に対する超音波診断画像データの記憶は、後述する画像データ取得部281が装置管理制御部270と連動することにより制御される。ここで、尿量の計測に際して、ユーザが横断面画像を撮影した後、縦断面画像の撮影までの間に他の被検者の画像診断に超音波診断画像処理プローブ装置10を利用する可能性を完全には排除できない。そこで、本実施形態においては、横断面画像及び縦断面画像の撮影に際して、尿量の計測対象となる被検者を一意に識別するための被検者IDを入力させ、横断面画像と縦断面画像が同一の被検者に関するものであることを被検者IDにより紐付ける方法を採用する。このため、本実施形態において画像データ取得部281は、各断面に対応する超音波診断画像データの取得に際して、対応する被検者の被検者IDを入力させ、超音波診断画像処理プローブ装置10から取得した横断面画像データ及び縦断面画像データに紐付けつつ画像データ記憶部253に記憶させる構成となっている。そして、同時表示を行う際には、超音波診断画像処理プローブ装置10から送信されてくる縦断面画像データと同一の被検者に対応する当該横断面画像データと、超音波診断画像処理プローブ装置10から取得した縦断面画像データに基づき、補完横断面画像の生成及び尿量計測を行って、撮影中の縦断面画像と同期させつつ略リアルタイムに同時表示させる構成になっている。
【0087】
装置管理制御部270は、主にCPUによって構成され、OSやBIOS等のプログラムを実行することによって、表示装置20の各部を統合制御する。
【0088】
データ処理部280は、装置管理制御部270を実現するCPUと同一のCPUを用いて構成され、又は、装置管理制御部270と独立したCPUによって構成される。そして、データ処理部280は、装置管理制御部270による制御の下、プログラム記憶部151に記憶された表示アプリに基づく処理を実行することにより、(1)画像データ取得部281と、(2)画像領域抽出部282と、(3)計測部283と、(4)補完画像生成部284と、を実現する。なお、装置管理制御部270及びデータ処理部280をマルチコアCPUによって実現する場合には、各部の機能を各コアに振り分ける構成としてもよい。また、本実施形態の画像データ取得部281、画像領域抽出部282及び計測部283は、各々、例えば、本発明の「取得手段」、「抽出手段」、「計測手段」及び「生成手段」を構成する。
【0089】
(画像データ取得部281)
画像データ取得部281は、通信部210及び装置管理制御部270と連動して、超音波診断画像処理プローブ装置10から横断面画像データ及び縦断面画像データを取得し、当該取得したデータを被検者IDと紐付けつつ、画像データ記憶部253に記憶させ、当該データを、(1)超音波診断画像の表示、(2)膀胱サイズの計測、及び(3)補完横断面画像の生成に利用可能な状態に保持する。なお、画像データ取得部281が、超音波診断画像データの取得を開始する際のトリガ操作は上記のように任意である。
【0090】
(画像領域抽出部282)
画像領域抽出部282は、表示アプリに従い、横断面画像データ及び縦断面画像データに画像領域抽出処理を施して、各横断面画像フレーム及び縦断面画像フレームにおいて膀胱の写り込んだ画像領域を抽出する。このとき、画像領域抽出部282は、各断面画像において膀胱の写り込んだ画像領域の境界をトレースしつつ、トレース画像(
図4参照)を生成し、当該トレース画像に対応するデータにより各断面画像に対応する超音波診断画像データを置換して更新する構成としてもよい。この構成により、尿量計測時に膀胱の各径を計測する際の処理負担を軽減できるとともに、補完横断面画像を生成する際の処理負担を軽減することができる。
【0091】
(計測部283)
計測部283は、上記原理に基づき被検者膀胱の各径「a1」、「c1」、「b2」、「c2」を計測しつつ、膀胱内の尿量を計測して、その計測結果を画像データ記憶部253に記憶させる。このとき、計測部283は、装置管理制御部270、画像データ取得部281及び補完画像生成部284と連動しつつ、超音波診断画像処理プローブ装置10から取得中の縦断面画像データと同一の被検者に関する横断面画像データを被検者IDによって特定し、当該特定された横断面画像データと超音波診断画像処理プローブ装置10から送信される縦断面画像データの組み合わせに基づき、各縦断面画像フレームの撮影タイミングにおける、膀胱の左右径推定値「a2」を上記原理により算出する。そして、計測部283は、(1)当該算出された左右径推定値「a2」と、(2)縦断面画像に基づき計測された前後径「b2」及び上下径「c2」(実測値)を式1に代入しつつ、被検者膀胱内の尿量を略リアルタイムに計測する。この結果、計測部283においては、各縦断面画像フレームの撮影タイミングにおける正確な膀胱内尿量が略リアルタイムに計測され、画像データ記憶部253に逐次記憶されていくこととなる。
【0092】
(補完画像生成部284)
補完画像生成部284は、装置管理制御部270及び計測部283と連動しつつ、表示アプリに従い、現在撮影及び表示中の縦断面画像フレームの撮影タイミングにおける膀胱の左右径推定値「a2」を算出するとともに、左右径が「a2」、上下径が「c2」となるように時刻t1~T1にて撮影された横断面画像フレーム及び当該フレームから生成したトレース画像の少なくとも一方のサイズを調整して、当該縦断面画像フレームに対応する補完横断面画像を生成する。このとき、補完画像生成部284は、時刻t1~T1の間に撮影された全横断面画像フレームにおいて膀胱断面が最も大きく写り込んだ横断面画像フレームにおける膀胱のサイズを変更して補完横断面画像を生成する。そして、補完画像生成部284は、当該生成した補完横断面画像の画像データを画像データ記憶部253にバッファリングさせ、表示制御部220が表示可能な状態に維持させる。
【0093】
本実施形態において、表示制御部220は、このようにして画像データ記憶部253に記憶された(A)尿量の略リアルタイムな計測結果と、(B)補完横断面画像の画像データと、(C)超音波診断画像処理プローブ装置10から取得中の縦断面画像データに基づき、例えば、
図7に例示するような画像を表示部230に表示させ、縦断面画像フレームの更新と同期させつつ、尿量の計測結果と、補完横断面画像を略リアルタイムに更新表示させる。この結果、表示制御部220により本発明の「表示制御手段」としての機能が実現される。なお、
図7は、Bモード画像としての補完横断面画像と縦断面画像フレーム及び尿量計測結果を同時表示する例を示しているが、縦断面画像フレーム及び補完横断面画像は、各々、
図4に示すようなトレース画像を用いてもよい。
【0094】
[A6]表示装置20の動作
次いで、
図8~10を用いて本実施形態の表示装置20の動作について説明するが、観察モードにより被検体の超音波診断画像を観察する場合における動作は、基本的に従来の超音波診断画像処理プローブ装置と表示装置を組み合わせた超音波画像診断システム(例えば非特許文献1)と同様であるため、以下においては、計測モード下にて膀胱内の尿量を計測しつつ、当該計測結果を計測に用いた超音波診断画像とともに同時表示する際の動作についてのみ説明する。なお、
図8及び9は、表示装置20において、ユーザが動作モードとして計測モードを選択した場合に表示装置20のデータ処理部280が装置管理制御部270等と連動しつつ表示アプリに従って実行する計測時処理を示すフローチャートであり、
図10は、計測モードにて画像処理部173が実行する画像領域抽出処理を示すフローチャートである。
【0095】
(1)計測時処理について
まず、
図8及び9を用いて、尿量計測時の全体的な処理について説明する。なお、以下の説明に先立ち、ユーザは表示装置20の操作部260に対して計測モードを選択する旨の入力操作を行い、両装置10及び20間に通信コネクションが確立済の状態になっているものとする。
【0096】
図8に示すように、本実施形態の表示装置20においては、尿量計測時、まず、データ処理部280が、表示制御部220及び装置管理制御部270と連動しつつ、横断面画像の取得指示の表示処理を実行し、例えば、「被検者IDの入力後、プローブを恥骨上部に横方向に当てて横方向走査開始ボタンを操作して下さい。」等の文字列を表示部230に表示させる(ステップSa1)。なお、このとき表示部230には
図2(B)のような着接位置と走査方向を示す画像を同時に表示することが好ましい。
【0097】
この状態において、表示部230に表示された指示に従い、ユーザが操作部260に計測対象となる被検者の被検者IDを入力すると、画像データ取得部281は、ユーザの入力した被検者IDを画像データ記憶部253に記憶させる(ステップSa2)。
【0098】
そして、同表示に基づきユーザが超音波診断画像処理プローブ装置10を被検者の恥骨上部に
図2(B)のように着接させ、横方向走査開始ボタンを操作すると、制御部17は、駆動部12に対する送信信号の供給を開始して振動子アレイ11に対する駆動信号の供給を開始させ、被検体(膀胱)を、
図2(B)のように横方向に走査しつつ、当該被検体におけるエコーに基づき、最初の横断面画像フレーム(例えば、時刻t1において横断面画像の撮影を開始して、時刻t1から所定の撮影時間「α」経過後の時刻T1(T1=t1+α)まで、膀胱の横断面を撮影する場合には、時刻t1からの経過時間が「0」、すなわち、時刻t1にて撮影された横断面画像フレーム)に対応する横断面画像データを生成して、表示装置20に送信する。この結果、超音波診断画像処理プローブ装置10にて撮影された最初の横断面画像フレームに対応するデータが通信部210によって受信される。このとき、画像データ取得部281は、タイマ240により、現在日時を特定させつつ、現在日時と当該受信された横断面画像データを、ステップSa2にて画像データ記憶部253に記憶させた被検者IDと紐付けて画像データ記憶部253に記憶させる(ステップSa3)。
【0099】
次いで、画像領域抽出部282は、画像データ記憶部253に記憶された横断面画像データ(すなわち、最初の横断面画像フレームのデータ)と条件データ記憶部252に記憶された抽出条件データに基づき、画像領域抽出処理(
図10参照)を実行し、当該横断面画像フレームにおいて膀胱の写り込んだ画像領域のトレース画像を生成しつつ、画像領域を抽出する(ステップSa4)。
【0100】
次いで、計測部283は、当該抽出された画像領域の重心を探索することにより、膀胱の中心部を探索する(ステップSa5)。
【0101】
そして、重心の探索が終了すると、計測部283は、当該フレームに対応する画像領域から計測された長軸方向の最大径「a[0]」を、時刻t1からT1までの間に撮影される一連の横断面画像フレームにおける膀胱左右径「a1」の最大値と仮定して、被検者IDと紐付けつつ画像データ記憶部253に記憶させる(ステップSa6、
図2(C)参照)。
【0102】
次いで、計測部283は、長軸長の計測値「a[t1]」が最大値以下であるか否かを判定する(ステップSa7)。今の例の場合、最初の横断面画像フレームが処理対象となっているので、計測値「a1[t1]」=最大値と判定して(ステップSa7「Yes」)、計測値の最大値を「a1[0]」のまま保持する(ステップSa8)。
【0103】
次いで、計測部283は、長軸に直交する短軸長を計測して、その計測値「c1[t1]」を時刻t1~T1において撮影された一連の横断面画像フレームにおける膀胱上下径「c1」の最大値と仮定して、被検者IDと紐付けつつ画像データ記憶部253に記憶させた後(ステップSa9)、画像領域抽出処理において生成したトレース画像を対応する被検者IDと紐付けつつ、画像データ記憶部253に記憶させてから(ステップSa10)、処理をステップSa11に移行させる。
【0104】
そして、計測部283は、処理対象を次のフレームとするため、当該対象フレームの取得日時(すなわち、当該フレームの撮影時刻)t1が、撮影完了時刻T1よりも前であるか否かを判定する(ステップSa11)。今の例の場合、まだ、最初の横断面画像フレームが処理対象となっているので、計測部283はステップSa11において「Yes」と判定し、次の横断面画像フレーム(すなわち、2枚目の横断面画像フレーム)を処理対象とするため、「t1=t1+1」と対象時刻を「1」インクリメントする(ステップSa12)。今の例の場合、「t1(t1=0)+1=1」とインクリメントして、処理をステップSa3にリターンさせて、次の横断面画像フレーム(すなわち、2フレーム目)に対応するデータを画像データ取得部281に取得させて、当該フレームに対応するデータに基づき再度ステップSa4~7の処理を繰り返す。
【0105】
このとき、計測部283は、当該横断面画像フレームから計測した長軸長「a1[t1]」を画像データ記憶部253に記憶済の長軸長の最大値「a1[t1]」と比較して(ステップSa7)、計測値が最大値以上の場合(今の例の場合には「a1[0]」以上の場合)、画像データ記憶部253に記憶済の「a1[t1]」を、当該フレームにおける計測値にて上書きする(ステップSa8)。このように長軸長計測値「a[t1]」が最大となる横断面画像フレームを選択しつつ、当該横断面画像フレームから計測した長軸長「a[t1]」を時刻t1~T1にて撮影された一連の横断面画像フレームにおける膀胱左右径「a1」に設定することにより、時刻t1~T1の間で最大断面となるフレームを自動的に抽出しつつ、当該横断面画像フレームから計測された長軸長計測値「a1[t1]」を時刻t1~T1の間における膀胱左右径「a1」に設定する。
【0106】
そして、計測部283は、当該横断面画像フレームから計測された長軸長「a1[t1]」が、最大値以上の場合、(ステップSa7「Yes」)、当該横断面画像フレームを膀胱の最大断面が写っているフレームであるものとして、当該フレームから計測された短軸長「c1[t1]」により画像データ記憶部253に記憶済の膀胱上下径「c1」を上書更新した後(ステップSa9)、当該横断面画像フレームのトレース画像により画像データ記憶部253に記憶済のトレース画像を上書更新する(ステップSa10)。
【0107】
一方、ステップSa7において「No」と判定した場合(すなわち、当該横断面画像フレームから計測された長軸長「a1[t1]」が記憶済の最大値未満の場合)には、膀胱の最大断面が写り込んだフレームではないものとして、当該横断面画像フレームから計測された長軸長「a1[t1]」及び短軸長「c1[t1]」により、画像データ記憶部253に記憶済の膀胱左右径「a1」及び上下径「c1」を上書きすることなく、処理をステップSa11に移行させ、対象フレームの撮影時刻t1が時刻T1になっていない場合(ステップSa11「Yes」)、「t1=t1+1」と対象時刻を再度「1」インクリメントして(ステップSa12)、次の横断面画像フレームを処理対象に変化させつつ、対応する横断面画像フレームのデータを取得し(ステップSa3)、ステップSa4~12の処理を繰り返す。
【0108】
その後、計測部283は、画像データ取得部281と連動しつつ、ステップSa11にて「No」と判定されるまで(すなわち、時刻t1~T1の間に撮影された最後の横断面画像フレームに対応する処理の完了まで)、ステップSa4~12の処理を繰り返し、時刻T1にて撮影された最後の横断面画像フレームの処理が完了した時点で、縦断面画像の撮影段階に移行するため、処理をステップSa13に移行させる。この結果、画像データ記憶部253には、時刻t1~T1の間に撮影された一連の横断面画像フレームの中で膀胱の最大断面が写り込んだ横断面画像フレームから計測された長軸長計測値「a1[t1]」及び短軸長の「c1[t1]」が時刻t1~T1における膀胱の左右径「a1」及び上下径「c1」として記憶されるとともに、当該横断面画像フレーム(すなわち、最大断面の写り込んだフレーム)から生成されたトレース画像が被検者IDと紐付けた状態で記憶されることとなる。
【0109】
以上の処理によって横断面画像に対する処理が完了すると、画像データ取得部281は、表示制御部220及び装置管理制御部270と連動しつつ、縦断面画像の取得指示の表示処理を実行し(ステップSa13)、例えば、「プローブを恥骨上部に縦方向に当てて縦方向走査開始ボタンを操作して下さい。」等の文字列を表示部230に表示させる(ステップSa13)。なお、このとき表示部230には
図3(B)のような着接位置と走査方向を示す画像を同時に表示することが好ましい。
【0110】
この状態において、表示部230に表示された指示に従い、ユーザが超音波診断画像処理プローブ装置10を着接させる角度を90°回転させて、被検者の恥骨上部に
図3(B)のように着接させ、縦方向走査開始ボタンを操作すると、制御部17は、駆動部12に対する送信信号の供給を開始して振動子アレイ11に対する駆動信号の供給を開始させ、被検体(膀胱)を、
図3(B)のように縦方向に走査しつつ、当該被検体におけるエコーに基づき、最初の縦断面画像フレーム(例えば、時刻t2において縦断面画像の撮影を開始する場合には、時刻t2からの経過時間が「0」、すなわち、時刻t2にて撮影された縦断面画像フレーム)に対応する縦断面画像データを生成して、表示装置20に送信する。この結果、超音波診断画像処理プローブ装置10にて撮影された最初の縦断面画像フレームに対応するデータが通信部210によって受信される。このとき、画像データ取得部281は、タイマ240により、現在日時を特定させつつ、当該受信された縦断面画像データを、画像データ記憶部253に記憶済の対象被検者の被検者ID及び特定した現在日時と紐付けて画像データ記憶部253に記憶させる(ステップSa14)。
【0111】
次いで、画像領域抽出部282は、画像データ記憶部253に記憶された最初の縦断面画像フレームのデータと条件データ記憶部252に記憶された抽出条件データに基づき、画像領域抽出処理(
図10参照)を実行し、当該縦断面画像フレームにおいて膀胱の写り込んだ画像領域のトレース画像を生成しつつ画像領域を抽出する(ステップSa15)。
【0112】
次いで、計測部283は、当該画像領域の重心を探索し(ステップSa16)、探索が終了すると、当該フレームに対応する画像領域の長軸長「b2[t2]」を計測し、当該計測値「b2[t2]」を時刻t2における膀胱の前後径「b2」として被検者IDと紐付けつつ画像データ記憶部253に記憶させた後(ステップSa17)、長軸に直行する短軸長「c2[t2]」を計測して、当該計測値「c2[t2]」を時刻t2における膀胱の上下径「c2」として被検者IDと紐付けつつ画像データ記憶部253に記憶させる(ステップSa18)。
【0113】
このようにして、時刻t1~T1にて撮影された横断面画像フレームにおいて膀胱の最大断面が写り込んだ横断面画像フレームから計測された膀胱の左右径「a1」及び上下径「c1」と、時刻t2にて撮影された縦断面画像フレームにおける膀胱の前後径「b2」及び上下径「c2」が被検者IDと紐付けて画像データ記憶部253に記憶された状態になると、計測部283は、当該計測値を上記式2に代入しつつ、当該縦断面画像フレームの撮影タイミング(時刻t2)における膀胱の左右径「a2」を推定する(ステップSa19)。
【0114】
一方、補完画像生成部284は、「a2」及び「c2」と、条件データ記憶部252に記憶された生成条件データに基づき、画像データ記憶部253に記憶された横断面画像のトレース画像又は横断面画像フレーム自体を調整して補完横断面画像を生成する(ステップSa20)。
【0115】
次いで、計測部283は、画像データ記憶部253に記憶された「a2」、「b2」及び「c2」の値を式1に代入して、膀胱内の尿量を計測しつつ、装置管理制御部270及び表示制御部220と連動して、(1)当該計測値と、(2)ステップSa20において生成した補完横断面画像と、(3)ステップSa14において画像データ記憶部253にバッファリングした縦断面画像データに対応する縦断面画像フレームと、を表示部230に同時表示させた後(ステップSa21)、表示を終了するか否かを判定して(ステップSa22)、「Yes」と判定すると処理を終了する。
【0116】
一方、ステップSa22において「No」と判定すると、データ処理部280は処理をステップSa14にリターンさせて、次の縦断面画像フレームに対応する縦断面画像データを取得し、当該縦断面画像データに基づきステップSa15~22の処理を実行することにより、順次、ステップSa14にて取得された縦断面画像フレームに対応する補完横断面画像を生成するとともに(ステップSa20)、当該縦断面画像フレームの撮影タイミングにおけるリアルタイムな膀胱内尿量を計測して、これらを同時表示させる(ステップSa21)。
【0117】
この結果、表示終了タイミングが到来するまで(ステップSa22「Yes」)、ステップSa14~22の処理が繰り返され、撮影中の縦断面画像フレームの更新に合わせて、生成された補完横断面画像と、当該縦断面画像フレームの撮影タイミングにおける尿量計測値が、順次同時表示されることとなる。この結果、本実施形態の表示装置20においては現在撮影中の縦断面画像フレームの変化に追随させつつ生成した補完横断面画像と高精度な尿量計測値の略リアルタイムな同時表示が実現される。なお、表示終了タイミングの決定方法は任意であり、超音波診断画像処理プローブ装置10の操作部14にて走査停止ボタンが操作されたタイミングを表示終了タイミングに設定してもよく、表示装置20の操作部260に対して表示終了操作を行ったタイミングを表示終了タイミングに設定してもよく、さらには、縦断面画像の撮影時間を予め5分間等と設定しておき、当該撮影時間の経過時に自動的に表示終了と判定して(ステップSa22「Yes」)、処理を終了するようにしてもよい。また、本実施形態の構成において、尿量の計測を実施する都度(ステップSa21)、画像データ記憶部253に順次計測結果と、計測日時を蓄積して、画像データ記憶部253上に計測履歴情報のデータベースを構築し、後に利用可能な状態に維持させてもよい。この構成により、前回計測時の計測結果と、今回計測値を対比可能に表示することが可能になるので、尿量計測値の変化状態や推移をユーザが的確に把握しつつ、被検者の健康状態を適切に維持、管理することができる。また、本構成により、画像データ記憶部253内に計測履歴情報のデータベースが構築され、データベース内の計測履歴情報を必要に応じて参照できる。
【0118】
(2)画像領域抽出処理について
次いで、
図10を用いて、画像領域抽出部282がステップSa4及びSa15にて実行する画像領域抽出処理について説明する。なお、以下においては、ステップSa3及びSa14において取得された横断面画像フレーム又は縦断面画像フレームに対応するデータが画像データ記憶部253に記憶済の状態になっているものとする。
【0119】
この状態において、画像領域抽出部282は、まず、画像データ記憶部253に記憶された各断面のデータに対して、エッジ検出処理を施して(ステップSb1)、エッジ検出後のデータに基づき、横断面画像又は縦断面画像を二値化する(ステップSb2)。
【0120】
次いで、画像領域抽出部282は、二値化した各画像フレームのデータに対して、ノイズ除去を施した後(ステップSb3)、エッジ連携を行い(ステップSb4)、細線化した後(ステップSb5)、画像中に写り込んだ膀胱の境界をトレースして(ステップSb5)、当該トレース後の画像に基づき、膀胱の写り込んだ画像領域を各断面画像から抽出して(ステップSb6)、処理を終了する。このとき、画像領域抽出部282は、トレース後の画像と条件データ記憶部252に予め記憶された抽出条件データを比較して、トレース後の画像が抽出条件データに含まれる膀胱形状モデルに類似する場合であって、境界内の輝度が低ければ膀胱の写り込んだ画像領域であるものと判定する構成になっている。
【0121】
以上説明したように、本実施形態の超音波画像診断システム1は、観察モードにおいては、被検者の組織等の画像診断が可能な超音波診断画像データを生成して、表示装置20にて表示させることができる。
【0122】
また、本実施形態の超音波画像診断システム1は、計測モードにおいては、超音波診断画像処理プローブ装置10にて現在撮影中の縦断面画像と同期させつつ、補完横断面画像と尿量の高精度な計測結果を略リアルタイムに同時表示でき、高精度な尿量計測を実現しつつ、計測時における被検者膀胱の状態をユーザが把握可能にして被検者の健康を適切に維持、管理することができる。なお、上記実施形態においては、撮影中の縦断面画像フレームの更新に合わせて、リアルタイムに補完横断面画像を生成するとともに尿量を計測し、その計測結果と縦断面画像フレーム及び補完横断面画像を同時表示させつつ、更新して撮影中の縦断面画像フレームの変化に追随して横断面画像と尿量の計測結果を略リアルタイムに同時表示する構成としたが、厳密なリアルタイム性を求めない場合には、時刻t1~T1に撮影された横断面画像フレームにおいて膀胱の最大断面の写り込んだ横断面画像フレームと、現在撮影中の縦断面画像フレームと、尿量の計測結果を単に同時表示する構成としてもよい。この構成により、表示装置20の処理負担を軽減しつつ、尿量の計測結果と、当該計測において実際に利用した各断面画像を対比しながら確認可能に表示でき、計測時における被検体の状態をユーザが適切に把握して、被検者の健康を適切に維持することができる。
【0123】
[B]第2実施形態
上記第1実施形態の超音波画像診断システム1Aは、被検体を被検者の膀胱とし、膀胱内のリアルタイムな尿量を計測するとともに、(1)膀胱の縦断面画像と、(2)補完横断面画像と、(3)尿量の計測結果と、を同期させつつ略リアルタイムに同時表示する構成を採用していた。これに対して本実施形態の超音波画像診断システム1は、例えば、腎臓や膵臓、前立腺、心臓等の臓器、骨や筋肉、血管、脂肪といった組織の他、いずれかの組織等に発生した腫瘍、被検者子宮内の胎児等を被検体としつつ、その体積等のパラメータを計測して、当該計測結果と、被検体の断面画像を同期させつつ略リアルタイムに同時表示するためのものである。なお、本実施形態は、基本的に第1実施形態と同様の構成により実現されるものである。従って、特に言及しない限り、
図1、5及び6に示した各構成要素は、上記第1実施形態と、同様の処理を実行し、同様の機能を実現するものとして説明を行う。
【0124】
ここで、本実施形態の超音波画像診断システム1において超音波診断画像処理プローブ装置10にて撮影された超音波診断画像データに基づき被検体のパラメータを計測するためには、膀胱の場合と同様に、被検体の断面画像(例えば、横断面及び縦断面の各断面画像)において被検体の写り込んだ画像領域を抽出しつつ、当該抽出した画像領域に基づき、被検体となる組織等のサイズ計測を行って、その体積を算出することが必要となる。一方、抽出条件や計測条件及び生成条件といった各種の条件は被検体となる組織等の種別(例えば、腎臓や心臓等といったの種別)に応じて変化する。従って、各種の組織等を被検体とする場合には、まず、(A)対象となる組織等の種別を特定し、(B)当該組織等の写り込んだ画像領域を超音波診断画像データから適切に抽出するとともに、(C)当該抽出された画像領域に基づき被検体の体積等を計測することが必要となる。
【0125】
ここで、被検体となる組織等を特定する手法としては、(方法1)計測及び観察前にユーザに対象組織等を選択させる方法、(方法2)超音波診断画像処理プローブ装置10にて撮影された超音波診断画像データに基づき、被検体が何の組織等であるのかを自動的に特定する方法の2通りの方法を採用することができる。方法1を採用する場合には、ステップSa1において横断面画像の取得指示の表示処理を行う際に例えば、「計測対象組織を選択して下さい。」等の文字列とともに、計測対象となる組織等(すなわち、被検体)の種別をユーザに選択させるためのボタンや体積等のパラメータを計測可能な組織等の種別一覧を表示させつつ、ユーザに被検体の種別を選択させるようにすればよく、方法2を採用する場合には、(A)超音波診断画像データに写り込んだ組織等を自動識別するための機械学習モデルを表示装置20の条件データ記憶部252に予め記憶しておき、ステップSa3において最初の横断面画像フレームに対応するデータが取得された際に装置管理制御部270等において、当該横断面画像データと機械学習モデルに基づき、被検体の種別を自動的に特定する構成を採用するか、或いは、(B)図示せぬネットワーク上のサーバ装置に機械学習モデルを予め用意しておき、ステップSa3にて取得した最初の横断面画像フレームに対応するデータを表示装置20から当該サーバ装置に送信して、サーバ装置に被検体種別を特定させる構成とすればよい。方法1を採用する場合には、操作部260及びデータ処理部280が、例えば本発明の「特定手段」を構成する一方、方法2を採用する場合には、機械学習モデルを用いた装置管理制御部270等が「特定手段」を構成する。なお、本実施形態の構成において、横断面画像フレームから特定する被検体種別に膀胱を加えて、特定された被検体種別が膀胱である場合に第1実施形態と同様の処理を行う構成とすることももちろん可能である。
【0126】
また、このように各種の組織等を被検体とする場合、特定された被検体の種別に応じて、抽出条件等を適切に切り替える必要がある。このため、本実施形態において条件データ記憶部252には、被検体の種別毎に(1)抽出条件データと、(2)計測条件データと、(3)生成条件データと、が予め記憶されており、画像領域抽出部282、計測部283及び補完画像生成部284は、上記手法により特定した被検体の種別に応じて、適切な抽出条件データ、計測条件データ及び生成条件データを用いて(A)超音波診断画像データから対象となる被検体組織の写り込んだ画像領域を抽出し、(B)その体積等を計測し、(3)補完横断面画像を生成して、その計測結果と、被検体となる組織等の縦断面画像と、横断面画像(補完横断面画像)と、を同期させつつ略リアルタイムに同時表示させる構成を採用している。なお、本実施形態において条件データ記憶部252に記憶されるこれらのデータは、本発明の「条件情報」に相当し、条件データ記憶部252が「条件情報記憶手段」を構成する。
【0127】
[B1]被検体種別毎のパラメータ計測原理
ここで、被検体となる組織等の種別により、パラメータの計測原理が異なるので、以下、組織等の種別毎にそのパラメータを算出する際の原理について説明する。
【0128】
[B1-1]前立腺、肝臓、膵臓、肝臓、胆嚢、脾臓、子宮、卵巣、腹部大動脈、腫瘍等楕円近似できる組織等を被検体としてその体積を計測する場合の計測原理
この場合には、基本的に膀胱の場合と同様に横断面及び縦断面の各画像に基づき被検体の体積を計測することができる。但し、この場合には、上記式1に換えて回転楕円体に関する以下の式3を用いてその体積を算出することが必要となる。
【0129】
対象組織等の体積=(a×b×c×π)÷6・・・(式3)
なお、式3において、「a」、「b」及び「c」は、各々、対象組織等の左右径、前後径及び上下径の計測値であり、膀胱の場合と同様に「a」が横断面画像、「b」及び「c」が縦断面画像から計測されるものである。
【0130】
また、本実施形態において画像領域抽出部282は、被検体として特定された組織等に対応する抽出条件データ(すなわち、対象組織等の形状モデルを含むデータ)を用いて画像領域抽出処理(ステップSa4及びSa15)を実行し、横断面画像及び縦断面画像において対象となる組織等の写り込んだ画像領域を抽出しつつ画像データ記憶部253に記憶させる。一方、計測部283は、横断面画像及び縦断面画像から抽出され、記憶された画像領域と、被検体として特定された組織等に対応する計測条件データに基づき被検体の左右径「a1」、前後径「b2」及び上下径「c1」及び「c2」を計測する(ステップSa6、Sa17等)。そして、計測部283は、対象組織等に対応する計測条件データに基づき、当該計測値を式3に代入して、対象組織の体積を算出する(ステップSa21)。なお、これらの組織等においては、基本的に膀胱の場合と同様に時刻t1~T1において撮影される横断面画像フレームと時刻t2において撮影される縦断面画像フレームの間において上下径「c1=c2」の関係が成立する。このため、本実施形態において計測部283は、膀胱の場合と同様にステップSa20において時刻t2おける左右径「a2」を式2に基づき推定し、当該推定した「a2」と、時刻t2にて撮影された縦断面画像フレームから計測した前後径「b2」及び上下径「c2」を式3に代入して、対象組織等の体積を算出する構成になっている(ステップSa21)。なお、被検体となる組織等に応じて超音波診断画像処理プローブ装置10を着接させる位置が
図2(B)及び
図3(B)から変化するので、ユーザは、被検体となる組織等に応じて超音波診断画像処理プローブ装置10を着接させる位置及び走査方向を適切に変更して、当該被検体の横断面及び縦断面の各画像を撮影するようにすればよい。この場合における超音波診断画像処理プローブ装置10の着接位置の調整手法は、上記第1実施形態と同様であり、対象組織等を撮影可能な位置に超音波診断画像処理プローブ装置10を着接させつつ、表示装置20において対応する超音波診断画像を表示させて、着接位置の調整を行うようにすればよい。なお、各被検体を撮影可能な位置は、従来の超音波画像診断システム(例えば、非特許文献1等)により対象組織等を観察する場合と同様である。
【0131】
さらに、本実施形態において補完画像生成部284は、対象組織等に対応する生成条件データに基づき当該対象組織等の補完横断面画像を生成しつつ、画像データ記憶部253に記憶させ(ステップSa20)、表示制御部220は、超音波診断画像処理プローブ装置10からステップSa14において取得した縦断面画像データに対応する縦断面画像フレーム(すなわち、現在撮影中の縦断面画像フレーム)と、ステップSa20において生成して画像データ記憶部253に記憶済の補完横断面画像と、体積の計測結果と、を表示部230に同時表示させる(ステップSa21)。なお、この際の具体的な処理は、利用する条件データが変更される点及び体積の算出に利用する式が式1から式3に変更になる点以外は、基本的に
図8~10と同様である。本構成によれば、楕円近似可能な各種組織等に関しても膀胱の場合と同様に現在撮影中の縦断面画像フレームと、補完横断面画像と体積の計測結果を同期させつつ略リアルタイムに同時表示することが可能となる。また、計測対象組織等の面積を算出する場合に関しては、ステップSa21において面積を算出するための公知の数式に各径「a2」、「b2」及び「c2」の計測値を代入して算出するようにすればよく、長さに関しては、計測値「a」、「b」及び「c」のいずれかの計測値をそのまま長さに関するパラメータの値とするようにすればよい。さらに、体積の計測結果と、横断面及び縦断面の各断面画像と合わせて、左右径「a」、前後径「b」、上下径「c」の計測結果を同時表示するようにしてもよい。この場合、
図7の青及び黄色の点線に合わせて、計測値を表示する構成とすればよい。
【0132】
[B1.3]血管を被検体として、血管の短軸断面(横断面)及び長軸断面(縦断面)の画像を同期させつつ略リアルタイムに同時表示する場合の原理
次いで、被検体を血管としつつ血管の短軸断面及び長軸断面の画像とを同期させつつ略リアルタイムに同時表示する場合の原理について
図11を用いて説明する。なお、
図11は血管の短軸断面画像と長軸断面画像を同期させつつ略リアルタイムに同時表示する際の原理を説明する図であり、(A)及び(B)には、各々、血管の短軸断面画像及び長軸断面画像から生成したトレース画像を示し、(C)には表示例を示している。また、通常の血管に関しては、例えば血管穿刺等の場面でエコーガイドを行うような利用態様を想定しているので、血管を被検体とする場合には、その体積を計測することは必要とならない。
【0133】
この場合に、ユーザは、まず、対象血管を短軸方向(第1方向)に走査するように超音波診断画像処理プローブ装置10を着接させて血管の短軸断面画像(第1断面画像)を撮影する。画像領域抽出部282は、血管に対応する抽出条件データを用いて画像領域抽出処理を実行して、対象血管の短軸断面のトレース画像を生成しつつ、超音波診断画像において対象血管の写り込んだ画像領域を抽出し、画像データ記憶部253に記憶させる。一方、計測部283は、血管用の計測条件データに基づき、対象血管の上下径「a」及び左右径「b」を計測して、画像データ記憶部253に記憶させる。
【0134】
このようにして短軸断面に基づく計測上下径「a」及び左右径「b」の計測が終了すると、ユーザは超音波診断画像処理プローブ装置10を着接させる方向を90°回転させて走査方向を長軸方向(第2方向)に変化させ、対象血管の長軸断面画像(第2断面画像)を撮影する。画像領域抽出部282は、血管に対応する抽出条件データを用いて画像領域抽出処理を実行し、対象血管の長軸断面画像のトレース画像を生成しつつ、長軸断面画像において対象血管の写り込んだ画像領域を抽出して、画像データ記憶部253に記憶させる。
【0135】
一方、計測部283は、血管用の計測条件データに基づき、対象血管の長軸断面画像における上下径「a’」を計測する。血管の場合、時刻t2以降に撮影された長軸断面画像から計測される上下径「a’」は、撮影時刻t1~T1にて短軸断面画像から計測される上下径「a」と等しくなるので、「a≠a’」の場合、長軸断面撮影タイミング(時刻t2~)における血管の左右径「b’」は、「a」と「a’」の比率「a’/a」を、時刻t1~T1における左右径計測値「b」に乗じて、「b’=b×(a’/a)」により、算出可能となる。
【0136】
そして、補完画像生成部284は、血管用の生成条件データに基づき、記憶済の短軸断面トレース画像の左右径及び上下径が「a’」及び「b’」となるように記憶済の短軸断面トレース画像の形状を調整しつつ、補完用の短軸断面画像を生成し、画像データ記憶部253に記憶させ、表示制御部220は、このようにして生成及び記憶された補完用の短軸断面トレース画像と、現在撮影中の長軸断面画像を並べて、
図11(C)のように同時表示させることにより、両画像を同期させつつ略リアルタイムに同時表示させる。なお、この場合においても、同時表示するのは、Bモード画像等であってもよく、トレース画像であってもよい。本実施形態によれば、ユーザは、血管の短軸断面と長軸断面の双方を確認しつつ血管穿刺等の手技を実施でき、血管穿刺時の安全性を向上させることができる。
【0137】
[B1.4]被検者子宮内の胎児を被検体として、胎児の推定体重(EFW)を計測する場合の計測及び同時表示の原理
次いで、
図12を用いて、本実施形態の超音波画像診断システム1において被検者子宮内の胎児を被検体としつつ、その推定体重EFWをパラメータとして計測する際の原理及び同時表示する際の原理について説明する。なお、
図12は被検者子宮内の胎児の推定体重EFWを計測する際の原理を説明する図である。
【0138】
まず、本実施形態の超音波画像診断システム1において被検体となる胎児の推定体重EFWをパラメータとして計測する場合、被検者子宮の横断面及び縦断面の各断面画像を撮影して、各断面の画像から子宮内の胎児のサイズを計測することが必要となる。
【0139】
ここで、胎児の推定体重EFWは、(1)胎児の躯幹前後径「APTD」と、(2)躯幹横径「TTD」、(3)脊椎長(第6胸椎中心から第6胸椎中心の長さ)「SL」と、(4)児頭大横径「BPD」と、に基づき、下記式4によって示される。
【0140】
EFW=1.07×BPD3+(2.91×APTD×TTD×SL)…(式4)
【0141】
このため、本実施形態において画像領域抽出部282は、胎児用の抽出条件データ(例えば、胎児の形状モデル等)を用いて、画像領域抽出処理を実行し、横断面及び縦断面の各断面に対応する超音波診断画像データに含まれる各超音波診断画像フレームから胎児のトレース画像を生成しつつ胎児の写り込んだ画像領域を抽出して、トレース画像ともに画像データ記憶部253に記憶させる。
【0142】
一方、計測部283は、胎児用の計測条件データを用い、時刻t1~T1の間に撮影された縦断横断面画像フレームから抽出された画像領域に基づき、時刻t1~T1における躯幹横径「TTD」、児頭大横径「BPD」及び躯幹前後径「APTD」を計測して画像データ記憶部253に記憶させるとともに、時刻t2以降に撮影された縦断面画像フレームから抽出された画像領域に基づき、時刻t2における脊椎長SL及び躯幹前後径「APTD’」を計測して画像データ記憶部253に記憶させる。
【0143】
ここで、躯幹前後径「APTD」は、膀胱の場合の上下径「c」と同様に時刻t1~T1と時刻t2において同値となり、「APTD=APTD’」の関係が成立する。従って、この関係が崩れ、「APTD≠APTD’」となっている場合、APTDの比率「APTD’/APTD」を時刻t1~T1における横断面画像フレームから計測された躯幹横径「TTD」の計測値に乗算することにより、時刻t2における躯幹横径「TTD’」は、「TTD’=TTD×(APTD’/APTD)」により推定できる。
【0144】
計測部283は、胎児用の計測条件データに基づき、時刻t2~における胎児の躯幹横径「TTD’」を算出し、画像データ記憶部253に記憶させるとともに、当該算出した躯幹横径推定値TTD’と、縦断面画像フレームから計測され記憶済の躯幹前後径APTD’(時刻t2)と、画像データ記憶部253に記憶済の脊椎長SL(時刻t2)及び児頭大横径BPDと、を式4に代入しつつ、胎児の推定体重EFWを計測して、画像データ記憶部253に記憶させる。
【0145】
また、補完画像生成部284は、胎児用の生成条件データに基づき、時刻t1~T1にて撮影され、記憶された横断面画像データ又はトレース画像から計測された躯幹横径「TTD」の値が当該推定値「TTD’」となるように横断面画像及びトレース画像の少なくとも一方を変更しつつ補完横断面画像を生成して、画像データ記憶部253に記憶させる。表示制御部220は、このようにして計測され、記憶された胎児の推定体重EFWの計測値と補完横断面画像を現在撮影中の縦断面画像とともに表示部230上に同時表示させる。なお、この際の処理は基本的に対象が膀胱から胎児に変更され、利用する各条件データが胎児用のものとなる点及びステップSa21において利用する式が式1から4に変更される点以外は、基本的に
図8~10と同様であるため、詳細を省略する。
【0146】
本構成により、ユーザは被検者子宮内の胎児の状態のリアルタイムな変化状況と胎児の推定体重EFWを確認可能になり、胎児の成長状態を正確に把握することが可能となる。
【0147】
以上説明したように、本実施形態の超音波画像診断システム1は、膀胱以外の組織等に関しても現在撮影中の縦断面画像フレームと補完横断面画像及び体積等のパラメータ計測値を同期させつつ略リアルタイムに同時表示することが可能となる。
【0148】
[C]変形例
[C2]変形例1
次いで、
図13を用いて本発明の変形例1について説明する。なお、
図13は、本変形例の超音波診断画像処理プローブ装置10に搭載する振動子アレイ11Bを送受信面111側から見た正面図である。また、本変形例は、基本的に上記各実施形態における超音波診断画像処理プローブ装置10の振動子アレイ11を
図11に示す構成に変更している点以外は、
図5と同様の構成を有する超音波診断画像処理プローブ装置10によって実現されるので、以下、上記実施形態と異なる点についてのみ説明を行う。さらに、
図13においては、図面が煩雑になることを防止するため振動子アレイ11Bを構成する超音波振動子112の一部のみを示している。すなわち、実際の振動子アレイ11Bは、図示するよりも多くの超音波振動子112によって構成されている。
【0149】
ここで、上記各実施形態の超音波診断画像処理プローブ装置10は、128個の超音波振動子112を一列に配列した振動子アレイ11Aを用いる構成を採用していた。これに対して本変形例の超音波診断画像処理プローブ装置10Bは、
図13に示すように、XYの各軸方向に超音波振動子112を128個ずつ合計256個配列した十字型の振動子アレイ11Bを用いる構成を採用している。また、本変形例においては、横方向走査開始ボタン及び縦方向走査開始ボタンの2つのボタンに換えて、1つの走査開始ボタンのみが操作部14に設けられており、
図8ステップSa1において、表示装置20のデータ処理部280は、装置管理制御部270等と連動して例えば、「被検者IDの入力後、プローブを恥骨上部に当てて、走査開始ボタンを操作して下さい。」等の文字列を表示部230に表示させるようになっている。
【0150】
そして、ユーザがこの表示に従って操作部260に被検者IDを入力した後(ステップSa2)、十字型の振動子アレイ11Bの送受信面111を被検者の恥骨上部に着接させて走査開始ボタンを操作すると、超音波診断画像処理プローブ装置10においては制御部17が、X軸及びY軸のいずれか一方(例えばX軸)に沿って配設された超音波振動子112を用いつつ、
図2(B)のように被検体を横方向(第1方向)に走査して、横断面画像を撮影しつつ対応する横断面画像データを生成し、表示装置20に送信した後、今度は、もう一方の軸(例えば、Y軸)方向に配列された超音波振動子112を用いて、被検体を
図3(B)のように縦方向(第2方向)に走査して縦断面画像データを生成し、表示装置20に送信する構成とし、表示装置20は、このようにして取得した横断面及び縦断面の各断面に対応する超音波診断画像データに基づき、
図8~10の処理を実行するようにすればよい。
【0151】
但し、本変形例の構成を採用する場合には、超音波診断画像処理プローブ装置10において統制部172が信号処理部171と連動しつつ、自動的に利用する超音波振動子112を切り替え、横断面及び縦断面の各断面に対応する超音波診断画像データを生成して、表示装置20に送信する構成となるので、ユーザが着接位置を途中で切り替える必要がなくなる。従って、
図9ステップSa13において縦断面画像の取得指示を表示させる必要がなくなり、自動的に縦断面画像と補完横断面画像と、尿量計測値が更新されつつ、同期した状態で略リアルタイムに同時表示されることとなる。なお、本変形例において、制御部17が振動子アレイ11の駆動を制御しつつ超音波診断画像データを生成する具体的な手法は任意であり、例えば、上記実施形態と同様に時刻t1~T1の間、横方向の走査を行って、横断面画像データを生成しつつ表示装置20に送信して、横断面画像データの送信完了後の時刻t2から縦方向の走査を行って縦断面画像データを生成し、表示装置20に送信する構成としてもよい。この場合には、超音波診断画像処理プローブ装置10側における振動子アレイ11の駆動手順が上記各実施形態と異なってくる点以外は、上記各実施形態と同様である。
【0152】
本変形例によれば、一度の操作で膀胱内の尿量等を計測しつつ、当該計測結果を縦断面画像及び補完横断面画像と同期させつつ略リアルタイムに同時表示できるので、より手軽に膀胱内の尿量等を計測することができる。なお、振動子アレイ11Bにおいて両軸に沿って配列された超音波振動子112は、超音波診断画像処理プローブ装置10を90°回転させると、位置関係が入れ替わるので、X及びYのいずれの軸に沿って配列された超音波振動子112を用いて横方向及び縦方向の走査を行ってもよいことは言うまでもない。また、先にXYいずれかの軸に沿って配設された超音波振動子112により、縦断面画像を撮影した後、横断面画像を撮影する構成としてもよい。要は、被検体となる膀胱の横断面及び縦断面の各断面に対応する超音波診断画像データを超音波診断画像処理プローブ装置10にて生成して表示装置20に送信できれば、縦横の走査順序は問わない。
【0153】
[C2]変形例2
上記各実施形態及び変形例においては、画像診断に利用可能な画像解像度を確保するため128個の超音波振動子112を一列に配列した振動子アレイ11、又は、十字型に合計256個配列した振動子アレイ11Bを用いたが、画像診断に用いず、単に被検体のパラメータを計測する機能のみを実現する場合には、一列に64個の超音波振動子112を配列した振動子アレイ11又はXYの各軸方向に64個ずつ十字型に配列した振動子アレイ11Bを用いるようにしてもよい。この構成を採用した場合であっても、超音波診断画像処理プローブ装置10の高精度な位置決めに必要な程度の解像度を有する超音波診断画像データを生成できるとともに、パラメータの値を高精度に計測可能な解像度を確保することができる。この構成により、超音波診断画像処理プローブ装置10の構成を簡略化しつつ、高精度なパラメータの計測を実現できる。
【0154】
[C3]変形例3
上記各実施形態及び変形例においては、計測モード下における超音波診断画像処理プローブ装置10の着接位置調整時、従来と同様に超音波診断画像を表示させつつ、位置調整を行う構成としたが、着接位置の調整に際して、超音波診断画像処理プローブ装置10から取得した横断面画像データに画像領域抽出処理を施しつつ、対応する各断面のトレース画像を生成して、位置をガイドするための枠とともに表示部230に上に表示させる構成にしてもよい。
【0155】
この場合には、
図14に示すように現在撮影中の横断面画像フレームから生成したトレース画像とともに計測時における膀胱の最適な位置をガイドする枠を表示部230に同時に表示させるようにする。そして、
図14(A)のように膀胱断面の全体がガイド枠内に収まっていれば調整完了の指示表示を行う一方、(B)のように膀胱断面が、ガイド枠からはみ出している場合には、ガイド枠内に膀胱断面が収まるように調整する旨を表示部230に表示させ、ユーザが同表示に従って、超音波診断画像処理プローブ装置10の着接位置を調整し、膀胱断面の全体がガイド枠内に収まった時点で、調整完了を表示してユーザに報知する構成とすればよい。このとき、膀胱断面がガイド枠内に収まっているか否かを判定する方法は、任意であり、例えば、ガイド枠のいずれかの辺と重なる膀胱断面の輝度値に基づき、膀胱断面がガイド枠内に収まっているか否かを判定するようにしてもよい。例えば、
図14(B)のように膀胱断面がガイド枠に対して左側にずれて、膀胱断面がガイド枠の左辺に重なっている場合、左辺の境界に輝度の低い領域が一定値以上存在するとともに、右辺の境界には輝度が低い領域が存在しない状態となる。一方、膀胱断面が右側にずれて、ガイド枠の右辺に重なっている場合(図示はしない)、右辺の境界に輝度の低い領域が一定値以上存在し、左辺の境界には輝度が低い領域が存在しない状態となる。膀胱断面が上下方向にずれて上辺又は下辺に重なっている場合(図示はしない)も同様に、ガイド枠において膀胱断面と重なっている側の辺の境界に輝度の低い領域が一定値以上存在し、反対側の辺の境界には輝度が低い領域が存在しない状態になる。従って、画像領域抽出部282が、画像領域抽出処理においてガイド枠の各辺における輝度値を計測することにより、膀胱断面がガイド枠内に収まっているか否かを判定できるとともに、いずれの方向にずれているのかに関しても特定できる。このため、本構成を採用する場合には画像領域抽出部282が、ガイド枠の各辺における輝度値を計測して、膀胱断面がガイド枠内に収まっているか否かを判定し、着接位置の調整の要否を判定しつつ、表示部230に調整の要否を表示させるようにすればよい。また、この場合に、膀胱断面のずれている方向に応じて、着接位置の調整方向をユーザに指示する文字列を表示部230に表示する構成とすれば、さらに位置調整の精度を向上させつつ、ユーザの利便性を向上させることができる。例えば、
図14(B)のように枠の左辺に膀胱断面が重なっている場合には、「プローブを右方向に動かして下さい、」等の文字列を表示させる構成にすれば、位置調整の精度を向上させられるとともに、位置調整時のユーザの利便性を向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0156】
1…超音波画像診断システム、10…超音波診断画像処理プローブ装置、11、11B…振動子アレイ、111…送受信面、112…超音波振動子、12…駆動部、13…音波受信部、14…操作部、15…記憶部、16…通信部、17制御部、171…信号処理部、172…統制部、173…画像処理部、20…表示装置、210…通信部、220…表示制御部、230…表示部、240…タイマ、250…記憶部、251…プログラム記憶部、252…条件データ記憶部、253…画像データ記憶部、254…RAM、260…操作部、270…装置管理制御部、280…データ処理部、281…画像データ取得部、282…画像領域抽出部、283…計測部、284…補完画像生成部、