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特開2024-178671位相特性校正装置および位相特性校正方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178671
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】位相特性校正装置および位相特性校正方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 23/173 20060101AFI20241218BHJP
   G01J 9/04 20060101ALI20241218BHJP
   G01J 11/00 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
G01R23/173 D
G01J9/04
G01J11/00
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096989
(22)【出願日】2023-06-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 広豊
(72)【発明者】
【氏名】森 隆
【テーマコード(参考)】
2G065
【Fターム(参考)】
2G065AA12
2G065AB03
2G065AB09
2G065AB16
2G065BA09
2G065BB14
2G065BB27
2G065BB39
2G065BB49
2G065BC04
2G065BC22
2G065BC28
2G065CA27
2G065DA01
2G065DA13
(57)【要約】
【課題】干渉計にCW光源が不要で費用対効果の高い位相特性校正装置を提供する。
【解決手段】電気光学サンプリング法を用いて校正用のマルチトーン信号の位相を測定する。干渉計110で、可変遅延器4が含まれる第1光路と可変遅延器が含まれない第2光路とに短パルス光が入力され、第1光路から出力される短パルス光と第2光路から出力される短パルス光とを干渉させ、干渉光として出力する。受光器106で、干渉光の強度を検出し干渉信号として出力し、分周器107で干渉信号を分周する。電気光学サンプリング部30等により得られたマルチトーン信号を分周器の出力に従ってサンプリングして、マルチトーン信号を補正する。干渉計には、干渉光が得られるように、第1光路から出力される短パルス光および第2光路から出力される短パルス光の少なくとも一方のパルス幅を拡大する光BPF108が含まれる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の繰返し周波数のパルス光を発生するパルス光源(2)と、
前記パルス光を分岐する光分岐器(3)と、
周波数の異なる3波以上の中間周波信号を合波し、基準信号で変調したマルチトーン中間周波信号を出力するマルチトーン中間周波信号発生部(10,17)を備え、所定の周波数の局発信号と周波数変換部(21)とにより前記マルチトーン中間周波信号をアップコンバートして校正用信号を生成する校正用信号生成部(20)と、
前記光分岐器から出力される前記パルス光の一方が入力され、前記校正用信号に含まれるアップコンバートされた前記各中間周波信号の周波数が前記パルス光の繰返し周波数の整数倍になるように、前記3波以上の中間周波信号および前記局発信号の周波数を制御する同期処理部(5)と、
前記光分岐器から出力される前記パルス光の他方が入力され、該パルス光に従って前記校正用信号をサンプリングして電気信号として出力する電気光学サンプリング部(30)と、
前記光分岐器から出力される前記パルス光の一方または他方が入力され、前記電気光学サンプリング部に入力される前記パルス光と前記校正用信号との相対的時間差を変える可変遅延器(4)と、
前記相対的時間差を変えながら前記電気信号を取得し、前記基準信号と同一周波数の正弦波で前記電気信号を変調することにより、前記電気信号に含まれる前記3波以上の中間周波信号に対応するマルチトーン信号を検出するロックイン検出部(40)と、
前記可変遅延器が含まれる第1の光路と前記可変遅延器が含まれない第2の光路とにCW光が入力され、前記第1の光路から出力される前記CW光と前記第2の光路から出力される前記CW光とを合波して干渉させ、干渉光として出力する干渉計(110)と、
前記干渉光の強度を検出する受光器(106)と、
前記受光器から出力される干渉信号の周波数を分周する分周器(107)と、
前記ロックイン検出部から出力される前記マルチトーン信号を前記分周器の出力に従ってサンプリングして、補正済マルチトーン信号として出力するマルチトーン信号サンプリング部(120;120A)と、
前記補正済マルチトーン信号に含まれる前記3波以上の中間周波信号に対応する3波以上のトーン信号間の位相差を検出するマルチトーン位相差測定部(50)と、
前記トーン信号間の位相差から信号測定部(70)のダウンコンバータ(72,73)の位相の周波数特性を補正する位相補正値を算出する位相補正値算出部(55)と、
を備え、被測定信号をダウンコンバートして測定する前記信号測定部の前記ダウンコンバータの位相の周波数特性を校正する位相特性校正装置(1;1A)において、
前記可変遅延器に入力される前記パルス光を前記CW光の代わりに用い、前記干渉計は、前記第1の光路から出力された前記パルス光と前記第2の光路から出力された前記パルス光とが干渉するように、前記第1の光路から出力される前記パルス光および前記第2の光路から出力される前記パルス光の少なくとも一方のパルス幅を拡大する光バンドパスフィルタ(108)が含まれることを特徴とする位相特性校正装置。
【請求項2】
所定の繰返し周波数のパルス光を発生するパルス光源(2)と、
前記パルス光を分岐する光分岐器(3)と、
周波数の異なる3波以上の中間周波信号を、前記中間周波信号と同一個数の互いに直交した基準信号でそれぞれ変調し合波したマルチトーン中間周波信号を出力するマルチトーン中間周波信号発生部(10B)を備え、所定の周波数の局発信号と周波数変換部(21)とにより前記マルチトーン中間周波信号をアップコンバートして校正用信号を生成する校正用信号生成部(20B)と、
前記光分岐器から出力される前記パルス光の一方が入力され、前記校正用信号に含まれるアップコンバートされた前記各中間周波信号の周波数が前記パルス光の繰返し周波数の整数倍になるように、前記3波以上の中間周波信号および前記局発信号の周波数を制御する同期処理部(5)と、
前記光分岐器から出力される前記パルス光の他方が入力され、該パルス光に従って前記校正用信号をサンプリングして電気信号として出力する電気光学サンプリング部(30)と、
前記光分岐器から出力される前記パルス光の一方または他方が入力され、前記電気光学サンプリング部に入力される前記パルス光と前記校正用信号との相対的時間差を変える可変遅延器(4)と、
前記相対的時間差を変えながら前記電気信号を取得し、前記各基準信号と同一周波数の互いに直交した正弦波でそれぞれ前記電気信号を変調することにより、前記電気信号に含まれる前記3波以上の中間周波信号に対応するトーン信号を分離するマルチトーン信号分離部(40B)と、
前記可変遅延器が含まれる第1の光路と前記可変遅延器が含まれない第2の光路とにCW光が入力され、前記第1の光路から出力される前記CW光と前記第2の光路から出力される前記CW光とを合波して干渉させ、干渉光として出力する干渉計(110)と、
前記干渉光の強度を検出する受光器(106)と、
前記受光器から出力される干渉信号の周波数を分周する分周器(107)と、
前記マルチトーン信号分離部から出力される前記各トーン信号を前記分周器の出力に従ってそれぞれサンプリングして、補正済トーン信号として出力するマルチトーン信号サンプリング部(120B;120C)と、
前記補正済トーン信号間の位相差を検出するマルチトーン位相差測定部(50B)と、
前記補正済トーン信号間の位相差から信号測定部(70)のダウンコンバータ(72,73)の位相の周波数特性を補正する位相補正値を算出する位相補正値算出部(55)と、
を備え、被測定信号をダウンコンバートして測定する前記信号測定部の前記ダウンコンバータの位相の周波数特性を校正する位相特性校正装置(1B;1C)において、
前記可変遅延器に入力される前記パルス光を前記CW光の代わりに用い、前記干渉計は、前記第1の光路から出力された前記パルス光と前記第2の光路から出力された前記パルス光とが干渉するように、前記第1の光路から出力される前記パルス光および前記第2の光路から出力される前記パルス光の少なくとも一方のパルス幅を拡大する光バンドパスフィルタ(108)が含まれることを特徴とする位相特性校正装置。
【請求項3】
所定の繰返し周波数のパルス光を発生するパルス光源(2)と、
前記パルス光を分岐する光分岐器(3)と、
周波数の異なる3波以上の中間周波信号を合波し、基準信号で変調したマルチトーン中間周波信号を出力するマルチトーン中間周波信号発生部(10,17)と、
を備え、測定用中間周波信号をアップコンバートして測定用信号として出力する信号発生部(80)が、所定の周波数の局発信号を用い前記マルチトーン中間周波信号を前記信号発生部のアップコンバータ(84)でアップコンバートして校正用信号を生成し、
前記光分岐器から出力される前記パルス光の一方が入力され、前記校正用信号に含まれるアップコンバートされた前記各中間周波信号の周波数が前記パルス光の繰返し周波数の整数倍になるように、前記3波以上の中間周波信号および前記局発信号の周波数を制御する同期処理部(5)と、
前記光分岐器から出力される前記パルス光の他方が入力され、該パルス光に従って前記校正用信号をサンプリングして電気信号として出力する電気光学サンプリング部(30)と、
前記光分岐器から出力される前記パルス光の一方または他方が入力され、前記電気光学サンプリング部に入力される前記パルス光と前記校正用信号との相対的時間差を変える可変遅延器(4)と、
前記相対的時間差を変えながら前記電気信号を取得し、前記基準信号と同一周波数の正弦波で前記電気信号を変調することにより、前記電気信号に含まれる前記3波以上の中間周波信号に対応するマルチトーン信号を検出するロックイン検出部(40)と、
前記可変遅延器が含まれる第1の光路と前記可変遅延器が含まれない第2の光路とにCW光が入力され、前記第1の光路から出力される前記CW光と前記第2の光路から出力される前記CW光とを合波して干渉させ、干渉光として出力する干渉計(110)と、
前記干渉光の強度を検出する受光器(106)と、
前記受光器から出力される干渉信号の周波数を分周する分周器(107)と、
前記ロックイン検出部から出力される前記マルチトーン信号を前記分周器の出力に従ってサンプリングして、補正済マルチトーン信号として出力するマルチトーン信号サンプリング部(120;120A)と、
前記補正済マルチトーン信号に含まれる前記3波以上の中間周波信号に対応する3波以上のトーン信号間の位相差を検出するマルチトーン位相差測定部(50)と、
前記トーン信号間の位相差から前記信号発生部の前記アップコンバータの位相の周波数特性を補正する位相補正値を算出する位相補正値算出部(55)と、
を備える位相特性校正装置(1D;1F)において、
前記可変遅延器に入力される前記パルス光を前記CW光の代わりに用い、前記干渉計は、前記第1の光路から出力された前記パルス光と前記第2の光路から出力された前記パルス光とが干渉するように、前記第1の光路から出力される前記パルス光および前記第2の光路から出力される前記パルス光の少なくとも一方のパルス幅を拡大する光バンドパスフィルタ(108)が含まれることを特徴とする位相特性校正装置。
【請求項4】
所定の繰返し周波数のパルス光を発生するパルス光源(2)と、
前記パルス光を分岐する光分岐器(3)と、
周波数の異なる3波以上の中間周波信号を、前記中間周波信号と同一個数の互いに直交した基準信号でそれぞれ変調し合波したマルチトーン中間周波信号を出力するマルチトーン中間周波信号発生部(10B)と、
を備え、測定用中間周波信号をアップコンバートして測定用信号として出力する信号発生部(80)が、所定の周波数の局発信号を用い前記マルチトーン中間周波信号を前記信号発生部のアップコンバータ(84)でアップコンバートして校正用信号を生成し、
前記光分岐器から出力される前記パルス光の一方が入力され、前記校正用信号に含まれるアップコンバートされた前記各中間周波信号の周波数が前記パルス光の繰返し周波数の整数倍になるように、前記3波以上の中間周波信号および前記局発信号の周波数を制御する同期処理部(5)と、
前記光分岐器から出力される前記パルス光の他方が入力され、該パルス光に従って前記校正用信号をサンプリングして電気信号として出力する電気光学サンプリング部(30)と、
前記光分岐器から出力される前記パルス光の一方または他方が入力され、前記電気光学サンプリング部に入力される前記パルス光と前記校正用信号との相対的時間差を変える可変遅延器(4)と、
前記相対的時間差を変えながら前記電気信号を取得し、前記各基準信号と同一周波数の互いに直交した正弦波でそれぞれ前記電気信号を変調することにより、前記電気信号に含まれる前記3波以上の中間周波信号に対応するトーン信号を分離するマルチトーン信号分離部(40B)と、
前記可変遅延器が含まれる第1の光路と前記可変遅延器が含まれない第2の光路とにCW光が入力され、前記第1の光路から出力される前記CW光と前記第2の光路から出力される前記CW光とを合波して干渉させ、干渉光として出力する干渉計(110)と、
前記干渉光の強度を検出する受光器(106)と、
前記受光器から出力される干渉信号の周波数を分周する分周器(107)と、
前記マルチトーン信号分離部から出力される前記各トーン信号を前記分周器の出力に従ってそれぞれサンプリングして、補正済トーン信号として出力するマルチトーン信号サンプリング部(120B;120C)と、
前記補正済トーン信号間の位相差を検出するマルチトーン位相差測定部(50B)と、
前記補正済トーン信号間の位相差から前記信号発生部の前記アップコンバータの位相の周波数特性を補正する位相補正値を算出する位相補正値算出部(55)と、
を備える位相特性校正装置(1E;1G)において、
前記可変遅延器に入力される前記パルス光を前記CW光の代わりに用い、前記干渉計は、前記第1の光路から出力された前記パルス光と前記第2の光路から出力された前記パルス光とが干渉するように、前記第1の光路から出力される前記パルス光および前記第2の光路から出力される前記パルス光の少なくとも一方のパルス幅を拡大する光バンドパスフィルタ(108)が含まれることを特徴とする位相特性校正装置。
【請求項5】
前記光バンドパスフィルタは、前記第1の光路および前記第2の光路の少なくとも一方、または前記第1の光路から出力される前記パルス光と前記第2の光路から出力される前記パルス光とを合波する合波部と前記受光器との間に設けられている、請求項1~4のいずれか一項に記載の位相特性校正装置。
【請求項6】
前記光バンドパスフィルタは、前記パルス光のスペクトル幅を制限し、前記パルス光の複数の線スペクトル成分を通過させることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の位相特性校正装置。
【請求項7】
前記光バンドパスフィルタは、自由スペクトル領域(FSR)が前記パルス光のスペクトル幅より狭い第1のエタロン(108a)と、自由スペクトル領域(FSR)が前記パルス光のスペクトル幅より狭く、かつ前記第1のエタロンとは自由スペクトル領域(FSR)が異なる第2のエタロン(108b)とを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の位相特性校正装置。
【請求項8】
前記光バンドパスフィルタは、自由スペクトル領域(FSR)が前記パルス光のスペクトル幅より狭いエタロン(108c)と、前記エタロンの自由スペクトル領域(FSR)の2倍より狭い通過域をもつ波長フィルタ(108d)とを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の位相特性校正装置。
【請求項9】
前記干渉計は、
前記第1の光路と前記第2の光路との分岐部に設けられ、前記パルス光源より出力された前記パルス光を第1のパルス光と第2のパルス光とに分波し、前記第1のパルス光を前記第1の光路に向けて出力し、前記第2のパルス光を前記第2の光路に向けて出力する第1の光分波器(103)と、
前記第1の光路に前記可変遅延器を挟んで前記第1の光分波器側とは反対側に設けられ、前記可変遅延器を通った前記第1のパルス光を入力し、入力された前記第1のパルス光を第3のパルス光と第4のパルス光とに分波し、前記第3のパルス光を前記第1の光路に出力する第2の光分波器(104)と、
前記第1の光路と前記第2の光路との合流部に設けられ、前記第1の光分波器により分波された前記第2のパルス光と、前記第2の光分波器により分波された前記第3のパルス光とを合波して第5のパルス光を生成する光合波器(105)と、
前記光合波器と前記受光器との間に設けられ、前記第5のパルス光が入力され前記干渉光を生成する前記光バンドパスフィルタと、
を備え、
前記光バンドパスフィルタが、前記第1の光路から出力された前記パルス光および前記第2の光路から出力された前記パルス光の両方のパルス幅を拡大することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の位相特性校正装置。
【請求項10】
前記干渉計は、
前記第1の光路と前記第2の光路との分岐部に設けられ、前記パルス光源より出力された前記パルス光を第1のパルス光と第2のパルス光とに分波し、前記第1のパルス光を前記第1の光路に向けて出力し、前記第2のパルス光を前記第2の光路に向けて出力する第1の光分波器(103)と、
前記第1の光路と前記第2の光路との合流部に設けられ、前記可変遅延器を通った前記第1のパルス光と、前記第1の光分波器により分波された前記第2のパルス光とを入力し、入力された前記第1のパルス光と前記第2のパルス光とを合波して第3のパルス光と第4のパルス光とを生成する光合分波器(105A)と、
前記光合分波器と前記受光器との間に設けられ、前記第3のパルス光が入力され前記干渉光を生成する前記光バンドパスフィルタと、
を備え、
前記光バンドパスフィルタが、前記第1の光路から出力された前記パルス光および前記第2の光路から出力された前記パルス光の両方のパルス幅を拡大することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の位相特性校正装置。
【請求項11】
前記干渉計は、
前記第1の光路と前記第2の光路との分岐部に設けられ、前記パルス光源より出力された前記パルス光を第1のパルス光と第2のパルス光とに分波し、前記第1のパルス光を前記第1の光路に向けて出力し、前記第2のパルス光を前記第2の光路に向けて出力する第1の光分波器(103)と、
前記第1の光路に前記可変遅延器を挟んで前記第1の光分波器側とは反対側に設けられ、前記可変遅延器を通った前記第1のパルス光を入力し、入力された前記第1のパルス光を第3のパルス光と第4のパルス光とに分波し、前記第3のパルス光を前記第1の光路に出力する第2の光分波器(104)と、
前記第1の光路に前記第2の光分波器を挟んで前記可変遅延器側とは反対側、または前記第2の光路に設けられた前記光バンドパスフィルタと、
前記第1の光路と前記第2の光路との合流部に設けられ、前記第1の光路および前記第2の光路の一方に設けられた前記光バンドパスフィルタより出力された第5のパルス光と、前記第1の光路および前記第2の光路の他方より出力された第6のパルス光とを合波して前記干渉光を生成する光合波器(105)と、
を備え、
前記光バンドパスフィルタが、前記第1の光路から出力される前記パルス光および前記第2の光路から出力される前記パルス光のいずれか一方のパルス幅を拡大することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の位相特性校正装置。
【請求項12】
前記干渉計は、
前記第1の光路と前記第2の光路との分岐部に設けられ、前記パルス光源より出力された前記パルス光を第1のパルス光と第2のパルス光とに分波し、前記第1のパルス光を前記第1の光路に向けて出力し、前記第2のパルス光を前記第2の光路に向けて出力する第1の光分波器(103)と、
前記第1の光路に前記可変遅延器を挟んで前記第1の光分波器側とは反対側に設けられ、前記可変遅延器を通った前記第1のパルス光を入力し、入力された前記第1のパルス光を第3のパルス光と第4のパルス光とに分波し、前記第3のパルス光を前記第1の光路に出力する第2の光分波器(104)と、
前記第1の光路に前記第2の光分波器を挟んで前記可変遅延器側とは反対側に設けられ、前記第3のパルス光が入力され、第5のパルス光を出力する第1の光バンドパスフィルタ(108A)と、
前記第2の光路に設けられ、前記第2のパルス光が入力され、第6のパルス光を出力する第2の光バンドパスフィルタ(108B)と、
前記第1の光路と前記第2の光路との合流部に設けられ、前記第1の光バンドパスフィルタより出力された前記第5のパルス光と、前記第2の光バンドパスフィルタより出力された前記第6のパルス光とを合波して前記干渉光を生成する光合波器(105)と、
を備え、
前記光バンドパスフィルタが、前記第1の光バンドパスフィルタ(108A)と前記第2の光バンドパスフィルタ(108B)とを含み、前記第1の光バンドパスフィルタが、前記第1の光路から出力される前記パルス光のパルス幅を拡大し、前記第2の光バンドパスフィルタが、前記第2の光路から出力される前記パルス光のパルス幅を拡大することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の位相特性校正装置。
【請求項13】
前記光合波器は、前記第5のパルス光と前記第6のパルス光とを合波し前記干渉光として第1の干渉光と第2の干渉光とを生成する光合分波器(105B)であり、前記受光器は、前記第1の干渉光と前記第2の干渉光とを入力し干渉光の強度を差動検出する差動受光器(106A)である、請求項11に記載の位相特性校正装置。
【請求項14】
前記光合波器は、前記第5のパルス光と前記第6のパルス光とを合波し前記干渉光として第1の干渉光と第2の干渉光とを生成する光合分波器(105B)であり、前記受光器は、前記第1の干渉光と前記第2の干渉光とを入力し干渉光の強度を差動検出する差動受光器(106A)である、請求項12に記載の位相特性校正装置。
【請求項15】
所定の繰返し周波数のパルス光を光分岐器(3)で分岐し、
周波数の異なる3波以上の中間周波信号を合波し、基準信号で変調したマルチトーン中間周波信号を出力し、所定の周波数の局発信号と周波数変換部(21)とを用い前記マルチトーン中間周波信号をアップコンバートして校正用信号を生成し、
前記光分岐器から出力される前記パルス光の一方を用いて前記校正用信号に含まれるアップコンバートされた前記各中間周波信号の周波数が、前記パルス光の繰返し周波数の整数倍になるように、前記3波以上の中間周波信号および前記局発信号の周波数を制御し、
前記光分岐器から出力される前記パルス光の他方を用いて電気光学効果により前記校正用信号をサンプリングして電気信号として出力し、
前記光分岐器から出力される前記パルス光の一方または他方が入力される可変遅延器により、前記校正用信号のサンプリングに用いられる該パルス光と前記校正用信号との相対的時間差を変えながら前記電気信号を取得し、
前記基準信号と同一周波数の正弦波で前記電気信号を変調することにより、前記電気信号に含まれる前記3波以上の中間周波信号に対応するマルチトーン信号を検出し、
前記可変遅延器が含まれる第1の光路と前記可変遅延器が含まれない第2の光路とにCW光を入力し、前記第1の光路から出力される前記CW光と前記第2の光路から出力される前記CW光とを干渉させ、干渉光として出力し、前記干渉光の強度を干渉信号として検出し、前記干渉信号の周波数を分周して得られた信号に従って、前記マルチトーン信号をサンプリングして、補正済マルチトーン信号として生成し、
前記補正済マルチトーン信号に含まれる前記3波以上の中間周波信号に対応する3波以上のトーン信号間の位相差を検出し、
前記トーン信号間の位相差から信号測定部(70)のダウンコンバータ(72,73)の位相の周波数特性を補正する位相補正値を算出する、
ことを含み、被測定信号をダウンコンバートして測定する前記信号測定部の前記ダウンコンバータの位相の周波数特性を校正する位相特性校正方法において、
前記可変遅延器に入力される前記パルス光を前記CW光の代わりに用い、前記第1の光路から出力された前記パルス光と前記第2の光路から出力された前記パルス光とが干渉するように、前記第1の光路から出力される前記パルス光および前記第2の光路から出力される前記パルス光の少なくとも一方のパルス幅を拡大する光バンドパスフィルタリングを行うことを特徴とする位相特性校正方法。
【請求項16】
所定の繰返し周波数のパルス光を光分岐器(3)で分岐し、
周波数の異なる3波以上の中間周波信号を合波し、基準信号で変調したマルチトーン中間周波信号を生成し、所定の周波数の局発信号を用い前記マルチトーン中間周波信号を信号発生部(80)のアップコンバータ(84)でアップコンバートして校正用信号を生成し、
前記光分岐器から出力される前記パルス光の一方を用いて前記校正用信号に含まれるアップコンバートされた前記各中間周波信号の周波数が前記パルス光の繰返し周波数の整数倍になるように、前記3波以上の中間周波信号および前記局発信号の周波数を制御し、
前記光分岐器から出力される前記パルス光の他方を用いて電気光学効果により前記校正用信号をサンプリングして電気信号として出力し、
前記光分岐器から出力される前記パルス光の一方または他方が入力される可変遅延器により、前記校正用信号のサンプリングに用いられる該パルス光と前記校正用信号との相対的時間差を変えながら前記電気信号を取得し、
前記基準信号と同一周波数の正弦波で前記電気信号を変調することにより、前記電気信号に含まれる前記3波以上の中間周波信号に対応するマルチトーン信号を検出し、
前記可変遅延器が含まれる第1の光路と前記可変遅延器が含まれない第2の光路とにCW光を入力し、前記第1の光路から出力される前記CW光と前記第2の光路から出力される前記CW光とを干渉させ、干渉光として出力し、前記干渉光の強度を干渉信号として検出し、前記干渉信号の周波数を分周して得られた信号に従って、前記マルチトーン信号をサンプリングして、補正済マルチトーン信号として生成し、
前記補正済マルチトーン信号に含まれる前記3波以上の中間周波信号に対応する3波以上のトーン信号間の位相差を検出し、
前記トーン信号間の位相差から前記信号発生部の前記アップコンバータの位相の周波数特性を補正する位相補正値を算出する、
ことを含み、測定用中間周波信号をアップコンバートして測定用信号として出力する前記信号発生部の前記アップコンバータの位相の周波数特性を校正する位相特性校正方法において、
前記可変遅延器に入力される前記パルス光を前記CW光の代わりに用い、前記第1の光路から出力された前記パルス光と前記第2の光路から出力された前記パルス光とが干渉するように、前記第1の光路から出力される前記パルス光および前記第2の光路から出力される前記パルス光の少なくとも一方のパルス幅を拡大する光バンドパスフィルタリングを行うことを特徴とする位相特性校正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相特性校正装置および位相特性校正方法に関するものであり、特に、ミリ波帯信号測定器やミリ波帯信号発生器の位相特性を校正する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信の伝送速度を向上させるために、従来よりもキャリア周波数が高いミリ波帯やサブミリ波帯やテラヘルツ波帯において広帯域の変調信号を使用する通信方式が検討されている。以下、ミリ波帯やサブミリ波帯やテラヘルツ波帯を総称してミリ波帯と記す。
【0003】
一般に、周波数が高く広帯域になると、ミリ波帯信号発生器やミリ波帯信号測定器の周波数変換部(アップコンバータまたはダウンコンバータ)の位相の周波数特性が無視できなくなるため、周波数変換部の位相特性を校正することが重要となる。また、周波数利用効率の高い多値直交振幅変調方式では、小さな位相誤差が伝送特性の劣化をもたらすため、正確に位相特性を校正することが求められている。
【0004】
通常、ミリ波帯受信器の性能を試験する試験装置は測定用信号を生成するためのミリ波帯信号発生器を備えており、ミリ波帯送信器の性能を試験する試験装置は被測定信号を測定するためのミリ波帯信号測定器を備えている。これらミリ波帯信号発生器とミリ波帯信号測定器とを接続して両者の周波数特性を一括して校正することは容易である。しかし、試験対象であるミリ波帯受信器を正確に評価するためには、ミリ波帯信号発生器のみの位相の周波数特性を校正し、位相誤差の少ない正確なミリ波帯変調信号(測定用信号)を発生してミリ波帯受信器に入力することが必要である。また、試験対象であるミリ波帯送信器を正確に評価するためには、ミリ波帯信号測定器のみの位相の周波数特性を校正し、ミリ波帯送信器から出力されるミリ波帯変調信号(被測定信号)を正確に測定することが必要である。
【0005】
ミリ波帯信号測定器やミリ波帯信号発生器の位相特性を校正するために、ミリ波帯の校正用信号を生成し、その位相の周波数特性を測定する手法として電気光学サンプリング法が挙げられる。
【0006】
図1は、校正用信号としての電気パルスの時間波形を測定する際に用いられる電気光学サンプリング法を説明するための概念図である。短パルス光源(不図示)から送出されたパルス光が分岐され、分岐された一方のパルス光がフォトダイオードなどのDUT(Device Under Test)201に入力され、他方のパルス光がサンプリングパルス光として光可変遅延器204を経て電気光学結晶などの電界検出器202に入力される。DUT201は、入力されたパルス光に応じてミリ波帯の電気パルスを出力し、この電気パルスが電界検出器202に入力される。電界検出器202は、電気光学効果に基づいてサンプリングパルス光に従って電気パルスの電界強度を検出する。そして、光可変遅延器204によりサンプリングパルス光の遅延量(遅延時間)を変化させることにより、ミリ波帯の電気パルスをサンプリングする時刻をずらしながら、電気パルスの電界強度を検出していく。このようにして、ミリ波帯の電気パルスの時間波形を測定することができる。
【0007】
図2(a)は、図1の信号のタイミングチャートである。図2(a)の上から1段目の図は、短パルス光源(不図示)から出力されたサンプリングパルス光を示し、これは繰返し周波数f(周期:1/f)のパルス光である。図2(a)2段目の図は、DUT201から出力された被測定信号である電気パルスを示し、これは繰返し周波数fの電気パルスである。図2(a)3段目の図は、光可変遅延器204から出力される信号を示し、これはサンプリングパルス光からΔtだけ遅延したサンプリングパルス光である。図2(a)4段目の図に示すように、電界検出器202により検出される電界は、電気パルスにおいて遅延サンプリングパルス光に対応する時刻(すなわち、サンプリングパルス光からΔt遅延した時刻)での電界である。
【0008】
図2(b)は、光可変遅延器204により遅延時間ΔtをΔt1,Δt2,...,Δtnと変えていくごとに電気パルスの電界を測定することにより、電気パルスの波形を測定する様子を示す図である。
【0009】
従来の位相特性校正装置では、ミリ波帯信号測定器やミリ波帯信号発生器の位相特性を校正するために、電気光学サンプリング法を用いたミリ波帯信号の時間波形測定により、校正用信号としてのミリ波帯トーン信号の位相を測定している(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
<第1の構成例>
図27は、従来の位相特性校正装置の第1の構成例を示す。従来の位相特性校正装置1000Aは、被測定信号を周波数変換(ダウンコンバート)して測定するミリ波帯信号測定部70のダウンコンバータ(周波数変換部72、中間周波信号変換部73)の位相特性を校正するものである。このために、位相特性校正装置1000Aは、短パルス光源2と、光分岐器3と、光可変遅延器4と、校正用信号生成部20と、同期処理部5と、電気光学サンプリング部30と、ロックイン検出部40と、3トーン位相差測定部50と、位相補正値算出部55とを備えている。以下、図27に示す各構成要素について説明する。
【0011】
短パルス光源2は、所定の繰返し周波数で短パルス光Pを出力する。短パルス光源2から出力された短パルス光Pは、光分岐器3で2つの短パルス光P、Pに分岐され、それぞれ光可変遅延器4と同期処理部5とに入力される。光可変遅延器4は、ミラー4aの位置を機械的に移動させることにより光の遅延時間を連続的に変えるものである。
【0012】
校正用信号生成部20は、3トーン中間周波信号発生部10と、基準信号変調部17と、周波数変換部21および局発信号発生部22とを備えている。3トーン中間周波信号発生部10は、中間周波信号発生器11a~11cと、加算器15とを備えており、中間周波信号発生器11a~11cにて、互いに異なる周波数の正弦波を所定の位相差で発生し、加算器15で3つの正弦波を加算して3トーン中間周波信号S10として出力する。
【0013】
基準信号変調部17は、基準同期信号発生器16と、基準信号発生器18と、変調器19とを備えている。スイッチSW11とSW12が図27下側に設定されている場合、基準信号発生器18は、基準同期信号発生器16からの基準同期信号S16に従って、3トーンの各正弦波のいずれよりも周波数の低い基準信号S18を発生する。変調器19は、3トーン中間周波信号S10を基準信号S18で変調し、変調された3トーン中間周波信号S19を周波数変換部21へ出力する。スイッチSW11とSW12が図27上側に設定されている場合は、変調器19はバイパスされ、3トーン中間周波信号S10は周波数変換部21に送られる。
【0014】
周波数変換部21は、局発信号発生部22からのCW(Continuous Wave)の局発信号S22で3トーン中間周波信号S19またはS10をミリ波帯の周波数に周波数変換(アップコンバート)し、校正用信号S20として出力する。
【0015】
同期処理部5は、3トーン中間周波信号S10と局発信号S22とを短パルス光源2の繰返し周波数に同期させることにより、短パルス光源2の繰返し周波数に同期したミリ波帯の校正用信号S20が得られるようにする。具体的には、同期処理部5は、局発信号発生部22から出力される局発信号S22の周波数および中間周波信号発生器11a~11cから出力される正弦波の各周波数が短パルス光源2の繰返し周波数の整数倍になるように、局発信号発生部22および中間周波信号発生器11a~11cを制御する。これにより、校正用信号S20の繰返し周波数が、短パルス光源2の繰返し周波数の整数倍となる。
【0016】
スイッチSW11、SW12を図27下側に、SW1、SW2を同図上側に設定すると、電気光学サンプリング部30を用いて校正用信号S20の位相差が測定される。
【0017】
電気光学サンプリング部30は、電気光学結晶31と、偏波分離部32と、受光器33とを備えている。校正用信号S20の電界が電気光学結晶31に印加されると共に、光可変遅延器4からの短パルス光Pが偏波分離部32を介して電気光学結晶31に入力され、電気光学結晶31の先端で反射した短パルス光が偏波分離部32を介して受光器33に入力される。電気光学結晶31に電界が印加されると電気光学効果によって電気光学結晶31からの反射光の偏波が変化し、偏波分離部32と受光器33によって反射光の偏波変化を検出するようになっている。受光器33から出力される電気信号S30は、電気光学結晶31に印加される電界に比例すると共に、短パルス光Pの光パワーにも比例する。電気光学サンプリング部30からの電気信号S30は、ロックイン検出部40に入力される。
【0018】
ロックイン検出部40は、基準信号発生器41と、移相器42と、変調器44と、低域通過フィルタ45とを備えている。基準信号発生器41は、基準同期信号発生器16からの基準同期信号S17に従って、基準同期信号S17と同じ周波数の正弦波である基準信号S41を発生する。移相器42は、変調器44において電気光学サンプリング部30でサンプリングされた校正用信号中の基準信号S18の位相と基準信号S41の位相とが一致するように、基準信号S41の位相を調整し、基準信号S42として出力する。変調器44は、電気光学サンプリング部30からの電気信号S30を基準信号S42で変調し、低域通過フィルタ45で低周波成分を抽出する。
【0019】
3トーン位相差測定部50は、位相検出部51a~51cと、位相差算出部52とを備えている。位相検出部51aは、電気光学サンプリング部30からの電気信号S30における3トーンのうちの第1トーンの位相を検出する。同様に、位相検出部51bおよび位相検出部51cは、それぞれ第2トーンおよび第3トーンの位相を検出する。位相差算出部52は、3トーンの各位相の2階微分を算出し、電気光学サンプリング部30を用いた位相差測定結果S50として出力する。具体的には、上記処理を校正用信号S20の3トーンの周波数を変えて繰返し、所定の周波数範囲にわたって位相の2階微分値を測定する。位相の2階微分を2階積分することにより、位相の周波数特性を得ることができる。電気光学サンプリング部30による位相差測定結果S50が位相差算出部52から出力される。
【0020】
スイッチSW11、SW12を図27上側に、スイッチSW1、SW2を同図下側に、スイッチSW3、SW4を同図上側に設定すると、ミリ波帯信号測定部70を用いて校正用信号S20の位相差が測定される。
【0021】
ミリ波帯信号測定部70は、局発信号発生部71と、周波数変換部72と、中間周波信号変換部73と、位相補正部74とを備えている。周波数変換部72は、局発信号発生部71からのCWの局発信号S71を用いて、ミリ波帯の校正用信号S20を中間周波信号に周波数変換(ダウンコンバート)する。局発信号S71は必ずしも短パルス光Pに同期させる必要は無いが、第1の構成例では、局発信号S71の周波数が短パルス光源2の繰返し周波数の整数倍になるように、同期処理部5から局発信号発生部71を制御するようになっている。中間周波信号変換部73は、第2中間周波信号に変換する周波数変換器等が含まれていてもよい。
【0022】
ミリ波帯信号測定部70の中間周波信号変換部73からの出力信号S70は、スイッチSW4およびスイッチSW2を介して3トーン位相差測定部50に入力され、電気光学サンプリング部30からの電気信号S30の位相差測定と同様に、位相検出部51a~51cにおいて3トーンの各位相が検出され、位相差算出部52において3トーンの各位相の2階微分が算出され、校正用信号S20の3トーンの周波数を変えて繰返し、位相の2階微分を2階積分することにより位相の周波数特性を得ることができ、ミリ波帯信号測定部70による位相差測定結果S50'が出力される。
【0023】
校正方法は次のとおりである。
まず、スイッチSW11とSW12を図27下側に、スイッチSW1とSW2を同図上側に設定する。校正用信号S20を電気光学サンプリング部30に入力して測定された校正用信号S20の位相差測定結果S50から、校正用信号S20の周波数特性が求まる。次いで、スイッチSW11とSW12を同図上側に、スイッチSW1とSW2を同図下側に、スイッチSW3とSW4を同図上側に設定する。校正用信号S20をミリ波帯信号測定部70に入力して周波数変換された出力信号S70の位相差測定結果S50'からミリ波帯信号測定部70の出力信号S70の周波数特性が求まる。そして、校正用信号S20の周波数特性と、ミリ波帯信号測定部70からの出力信号S70の周波数特性とからミリ波帯信号測定部70のダウンコンバータ(周波数変換部72、73)の周波数特性が求められる。位相補正値算出部55は、所定の周波数範囲にわたってダウンコンバータの周波数特性を算出し、ミリ波帯信号測定部70の位相補正部74に出力する。
【0024】
ミリ波帯信号送信部60から送信される被測定信号S60を測定するときは、スイッチSW3とSW4を図27下側に設定する。ミリ波帯信号送信部60は、中間周波信号発生部61で生成された中間周波信号を、局発信号発生部62と周波数変換部63とによりアップコンバートして被測定信号S60として出力する。被測定信号S60は、スイッチSW3を介してミリ波帯信号測定部70に入力され、周波数変換部72および中間周波信号変換部73でダウンコンバートされ出力信号S70'が位相補正部74に入力される。位相補正部74では、ミリ波帯信号測定部70のダウンコンバータの周波数特性で除算する(位相のみを補正する場合はミリ波帯信号測定部70の周波数変換部72、73の位相特性を減算する)ことにより、ミリ波帯信号測定部70の周波数変換部72、73の周波数特性が補正された測定結果を得ることができる。
【0025】
<第2の構成例>
図28は、従来の位相特性校正装置の第2の構成例を示す。従来の位相特性校正装置1000Bは、校正用信号として4トーン信号を用いてミリ波帯信号測定部70のダウンコンバータ(周波数変換部72、中間周波信号変換部73)の位相特性を校正するものである。このために、位相特性校正装置1000Bは、短パルス光源2と、光分岐器3と、光可変遅延器4と、校正用信号生成部20Bと、同期処理部5と、電気光学サンプリング部30と、マルチトーン信号分離部40Bと、マルチトーン位相差測定部50Bと、位相補正値算出部55とを備えている。第2の構成例に係る位相特性校正装置1000Bは、校正用信号生成部20B、マルチトーン信号分離部40B、およびマルチトーン位相差測定部50Bの構成が第1の構成例と異なっており、その他の構成は第1の構成例と同一であり、同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は適宜省略する。
【0026】
校正用信号生成部20Bは、マルチトーン中間周波信号発生・基準信号変調部10Bと、マルチトーン中間周波信号発生部25と、周波数変換部21および局発信号発生部22とを備えている。マルチトーン中間周波信号発生・基準信号変調部10Bは、中間周波信号発生器11a~11dと、基準信号発生器12a、12bと、90度移相器14a、14bと、変調器13a~13dと、加算器15と、基準同期信号発生器16とを備えている。
【0027】
中間周波信号発生器11a~11dは、互いに周波数が異なり所定の位相差をもった繰返し信号(例えば正弦波)である4トーンの中間周波信号S~Sを発生する。基準同期信号発生器16は、基準同期信号S16,S17を生成する。基準信号発生器12a、12bは、基準同期信号発生器16からの基準同期信号S16に同期し互いに周波数の異なる基準信号S,Sを出力する。90度移相器14a、14bは、基準信号S,Sと周波数が等しく位相が90度異なる直交基準信号S,Sを生成する。変調器13a~13dは、中間周波信号S~Sを基準信号S,Sまたは直交基準信号S,Sでそれぞれ変調し、加算器15で合波してマルチトーン中間周波信号S10を出力するようになっている。基準信号S,Sおよび直交基準信号S,Sは全ての組み合わせにおいて互いに直交している。
【0028】
マルチトーン中間周波信号発生部25は、中間周波信号発生器26a~26dと、加算器27とを備えている。中間周波信号発生器26a~26dは、互いに周波数が異なる繰返し信号(例えば正弦波)である4トーンの中間周波信号S11~S14を発生する。加算器27は、中間周波信号S11~S14を合波してマルチトーン中間周波信号S15を出力するようになっている。
【0029】
スイッチSW10とSW1が図28上側に設定されている場合、周波数変換部21は、局発信号発生部22からの局発信号S22を用いてマルチトーン中間周波信号S10をミリ波帯にアップコンバートして校正用信号S20として出力する。校正用信号S20は、スイッチSW1を介して電気光学サンプリング部30に送られる。また、スイッチSW10とSW1が同図下側に、スイッチSW3が同図上側に設定されている場合、周波数変換部21は、局発信号発生部22からの局発信号S22を用いて、マルチトーン中間周波信号発生部25からのマルチトーン中間周波信号S15をミリ波帯にアップコンバートして第2の校正用信号S21として出力する。第2の校正用信号S21は、スイッチSW1およびスイッチSW3を介してミリ波帯信号測定部70に送られる。
【0030】
マルチトーン信号分離部40Bは、基準信号発生器41a~41bと、移相器42a~42bと、90度移相器43a~43bと、変調器44a~44dと、低域通過フィルタ45a~45dと、を備えている。基準信号発生器41aは、基準同期信号発生器16からの基準同期信号S17に従って、基準信号Sと同じ周波数の正弦波である基準信号S40を発生する。移相器42aは、変調器44aにおいて電気光学サンプリング部30でサンプリングされた校正用信号S20中の基準信号Sの位相と基準信号S40の位相とが一致するように、基準信号S40の位相を調整し、基準信号S42として出力する。
【0031】
変調器44aは、電気光学サンプリング部30からの電気信号S30を基準信号S42で変調し、低域通過フィルタ45aで低周波成分を抽出する。また、移相器42aの出力は90度移相器43aを介して変調器44bに入力され、変調器44bは、電気光学サンプリング部30からの電気信号S30を基準信号S42と90度位相の異なる基準信号S43で変調し、低域通過フィルタ45bで低周波成分を抽出する。
【0032】
基準信号発生器41bは、基準同期信号発生器16からの基準同期信号S17に従って、基準信号Sと同じ周波数の正弦波である基準信号S41を発生する。移相器42bは、変調器44cにおいて電気光学サンプリング部30でサンプリングされた校正用信号S20中の基準信号Sの位相と基準信号S41の位相とが一致するように、基準信号S41の位相を調整し、基準信号S44として出力する。
【0033】
変調器44cは、電気光学サンプリング部30からの電気信号S30を基準信号S44で変調し、低域通過フィルタ45cで低周波成分を抽出する。また、移相器42bの出力は、90度移相器43bを介して変調器44dに入力され、変調器44dは、電気光学サンプリング部30からの電気信号S30を基準信号S44と90度位相の異なる基準信号S45で変調し、低域通過フィルタ45dで低周波成分を抽出する。基準信号S42~S45は全ての組み合わせにおいて互いに直交している。上記構成により電気光学サンプリング部30からの電気信号S30の4トーンが分離される。低域通過フィルタ45a~45dを通過した4トーン信号はスイッチSW21~24を介してマルチトーン位相差測定部50Bに送られる。
【0034】
マルチトーン位相差測定部50Bは、位相検出部51a~51dと、位相差算出部52とを備えている。位相検出部51aは、電気光学サンプリング部30からの電気信号S30における4トーンのうちの第1トーンの位相を検出する。同様に、位相検出部51c,51b,51dは、電気光学サンプリング部30からの電気信号S30における第2,第3,第4トーンの位相を検出するようになっている。位相差算出部52は、4トーンの各位相の2階微分を算出し、校正用信号S20の4トーンの周波数を変えて位相の2階微分値の測定を繰返し、位相の2階微分を2階積分することにより位相の周波数特性を取得し、位相差測定結果S50として出力する。
【0035】
ミリ波帯信号測定部70からの出力信号S70の位相差を測定する場合は、スイッチSW10、SW1、SW21、SW22、SW23、SW24を図28下側に、スイッチSW3、SW4を同図上側に設定する。校正用信号生成部20Bにおいてマルチトーン中間周波信号発生部25により生成されたマルチトーン中間周波信号S15が、スイッチSW10を介して周波数変換部21に送られアップコンバートされて第2の校正用信号S21が生成される。第2の校正用信号S21は、ミリ波帯信号測定部70に入力され、ミリ波帯信号測定部70の中間周波信号変換部73からの出力信号S70が、スイッチSW4、SW21~24を介してマルチトーン位相差測定部50の位相検出部51a~51dに入力され、4トーンの各位相が検出される。そして、位相差算出部52が、4トーンの各位相の2階微分を算出し、第2の校正用信号S21の4トーンの周波数を変えて位相の2階微分値の測定を繰返し、位相の2階微分を2階積分することにより位相の周波数特性が得られ、ミリ波帯信号測定部70による位相差測定結果S50'として出力する。
【0036】
校正方法は次のとおりである。
まず、スイッチSW10とSW1とSW21~24を図28上側に設定する。校正用信号S20を電気光学サンプリング部30に入力して測定された校正用信号S20の位相差測定結果S50から、校正用信号S20の周波数特性が求まる。次いで、スイッチSW10とSW1とSW21~24を同図下側に、スイッチSW3とSW4を同図上側に設定する。第2の校正用信号S21をミリ波帯信号測定部70に入力して周波数変換された出力信号S70の位相差測定結果S50'から出力信号S70の周波数特性が求まる。そして、校正用信号S20の周波数特性と、ミリ波帯信号測定部70の出力信号S70の周波数特性とからミリ波帯信号測定部70のダウンコンバータ(周波数変換部72、73)の周波数特性が求められる。位相補正値算出部55は、所定の周波数範囲にわたってダウンコンバータの周波数特性を算出し、ミリ波帯信号測定部70の位相補正部74に出力する。
【0037】
ミリ波帯信号送信部60から送信される被測定信号S60を測定するときは、スイッチSW3とSW4を図28下側に設定する。ミリ波帯信号送信部60は、中間周波信号発生部61で生成された中間周波信号を、局発信号発生部62と周波数変換部63とによりアップコンバートして被測定信号S60として出力する。被測定信号S60は、スイッチSW3を介してミリ波帯信号測定部70に入力され、周波数変換部72および中間周波信号変換部73でダウンコンバートされ出力信号S70'が位相補正部74に入力される。位相補正部74では、ミリ波帯信号測定部70のダウンコンバータの周波数特性で除算する(位相のみを補正する場合はミリ波帯信号測定部70の周波数変換部72、73の位相特性を減算する)ことにより、ミリ波帯信号測定部70の周波数変換部72、73の周波数特性が補正された測定結果を得ることができる。
【0038】
<第3の構成例>
図29は、従来の位相特性校正装置の第3の構成例を示す。従来の位相特性校正装置1000Cは、校正用信号として3トーン信号を用いてミリ波帯信号発生部80のアップコンバータ(周波数変換部84)の位相特性を校正するものである。このために、位相特性校正装置1000Cは、短パルス光源2と、光分岐器3と、光可変遅延器4と、3トーン中間周波信号発生部10と、基準信号変調部17と、同期処理部5と、電気光学サンプリング部30と、ロックイン検出部40と、3トーン位相差測定部50と、位相補正値算出部55とを備えている。第3の構成例に係る位相特性校正装置1000Cは、第1の構成例(図27)の校正用信号生成部20が3トーン中間周波信号生成部10と基準信号変調部17のみ有する構成になっている点、ミリ波帯信号発生部80のアップコンバータの位相特性を校正する点で、ミリ波帯信号測定部70のダウンコンバータの位相特性を校正する第1の構成例(図27)と異なっており、その他の構成は第1の構成例と同一であり、同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は適宜省略する。
【0039】
ミリ波帯信号発生部80は、中間周波信号発生部81と、位相補正部82と、局発信号発生部83と、周波数変換部84とを備えている。中間周波信号発生部81は、中間周波信号S81を発生し位相補正部82に送る。位相補正部82は、中間周波信号S81に対して後述する位相補正を行い、位相補正された中間周波信号を出力する。スイッチSW6およびSW7を同図下側に設定すると、周波数変換部84は、局発信号発生部83で生成された局発信号S83に従い、位相補正された中間周波信号をアップコンバートしてミリ波帯の測定用信号S80'を生成する。測定用信号S80'は、スイッチSW7を介してミリ波帯信号受信部90に送られる。
【0040】
ミリ波帯信号受信部90は、局発信号発生部91と、周波数変換部92と、中間周波信号変換部93とを備えている。ミリ波帯信号受信部90に入力されたミリ波帯の測定用信号S80'は、周波数変換部92にて局発信号発生部91からの局発信号S91でダウンコンバートされ、中間周波信号変換部93にて例えば周波数変換等の処理が行われ、中間周波信号S90として出力される。
【0041】
校正方法は次のとおりである。
まず、スイッチSW6とSW7を同図上側に設定する。3トーン中間周波信号S10を基準信号S18で変調し、変調された3トーン中間周波信号S19をミリ波帯信号発生部80の周波数変換部84に入力して周波数変換されたミリ波帯信号S80の位相差測定結果S50からミリ波帯信号S80の周波数特性が求まる。これがミリ波帯信号発生部80のアップコンバータ(周波数変換部84)の周波数特性となる。位相補正値算出部55は、所定の周波数範囲にわたってアップコンバータの周波数特性を算出し、ミリ波帯信号発生部80の位相補正部82に出力する。
【0042】
ミリ波帯信号発生部80から送信される測定用信号S80'をミリ波帯信号受信部90により受信するときは、スイッチSW6とSW7を図29下側に設定する。ミリ波帯信号発生部80では、中間周波信号発生部81から出力された中間周波信号S81が位相補正部82に入力され、位相補正が行われる。位相補正部82にて位相補正された中間周波信号は、周波数変換部84にて局発信号発生部83からの局発信号S83でアップコンバートされ、ミリ波帯の測定用信号S80'として出力される。ミリ波帯信号受信部90は、測定用信号S80'を受信し、周波数変換部92にて局発信号発生部91からの局発信号S91でダウンコンバートし、中間周波信号変換部93にて周波数変換等を行なって中間周波信号S90として出力する。このようにして、周波数変換部84の周波数特性が補正された測定用信号S80'を測定対象であるミリ波帯信号受信部90で受信した結果を得ることができる。
【0043】
<第4の構成例>
図30は、従来の位相特性校正装置の第4の構成例を示す。従来の位相特性校正装置1000Dは、校正用信号として4トーン信号を用いてミリ波帯信号発生部80のアップコンバータ(周波数変換部84)の位相特性を校正するものである。このために、位相特性校正装置1000Dは、短パルス光源2と、光分岐器3と、光可変遅延器4と、マルチトーン中間周波信号発生・基準信号変調部10Bと、同期処理部5と、電気光学サンプリング部30と、マルチトーン信号分離部40Bと、マルチトーン位相差測定部50Bと、位相補正値算出部55とを備えている。第4の構成例に係る位相特性校正装置1000Dは、第2の構成例(図28)の校正用信号生成部20Bがマルチトーン中間周波信号発生・基準信号変調部10Bのみを有する構成になっている点、ミリ波帯信号発生部80のアップコンバータの位相特性を校正する点で、ミリ波帯信号測定部70のダウンコンバータの位相特性を校正する第2の構成例と異なっており、その他の構成は第2の構成例と同一である。また、ミリ波帯信号発生部80およびミリ波帯信号受信部90は、第3の構成例(図29)に示すものと同一である。同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は適宜省略する。
【0044】
第4の構成例では、スイッチSW6およびSW7を同図上側に設定すると、マルチトーン中間周波信号発生・基準信号変調部10Bから出力されるマルチトーン中間周波信号S10が、ミリ波帯信号発生部80の周波数変換部84にてアップコンバートされ、ミリ波帯信号S80として出力されている。ミリ波帯信号S80は、電気光学サンプリング部30に入力され、マルチトーン信号分離部40Bを経てマルチトーン位相差測定部50Bで位相差が算出される。
【0045】
校正方法は次のとおりである。
まず、スイッチSW6とSW7を図30上側に設定する。ミリ波帯信号S80を電気光学サンプリング部30に入力して測定されたミリ波帯信号S80の位相差測定結果S50から、ミリ波帯信号発生部80の周波数変換部84の周波数特性が求まる。位相補正値算出部55は、所定の周波数範囲にわたって周波数変換部84の周波数特性を算出し、ミリ波帯信号発生部80の位相補正部82に出力する。
【0046】
ミリ波帯信号発生部80から送信される測定用信号S80'をミリ波帯信号受信部90により受信するときは、スイッチSW6とSW7を図30下側に設定する。ミリ波帯信号発生部80の中間周波信号発生部81から出力される任意の中間周波信号S81を位相補正部82に入力して位相補正を行い、局発信号発生部83と周波数変換部84とでアップコンバートしてミリ波帯の測定用信号S80'を生成し、ミリ波帯信号受信部90に入力することにより、周波数変換部84の周波数特性が補正された測定用信号S80'を測定対象であるミリ波帯信号受信部90で受信した結果を得ることができる。
いずれの構成例においても、図27図30では光可変遅延器4は光分岐器3と電気光学サンプリング部30の間に配置されているが、電気光学サンプリング部に入力される短パルス光と校正用信号/ミリ波帯信号との相対的な時間差を変更できればよいため、光可変遅延器4を光分岐器3と同期処理部5の間に配置することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0047】
【特許文献1】特開2020-193848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0048】
従来技術では、電気光学サンプリング法を用い、光可変遅延器を一定の掃引速度で掃引することにより、ミリ波トーン信号(校正用信号)の時間波形を一定時間間隔で電気光学サンプリングするようになっている。しかしながら、実際の光可変遅延器の掃引では、例えば機械的な「がたつき」のように掃引速度の予測できないランダムな変動が生じることがある。光可変遅延器の掃引速度が一定でないと、電気光学サンプリングの時間間隔が一定でなくなるため、電気光学サンプリングされたトーン信号の位相がゆらぎ、SN比が低下するため、位相特性校正の精度が悪化するという問題があった。
【0049】
この問題に関しては、CWレーザーの出力が光可変遅延器を通過する光路と、通過しない光路とを用いて干渉計を構成し、干渉計により生成された干渉光により得られた干渉信号を基に遅延量を補正する方法が本発明者により発案されている(特願2023-039791)。具体的には、CWレーザーの出力が光可変遅延器を通過する光路と、通過しない光路とを用いて干渉計を構成しておき、光可変遅延器をほぼ一定の速度で掃引し、干渉計の出力を受光器に入力すると、干渉信号としてほぼ一定周期の正弦波が得られる。この干渉信号波形のピークは、光路長差がCW光波長の整数倍になるときに観測される。干渉信号を適切な分周器で分周し、A/D変換器のクロック信号として、ミリ波トーン信号(校正用信号)を電気光学サンプリングした信号をA/D変換する。CW光と短パルス光は、偏光ビームスプリッタ(PBS)を用いて分離してもよいし、波長フィルタを用いて分離してもよい。
【0050】
<第5の構成例>
より具体的には、図31のような構成となる。
位相特性校正装置1000Eは、被測定信号を周波数変換(ダウンコンバート)して測定するミリ波帯信号測定部70のダウンコンバータ(周波数変換部72、中間周波信号変換部73)の位相の周波数特性を補正するものである。このために、位相特性校正装置1000Eは、短パルス光源2と、光分岐器3と、光可変遅延器4と、校正用信号生成部20と、同期処理部5と、電気光学サンプリング部30と、ロックイン検出部40と、マルチトーン位相差測定部50と、位相補正値算出部55と、光可変遅延器4による遅延量を補正するための遅延量補正部100とを備えている。
短パルス光源2と、光分岐器3と、光可変遅延器4と、校正用信号生成部20と、同期処理部5と、電気光学サンプリング部30と、ロックイン検出部40と、マルチトーン位相差測定部50と、位相補正値算出部55と、は従来技術である図27と同じ構成であり、同一の符合を付して説明を省略する。
次に、遅延量補正部100について説明する。
【0051】
遅延量補正部100は、光可変遅延器4の掃引速度の不安定性等に由来する、電気光学サンプリングにより得られたマルチトーン信号の位相ゆらぎを補正するものであり、図31に示すように、CW光源101と、干渉計110と、受光器106と、分周器107と、マルチトーン信号サンプリング部120とを備えている。
【0052】
CW光源101は、例えば半導体レーザーであり、所定の波長のCW光を発生するようになっている。
【0053】
干渉計110は、光可変遅延器4が含まれる第1の光路と光可変遅延器4が含まれない第2の光路とにCW光が入力され、第1の光路から出力されるCW光と第2の光路から出力されるCW光とを干渉させ、干渉光として出力するようになっている。
【0054】
具体的には、干渉計110は、光分波器102と、例えばハーフミラーなどの光合波器103と、例えばハーフミラーなどの光分波器104と、光合波器105と、を備えている。光分波器102は、第1の光路と第2の光路との分岐部に設けられ、CW光源101より出力されたCW光を第1のCW光と第2のCW光に分波するようになっている。光合波器103は、第1の光路に設けられ、第1のCW光と、短パルス光源2から光分岐器3を介して送られた短パルス光とが入力され、第1のCW光と短パルス光を合波して第1の光路に出力するようになっている。光分波器104は、第1の光路に光可変遅延器4を挟んで光合波器103とは反対側に設けられ、第1の光路において光可変遅延器4を通った第1のCW光と短パルス光を電気光学サンプリング部30および光合波器105へ出力するようになっている。光合波器105は、第1の光路と第2の光路の合流部に設けられ、光分波器104により出力された第1のCW光および短パルス光と、光分波器102により分波された第2のCW光とを合波し干渉光を生成するようになっている。つまり、光可変遅延器4を通った第1のCW光と光分波器102側から送られてきた第2のCW光とが干渉する。
【0055】
受光器106は、例えば低速のフォトダイオードを備え、光合波器105により生成された干渉光の強度を検出し、干渉信号として出力するようになっている。干渉信号は、第1の光路と第2の光路との光路長差(遅延時間)がCW光の波長(周期)の整数倍に等しい時にピークとなる正弦波状の繰返し信号である。
【0056】
分周器107は、受光器106から出力される干渉信号の周波数を分周するようになっている。分周器107の分周比をN(Nは整数)とすると、第1の光路と第2の光路との光路長差(遅延時間)がCW光の波長(周期)のN倍毎に立ち上がる矩形波が分周器107から出力される。
【0057】
マルチトーン信号サンプリング部120は、ロックイン検出部40から出力されるマルチトーン信号を分周器107の出力に従ってサンプリングして、補正済マルチトーン信号として出力するようになっている。具体的には、マルチトーン信号サンプリング部120は、ロックイン検出部40により検出されたマルチトーン信号にA/D変換を施すA/D変換器111を備え、分周器107の出力信号が、A/D変換器111のA/D変換クロック信号として用いられる。例えばA/D変換器111は、分周器107の出力信号の立ち上がり時にマルチトーン信号をA/D変換する。
【0058】
この構成により、電気光学サンプリングにより得られたマルチトーン信号が、光可変遅延器4の掃引速度によらず遅延量に対して一定の間隔でサンプリングされる。ある程度波長が安定なCWレーザー等をCW光源101として用いれば、光可変遅延器4の掃引速度の不安定性に由来する、電気光学サンプリングで得られたマルチトーン信号の位相ゆらぎを補正することができる。
【0059】
<第6の構成例>
図32は従来技術の別の構成である。
校正用信号生成部20B、マルチトーン信号分離部40B、およびマルチトーン位相差測定部50Bは図28中の同一に付された符合と同じであり、説明を省略する。短パルス光源2と、光分岐器3と、光可変遅延器4と、同期処理部5と、電気光学サンプリング部30と、位相補正値算出部55と、遅延量補正部100と、は図31中の同一に付された符合と同じであり、説明を省略する。マルチトーン信号サンプリング部120Bは、マルチトーン信号分離部40Bから出力される各トーン信号を分周器107の出力に従ってそれぞれサンプリングして、4つの補正済トーン信号として出力するようになっている。
【0060】
この構成により、電気光学サンプリングにより得られた各トーン信号が、光可変遅延器4の掃引速度によらず遅延量に対して一定の間隔でサンプリングされる。ある程度波長が安定なCWレーザー等をCW光源101として用いれば、光可変遅延器4の掃引速度の不安定性に由来する、電気光学サンプリングで得られた各トーン信号の位相ゆらぎを補正することができる。
さらに、ロックイン検出の機能とマルチトーン信号を分離する機能を併せ持ち、図28と同様の効果が得られる。
【0061】
<第7の構成例>
図33はミリ波帯信号発生部80の位相特性を校正する、従来技術の別の構成である。
3トーン中間周波信号発生部10、基準信号変調部17、ロックイン検出部40、マルチトーン信号サンプリング部120、短パルス光源2、光分岐器3、光可変遅延器4、同期処理部5、電気光学サンプリング部30、3トーン位相差測定部50、位相補正値算出部55、遅延量補正部100は図31中の同一に付された符合と同じであり、説明を省略する。ミリ波帯信号発生部80およびミリ波信号受信部90は図29と同じであり、ミリ波帯信号発生部80の位相特性校正方法も同様である。
【0062】
この構成により、電気光学サンプリングにより得られたマルチトーン信号が、光可変遅延器4の掃引速度によらず遅延量に対して一定の間隔でサンプリングされる。ある程度波長が安定なCWレーザー等をCW光源101として用いれば、光可変遅延器4の掃引速度の不安定性に由来する、電気光学サンプリングで得られたマルチトーン信号の位相ゆらぎを補正することができる。
【0063】
<第8の構成例>
図34はミリ波帯信号発生部80の位相特性を校正する、従来技術の別の構成である。
マルチトーン中間周波信号発生・基準信号変調部10B、マルチトーン信号分離部40B、マルチトーン信号サンプリング部120B、およびマルチトーン位相差測定部50B、短パルス光源2、光分岐器3、光可変遅延器4、同期処理部5、電気光学サンプリング部30、位相補正値算出部55、遅延量補正部100は図32中の同一に付された符合と同じであり、説明を省略する。ミリ波帯信号発生部80およびミリ波信号受信部90は図30と同じであり、ミリ波帯信号発生部80の位相特性校正方法も同様である。
【0064】
この構成により、電気光学サンプリングにより得られた各トーン信号が、光可変遅延器4の掃引速度によらず遅延量に対して一定の間隔でサンプリングされる。ある程度波長が安定なCWレーザー等をCW光源101として用いれば、光可変遅延器4の掃引速度の不安定性に由来する、電気光学サンプリングで得られた各トーン信号の位相ゆらぎを補正することができる。
さらに、ロックイン検出の機能とマルチトーン信号を分離する機能を併せ持ち、図30と同様の効果が得られる。
【0065】
図27図30に示す構成では、電気光学サンプリング法は、光可変遅延器4を一定の掃引速度でスキャンすることにより、ミリ波トーン信号(校正用信号)の時間波形を電気光学サンプリングする。しかし、実際の光可変遅延器は掃引速度が一定ではなく、電気光学サンプリングされたトーン信号の位相はゆらいでしまい、SN比は低下してしまう。そこで、図31図34に示すように、CW光源101の出力が光可変遅延器4を通過する光路と、通過しない光路とを用いて干渉計110を構成する発明が提案された(特願2023-039791)。
【0066】
しかしながら、図31図34に示す従来の構成(第5~第8の構成例)では、CWレーザーを用いることによる光学系の複雑さ、CW光と短パルス光を分離するためには偏光ビームスプリッタまたは波長フィルタが必要となり、光学部品の選定における費用対効果などの観点から改善すべき課題があった。
【0067】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、干渉計にCW光源が不要で費用対効果の高い位相特性校正装置および位相特性校正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0068】
本発明に係る位相特性校正装置は、上記目的達成のため、所定の繰返し周波数のパルス光を発生するパルス光源(2)と、前記パルス光を分岐する光分岐器(3)と、周波数の異なる3波以上の中間周波信号を合波し、基準信号で変調したマルチトーン中間周波信号を出力するマルチトーン中間周波信号発生部(10,17)を備え、所定の周波数の局発信号と周波数変換部(21)とにより前記マルチトーン中間周波信号をアップコンバートして校正用信号を生成する校正用信号生成部(20)と、前記光分岐器から出力される前記パルス光の一方が入力され、前記校正用信号に含まれるアップコンバートされた前記各中間周波信号の周波数が前記パルス光の繰返し周波数の整数倍になるように、前記3波以上の中間周波信号および前記局発信号の周波数を制御する同期処理部(5)と、前記光分岐器から出力される前記パルス光の他方が入力され、該パルス光に従って前記校正用信号をサンプリングして電気信号として出力する電気光学サンプリング部(30)と、前記光分岐器から出力される前記パルス光の一方または他方が入力され、前記電気光学サンプリング部に入力される前記パルス光と前記校正用信号との相対的時間差を変える可変遅延器(4)と、前記相対的時間差を変えながら前記電気信号を取得し、前記基準信号と同一周波数の正弦波で前記電気信号を変調することにより、前記電気信号に含まれる前記3波以上の中間周波信号に対応するマルチトーン信号を検出するロックイン検出部(40)と、前記可変遅延器が含まれる第1の光路と前記可変遅延器が含まれない第2の光路とにCW光が入力され、前記第1の光路から出力される前記CW光と前記第2の光路から出力される前記CW光とを合波して干渉させ、干渉光として出力する干渉計(110)と、前記干渉光の強度を検出する受光器(106)と、前記受光器から出力される干渉信号の周波数を分周する分周器(107)と、前記ロックイン検出部から出力される前記マルチトーン信号を前記分周器の出力に従ってサンプリングして、補正済マルチトーン信号として出力するマルチトーン信号サンプリング部(120;120A)と、前記補正済マルチトーン信号に含まれる前記3波以上の中間周波信号に対応する3波以上のトーン信号間の位相差を検出するマルチトーン位相差測定部(50)と、前記トーン信号間の位相差から信号測定部(70)のダウンコンバータ(72,73)の位相の周波数特性を補正する位相補正値を算出する位相補正値算出部(55)と、を備え、被測定信号をダウンコンバートして測定する前記信号測定部の前記ダウンコンバータの位相の周波数特性を校正する位相特性校正装置(1;1A)において、前記可変遅延器に入力される前記パルス光を前記CW光の代わりに用い、前記干渉計は、前記第1の光路から出力された前記パルス光と前記第2の光路から出力された前記パルス光とが干渉するように、前記第1の光路から出力される前記パルス光および前記第2の光路から出力される前記パルス光の少なくとも一方のパルス幅を拡大する光バンドパスフィルタ(108)が含まれることを特徴とする。
【0069】
上述のように、本発明に係る位相特性校正装置は、受光器に入力される光が干渉するように、第1の光路から出力されたパルス光および第2の光路から出力されたパルス光の少なくとも一方のパルス幅を拡大するために、光バンドパスフィルタ(以下、光BPFとも記す)が設けられている。パルス光の中のモードを光BPFにより制限した干渉光を受光器に入力することによって、干渉信号を得ることができる。第1の光路のパルス光と第2の光路のパルス光が干渉するように光バンドパスフィルタを設けてパルス幅を広げることは、周波数軸上ではパルス光のモードの一部のみを透過することである。パルス光を構成するモードのひとつはCW光に相当する。これにより、干渉計にCW光源が不要となり、図31に示す従来技術(第5の構成例)と比較して光学系の複雑性や費用対効果が改善される。
パルス光はその繰り返し周波数を間隔とする多数の線スペクトルの集合である。本明細書においてモードとはその線スペクトル一本のことをさす。
【0070】
また、図31に示す第5の構成例と同様に可変遅延器の掃引速度の不安定性に由来するマルチトーン信号の位相ゆらぎを補正することができる。マルチトーン信号サンプリング部により得られた補正済マルチトーン信号の位相のゆらぎが低減するため、SN比を向上させることにより、位相特性校正の精度を改善することが可能となる。
【0071】
本発明に係る位相特性校正装置は、所定の繰返し周波数のパルス光を発生するパルス光源(2)と、前記パルス光を分岐する光分岐器(3)と、周波数の異なる3波以上の中間周波信号を、前記中間周波信号と同一個数の互いに直交した基準信号でそれぞれ変調し合波したマルチトーン中間周波信号を出力するマルチトーン中間周波信号発生部(10B)を備え、所定の周波数の局発信号と周波数変換部(21)とにより前記マルチトーン中間周波信号をアップコンバートして校正用信号を生成する校正用信号生成部(20B)と、前記光分岐器から出力される前記パルス光の一方が入力され、前記校正用信号に含まれるアップコンバートされた前記各中間周波信号の周波数が前記パルス光の繰返し周波数の整数倍になるように、前記3波以上の中間周波信号および前記局発信号の周波数を制御する同期処理部(5)と、前記光分岐器から出力される前記パルス光の他方が入力され、該パルス光に従って前記校正用信号をサンプリングして電気信号として出力する電気光学サンプリング部(30)と、前記光分岐器から出力される前記パルス光の一方または他方が入力され、前記電気光学サンプリング部に入力される前記パルス光と前記校正用信号との相対的時間差を変える可変遅延器(4)と、前記相対的時間差を変えながら前記電気信号を取得し、前記各基準信号と同一周波数の互いに直交した正弦波でそれぞれ前記電気信号を変調することにより、前記電気信号に含まれる前記3波以上の中間周波信号に対応するトーン信号を分離するマルチトーン信号分離部(40B)と、前記可変遅延器が含まれる第1の光路と前記可変遅延器が含まれない第2の光路とにCW光が入力され、前記第1の光路から出力される前記CW光と前記第2の光路から出力される前記CW光とを合波して干渉させ、干渉光として出力する干渉計(110)と、前記干渉光の強度を検出する受光器(106)と、前記受光器から出力される干渉信号の周波数を分周する分周器(107)と、前記マルチトーン信号分離部から出力される前記各トーン信号を前記分周器の出力に従ってそれぞれサンプリングして、補正済トーン信号として出力するマルチトーン信号サンプリング部(120B;120C)と、前記補正済トーン信号間の位相差を検出するマルチトーン位相差測定部(50B)と、前記補正済トーン信号間の位相差から信号測定部(70)のダウンコンバータ(72,73)の位相の周波数特性を補正する位相補正値を算出する位相補正値算出部(55)と、を備え、被測定信号をダウンコンバートして測定する前記信号測定部の前記ダウンコンバータの位相の周波数特性を校正する位相特性校正装置(1B;1C)において、前記可変遅延器に入力される前記パルス光を前記CW光の代わりに用い、前記干渉計は、前記第1の光路から出力された前記パルス光と前記第2の光路から出力された前記パルス光とが干渉するように、前記第1の光路から出力される前記パルス光および前記第2の光路から出力される前記パルス光の少なくとも一方のパルス幅を拡大する光バンドパスフィルタ(108)が含まれることを特徴とする。
【0072】
上述のように、本発明に係る位相特性校正装置は、受光器に入力される光が干渉するように、第1の光路から出力されたパルス光および第2の光路から出力されたパルス光の少なくとも一方のパルス幅を拡大するために、光BPFが設けられている。パルス光の中のモードを光BPFにより制限した干渉光を受光器に入力することによって、干渉信号を得ることができる。第1の光路のパルス光と第2の光路のパルス光が干渉するように光バンドパスフィルタを設けてパルス幅を広げることは、周波数軸上ではパルス光のモードの一部のみを透過することである。パルス光を構成するモードのひとつはCW光に相当する。これにより、干渉計にCW光源が不要となり、図32に示す従来技術(第6の構成例)と比較して光学系の複雑性や費用対効果が改善される。
【0073】
また、図32と同様に、マルチトーン信号分離部から出力される各トーン信号が、干渉信号を分周する分周器の出力に従ってサンプリングされるようになっているので、電気光学サンプリングにより得られた各トーン信号が、可変遅延器の掃引速度によらず遅延量自体に対して一定の間隔でサンプリングされる。マルチトーン信号サンプリング部により得られた補正済マルチトーン信号の位相のゆらぎが低減するため、SN比を向上させることにより、位相特性校正の精度を改善することが可能となる。
【0074】
また、図28と同様に、マルチトーン位相差測定部の前に配置されたマルチトーン信号分離部において各トーン信号が分離されるため、可変遅延器の掃引幅Tから決まる周波数分解能Δf=1/Tよりも狭い周波数間隔で各トーン信号を配置することも可能となり、可変遅延器を大型化することなく周波数間隔を狭くすることができる。すなわち、可変遅延器の掃引幅によらず高い周波数分解能で位相測定が可能となる。
【0075】
本発明に係る位相特性校正装置は、上記目的達成のため、所定の繰返し周波数のパルス光を発生するパルス光源(2)と、前記パルス光を分岐する光分岐器(3)と、周波数の異なる3波以上の中間周波信号を合波し、基準信号で変調したマルチトーン中間周波信号を出力するマルチトーン中間周波信号発生部(10,17)と、を備え、測定用中間周波信号をアップコンバートして測定用信号として出力する信号発生部(80)が、所定の周波数の局発信号を用い前記マルチトーン中間周波信号を前記信号発生部のアップコンバータ(84)でアップコンバートして校正用信号を生成し、前記光分岐器から出力される前記パルス光の一方が入力され、前記校正用信号に含まれるアップコンバートされた前記各中間周波信号の周波数が前記パルス光の繰返し周波数の整数倍になるように、前記3波以上の中間周波信号および前記局発信号の周波数を制御する同期処理部(5)と、前記光分岐器から出力される前記パルス光の他方が入力され、該パルス光に従って前記校正用信号をサンプリングして電気信号として出力する電気光学サンプリング部(30)と、前記光分岐器から出力される前記パルス光の一方または他方が入力され、前記電気光学サンプリング部に入力される前記パルス光と前記校正用信号との相対的時間差を変える可変遅延器(4)と、前記相対的時間差を変えながら前記電気信号を取得し、前記基準信号と同一周波数の正弦波で前記電気信号を変調することにより、前記電気信号に含まれる前記3波以上の中間周波信号に対応するマルチトーン信号を検出するロックイン検出部(40)と、前記可変遅延器が含まれる第1の光路と前記可変遅延器が含まれない第2の光路とにCW光が入力され、前記第1の光路から出力される前記CW光と前記第2の光路から出力される前記CW光とを合波して干渉させ、干渉光として出力する干渉計(110)と、前記干渉光の強度を検出する受光器(106)と、前記受光器から出力される干渉信号の周波数を分周する分周器(107)と、前記ロックイン検出部から出力される前記マルチトーン信号を前記分周器の出力に従ってサンプリングして、補正済マルチトーン信号として出力するマルチトーン信号サンプリング部(120;120A)と、前記補正済マルチトーン信号に含まれる前記3波以上の中間周波信号に対応する3波以上のトーン信号間の位相差を検出するマルチトーン位相差測定部(50)と、前記トーン信号間の位相差から前記信号発生部の前記アップコンバータの位相の周波数特性を補正する位相補正値を算出する位相補正値算出部(55)と、を備える位相特性校正装置(1D;1F)において、前記可変遅延器に入力される前記パルス光を前記CW光の代わりに用い、前記干渉計は、前記第1の光路から出力された前記パルス光と前記第2の光路から出力された前記パルス光とが干渉するように、前記第1の光路から出力される前記パルス光および前記第2の光路から出力される前記パルス光の少なくとも一方のパルス幅を拡大する光バンドパスフィルタ(108)が含まれることを特徴とする。
【0076】
上述のように、本発明に係る位相特性校正装置は、受光器に入力される光が干渉するように、第1の光路から出力されたパルス光および第2の光路から出力されたパルス光の少なくとも一方のパルス幅を拡大するために、光BPFが設けられている。パルス光の中のモードを光BPFにより制限した干渉光を受光器に入力することによって、干渉信号を得ることができる。第1の光路のパルス光と第2の光路のパルス光が干渉するように光バンドパスフィルタを設けてパルス幅を広げることは、周波数軸上ではパルス光のモードの一部のみを透過することである。パルス光を構成するモードのひとつはCW光に相当する。これにより、干渉計にCW光源が不要となり、図33に示す従来技術(第7の構成例)と比較して光学系の複雑性や費用対効果が改善される。
【0077】
また、図33と同様に、測定用中間周波信号をアップコンバートして測定用信号として出力する信号発生部のアップコンバータの位相の周波数特性を補正する際、可変遅延器の掃引速度の不安定性等に起因するマルチトーン信号の位相のゆらぎを低減し、SN比を向上させることができる。
【0078】
本発明に係る位相特性校正装置は、上記目的達成のため、所定の繰返し周波数のパルス光を発生するパルス光源(2)と、前記パルス光を分岐する光分岐器(3)と、周波数の異なる3波以上の中間周波信号を、前記中間周波信号と同一個数の互いに直交した基準信号でそれぞれ変調し合波したマルチトーン中間周波信号を出力するマルチトーン中間周波信号発生部(10B)と、を備え、測定用中間周波信号をアップコンバートして測定用信号として出力する信号発生部(80)が、所定の周波数の局発信号を用い前記マルチトーン中間周波信号を前記信号発生部のアップコンバータ(84)でアップコンバートして校正用信号を生成し、前記光分岐器から出力される前記パルス光の一方が入力され、前記校正用信号に含まれるアップコンバートされた前記各中間周波信号の周波数が前記パルス光の繰返し周波数の整数倍になるように、前記3波以上の中間周波信号および前記局発信号の周波数を制御する同期処理部(5)と、前記光分岐器から出力される前記パルス光の他方が入力され、該パルス光に従って前記校正用信号をサンプリングして電気信号として出力する電気光学サンプリング部(30)と、前記光分岐器から出力される前記パルス光の一方または他方が入力され、前記電気光学サンプリング部に入力される前記パルス光と前記校正用信号との相対的時間差を変える可変遅延器(4)と、前記相対的時間差を変えながら前記電気信号を取得し、前記各基準信号と同一周波数の互いに直交した正弦波でそれぞれ前記電気信号を変調することにより、前記電気信号に含まれる前記3波以上の中間周波信号に対応するトーン信号を分離するマルチトーン信号分離部(40B)と、前記可変遅延器が含まれる第1の光路と前記可変遅延器が含まれない第2の光路とにCW光が入力され、前記第1の光路から出力される前記CW光と前記第2の光路から出力される前記CW光とを合波して干渉させ、干渉光として出力する干渉計(110)と、前記干渉光の強度を検出する受光器(106)と、前記受光器から出力される干渉信号の周波数を分周する分周器(107)と、前記マルチトーン信号分離部から出力される前記各トーン信号を前記分周器の出力に従ってそれぞれサンプリングして、補正済トーン信号として出力するマルチトーン信号サンプリング部(120B;120C)と、前記補正済トーン信号間の位相差を検出するマルチトーン位相差測定部(50B)と、前記補正済トーン信号間の位相差から前記信号発生部の前記アップコンバータの位相の周波数特性を補正する位相補正値を算出する位相補正値算出部(55)と、を備える位相特性校正装置(1E;1G)において、前記可変遅延器に入力される前記パルス光を前記CW光の代わりに用い、前記干渉計は、前記第1の光路から出力された前記パルス光と前記第2の光路から出力された前記パルス光とが干渉するように、前記第1の光路から出力される前記パルス光および前記第2の光路から出力される前記パルス光の少なくとも一方のパルス幅を拡大する光バンドパスフィルタ(108)が含まれることを特徴とする。
【0079】
上述のように、本発明に係る位相特性校正装置は、受光器に入力される光が干渉するように、第1の光路から出力されたパルス光および第2の光路から出力されたパルス光の少なくとも一方のパルス幅を拡大するために、光BPFが設けられている。パルス光の中のモードを光BPFにより制限した干渉光を受光器に入力することによって、干渉信号を得ることができる。第1の光路のパルス光と第2の光路のパルス光が干渉するように光バンドパスフィルタを設けてパルス幅を広げることは、周波数軸上ではパルス光のモードの一部のみを透過することである。パルス光を構成するモードのひとつはCW光に相当する。これにより、干渉計にCW光源が不要となり、図34に示す従来技術(第8の構成例)と比較して光学系の複雑性や費用対効果が改善される。
【0080】
また、図34と同様に、測定用中間周波信号をアップコンバートして測定用信号として出力する信号発生部のアップコンバータの位相の周波数特性を補正する際、可変遅延器の掃引速度の不安定性等に起因する各トーン信号の位相のゆらぎを低減し、SN比を向上させることにより、位相特性校正の精度を改善することができる。
【0081】
また、図30と同様に、マルチトーン位相差測定部の前に配置されたマルチトーン信号分離部において各トーン信号が分離されるため、可変遅延器の掃引幅Tから決まる周波数分解能Δf=1/Tよりも狭い周波数間隔で各トーン信号を配置することも可能となり、可変遅延器を大型化することなく周波数間隔を狭くすることができる。すなわち、可変遅延器の掃引幅によらず高い周波数分解能で位相測定が可能となる。
【0082】
本発明に係る位相特性校正装置において、前記光バンドパスフィルタは、前記第1の光路および前記第2の光路の少なくとも一方、または前記第1の光路から出力される前記パルス光と前記第2の光路から出力される前記パルス光とを合波する合波部と前記受光器との間に設けられた構成であってもよい。
【0083】
上述のように、本発明に係る位相特性校正装置は、第1の光路および第2の光路の少なくとも一方に光BPFが設けられている。これにより第1の光路から出力されるパルス光および第2の光路から出力されるパルス光の少なくとも一方のパルス幅を拡大する。または合波部と受光器の間に、光BPFが設けられている。これにより第1の光路から出力されるパルス光および第2の光路から出力されるパルス光の両方のパルス幅を拡大する。パルス光の中のモードを光BPFにより制限した干渉光を受光器に入力することによって、干渉信号を得ることができる。これにより、干渉計にCW光源が不要となり、図31~34に示す従来技術(第5~8の構成例)と比較して光学系の複雑性や費用対効果が改善される。
【0084】
本発明に係る位相特性校正装置において、前記光バンドパスフィルタは、前記パルス光のスペクトル幅を制限し、前記パルス光の複数の線スペクトル成分を通過させる構成であってもよい。
【0085】
上述のように、本発明に係る位相特性校正装置は、第1の光路のパルス光と第2の光路のパルス光を干渉させるために設けられている光BPFは複数の線スペクトル成分を通過させるため、光BPFの通過帯域はパルス光の繰り返し周波数と同程度もしくはそれより大きくてもよい。したがって、光BPFによりパルス光の線スペクトル一本のみを通過させる場合と比べて、光BPFに要求されるフィネスは高くない。よって、比較的簡単に光BPFを実現することができる。
【0086】
本発明に係る位相特性校正装置において、前記光バンドパスフィルタは、自由スペクトル領域(FSR)が前記パルス光のスペクトル幅より狭い第1のエタロン(108a)と、自由スペクトル領域(FSR)が前記パルス光のスペクトル幅より狭く、かつ前記第1のエタロンとは自由スペクトル領域(FSR)が異なる第2のエタロン(108b)とを含む構成であってもよい。
【0087】
上述のように、FSR(すなわち共振器長)が異なる2つのエタロンを組み合わせることにより、2つのFSRの最小公倍数が、組み合わせたエタロン全体(すなわち光BPF)のFSRとなるので、エタロン1つのみのFSRより大きくすることができる。各エタロンのFSRはパルス光のスペクトル幅より狭くできるので、各エタロンのフィネスは高くなくてよく、光BPFを比較的容易に実現できる。ここで前記パルス光のスペクトル幅とは、線スペクトル一本の幅のことではなく、前記パルス光がもつ多数の線スペクトルからなる全体のスペクトルの包絡線の幅である。これにより、干渉計にCW光源が不要となり、従来技術と比較して光学系の複雑性や費用対効果が改善される。
【0088】
本発明に係る位相特性校正装置において、前記光バンドパスフィルタは、自由スペクトル領域(FSR)が前記パルス光のスペクトル幅より狭いエタロン(108c)と、前記エタロンの自由スペクトル領域(FSR)の2倍より狭い通過域をもつ波長フィルタ(108d)とを含む構成であってもよい。
【0089】
例えば、数10GHz程度の通過帯域幅をもつ波長フィルタは、ブラッグ反射器や回折格子を用いた製品が利用できる。波長フィルタの通過帯域幅と同程度のFSRをもつエタロンを用いればよく、エタロンのフィネスは高くなくてよいので光BPFを容易に実現できる。これにより、干渉計にCW光源が不要となり、従来技術と比較して光学系の複雑性や費用対効果が改善される。
【0090】
本発明に係る位相特性校正装置において、前記干渉計は、前記第1の光路と前記第2の光路との分岐部に設けられ、前記パルス光源より出力された前記パルス光を第1のパルス光と第2のパルス光とに分波し、前記第1のパルス光を前記第1の光路に向けて出力し、前記第2のパルス光を前記第2の光路に向けて出力する第1の光分波器(103)と、前記第1の光路に前記可変遅延器を挟んで前記第1の光分波器側とは反対側に設けられ、前記可変遅延器を通った前記第1のパルス光を入力し、入力された前記第1のパルス光を第3のパルス光と第4のパルス光とに分波し、前記第3のパルス光を前記第1の光路に出力する第2の光分波器(104)と、前記第1の光路と前記第2の光路との合流部に設けられ、前記第1の光分波器により分波された前記第2のパルス光と、前記第2の光分波器により分波された前記第3のパルス光とを合波して第5のパルス光を生成する光合波器(105)と、前記光合波器と前記受光器との間に設けられ、前記第5のパルス光が入力され前記干渉光を生成する前記光バンドパスフィルタとを備え、前記光バンドパスフィルタが、前記第1の光路から出力された前記パルス光および前記第2の光路から出力された前記パルス光の両方のパルス幅を拡大することを特徴とする構成であってもよい。
【0091】
この構成により、本発明に係る位相特性校正装置は、光合波器と受光器の間に、光BPFが設けられている。これにより第1の光路から出力されるパルス光および第2の光路から出力されるパルス光の両方のパルス幅を拡大する。受光器に入力される光が干渉するように、パルス光のモードを制限するために、光BPFが設けられるので、干渉計用の光としてCW光源が不要となり、従来技術と比較して光学系の複雑性や費用対効果が改善される。
【0092】
本発明に係る位相特性校正装置において、前記干渉計は、前記第1の光路と前記第2の光路との分岐部に設けられ、前記パルス光源より出力された前記パルス光を第1のパルス光と第2のパルス光とに分波し、前記第1のパルス光を前記第1の光路に向けて出力し、前記第2のパルス光を前記第2の光路に向けて出力する第1の光分波器(103)と、前記第1の光路と前記第2の光路との合流部に設けられ、前記可変遅延器を通った前記第1のパルス光と、前記第1の光分波器により分波された前記第2のパルス光とを入力し、入力された前記第1のパルス光と前記第2のパルス光とを合波して第3のパルス光と第4のパルス光とを生成する光合分波器(105A)と、前記光合分波器と前記受光器との間に設けられ、前記第3のパルス光が入力され前記干渉光を生成する前記光バンドパスフィルタとを備え、前記光バンドパスフィルタが、前記第1の光路から出力された前記パルス光および前記第2の光路から出力された前記パルス光の両方のパルス幅を拡大することを特徴とする構成であってもよい。
【0093】
この構成により、本発明に係る位相特性校正装置は、光合分波器と受光器の間に、光BPFが設けられている。これにより第1の光路から出力されるパルス光および第2の光路から出力されるパルス光の両方のパルス幅を拡大する。受光器に入力される光が干渉するように、パルス光のモードを制限するために、光BPFが設けられるので、干渉計用の光としてCW光源が不要となり、従来技術と比較して光学系の複雑性や費用対効果が改善される。また、図6に示す構成と比べて、図6の光分波器104が不要となるので、光学系の構成が簡単になり、コストが低減される。
【0094】
本発明に係る位相特性校正装置において、前記干渉計は、前記第1の光路と前記第2の光路との分岐部に設けられ、前記パルス光源より出力された前記パルス光を第1のパルス光と第2のパルス光とに分波し、前記第1のパルス光を前記第1の光路に向けて出力し、前記第2のパルス光を前記第2の光路に向けて出力する第1の光分波器(103)と、前記第1の光路に前記可変遅延器を挟んで前記第1の光分波器側とは反対側に設けられ、前記可変遅延器を通った前記第1のパルス光を入力し、入力された前記第1のパルス光を第3のパルス光と第4のパルス光とに分波し、前記第3のパルス光を前記第1の光路に出力する第2の光分波器(104)と、前記第1の光路に前記第2の光分波器を挟んで前記可変遅延器側とは反対側、または前記第2の光路に設けられた前記光バンドパスフィルタと、前記第1の光路と前記第2の光路との合流部に設けられ、前記第1の光路および前記第2の光路の一方に設けられた前記光バンドパスフィルタより出力された第5のパルス光と、前記第1の光路および前記第2の光路の他方より出力された第6のパルス光とを合波して前記干渉光を生成する光合波器(105)と、を備え、前記光バンドパスフィルタが、前記第1の光路から出力される前記パルス光および前記第2の光路から出力される前記パルス光のいずれか一方のパルス幅を拡大することを特徴とする構成であってもよい。
【0095】
この構成により、光BPFのインパルス応答は時間に対して反転対称ではないので、光路長差ゼロに対して干渉信号は正負対称にならない。したがって、遅延量(光路差)LがL=c/2frepのときでも干渉信号はゼロにならない(frepはパルス光の繰返し周波数)。これにより、遅延量の長い可変遅延器を補正することができる。
【0096】
本発明に係る位相特性校正装置において、前記干渉計は、前記第1の光路と前記第2の光路との分岐部に設けられ、前記パルス光源より出力された前記パルス光を第1のパルス光と第2のパルス光とに分波し、前記第1のパルス光を前記第1の光路に向けて出力し、前記第2のパルス光を前記第2の光路に向けて出力する第1の光分波器(103)と、前記第1の光路に前記可変遅延器を挟んで前記第1の光分波器側とは反対側に設けられ、前記可変遅延器を通った前記第1のパルス光を入力し、入力された前記第1のパルス光を第3のパルス光と第4のパルス光とに分波し、前記第3のパルス光を前記第1の光路に出力する第2の光分波器(104)と、前記第1の光路に前記第2の光分波器を挟んで前記可変遅延器側とは反対側に設けられ、前記第3のパルス光が入力され、第5のパルス光を出力する第1の光バンドパスフィルタ(108A)と、前記第2の光路に設けられ、前記第2のパルス光が入力され、第6のパルス光を出力する第2の光バンドパスフィルタ(108B)と、前記第1の光路と前記第2の光路との合流部に設けられ、前記第1の光バンドパスフィルタより出力された前記第5のパルス光と、前記第2の光バンドパスフィルタより出力された前記第6のパルス光とを合波して前記干渉光を生成する光合波器(105)と、を備え、前記光バンドパスフィルタが、前記第1の光バンドパスフィルタ(108A)と前記第2の光バンドパスフィルタ(108B)とを含み、前記第1の光バンドパスフィルタが、前記第1の光路から出力される前記パルス光のパルス幅を拡大し、前記第2の光バンドパスフィルタが、前記第2の光路から出力される前記パルス光のパルス幅を拡大することを特徴とする構成であってもよい。
【0097】
この構成により、本発明に係る位相特性校正装置は、光BPFを第1の光BPFと第2の光BPFの2つに分割して両方の光路に配置している。これにより第1の光路から出力されるパルス光および第2の光路から出力されるパルス光の両方のパルス幅を拡大する。受光器に入力される光が干渉するように、パルス光のモードを制限するために、光BPFが設けられるので、干渉計用の光として干渉計にCW光源が不要となり、従来技術と比較して光学系の複雑性や費用対効果が改善される。一方の光BPFのみを通過した線スペクトル成分は合波後に干渉せず、二つの光BPFを通過した線スペクトル成分のみが干渉する。したがって、第1の光BPFと第2のBPFをFSRの異なるエタロンで構成したり、エタロンと波長フィルタで構成したりすることにより、エタロンのFSRは大きくしなくてよく、すなわちフィネスは高くなくてよい。したがって、光BPFを比較的容易に実現可能である。
【0098】
本発明に係る位相特性校正装置において、前記光合波器は、前記第5のパルス光と前記第6のパルス光とを合波し前記干渉光として第1の干渉光と第2の干渉光とを生成する光合分波器(105B)であり、前記受光器は、前記第1の干渉光と前記第2の干渉光とを入力し干渉光の強度を差動検出する差動受光器(106A)である構成であってもよい。
【0099】
この構成により、本発明に係る位相特性校正装置は、同相ノイズを除去し、干渉信号強度を大きくして、S/Nを向上させることができる。また、ゼロクロス点を検出することで、振幅変動の影響を受けずに、位相情報を取り出すことができる。
【0100】
本発明に係る位相特性校正装置において、前記光合波器は、前記第5のパルス光と前記第6のパルス光とを合波し前記干渉光として第1の干渉光と第2の干渉光とを生成する光合分波器(105B)であり、前記受光器は、前記第1の干渉光と前記第2の干渉光とを入力し干渉光の強度を差動検出する差動受光器(106A)である構成であってもよい。
【0101】
この構成により、本発明に係る位相特性校正装置は、同相ノイズを除去し、干渉信号強度を大きくして、S/Nを向上させることができる。また、ゼロクロス点を検出することで、振幅変動の影響を受けずに、位相情報を取り出すことができる。
【0102】
本発明に係る位相特性校正方法は、所定の繰返し周波数のパルス光を光分岐器(3)で分岐し、周波数の異なる3波以上の中間周波信号を合波し、基準信号で変調したマルチトーン中間周波信号を出力し、所定の周波数の局発信号と周波数変換部(21)とを用い前記マルチトーン中間周波信号をアップコンバートして校正用信号を生成し、前記光分岐器から出力される前記パルス光の一方を用いて前記校正用信号に含まれるアップコンバートされた前記各中間周波信号の周波数が、前記パルス光の繰返し周波数の整数倍になるように、前記3波以上の中間周波信号および前記局発信号の周波数を制御し、前記光分岐器から出力される前記パルス光の他方を用いて電気光学効果により前記校正用信号をサンプリングして電気信号として出力し、前記光分岐器から出力される前記パルス光の一方または他方が入力される可変遅延器により、前記校正用信号のサンプリングに用いられる該パルス光と前記校正用信号との相対的時間差を変えながら前記電気信号を取得し、前記基準信号と同一周波数の正弦波で前記電気信号を変調することにより、前記電気信号に含まれる前記3波以上の中間周波信号に対応するマルチトーン信号を検出し、前記可変遅延器が含まれる第1の光路と前記可変遅延器が含まれない第2の光路とにCW光を入力し、前記第1の光路から出力される前記CW光と前記第2の光路から出力される前記CW光とを干渉させ、干渉光として出力し、前記干渉光の強度を干渉信号として検出し、前記干渉信号の周波数を分周して得られた信号に従って、前記マルチトーン信号をサンプリングして、補正済マルチトーン信号として生成し、前記補正済マルチトーン信号に含まれる前記3波以上の中間周波信号に対応する3波以上のトーン信号間の位相差を検出し、前記トーン信号間の位相差から信号測定部(70)のダウンコンバータ(72,73)の位相の周波数特性を補正する位相補正値を算出する、ことを含み、被測定信号をダウンコンバートして測定する前記信号測定部の前記ダウンコンバータの位相の周波数特性を校正する位相特性校正方法において、前記可変遅延器に入力される前記パルス光を前記CW光の代わりに用い、前記第1の光路から出力された前記パルス光と前記第2の光路から出力された前記パルス光とが干渉するように、前記第1の光路から出力される前記パルス光および前記第2の光路から出力される前記パルス光の少なくとも一方のパルス幅を拡大する光バンドパスフィルタリングを行うことを特徴とする。
【0103】
この構成により、本発明に係る位相特性校正方法は、被測定信号をダウンコンバートして測定する信号測定部のダウンコンバータの位相の周波数特性を補正する際、第1の光路から出力されたパルス光と第2の光路から出力されたパルス光が干渉するように、第1の光路から出力されたパルス光および第2の光路から出力されたパルス光の少なくとも一方のパルス幅を拡大するために、光バンドパスフィルタリングを行う。これにより、干渉光の生成においてCW光源が不要となり、図31、32に示す従来技術と比較して光学系の複雑性や費用対効果が改善される。
【0104】
本発明に係る位相特性校正方法は、所定の繰返し周波数のパルス光を光分岐器(3)で分岐し、周波数の異なる3波以上の中間周波信号を合波し、基準信号で変調したマルチトーン中間周波信号を生成し、所定の周波数の局発信号を用い前記マルチトーン中間周波信号を信号発生部(80)のアップコンバータ(84)でアップコンバートして校正用信号を生成し、前記光分岐器から出力される前記パルス光の一方を用いて前記校正用信号に含まれるアップコンバートされた前記各中間周波信号の周波数が前記パルス光の繰返し周波数の整数倍になるように、前記3波以上の中間周波信号および前記局発信号の周波数を制御し、前記光分岐器から出力される前記パルス光の他方を用いて電気光学効果により前記校正用信号をサンプリングして電気信号として出力し、前記光分岐器から出力される前記パルス光の一方または他方が入力される可変遅延器により、前記校正用信号のサンプリングに用いられる該パルス光と前記校正用信号との相対的時間差を変えながら前記電気信号を取得し、前記基準信号と同一周波数の正弦波で前記電気信号を変調することにより、前記電気信号に含まれる前記3波以上の中間周波信号に対応するマルチトーン信号を検出し、前記可変遅延器が含まれる第1の光路と前記可変遅延器が含まれない第2の光路とにCW光を入力し、前記第1の光路から出力される前記CW光と前記第2の光路から出力される前記CW光とを干渉させ、干渉光として出力し、前記干渉光の強度を干渉信号として検出し、前記干渉信号の周波数を分周して得られた信号に従って、前記マルチトーン信号をサンプリングして、補正済マルチトーン信号として生成し、前記補正済マルチトーン信号に含まれる前記3波以上の中間周波信号に対応する3波以上のトーン信号間の位相差を検出し、前記トーン信号間の位相差から前記信号発生部の前記アップコンバータの位相の周波数特性を補正する位相補正値を算出する、ことを含み、測定用中間周波信号をアップコンバートして測定用信号として出力する前記信号発生部の前記アップコンバータの位相の周波数特性を校正する位相特性校正方法において、前記可変遅延器に入力される前記パルス光を前記CW光の代わりに用い、前記第1の光路から出力された前記パルス光と前記第2の光路から出力された前記パルス光とが干渉するように、前記第1の光路から出力される前記パルス光および前記第2の光路から出力される前記パルス光の少なくとも一方のパルス幅を拡大する光バンドパスフィルタリングを行うことを特徴とする。
【0105】
この構成により、本発明に係る位相特性校正方法は、測定用中間周波信号をアップコンバートして測定用信号として出力する信号発生部のアップコンバータの位相の周波数特性を補正する際、第1の光路から出力されたパルス光と第2の光路から出力されたパルス光が干渉するように、第1の光路から出力されたパルス光および第2の光路から出力されたパルス光の少なくとも一方のパルス幅を拡大するために、光バンドパスフィルタリングを行う。これにより、干渉光の生成においてCW光源が不要となり、図33、34に示す従来技術と比較して光学系の複雑性や費用対効果が改善される。
【発明の効果】
【0106】
本発明によれば、干渉計にCW光源が不要で費用対効果の高い位相特性校正装置および位相特性校正方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
図1】電気光学サンプリング法を説明するための図である。
図2】(a)は図1の信号のタイミングチャートであり、(b)は遅延時間を変えて電界測定を行い波形情報を取得する様子を示す図である。
図3】(a)は従来の構成例、(b)は本発明の要部の構成例、(c)は(b)の干渉信号を示す図である。
図4】本発明に係る位相特性校正装置の全体構成例を示す図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る位相特性校正装置の構成図である。
図6図5の干渉計の構成図である。
図7】(a)は2つのエタロンの組み合わせにより光BPFが構成される例を示し、(b)はエタロンと波長フィルタの組み合わせにより光BPFが構成される例を示す図である。
図8】複数のエタロンの組み合わせによる波長選択性を示す図である。
図9】(a)は2つのエタロンの組み合わせによる波長選択性を説明する図であり、(b)はエタロンと波長フィルタの組み合わせによる波長選択性を説明する図である。
図10】短パルス光源としてのパルスレーザーの周波数ドリフトが生じたとき光BPFを通過するモードの個数と強度の変化を示す図である。
図11】短パルス光源としてのパルスレーザーの周波数ドリフトによる干渉信号の位相変化を示す図である。
図12】(a-1),(b-1),(c-1)はパルスレーザーの周波数ドリフトによる干渉信号の振幅変化を示す図であり、(a-2),(b-2),(c-2)は遅延量と干渉信号の振幅の関係を示す図である。
図13】通過帯域幅を変えたときの遅延時間と干渉信号の振幅の関係を示す図である。
図14】干渉計の別の構成図である(変形例1)。
図15】干渉計の別の構成図である(変形例2)。
図16】(a)は片方の光路にのみ光BPFを配置した場合のパルスレーザーの周波数ドリフトによる干渉信号の位相変化を示す図であり、(b)は遅延量と干渉信号の振幅の関係を示す図である。
図17】干渉計の別の構成図である(変形例3)。
図18】干渉計の別の構成図である(変形例4)。
図19】干渉計の別の構成図である(変形例5)。
図20】本発明の第2の実施形態に係る位相特性校正装置の構成図である。
図21】本発明の第3の実施形態に係る位相特性校正装置の構成図である。
図22】本発明の第4の実施形態に係る位相特性校正装置の構成図である。
図23】本発明の第5の実施形態に係る位相特性校正装置の構成図である。
図24】本発明の第6の実施形態に係る位相特性校正装置の構成図である。
図25】本発明の第7の実施形態に係る位相特性校正装置の構成図である。
図26】本発明の第8の実施形態に係る位相特性校正装置の構成図である。
図27】従来の位相特性校正装置の第1の構成例を示す。
図28】従来の位相特性校正装置の第2の構成例を示す。
図29】従来の位相特性校正装置の第3の構成例を示す。
図30】従来の位相特性校正装置の第4の構成例を示す。
図31】従来の位相特性校正装置の第5の構成例を示す。
図32】従来の位相特性校正装置の第6の構成例を示す。
図33】従来の位相特性校正装置の第7の構成例を示す。
図34】従来の位相特性校正装置の第8の構成例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0108】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0109】
(基本構成)
図3(a)は従来装置の構成例、(b)および(c)は本発明の実施形態に係る位相特性校正装置の要部の構成例を示す図である。図3(a)に示すように、光可変遅延器4を光分岐器3と同期処理部5の間に配置した場合の従来装置では、短パルス光源2から出力された短パルス光は、光可変遅延器4を通って同期処理部5の高速フォトダイオード(PD)5aに入力される構成である。
【0110】
本発明の実施形態に係る位相特性校正装置は、光可変遅延器4を光分岐器3と同期処理部5の間に配置した場合、図3(b)に示すように、図3(a)の従来装置の構成に加えて、干渉計110と、受光器106と、分周器107と、A/D変換器111とを備えた構成となっている。干渉計110は、分波器103と、分波器104と、合波器105と、光BPF108とを有し、光可変遅延器4を通る光路と光可変遅延器4を通らない光路とにそれぞれ短パルス光を通して合波する。そして、干渉計110の合波器105と受光器106の間に、短パルス光モードを制限し、干渉光を生成する光BPF108が設けられる。パルス光から一つのモードを通過させ、CW光を生成すれば、従来技術におけるCW光を用いた遅延器補正が可能である。一方、本発明はこれに限られるものではなく、パルス光から複数のモードを通過させる場合も含まれる。光BPF108は干渉計の光路差による遅延よりも長いインパルス応答をもっている。そのため、光BPF108を通過させたパルス光は干渉する。光BPFのインパルス応答の長さは、補正する遅延器を含む干渉計の光路長差に相当する時間差より長ければよい。干渉光は、受光器106により強度が検出されて干渉信号として出力され、分周器107により分周され、A/D変換器111による電気光学サンプリング信号のA/D変換のクロック信号として用いられている。図3(c)は、横軸を光路長差ΔL、縦軸を信号強度としたときの干渉信号の波形を示す。干渉信号は、光路長差ΔLが光BPF108を通過する短パルス光のモードの中心の波長λの整数倍となるとき、干渉信号の強度が最大となるような、正弦波状の繰返し信号である。
【0111】
図4は、光可変遅延器4を光分岐器3と同期処理部5の間に配置した場合における本発明の実施形態に係る位相特性校正装置の全体構成例を示す図である。図4に示すように、位相特性校正装置は、従来装置と同様の構成として、短パルス光源2と、光可変遅延器4と、同期処理部5(高速PD5a、PLL5b含む)と、ミリ波トーン信号発生器を有する校正用信号生成部20と、電気光学サンプリング部30(電気光学プローブ30a、偏光検出器30b含む)と、を備える。本実施形態の位相特性校正装置は、さらに干渉計110(光分波器103、光分波器104、光合波器105、光BPF108含む)と、低速PDなどの受光器106と、分周器107と、A/D変換器111と、を備え、干渉計110の光合波器105と受光器106の間に光BPF108が設けられている。
【0112】
短パルス光源2は、所定の繰返し周波数で短パルス光を出力する例えばファイバレーザーである。光分波器103を経て光可変遅延器4を通った短パルス光は、光分波器104を介して同期処理部5に送られる。同期処理部5では、例えば高速PD5aからなる受光器で電気信号に変換され、PLL5bに送られ、校正用信号生成部20で生成されるミリ波のマルチトーン信号に対して同期処理が行われる。マルチトーン信号は、電気光学サンプリング部30に送られ、短パルス光源2から出力され光可変遅延器4を通らずに光分岐器(不図示)で分岐された短パルス光を用いてミリ波マルチトーン信号の電気光学サンプリングが行われる。
【0113】
干渉計110は、光可変遅延器4が含まれる第1の光路と可変遅延器4が含まれない第2の光路とに短パルス光が入力され、第1の光路から出力される短パルス光と第2の光路から出力される短パルス光とを合波させ、2つのパルス光が干渉するように光BPFで2つのパルス光のパルス幅を拡大し、干渉光として出力する。例えばパルスレーザーからなる短パルス光源2から出力された短パルス光が、光分波器103にて分波され、一方は光可変遅延器4に送られ、もう一方は光合波器105に送られる。光可変遅延器4を通った短パルス光は光分波器104を経て光合波器105に送られ、光合波器105にて光分波器103側から送られてきた短パルス光と合波する。合波された光を光BPFに入力することによりパルス光のパルス幅を広げて干渉光として出力する。これにより、光可変遅延器4を通った短パルス光と光可変遅延器4を通らなかった短パルス光とを干渉させる。干渉光は、光BPF108により短パルス光の制限されたモードからなる光である。受光器106により干渉光の強度が検出されて干渉信号として分周器107に送られる。干渉信号は、分周器107で分周され、A/D変換器111における電気光学サンプリング信号のA/D変換のクロック信号(トリガー)として用いられる。干渉信号は、光路長差(遅延時間)が光BPF108を通過する短パルス光のモードの中心波長λ(周期)の整数倍に等しいときピークを有する例えば正弦波状の繰返し信号である。よって、電気光学サンプリングにより得られたマルチトーン信号が、光可変遅延器4の掃引速度によらず遅延量に対して一定の間隔でサンプリングされる。これにより、光可変遅延器4の掃引速度の不安定性に由来するミリ波マルチトーン信号の位相ゆらぎを補正することができる。
【0114】
(第1の実施形態)
図5は、本発明の第1の実施形態に係る位相特性校正装置1の構成図である。位相特性校正装置1は、被測定信号を周波数変換(ダウンコンバート)して測定するミリ波帯信号測定部70のダウンコンバータ(周波数変換部72、中間周波信号変換部73)の位相の周波数特性を補正するものである。このために、位相特性校正装置1は、短パルス光源2と、光分岐器3と、光可変遅延器4と、校正用信号生成部20と、同期処理部5と、電気光学サンプリング部30と、ロックイン検出部40と、マルチトーン位相差測定部50と、位相補正値算出部55と、光可変遅延器4による遅延量を補正するための遅延量補正部100とを備えている。
【0115】
なお、本実施形態のミリ波帯信号測定部70、短パルス光源2、および光可変遅延器4は、本発明の信号測定部、パルス光源、可変遅延器にそれぞれ対応し、本実施形態の3トーン中間周波信号発生部10および基準信号変調部17は、本発明のマルチトーン中間周波信号発生部に対応する。
【0116】
短パルス光源2は、所定の繰返し周波数で短パルス光Pを出力するようになっている。具体的には、例えば、モード同期ファイバレーザーにより、例えば繰返し周波数100MHzでパルス幅100fs程度の短パルス光Pを生成する。短パルス光源2から出力される短パルス光Pは光分岐器3で2つの短パルス光PおよびPに分岐され、短パルス光Pは光分波器103を経て光可変遅延器4に入力され、短パルス光Pは同期処理部5に入力される。
【0117】
光可変遅延器4は、ミラー4aの位置を機械的に移動させることにより光の遅延時間を連続的に変えるものである。光可変遅延器4から出力された短パルス光Pは、光分波器104を経て電気光学サンプリング部30に入力される。
【0118】
本実施形態では、光可変遅延器4は、光分岐器3と電気光学サンプリング部30の間に配置されているが、この配置に限定されない。光可変遅延器4は、電気光学サンプリング部30に入力される短パルス光Pと、校正用信号生成部20から出力され電気光学サンプリング部30に入力される校正用信号S20との相対的な時間差を変えることができればよい。よって、光可変遅延器4は、光分岐器3と同期処理部5の間に入れてもよい。
【0119】
校正用信号生成部20は、スイッチSW11およびSW12を図5下側に設定した場合、所定の周波数のCWの局発信号S22を用い、後で説明する変調されたマルチトーン中間周波信号S19をミリ波帯の周波数にアップコンバートして校正用信号S20を生成するようになっている。このために、校正用信号生成部20は、3トーン中間周波信号発生部10と、基準信号変調部17と、局発信号発生部22と、周波数変換部21と、を備えている。
【0120】
3トーン中間周波信号発生部10の中間周波信号発生器11a~11cは、互いに異なる周波数の正弦波(中間周波信号S,S,S)を所定の位相差で発生し、加算器15で3つの正弦波を加算してマルチトーン中間周波信号S10として出力する。
【0121】
基準信号変調部17の基準信号発生器18は、基準同期信号発生器16からの基準同期信号S16に従って、3トーンの各正弦波のいずれよりも周波数の低い基準信号S18を発生する。変調器19は、マルチトーン中間周波信号S10を基準信号S18で変調し、変調されたマルチトーン中間周波信号S19を周波数変換部21へ出力する。基準同期信号S16は、短パルス光源2の繰返し周波数に同期してもよく、同期していなくてもよい。
【0122】
基準信号変調部17からの出力信号である変調されたマルチトーン中間周波信号S19は、局発信号発生部22と周波数変換部21とを用いてミリ波帯の周波数にアップコンバートされ校正用信号S20として出力される。スイッチSW1およびSW2を図5上側に設定すると、電気光学サンプリング部30を用いて校正用信号S20の位相差が測定される。
【0123】
同期処理部5は、マルチトーン中間周波信号S10と局発信号S22とを短パルス光源2の繰返し周波数に同期させることにより、短パルス光源2の繰返し周波数に同期したミリ波帯の校正用信号S20が得られるようにする。具体的には、同期処理部5は、光分岐器3から出力される短パルス光Pが入力され、校正用信号S20に含まれるアップコンバートされた中間周波信号の各周波数が短パルス光Pの繰返し周波数の整数倍になるように、かつ短パルス光Pのパルスタイミングにおけるアップコンバートされた中間周波信号の各位相が一定になるように、中間周波信号S~Sおよび局発信号S22の周波数を制御するようになっている。
【0124】
具体的には、同期処理部5は、位相同期ループ(PLL)回路を用いて、局発信号発生部22から出力される局発信号S22の周波数および中間周波信号発生器11a~11cから出力される正弦波の各周波数が短パルス光源2の繰返し周波数の整数倍になるように、かつ短パルス光Pのパルスタイミングにおける局発信号S22および中間周波信号発生器11a~11cから出力される正弦波の各位相が一定になるように、局発信号発生部22および中間周波信号発生器11a~11c内の電圧制御発振器(VCO)を制御するようになっている。これにより、校正用信号S20の繰返し周波数が、短パルス光源2の繰返し周波数の整数倍となる。
【0125】
電気光学サンプリング部30を用いて校正用信号S20の位相差を測定する場合には、スイッチSW1およびSW2が図5中上側に設定される。
【0126】
電気光学サンプリング部30は、校正用信号S20の電界が電気光学結晶31に印加されると共に、光可変遅延器4からの直線偏波の短パルス光Pが偏波分離部32を介して電気光学結晶31に入力され、電気光学結晶31の先端で反射した短パルス光が偏波分離部32を介して受光器33に入力される構成となっている。電気光学結晶31に電界が印加されると電気光学効果によって電気光学結晶31からの反射光の偏波が変化し、偏波分離部32と受光器33によって反射光の偏波変化を検出して電気信号S30として出力する。受光器33から出力される電気信号S30は、電気光学結晶31に印加される電界に比例すると共に、短パルス光Pの光パワーにも比例する。
【0127】
短パルス光Pのパルス幅を校正用信号S20の最大周波数の逆数の1/2よりも十分短くすると、電気光学サンプリング部30からの電気信号S30は、校正用信号S20を短パルス光Pの繰返し周期でサンプリングしたものになる。短パルス光源2の繰返し周期は校正用信号S20の繰返し周期の整数倍であるため、校正用信号S20の繰返し波形の特定の点を繰返しサンプリングすることになる。光可変遅延器4の遅延時間を変えることにより、校正用信号S20を短パルス光Pでサンプリングする時刻が変わるので、光可変遅延器4の遅延時間を掃引しながら電気光学サンプリング部30からの電気信号S30を記録すると低速の受光器33でミリ波帯の校正用信号S20の時間波形が測定できる。
【0128】
一般に、電気光学サンプリング部30からの電気信号S30は微小なので、ロックイン検出を行なうことが有効である。図5に示す位相特性校正装置1では、校正用信号生成部20に基準信号変調部17を設けて基準信号S18による振幅変調を行なうと共に、電気光学サンプリング部30の後にロックイン検出部40を設けて基準信号S41によるロックイン検出を行なうようになっている。
【0129】
基準信号変調部17の基準信号発生器18は、基準同期信号発生器16からの基準同期信号S16に従って、3トーンの各正弦波のいずれよりも周波数の低い基準信号S18を発生する。変調器19は、マルチトーン中間周波信号S10を基準信号S18で変調し、変調されたマルチトーン中間周波信号S19を周波数変換部21へ出力する。基準同期信号S16は、短パルス光源2の繰返し周波数に同期してもよく、同期していなくてもよい。
【0130】
基準信号変調部17からの出力信号S19は、局発信号発生部22と周波数変換部21とを用いてミリ波帯の周波数にアップコンバートされ校正用信号S20として出力される。スイッチSW1およびSW2を図5上側に設定すると、電気光学サンプリング部30を用いて校正用信号S20の位相差が測定される。
【0131】
電気光学サンプリング部30からの電気信号S30は、ロックイン検出部40に入力される。ロックイン検出部40の基準信号発生器41は、基準同期信号発生器16からの基準同期信号S17に従って、基準信号S18と同じ周波数の正弦波である基準信号S41を発生する。移相器42は、変調器44において電気光学サンプリング部30でサンプリングされた校正用信号中の基準信号S18の位相と基準信号S41の位相とが一致するように、基準信号S41の位相を調整し、基準信号S42として出力する。変調器44は、電気光学サンプリング部30からの電気信号S30を基準信号S42で変調し、低域通過フィルタ45で低周波成分を抽出する。
【0132】
一般に、低域通過フィルタ45の遮断周波数は、基準信号S41の周波数よりも低く、かつ光可変遅延器4の掃引速度によって決まる電気光学サンプリング部30からの電気信号S30における3トーン信号のいずれの周波数よりも高く設定する。低域通過フィルタ45の遮断周波数を低くすると、光可変遅延器4の掃引速度を遅くする必要があり測定に時間を要するが、周波数帯域が狭くなりSN比が改善される。
【0133】
なお、通常は、後段の3トーン位相差測定部50の位相検出部51a~51cが3トーンの各周波数を検出する周波数選択性を有し、ロックイン検出部40の低域通過フィルタ45の帯域よりも位相検出部51a~51cの測定帯域の方が狭いため、後者によって位相測定のSN比が決まる。
【0134】
従って、ロックイン検出部40の低域通過フィルタ45は、本実施形態のように3トーン位相差測定部50の前にA/D変換を行なう場合や位相検出部51a~51cにおける演算量を低減するためにサンプリングレートを下げる場合におけるアンチエイリアスフィルタとして適切な遮断周波数に設定すればよい。
【0135】
ロックイン検出の利点は、基準信号で変調された信号を検出するため、例えば、基準信号S18の周波数を数MHzに設定することにより電気光学サンプリング部30の受光器33の直流ドリフトや1/f雑音の影響を避けることができ、位相検出部51a~51cの測定帯域が同一の場合でも測定感度を改善できることである。
【0136】
ロックイン検出部40からの出力信号は、後で説明する遅延量補正部100が備えるマルチトーン信号サンプリング部120のA/D変換器111に入力され、ディジタル信号に変換されて補正済マルチトーン信号として出力される。A/D変換器111からの出力信号は、3トーン位相差測定部50に入力される。
【0137】
3トーン位相差測定部50は、ディジタル信号処理にて各トーンの位相検出を行い、位相差を算出する。具体的には、3トーン位相差測定部50の位相検出部51aは、電気光学サンプリング部30からの電気信号S30における3トーンのうちの第1トーンの位相を検出する。同様に、位相検出部51bおよび位相検出部51cは、それぞれ第2トーンおよび第3トーンの位相を検出する。ここで、中間周波信号発生器11a~11cで発生する各正弦波の位相差を補正するようにしてもよい。
【0138】
一般に、高周波信号の位相測定では絶対位相および位相の周波数傾斜が不定となるため、位相差算出部52は、3トーンの各位相の2階微分を算出し、電気光学サンプリング部30を用いた位相差測定結果として出力する。2階微分を算出するためには、少なくとも3トーンの位相が必要となる。以上の処理を校正用信号S20の3トーンの周波数を変えて繰返し、所定の周波数範囲にわたって位相の2階微分値を測定する。位相の2階微分を2階積分することにより、位相の周波数特性を得ることができる。電気光学サンプリング部30による位相差測定結果S50が位相差算出部52から出力される。
【0139】
スイッチSW1およびSW2を図5下側に、スイッチSW3およびSW4を同図上側に設定すると、ミリ波帯信号測定部70を用いて校正用信号S20の位相差が測定される。
【0140】
ミリ波帯信号測定部70では、CWの局発信号S71を発生する局発信号発生部71とミキサなどの周波数変換部72とを用いて、ミリ波帯の校正用信号S20を中間周波信号に周波数変換(ダウンコンバート)する。局発信号S71は必ずしも短パルス光Pに同期させる必要は無いが、局発信号S71の周波数が短パルス光源2の繰返し周波数の整数倍になるように、同期処理部5から局発信号発生部71を制御するようにしてもよい。中間周波信号変換部73には、第2中間周波信号に変換する周波数変換器やI/Q信号に変換する直交周波数変換器等が含まれていてもよい。また、中間周波信号変換部73には、中間周波信号または第2中間周波信号またはI/Q信号をディジタル信号に変換するA/D変換器が含まれ、ディジタル信号を3トーン位相差測定部50または位相補正部74に向けて出力する。
【0141】
スイッチSW1およびSW2を図5中下側に、スイッチSW3およびSW4を図5中上側に設定し、ミリ波帯信号測定部70を用いて校正用信号S20の位相差を測定する際は、必ずしもロックイン検出を行なう必要はない。本実施形態では、スイッチSW11およびSW12を図5中上側に設定して基準信号変調部17での変調を行わず、かつ、電気光学サンプリング部30、ロックイン検出部40およびA/D変換器111をバイパスするような経路に設定できるようにしている。
【0142】
ミリ波帯信号測定部70の中間周波信号変換部73からの出力信号S70は、電気光学サンプリング部30、ロックイン検出部40およびA/D変換器111をバイパスする経路からスイッチSW2を介して、3トーン位相差測定部50に入力され、電気光学サンプリング部30からの電気信号S30の位相差測定と同様に、位相検出部51a~51cにおいて3トーンの各位相が検出され、位相差算出部52において3トーンの各位相の2階微分が算出され、校正用信号S20の3トーンの周波数を変えて繰返し、位相の2階微分を2階積分することにより位相の周波数特性を得ることができ、ミリ波帯信号測定部70による位相差測定結果S50'が出力される。
【0143】
[遅延量補正部]
次に、遅延量補正部100について説明する。
【0144】
遅延量補正部100は、光可変遅延器4の掃引速度の不安定性等に由来する、電気光学サンプリングにより得られたマルチトーン信号の位相ゆらぎを補正するものであり、図5および図6に示すように、短パルス光源2と、光BPF108を含む干渉計110と、受光器106と、分周器107と、マルチトーン信号サンプリング部120とを備えている。
【0145】
干渉計110は、光可変遅延器4が含まれる第1の光路OP1と光可変遅延器4が含まれない第2の光路OP2とに短パルス光が入力され、第1の光路OP1から出力される短パルス光と第2の光路OP2から出力される短パルス光とを合波し、光BPF108に出力する。光BPF108は、光パルスのパルス幅を拡大し、干渉光を出力するようになっている。
【0146】
具体的には、干渉計110は、例えばハーフミラーなどの光分波器103と、例えばハーフミラーなどの光分波器104と、光合波器105と、光BPF108とを備えている。光分波器103は、第1の光路OP1と第2の光路OP2との分岐部に設けられ、短パルス光源2より出力され光分岐器3を通った短パルス光を第1の短パルス光と第2の短パルス光に分波するようになっている。第1の短パルス光は、第1の光路OP1の光可変遅延器4に送られ、第2の短パルス光は、第2の光路OP2を通って光合波器105に送られる。光分波器104は、第1の光路OP1に光可変遅延器4を挟んで光分波器103側とは反対側に設けられ、光可変遅延器4を介して送られた第1の短パルス光が入力され、第3の短パルス光と第4の短パルス光に分波し、第3の短パルス光を第1の光路OP1に光合波器105に向けて出力すると共に、第4の短パルス光を電気光学サンプリング部30に向けて出力するようになっている。光合波器105は、第1の光路OP1と第2の光路OP2の合流部に設けられ、光分波器103により分波された第2の短パルス光と、光分波器104により分波された第3の短パルス光とを合波し、第5のパルス光を生成する。第5のパルス光を光BPFに入力し、パルス光のパルス幅を拡大することによって、干渉光を出力する。つまり、光可変遅延器4を通って光分波器104により分波された第3の短パルス光と、光可変遅延器4を通らず光分波器103から送られた第2の短パルス光とが干渉する。
【0147】
短パルス光のスペクトルは繰り返し周波数を間隔とする多数の線スペクトルからなり、そのうち1本の線スペクトルのみを光BPF108で抽出するとCW光になり、従来のCW光による干渉計と同様の干渉光が得られる。複数の線スペクトルを光BPF108で抽出した場合はCW光にならないが、光BPFにより短パルス光のパルス幅が拡大され、第1の光路と第2の光路の光路長差による伝搬時間差よりもパルス幅が長い場合は干渉し干渉光が得られる。つまり、通常短パルス光を合波器105で合波しただけでは第1の光路と第2の光路の光路長差による伝搬時間差よりもパルス幅が短く干渉しないのに対して、適切なスペクトル幅の光BPF108を設けることにより短パルス光を用いて干渉光が得られるようになる。
【0148】
受光器106は、例えば低速のフォトダイオードを備え、光BPF108を通過した干渉光の強度を検出し、干渉信号として出力するようになっている。干渉信号は、第1の光路OP1と第2の光路OP2との光路長差(遅延時間)が、干渉光の中心波長(周期)の整数倍に等しい時に、ピークとなる正弦波状の繰返し信号である。
【0149】
分周器107は、受光器106から出力される干渉信号の周波数を分周するようになっている。分周器107の分周比をN(Nは整数)とすると、第1の光路OP1と第2の光路OP2との光路長差(遅延時間)が干渉光の中心波長(周期)のN倍毎に立ち上がる矩形波が分周器107から出力される。
【0150】
マルチトーン信号サンプリング部120は、ロックイン検出部40から出力されるマルチトーン信号を分周器107の出力に従ってサンプリングして、補正済マルチトーン信号として出力するようになっている。具体的には、マルチトーン信号サンプリング部120は、ロックイン検出部40により検出されたマルチトーン信号にA/D変換を施すA/D変換器111を備え、分周器107の出力信号が、A/D変換器111のA/D変換クロック信号として用いられる。例えばA/D変換器111は、分周器107の出力信号の立ち上がり時にマルチトーン信号をA/D変換する。
【0151】
この構成により、電気光学サンプリングにより得られたマルチトーン信号が、光可変遅延器4の掃引速度によらず遅延量に対して一定の間隔でサンプリングされる。干渉光の中心周波数は、ミリ波マルチトーン信号の周波数より3桁程度高いので、ある程度通過帯域の中心周波数が安定な光BPFを光BPF108として用いれば、光可変遅延器4の掃引速度の不安定性に由来する、電気光学サンプリングで得られたマルチトーン信号の位相ゆらぎを補正することができる。
【0152】
[分周比・オーバーサンプル比]
干渉信号の周波数は、干渉光の中心周波数に光可変遅延器4の掃引速度を乗じた周波数となり、電気光学サンプリングで得られたマルチトーン信号の周波数は、ミリ波信号の周波数に光可変遅延器4の掃引速度を乗じた周波数となる。干渉光の中心周波数は、ミリ波信号の周波数よりも3桁程度高いので、干渉信号の周波数は電気光学サンプリングで得られたマルチトーン信号の周波数よりも3桁程度高くなり、干渉信号をそのままA/D変換クロックに使用すると、必要以上にサンプリング周波数が高くなり、高速なA/D変換器や大容量のメモリが必要となる。そこで、分周器107の分周比を適切に設定し、分周器107の出力をA/D変換クロックとすれば、必要十分なサンプリング周波数が得られる。
【0153】
分周器107の分周比をN、干渉光の中心周波数をfopt、ミリ波信号の周波数をfrf、オーバーサンプル比をrとすると、分周比Nは次式で示される。
N=fopt/2rfrf (1)
ここで、frfはミリ波トーン信号の最も高いトーン周波数を用いる。r=1の場合、サンプリング定理を満たす最小のサンプリング周波数となる。通常はr=2やr=4のようなオーバーサンプリングを用いるのが望ましい。オーバーサンプリングによって、ロックイン検出部40の低域通過フィルタ45(アンチエイリアスフィルタを兼ねる)の遮断特性要求が緩和される。
【0154】
例えば、干渉光の中心波長を1550nm、ミリ波信号の周波数を300GHz、オーバーサンプル比を2とすると、分周比は161となり、干渉信号をそのままA/D変換クロックとして用いる場合に比べて1/161のサンプリング周波数のA/D変換器でよい。
【0155】
[光BPF]
次に、光BPF108について説明する。
図31図34に示す従来の位相特性校正装置(第5~第8の構成例)では、CW光源101を用いて干渉信号を生成していた。本実施形態では、電気光学サンプリングに用いる短パルス光(短パルスレーザー光)に光BPF108を適用することによって、CW光源101を省略している。
【0156】
位相特性校正装置1の周波数分解能は短パルス光の繰返し周波数frep以上になるので、繰返し周波数frepは低くするのが望ましい(例えば100MHz)。エタロン(Fabry-Perot干渉計を光BPFとして用いたもの)を使用すれば、原理的には短パルス光から一本のモードを取り出すことが可能である。モードとは、短パルス光の周波数スペクトルの一本のことを指す。短パルス光は多数のCW光の集合であると考えれば、一本のモードはCW光と同等である。したがって、短パルス光から1つのモードを取り出すことができれば、CW光源101を省略することが可能である。
【0157】
短パルス光のn番目モードの周波数f(n)は、次式で与えられる。
f(n)=nfrep+fceo (2)
ここで、frepは短パルス光の繰返し周波数、fceoは、キャリアエンベロープオフセット周波数である。
【0158】
[課題]
光BPF108により短パルス光のモードを1つ取り出す構成において検討すべき課題として、次の3点が挙げられる。
(1)通過帯域の狭い光BPFの実現が困難:
1つのモードを抜き出すには光BPF108の通過帯域幅BW(BPF)をBW(BPF)<<frepとしなければならない。しかし、frepは位相特性校正の分解能の限界を定めるため、高い周波数にできない。さらに、光BPF108の通過域周波数を短パルス光の一つのモードに同調し、通過域周波数の安定化(温度制御等)が必要となる。仮に、後述のように光BPFとしてエタロンと波長フィルタを併用し、現実的な波長フィルタの通過帯域幅程度のFSRをもつエタロンを用いるとすると、BW(BPF)=10MHz(<<frep=100MHz)、FSR=150GHzとなるエタロンが必要となり、フィネスは15000で、反射率99.98%のミラーが必要となる。このようなミラーは存在するが、高価で取り扱いが難しい。
(2)光BPFの中心周波数の安定化が困難:
光BPF108の中心周波数は通過帯域幅に比べて十分に安定している必要がある。1MHz以下のゆらぎとすると、10-8の周波数安定化が必要となる(FSR=150GHz,波長1.5μm)。
(3)短パルス光源の周波数安定化が必要:
短パルス光の周波数ドリフトを抑えるため、短パルス光源2は、各モードの周波数を安定化する系が複雑になるが、光BPF108と同程度の安定度が必要となる。frepの周波数安定化のみでは不十分であり、fceoの安定化も必要である。なお、ここでの周波数ドリフトとは、各モードの波長ドリフトに対応する周波数ドリフトのことをいう(frepの周波数ドリフトではない)。
【0159】
[考察]
上記3つの課題について次の条件の下で考察する。
短パルス光の繰返し周波数frepが、短パルス光の周波数fおよびミリ波周波数に比べて非常に小さいと仮定する。光BPF108の通過帯域幅BW(BPF)はfrepと同程度とする。例えば、f=200THz(波長1.5μm)、frep=100MHzとする。
【0160】
この条件では、場合によっては2つのモードが光BPF108を通過することもある。周波数fとf+frepのモードが光BPF108を通過するとき、干渉信号は、
cos(2πfΔL/c)+cos{2π(f+frep)ΔL/c}
に比例する。ここで、ΔLは光路長差、cは光速である。上記以外にfrepに等しい周波数をもつビートも観測されるが、低域通過フィルタにより遮断できる。上記式を書きかえると
2cos{2π(f+frep/2)ΔL/c}×cos{2π(frep/2)ΔL/c}
となる。
【0161】
第1項は、干渉項であり、一つのモードを取り出した場合と比べfrep/2だけ中心周波数が違うが、ミリ波の位相換算によると影響は非常に小さい。例えば、1nsの遅延量を補正するとき、fとf+frep/2では300GHz位相換算で約0.03度の誤差となる。第2項は、うなり成分であり、frepが小さいのでΔLが変わっても非常にゆっくりとした変化になる。本例だと、繰返し波長3mとなる。この繰返し波長の半分より十分小さい光路差であれば、問題なく干渉項が観測できる。この条件では、光BPFの通過帯域はfrepと同程度であるため、短パルス光のモードの周波数がドリフトしても、通過光には1つ以上のモードが存在する。したがって、上記条件下では、光BPF108を安定化すれば、短パルス光はフリーランでも使用可能である。
【0162】
[光BPFの実現性]
次に、狭帯域の光BPFの実現性について述べる。
繰返し周波数frep(例えば100MHz)と同程度の通過帯域幅をもつ光BPFが必要である。これをエタロン+温度安定化で実現する場合を考える。例えば、フーリエ限界パルス幅90fsの周波数スペクトル幅は5THz程度(パルス形状はガウシアンを仮定)である。これは、波長換算すると、1.55μm中心で幅40nmほどである。しかし、FSR=5THz、通過帯域幅数100MHzのエタロンは、高いフィネスを要求されるため、実現するのは困難である。
【0163】
そこで、本実施形態では、光BPFとして次の二通りの構成を用いる。
(i)FSRの違う複数のエタロンを組み合わせる
(ii)エタロンと、エタロンのFSRと同程度の通過帯域幅をもつ波長フィルタとを組み合わせる
【0164】
図7(a)は、(i)の構成例を示し、光BPF108が第1のエタロン108aと第2のエタロン108bとで構成されている。図7(b)は、(ii)の構成例を示し、光BPF108がエタロン108cと波長フィルタ108dとで構成されている。
【0165】
エタロンの通過周波数(共鳴周波数)fは、f=mc/2lであり、FSR(共鳴周波数の間隔)は、FSR=c/2lである。ここで、lは共振器長、cは光速、mは自然数である。
【0166】
[(i)複数エタロンの組み合わせ]
異なるFSR(異なる共振器長l)のエタロンを組み合わせて、波長選択性を向上させる。
図9(a)は、2つのエタロンの組み合わせにより光BPFを構成する場合の説明図である。図9(a)に示すように、エタロン1のFSR1とエタロン2のFSR2とが異なる場合には、FSR1とFSR2の最小公倍数が、光BPFのFSRとなる。これにより、短パルス光がもつ周波数帯域より小さいFSRをもつエタロンを複数個組み合わせることにより、実効的なFSRを短パルス光がもつ周波数帯域よりも大きくすることができ、短パルス光の少数のモードのみを取り出すことが可能となる。
【0167】
図8は、複数のエタロンの組み合わせにより構成された光BPFについて、入力光の周波数と振幅透過率の関係を示す図である。図8(a)は、共振器長1mmのエタロンと共振器長1.06mmのエタロンとの組み合わせにより構成される光BPFの周波数特性を示し(通過帯域幅BW=400MHz)、FSRが150GHz程度の2つのエタロンを用いることにより、短パルス光の帯域である±5THz内で少数のモードを選択することができる。2つのFSRの最小公倍数が、光BPFのFSRとなる。図8(b)は、共振器長10mmのエタロンと共振器長10.6mmのエタロンとの組み合わせにより構成される光BPFの周波数特性を示す(通過帯域幅BW=200MHz)。これらのエタロンのFSRは15GHz程度である。図8(b)に示すように、フィネス(線幅)によっては、FSR周期の通過帯域以外にも、サイドに弱い通過帯域ができてしまう。これは、干渉信号の振幅変動の原因となる。しかし、高域通過フィルタなどにより遮断可能である。また、後で説明する変形例4のように差動受光とすれば、影響はない。
【0168】
[(ii)エタロン+波長フィルタ]
数10GHz程度の通過帯域幅をもつ波長フィルタは、ブラッグ反射器や回折格子を用いた製品がある。これと同程度のFSRをもつエタロンと併用すれば、短パルス光の少数のモードを取り出すことが可能な光BPFを実現できる。
【0169】
図9(b)は、エタロンと波長フィルタの組み合わせにより光BPFを構成する場合の説明図である。図9(b)に示すように、透過率の高い複数の共鳴周波数を有するエタロンを通過した信号に対して、波長フィルタリングを行えば、エタロンの1つの共鳴周波数の信号を抽出できる。これにより、短パルス光がもつ周波数帯域の1/2倍よりも小さいFSRをもつエタロンと、波長フィルタとを組み合わせることにより、短パルス光の少数のモードのみを取り出すことが可能となる。
【0170】
[パルスレーザーの周波数ドリフト]
rep~BW(BPF)とすることにより、光BPFで短パルス光の一つのモードを取り出すことを考える。しかし、現実的な狭帯域光BPF(エタロン)は、図10に示すようにローレンツ曲線様の通過帯域特性をもつ(矩形ではない)。このため、短パルス光源2としてのパルスレーザーの周波数がドリフトすることにより、光BPFを通過するモードの個数や強さが変化する。図10(a)は、パルスレーザーの周波数ドリフトが0Hzのときのエタロンの通過帯域特性を示し、図10(b)は、周波数ドリフトが50MHzのときのエタロンの通過帯域特性を示す。図10において縦線は短パルス光の各モードを示す。図10に示すように、パルスレーザーの周波数がドリフトすると、エタロンを通過するモードの個数や強さが変化する。
【0171】
図11は、短パルス光源2としてのパルスレーザーの周波数ドリフト(横軸)と、干渉信号の位相(縦軸)との関係を示す図であり、図11(a)は光BPFの通過帯域幅BW(BPF)=frepの場合、図11(b)はBW(BPF)=2frepの場合、図11(c)はBW(BPF)=4frepの場合を示す。パルスレーザーの繰返し周波数frep=100MHz、エタロン長さl=1mm(FSR=150GHz)、波長フィルタ幅100GHz(矩形)という条件下で、エタロン+波長フィルタの光BPFを想定した。図11に示すように、BW(BPF)が狭いほど位相変動は大きくなる。遅延量L<1.5m(c/2frepできまる)であれば、短パルス光のモードの周波数がドリフトしても、干渉信号の位相が不連続に変化することはない。
【0172】
図12(a-1),(b-1),(c-1)は、短パルス光源2としてのパルスレーザーの周波数ドリフトによる干渉信号の振幅変化を示す図であり、図12(a-1)は光BPFの通過帯域幅BW(BPF)=frepの場合、図12(b-1)はBW(BPF)=2frepの場合、図12(c-1)はBW(BPF)=4frepの場合を示す。光BPFの中心周波数とパルスレーザーのあるモードの周波数が一致しているときは、そのモードによる干渉信号は大きい。しかし、光BPFの中心周波数に対して対称に短パルス光のモードがあるときは、光BPFの中心周波数に対して対称なモードの干渉信号の振幅が等しく、遅延量LがL=c/2frep=1.5mとなるとき、位相が逆となり打ち消しあう。光BPFの通過帯域の中心周波数に対して対称に短パルス光のモードがある状況で、光可変遅延器4を掃引したときの遅延量Lと干渉信号の振幅の関係を図12(a-2),(b-2),(c-2)に示す。図12(a-2),(b-2),(c-2)に示すように、遅延量L=c/2frep=1.5mのとき各モードを足し合わせた干渉信号の振幅がゼロになる。また、光BPFの通過帯域BWが広い(すなわち、通過するモードが多い)とき、干渉信号の振幅の変動が大きくなる。
【0173】
上述のとおり、遅延量L=c/2frep=1.5mでは干渉信号の振幅がゼロになり、位相が不連続に変化してしまうので避けなければならず、その近くも避けることが望ましい。干渉信号の位相変動はミリ波で換算すると非常に小さくなる。遅延量1.4mでも±50度に収まっている。よって、300GHzのミリ波信号に対する位相換算では±0.08度である。光BPFの通過帯域幅が広く、多数のモードが通過する状況では、振幅変動は大きくなる。すなわち、遅延時間が小さい時は干渉信号は大きいが、遅延時間が大きい時は干渉信号は小さくなる。図13は、光BPFの通過帯域幅BWを変えたときの遅延時間と干渉信号の振幅の関係を示す図である(短パルス光源2としてのパルスレーザーの周波数ドリフト=50MHzの場合)。図13に示すように、補正する遅延時間に対して適切な光BPFの通過帯域幅BWが存在する。例えば、遅延時間が1ns以下の場合、光BPFの通過帯域幅が100MHz,200MHzのときと比べ400MHzのときに干渉信号が大きくなる。よって、受光器106のPDのダイナミックレンジや補正する遅延時間によって、適切な光BPFの通過帯域幅BWを選択するのが望ましい。
【0174】
本実施形態は上記三つの課題を解消するものである。
(1)光BPFの通過帯域幅
光BPFの通過帯域幅は10MHzほど狭くなくてよく、100MHzや400MHz程度でよい。光BPFとして波長フィルタとFSRが短パルス光がもつ周波数帯域より狭い150GHzであるエタロンを併用する場合、エタロンのミラーの反射率は99.8%や99.2%(共振器長1mm)で実現できる。
(2)光BPFの安定化
光BPFの通過帯域周波数の安定度の条件は緩和される。光BPFの通過域周波数ドリフトは干渉信号の位相ドリフトになる。例えば、500MHzドリフトしたとき(3.75pm@λ=1.5μm)、遅延時間1nsとすると、干渉信号の位相変化は300GHz換算で0.3度以下となる。したがって、光BPFに必要な周波数安定度は10-6くらいでよい。
(3)短パルス光の安定化
光BPFが安定化されていれば、短パルス光の周波数安定化は不要になる。短パルス光はfrep間隔のスペクトルをもつので、fceoがfrepだけ全体に周波数ドリフトしたら元に戻る。
【0175】
なお、本実施形態に係る干渉計110は、光路の全てまたは一部に光ファイバを用いる構成でもよく、あるいは、光路に光ファイバを用いず、空気中などの自由空間に光路を設定する構成でもよい。
【0176】
<変形例1>
図14を参照して干渉計の別の構成例を説明する。
【0177】
図14の干渉計110Aは、第1の光路OP1と第2の光路OP2の分岐点に設けられた光分波器103と、第1の光路OP1と第2の光路OP2の合流点に設けられた光合分波器105Aと、光BPF108とを備えている。
【0178】
干渉計110Aは、光可変遅延器4が含まれる第1の光路OP1と光可変遅延器4が含まれない第2の光路OP2とに短パルス光が入力され、第1の光路OP1から出力される短パルス光と第2の光路OP2から出力される短パルス光とを合波し、光BPF108に出力する。光BPF108は、光パルスのパルス幅を拡大し、干渉光を出力するようになっている。
【0179】
具体的には、干渉計110Aは、例えばハーフミラーなどの光分波器103と、例えばハーフミラーなどの光合分波器105Aと、光BPF108とを備えている。光分波器103は、短パルス光源2より出力され光分岐器3を通った短パルス光を第1の短パルス光と第2の短パルス光に分波するようになっている。第1の短パルス光は、第1の光路OP1の光可変遅延器4に送られ、第2の短パルス光は、第2の光路OP2を通って光合分波器105Aに送られる。光合分波器105Aは、光可変遅延器4を通った第1の短パルス光と、光分波器103により分波された第2の短パルス光とを合波し第3の短パルス光と第4の短パルス光を生成する。第3の短パルス光を光BPF108に入力する。光BPF108は、光合分波器105Aにより合波された第3の短パルス光のパルス幅を拡大し、干渉光を生成するようになっている。また、第4の短パルス光は、電気光学サンプリング部30に向けて送られる。
【0180】
短パルス光のスペクトルは繰り返し周波数を間隔とする多数の線スペクトルからなり、そのうち1本の線スペクトルのみを光BPF108で抽出するとCW光になり、従来のCW光による干渉計と同様の干渉光が得られる。複数の線スペクトルを光BPF108で抽出した場合はCW光にならないが、光BPFにより短パルス光のパルス幅が拡大され、第1の光路と第2の光路の光路長差による伝搬時間差よりもパルス幅が長い場合は干渉し干渉光が得られる。つまり、通常短パルス光を合分波器105Aで合波しただけでは第1の光路と第2の光路の光路長差による伝搬時間差よりもパルス幅が短く干渉しないのに対して、適切なスペクトル幅の光BPF108を設けることにより短パルス光を用いて干渉光が得られるようになる。
【0181】
受光器106は、例えば低速のフォトダイオードを備え、光BPF108を通過した干渉光の強度を検出し、干渉信号として出力するようになっている。干渉信号は、第1の光路OP1と第2の光路OP2との光路長差(遅延時間)が、光BPF108を通過する干渉光の中心波長(周期)の整数倍に等しい時に、ピークとなる正弦波状の繰返し信号である。
【0182】
分周器107は、受光器106から出力される干渉信号の周波数を分周するようになっている。分周器107の分周比をN(Nは整数)とすると、第1の光路OP1と第2の光路OP2との光路長差(遅延時間)が干渉光の中心波長(周期)のN倍毎に立ち上がる矩形波が分周器107から出力される。
【0183】
図14の干渉計110Aは、図6の干渉計110に比べて光分波器が1つ少なく、簡単な構成になっている。この干渉計110Aは、光可変遅延器4を通過していない短パルス光が電気光学サンプリング部へ入力される問題がある。しかし、常に同じ位相でミリ波をサンプリングするのでDCになり、ミリ波の観測には基本的に問題はない。
【0184】
<変形例2>
図15を参照して干渉計の別の構成例を説明する。
【0185】
図15の干渉計110Bは、第1の光路OP1と第2の光路OP2の分岐点に設けられた光分波器103と、第1の光路OP1に光可変遅延器4を挟んで光分波器103側とは反対側に設けられた光分波器104と、第2の光路OP2に設けられた光BPF108と、第1の光路OP1と第2の光路OP2の合流点に設けられた光合波器105とを備えている。光BPF108は、第1の光路OP1、好ましくは光分波器104と光合波器105の間に設けるようにしてもよい。
【0186】
干渉計110Bは、光可変遅延器4が含まれる第1の光路OP1と光可変遅延器4が含まれない第2の光路OP2とに短パルス光が入力され、第1の光路OP1から出力される短パルス光と第2の光路OP2から出力される光BPF通過光とを干渉させ、干渉光として出力するようになっている。
【0187】
具体的には、光分波器103は、例えばハーフミラーなどからなり、短パルス光源2より出力され光分岐器3を通った短パルス光を第1の短パルス光と第2の短パルス光に分波するようになっている。第1の短パルス光は、第1の光路OP1の光可変遅延器4に送られ、第2の短パルス光は、第2の光路OP2の光BPF108に送られる。光分波器104は、例えばハーフミラーなどからなり、光可変遅延器4を通った第1の短パルス光を第3の短パルス光と第4の短パルス光に分波する。第3の短パルス光は、光合波器105に送られ、第4の短パルス光は、電気光学サンプリング部30に送られる。光BPF108は、第2の光パルス光のパルス幅を拡大するようになっている。光合波器105は、光分波器104により分波された第3の短パルス光と、光BPF108を通過した光BPF通過光とを合波し干渉光を生成するようになっている。光路OP1と光路OP2の光路長差による伝搬時間差よりも光BPF通過光のパルス幅が広い場合、干渉し干渉光が得られる。干渉光は、受光器106に送られる。
【0188】
受光器106は、例えば低速のフォトダイオードを備え、干渉光の強度を検出し、干渉信号として出力するようになっている。干渉信号は、第1の光路OP1と第2の光路OP2との光路長差(遅延時間)が、光BPF通過光の中心波長(周期)の整数倍に等しい時に、ピークとなる正弦波状の繰返し信号である。
【0189】
分周器107は、受光器106から出力される干渉信号の周波数を分周するようになっている。分周器107の分周比をN(Nは整数)とすると、第1の光路OP1と第2の光路OP2との光路長差(遅延時間)が光BPF通過光の中心波長(周期)のN倍毎に立ち上がる矩形波が分周器107から出力される。
【0190】
図16(a)は、片方の光路にのみ光BPFを入れた場合において、短パルス光源2としてのパルスレーザーの周波数ドリフトに対する干渉信号の位相の関係を示す図である。光BPFは、エタロン+波長フィルタの構成とした。光BPFの通過帯域幅BW(BPF)=frepとし、波長フィルタは100GHz幅の矩形とした。パルスレーザーの周波数ドリフトに対する干渉信号の位相の関係は、グラフ上で正弦波状の曲線を示し、遅延量Lが変わってもほぼ同じである。
【0191】
図16(b)は、図16(a)と同じ条件下でパルスレーザーの周波数ドリフトを50MHzとした場合において、遅延量Lと干渉信号の振幅の関係を示す図である。遅延量(光路差)LがL=c/2frep=1.5mのときでも光BPFの中心周波数に対して対称なモードの干渉信号は等振幅逆位相にならず、干渉信号はゼロにならない。
【0192】
本実施形態の干渉計110Bは、第1の光路OP1と第2の光路OP2のうち片方の光路にのみ光BPF108を入れる構成である。干渉計110Bでは、光BPF108のインパルス応答は時間に対して反転対称ではないので、光路長差ゼロに対して干渉信号は正負対称にならない。したがって、遅延量(光路差)LがL=c/2frep=1.5mのときでも、干渉信号がゼロにならないので、遅延量の長い光可変遅延器を補正することができる。光BPF108の時間応答は非対称であり、通過した光は遅れ成分が大きいので、光BPF108は、光路長が短い方に設置するのが望ましい。また、遅延量が0m,3m(c/frep)のとき90度位相が急激に変化する(周波数ドリフトが±25MHzのとき)ので、避けるのが望ましい。
【0193】
<変形例3>
図17を参照して干渉計の別の構成例を説明する。
【0194】
図17の干渉計110Cは、第1の光路OP1と第2の光路OP2の分岐点に設けられた光分波器103と、第1の光路OP1に光可変遅延器4を挟んで光分波器103側とは反対側に設けられた光分波器104と、第1の光路OP1において光分波器104の下流に設けられた第1の光BPF108Aと、第2の光路OP2に設けられた第2の光BPF108Bと、第1の光路OP1と第2の光路OP2の合流点に設けられた光合波器105とを備えている。
【0195】
干渉計110Cは、光可変遅延器4が含まれる第1の光路OP1と光可変遅延器4が含まれない第2の光路OP2とに短パルス光が入力され、第1の光路OP1に設けられた第1の光BPF108Aから出力される第1の光BPF通過光と、第2の光路OP2に設けられた第2の光BPF108Bから出力される第2の光BPF通過光とを干渉させ、干渉光として出力するようになっている。
【0196】
具体的には、光分波器103は、例えばハーフミラーなどからなり、短パルス光源2より出力され光分岐器3を通った短パルス光を第1の短パルス光と第2の短パルス光に分波するようになっている。第1の短パルス光は、第1の光路OP1の光可変遅延器4に送られ、第2の短パルス光は、第2の光路OP2の第2の光BPF108Bに送られる。光分波器104は、例えばハーフミラーなどからなり、光可変遅延器4を通った第1の短パルス光を第3の短パルス光と第4の短パルス光に分波する。第3の短パルス光は、第1の光BPF108Aを介して光合波器105に送られ、第4の短パルス光は、電気光学サンプリング部30に送られる。光合波器105は、第1の光BPF108Aを通過した第1の光BPF通過光と、第2の光BPF108Bを通過した第2の光BPF通過光とを合波し干渉光を生成するようになっている。干渉光は、受光器106に送られる。
【0197】
受光器106は、例えば低速のフォトダイオードを備え、干渉光の強度を検出し、干渉信号として出力するようになっている。干渉信号は、第1の光路OP1と第2の光路OP2との光路長差(遅延時間)が、干渉光の中心波長(周期)の整数倍に等しい時に、ピークとなる正弦波状の繰返し信号である。
【0198】
分周器107は、受光器106から出力される干渉信号の周波数を分周するようになっている。分周器107の分周比をN(Nは整数)とすると、第1の光路OP1と第2の光路OP2との光路長差(遅延時間)が干渉光の中心波長(周期)のN倍毎に立ち上がる矩形波が分周器107から出力される。
【0199】
本実施形態の干渉計110Cは、光BPFを2つに分割して、両方の光路に設置する方式である。例えば、光BPF108Aをエタロンとし、光BPF108Bを波長フィルタとしてもよいし、その逆でもよい。あるいは、第1の光BPF108Aを第1のエタロンとし、第2の光BPF108Bを第1のエタロンとはFSR(すなわち共振器長)が異なる第2のエタロンとしてもよい。
【0200】
<変形例4>
図18を参照して干渉計の別の構成例を説明する。
【0201】
図18の干渉計110Dは、光合波器105が光合分波器105Bであり、受光器106が、差動受光器106Aである点で、図15に示す変形例2と相違している。その他の構成は変形例2と同一であり、同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は適宜省略する。
【0202】
光合分波器105Bは、光分波器104から分波された第3の短パルス光を入力し、入力光の所定の割合を反射し、入力光の所定の割合を透過させるとともに、光BPF108から送られた光BPF通過光を入力し、入力光の所定の割合を反射し、入力光の所定の割合を透過させる。透過した第3の短パルス光と、反射した光BPF通過光とが合波され第1の干渉光IL1を生成する。また、反射した第3の短パルス光と、透過した光BPF通過光とが合波され第2の干渉光IL2を生成する。第1の干渉光IL1と第2の干渉光IL2は、光合分波器105Bにおける反射と透過がそれぞれ逆なので相補的な干渉となる。差動受光器106Aは、第1の干渉光IL1と第2の干渉光IL2を入力し、干渉光の強度を差動検出して干渉信号として出力する。分周器107は、干渉信号を適当な周波数に分周する。
【0203】
この構成により、本実施形態に係る位相特性校正装置は、図15の変形例2に比べ、干渉信号の振幅は2倍(S/Nは√2倍)となり、また、ゼロクロス点を検出することで、振幅変動の影響を受けずに、位相情報を取り出すことができる。よって、図15の変形例2の効果に加え、同相ノイズを除去し、干渉信号強度を大きくして、S/Nを向上させることができる。
【0204】
<変形例5>
図19を参照して干渉計の別の構成例を説明する。
【0205】
図19の干渉計110Eは、光合波器105が光合分波器105Bであり、受光器106が、差動受光器106Aである点で、図17に示す変形例3と相違している。その他の構成は変形例3と同一であり、同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は適宜省略する。
【0206】
光合分波器105Bは、第1の光BPF108Aから送られた第1の光BPF通過光を入力し、入力光の所定の割合を反射し、入力光の所定の割合を透過させるとともに、第2の光BPF108Bから送られた第2の光BPF通過光を入力し、入力光の所定の割合を反射し、入力光の所定の割合を透過させる。透過した第1の光BPF通過光と、反射した第2の光BPF通過光とが合波され第1の干渉光IL1を生成する。また、反射した第1の光BPF通過光と、透過した第2の光BPF通過光とが合波され第2の干渉光IL2を生成する。第1の干渉光IL1と第2の干渉光IL2は、光合分波器105Bにおける反射と透過がそれぞれ逆なので相補的な干渉となる。差動受光器106Aは、第1の干渉光IL1と第2の干渉光IL2を入力し、干渉光の強度を差動検出して干渉信号として出力する。分周器107は、干渉信号を適当な周波数に分周する。
【0207】
この構成により、本実施形態に係る位相特性校正装置は、図17の変形例3に比べ、干渉信号の振幅は2倍(S/Nは√2倍)となり、また、ゼロクロス点を検出することで、振幅変動の影響を受けずに、位相情報を取り出すことができる。よって、図17の変形例3の効果に加え、同相ノイズを除去し、干渉信号強度を大きくして、S/Nを向上させることができる。
【0208】
また、上記変形例1~5の干渉計は、第1の実施形態だけでなく、後で説明する第2~第8の実施形態の位相特性校正装置の干渉計として使用することができる。
【0209】
[校正方法]
次に、図5に戻り、ミリ波帯信号測定部70の周波数変換部(ダウンコンバータ)72、73の周波数特性を校正する方法を説明する。
【0210】
ここでは、周波数特性を振幅Aと位相θを含む複素数A・ejθで表し、位相の周波数特性の校正および振幅・位相両方の周波数特性の校正のいずれにも適用できる。校正用信号S20の周波数特性(複素数)をX(f),ミリ波帯信号測定部70の周波数変換部72、73の周波数特性(複素数)をG(f),校正用信号S20をミリ波帯信号測定部70に入力した時の中間周波信号変換部73からの出力信号S70の周波数特性(複素数)をY(f)とする。前述のように、校正用信号S20を電気光学サンプリング部30に入力して測定された校正用信号S20の位相特性S50からX(f)が求まり、校正用信号S20をミリ波帯信号測定部70に入力して周波数変換された出力信号S70の位相特性S50'からY(f)が求まり、次式よりG(f)を求めることができる。
G(f)=Y(f-fLO)/X(f) (3)
ここで、fLOはミリ波帯信号測定部70の局発周波数である。
【0211】
位相補正値算出部55は、所定の周波数範囲にわたってG(f)を算出し、ミリ波帯信号測定部70の位相補正部74に出力する。
【0212】
被測定信号S60の周波数特性(複素数)をX(f),被測定信号S60をミリ波帯信号測定部70に入力した時の中間周波信号変換部73からの出力信号S70'の周波数特性(複素数)をY(f)とすると、次式よりミリ波帯信号測定部70の周波数変換部72、73の周波数特性が補正されたX(f)を測定結果として求めることができる。
X(f)=Y(f-fLO)/G(f) (4)
【0213】
スイッチSW3とSW4を図5下側に設定してミリ波帯信号送信部60からの被測定信号S60をミリ波帯信号測定部70に入力し、中間周波信号変換部73からの出力信号S70'を位相補正部74に入力する。位相補正部74では、ミリ波帯信号測定部70の周波数変換部72、73の周波数特性G(f)で除算する(位相のみを補正する場合はミリ波帯信号測定部70の周波数変換部72、73の位相特性を減算する)ことにより、ミリ波帯信号測定部70の周波数変換部72、73の周波数特性が補正された測定結果を得ることができる。
【0214】
<効果>
本実施形態の位相特性校正装置1は、電気光学サンプリングと干渉信号の取得を同時に行なって、機械的な「がたつき」のように光可変遅延器4の掃引速度の予測できないランダムな変動を補正することができるとともに、干渉計にCW光源が不要で、図31に示す従来技術(第5の構成例)と比較して光学系の複雑性や費用対効果を改善することができる。さらに、短パルス光源2から出力され光可変遅延器4を通る短パルス光を電気光学サンプリングに使用するとともに、干渉計110にも使用するので、温度変化などによる変形の影響が両者同一となり、その影響を正確に補正することができる。例えば、光可変遅延器4の掃引速度を検出するエンコーダを別途配置して掃引速度を補正する方法では、温度変化による変形により短パルス光の遅延時間とエンコーダ出力との間に誤差が発生し、光可変遅延器4の掃引速度を正確に補正することが難しい。
【0215】
(第2の実施形態)
次に、図20を参照して、本発明の第2の実施形態に係る位相特性校正装置1Aを説明する。
【0216】
本実施形態に係る位相特性校正装置1Aは、マルチトーン信号サンプリング部120Aの構成が、第1の実施形態と異なっている。その他の構成は第1の実施形態と同一であり、同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は適宜省略する。
【0217】
図20に示すように、マルチトーン信号サンプリング部120Aは、ロックイン検出部40から出力されたマルチトーン信号をディジタル信号に変換するA/D変換器111と、分周器107から出力された矩形波の高調波成分を遮断して正弦波に変換する低域通過フィルタ112と、低域通過フィルタ112の出力信号をA/D変換する第2A/D変換器113と、干渉信号を分周した信号を基に等位相間隔を検出し、検出した等位相間隔でA/D変換器111から出力されたディジタル信号をリサンプリングするリサンプリング処理部130とを備えている。
【0218】
具体的には、リサンプリング処理部130は、第2A/D変換器113により得られたディジタル信号にヒルベルト変換を行うヒルベルト変換部114と、ヒルベルト変換部114の出力データから等位相間隔を検出する等位相間隔検出部115と、検出した等位相間隔でA/D変換器111の出力信号をリサンプリングするリサンプリング部116と、を備えている。
【0219】
干渉信号を分周し低域通過フィルタを経て得られた正弦波の信号から、等位相間隔のタイミングを検出する場合、正弦波だけでは位相が一意に決まらないので、正弦波と余弦波を作り出して複素振幅の信号を生成するためにヒルベルト変換を行う。これにより、等位相間隔検出部115では逆正接関数を用いて複素振幅の信号の位相を一意に算出することができ、等位相間隔を正確に検出することができる。
【0220】
リサンプリングする方式では、等位相間隔検出部115で検出する位相間隔を変えることによりリサンプリングのサンプリング周波数を変えることができるため、必ずしもオーバーサンプル比r≧1を満たす分周比にする必要は無い。例えば、オーバーサンプル比r=1/2として分周器107の出力の周波数がロックイン検出部40の出力のマルチトーン信号の周波数と同程度になるように分周比を設定すると、2つのA/D変換器111、113を同じサンプリング周波数で動作させることができ、構成が簡単になる。このとき、等位相間隔検出部115で検出する位相間隔をπ/2にすると、リサンプリング出力は2倍のオーバーサンプリングとなる。
【0221】
上述のように、干渉信号を分周する分周器107の出力信号の等位相間隔でマルチトーン信号をリサンプルする構成により、電気光学サンプリングにより得られたマルチトーン信号を、光可変遅延器4の掃引速度によらず遅延量に対して一定の間隔でリサンプリングすることができる。これにより、光可変遅延器4の掃引速度の不安定性に由来する、電気光学サンプリングで得られた信号の位相ゆらぎを補正することができる。
【0222】
(第3の実施形態)
次に、図21を参照して、本発明の第3の実施形態に係る位相特性校正装置1Bを説明する。
【0223】
本実施形態に係る位相特性校正装置1Bは、校正用信号生成部20B、マルチトーン信号分離部40B、マルチトーン信号サンプリング部120B、およびマルチトーン位相差測定部50Bの構成が第1の実施形態と異なっている。その他の構成は第1の実施形態と同一であり、同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は適宜省略する。
【0224】
校正用信号生成部20Bは、スイッチSW10を同図上側に設定した場合、所定の周波数の局発信号S22を用い、後で説明するマルチトーン中間周波信号S10をアップコンバートして校正用信号S20を生成するようになっている。このために、校正用信号生成部20Bは、マルチトーン中間周波信号発生・基準信号変調部10Bと、局発信号発生部22と、周波数変換部21と、を備えている。
【0225】
マルチトーン中間周波信号発生・基準信号変調部10Bは、3トーン以上のマルチトーン信号(中間周波信号)S~Sを発生し、互いに周波数が異なるかまたは互いに位相が90度異なる、中間周波信号と同一個数の基準信号(すなわち、互いに直交した基準信号)S~Sによる変調を行ない、変調信号を合波してマルチトーン中間周波信号S10を発生する。具体的には、マルチトーン中間周波信号発生・基準信号変調部10Bは、周波数の異なる中間周波信号S~Sを発生し、該中間周波信号を互いに周波数の異なる基準信号S,Sまたは該基準信号と周波数が等しく位相が90度異なる直交基準信号S,Sでそれぞれ変調し合波したマルチトーン中間周波信号S10を出力するようになっている。本実施形態では、4トーン信号を発生する例を示している。基準信号Sと基準信号S、基準信号Sと直交基準信号S、基準信号Sと直交基準信号S、直交基準信号Sと直交基準信号Sは周波数が異なるため直交しており、基準信号Sと直交基準信号S、基準信号Sと直交基準信号Sは周波数が等しいが位相が90度異なるため直交しており、従って基準信号S,Sおよび直交基準信号S,Sは全ての組み合わせにおいて互いに直交している。
【0226】
より具体的には、マルチトーン中間周波信号発生・基準信号変調部10Bは、中間周波信号発生器11a~11dと、基準信号発生器12a、12bと、90度移相器14a、14bと、変調器13a~13dと、加算器15と、基準同期信号発生器16と、を備えている。
【0227】
中間周波信号発生器11a~11dは、それぞれ中間周波信号S~Sを発生する。中間周波信号S~Sは、互いに周波数が異なり所定の位相差をもった繰返し信号である。通常は正弦波が用いられるが、所望の周波数成分を持つ繰返し信号でもよい。後述するように、位相測定データ処理の簡単化のため、中間周波信号S~Sの周波数は位相測定の周波数分解能に応じた一定の周波数間隔に設定するのが望ましい。
【0228】
基準信号発生器12aは、基準同期信号発生器16からの基準同期信号S16に同期した周波数の繰返し信号を基準信号Sとして出力する。基準信号発生器12aは、例えば基準同期信号S16の3倍の周波数の正弦波や矩形波を出力する。基準信号Sは変調器13aに入力され、中間周波信号Sを基準信号Sで変調する。また、基準信号Sは90度移相器14aを介して変調器13bに入力され、中間周波信号Sを基準信号Sと90度位相が異なる直交基準信号Sで変調する。
【0229】
基準信号発生器12bは、基準信号Sと周波数が異なり、かつ基準同期信号発生器16からの基準同期信号S16に同期した周波数の繰返し信号を基準信号Sとして出力する。基準信号発生器12bは、例えば、基準同期信号S16の4倍の周波数の正弦波や矩形波を出力する。基準信号Sは変調器13cに入力され、中間周波信号Sを基準信号Sで変調する。また、基準信号Sは90度移相器14bを介して変調器13dに入力され、中間周波信号Sを基準信号Sと90度位相が異なる直交基準信号Sで変調する。
【0230】
基準信号S,Sおよび直交基準信号S,Sは、電圧がゼロ以上の単極性信号でも正負両方の両極性信号でもよいが、直流成分を持たない両極性信号の方が変調度を大きくできるので望ましい。基準信号S,Sおよび直交基準信号S,Sを矩形波等の正弦波以外の繰返し信号にする場合は、基本周波数の整数倍の高調波成分が存在するため、例えば、基準信号Sの周波数の整数倍が基準信号Sの周波数と一致しないように両者の周波数を設定するとよい。
【0231】
マルチトーン中間周波信号発生・基準信号変調部10Bは、変調器13a~13dで変調された中間周波信号を加算器15で加算(合波)し、マルチトーン中間周波信号S10として出力する。
【0232】
マルチトーン中間周波信号発生・基準信号変調部10Bで発生する信号を予めディジタル演算にて生成して波形メモリに格納し、波形メモリのデータをD/A変換器に入力してアナログ信号に変換しマルチトーン中間周波信号S10として出力するようにしてもよい。
【0233】
ここでは、1つの基準同期信号S16に同期して基準信号Sと基準信号Sを発生する構成としているが、周波数の異なる基準同期信号S16Aと基準同期信号S16Bを用意して、基準信号Sは基準同期信号S16Aに同期し、基準信号Sは基準同期信号S16Bに同期する構成としてもよい。
【0234】
校正用信号生成部20Bは、所定の周波数のCWの局発信号S22を発生する局発信号発生部22とミキサなどの周波数変換部21とを用いて、マルチトーン中間周波信号S10をミリ波帯にアップコンバートして校正用信号S20として出力する。周波数変換部21には、ミキサの後に周波数変換における上側帯波または下側帯波のいずれか一方のみを抽出し局発信号S22の洩れを除去するフィルタが含まれていてもよい。以下の例では、周波数変換における上側帯波を使用する場合を示す。下側帯波を使用する場合は周波数関係が異なるが、同様に本手法を適用することができる。
【0235】
また、局発信号発生部22または周波数変換部21には、局発信号S22の周波数を逓倍する逓倍器が含まれていてもよく、その場合逓倍された周波数を局発信号S22の周波数と解釈する。
【0236】
同期処理部5は、中間周波信号S~Sと局発信号S22とを短パルス光源2の繰返し周波数に同期させることにより、短パルス光源2の繰返し周波数に同期したミリ波帯の校正用信号S20が得られるようにする。具体的には、同期処理部5は、光分岐器3から出力される短パルス光Pが入力され、校正用信号S20に含まれるアップコンバートされた中間周波信号の各周波数が短パルス光Pの繰返し周波数の整数倍になるように、かつ短パルス光Pのパルスタイミングにおけるアップコンバートされた中間周波信号の各位相が一定になるように、中間周波信号S~Sおよび局発信号S22の周波数を制御するようになっている。
【0237】
より具体的には、同期処理部5は、位相同期ループ(PLL)回路を用いて、局発信号S22および中間周波信号S~Sの各周波数が短パルス光源2の繰返し周波数の整数倍になるように、かつ短パルス光Pのパルスタイミングにおける局発信号S22および中間周波信号発生器11a~11dから出力される正弦波の各位相が一定になるように、局発信号発生部22および中間周波信号発生器11a~11d内の電圧制御発振器(VCO)を制御するようになっている。
【0238】
なお、基準同期信号S16は、短パルス光源2の繰返し周波数に同期させても、させなくてもよい。前述のように、マルチトーン中間周波信号発生・基準信号変調部10Bを波形メモリとD/A変換器で構成する場合は、D/A変換クロックを短パルス光源2の繰返し周波数に同期させ、マルチトーン中間周波信号中の中間周波信号の各周波数が短パルス光源2の繰返し周波数の整数倍になるように波形メモリのデータを作成すればよい。これにより、(基準信号S,Sと直交基準信号S,Sによる変調を除いた)校正用信号S20の繰返し周波数が短パルス光源2の繰返し周波数の整数倍となる。
【0239】
電気光学サンプリング部30を用いて校正用信号S20の位相差を測定する場合には、スイッチSW1およびSW21~SW24が図21中上側に設定される。電気光学サンプリング部30は、校正用信号S20の電界が電気光学結晶31に印加されると共に、光可変遅延器4からの短パルス光Pが偏波分離部32を介して電気光学結晶31に入力され、電気光学結晶31の先端で反射した短パルス光が偏波分離部32を介して受光器33に入力される構成となっている。電気光学結晶31に電界が印加されると電気光学効果によって電気光学結晶31からの反射光の偏波が変化し、偏波分離部32と受光器33によって反射光の偏波変化を検出して電気信号S30として出力する。
【0240】
短パルス光Pのパルス幅を校正用信号S20の最大周波数の逆数の1/2よりも十分短くすると、電気光学サンプリング部30からの電気信号S30は、校正用信号S20を短パルス光Pの繰返し周期でサンプリングしたものになる。短パルス光源2の繰返し周期が(基準信号S,Sと直交基準信号S,Sによる変調を除いた)校正用信号S20の繰返し周期の整数倍であるため、(基準信号S,Sと直交基準信号S,Sによる変調を除いた)校正用信号S20の繰返し波形の特定の点を繰返しサンプリングすることになる。光可変遅延器4の遅延時間を変えることにより、校正用信号S20を短パルス光Pでサンプリングする時刻が変わるので、光可変遅延器4の遅延時間を掃引しながら電気光学サンプリング部30からの電気信号S30を記録すると、低速の受光器33でミリ波帯の校正用信号S20の時間波形が測定できる。
【0241】
具体的には、電気光学サンプリング部30からの電気信号S30は、校正用信号S20の時間波形の時間軸に光可変遅延器4の掃引レートを掛けたものとなるため、例えば、光可変遅延器4の掃引レートを1s当たり1psにすると、校正用信号S20の時間軸の1psを1sに拡大して時間波形を測定することができる。周波数で表すと、300GHzのミリ波帯の校正用信号S20を0.3Hzの低周波信号に変換して測定することができる。
【0242】
電気光学サンプリング部30からの電気信号S30は、マルチトーン信号分離部40Bに入力される。
【0243】
マルチトーン信号分離部40Bは、校正用信号S20と短パルス光Pとの相対的時間差を変えながら電気信号S30を取得し、基準信号S,Sと同一周波数で所定の位相差を持つ正弦波S42,S44または該正弦波と90度位相が異なる正弦波S43,S45でそれぞれ電気信号S30を変調することにより、電気信号S30に含まれる3波以上(図21の実施形態では4波)の中間周波信号S~Sに対応するトーン信号を分離するよう構成されている。このために、マルチトーン信号分離部40Bは、基準信号発生器41a~41bと、移相器42a~42bと、90度移相器43a~43bと、変調器44a~44dと、低域通過フィルタ45a~45dと、を備えている。正弦波S42と正弦波S44、正弦波S42と正弦波S45、正弦波S44と正弦波S43、正弦波S43と正弦波S45は周波数が異なるため直交しており、正弦波S42と正弦波S43、正弦波S44と正弦波S45は、周波数は等しいが90度位相が異なるため直交しており、従って正弦波S42~S45は全ての組み合わせにおいて互いに直交している。
【0244】
基準信号発生器41aは、基準同期信号発生器16からの基準同期信号S17に従って、基準信号Sと同じ周波数の正弦波である基準信号S40を発生する。ここで、基準同期信号S17は、通常は基準同期信号S16と同じ周波数の信号であるが、それに限られるものではなく、例えば基準同期信号S17が基準同期信号S16の1/2の周波数の場合でも結果的に基準信号Sと基準信号S40の周波数が等しくなるように基準信号発生器41aを適宜設定すればよい。
【0245】
移相器42aは、変調器44aにおいて電気光学サンプリング部30でサンプリングされた校正用信号S20中の基準信号Sの位相と基準信号S40の位相とが一致するように、基準信号S40の位相を調整し、基準信号S42として出力する。ここでは、移相器42aで基準信号S40の位相を調整する構成としているが、基準信号発生器41aと移相器42aの順序を入れ替えて基準同期信号S17の位相を調整し、基準信号発生器41aで位相の調整された基準信号S42を直接生成して変調器44aに入力するようにしてもよい。また、基準信号Sの周波数が低く、校正用信号S20と基準同期信号S17の伝搬遅延時間差による位相差が無視できる場合は、移相器42aは無くてもよい。
【0246】
変調器44aは、電気光学サンプリング部30からの電気信号S30を基準信号S42で変調し、低域通過フィルタ45aで低周波成分を抽出する。また、移相器42aの出力は90度移相器43aを介して変調器44bに入力され、変調器44bは、電気光学サンプリング部30からの電気信号S30を基準信号S42と90度位相の異なる基準信号S43で変調し、低域通過フィルタ45bで低周波成分を抽出する。
【0247】
基準信号発生器41bは、基準同期信号発生器16からの基準同期信号S17に従って、基準信号Sと同じ周波数の正弦波である基準信号S41を発生する。
【0248】
移相器42bは、変調器44cにおいて電気光学サンプリング部30でサンプリングされた校正用信号S20中の基準信号Sの位相と基準信号S41の位相とが一致するように、基準信号S41の位相を調整し、基準信号S44として出力する。ここでは、移相器42bで基準信号S41の位相を調整する構成としているが、基準信号発生器41bと移相器42bの順序を入れ替えて基準同期信号S17の位相を調整し、基準信号発生器41bで位相の調整された基準信号S44を直接生成して変調器44cに入力するようにしてもよい。また、基準信号Sの周波数が低く、校正用信号S20と基準同期信号S17の伝搬遅延時間差による位相差が無視できる場合は、移相器42bは無くてもよい。
【0249】
変調器44cは、電気光学サンプリング部30からの電気信号S30を基準信号S44で変調し、低域通過フィルタ45cで低周波成分を抽出する。また、移相器42bの出力は、90度移相器43bを介して変調器44dに入力され、変調器44dは、電気光学サンプリング部30からの電気信号S30を基準信号S44と90度位相の異なる基準信号S45で変調し、低域通過フィルタ45dで低周波成分を抽出する。
【0250】
ここでは、基準同期信号S16,S17に従って基準信号Sと基準信号Sと基準信号S40と基準信号S41とを個別に発生する構成としたが、互いに周波数の異なる正弦波を発生する基準信号発生器Aと基準信号発生器Bとを用意し、基準信号発生器Aの出力信号を基準信号Sおよび基準信号S40として使用し、基準信号発生器Bの出力信号を基準信号Sおよび基準信号S41として使用する構成としてもよい。
【0251】
上記構成により電気光学サンプリング部30からの電気信号S30の4トーンが分離される。
【0252】
以下では、校正用信号S20の4トーンの各角周波数をωRF1,ωRF2,ωRF3,ωRF4,各位相をφ,φ,φ,φ,基準信号S40の角周波数をωr1,基準信号S41の角周波数をωr2,光可変遅延器4の掃引レートをRとする。
【0253】
一般に、低域通過フィルタ45a~45dは、|ωr1-ωr2|以上の角周波数を遮断し、電気光学サンプリング部30からの電気信号S30における4トーン信号の角周波数RωRF1,RωRF3,RωRF2,RωRF4を通過するように遮断周波数を設定すると、各トーンを分離することができる。低域通過フィルタ45a~45dの遮断周波数を低くすると、光可変遅延器4の掃引速度を遅くする必要があり、測定に時間を要するが、測定の周波数帯域が狭くなりSN比が改善される。
【0254】
なお、後段のマルチトーン位相差測定部50Bの位相検出部51a~51dは、一般に4トーンの各周波数を検出する周波数選択性を有し、マルチトーン信号分離部40Bの低域通過フィルタ45a~45dの帯域よりも位相検出部51a~51dの測定帯域を狭く設定することが容易である。この場合、後者によって位相測定のSN比が決まるため、マルチトーン信号分離部40Bの低域通過フィルタ45a~45dは、本実施形態のようにマルチトーン位相差測定部50Bの前にA/D変換を行なう場合や位相検出部51a~51dにおける演算量を削減するためにサンプリングレートを下げる場合におけるアンチエイリアスフィルタとして適切な遮断周波数に設定すればよい。
【0255】
また、電気光学サンプリング部30からの電気信号S30において、サンプリングされた4トーン信号の角周波数RωRF1,RωRF3,RωRF2,RωRF4ではなく、基準信号S,基準信号Sで変調された角周波数ωr1±RωRF1,ωr1±RωRF3,ωr2±RωRF2,ωr2±RωRF4の成分を検出するため、例えば、ωr1とωr2を数MHzに設定することにより数MHzの周波数の信号を測定することになり、電気光学サンプリング部30の受光器33等の直流ドリフトや1/f雑音を避けて高いSN比で測定することが可能となる。このように、本実施形態のマルチトーン信号分離部40Bは、ロックイン検出の機能とマルチトーン信号を分離する機能を併せ持ち、感度のよい測定が可能となる。
【0256】
そして、マルチトーン信号分離部40Bにおいて各トーン信号が分離されるため、光可変遅延器4の掃引幅Tから決まる周波数分解能Δf=1/Tよりも狭い周波数間隔で各トーン信号を配置することも可能となり、光可変遅延器4を大型化することなく周波数間隔を狭くして位相特性を測定することができる。
【0257】
さらに、校正用信号S20に位相揺らぎが存在する場合においても、隣接するトーン信号の漏洩を未然に防止し、精度よく位相測定を行なうことが可能となる。特に、ミリ波帯のような周波数が高い校正用信号S20を生成する場合は、局発信号S22の位相揺らぎが大きくなるため有用である。
【0258】
また、一般に高周波のミキサやアンプ等の電気部品には非線形歪みが存在し、周波数の異なる2つの正弦波を入力すると、3次相互変調歪みによって2つの入力正弦波のスペクトルの両側に新たにスペクトルが発生する。校正用信号S20の第1,第2,第3,第4トーンの各周波数をfRF1,fRF2,fRF3,fRF4,基準信号Sを周波数fr1の正弦波、基準信号Sを周波数fr2の正弦波とすると、基準信号Sまたは基準信号Sによる各トーンの変調によって上側帯波と下側帯波が発生する。
【0259】
この校正用信号S20を3次の非線形素子に入力すると、第1トーンの下側帯波と第1トーンの上側帯波の3次相互変調によってfRF1から3fr1離れた周波数にスペクトルが発生し、第1トーンの下側帯波と第2トーンの上側帯波の3次相互変調によってfRF3から2fr2+fr1離れた周波数にスペクトルが発生し、第1トーンの上側帯波と第2トーンの上側帯波の3次相互変調によってfRF3から2fr2-fr1離れた周波数にスペクトルが発生する。同様にして、校正用信号S20の第1~第4トーンの周辺には3次相互変調歪みのスペクトルが発生する。
【0260】
このように、第1~第4トーンの付近に合計24個の3次相互変調歪みによるスペクトルが発生するが、第1~第4トーンの上側帯波および下側帯波のいずれにも重ならない。マルチトーン信号分離部40Bの低域通過フィルタ45a~45dの帯域または周波数選択性を持つ位相検出部51a~51dの片側周波数帯域を|2fr2―2fr1|よりも狭く設定すると、3次相互変調歪みによるスペクトルはマルチトーン信号分離部40Bの低域通過フィルタ45a~45dの帯域外または位相検出部51a~51dの測定帯域外となる。従って、3次相互変調歪みの影響を受けずに正確な位相測定が可能となる。
【0261】
マルチトーン位相差測定部50Bの位相検出部51aは、電気光学サンプリング部30からの電気信号S30における4トーンのうちの第1トーン(周波数:RfRF1)の位相を検出する。
【0262】
位相検出部51aは、マルチトーン信号サンプリング部120BのA/D変換器111aにより得られた補正済みマルチトーン信号を入力し、正弦関数および余弦関数を乗算し、2つの乗算結果をそれぞれ所定のサンプル数だけ積算し、逆正接関数により位相を算出するディジタル演算で実現される。また、位相検出部51aは、マルチトーン信号サンプリング部120BのA/D変換器111aにより得られた補正済みマルチトーン信号を入力してメモリに格納し、CPUによりオフラインで正弦関数および余弦関数を乗算し、所定のサンプル数だけ積算し、逆正接関数により位相を算出するようにしてもよい。
【0263】
同様に、位相検出部51c,51b,51dは、電気光学サンプリング部30からの電気信号S30における第2,第3,第4トーン(周波数:RfRF2,RfRF3,RfRF4)の位相を検出するようになっている。中間周波信号発生器11a~11dで発生する中間周波信号S~Sの位相差を補正するように逆正接関数による位相算出結果を補正してもよい。
【0264】
一般に、高周波信号の位相測定では絶対位相および位相の周波数傾斜が不定となるため、位相差算出部52では、4トーンの各位相の2階微分を算出し、電気光学サンプリング部30による位相差測定結果として出力する。2階微分を算出するために3トーンの位相が必要となり、4トーンの位相から2つの周波数における位相の2階微分が求まる。同様にして、Nトーンの位相からN-2点の周波数における位相の2階微分が求まるので、本手法は3トーン以上の任意のトーン数に拡張することができる。
【0265】
この処理を校正用信号S20の4トーンの周波数を変えて繰返し、所定の周波数範囲にわたって位相の2階微分値を測定する。位相の2階微分を2階積分することにより位相の周波数特性を得ることができる。以上のようにして、電気光学サンプリング部30による位相差測定結果S50が位相差算出部52から出力される。
【0266】
ミリ波帯信号測定部70を用いて校正用信号S20の位相差を測定する場合には、スイッチSW10、SW1、SW21、SW22、SW23、SW24を図21下側に、スイッチSW3およびSW4を同図上側に設定する。マルチトーン中間周波信号発生部25は、中間周波信号発生器26a~26dと、加算器27とを備えており、中間周波信号発生器26a~26dにより生成された、周波数の異なる4波の中間周波信号S11~S14を加算器27で合波して得られたマルチトーン中間周波信号S15を出力する。マルチトーン中間周波信号S15は、スイッチSW10を介して周波数変換部21に送られ、ミリ波帯の校正用信号S20にアップコンバートされる。校正用信号S20は、スイッチSW1、SW3を介してミリ波帯信号測定部70に入力される。
【0267】
中間周波信号変換部73には、周波数変換部72から出力された中間周波信号を再度周波数変換する第2の周波数変換器や、中間周波(IF)信号を同相(I)信号と直交(Q)信号に変換する直交周波数変換器等が含まれていてもよい。中間周波信号変換部73に周波数変換が含まれる場合は、局発信号S71の周波数に加えて中間周波信号変換部73の局発周波数も含めてミリ波帯信号測定部70の局発周波数と解釈する。なお、本実施形態の周波数変換部72と周波数変換を含む場合の中間周波信号変換部73とが、本発明のダウンコンバータに対応する。また中間周波信号変換部73には、中間周波信号またはI/Q信号をディジタル信号に変換するA/D変換器が含まれ、ディジタル信号をマルチトーン位相差測定部50Bまたは位相補正部74に向けて出力する。
【0268】
ミリ波帯信号測定部70の中間周波信号変換部73からの出力信号S70は、スイッチSW21~24を介してマルチトーン位相差測定部50Bの位相検出部51a~51dに入力される。マルチトーン位相差測定部50Bの位相検出部51a~51dにおいて4トーンの各位相が検出され、位相差算出部52において4トーンの各位相の2階微分が算出され、校正用信号S20の4トーンの周波数を変えて位相の2階微分値の測定を繰返し、位相の2階微分を2階積分することにより位相の周波数特性を得ることができ、ミリ波帯信号測定部70による位相差測定結果S50'として出力される。
【0269】
位相検出部51a~51dにおいて、中間周波信号発生器26a~26dで発生する中間周波信号S11~S14の位相差を補正するようにしてもよい。
【0270】
[校正方法]
次に、図21を参照して、ミリ波帯信号測定部70の周波数変換部(ダウンコンバータ)72、73の周波数特性を校正する方法を説明する。
ここでは、周波数特性を振幅Aと位相θを含む複素数A・ejθで表し、位相の周波数特性の校正および振幅・位相両方の周波数特性の校正のいずれにも適用できる。
【0271】
振幅の周波数特性は、A・ejθの実部をx、虚部をyとして位相検出部51a~51dの逆正接関数tan―1(y/x)の代わりに絶対値(x+y1/2を算出して求めてもよく、位相特性校正装置1Bとは別のスペクトラムアナライザで測定してもよく、CW信号を用いて位相特性校正装置1Bとは別のパワーメータで測定してもよい。
【0272】
校正用信号S20を電気光学サンプリング部30に入力した時の受光器33からの電気信号S30の周波数特性(複素数)をX(fEO)、校正用信号S20をミリ波帯信号測定部70に入力した時の中間周波信号変換部73からの出力信号S70の周波数特性(複素数)をY(fIF)、ミリ波帯信号測定部70の周波数変換部72、73の周波数特性(複素数)をG(fRF)とする。ここで、fEOは電気光学サンプリング部30でサンプリングされた電気信号S30の周波数、fIFはミリ波帯信号測定部70で周波数変換された信号S70の周波数、fRFは校正用信号S20およびミリ波帯信号S60の周波数である。
【0273】
前述のように、図21のスイッチSW10、SW1、SW21、SW22、SW23、SW24を同図上側に設定して校正用信号S20を電気光学サンプリング部30に入力し、マルチトーン位相差測定部50Bにて測定された位相からX(fEO)が求まる。また、スイッチSW10、SW1、SW21、SW22、SW23、SW24を同図下側に設定し、スイッチSW3とSW4を同図上側に設定し、校正用信号S20をミリ波帯信号測定部70に入力し、マルチトーン位相差測定部50Bにて測定された位相からY(fIF)が求まる。そして、次式より、G(fRF)を求めることができる。
G(fRF)=Y(fRF-fLO)/X(R・fRF) (5)
【0274】
ここで、fLOはミリ波帯信号測定部70の局発周波数、Rは光可変遅延器4の掃引レート(単位時間当たりの遅延時間変化量)である。位相補正値算出部55は、所望の周波数範囲にわたってG(fRF)を算出し、ミリ波帯信号測定部70の位相補正部74に出力する。
【0275】
被測定信号S60の周波数特性(複素数)をX(fRF),スイッチSW3およびSW4を同図下側に設定して被測定信号S60をミリ波帯信号測定部70に入力した時の中間周波信号変換部73からの出力信号S70'の周波数特性(複素数)をY(fIF)とすると、次式よりミリ波帯信号測定部70の周波数変換部72、73の位相特性が補正されたX(fRF)を求めることができる。
X(fRF)=Y(fRF-fLO)/G(fRF) (6)
【0276】
従って、ミリ波帯信号測定部70の中間周波信号変換部73からの出力信号S70'に対して、ミリ波帯信号測定部70の局発周波数fLOだけ周波数をシフトし、ミリ波帯信号測定部70の周波数変換部72、73の周波数特性G(fRF)で除算する処理を位相補正部74に設定することにより、ミリ波帯信号測定部70の周波数変換部72、73の周波数特性の補正が可能となる。
【0277】
例えば、中間周波数に変換されたミリ波帯信号測定部70の周波数変換部72、73の周波数特性(複素数)の逆数H(fIF)=1/G(fIF+fLO)をフーリエ逆変換してミリ波帯信号測定部70の中間周波数における時間領域のインパルス応答を算出し、そのインパルス応答を係数とするFIRディジタルフィルタを位相補正部74に構成することにより、ミリ波帯信号測定部70の中間周波信号を時間領域で補正することが可能である。ミリ波帯信号測定部70の中間周波信号変換部73において中間周波(IF)信号を同相(I)信号と直交(Q)信号に直交周波数変換する場合は、複素数のインパルス応答を算出し、複素FIRディジタルフィルタを使用すればよい。
【0278】
ミリ波帯信号送信部60は、例えば、中間周波信号発生部61と局発信号発生部62と周波数変換部63とからなる。図21のスイッチSW3とSW4を下側に設定してミリ波帯信号送信部60からの被測定信号S60をミリ波帯信号測定部70に入力し、中間周波信号変換部73からの出力信号S70'を位相補正部74に入力することにより、ミリ波帯信号測定部70の周波数変換部72、73の周波数特性が補正された測定結果を得ることができる。ミリ波帯信号測定部70の位相補正部74の後に、変調信号を解析してエラーベクトル振幅(Error Vector Magnitude;EVM)などを表示するシグナルアナライザの機能を含んでいてもよい。
【0279】
(第4の実施形態)
次に、図22を参照して、本発明の第4の実施形態に係る位相特性校正装置1Cを説明する。
【0280】
本実施形態に係る位相特性校正装置1Cは、マルチトーン信号サンプリング部120Cの構成が、第3の実施形態と異なっている。その他の構成は第3の実施形態と同一であり、同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は適宜省略する。
【0281】
具体的には、図22に示すように、マルチトーン信号サンプリング部120Cは、マルチトーン信号分離部40Bにより分離されたトーン信号をそれぞれディジタル信号に変換するA/D変換器111a、111b、111c、111dと、分周器107から出力された矩形波の高調波成分を遮断して正弦波に変換する低域通過フィルタ112と、低域通過フィルタ112の出力信号をA/D変換する第2A/D変換器113と、干渉信号を分周した信号を基に等位相間隔を検出し、検出した等位相間隔でA/D変換器111a、111b、111c、111dで得られたディジタル信号をそれぞれリサンプリングするリサンプリング処理部130Cと、を備えている。
【0282】
具体的には、リサンプリング処理部130Cは、第2A/D変換器113により得られたディジタル信号にヒルベルト変換を行うヒルベルト変換部114と、ヒルベルト変換部114の出力データから等位相間隔を検出する等位相間隔検出部115と、検出した等位相間隔でA/D変換器111a、111b、111c、111dの出力信号をそれぞれリサンプリングするリサンプリング部116a、116b、116c、116dと、を備えている。
【0283】
上記構成により、干渉信号を分周する分周器107の出力信号の等位相間隔で各トーン信号をリサンプルする構成により、電気光学サンプリング部30およびマルチトーン信号分離部40Bにより得られた各トーン信号を、光可変遅延器4の掃引速度によらず遅延量に対して一定の間隔でサンプリングすることができる。これにより、光可変遅延器4の掃引速度の不安定性に由来する、電気光学サンプリングで得られた信号の位相ゆらぎを補正することができる。また、第2の実施形態と同様に、必ずしもオーバーサンプル比r≧1を満たす分周比にする必要はなく、A/D変換器111a~111d、113が同じサンプリング周波数で動作するように分周比を設定することも可能である。
【0284】
(第5の実施形態)
次に、図23を参照して、本発明の第5の実施形態に係る位相特性校正装置1Dを説明する。
【0285】
本実施形態に係る位相特性校正装置1Dは、測定用中間周波信号S81を周波数変換(アップコンバート)して測定用信号S80'として出力するミリ波帯信号発生部80の周波数変換部84の位相の周波数特性を補正する点、基準信号で変調したマルチトーン中間周波信号S19をミリ波帯信号発生部80の局発信号発生部83と周波数変換部84とでアップコンバートして校正用信号としてミリ波帯信号S80を生成している点で、第1の実施形態と異なっている。その他の構成は第1の実施形態と同一であり、同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は適宜省略する。なお、本実施形態のミリ波帯信号S80、ミリ波帯信号発生部80および周波数変換部84が、本発明の校正用信号、信号発生部およびアップコンバータにそれぞれ対応する。
【0286】
図23に示すように、3トーン中間周波信号発生部10は、周波数の異なる3波以上の中間周波信号S,S,Sを合波し、3トーン中間周波信号S10を出力する。基準信号変調部17は、3トーン中間周波信号S10を基準信号S18で変調したマルチトーン中間周波信号S19を出力する。スイッチSW6およびSW7を同図上側に設定すると、ミリ波帯信号発生部80は、所定の周波数の局発信号S83を用いマルチトーン中間周波信号S19をミリ波帯信号発生部80のアップコンバータ84でアップコンバートして校正用信号としてのミリ波帯信号S80を生成する。そしてミリ波帯信号S80が電気光学サンプリング部30に入力される。
【0287】
次に、ミリ波帯信号発生部80の周波数変換部84の位相の周波数特性を校正する方法について説明する。
【0288】
図23に示す構成において、基準信号変調部17から出力されるマルチトーン中間周波信号S19の周波数特性(複素数)をXc1(fIF1)、ミリ波帯信号発生部80の周波数変換部84の周波数特性(複素数)をG(fRF)、ミリ波帯信号発生部80の周波数変換部84から出力されるミリ波帯信号S80を電気光学サンプリング部30に入力した時の受光器33からの電気信号S30の周波数特性(複素数)をYc1(fEO)とする。ここで、fIF1はマルチトーン中間周波信号S19の周波数(中間周波数)、fRFはミリ波帯信号S80および測定用信号S80'の周波数、fEOは電気光学サンプリング部30でサンプリングされた電気信号S30の周波数である。
【0289】
c1(fIF1)は、3トーン中間周波信号発生部10および基準信号変調部17で生成するマルチトーン中間周波信号S19の周波数特性なので既知であり、スイッチSW6およびSW7を図23上側に設定してミリ波帯信号発生部80の周波数変換部84から出力されるミリ波帯信号S80を電気光学サンプリング部30に入力し、3トーン位相差測定部50にて測定された位相からYc1(fEO)が求まり、次式よりG(fRF)を求めることができる。
(fRF)=Yc1(R・fRF)/Xc1(fRF-fLO1) (7)
ここで、fLO1はミリ波帯信号発生部80の局発信号S83の周波数、Rは光可変遅延器4の掃引レート(単位時間当たりの遅延時間変化量)である。
【0290】
位相補正値算出部55は、所望の周波数範囲にわたってG(fRF)を算出する。周波数変換部84の周波数特性の補正は、ミリ波帯信号発生部80の位相補正部82において補正する方法と、ミリ波帯信号受信部90の中間周波信号変換部93の後に位相補正部を配置して周波数特性を補正する方法がある。図23は前者の場合を示している。
【0291】
前者の場合は、ミリ波帯信号発生部80の中間周波数に変換された周波数変換部84の周波数特性(複素数)の逆数H(fIF1)=1/G(fIF1+fLO1)をフーリエ逆変換してミリ波帯信号発生部80の中間周波数における時間領域のインパルス応答を算出し、そのインパルス応答を係数とするFIRディジタルフィルタをミリ波帯信号発生部80の中間周波信号発生部81からの信号にかければよい。
【0292】
後者の場合は、ミリ波帯信号受信部90の中間周波数に変換された周波数変換部84の周波数特性(複素数)の逆数H(fIF2)=1/G(fIF2+fLO2)をフーリエ逆変換してミリ波帯信号受信部90の中間周波数における時間領域のインパルス応答を算出し、そのインパルス応答を係数とするFIRディジタルフィルタをミリ波帯信号受信部90の中間周波信号変換部93からの信号にかければよい。ここで、fIF2はミリ波帯信号受信部90の中間周波信号S90の周波数、fLO2はミリ波帯信号受信部90の局発信号S91の周波数である。ミリ波帯信号受信部90は、例えば、局発信号発生部91と周波数変換部92と中間周波信号変換部93とからなる。ミリ波帯信号受信部90の中間周波信号変換部93に周波数変換が含まれる場合は、fLO2は局発信号S91の周波数に加えて中間周波信号変換部93の局発周波数も含めたものと解釈する。
【0293】
スイッチSW6とSW7を図23下側に設定し、ミリ波帯信号発生部80の中間周波信号発生部81から出力される任意の中間周波信号S81を位相補正部82に入力して位相補正を行い、局発信号発生部83と周波数変換部84とでアップコンバートしてミリ波帯の測定用信号S80'を生成し、ミリ波帯信号受信部90に入力することにより、周波数変換部84の周波数特性が補正された測定用信号S80'を測定対象であるミリ波帯信号受信部90で受信した結果を得ることができる。もしくは、ミリ波帯信号発生部80の中間周波信号発生部81から出力される任意の中間周波信号S81を局発信号発生部83と周波数変換部84とでアップコンバートして位相未補正の測定用信号を生成し、ミリ波帯信号受信部90に入力し、中間周波信号変換部93から出力される信号に対して位相補正を行うことにより、周波数変換部84の周波数特性が補正された測定用信号S80'を測定対象であるミリ波帯信号受信部90で受信した場合に相当する結果を得ることができる。
【0294】
ミリ波帯信号発生部80の中間周波信号発生部81で発生する中間周波信号S81をQPSKなどの変調信号とし、ミリ波帯信号受信部90から出力される変調信号を解析してエラーベクトル振幅(EVM)などを表示するようにしてもよい。
【0295】
(第6の実施形態)
次に、図24を参照して、本発明の第6の実施形態に係る位相特性校正装置1Eを説明する。
【0296】
本実施形態に係る位相特性校正装置1Eは、マルチトーン中間周波信号発生・基準信号変調部10B、マルチトーン信号分離部40B、マルチトーン信号サンプリング部120B、およびマルチトーン位相差測定部50Bの構成が、第5の実施形態と異なっている。その他の構成は第5の実施形態と同一であり、同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は適宜省略する。
【0297】
具体的には、図24に示すように、マルチトーン中間周波信号発生・基準信号変調部10Bは、周波数の異なる3波以上の中間周波信号S,S,S,Sを、中間周波信号と同一個数の互いに直交した基準信号S,S,S,Sでそれぞれ変調し合波したマルチトーン中間周波信号S10を出力する。スイッチSW6およびSW7を同図上側に設定すると、ミリ波帯信号発生部80は、所定の周波数の局発信号S83を用いマルチトーン中間周波信号S10をミリ波帯信号発生部80のアップコンバータ84でアップコンバートして校正用信号としてのミリ波帯信号S80を生成する。そしてミリ波帯信号S80が電気光学サンプリング部30に入力される。
【0298】
マルチトーン信号分離部40B、マルチトーン信号サンプリング部120B、およびマルチトーン位相差測定部50Bの構成は、第3の実施形態と同じである。また、ミリ波帯信号発生部80のアップコンバータ84の位相特性の校正方法は、第5の実施形態と同じである。
【0299】
上記構成により、本実施形態に係る位相特性校正装置1Eは、測定用中間周波信号をアップコンバートして測定用信号として出力するミリ波帯信号発生部80のアップコンバータの位相の周波数特性を補正するために、校正用信号S80を電気光学サンプリング部30に入力し、マルチトーン信号分離部40Bにて各トーン信号に分離し、マルチトーン位相差測定部50Bにて位相を測定する際、干渉信号の周波数を分周して得られた信号に従って、各トーン信号をサンプリングしているので、光可変遅延器4の掃引速度の不安定性等に起因する各トーン信号の位相のゆらぎを低減し、SN比を向上させることができる。
【0300】
(第7の実施形態)
次に、図25を参照して、本発明の第7の実施形態に係る位相特性校正装置1Fを説明する。本実施形態に係る位相特性校正装置1Fは、マルチトーン信号サンプリング部120Aの構成が、第5の実施形態(図23)と異なっており、その他の構成は第5の実施形態と同一であり、同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は適宜省略する。
【0301】
マルチトーン信号サンプリング部120Aの構成は、第2の実施形態(図20)と同じである。図25に示すように、マルチトーン信号サンプリング部120Aは、ロックイン検出部40から出力されたマルチトーン信号をディジタル信号に変換するA/D変換器111と、分周器107から出力された矩形波の高調波成分を遮断して正弦波に変換する低域通過フィルタ112と、低域通過フィルタ112の出力信号をA/D変換する第2A/D変換器113と、干渉信号を分周した信号を基に等位相間隔を検出し、検出した等位相間隔でA/D変換器111から出力されたディジタル信号をリサンプリングするリサンプリング処理部130とを備えている。
【0302】
また、ミリ波帯信号発生部80のアップコンバータ84の位相特性の校正方法は、第5の実施形態で説明した校正方法と同じであるので、説明は省略する。
【0303】
上記構成により、第7の実施形態に係る位相特性校正装置1Fは、測定用中間周波信号をアップコンバートして測定用信号として出力するミリ波帯信号発生部80のアップコンバータの位相の周波数特性を補正するために、校正用信号としてのミリ波帯信号S80を電気光学サンプリング部30に入力し、ロックイン検出部40にてマルチトーン信号を検出し、3トーン位相差測定部50にて位相を測定する際、干渉信号の周波数を分周して得られた信号に従って、各トーン信号をリサンプリングしているので、光可変遅延器4の掃引速度の不安定性等に起因する各トーン信号の位相のゆらぎを低減し、SN比を向上させることができ、以って位相特性校正の精度を改善することができる。
【0304】
(第8の実施形態)
次に、図26を参照して、本発明の第8の実施形態に係る位相特性校正装置1Gを説明する。本実施形態に係る位相特性校正装置1Gは、マルチトーン信号サンプリング部120Cの構成が、第6の実施形態(図24)と異なっており、その他の構成は第6の実施形態と同一であり、同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は適宜省略する。
【0305】
マルチトーン信号サンプリング部120Cの構成は、第4の実施形態(図22)と同じである。図26に示すように、マルチトーン信号サンプリング部120Cは、マルチトーン信号分離部40Bにより分離された各トーン信号をそれぞれディジタル信号に変換するA/D変換器111a、111b、111c、111dと、分周器107から出力された矩形波の高調波成分を遮断して正弦波に変換する低域通過フィルタ112と、低域通過フィルタ112の出力信号をA/D変換する第2A/D変換器113と、干渉信号を分周した信号を基に等位相間隔を検出し、検出した等位相間隔でA/D変換器111a、111b、111c、111dで得られたディジタル信号をそれぞれリサンプリングするリサンプリング処理部130Cとを備えている。
【0306】
ミリ波帯信号発生部80のアップコンバータ84の位相特性の校正方法は、第6の実施形態で説明した校正方法と同じであるので、説明は省略する。
【0307】
上記構成により、第8の実施形態に係る位相特性校正装置1Gは、測定用中間周波信号をアップコンバートして測定用信号として出力するミリ波帯信号発生部80のアップコンバータの位相の周波数特性を補正するために、校正用信号としてのミリ波帯信号S80を電気光学サンプリング部30に入力し、マルチトーン信号分離部40Bにて各トーン信号に分離し、マルチトーン位相差測定部50Bにて位相を測定する際、干渉信号の周波数を分周して得られた信号に従って、各トーン信号をリサンプリングしているので、光可変遅延器4の掃引速度の不安定性等に起因する各トーン信号の位相のゆらぎを低減し、SN比を向上させることができ、以って位相特性校正の精度を改善することができる。
【産業上の利用可能性】
【0308】
以上述べたように、本発明は、干渉計にCW光源が不要で費用対効果が高いという効果を有し、位相特性校正装置および位相特性校正方法の全般に有用である。
【符号の説明】
【0309】
1、1A、1B、1C、1D、1E、1G 位相特性校正装置
2 短パルス光源(パルス光源)
3 光分岐器
4、204 光可変遅延器(可変遅延器)
5 同期処理部
10 3トーン中間周波信号発生部
10B マルチトーン中間周波信号発生・基準信号変調部(マルチトーン中間周波信号発生部)
11a、11b、11c、11d 中間周波信号発生器
12a、12b 基準信号発生器
13a、13b、13c、13d 変調器
14a、14b 90度移相器
15 加算器
16 基準同期信号発生器
17 基準信号変調部
18 局発信号発生部
19 変調器
20 校正用信号生成部
21 周波数変換部
22 局発信号発生部
30 電気光学サンプリング部
31 電気光学結晶
32 偏波分離部
33 受光器
40 ロックイン検出部
40B マルチトーン信号分離部(ロックイン検出部)
41a、41b 基準信号発生器
42a、42b 移相器
43a、43b 90度移相器
44a、44b、44c、44d 変調器
45a、45b、45c、45d 低域通過フィルタ
50 3トーン位相差測定部
50B マルチトーン位相差測定部
51a、51b、51c、51d 位相検出部
52 位相差算出部
55 位相補正値算出部
60 ミリ波帯信号送信部
70 ミリ波帯信号測定部(信号測定部)
72 周波数変換部(ダウンコンバータ)
73 中間周波信号変換部(ダウンコンバータ)
80 ミリ波帯信号発生部(信号発生部)
82 位相補正部
83 局発信号発生部
84 周波数変換部(アップコンバータ)
90 ミリ波帯信号受信部
91 局発信号発生部
92 周波数変換部
93 中間周波信号変換部
100 遅延量補正部
101 CW光源
102、103、104 光分波器
105 光合波器
105A、105B 光合分波器
106 受光器
106A 差動受光器
107 分周器
108、108A、108B、108a、108b、108c 光BPF
108d 波長フィルタ
110、110A、110B、110C、110D、110E 干渉計
111、111a、111b、111c、111d A/D変換器
112 低域通過フィルタ
113 A/D変換器(第2A/D変換器)
114 ヒルベルト変換器
115 等位相間隔検出部
116、116a、116b、116c、116d リサンプリング部
120、120A、120B、120C マルチトーン信号サンプリング部
130、130C リサンプリング処理部
図1
図2
図3
図4
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