(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178678
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】内視鏡用洗浄器具
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20241218BHJP
A61B 1/12 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
A61B1/00 650
A61B1/12 531
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097001
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】390032919
【氏名又は名称】九州クリエートメディック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104237
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】樋口 諒太郎
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 晋一
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161GG05
4C161GG14
4C161HH04
4C161HH08
(57)【要約】
【課題】内視鏡の光学端面を全体的に満遍なく確実に洗浄することが可能であり、しかも、光学端面における洗浄後の残液を確実に除去することも可能であり、光学端面の観察視野を容易に良好な状態に保つことができる内視鏡用洗浄器具を提供する。
【解決手段】内視鏡1に装着する本体部11と、本体部11の内側に設けられ、洗浄用の液体および気体が通る一対の送通路12,13と、本体部11の先端側に設けられ、各送通路12,13から供給された洗浄用の液体および気体を内視鏡1の光学端面に向けて噴出する先端部20とを有する。先端部20のキャップ27の内側に、各送通路12,13に連通する一対のノズル28,29が、互いに異なる形状の内腔として形成され、各ノズル28,29より、洗浄用の液体または気体を光学端面に向けて噴出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の軸方向に亘って装着され、該内視鏡の先端側にある光学端面を洗浄可能な内視鏡用洗浄器具において、
前記内視鏡の外周に装着する長尺な筒状に形成され、先端側開口より前記光学端面を露出させる本体部と、
前記本体部の内側で軸方向に沿って設けられ、前記本体部の基端側から供給する洗浄用の液体および気体が別々に通る一対の送通路と、
前記本体部の先端側に設けられ、前記各送通路を通り供給された洗浄用の液体および気体をそれぞれ前記光学端面に向けて噴出する先端部と、を有し、
前記先端部は、前記本体部の先端側開口に連通した状態で接続された筒状の先端本体と、該先端本体の前端開口の一端側に被さるキャップと、からなり、
前記キャップの内側に、前記各送通路にそれぞれ連通する一対のノズルが、互いに異なる形状の内腔として形成され、各ノズルは、前記キャップの中心線を間にして並び、前記キャップの中心線の一端側で前記各送通路の終端を臨む流入端から、前記キャップの中心線の他端側で洗浄用の液体または気体を前記光学端面に向けて噴出する噴出端に至ることを特徴とする内視鏡用洗浄器具。
【請求項2】
前記キャップは、前記先端本体の前端開口の一端側に被さる弓形に形成され、
前記各ノズルは、前記キャップの弓形の頂端側から反対側の弦端縁に対して直交する前記中心線を間にして略平行に並び、
前記各ノズルのうち洗浄用の液体が通る前記送通路に連通する送液用ノズルは、前記各ノズルのうち洗浄用の気体が通る前記送通路に連通する送気用ノズルよりも、少なくとも前記噴出端の開口面積が小さく設定されたことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡用洗浄器具。
【請求項3】
前記送液用ノズルは、前記送気用ノズルよりも、前記キャップの厚さ方向に深い内腔として形成され、
前記送液用ノズルは、その前記噴出端の少なくとも一部が、前記キャップの弦端縁を貫通すると共に前記先端本体側に開口する一方、
前記送気用ノズルは、その前記噴出端が、前記キャップの弦端縁の手前で前記先端本体側に開口したことを特徴とする請求項2に記載の内視鏡用洗浄器具。
【請求項4】
前記送液用ノズルは、その前記噴出端の両側壁のうち前記中心線寄りの一側壁が、前記中心線に近づく方向に傾斜し、
前記送気用ノズルは、その前記噴出端を含む下半側の両側壁のうち前記中心線寄りの一側壁が、前記中心線に近づき交差する方向に傾斜して開口面積が漸次拡大したことを特徴とする請求項3に記載の内視鏡用洗浄器具。
【請求項5】
前記本体部の基端側に設けられ、該本体部および前記先端部を前記内視鏡の外周に対して移動不能に固定する固定部を有することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡用洗浄器具。
【請求項6】
前記固定部は、ヒンジにより開閉する一対の挟持片の一方から他方に貫通するネジの締め付けにより、前記内視鏡の外周に対して固定可能であることを特徴とする請求項5に記載の内視鏡用洗浄器具。
【請求項7】
前記本体部は、熱収縮可能な材料から形成され、前記内視鏡の外周、および前記先端部と前記固定部との外周の一部に被せた状態で熱収縮することにより、前記内視鏡、および前記先端部と前記固定部とに一体に装着されたことを特徴とする請求項6に記載の内視鏡用洗浄器具。
【請求項8】
前記各送通路は、それぞれパイプから形成され、該2本のパイプは前記本体部の内周に沿って略平行に延びる状態に配され、前記本体部の熱収縮により前記内視鏡の外周と前記本体部の内周との間に固定されたことを特徴とする請求項7に記載の内視鏡用洗浄器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡の軸方向に亘って装着され、該内視鏡の基端側にある光学端面を洗浄可能な内視鏡用洗浄器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より医療分野における内視鏡下手術では、内視鏡の先端側にある光学端面であるレンズに、血液等の汚れが付着したり、あるいは結露による曇りが発生する度に、体腔内から内視鏡をいったん外に抜き出す。そして、レンズの汚れや曇りを拭き取り、再び体腔内へ戻している。このような光学端面の拭き取り作業によって、手技が度々中断され、術者のストレスや手術時間の増大を招くという問題があった。
【0003】
かかる問題を解決するために、例えば内視鏡に専用の洗浄器具および洗浄用装置を組み合わせた内視鏡システムが、各社より既に発売されている。このような内視鏡システムは、一般に洗浄用の送水および送気のための別途装置が必要であり、システム全体として大がかりで高価であることや、使用時に洗浄用装置の準備や据え付け等が必要であり、煩雑となるため普及していないのが実情であった。
【0004】
そのため、より簡易な構成により、いわゆる硬性内視鏡のレンズを洗浄するために、既存の内視鏡に外付け可能な各種装置も既に提案されている。例えば特許文献1,2には、いずれも内視鏡のシースに装着可能な管状の本体部を備え、この本体部の先端側に、別々の経路より供給した洗浄用の液体および気体を、それぞれ一つのノズルからレンズに向けて噴出する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-220838号公報
【特許文献2】特許第5053904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した特許文献に記載された装置では、いずれもノズルから噴出した洗浄用の液体および気体を、内視鏡のレンズの表面全体に向けて満遍なく噴出させるための構造的な工夫が乏しく、レンズに洗浄ムラが生じるという問題があった。そのため、この種の装置に関しては、内視鏡の光学端面を体腔内でも確実に洗浄するための改良が希求されていた。
【0007】
また、前述した特許文献に記載された装置では、液体および気体を混合して噴出する場合だけでなく、後から気体のみ選択的に噴出したとしても、ノズル内に残った水滴が気体に混ざって霧状となり、光学端面にそのまま付着する虞もあった。そこで、例えばノズルを送液用と送気用の2つに分けて設けたとしても、単にノズルを2つ設けるだけでは構成が嵩張るものとなり、体腔内での使用に適するように小型化することは困難であった。
【0008】
本発明は、以上のような従来技術が有する問題点に着目してなされたものであり、簡易かつコンパクトな構成でもって、内視鏡の光学端面を全体的に満遍なく確実に洗浄することが可能であり、しかも、光学端面における洗浄後の残液を確実に除去することも可能であり、光学端面の観察視野を容易に良好な状態に保つことができる内視鏡用洗浄器具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、前記した目的を達成するために、
内視鏡の軸方向に亘って装着され、該内視鏡の先端側にある光学端面を洗浄可能な内視鏡用洗浄器具において、
前記内視鏡の外周に装着する長尺な筒状に形成され、先端側開口より前記光学端面を露出させる本体部と、
前記本体部の内側で軸方向に沿って設けられ、前記本体部の基端側から供給する洗浄用の液体および気体が別々に通る一対の送通路と、
前記本体部の先端側に設けられ、前記各送通路を通り供給された洗浄用の液体および気体をそれぞれ前記光学端面に向けて噴出する先端部と、を有し、
前記先端部は、前記本体部の先端側開口に連通した状態で接続された筒状の先端本体と、該先端本体の前端開口の一端側に被さるキャップと、からなり、
前記キャップの内側に、前記各送通路にそれぞれ連通する一対のノズルが、互いに異なる形状の内腔として形成され、各ノズルは、前記キャップの中心線を間にして並び、前記キャップの中心線の一端側で前記各送通路の終端を臨む流入端から、前記キャップの中心線の他端側で洗浄用の液体または気体を前記光学端面に向けて噴出する噴出端に至ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る内視鏡用洗浄器具によれば、簡易かつコンパクトな構成でもって、内視鏡の光学端面を全体的に満遍なく確実に洗浄することが可能であり、しかも、光学端面における洗浄後の残液を確実に除去することも可能であり、光学端面の観察視野を容易に良好な状態に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る内視鏡用洗浄器具を内視鏡に装着した状態を示す正面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る内視鏡用洗浄器具を示す正面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る送通路とキャップを組み合わせた状態を示す正面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る送通路とキャップを組み合わせた状態を示す平面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る送通路とキャップを組み合わせた状態を示す右側面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る先端部の先端本体とキャップを分解した状態を示す斜視図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る先端部の先端本体とキャップを分解した状態を別方向から示す斜視図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る先端部の先端本体とキャップを分解した状態を示す左側面図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る先端部の先端本体とキャップを分解した状態を別方向から示す斜視図である。
【
図12】本発明の実施形態に係る先端部の先端本体とキャップを分解した状態を別方向から示す斜視図である。
【
図13】本発明の実施形態に係る先端部の先端本体とキャップを分解した状態を示す右側面図である。
【
図14】本発明の実施形態に係る先端部の先端本体とキャップを分解した状態を示す正面図である。
【
図15】本発明の実施形態に係る先端部の先端本体とキャップを分解した状態を示す平面図である。
【
図16】本発明の実施形態に係る先端部の先端本体とキャップを分解した状態を示す底面図である。
【
図17】本発明の実施形態に係る先端部のキャップを示す斜視図である。
【
図18】本発明の実施形態に係る先端部のキャップを示す平面図である。
【
図19】本発明の実施形態に係る先端部のキャップを示す底面図である。
【
図20】本発明の実施形態に係る先端部のキャップを示す正面図である。
【
図21】本発明の実施形態に係る先端部のキャップを示す左側面図である。
【
図23】本発明の実施形態に係る固定部を示す斜視図である。
【
図24】本発明の実施形態に係る固定部を示す正面図である。
【
図25】本発明の実施形態に係る固定部を示す背面図である。
【
図26】本発明の実施形態に係る固定部を示す平面図である。
【
図27】本発明の実施形態に係る固定部を示す底面図である。
【
図28】本発明の実施形態に係る固定部の各挟持片を開いた状態を示す左側面である。
【
図29】本発明の実施形態に係る固定部の各挟持片を閉じた状態を示す左側面である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づき、本発明を代表する実施形態を説明する。
本実施形態に係る内視鏡用洗浄器具10は、内視鏡1の軸方向に亘って装着され、該内視鏡1の先端側にある光学端面を洗浄可能な医療用器具である。以下、内視鏡用洗浄器具10を、内視鏡1として硬性内視鏡に用いる場合を例に説明する。なお、以下に説明する実施形態で示される構成要素、形状、数値等は、何れも本発明の一例であり、本発明を限定するものではない。
【0013】
<内視鏡1>
図1に示すように、本実施形態で用いる内視鏡1は、一般的な光学式の硬性内視鏡であり、操作部2の先に直管状に延びる硬質なシース3が接続されている。シース3は、内視鏡1の主要部をなし体腔内に挿入する部位である。内視鏡1の手技時にシース3の遠位となる先端側には、図示省略したが光学端面として、対物レンズないし対物レンズを保護するガラス板等の観察窓が設けられている。
【0014】
シース3の外径は、例えば10mm程度であり、シース3の全長は、例えば400mm程度である。また、シース3の先端側の光学端面は、直径が例えば5mm程度の円形である。ここで光学端面は、シース3の軸方向と直交する面ではなく、シース3の先端面の傾斜により例えば30°程度の視野角に傾斜している。なお、シース3の内部には、図示省略したが撮影光学系および照明光学系等の関連部品が内装されている。また、内視鏡1には、光学端面より撮影した画像を表示可能な表示装置等も装備されている。
【0015】
<内視鏡用洗浄器具10の概要>
図1,
図2に示すように、内視鏡用洗浄器具10は、内視鏡1の外周に装着する長尺な筒状に形成された本体部11と、本体部11の内側で軸方向に沿って設けられて洗浄用の液体および気体が別々に通る一対の送通路12,13と、本体部11の先端側に設けられた先端部20と、本体部11の基端側に設けられた固定部30等を有している。内視鏡用洗浄器具10は、予め内視鏡1と組み合わせることにより、一ユニットとして構成することもできる。
【0016】
<本体部11>
図1に示すように、本体部11は、例えばシリコンゴムやフッ素ポリマー等の熱収縮可能な材料から細長い円筒形状に一体的に形成されている。本体部11は、内視鏡1のシース3の基端側から先端側に亘って外周に装着する長さを備え、その先端側開口より内視鏡1の光学端面を露出させるように設計されている。また、本体部11は、その内腔に内視鏡1のシース3を挿入可能な内径を備えている。なお、本体部11の肉厚は、全周に亘って略均一となり全体的に薄肉となるように設計されている。
【0017】
本体部11は、内視鏡1のシース3を挿通させた状態で、先端側開口を先端部20の外周の一部に被せると共に、基端側開口を固定部30の外周の一部に被せてから熱収縮することにより、これらに対して一体的に装着可能である。このような本体部11の構成により、その外径を極力抑えることが可能であり、先端部20や固定部30との接合箇所も被覆されることでパーツ間の段差も解消できる。また、次述する送通路12,13も、本体部11の熱収縮によって束ねられることになり、これらの固着作用も発生する。
【0018】
<送通路12,13>
一対の送通路12,13は、内視鏡1の操作部2が位置する本体部11の基端側から供給する洗浄用の液体および気体を別々に通す管路である。
図3,
図4に示すように、一対の送通路12,13は、例えばステンレス等の金属製で小径な円筒状のパイプから形成されている。このように各送通路12,13を、金属製のパイプから形成したことで、送水ないし送気の圧力に負けることがなく、従来技術における可撓性樹脂のチューブないし内腔の変形に起因した圧力損失を解消することができる。
【0019】
各送通路12,13は、本体部11の基端側から先端側に亘って、本体部11の内周に沿って略平行に延びる状態に配されている。ここで各送通路12,13は、前述した本体部11の熱収縮によって、内視鏡1のシース3の外周と本体部11の内周との間に束ねられた状態で固定されている。よって、各送通路12,13が内視鏡1の手技中にズレることが防止されている。なお、各送通路12,13は、互いに平行に隣接させた状態で、例えば結束用の熱収縮チューブ等を用いて予め結束させておいても良い。
【0020】
各送通路12,13のうち、一方の送通路12は、洗浄用の液体が通る管路として設定され、他方の送通路13は、洗浄用の気体が通る管路として設定されている。ここで洗浄用の液体は、例えば生理食塩水や水等であり、光学端面に付着した汚れを洗い流すものである。また、洗浄用の気体は、例えば空気や炭素ガス等であり、洗浄用の液体の噴出後に、光学端面に残る水滴(残液)を吹き飛ばすものである。
【0021】
図1に示すように、各送通路12,13(
図4参照)の始端には、それぞれ枝チューブ14,15の一端が連通接続されている。各枝チューブ14,15は、例えばポリ塩化ビニル(PVC)等の比較的硬質な樹脂により細長い円管状に形成されている。各枝チューブ14,15の他端には、それぞれ逆止弁付きのコネクタ16,17が設けられている。一方のコネクタ16は、図示省略したが洗浄用の液体を供給するシリンジ等に接続される。他方のコネクタ17は、図示省略したが洗浄用の気体を供給するポンプ等に接続される。
【0022】
<先端部20>
図3から
図7に示すように、先端部20は、各送通路12,13を通り供給された洗浄用の液体および気体を、それぞれ内視鏡1の光学端面に向けて吹き出すものである。
図8から
図16に示すように、先端部20は、本体部11の先端側に接続する筒状の先端本体21と、該先端本体21の前端開口23の一端側に被さるキャップ27との2部品から構成されている。なお、先端本体21とキャップ27は、例えばポリエチレンやポリプロピレン等の硬質の合成樹脂等によって形成されており、後述するがキャップ27は、先端本体21に対してネジ273(
図5参照)と接着剤で固定されている。
【0023】
先端本体21は、基本的には軸方向に所定の長さを備え、前後端が開口した円筒形状に一体的に形成されている。先端本体21の内部は、内視鏡1のシース3を挿通させる空間となっている。先端本体21の後端開口22は、
図8に示すように、軸方向と直交する開口面をなしている。一方、先端本体21の前端開口23は、
図12に示すように、その一端側の弓形部分を除いて、前述した内視鏡1のシース3の先端面(光学端面)の傾斜に合わせて、軸方向と交差する斜めの開口面をなしている。このように先端部20は、シース3の先端面が傾斜したタイプの内視鏡1に適用可能なものである。
【0024】
図8に示すように、先端本体21の後端開口22寄りの外周には、本体部11の先端側を外嵌させる接合部24が設けられている。接合部24の上半側は、外周が若干細径になるように削られており、その頂端側には、各送通路12,13の終端側を嵌め込み固定する一対の挿入溝25,25が凹設されている。また、先端本体21の接合部24より先端側の領域には、各挿入溝25に嵌め込んだ各送通路12,13の終端側を貫通させる一対の挿通孔26,26が穿設されている。
【0025】
先端本体21の内部には、内視鏡1のシース3が挿通されるが、ここでシース3の光学端面は、特にその傾斜した下端が、先端本体21の前端開口23より前方に僅かに突出している。言い換えれば、先端本体21の前端開口23における下端は、シース3の光学端面の傾斜した下端に被らないように、少し基端側にずれた位置で固定されている。これは、光学端面の傾斜した下端と前端開口23の下端との間に、水滴(洗浄用の液体の残液)が溜まらなくするためである。
【0026】
図8から
図16に示すように、キャップ27は、基本的には所定の厚さを備え、先端本体21の前端開口23の一端側に被さる弓形に一体的に形成されている。
図17から
図22に示すように、キャップ27の内側には、各送通路12,13の終端が連通する一対のノズル28,29が形成されている。各ノズル28,29は、キャップ27の弓形の頂端側から反対側の弦端縁に対して直交する、中心線Lを間にして並ぶ内腔として形成されている。
【0027】
各ノズル28,29のうち洗浄用の液体が通る送通路12に連通する送液用ノズル28は、キャップ27の中心線Lの一端(頂端)側で、送通路12の終端に連通する流入端281から、前記中心線の他端(弦端縁)側で洗浄用の液体を前記光学端面に向けて噴出する噴出端282に至る凹溝状である。洗浄用の気体が通る送通路13に連通する送気用ノズル29も、前記中心線Lの一端(頂端)側で、送通路13の終端に連通する流入端291から、前記中心線Lの他端(弦端縁)側で洗浄用の気体を前記光学端面に向けて噴出する噴出端292に至る凹溝状である。
【0028】
各ノズル28,29は、それぞれ流入端281,291から噴出端282,292に向かって上下方向に延びており、流入端281,291より途中までは中心線Lを間にして平行に並んでいる。送液用ノズル28は、流入端281から噴出端282まで両側壁の間の幅は略同一であるが、噴出端282の両側壁283、284のうち中心線L寄りの一側壁283(
図21中で左側)は、やや中心線L寄りに傾斜している。ここで噴出端282の手前側に、キャップ27の弦端縁を貫通した切欠282aが形成され、先端本体21側に開口している。切欠282aは、噴出端282に水滴(洗浄用の液体の残液)が溜まらなくするものである。
【0029】
送気用ノズル29は、流入端291を含む上半側では両側壁の間の幅が略同一であるが、噴出端292に向かう下半側は、徐々に広がる扇状になっている。ここで扇状に広がる角度は、
図21において、送気用ノズル29の両側壁293,294のうち中心線L寄りの一側壁293(
図21中で右側)が、他側壁294(
図21中で左側)よりも大きく設定されている。このように一側壁293(
図21中で右側)が、中心線Lに近づき交差する方向に傾斜することにより、送気用ノズル29の開口面積は噴出端292に向かって漸次拡大しており、キャップ27の弦端縁の手前で先端本体21側に開口している。
【0030】
また、
図21に示すように、送液用ノズル28は、送気用ノズル29よりも、少なくとも噴出端282の開口面積が小さく設定されている。ここで洗浄用の液体は、洗浄用の気体よりも質量が大きいため、より少ない量でも小さな開口面積によって流速を上げることによって、光学端面に対して効率的に噴出させることができることが実験で確かめられている。
【0031】
図6に示すように、送液用ノズル28の両側壁の間の奥壁285は、送通路12の終端に垂直に対向している。
図7に示すように、送気用ノズル29の両側壁の間の奥壁295も、送通路13の終端に垂直に対向している。ここで送液用ノズル28は、送気用ノズル29よりも、キャップ27の厚さ方向に深い内腔として形成されている。これは送液用ノズル28の終端282には切欠282aがあるので、全体的に奥行を大きく取って、必要な量の液体が流れるストロークを確保するためである。
【0032】
図17、
図21に示すように、送気用ノズル29の噴出端292における奥壁295は、キャップ27の弦端縁の手前で先端本体21側にR断面形状あるいは所定角度で傾斜させている。送液用ノズル28の噴出端282における奥壁285も、切欠282aに向かって先端本体21側にR断面形状に傾斜している。また、キャップ27の内側において、各ノズル28,29の下半側が通る部分には、キャップ27の内側に向かって凹み上下の途中で屈曲した弓形の内腔271が形成されている。なお、先端本体21の前端とキャップ27には、互いに合致する位置にネジ孔272が穿設されており、互いにネジ273(
図5参照)によって確実に固定され、また接着剤によって接合面の密閉性も確保されている。
【0033】
<固定部30>
図1,
図2に示すように、本体部11の基端側には、本体部11および先端部20を内視鏡1の操作部2の外周に対して移動不能に固定するための固定部30が設けられている。
図23から
図25に示すように、固定部30は、ヒンジ31により開閉する一対の挟持片32,32を備え、一方の挟持片32から他方の挟持片32に貫通する固定用のネジ33の締め付けにより、内視鏡1の操作部2の外周に対して固定可能なものである。
【0034】
各挟持片32は、互いに閉じ合わさることで操作部2の外周に合致する半円筒形に形成されている。各挟持片32の一端側は、薄肉に連なるヒンジ31によって開閉可能に連結され、各挟持片32の他端側には、ネジ33の頭部33aより延出した脚部33b(
図28参照)を通すネジ孔34が設けられている。各挟持片32の軸方向の先端側には、先端側開口より半円筒形にそのまま延出して、本体部11の基端側を外嵌させる接合片35が設けられている。
【0035】
また、
図23に示すように、各挟持片32の一端側は、それぞれ送通路12,13の始端側を貫通させる挿通孔36が穿設されている。ここで送通路12,13の始端側は、図示省略したが各挿通孔36より突出しており、この突出部分に枝チューブ14,15の一端が連通接続されている。なお、固定部30は、例えばポリエチレンやポリプロピレン等の硬質の合成樹脂等によって形成されている。
【0036】
<内視鏡用洗浄器具10の作用>
次に、本実施の形態に係る内視鏡用洗浄器具10の作用について説明する。
内視鏡用洗浄器具10を使用する場合には、先ず内視鏡1のシース3の外周に、近位となる基端側から遠位となる先端側に亘って本体部11を装着する。すなわち、本体部11にシース3を差し込むように挿入する。このとき、本体部11の内側には、軸方向に沿って一対の送通路12,13を挿入しておき、本体部11の先端側には先端部20を装着すると共に、本体部11の基端側には固定部30を装着する。
【0037】
さらに詳しくは、各送通路12,13の終端側を、先端部20の先端本体21にある各挿入溝25に嵌め込みつつ各挿通孔26に貫通させる。そして、先端本体21の接合部24に対して本体部11の先端側を外嵌させる。一方、各送通路12,13の始端側は、固定部30の各挟持片32にある挿通孔36に貫通させる。そして、各挟持片32の接合片35に対して本体部11の基端側を外嵌させる。
【0038】
このような状態で、本体部11を加熱して熱収縮させることにより、本体部11を、内視鏡1のシース3、先端部20、固定部30に一体に装着することができる。これにより、内視鏡用洗浄器具10の主要部をなす本体部11の外径を極力抑えることが可能であり、先端部20や固定部30との接合箇所も被覆されることでパーツ間の段差も解消できる。また、本体部11の内側の各送通路12,13も、本体部11の熱収縮によって束ねられることになり、これらの固着作用も発生する。
【0039】
また、シース3の先端側に対する先端部20の相対的な位置は、前述したように先端本体21の前端開口23における下端が、シース3の光学端面の傾斜した下端に被らないように少し基端側にずれるように配置する。これにより、光学端面の傾斜した下端と前端開口23の下端との間に、水滴(洗浄用の液体の残液)が溜まることを防止することができる。このような位置決めは、本体部11の基端側の固定部30を、シース3の外周に対して移動不能に固定することにより確実に行うことができる。
【0040】
固定部30は、ヒンジ31により開閉する一対の挟持片32,32の間にシース3の基端側を挿通させた状態で、
図28,
図29に示すように、一方の挟持片32から他方の挟持片32に貫通する固定用のネジ33の締め付けにより、内視鏡1の操作部2の外周に対して容易かつ確実に固定することができる。
図29に示す固定部30は、ネジ33を締め付けた状態であるが、
図28に示す固定部30のように、ネジ33を緩めることにより、固定部30を把持して本体部11を回転させることが可能となり、シース3の先端側の光学端面との位置合わせを容易に行うことができる。
【0041】
以上により、
図1に示すように、内視鏡用洗浄器具10は、内視鏡1にシース3が装着される。術者は、このような内視鏡用洗浄器具10を装着した内視鏡1を、患者の体内に挿入することにより内視鏡下手術を行う。内視鏡1の手技中に、シース3の先端側の光学端面に血液等の汚れが付着したり、あるいは結露による曇りが発生した場合には、内視鏡1をいったん外に抜き出すことなく、そのまま体腔内に入れた状態で、体腔外から内視鏡1の光学端面を洗浄することができる。
【0042】
詳しく言えば、先ず、一方の送通路12に繋げた枝チューブ14のコネクタ16に、図示省略したシリンジ等を接続して、水等の洗浄用の液体を供給する。ここで枝チューブ14は、比較的硬質な樹脂製とすることで、シリコン製の柔性なチューブとは異なり水圧に負けることはなく、圧力損失を解消することができる。洗浄用の液体を供給するシリンジは一般的な既製品で足り、専用の洗浄器具を用意する必要もない。また、コネクタ16に逆止弁を設けたことにより、液体を連続して供給することも可能となる。
【0043】
枝チューブ14を介して送通路12に供給された液体は、先端部20のキャップ27まで到達し、キャップ27にある送液用ノズル28から光学端面に向けて噴出される。これにより、光学端面に付着した汚れは洗浄用の液体で洗い流される。詳しく言えば、送通路12の終端より送液用ノズル28の流入端281に供給された液体は、送液用ノズル28の奥壁285に衝突した後、ノズル28の形状に沿って下方の噴出端282に向かって流れ、噴出端282から光学端面に向かって噴出される。
【0044】
図21に示すように、送液用ノズル28は、キャップ27の内側で中心線Lより右側に位置しているが、噴出端282の両側壁283,284のうち中心線L寄りの一側壁283(
図21中で左側)は、やや中心線L寄りに傾斜している。これにより、噴出端282からの液体の噴出範囲は、光学端面の右側に偏在することなく、光学端面の全域に向けて満遍なく行き渡らせることができ、光学端面の汚れをムラなく確実に洗い流すことができる。また、噴出端282の手前側には切欠282aがあるため、噴出端282に残液が溜まることを防止することができる。なお、送液用ノズル28は、切欠282aがある分だけ、送気用ノズル29よりも奥行を大きく取って、必要な量の液体が流れるストロークを確保している。
【0045】
次に、他方の送通路13に繋げた枝チューブ15のコネクタ17には、図示省略したポンプ等を接続して、空気等の洗浄用の気体を供給する。ここで枝チューブ15も、前記枝チューブ14と同様に比較的硬質な樹脂製とすることで、圧力損失を解消することができる。なお、コネクタ17に接続する気体供給源は、ポンプに限らず簡易なシリンジ等を用いても良い。
【0046】
枝チューブ15を介して送通路13に供給された気体は、先端部20のキャップ27まで到達し、キャップ27にある送気用ノズル29から光学端面に向けて噴出される。これにより、光学端面に残った残液を吹き飛ばして除去することができる。詳しく言えば、送通路13の終端より送気用ノズル29の流入端291に供給された気体は、送気用ノズル29の奥壁295に衝突した後、ノズル29の形状に沿って下方の噴出端292に向かって流れ、噴出端292から光学端面に向かって噴出される。
【0047】
図21に示すように、送気用ノズル29は、キャップ27の内側で中心線Lより左側に位置しているが、噴出端292に向かう下半側は徐々に扇状に広がっている。特に、中心線L寄りの一側壁293(
図21中で右側)が、中心線Lに近づき交差する方向に大きく傾斜している。これにより、噴出端292からの気体の噴出範囲は、光学端面の左側に偏在することなく、光学端面の全域に向けて満遍なく行き渡らせることができ、光学端面上の残液をムラなく確実に吹き飛ばすことができる。
【0048】
仮に、送気用ノズル29の両側壁293,294の傾斜角度が同じであった場合、送気用ノズル29は、中心線Lより
図21中で左側にあるため、比重の軽い洗浄用の気体は光学端面の左側を中心に吹き出され、光学端面の全体には行き渡らない。このため、光学端面の
図21中で右側により多くの気体を噴出させるために、中心線L寄りの一側壁293の傾斜角度を大きく設定している。
【0049】
以上のように、先端部20のキャップ27に設けた各ノズル28,29によって、先ずは送液用ノズル28から洗浄用の液体を噴出させて、光学端面に付着した汚れを洗い流し、次いで送気用ノズル29から洗浄用の気体を噴出させて、光学端面に付着した残液を確実に吹き飛ばすことができる。なお、各ノズル28,29の噴出端282,292におけるR断面形状の傾斜によって、洗浄用の液体または気体をシース3の先端側で傾斜した光学端面に対して効率良く噴出させることができる。
【0050】
<本発明の構成と作用効果>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されるものではない。前述した実施形態から導かれる本発明について、以下に説明する。
【0051】
先ず、本発明は、内視鏡1の軸方向に亘って装着され、該内視鏡1の先端側にある光学端面を洗浄可能な内視鏡用洗浄器具10において、
前記内視鏡1の外周に装着する長尺な筒状に形成され、先端側開口より前記光学端面を露出させる本体部11と、
前記本体部11の内側で軸方向に沿って設けられ、前記本体部11の基端側から供給する洗浄用の液体および気体が別々に通る一対の送通路12,13と、
前記本体部11の先端側に設けられ、前記各送通路12,13を通り供給された洗浄用の液体および気体をそれぞれ前記光学端面に向けて噴出する先端部20と、を有し、
前記先端部20は、前記本体部11の先端側開口に連通した状態で接続された筒状の先端本体21と、該先端本体21の前端開口23の一端側に被さるキャップ27と、からなり、
前記キャップ27の内側に、前記各送通路12,13にそれぞれ連通する一対のノズル28,29が、互いに異なる形状の内腔として形成され、各ノズル28,29は、前記キャップ27の中心線Lを間にして並び、前記キャップ27の中心線Lの一端側で前記各送通路12,13の終端を臨む流入端281,291から、前記キャップ27の中心線Lの他端側で洗浄用の液体または気体を前記光学端面に向けて噴出する噴出端282,292に至ることを特徴とする。
【0052】
このような内視鏡用洗浄器具10によれば、洗浄用の液体および気体を供給する送通路12,13は本体部11の内側に収まり、洗浄用の液体または気体を内視鏡1の光学端面に向けて噴出する各ノズル28,29は、先端部20のキャップ27の内側に内腔として形成される。よって、送通路12,13だけでなくノズル28,29も、外部に露出することがなく、構造的に強固なだけでなくノズル28,29が体腔内に引っ掛かり組織を傷付ける虞もない。
【0053】
特に各ノズル28,29は、洗浄用の液体または気体の性質に合わせて互いに異なる形状の内腔に形成する。すなわち、一方のノズルは、洗浄用の液体の噴出に特化させて、光学端面から汚れを効率良く洗い流すことができるように設定し、他方のノズルは、洗浄用の気体の噴出に特化させて、光学端面に付着した残液を効率良く吹き飛ばすことができるように設定することが可能となる。
【0054】
ここで各ノズル28,29は、キャップ27の内側で中心線Lを間にして並び、その一端側で各送通路12,13の終端を臨む流入端281,291から、他端側で洗浄用の液体または気体を光学端面に向けて噴出する噴出端282,292に至る。かかる構成によって、各ノズル28,29を、キャップ27の厚み(奥行方向)における嵩張らないスペースにてコンパクトにまとめることができる。
【0055】
また、本発明では 前記キャップ27は、前記先端本体21の前端開口23の一端側に被さる弓形に形成され、
前記各ノズル28,29は、前記キャップ27の弓形の頂端側から反対側の弦端縁に対して直交する前記中心線Lを間にして略平行に並び、
前記各ノズル28,29のうち洗浄用の液体が通る前記送通路12に連通する送液用ノズル28は、前記各ノズル28,29のうち洗浄用の気体が通る前記送通路13に連通する送気用ノズル29よりも、少なくとも前記噴出端282の開口面積が小さく設定されたことを特徴とする。
【0056】
このような構成によれば、各ノズル28,29を、先端部20のキャップ27内でよりいっそうコンパクトに構成することができる。また、送液用ノズル28の噴出端282の開口面積を、送気用ノズル29よりも小さく設定したことにより、気体よりも比重の大きい液体の流速を上げて、少ない量でもって光学端面の汚れを効率良く洗い流すための噴出が可能となる。
【0057】
また、本発明では 前記送液用ノズル28は、前記送気用ノズル29よりも、前記キャップ27の厚さ方向に深い内腔として形成され、
前記送液用ノズル28は、その前記噴出端282の少なくとも一部が、前記キャップ27の弦端縁を貫通すると共に前記先端本体21側に開口する一方、
前記送気用ノズル29は、その前記噴出端292が、前記キャップ27の弦端縁の手前で前記先端本体21側に開口したことを特徴とする。
【0058】
このような構成によれば、各ノズル28,29の内腔が、キャップ27の中心線Lを間にして互いに干渉することなく、それぞれに必要な流量の開口面積を確保することができる。また、送液用ノズル28の噴出端282を貫通させたことにより、噴出端282に残液が溜まることを防止することができる。また、送液用ノズル28は、噴出端282を貫通させた分だけ内腔の奥行を大きく取ることにより、必要な量の液体が流れるストロークを確保することができる。
【0059】
また、本発明では 前記送液用ノズル28は、その前記噴出端282の両側壁283,284のうち前記中心線L寄りの一側壁283が、前記中心線Lに近づく方向に傾斜し、
前記送気用ノズル29は、その前記噴出端292を含む下半側の両側壁293,294のうち前記中心線L寄りの一側壁293が、前記中心線Lに近づき交差する方向に傾斜して開口面積が漸次拡大したことを特徴とする。
【0060】
このような構成によれば、各ノズル28,29は、キャップ27の中心線Lを間にして左右に位置していながらも、互いに異なる形状の内腔によって、それぞれ洗浄用の液体または気体を光学端面の全域に向けて効率良く噴出させることができる。特に送気用ノズル29は、その噴出方向が光学端面の中心に向かって拡開するため、比重の軽い気体を光学端面の全域にほぼ均一な流量で噴出させることができる。
【0061】
また、本発明は、前記本体部11の基端側に設けられ、該本体部11および前記先端部20を前記内視鏡1の外周に対して移動不能に固定する固定部30を有することを特徴とする。
このような構成によれば、固定部30によって、内視鏡1に対する本体部11や先端部20の相対的な位置を、所望の位置に位置決めした上で容易に固定することができる。
【0062】
また、本発明では、前記固定部30は、ヒンジ31により開閉する一対の挟持片32の一方から他方に貫通するネジ33の締め付けにより、前記内視鏡1の外周に対して固定可能であることを特徴とする。
【0063】
このような簡易な構成の固定部30によれば、内視鏡1に対して本体部11や先端部20を所望の位置に調整してから確実に固定することができる。また、例えばネジ33を緩めることにより、固定部30を把持して本体部11を回転させることが可能となり、内視鏡1の光学端面との位置合わせを容易に行うことができる。
【0064】
また、本発明では、前記本体部11は、熱収縮可能な材料から形成され、前記内視鏡1の外周、および前記先端部20と前記固定部30との外周の一部に被せた状態で熱収縮することにより、前記内視鏡1、および前記先端部20と前記固定部30とに一体に装着されたことを特徴とする。
【0065】
このような構成によれば、内視鏡用洗浄器具10を、内視鏡1の軸方向に亘って容易に装着することができる。特に、内視鏡用洗浄器具10の主要部をなす本体部11の外径を極力抑えることが可能であり、先端部20や固定部30との接合箇所も被覆されることでパーツ間の段差も解消できる。また、本体部11の内側の各送通路12,13も、本体部11の熱収縮によって束ねられることになり、これらの固着作用も発生する。
【0066】
さらに、本発明では、前記各送通路12,13は、それぞれパイプから形成され、該2本のパイプは前記本体部11の内周に沿って略平行に延びる状態に配され、前記本体部11の熱収縮により前記内視鏡1の外周と前記本体部11の内周との間に固定されたことを特徴とする。
このような構成によれば、洗浄用の液体または気体の供給ルートを簡単に確保することが可能となり、また供給時における圧力損失を防止することができる。
【0067】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は前述した実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば本体部11、先端部20、および固定部30の具体的な形状や相対的な大きさは、図示したものに限定されることはない。
【0068】
また、内視鏡用洗浄器具10を装着する内視鏡1は、その光学端面がシース3の軸方向と直交する平面に対して約30度に傾斜するものに限らず、他の角度に傾斜したもの、あるいは直交したものであっても良い。かかる場合は、光学端面の具体的な傾斜に応じて、各ノズル28,29の形状を調整することになる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明に係る内視鏡用洗浄器具は、シースの先端側にある光学端面(レンズや観察窓)が傾斜したタイプへの装着に限定されるものではなく、他の様々なタイプの硬性内視鏡に適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
10…内視鏡用洗浄器具
11…本体部
12,13…送通路(パイプ)
14,15…枝チューブ
20…先端部
21…先端本体
22…後端開口
23…前端開口
24…接合部
25…挿入溝
26…挿通孔
27…キャップ
28…送液用ノズル
29…送気用ノズル
30…固定部
31…ヒンジ
32…挟持片
33…ネジ
34…ネジ孔