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特開2024-178666空気調和装置、及び空気調和装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178666
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】空気調和装置、及び空気調和装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 45/00 20060101AFI20241218BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
F25B45/00 D
F25B1/00 331E
F25B45/00 C
F25B1/00 101D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096980
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】領家 宏
(72)【発明者】
【氏名】石川 聡士
(57)【要約】
【課題】冷媒の充填量の精度を向上できる空気調和装置、及び空気調和装置の制御方法を提供する。
【解決手段】室内機と、圧縮機、室外熱交換器、過冷却熱交換器、前記室外熱交換器より下流を流れる冷媒の温度を検出する第1温度センサ、前記圧縮機から吐出された冷媒の圧力を検出する第1圧力センサ、及び冷媒ボンベを接続可能な冷媒充填ポートを備える室外機と、制御装置とを備え、前記制御装置は、前記第1圧力センサの検出値から推定される冷媒の飽和温度及び前記第1温度センサの検出値の差である過冷却度を算出し、充填を開始してからの経過時間に対する前記過冷却度の変化の割合を算出する演算部と、前記変化の割合が所定の第1閾値を上回る場合を第1条件とし、前記第1条件を満たしたか否かを判定する第1判定部と、前記第1条件を満たした場合、前記室外機を冷媒の充填を終了させるように動作させる動作制御部と、を備える、空気調和装置。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内機と、圧縮機、室外熱交換器、過冷却熱交換器、前記室外熱交換器より下流を流れる冷媒の温度を検出する第1温度センサ、前記圧縮機から吐出された冷媒の圧力を検出する第1圧力センサ、及び冷媒ボンベを接続可能な冷媒充填ポートを備える室外機と、制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記第1圧力センサの検出値から推定される冷媒の飽和温度及び前記第1温度センサの検出値の差である過冷却度を算出し、
充填を開始してからの経過時間に対する前記過冷却度の変化の割合を算出する演算部と、
前記変化の割合が所定の第1閾値を上回る場合を第1条件とし、前記第1条件を満たしたか否かを判定する第1判定部と、
前記第1条件を満たした場合、前記室外機を冷媒の充填を終了させるように動作させる動作制御部と、を備える、
空気調和装置。
【請求項2】
前記第1温度センサは、前記過冷却熱交換器と前記室内機との間に設けられる、
請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項3】
前記演算部は、
所定の第1期間を設定し、
前記第1期間内に複数回前記過冷却度を算出し、
1つの前記第1期間内において算出した複数の前記過冷却度の中央値を算出し、前記中央値を前記過冷却度の代表値である代表過冷却度とし、
前記変化の割合の算出において前記代表過冷却度と、前記代表過冷却度に対応した前記経過時間とを用いる、
請求項2に記載の空気調和装置。
【請求項4】
前記演算部は、
前回の前記第1期間から今回の前記第1期間までの時間差である第1レートを設定し、前記経過時間が大きくなるほど前記第1レートを小さくする、
請求項3に記載の空気調和装置。
【請求項5】
前記演算部は、
最新の前記第1期間における前記代表過冷却度及び前記代表過冷却度に対応する前記経過時間と、最新の1つ前の前記第1期間における前記代表過冷却度及び前記代表過冷却度に対応する前記経過時間とにおける前記変化の割合を算出する、
請求項4に記載の空気調和装置。
【請求項6】
前記室外機は、
前記室外熱交換器の下流に室外膨張弁を備え、
アキュムレータと、前記室外膨張弁と前記過冷却熱交換器との間に設けられる第1分岐点及び前記アキュムレータと前記室内機との間に設けられる合流点を接続するバイパス管とを備え、
前記バイパス管を流れる冷媒の温度を検出する第2温度センサと、
前記室内機から前記室外機に戻る冷媒の圧力を検出する第2圧力センサと、前記室内機から前記室外機に戻る冷媒の温度を検出する第3温度センサと、を備え、
前記演算部は、
前記第2圧力センサの検出値から推定される冷媒の飽和温度及び前記第2温度センサの検出値の差である第1過熱度を算出し、
前記第2圧力センサの検出値から推定される冷媒の飽和温度及び前記第3温度センサの検出値の差である第2過熱度を算出し、
前記第1過熱度と前記第2過熱度の比である過熱度比を算出し、
前記制御装置は、
前記過熱度比が所定の第2閾値を下回る場合を第2条件とし、前記第2条件を満たしたか否かを判定する第2判定部を備え、
前記動作制御部は、前記第1条件に加え、さらに第2条件を満たした場合、前記室外機を冷媒の充填を終了するように動作させる、
請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項7】
前記演算部は、
所定の第2期間を設定し、
前記第2期間内に複数回前記過熱度比を算出し、
1つの前記第2期間内において算出した複数の前記過熱度比の中央値を算出し、前記中央値を前記過熱度比の代表値である代表過熱度比とし、
前記第2条件は、前記代表過熱度比が所定の第2閾値を下回る場合である、
請求項6に記載の空気調和装置。
【請求項8】
前記演算部は、
前回の前記第2期間から今回の前記第2期間までの時間差である第2レートを設定し、前記経過時間が大きくなるほど前記第2レートを小さくする、
請求項7に記載の空気調和装置。
【請求項9】
前記バイパス管は、前記バイパス管に分岐し流れる冷媒の量を調整できるバイパス弁を備え、
前記動作制御部は、前記第2期間内において、前記バイパス弁を開状態とさせる、
請求項8に記載の空気調和装置。
【請求項10】
前記室外機は、前記過冷却熱交換器を通過した冷媒をインジェクションするインジェクション機構を有する前記圧縮機と、
前記過冷却熱交換器と前記圧縮機とを接続するインジェクション配管と、
前記過冷却熱交換器に供給される冷媒の圧力を調整する膨張弁とを備え、
前記インジェクション配管は第2分岐点で分岐する分岐配管を備え、
前記分岐配管は、閉状態でインジェクションをし、開状態でインジェクションをしないように切替可能なインジェクション切替弁、及び前記第2分岐点と前記インジェクション切替弁との間に前記冷媒充填ポートを備え、
前記動作制御部は、
前記インジェクション切替弁を開状態とすることで、前記冷媒ボンベから冷媒の供給を開始し、
前記インジェクション切替弁を閉状態とすることで、前記冷媒ボンベからの冷媒の供給を終了し、
前記膨張弁の開度を変更することで、冷媒の供給の速度を調整する、
請求項1から9のいずれかに記載の空気調和装置。
【請求項11】
前記制御装置は、前記過冷却度が所定の第3閾値を上回る場合を第3条件とし、前記第3条件を満たしたか否かを判定する第3判定部を備え、
前記動作制御部は、前記第1条件及び前記第2条件に加え、さらに前記第3条件を満たした場合、前記冷媒ボンベからの冷媒の供給を終了させる、
請求項1から9のいずれかに記載の空気調和装置。
【請求項12】
室内機と、圧縮機、室外熱交換器、過冷却熱交換器、前記室外熱交換器より下流を流れる冷媒の温度を検出する第1温度センサ、及び冷媒ボンベを接続可能な冷媒充填ポートを備える室外機とを備える空気調和装置の制御方法であって、
前記圧縮機から吐出された冷媒の圧力を検出する第1圧力センサの検出値から推定される冷媒の飽和温度及び前記第1温度センサの検出値の差である過冷却度を算出し、充填を開始してからの経過時間に対する前記過冷却度の変化の割合を算出し、前記変化の割合が所定の第1閾値を上回る場合を第1条件とし、前記第1条件を満たしたか否かを判定し、前記第1条件を満たした場合、前記室外機を冷媒の充填を終了させるように動作させる、空気調和装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気調和装置、及び空気調和装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、室内ユニットと室外ユニットを備えた空気調和装置に、冷媒を充填する技術を開示する。特許文献1は、過冷却度が所定の冷媒充填完了規定値に達しているか否かを冷媒の充填完了の1つの条件としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-116156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、冷媒の充填量の精度を向上できる空気調和装置、及び空気調和装置の制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示における空気調和装置は、室内機と、圧縮機、室外熱交換器、過冷却熱交換器、前記室外熱交換器より下流を流れる冷媒の温度を検出する第1温度センサ、前記圧縮機から吐出された冷媒の圧力を検出する第1圧力センサ、及び冷媒ボンベを接続可能な冷媒充填ポートを備える室外機と、制御装置とを備え、前記制御装置は、前記第1圧力センサの検出値から推定される冷媒の飽和温度及び前記第1温度センサの検出値の差である過冷却度を算出し、充填を開始してからの経過時間に対する前記過冷却度の変化の割合を算出する演算部と、前記変化の割合が所定の第1閾値を上回る場合を第1条件とし、前記第1条件を満たしたか否かを判定する第1判定部と、前記第1条件を満たした場合、前記室外機を冷媒の充填を終了させるように動作させる動作制御部と、を備える。
【0006】
また、本開示における空気調和装置の制御方法は、室内機と、圧縮機、室外熱交換器、過冷却熱交換器、前記室外熱交換器より下流を流れる冷媒の温度を検出する第1温度センサ、及び冷媒ボンベを接続可能な冷媒充填ポートを備える室外機とを備える空気調和装置の制御方法であって、前記圧縮機から吐出された冷媒の圧力を検出する第1圧力センサの検出値から推定される冷媒の飽和温度及び前記第1温度センサの検出値の差である過冷却度を算出し、充填を開始してからの経過時間に対する前記過冷却度の変化の割合を算出し、前記変化の割合が所定の第1閾値を上回る場合を第1条件とし、前記第1条件を満たしたか否かを判定し、前記第1条件を満たした場合、前記室外機を冷媒の充填を終了させるように動作させる。
【発明の効果】
【0007】
本開示における空気調和装置、及び空気調和装置の制御方法は、過冷却度の時間に対する変化を考慮して冷媒の充填を制御する。よって、冷媒の充填量の精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】空気調和装置の構成を示す図
図2】室外機及び室内機の制御系の要部を示すブロック図
図3】冷媒の充填量が不足している場合のPh線図
図4】冷媒の充填量が適正である場合のPh線図
図5】第1処理の動作を示すフローチャート
図6】第2処理の動作を示すフローチャート
図7】第3処理の動作を示すフローチャート
図8】過冷却度の時間変化を示すグラフ
図9】過熱度比の時間変化を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本開示の基礎となった知見等)
空気調和機が性能を満足するために必要とする冷媒を、不足している状態より自動制御を用いて充填し、必要十分な量を充填後に弁を閉塞し自動停止させる動作において、適正量の判断となる指標が規定冷媒充填速度[kg/s]における過冷却度の変化量という従来からの知見だけでは、精度が低下するという課題があった。よって、その課題を解決するために本開示の主題を構成するに至った。
そこで、本開示は、冷媒の充填量の精度を向上できる空気調和装置、及び空気調和装置の制御方法を提供する。
【0010】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明を省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0011】
(実施の形態1)
[1-1.構成]
[1-1-1.空気調和装置の構成]
実施の形態1について説明する。
図1は、空気調和装置1の構成を示す図である。
【0012】
空気調和装置1は、図1に示すように、室外機4と、室内機2とを備える。
室外機4は、圧縮機40、アキュムレータ41、四方弁42、室外熱交換器43、及び、過冷却熱交換器44を備える。
例えば、以下の説明では、冷房運転時における冷媒の流れに基づいて説明する。
【0013】
圧縮機40の吸引側には、圧縮機40に冷媒を供給するアキュムレータ41が配管77Bにより接続されている。
圧縮機40の吐出側には、四方弁42が配管75Aにより接続されている。四方弁42には、室外熱交換器43が配管75Bにより接続されている。室外熱交換器43は、ファンにより送られる空気と冷媒とが熱交換するように構成されている。また、配管75Aは、後述する高圧センサ61を備える。
【0014】
室外熱交換器43は二段となっている。室外熱交換器43と過冷却熱交換器44との間には、2つの室外膨張弁87U、87Dが設けられている。室外膨張弁87U、87Dは、室外熱交換器43から流れ出る冷媒の圧力等を調整する電磁弁である。
【0015】
室外膨張弁87U、87Dと室内機2とは配管78により接続されている。
配管78の過冷却熱交換器44より下流側には、配管78から分岐するインジェクション配管71が接続されている。インジェクション配管71は、過冷却熱交換器44を通り、圧縮機40のインジェクションポート85に接続されている。
これらインジェクション配管71及びインジェクションポート85によって、インジェクション機構が構成されている。
【0016】
また、後述するが、インジェクション配管71に設けられる、過冷却熱交換器44に供給される冷媒の圧力を調整する過冷却熱交換器用膨張弁82の開度を変更することで、冷媒の供給の速度を調整することができる。なお、過冷却熱交換器用膨張弁82は、膨張弁の一例に対応する。
【0017】
インジェクション配管71には、途中第1分岐点P1で分岐する配管72が接続されており、配管72は、アキュムレータ41の上流側に接続されている。配管72には、冷媒の上流側、すなわち過冷却熱交換器44側から見て順に逆止弁84、冷媒充填ポート83、及びインジェクション切替弁81が設けられている。
【0018】
インジェクション切替弁81は、閉状態でインジェクションをし、開状態でインジェクションをしないように切替可能である。すなわち、インジェクション切替弁81が閉状態の場合、過冷却熱交換器44を通過した冷媒はインジェクションポート85に流れ、インジェクション切替弁81が開状態の場合、過冷却熱交換器44を通過した冷媒はアキュムレータ41に流れる。
【0019】
冷媒充填ポート83は、室外機4の外部から接続される冷媒ボンベ5を接続可能である。冷媒ボンベ5は冷媒供給管5Aを備える。冷媒を空気調和装置1に充填する作業時に、冷媒供給管5Aは冷媒充填ポート83に接続される。
【0020】
冷媒充填ポート83は、減圧回路92を備える。減圧回路92は、充填される冷媒の圧力を減圧させる。
【0021】
配管78の、室外膨張弁87U、87Dと過冷却熱交換器44との間に第2分岐点P2が設けられる。室外機4は、第2分岐点P2から合流点P3を接続するバイパス管76を備える。バイパス管76には、第2分岐点P2から合流点P3に向かって順に、バイパス弁90、減圧回路91、第2温度センサ52が設けられている。
【0022】
室外膨張弁87U、87Dを通過した冷媒の一部は、バイパス弁90が開状態となるとバイパス管76にバイパスされる。
バイパスされる冷媒の主流に対する比率は、例えば3%である。バイパスされる冷媒の比率は、バイパス弁90の開度を調整することで調整できる。
【0023】
アキュムレータ41には、四方弁42が配管77Aにより接続されている。配管77Aは、合流点P3を備える。配管77Aは、後述する低圧センサ62と第3温度センサ53とを備える。
【0024】
高圧センサ61で検出する冷媒が通る領域、すなわち配管75Aと、低圧センサ62で検出する冷媒が通る領域、すなわち配管77Aとは定圧弁86により仕切られている。定圧弁86は、通常の冷凍サイクル運転時、または冷媒の充填時は冷媒を通さない。定圧弁86は、例えば低圧センサ62の検出値が異常に大きくなった、すなわち低圧センサ62付近が高圧雰囲気になった場合に圧力を逃がす安全弁として機能する。
【0025】
以下、室外機4が備える各センサについて説明する。
第1温度センサ51は、配管78の過冷却熱交換器44と室内機2の間に設けられる。第1温度センサ51は、配管78の温度を検出する。第1温度センサ51は、検出値を室外制御装置400に出力する。この検出値は、過冷却熱交換器44から室内機2に向かう冷媒の温度に対応する。
【0026】
第2温度センサ52は、バイパス管76に設けられ、バイパス管76を流れる冷媒の減圧後の温度を検出する。第2温度センサ52は、検出値を室外制御装置400に出力する。
【0027】
第3温度センサ53は、室内機2と合流点P3の間に設けられ、室内機2から室外機に戻り、アキュムレータ41に戻る冷媒の温度を検出する。具体的には、第3温度センサ53は、配管77Aに設けられる。第3温度センサ53は、検出値を室外制御装置400に出力する。この検出値は、室内機2から室外機4に戻る、戻り冷媒の温度に対応する。
【0028】
第4温度センサ54は、室外機4の冷凍サイクルの外部に設けられ、室外機4がある外の外気温を検出する。第4温度センサ54は、検出値を室外制御装置400に出力する。
【0029】
第5温度センサ55U及び第6温度センサ55Dは、室外熱交換器43が備える液管の上流に設けられ、室外熱交換器43の液管の温度を検出する。第1温度センサ51は、検出値を室外制御装置400に出力する。この検出値は、室外熱交換器43に流れこむ冷媒の温度に対応する。
【0030】
第7温度センサ56U及び第8温度センサ56Dは、室外熱交換器43が備える液管の下流に設けられ、室外熱交換器43の液管の温度を検出する。第1温度センサ51は、検出値を室外制御装置400に出力する。この検出値は、室外熱交換器43から流れ出る冷媒の温度に対応する。
【0031】
高圧センサ61は、配管75に設けられ、圧縮機40から吐出される冷媒の圧力を検出する。高圧センサ61は、検出値を室外制御装置400に出力する。高圧センサ61は、第1圧力センサの一例に対応する。
【0032】
低圧センサ62は、配管77Aに設けられ、室内機2からアキュムレータ41に向かって流れる冷媒の圧力を検出する。低圧センサ62は、検出値を室外制御装置400に出力する。低圧センサ62は、第2圧力センサの一例に対応する。
【0033】
室内機2は、室外機4と冷媒配管により接続されており、冷媒配管の上流側は仕切弁88、冷媒配管の下流側は仕切弁89により開閉自由に仕切られている。空気調和装置1は、室外機4により圧縮された冷媒を、室外機4と室内機2との間で流通させ、室内機2が設置された被調和室を室内機2により空調する。
【0034】
[1-1-2.制御系の構成]
図2は、室外機4及び室内機2の制御系の要部を示すブロック図である。
室外制御装置400は、室外機4の各部を制御する制御装置である。室外制御装置400は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)などのプロセッサである室外プロセッサ420と、室外メモリ410と、他の装置やセンサ類を接続するためのインターフェース回路とを備え、室外機4の各部を制御する。
【0035】
室外メモリ410は、プログラムやデータを記憶するメモリである。室外メモリ410は、室外制御プログラム410、室外プロセッサ420に処理されるデータ、検出器群が検出した検出値を記憶する。室外メモリ410は、不揮発性の記憶領域を有する。また、室外メモリ410は、揮発性の記憶領域を備え、室外プロセッサ420のワークエリアを構成してもよい。室外メモリ410は、例えばROMやRAMによって構成される。
室外プロセッサ420は、室外制御プログラム410を読み出して実行することにより、室外動作制御部421、室外通信制御部422、演算部423、第1判定部424、第2判定部425、及び第3判定部426として機能する。
なお、室外制御装置400は制御装置の一例に対応する。
【0036】
演算部423は、過冷却度を算出する期間である第1期間を設定する。第1期間の時間幅は一定とは限らず、例えば過冷却度を5回程度算出可能な期間である。
第1期間は、後述する第1レートの設定に基づき、冷媒の充填を開始してからの経過時間のうち繰り返し設定される。以降、冷媒の充填を開始してからの経過時間のことを、単に「経過時間」と表現して説明する。
また、演算部423は、最新の第1期間が経過したか否かを判定する。
【0037】
演算部423は、第1期間の間に高圧センサ61が検出した検出値から推定される飽和温度と、第1温度センサ51が検出した検出値とを取得する。
【0038】
さらに、演算部423は、高圧センサ61が検出した検出値から推定される飽和温度及び第1温度センサ51が検出した検出値の差である過冷却度を算出する。高圧センサ61が検出した検出値から推定される飽和温度は、空気調和装置1の各部における圧力損失を考慮に入れて演算部423により推定される。特に、室外熱交換器43と室外膨張弁87U、87Dとの間における冷媒の圧力損失が考慮される。
なお、演算部423による飽和温度の推定において、記憶部412が記憶する冷媒の圧力と飽和温度の関係のデータに基づいて算出してもよい。
【0039】
演算部423は、複数の過冷却度のうち、1つの第1期間内における中央値を算出する。さらに、演算部423は、該中央値を過冷却度の代表値とする。
【0040】
過冷却度の代表値は、代表過冷却度に対応する。演算部423は、1つの第1期間内において算出された過冷却度の数が偶数の場合、最初に算出された過冷却度を除き、過冷却度の中央値を算出する。代表過冷却度は実際に算出された過冷却度のうちの1つから選ばれるため、代表過冷却度とされた過冷却度を算出したときにおける経過時間が存在する。該経過時間は、代表過冷却度に対応した経過時間の一例に対応する。
【0041】
演算部423は、経過時間に対する過冷却度の変化の割合kを算出する。演算部423は、変化の割合kの算出において、代表過冷却度と、代表過冷却度に対応した経過時間とを用いる。
【0042】
具体的には、演算部423は、最新の第1期間における代表過冷却度及び代表過冷却度に対応する経過時間と、最新より1つ前の第1期間における代表過冷却度及び代表過冷却度に対応する経過時間とにおける変化の割合kを算出する。
【0043】
演算部423は、第1過熱度及び第2過熱度を算出する期間である第2期間を設定する。第2期間は一定とは限らず、第1過熱度及び第2過熱度を5回程度算出可能な期間である。第2期間は、後述する第2レートの設定に基づき、冷媒の充填を開始してからの経過時間のうち繰り返し設定される。
第2期間は、バイパス弁90が開状態である期間に対応する。
また、演算部423は、最新の第2期間が経過したか否かを判定する。
【0044】
演算部423は、第2期間の間に低圧センサ62が検出した検出値から推定される飽和温度と、第2温度センサ52が検出した検出値とを取得する。
【0045】
さらに、演算部423は、低圧センサ62が検出した検出値から推定される飽和温度及び第2温度センサ52が検出した検出値の差である第1過熱度を算出する。低圧センサ62が検出した検出値から推定される飽和温度は、空気調和装置1の各部における圧力損失基づいて演算部423により推定される。
【0046】
なお、演算部423による飽和温度の推定において、記憶部412が記憶する冷媒の圧力と飽和温度の関係のデータに基づいて算出してもよい。
【0047】
演算部423は、第2期間の間に低圧センサ62が検出した検出値から推定される飽和温度と、第3温度センサ53が検出した検出値とを取得する。
【0048】
さらに、演算部423は、低圧センサ62が検出した検出値から推定される飽和温度及び第3温度センサ53が検出した検出値の差に基づいた値である第2過熱度を算出する。演算部423により、低圧センサ62が検出した検出値から推定される飽和温度は、空気調和装置1の各部における圧力損失を基づいて算出される。
【0049】
なお、演算部423による飽和温度の推定において、記憶部412が記憶する冷媒の圧力と飽和温度の関係のデータに基づいて算出してもよい。
【0050】
第2期間において複数回算出される第1過熱度及び第2過熱度は、演算部423により略同じ経過時間に算出される。すなわち、演算部423は一つの経過時間に対して、第1過熱度と第2過熱度との2つの値を対応して算出する。
【0051】
演算部423は、第1過熱度と第2過熱度との比である過熱度比を算出する。過熱度比は、第1過熱度を第2過熱度で割ったものである。過熱度比は、略同じ経過時間に対応する第1過熱度と第2過熱度の比である。これにより、演算部423は、第2期間内に複数回過熱度比を算出する。過熱度比は、経過時間と1対1に対応する。
【0052】
演算部423は、演算部423が算出した複数の過熱度比のうち、1つの第2期間内における中央値を算出する。さらに、演算部423は、該中央値を過熱度比の代表値とする。過熱度比の代表値は、代表過熱度比に対応する。演算部423は、1つの第2期間内において算出された過熱度比の数が偶数の場合、最初に算出された過熱度比を除き、過熱度比の中央値を算出する。
【0053】
演算部423は、最新の第1期間から、次の第1期間までの時間差である第1レートを設定する。演算部423は、経過時間が大きくなるほど第1レートを小さくする。第1レートは、ある第1期間から次の第1期間までの時間差とも言える。
【0054】
演算部423は、最新の第2期間から、次の第2期間までの時間差である第2レートを設定する。演算部423は、経過時間が大きくなるほど第2レートを小さくする。第2レートは、ある第2期間から次の第2期間までの時間差とも言える。
【0055】
さらに、演算部423は、設定した最新の第1レートが経過したか否かを判定する。また、設定した最新の第2レートが経過したか否かを判定する。
【0056】
第1判定部424は、第1条件を満たしているかを判定する。第1条件は、変化の割合kが所定の第1閾値を上回ることである。
【0057】
第2判定部425は、第2条件を満たしているかを判定する。第2条件は、代表過熱度比が所定の第2閾値を下回ることである。
【0058】
第3判定部426は、第3条件を満たしているかを判定する。第3条件は、代表過冷却度が所定の第3閾値を上回ることである。第3閾値は、空気調和装置1が適正な冷媒の充填量を備えるときの過冷却度である。
室外制御装置400には、インジェクション切替弁81、過冷却熱交換器用膨張弁82、室外膨張弁87U、87D、四方弁42、圧縮機40、及びバイパス弁90が接続する。
室外動作制御部421は、インジェクション切替弁81、過冷却熱交換器用膨張弁82、室外膨張弁87U、87D、四方弁42、圧縮機40、及びバイパス弁90の動作を制御する。
なお、室外動作制御部421は動作制御部の一例に対応する。
また、室外制御装置400には、第1温度センサ51、第2温度センサ52、第3温度センサ53、高圧センサ61、及び、低圧センサ62が接続する。これらのセンサを総称して検出器群と呼称する場合がある。
また、室外通信制御部422は、室外制御装置400が有する情報を室外通信部401によって室内制御装置300に送信させる。
【0059】
室外動作制御部421は、室外機4の各部の動作を制御する。
【0060】
室外通信制御部422は、室外通信部401を介して室内制御装置300と通信する。
【0061】
次に室内機2の要部にかかる制御構成について説明する。
室内機2は、室内制御装置300、及び室内通信部301を備える。
【0062】
室内制御装置300は、室内機2の各部を制御する制御装置である。室内制御装置300は、CPUやMPUなどのプロセッサである室内プロセッサ320と、室内メモリ310と、他の装置やセンサ類を接続するためのインターフェース回路とを備え、室内機2の各部を制御する。
【0063】
室内メモリ310は、プログラムやデータを記憶するメモリである。室内メモリ310は、室内制御プログラム311、室内プロセッサ320に処理されるデータを記憶する。室内メモリ310は、不揮発性の記憶領域を有する。また、室内メモリ310は、揮発性の記憶領域を備え、室内プロセッサ320のワークエリアを構成してもよい。室内メモリ310は、例えばROMやRAMによって構成される。
【0064】
室内通信部301は、通信回路などの通信ハードウェアを備え、室内制御装置300の制御に従って室内制御装置400と通信する。室内通信部301の通信規格は、無線通信規格でも有線通信規格でもよい。
【0065】
室内プロセッサ320は、室内制御プログラム311を読み出して実行することにより、室内動作制御部321、及び室内通信制御部322として機能する。
室内通信制御部322は、室外通信部401を介して室内制御装置400と通信する。
【0066】
[1-1-3.Ph線図]
冷媒の充填量が不足している場合のPh線図を図3に示す。冷媒の充填量が適正である場合のPh線図を図4に示す。なお、図3及び図4に示すPh線図は冷媒の定性的な状態を示すものである。横軸は、冷媒の比エンタルピーであり、単位は、単位質量当たりのエネルギー[KJ/kg]である。縦軸は、冷媒の圧力であり、単位はメガパスカル[MPa]である。
【0067】
図3及び図4には、飽和液線及び飽和蒸気線501、等温線503、及び比容積線505を示す。なお、比容積は縦軸の下に行くほど、すなわち圧力が小さくなるほど、大きくなる。
【0068】
図1を参照して、バイパス弁90が開状態となったとき、状態N11にある冷媒がバイパス管を通じてα%だけ合流点P3まで流れる。バイパスされる冷媒は、例えば3%である。バイパス管76を流れる冷媒は、キャピラリーチューブ状に形成された減圧回路91を通して減圧され状態N12に至る。さらに、室内機2から戻ってきた戻り冷媒と、合流点P3において、バイパス管76を流れる冷媒は合流する。
【0069】
冷媒が不足していると、凝縮器としての室外熱交換器43の出口側において、状態N11から状態N12への減圧過程において二相領域での減圧となる。二相領域での減圧であるため、ガス成分を冷媒の充填量が不足していない場合よりも相対的に多く含み、流速が大きくなる傾向にあるため、状態N11と状態N12との圧力差が大きくなる傾向にある。
【0070】
減圧後のバイパスされた冷媒は、蒸発器の戻り冷媒の圧力以下であり、かつ比容積の大きなガス状態の冷媒として、状態N13にて戻り冷媒と合流する。
【0071】
状態N14は、戻り冷媒とバイパスされた冷媒が合流した後の状態を示す。このようにバイパスされた冷媒は比容積の大きい状態であるため、配管77Aから流れてきた戻り冷媒に対して与える影響は相対的に小さい。
【0072】
一方、冷媒の充填量が適正である場合、凝縮器としての室外熱交換器43の出口側において、十分な過冷却度に達している。このため、図4を参照して、状態N21から状態N22への減圧過程において、液相領域での減圧が主となるので、冷媒の充填量が不足している場合よりもガス成分が相対的に少なく、流速が小さくなる傾向にある。そのため、状態N21と状態N22との圧力差が、状態N11と状態N12との圧力差に比べて小さくなる傾向にある。
【0073】
減圧後のバイパスされた冷媒は、戻り冷媒によりも比容積が小さな湿り蒸気として、状態N23にて戻り冷媒と合流する。状態N24は、合流前の戻り冷媒の状態を示す。状態N24に示すように、戻り冷媒はバイパスされた状態N23の冷媒よりも比容積が大きい。
【0074】
状態N25は、合流後の冷媒の状態を示す。図4に示すように、冷媒の充填量が適正であるときは、戻り冷媒に対してバイパスされた冷媒が合流した際の状態の変化が大きい。
【0075】
そのため、合流前の冷媒の過熱度、すなわち本開示の第2過熱度の、バイパスされた冷媒の過熱度、すなわち本開示の第1過熱度に対する比が大きくなる。このため、配管77Aから流れてきた冷媒に対して与える影響は相対的に大きくなる。このようにして、代表過熱度比が第2閾値を下回ったときに、充填した冷媒量が適切かどうかを判断できる。過冷却度が第3閾値にほぼ達している場合、過熱度比は第2閾値にほぼ達している傾向にある。
【0076】
[1-2.動作等]
[1-2-1.第1処理]
図5は、第1処理の動作を示すフローチャートである。
第1処理は、過冷却度に関わる処理であり、冷媒の充填が開始してから、後述する第2処理及び第3処理と並行して実行される。
【0077】
演算部423は、第1期間を設定する(ステップS1)。第1期間は、過冷却度の過渡特性を考慮した上で適切に定められている。
【0078】
演算部423は、複数回過冷却度を算出する(ステップS2)。過冷却度の算出回数は、過冷却度の過渡特性を考慮した上で適切に定められている。
【0079】
演算部423は、第1期間が経過したか否かを判定する(ステップS3)。演算部423が、第1期間が経過していないと判定した場合(ステップS3:NO)、再度、ステップS3の処理を実行する。
【0080】
演算部423が、第1期間が経過したと判定した場合(ステップS3:YES)、演算部423はさらに、代表過冷却度を算出し(ステップS4)、最初の第1レートを設定する(ステップS5)。
【0081】
ステップS1からステップS5は、冷媒の充填を開始してから最初の1つめの代表過冷却度が算出される処理を示している。
【0082】
ついで、演算部423は、次の第1期間を設定する(ステップS10)。次の第1期間とは、終了した第1期間のうち最も新しい第1期間よりも1つ後の第1期間のことである。次の第1期間は、過冷却度の過渡特性を考慮した上で適切に定められている。
【0083】
演算部423は、第1レートが経過したか否かを判定する(ステップS11)。ステップS11において、演算部423は最新の第1レートにより判定する。
演算部423が、第1レートが経過していないと判定した場合(ステップS11:NO)、再度、ステップS11の処理を実行する。
【0084】
演算部423が、第1レートが経過したと判定した場合(ステップS11:YES)、演算部423はさらに、複数回、過冷却度を算出する(ステップS12)。演算部423による過冷却度の算出回数は、過冷却度の過渡特性を考慮した上で適切に定められている。
【0085】
演算部423は、第1期間が経過したか否かを判定する(ステップS13)。ステップS13において、演算部423は最新の第1期間により判定する。
演算部423が、第1期間が経過していないと判定した場合(ステップS13:NO)、再度、ステップS13の処理を実行する。
【0086】
演算部423が、第1期間が経過したと判定した場合(ステップS13:YES)、演算部423はさらに、代表過冷却度を算出する(ステップS14)。
【0087】
ついで、演算部423は、変化の割合kを算出する(ステップS15)。
【0088】
演算部423は、第1レートを設定する(ステップS16)。第1レートの時間幅は、過去の第1レートよりも短くなるように設定される。
【0089】
また、過冷却度の時間に対する変化は一次変化ではない。さらに、冷媒の充填を開始してから時間が経てば経つほど、過冷却度の時間に対する変化の割合が大きくなる。そのため、第1レートは時間が経過するほど短く設定するほうが、冷媒の充填量の精度できる。
【0090】
第1判定部424は、第1条件を満たしたか否かを判定する(ステップS17)。
第3判定部426は、第3条件を満たしたか否かを判定する(ステップS18)。
ステップS18の終了後、室外プロセッサ420は処理をステップS10に移行させる。
【0091】
[1-2-2.第2処理]
図6は、第2処理の動作を示すフローチャートである。
第2処理は、過熱度比に関わる処理であり、冷媒の充填が開始してから、第1処理及び第3処理と並行して実行される。第2処理は、演算部423が最初の第2レートを設定したことを前提として実行される。
【0092】
演算部423は、次の第2期間を設定する(ステップS20)。次の第2期間とは、終了した第2期間のうち最も新しい第2期間よりも1つ後の第1期間のことである。また、終了した第2期間がない場合、次の第2期間は1つめの第2期間である。
第2期間は、第1過熱度及び第2過熱度の過渡特性を考慮した上で適切に定められている。
【0093】
ついで、演算部423は、第2レートが経過したか否かを判定する(ステップS21)。演算部423が、第2レートが経過していないと判定した場合(ステップS21:NO)、再度、ステップS21の処理を実行する。
【0094】
演算部423が、第2レートが経過したと判定した場合(ステップS21:YES)、室外動作制御部421は、インジェクション切替弁81を閉状態とさせ(ステップS22)、バイパス弁90を開状態とさせる(ステップS23)。インジェクション切替弁81が閉状態となることで、合流点P3において室内機2から流れてくる戻り冷媒と、バイパスされた冷媒との状態を、冷媒ボンベ5からの冷媒を混合させずに検出器群により検出することができる。
【0095】
演算部423は、複数回第1過熱度を算出し、複数回第2過熱度を算出し、複数回過熱度比を算出する(ステップS24)。
【0096】
略同じ経過時間に、1つの第1過熱度と、1つの第2過熱度とが算出され、これら2つの値の比として過熱度比が算出される。算出回数は、第1過熱度及び第2過熱度の過渡特性を考慮した上で適切に定められている。
【0097】
演算部423は、第2期間が経過したか否かを判定する(ステップS25)。演算部423が、第2期間が経過していないと判定した場合(ステップS25:NO)、再度、ステップS25の処理を実行する。
【0098】
演算部423が、第2期間が経過したと判定した場合(ステップS25:YES)、室外動作制御部421は、インジェクション切替弁81を開状態とさせ(ステップS26)、バイパス弁90を閉状態とさせる(ステップS27)。
【0099】
ついで、演算部423は、代表過熱度比を算出する(ステップS28)。
【0100】
演算部423は、次の第2期間までの時間差である第2レートを設定する(ステップS29)。第2レートの時間幅は、過去の第2レートよりも短くなるように設定される。過熱度比の時間に対する変化は一次変化ではない。また、冷媒の充填を開始してから時間が経てば経つほど、時間に対する変化の割合が大きくなる。そのため、第2レートは時間が経過するほど短く設定するほうが、冷媒の充填量の精度を向上できる。
【0101】
第2判定部425は、第2条件を満たしたか否かを判定する(ステップS30)。
【0102】
[1-2-3.第3処理]
図7は、第3処理の動作を示すフローチャートである。
【0103】
室外動作制御部421は、第1条件、第2条件、及び第3条件が満たされたか否かを判定する(ステップS40)。すなわち、室外動作制御部421は、第1判定部424が第1条件を満たしたと判定し、第2判定部425が第2条件を満たしたと判定し、かつ第3判定部426が第3条件を満たしたと判定したか否かを判定する。
【0104】
室外動作制御部421が、第1条件、第2条件、及び第3条件が満たされていないと判定した場合(ステップS40:NO)、再度、ステップS40の処理を実行する。
【0105】
室外動作制御部421が、第1条件、第2条件、及び第3条件が満たされたと判定した場合(ステップS40:YES)、室外動作制御部421は、インジェクション切替弁81を閉状態とさせる(ステップS41)。
【0106】
ついで、室外制御装置400は、第1処理及び第2処理を停止する(ステップS42)。ステップS42で、冷媒の充填を終了する。
【0107】
なお、第3処理のステップS40は、第1条件のみで判定してもよく、第1条件及び第3条件のみで判定してもよい。
【0108】
[1-2-4.過冷却度及び過熱度比の時間変化]
次に、過冷却度の時間変化及び過熱度比の時間変化の例を示し、動作を説明する。
図8は、過冷却度の時間変化を示すグラフである。
グラフの横軸は、冷媒の充填を開始してからの経過時間であり、単位は秒[s]である。
グラフの縦軸は、過冷却度であり、単位はケルビン[K]である。
【0109】
時間TA1が経過すると、演算部423は、演算部423が設定した第1期間SA1の間に複数回過冷却度を算出する。プロット群DA1は、時間TA1から時間TA2の間、すなわち1つめの第1期間SA1の間に算出された過冷却度のプロットである。
【0110】
第1期間SA1が経過した後、演算部423は、プロット群DA1の中の中央値MA1を1つめの第1期間SA1における代表過冷却度とする。ついで、演算部423は、次の第1期間SA2までの時間である第1レートHA1を設定する。図8においては、1つめの第1レートHA1は時間TA1から時間TA3までの時間幅である。
【0111】
時間TA3から時間TA4までの第1期間SA2においても、1つめの第1期間SA1と同様に、演算部423は複数回過冷却度を算出し、プロット群DA2を得る。ついで、第1期間SA2が経過した後、演算部423は、代表過冷却度MA2を算出する。
【0112】
さらに、第1期間SA2が経過すると、演算部423は、代表過冷却度MA2と、1つ前の代表過冷却度MA1とにおける変化の割合k1を算出する。2つめ以降の第1期間SA3、SA4、SA5、SA6、SA7、SA8においても、1つめの第1期間SA2と同様に、変化の割合kは演算部423により算出される。
【0113】
図8に示すように、過冷却度の時間変化は線形ではなく、多次曲線的、あるいは指数関数的である。そのため、経過時間が大きくなるほど第1レートを短く設定することで、過冷却度の時間変化の割合が大きい部分では、短い時間幅における変化の割合kを算出できる。これにより、冷媒の充填量の精度を向上させることができる。
【0114】
二点鎖線511は、第3閾値を示す。図8のように過冷却度が時間変化した場合、7つめの第1期間SA7において、代表過冷却度MA7は第3条件を満たす。第3条件を満たしていても、例えば変化の割合k6が第1閾値を上回っていない場合や、代表過熱度比が第2閾値を下回っていない場合、演算部423は過冷却度の算出を継続する。
【0115】
変化の割合kの第1閾値は、過冷却度の時間変化が目標の過冷却度である第3閾値に至るような状態であるかどうかという観点、及び、冷媒の充填量の精度の向上の観点から、事前のシミュレーションやテストなどの結果に基づいて適切に設定される。
【0116】
図9は、過熱度比の時間変化を示すグラフである。
グラフの横軸は、冷媒の充填を開始してからの経過時間であり、単位は秒[s]である。
グラフの縦軸は、過熱度比であり、無次元である。
【0117】
時間TB1が経過すると、演算部423は、演算部423が設定した1つめの第2期間SB1の間に複数回過熱度比を算出する。プロット群DB1は、時間TB1から時間TB2の間、すなわち1つめの第2期間SB1の間に算出された過熱度比のプロットである。
【0118】
第2期間SBが終了すると、演算部423は、プロット群DB1の中の中央値MB1を1つめの第2期間SB1における代表過熱度比とする。ついで、演算部423は、次の第2期間SB2までの時間である第2レートHB1を設定する。図9においては、1つめの第2レートHB1は時間TB2から時間TB3までの時間幅である。
【0119】
時間TB3から時間TB4までの第2期間SB2においても、1つめの第2期間SB1と同様に、演算部423は複数回過熱度比を算出し、プロット群DB2を得る。ついで、演算部423は、代表過熱度比として中央値MB2を算出する。
【0120】
図9では、代表過冷却度MB7が第2閾値512以下である様子を示している。図9のように過熱度比が時間変化した場合、7つめの第2期間SB7の経過後に、第2条件を満たす。
【0121】
図8及び図9に示すように、過冷却度と過熱度比とは過渡特性を有するため、適正な冷媒量の判定において、期間ごとに得られる代表値を採用することで、冷媒の充填量の精度を向上できる。
【0122】
また、破線で示す冷媒充填量513は、線形に増加するものではなく、各場所の圧力の条件や、図1に示すインジェクション切替弁81の開閉状態に影響されつつ増加する。特に、第2期間の間はバイパス弁90が開状態となり、インジェクション切替弁81は閉状態となるため、冷媒充填量513の増加が停滞する傾向にある。
【0123】
なお、過冷却度、第1過熱度、第2過熱度、過熱度比などに基づいて、室外動作制御部421は、過冷却熱交換器用膨張弁82の開度を調整してもよい。過冷却熱交換器用膨張弁82が開状態となると、過冷却熱交換器44から流れる冷媒が、冷媒ボンベ5から供給される冷媒と合流する。過冷却熱交換器用膨張弁82よりも上流側は、インジェクション切替弁81付近よりも圧力が高いため、過冷却熱交換器用膨張弁82を開状態とすると、冷媒の供給の速度を小さくする方へ調整できる。過冷却熱交換器用膨張弁82は室外動作制御部421により開度を変更可能であるため、適切な冷媒の供給の速度となるように、開度を制御してもよい。
【0124】
[1-3.効果等]
以上説明したように、空気調和装置1は、室内機2と、圧縮機40、室外熱交換器43、過冷却熱交換器44、室外熱交換器43より下流を流れる冷媒の温度を検出する第1温度センサ51、圧縮機40から吐出された冷媒の圧力を検出する高圧センサ61、及び冷媒ボンベ5を接続可能な冷媒充填ポート83を備える室外機4と、室外制御装置400とを備え、室外制御装置400は、高圧センサ61の検出値から推定される冷媒の飽和温度及び第1温度センサ51の検出値の差である過冷却度を算出し、充填を開始してからの経過時間に対する過冷却度の変化の割合kを算出する演算部423と、変化の割合kが所定の第1閾値を上回る場合を第1条件とし、第1条件を満たしたか否かを判定する第1判定部424と、第1条件を満たした場合、室外機4を冷媒の充填を終了させるように動作させる室外動作制御部421と、を備える。
【0125】
これによれば、過冷却度の時間に対する変化を考慮して冷媒の充填を制御しているため、冷媒の充填量の精度が向上する。
【0126】
また、第1温度センサ51は、過冷却熱交換器44と室内機2との間に設けられていてもよい。
【0127】
これによれば、適正な位置の冷媒の検出値を用いて過冷却度が算出できる。
【0128】
また、演算部423は、所定の第1期間を設定し第1期間内に複数回過冷却度を算出し、1つの第1期間内において算出した複数の過冷却度の中央値を算出し、中央値を過冷却度の代表値である代表過冷却度とし、変化の割合kの算出において代表過冷却度と、代表過冷却度に対応した経過時間とを用いてもよい。
【0129】
これによれば、過冷却度の中央値を用いることで、過冷却度の過渡特性を考慮して冷媒の充填を制御しているため、冷媒の充填量の精度が向上する。
【0130】
また、演算部423は、前回の第1期間から今回の第1期間までの時間差である第1レートを設定し、経過時間が大きくなるほど第1レートを小さくしてもよい。
【0131】
これによれば、過冷却度の時間の対する変化率は、経過時間が大きくなればなるほど大きくなるため、より冷媒の充填量の精度が向上する。
【0132】
また、演算部423は、最新の第1期間における代表過冷却度及び代表過冷却度に対応する経過時間と、最新の1つ前の第1期間における代表過冷却度及び代表過冷却度に対応する経過時間とにおける変化の割合kを算出してもよい。
【0133】
過冷却度の時間に対する変化を考慮して冷媒の充填を制御しているため、冷媒の充填量の精度が向上する。
【0134】
また、室外機4は、室外熱交換器43の下流に室外膨張弁87U、87Dを備え、アキュムレータ41と、室外膨張弁87U、87Dと過冷却熱交換器44との間に設けられる第1分岐点P1及びアキュムレータ41と室内機2との間に設けられる合流点P3を接続するバイパス管76を備え、バイパス管76を流れる冷媒の温度を検出する第2温度センサ52と、室内機2から室外機4に戻る冷媒の圧力を検出する低圧センサ62と、室内機2から室外機4に戻る冷媒の温度を検出する第3温度センサ53と、を備え、演算部423は、低圧センサ62の検出値から推定される冷媒の飽和温度及び第2温度センサ52の検出値の差である第1過熱度を算出し、低圧センサ62の検出値から推定される冷媒の飽和温度及び第3温度センサ53の検出値の差である第2過熱度を算出し、第1過熱度と第2過熱度との比である過熱度比を算出し、室外制御装置400は、過熱度比が所定の第2閾値を下回る場合を第2条件とし、前記第2条件を満たしたか否かを判定する第2判定部425を備え、室外動作制御部421は、第1条件に加え、さらに第2条件を満たした場合、室外機4を冷媒の充填を終了するように動作させてもよい。
【0135】
これによれば、バイパスされた高圧雰囲気の冷媒と、低圧雰囲気の冷媒との状態を検出するため、冷媒の充填の精度が向上する。また、例えばレシーバなどの高圧雰囲気の冷媒を受容する容器を使用せずに適正な冷媒の充填量を判定するため、室外機4を小型化できる。
【0136】
また、演算部423は、所定の第2期間を設定し、第2期間内に複数回前記過熱度比を算出し、1つの第2期間内において算出した複数の過熱度比の中央値を算出し、中央値を過熱度比の代表値である代表過熱度比とし、第2条件は、代表過熱度比が所定の第2閾値を下回る場合であってもよい。
【0137】
これによれば、過熱度比の中央値を判定に用いることで、過熱度比の過渡特性を考慮して冷媒の充填を制御しているため、適切な冷媒の充填量の精度が向上する。
【0138】
また、演算部423は、前回の第2期間から今回の第2期間までの時間差である第2レートを設定し、経過時間が大きくなるほど第2レートを小さくしてもよい。
【0139】
これによれば、過冷却度の時間の対する変化率は、経過時間が大きくなればなるほど大きくなるため、より冷媒の充填量の精度が向上する。
【0140】
また、バイパス管76は、バイパス管76に分岐し流れる冷媒の量を調整できるバイパス弁90を備え、室外動作制御部421は、第2期間内において、バイパス弁90を開状態とさせてもよい。
【0141】
これによれば、バイパス弁90によりバイパスする冷媒の量を調整できるため、過熱度比の算出において適切な量の冷媒をバイパスできる。
【0142】
また、室外機4は、過冷却熱交換器44を通過した冷媒をインジェクションするインジェクション機構を有する圧縮機40と、過冷却熱交換器44と圧縮機40とを接続するインジェクション配管71と、過冷却熱交換器44に供給される冷媒の圧力を調整する過冷却熱交換器用膨張弁82を備え、インジェクション配管71は第2分岐点P2で分岐する配管72を備え、配管72は、閉状態でインジェクションをし、開状態でインジェクションをしないように切替可能なインジェクション切替弁81、及び第2分岐点P2とインジェクション切替弁81との間に冷媒充填ポート83を備え、室外動作制御部421は、インジェクション切替弁81を開状態とすることで、冷媒ボンベ5から冷媒の供給を開始し、インジェクション切替弁81を閉状態とすることで、冷媒ボンベ5からの冷媒の供給を終了し、過冷却熱交換器用膨張弁82の開度を変更することで、冷媒の供給の速度を調整してもよい。
【0143】
これによれば、専用の調整弁を用いることなく、冷媒の速度の調整をすることができる。
【0144】
また、室外制御装置400は、過冷却度が所定の第3閾値を上回る場合を第3条件とし、第3条件を満たしたか否かを判定する第3判定部426を備え、室外動作制御部421は、第1条件及び第2条件に加え、さらに第3条件を満たした場合、冷媒ボンベ5からの冷媒の供給を終了させてもよい。
【0145】
これによれば、過冷却度の時間変化の傾向、及び過熱度比の値に加えて、過冷却度の値を考慮にいれて冷媒の充填を制御するため、冷媒の充填量の精度が向上する。
【0146】
室内機2と、圧縮機40、室外熱交換器43、過冷却熱交換器44、室外熱交換器43より下流を流れる冷媒の温度を検出する第1温度センサ51、及び冷媒ボンベ5を接続可能な冷媒充填ポート83を備える室外機4とを備える空気調和装置1の制御方法であって、圧縮機40から吐出された冷媒の圧力を検出する高圧センサ61の検出値から推定される冷媒の飽和温度及び第1温度センサ51の検出値の差である過冷却度を算出し、充填を開始してからの経過時間に対する過冷却度の変化の割合kを算出し、変化の割合kが所定の第1閾値を上回る場合を第1条件とし、第1条件を満たしたか否かを判定し、第1条件を満たした場合、室外機4を冷媒の充填を終了させるように動作させる、空気調和装置1の制御方法。
【0147】
これによれば、過冷却度の時間に対する変化を考慮して冷媒の充填を制御しているため、冷媒の充填量の精度が向上する。
【0148】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する例示として、上記実施の形態1を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。また、上記実施の形態1で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0149】
上記実施の形態1では、演算部423が代表過冷却度の経過時間に対する変化の割合kを算出する構成である。他の実施形態では、演算部423が代表過冷却度と経過時間とを用いて、近似式を算出してもよい。さらに、演算部423が算出した近似式上の点における変化の割合を算出してもよい。
【0150】
上記実施の形態1では、演算部423が第1期間及び第2期間を設定する構成である。他の実施形態では期間設定部を備え、期間設定部が1つの所定期間を設定し、第1期間及び第2期間が所定期間に対応する構成であってもよい。この場合、同じ経過時間における第1期間と第2期間の時間幅は等しい。さらに、上記実施の形態1では、演算部423が第1レート及び第2レートを設定する構成である。他の実施の形態では、演算部423がレートを設定し、第1レート及び第2レートがレートに対応する構成であってもよい。この場合、同じ経過時間における第1レート及び第2レートの時間幅は等しい。
【0151】
室外プロセッサ420、及び室内プロセッサ320は、単一のプロセッサにより構成されてもよいし、複数のプロセッサにより構成されていてもよい。これらプロセッサは、対応する機能部を実現するようプログラムされたハードウェアでもよい。すなわち、これらプロセッサは、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)で構成されてもよい。
【0152】
図2に示した室外機4、室外制御装置400、室内制御装置300、及び室内機2の構成は一例であって、具体的な実装形態は特に限定されない。つまり、必ずしも各部に個別に対応するハードウェアが実装される必要はなく、一つのプロセッサがプログラムを実行することで各部の機能を実現する構成とすることも可能である。また、上述した実施の形態においてソフトウェアで実現される機能の一部をハードウェアとしてもよく、或いは、ハードウェアで実現される機能の一部をソフトウェアで実現してもよい。
【0153】
室外制御装置400が備える演算部423、第1判定部424、第2判定部425、及び第3判定部426のうち少なくとも1つは、室内制御装置300が備えてもよい。また、室内動作制御部321が室外動作制御部421として機能してもよい。
【0154】
図5図6、及び図7に示す動作のステップ単位は、動作の理解を容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものであり、処理単位の分割の仕方や名称によって、動作が限定されることはない。処理内容に応じて、さらに多くのステップ単位に分割してもよい。また、1つのステップ単位がさらに多くの処理を含むように分割してもよい。また、そのステップの順番は、本開示の趣旨に支障のない範囲で適宜に入れ替えてもよい。
【0155】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【0156】
(付記)
以上の実施の形態の記載により、下記の技術が開示される。
【0157】
(技術1)室内機と、圧縮機、室外熱交換器、過冷却熱交換器、前記室外熱交換器より下流を流れる冷媒の温度を検出する第1温度センサ、前記圧縮機から吐出された冷媒の圧力を検出する第1圧力センサ、及び冷媒ボンベを接続可能な冷媒充填ポートを備える室外機と、制御装置とを備え、前記制御装置は、前記第1圧力センサの検出値から推定される冷媒の飽和温度及び前記第1温度センサの検出値の差である過冷却度を算出し、充填を開始してからの経過時間に対する前記過冷却度の変化の割合を算出する演算部と、前記変化の割合が所定の第1閾値を上回る場合を第1条件とし、前記第1条件を満たしたか否かを判定する第1判定部と、前記第1条件を満たした場合、前記室外機を冷媒の充填を終了させるように動作させる動作制御部と、を備える、空気調和装置。
これによれば、過冷却度の時間に対する変化を考慮して冷媒の充填を制御しているため、冷媒の充填量の精度が向上する。
【0158】
(技術2)前記第1温度センサは、前記過冷却熱交換器と前記室内機との間に設けられる、技術1に記載の空気調和装置。
これによれば、適正な位置の冷媒の検出値を用いて過冷却度が算出できる。
【0159】
(技術3)前記演算部は、所定の第1期間を設定し、前記第1期間内に複数回前記過冷却度を算出し、1つの前記第1期間内において算出した複数の前記過冷却度の中央値を算出し、前記中央値を前記過冷却度の代表値である代表過冷却度とし、前記変化の割合の算出において前記代表過冷却度と、前記代表過冷却度に対応した前記経過時間とを用いる、技術2に記載の空気調和装置。
これによれば、過冷却度の中央値を用いることで、過冷却度の過渡特性を考慮して冷媒の充填を制御しているため、冷媒の充填量の精度が向上する。
【0160】
(技術4)前記演算部は、前回の前記第1期間から今回の前記第1期間までの時間差である第1レートを設定し、前記経過時間が大きくなるほど前記第1レートを小さくする、技術3に記載の空気調和装置。
これによれば、過冷却度の時間の対する変化率は、経過時間が大きくなればなるほど大きくなるため、より冷媒の充填量の精度が向上する。
【0161】
(技術5)前記演算部は、最新の前記第1期間における前記代表過冷却度及び前記代表過冷却度に対応する前記経過時間と、最新の1つ前の前記第1期間における前記代表過冷却度及び前記代表過冷却度に対応する前記経過時間とにおける前記変化の割合を算出する、技術4に記載の空気調和装置。
過冷却度の時間に対する変化を考慮して冷媒の充填を制御しているため、冷媒の充填量の精度が向上する。
【0162】
(技術6)前記室外機は、前記室外熱交換器の下流に室外膨張弁を備え、アキュムレータと、前記室外膨張弁と前記過冷却熱交換器との間に設けられる第1分岐点及び前記アキュムレータと前記室内機との間に設けられる合流点を接続するバイパス管とを備え、前記バイパス管を流れる冷媒の温度を検出する第2温度センサと、前記室内機から前記室外機に戻る冷媒の圧力を検出する第2圧力センサと、前記室内機から前記室外機に戻る冷媒の温度を検出する第3温度センサと、を備え、前記演算部は、前記第2圧力センサの検出値から推定される冷媒の飽和温度及び前記第2温度センサの検出値の差である第1過熱度を算出し、前記第2圧力センサの検出値から推定される冷媒の飽和温度及び前記第3温度センサの検出値の差である第2過熱度を算出し、前記第1過熱度と前記第2過熱度の比である過熱度比を算出し、前記制御装置は、前記過熱度比が所定の第2閾値を下回る場合を第2条件とし、前記第2条件を満たしたか否かを判定する第2判定部を備え、前記動作制御部は、前記第1条件に加え、さらに第2条件を満たした場合、前記室外機を冷媒の充填を終了するように動作させる、技術1に記載の空気調和装置。
これによれば、バイパスされた高圧雰囲気の冷媒と、低圧雰囲気の冷媒との状態を検出するため、冷媒の充填の精度が向上する。また、例えばレシーバなどの高圧雰囲気の冷媒を受容する容器を使用せずに適正な冷媒の充填量を判定するため、室外機を小型化できる。
【0163】
(技術7)前記演算部は、所定の第2期間を設定し、前記第2期間内に複数回前記過熱度比を算出し、1つの前記第2期間内において算出した複数の前記過熱度比の中央値を算出し、前記中央値を前記過熱度比の代表値である代表過熱度比とし、前記第2条件は、前記代表過熱度比が所定の第2閾値を下回る場合である、技術6に記載の空気調和装置。
これによれば、過熱度比の中央値を判定に用いることで、過熱度比の過渡特性を考慮して冷媒の充填を制御しているため、適切な冷媒の充填量の精度が向上する。
【0164】
(技術8)前記演算部は、前回の前記第2期間から今回の前記第2期間までの時間差である第2レートを設定し、前記経過時間が大きくなるほど前記第2レートを小さくする、技術7に記載の空気調和装置。
これによれば、過冷却度の時間の対する変化率は、経過時間が大きくなればなるほど大きくなるため、より冷媒の充填量の精度が向上する。
【0165】
(技術9)前記バイパス管は、前記バイパス管に分岐し流れる冷媒の量を調整できるバイパス弁を備え、前記動作制御部は、前記第2期間内において、前記バイパス弁を開状態とさせる、技術8に記載の空気調和装置。
これによれば、バイパス弁によりバイパスする冷媒の量を調整できるため、過熱度比の算出において適切な量の冷媒をバイパスできる。
【0166】
(技術10)前記室外機は、前記過冷却熱交換器を通過した冷媒をインジェクションするインジェクション機構を有する前記圧縮機と、前記過冷却熱交換器と前記圧縮機とを接続するインジェクション配管と、前記過冷却熱交換器に供給される冷媒の圧力を調整する膨張弁とを備え、前記インジェクション配管は第2分岐点で分岐する分岐配管を備え、前記分岐配管は、閉状態でインジェクションをし、開状態でインジェクションをしないように切替可能なインジェクション切替弁、及び前記第2分岐点と前記インジェクション切替弁との間に前記冷媒充填ポートを備え、前記動作制御部は、前記インジェクション切替弁を開状態とすることで、前記冷媒ボンベから冷媒の供給を開始し、前記インジェクション切替弁を閉状態とすることで、前記冷媒ボンベからの冷媒の供給を終了し、前記膨張弁の開度を変更することで、冷媒の供給の速度を調整する、技術1から9のいずれかに記載の空気調和装置。
これによれば、専用の調整弁を用いることなく、冷媒の速度の調整をすることができる。
【0167】
(技術11)前記制御装置は、前記過冷却度が所定の第3閾値を上回る場合を第3条件とし、前記第3条件を満たしたか否かを判定する第3判定部を備え、前記動作制御部は、前記第1条件及び前記第2条件に加え、さらに前記第3条件を満たした場合、前記冷媒ボンベからの冷媒の供給を終了させる、技術1から9のいずれかに記載の空気調和装置。
これによれば、過冷却度の時間変化の傾向、及び過熱度比の値に加えて、過冷却度の値を考慮にいれて冷媒の充填を制御するため、冷媒の充填量の精度が向上する。
【0168】
(技術12)室内機と、圧縮機、室外熱交換器、過冷却熱交換器、前記室外熱交換器より下流を流れる冷媒の温度を検出する第1温度センサ、及び冷媒ボンベを接続可能な冷媒充填ポートを備える室外機とを備える空気調和装置の制御方法であって、前記圧縮機から吐出された冷媒の圧力を検出する第1圧力センサの検出値から推定される冷媒の飽和温度及び前記第1温度センサの検出値の差である過冷却度を算出し、充填を開始してからの経過時間に対する前記過冷却度の変化の割合を算出し、前記変化の割合が所定の第1閾値を上回る場合を第1条件とし、前記第1条件を満たしたか否かを判定し、前記第1条件を満たした場合、前記室外機を冷媒の充填を終了させるように動作させる、空気調和装置の制御方法。
これによれば、技術1と同様の作用及び効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0169】
以上のように、本発明に係る空気調和装置、及び空気調和装置の制御方法は、設置施工時に冷媒の充填を行う用途に利用可能である。
【符号の説明】
【0170】
1 空気調和装置
2 室内機
4 室外機
5 冷媒ボンベ
40 圧縮機
41 アキュムレータ
43 室外熱交換器
44 過冷却熱交換器
51 第1温度センサ
52 第2温度センサ
53 第3温度センサ
61 高圧センサ(第1圧力センサ)
62 低圧センサ(第2圧力センサ)
71 インジェクション配管
76 バイパス管
81 インジェクション切替弁
82 過冷却熱交換器用膨張弁(膨張弁)
83 冷媒充填ポート
85 インジェクションポート
90 バイパス弁
400 室外制御装置(制御装置)
421 室外動作制御部(動作制御部)
423 演算部
424 第1判定部
425 第2判定部
426 第3判定部
P1 第1分岐点
P2 第2分岐点
P3 合流点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9