(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178661
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】車両用熱交換器の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60K 13/04 20060101AFI20241218BHJP
【FI】
B60K13/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096970
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山城 達矢
【テーマコード(参考)】
3D038
【Fターム(参考)】
3D038BA09
3D038BB01
3D038BC14
3D038BC15
3D038BC20
(57)【要約】
【課題】専用の外装部材を必要とせずに車室内に排気ガスが流入することを防止することができる車両用熱交換器の制御装置を提供すること。
【解決手段】内燃機関型のエンジン2と、外気との熱交換によりエンジン2の冷却水の熱を放熱するラジエータ4と、ラジエータ4に外気を送風するラジエータファン3と、をエンジンルーム内に備える車両1に搭載され、ラジエータファン3の稼働を制御する制御部8を備え、ラジエータファン3は、エンジンルーム内の空気を車両1の下部全体に送風可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、ファンを備えた熱交換器と、をエンジンルーム内に備える車両に搭載され、前記ファンの稼働を制御する制御部を備える車両用熱交換器の制御装置であって、
前記ファンは、前記エンジンルーム内の空気を前記車両の下部全体に送風可能である車両用熱交換器の制御装置。
【請求項2】
所定条件を満たすことにより降雪を予測する降雪予測部を備え、
前記制御部は、前記エンジンの始動中に前記降雪予測部が降雪を予測した場合に、前記ファンを稼働させる請求項1に記載の車両用熱交換器の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記車両が停車状態であることを条件に前記ファンを稼働させる請求項1または請求項2に記載の車両用熱交換器の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記車両が停車状態となってから停車状態のまま所定時間以上経過したことを条件に前記ファンを稼働させる請求項3に記載の車両用熱交換器の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用熱交換器の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両がアイドリング中に、降雪によって車両下部を密閉するように積雪すると、排気ガスが大気中に放出されずに車両の隙間から車内に流入する可能性がある。
【0003】
このようなことを回避するために、特許文献1には、排気ガスを車体上部よりも上方の大気中に案内する積雪時用の延長排気管が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、大型の部材を排気管に接続する必要があり、手間がかかっていた。
【0006】
そこで、本発明は、専用の外装部材を必要とせずに車室内に排気ガスが流入することを防止することができる車両用熱交換器の制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明は、エンジンと、ファンを備えた熱交換器と、をエンジンルーム内に備える車両に搭載され、前記ファンの稼働を制御する制御部を備える車両用熱交換器の制御装置であって、前記ファンは、前記エンジンルーム内の空気を前記車両の下部全体に送風可能であるものである。
【発明の効果】
【0008】
このように、本発明によれば、専用の外装部材を必要とせずに車室内に排気ガスが流入することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係る車両用熱交換器の制御装置のブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係る車両用熱交換器の制御装置のラジエータファンによる空気の流れの例を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係る車両用熱交換器の制御装置のラジエータファン稼働制御処理の手順を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、本発明の一実施例の他の態様に係る車両用熱交換器の制御装置のラジエータファンによる空気の流れの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態に係る車両用熱交換器の制御装置は、エンジンと、ファンを備えた熱交換器と、をエンジンルーム内に備える車両に搭載され、ファンの稼働を制御する制御部を備える車両用熱交換器の制御装置であって、ファンは、エンジンルーム内の空気を車両の下部全体に送風可能であるよう構成されている。
【0011】
これにより、本発明の一実施の形態に係る車両用熱交換器の制御装置は、専用の外装部材を必要とせずに車室内に排気ガスが流入することを防止することができる。
【実施例0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施例に係る車両用熱交換器の制御装置について詳細に説明する。
【0013】
図1において、本発明の一実施例に係る車両用熱交換器の制御装置を搭載した車両1は、エンジン2と、制御部8とを含んで構成される。
【0014】
エンジン2は、例えば、図示しないピストンが図示しない気筒を2往復する間に吸気行程、圧縮行程、膨張行程および排気行程からなる一連の4行程を行う4サイクルエンジンによって構成されている。
【0015】
エンジン2は、外気との熱交換により冷却水の熱を放熱する熱交換器としてのラジエータ4と、ラジエータ4に外気を送風するファンとしてのラジエータファン3とを備えている。ラジエータ4における冷却水の放熱量は、ラジエータファン3が駆動しているときには大きく、ラジエータファン3が停止しているときには小さい。
【0016】
ラジエータファン3とラジエータ4は、エンジン2の前方に設置されており、車両1の走行時に車両1の前方から走行風を受ける。
【0017】
ラジエータファン3は、制御部8の制御により、送風したり、送風を停止したり、などの稼働が制御される。
【0018】
制御部8は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、バックアップ用のデータなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0019】
コンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットを制御部8として機能させるためのプログラムが格納されている。
【0020】
すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより、コンピュータユニットは、本実施例における制御部8として機能する。
【0021】
制御部8の入力ポートには、外気温センサ5と、降雨センサ6と、車速センサ7とを含む各種センサ類が接続されている。
【0022】
外気温センサ5は、車両1の外部の周辺の温度を検出する。降雨センサ6は、車両1周辺の降雨を検出する。車速センサ7は、車両1の速度を検出する。
【0023】
一方、制御部8の出力ポートには、前述のエンジン2と、ラジエータファン3とを含む各種制御対象類が接続されている。
【0024】
本実施例において、ラジエータファン3は、制御部8に制御されて稼働することにより、
図2に示すように、エンジンルーム10内の空気を車両1の下部全体に送風できるようになっている。エンジンルーム10の下部は開口しているため、ラジエータファン3の送風により、エンジン2周辺の空気は、エンジンルーム10の下部の開口から出て、車両1の下部全体に広がる。
【0025】
制御部8は、所定条件を満たすことにより降雪を予測する降雪予測部81を備えている。制御部8は、エンジン2の始動中に、降雪予測部81が降雪を予測した場合に、ラジエータファン3を稼働してエンジンルーム10内の空気を車両1の下部全体に送風する。
【0026】
降雪予測部81は、例えば、外気温センサ5により検出された外気温や、降雨センサ6により検出された降雨状況などにより降雪を予測する。
【0027】
降雪予測部81は、GPS(Global Positioning System)などにより位置情報を検出し、その位置情報から周辺領域の天気情報を取得して降雪を予測してもよい。
【0028】
降雪予測部81は、車載カメラで撮影した車両1周辺の画像から、降雪を検出するようにしてもよい。
降雪予測部81は、これらの条件を適宜組み合わせて、降雪を予測してもよい。
【0029】
制御部8は、車両1が停車状態であることを条件にラジエータファン3を稼働してエンジンルーム10内の空気を車両1の下部全体に送風する。制御部8は、例えば、車速センサ7の検出する車速により車両1が停車状態か否かを判定する。制御部8は、車両1が停車状態でエンジン2が運転中状態であることを条件にラジエータファン3を稼働してエンジンルーム10内の空気を車両1の下部全体に送風するようにしてもよい。
【0030】
制御部8は、車両1が停車状態となってから停車状態のまま所定時間以上経過したことを条件にラジエータファン3を稼働してエンジンルーム10内の空気を車両1の下部全体に送風する。制御部8は、車両1が停車状態となってからエンジン2が運転中状態で停車状態のまま所定時間以上経過したことを条件にラジエータファン3を稼働してエンジンルーム10内の空気を車両1の下部全体に送風するようにしてもよい。
【0031】
以上のように構成された本実施例に係る車両用熱交換器の制御装置によるラジエータファン稼働制御処理について、
図3を参照して説明する。なお、以下に説明するラジエータファン稼働制御処理は、制御部8が動作を開始すると開始され、予め設定された時間間隔で実行される。
【0032】
ステップS1において、制御部8は、外気温が所定値以下であるか否かを判定する。
外気温が所定値以下であると判定した場合には、制御部8は、ステップS2の処理を実行する。外気温が所定値以下でないと判定した場合には、制御部8は、ステップS6の処理を実行する。
【0033】
ステップS2において、制御部8は、降雨があるか否かを判定する。
降雨が有ると判定した場合には、制御部8は、ステップS3の処理を実行する。降雨が無いと判定した場合には、制御部8は、ステップS6の処理を実行する。
【0034】
ステップS3において、制御部8は、車両1が停車中であるか否かを判定する。
車両1が停車中であると判定した場合には、制御部8は、ステップS4の処理を実行する。車両1が停車中でないと判定した場合には、制御部8は、ステップS6の処理を実行する。
【0035】
ステップS4において、制御部8は、車両1が停車してから所定時間以上経過したか否かを判定する。
【0036】
車両1が停車してから所定時間以上経過したと判定した場合には、制御部8は、ステップS5の処理を実行する。車両1が停車してから所定時間以上経過していないと判定した場合には、制御部8は、ステップS6の処理を実行する。
【0037】
ステップS5において、制御部8は、ラジエータファン3を稼働する。ステップS5の処理を実行した後、制御部8は、ラジエータファン稼働制御処理を終了する。
【0038】
ステップS6において、制御部8は、ラジエータファン3を停止する。ステップS6の処理を実行した後、制御部8は、ラジエータファン稼働制御処理を終了する。
【0039】
このように、本実施例では、ラジエータファン3は、エンジンルーム10内の空気を車両1の下部全体に送風するように稼働可能に構成されている。
【0040】
これにより、ラジエータファン3を稼働させてエンジン2周辺の高温の空気を車両1の下部全体に送風して車両1下部に積もった雪を融雪させ、排気ガスが大気中に放出される逃げ道を作ることで、排気ガスが車両1の下部に滞留せず、車室内へ流入することを防止することができる。
【0041】
専用の外装品を用いず、車両1に予め搭載されている機能のみで車両1の下部に排気ガスが滞留することを防止するため、降雪のたびに外装品を装着する場合と比較して手間が無い。
【0042】
また、制御部8は、エンジン2の始動中に、降雪予測部81が降雪を予測した場合に、ラジエータファン3を稼働してエンジンルーム10内の空気を車両1の下部全体に送風する。
【0043】
これにより、降雪の可能性がある場合のみラジエータファン3を稼働させるため、必要以上の電力の消費を抑えることができる。
【0044】
また、制御部8は、車両1が停車状態であることを条件にラジエータファン3を稼働してエンジンルーム10内の空気を車両1の下部全体に送風する。
【0045】
これにより、車両1が雪をかき分けながら走行していることにより、排気ガスが大気中に放出される逃げ道が常に確保されている車両1の走行中にラジエータファン3を稼働させないため、電力の消費を抑えることができる。
【0046】
また、制御部8は、車両1が停車状態となってから停車状態のまま所定時間以上経過したことを条件にラジエータファン3を稼働してエンジンルーム10内の空気を車両1の下部全体に送風する。
【0047】
これにより、アイドリング状態で所定時間以上経過した車両1の下部を覆うような積雪のおそれがある場合以外ではラジエータファン3を稼働させないため、電力の消費を抑えることができる。
【0048】
本実施例の他の態様としては、
図1における制御部8は、ラジエータファン3を本実施例とは逆回転に稼働して、エンジンルーム10内の空気を車両1の前部に送風する。
【0049】
このようにすることで、
図4に示すように、エンジンルーム10及び車両1の下部に滞留した排気ガスを吸引し、車両1の前部の開口部11から車両外部に放出することができ、排気ガスが車両1の下部に滞留せず、車室内へ流入することを防止することができる。
【0050】
専用の外装品を用いず、車両1に予め搭載されている機能のみで車両1の下部に排気ガスが滞留することを防止するため、降雪のたびに外装品を装着する場合と比較して手間が無い。
【0051】
本実施例では、各種センサ情報に基づき制御部8が各種の判定や算出を行なう例について説明したが、これに限らず、車両1が外部サーバ等の車外装置と通信可能な通信部を備え、該通信部から送信された各種センサの検出情報に基づき車外装置によって各種の判定や算出が行なわれ、その判定結果や算出結果を通信部で受信して、その受信した判定結果や算出結果を用いて各種制御を行なってもよい。
【0052】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。