(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178672
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】5-ヒドロキシ-2-アダマンタノンの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 45/64 20060101AFI20241218BHJP
C07C 49/513 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
C07C45/64
C07C49/513
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096993
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】301005614
【氏名又は名称】東ソー・ファインケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 翔太
(72)【発明者】
【氏名】松添 紗久良
(72)【発明者】
【氏名】讃井 佳奈子
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB20
4H006AB46
4H006AB84
4H006AB92
4H006AC41
4H006BB70
4H006BC37
4H006BE02
4H006BE03
(57)【要約】
【課題】簡便かつ生産性の高い5-ヒドロキシ-2-アダマンタノンの製造方法の提供。
【解決手段】5-ヒドロキシ-2-アダマンタノンの製造方法は、硫酸及び硝酸を含む混酸を用いて2-アダマンタノンを酸化することを含み、混酸中の水分濃度が4.0質量%以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸及び硝酸を含む混酸を用いて2-アダマンタノンを酸化することを含む、5-ヒドロキシ-2-アダマンタノンの製造方法であって、前記混酸中の水分濃度が4.0質量%以下である、5-ヒドロキシ-2-アダマンタノンの製造方法。
【請求項2】
前記硝酸として濃硝酸又は発煙硝酸を用いる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記硫酸として濃硫酸又は発煙硫酸を用いる請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記硫酸と前記硝酸の質量比が90:10~50:50である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記硝酸として発煙硝酸を用い、前記硫酸として発煙硫酸を用い、発煙硫酸と発煙硝酸の質量比が90:10~50:50である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
出発物質である2-アダマンタノンの純度が90~100%である請求項1又は2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5-ヒドロキシ-2-アダマンタノンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
5-ヒドロキシ-2-アダマンタノン(HAdON)は、慢性疲労症候群、結核、アレルギー性気管支喘息等の医薬品の中間体として使用されている。HAdONは、近年半導体製造用フォトレジスト等の電子材料としても利用されている。用途が多岐にわたるため、HAdONの需要が高まっている。
【0003】
HAdONは、一般に2-アダマンタノン(AdON)の酸化によって合成される。例えば、特許文献1(インド特許出願番号1779/DEL/2014)は、濃硫酸と50%硝酸を用いる方法を記載している。特許文献2(ロシア国特許第2104994号明細書)は、濃硫酸、68%硝酸及び触媒量の亜硝酸ナトリウム又は二酸化マンガンを用いる方法を記載している。特許文献3(ロシア国特許第2319688号明細書)は、濃硫酸、66.2%硝酸及び触媒量の酢酸を用いる方法を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】インド特許出願番号1779/DEL/2014
【特許文献2】ロシア国特許第2104994号明細書
【特許文献3】ロシア国特許第2319688号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術の問題点として、AdONをHAdONに転化させる反応が遅いため、生産性が低いことが挙げられる。反応時間について、例えば、特許文献1では12時間、特許文献2では8~10時間、特許文献3では12時間であることが報告されている。そのため、生産性が高いHAdONの製造方法の開発が望まれている。
【0006】
本発明の目的は、簡便かつ生産性の高いHAdONの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、混酸(硫酸及び硝酸を含む混合物)を用いたAdONの酸化によりHAdONを製造する方法において、反応系中に混入する水分量を低く制御することにより、反応速度を高めることができることを見出し、その結果、簡便かつ高い生産性でHAdONを製造する方法を確立した。
【0008】
本開示は以下の態様を包含する。
[態様1]
硫酸及び硝酸を含む混酸を用いて2-アダマンタノンを酸化することを含む、5-ヒドロキシ-2-アダマンタノンの製造方法であって、前記混酸中の水分濃度が4.0質量%以下である、5-ヒドロキシ-2-アダマンタノンの製造方法。
[態様2]
前記硝酸として濃硝酸又は発煙硝酸を用いる態様1に記載の方法。
[態様3]
前記硫酸として濃硫酸又は発煙硫酸を用いる態様1又は2に記載の方法。
[態様4]
前記硫酸と前記硝酸の質量比が90:10~50:50である態様1~3のいずれか一態様に記載の方法。
[態様5]
前記硝酸として発煙硝酸を用い、前記硫酸として発煙硫酸を用い、発煙硫酸と発煙硝酸の質量比が90:10~50:50である態様1~4のいずれか一態様に記載の方法。
[態様6]
出発物質である2-アダマンタノンの純度が90~100%である態様1~5のいずれか一態様に記載の方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、HAdONを簡便かつ高い生産性で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示において「濃硫酸」とは、硫酸の質量比率が90%以上の硫酸溶液(但し発煙硫酸を除く)を意味する。
【0011】
本開示において「発煙硫酸」とは、濃硫酸に三酸化硫黄(SO3)を吸収させたものを意味する。一実施形態では、発煙硫酸中の遊離SO3の質量比率は1~60%である。
【0012】
本開示において「濃硝酸」とは、硝酸の質量比率が60%以上の硝酸溶液(但し発煙硝酸を除く)を意味する。
【0013】
本開示において「発煙硝酸」とは、濃硝酸に二酸化窒素(NO2)を吸収させたものを意味する。一実施形態では、発煙硝酸中の硝酸の質量比率は70%以上である。
【0014】
本発明はHAdONの製造方法を提供する。一実施形態のHAdONの製造方法は、硫酸及び硝酸を含む混酸を用いてAdONを酸化することを含み、混酸中の水分濃度は4.0質量%以下である。
【0015】
AdONの酸化反応によるHAdONの合成に係る反応式を以下に示す。
【化1】
【0016】
出発物質であるAdONは、例えば、硫酸を用いたアダマンタン(Ad)の酸化により得ることができる。硫酸を用いたAdの酸化では、目的生成物であるAdON以外に樹脂状の副生物が生成することが知られている(特開平11-189564号公報の比較例1、特開2003-212810号公報の明細書段落0003等を参照)。いかなる理論に拘束される訳ではないが、樹脂状副生物の成分には、Adの酸化により生じたアダマンタノール(AdOH)とAdONが反応して形成されたヘミアセタール構造(ヘミケタール構造)を介してアダマンタン骨格が連結された高分子が含まれると推定される。ヘミアセタール構造を有する樹脂状副生物は、AdONの酸化反応の際に競争して酸化される可能性があり、その結果、AdONのHAdONへの酸化反応が遅くなるおそれがある。そのため、出発物質であるAdONは、上述の樹脂状副生物を実質的に含まないことが好ましい。特に、AdONの純度は70%以上、例えば90~100%であることが好ましく、95~100%であることがより好ましく、98~100%であることが更に好ましい。
【0017】
混酸は硫酸及び硝酸を含む。
【0018】
硫酸としては、濃硫酸又は発煙硫酸を用いることが好ましく、発煙硫酸を用いることがより好ましい。発煙硫酸中のSO3は脱水作用を有するため、反応系中の水分量を効果的に低減することができる。
【0019】
硝酸としては、濃硝酸又は発煙硝酸を用いることが好ましく、発煙硝酸を用いることがより好ましい。
【0020】
混酸中の水分濃度を効果的に低減できることから、混酸は発煙硫酸と発煙硝酸とからなることが好ましい。
【0021】
混酸中の水分濃度は4.0質量%以下である。これにより、AdONの酸化反応の速度を高めて、HAdONを高い生産性で製造することができる。混酸中の水分濃度は、好ましくは3.5質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下、更に好ましくは2.5質量%以下である。混酸中の水分濃度の下限値は特に限定されないが、例えば0.5質量%、又は1.0質量%とすることができる。
【0022】
硫酸と硝酸の質量比は特に限定されないが、例えば硫酸:硝酸=90:10~50:50とすることができ、好ましくは90:10~70:30、より好ましくは90:10~80:20である。硝酸が発煙硝酸であり、硫酸が濃硫酸又は発煙硫酸である実施形態では、濃硫酸又は発煙硫酸と発煙硝酸の質量比(濃硫酸又は発煙硫酸:発煙硝酸)は、好ましくは90:10~50:50、より好ましくは90:10~70:30、更に好ましくは90:10~80:20である。ここで規定する質量比は、有効成分(硫酸及び硝酸)の質量に基づく値であり、水分の質量を含まない。
【0023】
反応開始時の反応系中のAdON濃度は、特に限定されないが、例えば、1質量%~15質量%、2質量%~10質量%、又は3質量%~8質量%とすることができる。
【0024】
混酸の使用量は、1モルのAdONに対して、硝酸が好ましくは1モル~100モル、より好ましくは1モル~50モル、更に好ましくは1モル~30モルとなるように設定される。混酸の使用量を上記範囲とすることで、AdONの酸化反応によるHAdONの生産性を高めつつ副反応を抑制して、HAdONの収率及び純度を高めることができる。
【0025】
反応系中の水分濃度は、好ましくは3.5質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下、更に好ましくは2.5質量%以下である。反応系中の水分濃度を上記範囲とすることで、AdONの酸化反応の速度を高めて、HAdONを高い生産性で製造することができる。反応系中の水分濃度の下限値は特に限定されないが、例えば0.5質量%、又は1.0質量%とすることができる。
【0026】
反応温度は、一般に10℃~60℃の範囲とすることができ、好ましくは20℃~40℃の範囲である。
【0027】
反応時間は、一般に10分~8時間とすることができ、好ましくは20分~6時間、より好ましくは0.5時間~4時間である。
【0028】
反応は例えば以下の手順で行うことができる。硫酸にAdONを溶解させる。AdONの硫酸溶液に氷冷下で硝酸を滴下する。反応系を所定の反応温度まで昇温し、所定の反応時間撹拌することにより反応を完結させる。
【0029】
反応終了後は、常法に従い反応液を中和した後、生成物を抽出する。続いて、溶媒を留去した後、通常の精製操作、例えば再結晶などの操作により、目的とするHAdONを得ることができる。
【0030】
反応液の中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、及びアンモニア水溶液が挙げられる。中和剤として水酸化ナトリウム水溶液を用いることにより、HAdONの収率を高めることができる。いかなる理論に拘束される訳ではないが、中和剤と硫酸の反応によって生成する硫酸塩の種類が抽出効率に影響しており、ナトリウム塩は抽出効率により有利に作用すると考えられる。
【0031】
生成物の抽出は、例えば、ヘキサン、ジクロロメタンなどの有機溶媒を用いて行うことができる。より高純度のHAdONを得たい場合、2種以上の抽出溶媒を用いて、2段以上の多段抽出を行うことが有利である。例えば、ヘキサンを用いて未反応のAdON及びその他の副生物の除去を行った後、ヘキサン抽出後の水層をジクロロメタンで更に抽出することにより、高純度のHAdONを得ることができる。
【0032】
反応液の中和の前に反応液を水で希釈してもよい。反応液の中和の前に反応液を水で希釈することにより、中和条件を穏やかなものとして2,6-アダマンタンジオンなどの副生物の生成を抑制することができ、これによりHAdONの純度を更に高めることができる。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載によってのみ規定される。本発明の趣旨を逸脱しないことを条件として、本発明の変更、例えば、本発明の構成要件の追加、削除及び置換を行うことができる。例えば、使用する材料、各種条件等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【実施例0034】
以下に、本発明を実施例に基づいて更に詳しく説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0035】
HAdONの収率及び純度は、ガスクロマトグラフィー(GC)を用いて下記条件により求めた値である。
GC装置:GC-2010Plus(株式会社島津製作所製)
カラム:DB-1(アジレント・テクノロジー株式会社製)
検出器:FID
昇温プロファイル:100℃から昇温速度5℃/minで280℃まで昇温し、4分間保持
キャリアガス:ヘリウム
スプリット比:50
【0036】
実施例で使用したAdONの純度は98%であった。
【0037】
実施例1
100mL三ツ口フラスコに98%硫酸を26.45g(0.26mol)、AdONを3.32g(0.02mol)加え、溶解させた。続いて、氷冷下で発煙硝酸を9.23g(0.14mol)滴下した。滴下後、反応系を35℃に昇温し、1時間撹拌した。反応終了後、アンモニア水溶液で反応液を中和し、ジクロロメタン(20mL)で3回抽出した。エバポレーターで溶媒を留去し、固形分を得た。固形分のガスクロマトグラフィー分析によりHAdONの収率を算出したところ、59.6%(純度71.5%)であった。
【0038】
実施例2
100mL三ツ口フラスコに98%硫酸を26.14g(0.26mol)、AdONを3.31g(0.02mol)加え、溶解させた。続いて、氷冷下で発煙硝酸を9.26g(0.14mol)滴下した。滴下後、反応系を35℃に昇温し、2時間撹拌した。反応終了後、アンモニア水溶液で反応液を中和し、ジクロロメタン(20mL)で3回抽出した。エバポレーターで溶媒を留去し、固形分を得た。固形分のガスクロマトグラフィー分析によりHAdONの収率を算出したところ、67.2%(純度79.3%)であった。
【0039】
実施例3
100mL三ツ口フラスコに98%硫酸を44.96g(0.45mol)、AdONを3.33g(0.02mol)加え、溶解させた。続いて、氷冷下で発煙硝酸を8.77g(0.14mol)滴下した。滴下後、反応系を35℃に昇温し、1.5時間撹拌した。反応終了後、アンモニア水溶液で反応液を中和した。続いて、ヘキサン(20mL)中に未反応のAdON及びその他の副生物を抽出した後、ヘキサン抽出後の水層をジクロロメタン(20mL)で3回抽出した。エバポレーターで溶媒を留去し、固形分を得た。固形分のガスクロマトグラフィー分析によりHAdONの収率を算出したところ、42.1%(純度94.7%)であった。
【0040】
実施例4
100mL三ツ口フラスコに98%硫酸を29.99g(0.30mol)、AdONを3.31g(0.02mol)加え、溶解させた。続いて、氷冷下で発煙硝酸を22.33g(0.34mol)滴下した。滴下後、反応系を35℃に昇温し、1.5時間撹拌した。反応終了後、アンモニア水溶液で反応液を中和した。続いて、ヘキサン(20mL)中に未反応のAdON及びその他の副生物を抽出した後、ヘキサン抽出後の水層をジクロロメタン(20mL)で3回抽出した。エバポレーターで溶媒を留去し、固形分を得た。固形分のガスクロマトグラフィー分析によりHAdONの収率を算出したところ、42.9%(純度94.0%)であった。
【0041】
実施例5
100mL三ツ口フラスコに98%硫酸を101.99g(1.02mol)、AdONを6.59g(0.04mol)加え、溶解させた。続いて、氷冷下で発煙硝酸を17.66g(0.27mol)滴下した。滴下後、反応系を35℃に昇温し、1.5時間撹拌した。反応終了後、水99.11gで希釈を行い、アンモニア水溶液で反応液を中和した。続いて、ヘキサン(40mL)中に未反応のAdON及びその他の副生物を抽出した後、ヘキサン抽出後の水層をジクロロメタン(40mL)で3回抽出した。エバポレーターで溶媒を留去し、固形分を得た。固形分のガスクロマトグラフィー分析によりHAdONの収率を算出したところ、34.8%(純度97.3%)であった。
【0042】
実施例6
100mL三ツ口フラスコに98%硫酸を101.80g(1.02mol)、AdONを6.65g(0.04mol)加え、溶解させた。続いて、氷冷下で発煙硝酸を17.63g(0.27mol)滴下した。滴下後、反応系を35℃に昇温し、1.5時間撹拌した。反応終了後、水97.24gで希釈を行い、水酸化ナトリウム水溶液で反応液を中和した。続いて、ヘキサン(40mL)中に未反応のAdON及びその他の副生物を抽出した後、ヘキサン抽出後の水層をジクロロメタン(40mL)で3回抽出した。エバポレーターで溶媒を留去し、固形分を得た。固形分のガスクロマトグラフィー分析によりHAdONの収率を算出したところ、39.7%(純度97.9%)であった。
【0043】
実施例7
撹拌翼付きの2Lセパラブルフラスコに98%硫酸を1556.03g(15.55mol)、AdONを101.24g(0.67mol)加え、溶解させた。続いて、氷冷下で発煙硝酸を275.45g(4.24mol)滴下した。滴下後、反応系を35℃に昇温し、1.5時間撹拌した。反応終了後、水1500gで希釈を行い、水酸化ナトリウム水溶液10.8kgで反応液を中和した。続いて、ヘキサン(3.3L)中に未反応のAdON及びその他の副生物を2回抽出した後、ヘキサン抽出後の水層をジクロロメタン(700mL)で6回抽出した。エバポレーターで溶媒を留去し、固形分を得た。固形分のガスクロマトグラフィー分析によりHAdONの収率を算出したところ、49.2%(純度96.3%)であった。
【0044】
実施例1~7の条件及び結果を表1に示す。比較例1として特許文献1(インド特許出願番号1779/DEL/2014)、比較例2として特許文献2(ロシア国特許第2104994号明細書)、比較例3として特許文献3(ロシア国特許第2319688号明細書)の条件及び結果を表1に再掲する。
【0045】
【0046】
実施例1~7の結果から、混酸中の水分濃度を4.0質量%以下とすることにより、比較例1~3と比べて顕著に短い反応時間(1~2時間)でHAdONを製造できることが分かる。2種以上の抽出溶媒(ヘキサン及びジクロロメタン)を用いて、多段抽出を行うことにより、HAdONの純度を高めることができることが分かる(実施例3~7)。抽出前に反応液を水で希釈することにより、HAdONの純度を更に高めることができる(実施例5~7)。反応液の中和剤としてNaOHを用いることにより、HAdONの収率を高めることができる(実施例6~7)。