(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178680
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】整流回路
(51)【国際特許分類】
H02M 7/12 20060101AFI20241218BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20241218BHJP
【FI】
H02M7/12 A
H02J50/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097004
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】岩本 藤行
(72)【発明者】
【氏名】笹谷 卓也
(72)【発明者】
【氏名】平野 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】近藤 尚哉
【テーマコード(参考)】
5H006
【Fターム(参考)】
5H006AA06
5H006CA02
5H006CA12
5H006CB03
5H006CB07
5H006CC01
5H006CC08
5H006DB01
5H006DC04
(57)【要約】
【課題】より簡素な構成で使用可能な、可変リアクタ機能と整流機能とを一体にした整流回路を提供する。
【解決手段】LC共振回路12a,12bの一端を交流電力が入力される入力端子11a,11bのそれぞれに接続する。LC共振回路12a,12bの他端間にはスイッチS1及びS2の直列回路を接続する。ダイオードD1、D2をスイッチS1,S2のそれぞれに並列に、且つカソードが共通となるように接続する。コンデンサC1、C2をダイオードD1、D2にそれぞれ並列に接続する。フィルタ回路15はスイッチS1及びS2の直列回路に並列に接続されるインダクタ13a及び13bの直列回路、及び直流出力端子間に接続される出力コンデンサ15を有する。ゲート制御回路5はスイッチS1,S2を、互いに180度の位相差でスイッチングすることで、リアクタンスの可変制御を行う。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力が入力される2つの入力端子(11a,11b)のそれぞれに一端が接続される2つのLC共振回路(12a,12b)と、
これら2つのLC共振回路の他端間に、互いに逆方向で接続される第1及び第2スイッチング素子(S1、S2)の直列回路と、
前記第1及び第2スイッチング素子のそれぞれに並列に、且つカソード又はアノードが共通となるように接続される第1及び第2ダイオード(D1、D2)と、
これらの第1及び第2ダイオードに、それぞれ並列に接続される第1及び第2コンデンサ(C1、C2)と、
前記第1及び第2スイッチング素子の直列回路に並列に接続される2つのインダクタ(13a,13b)の直列回路、及び直流出力端子間に接続される出力コンデンサ(14)を有するフィルタ回路(15)と、
前記第1及び第2スイッチング素子を、互いに180度の位相差でスイッチングすることで、リアクタンスの可変制御を行う制御部(5)と、を備え、
前記リアクタンスについて必要とされる可変制御値をΔXとし,前記制御部により可変制御されるリアクタンスを-jXrecとすると、前記第1及び第2コンデンサの容量Cは、ΔX≦(|jXrec|の最大値)を満たすように設定されており、
前記2つのLC共振回路のリアクタンスの合計値jXにより、前記入力端子から見たリアクタンスjXrを正側にシフトさせて、当該リアクタンスjXrの可変範囲を両極性とし、
前記制御部は、前記第1及び第2スイッチング素子の内、対応するダイオードがオンした後に前記スイッチング素子をオンさせ、
前記ダイオードがオフした後、所定時間の経過後に前記スイッチング素子をオフさせて、前記スイッチング素子のオフデューティ比により前記リアクタンスの可変制御を行う整流回路。
【請求項2】
交流電力が入力される入力端子間に接続されるLC共振回路(12)、及びスイッチング素子(S1)の直列回路と、
前記スイッチング素子に並列に、且つカソードが前記LC共振回路側となるように接続されるダイオード(D1)と、
このダイオードに並列に接続されるコンデンサ(C1)と、
前記スイッチング素子に並列に接続されるインダクタ(13)及び出力コンデンサ(14)を有するフィルタ回路(52)と、
前記スイッチング素子をスイッチングすることで、リアクタンスの可変制御を行う制御部(5)と、を備え、
前記リアクタンスについて必要とされる可変制御値をΔXとし,前記制御部により可変制御されるリアクタンスを-jXrecとすると、前記ダイオードに並列に接続されるコンデンサの容量Cは、ΔX≦(|jXrec|の最大値)を満たすように設定されており、
前記LC共振回路のリアクタンスjXにより、前記入力端子から見たリアクタンスjXrを正側にシフトさせて、当該リアクタンスjXrの可変範囲を両極性とし、
前記制御部は、前記ダイオードがオンした後に前記スイッチング素子をオンさせ、
前記ダイオードがオフした後、所定時間の経過後に前記スイッチング素子をオフさせて、前記スイッチング素子のオフデューティ比により前記リアクタンスの可変制御を行う整流回路。
【請求項3】
前記制御部は、前記交流電力の電圧、電流の位相差を検出する位相差検出部を備え、
前記位相差に基いて、前記スイッチング素子のオフデューティ比を変化させる請求項1又は2記載の整流回路。
【請求項4】
前記位相差検出部は、前記位相差に応じた電圧Vbを出力し、
前記制御部は、前記電圧Vbと基準電圧との誤差電圧を出力するエラーアンプ(24)と、
三角波信号を出力する三角波出力回路(36)と、
前記三角波信号を、前記誤差電圧分だけオフセットさせるオフセット付与部(40,41)と、
前記オフセットが付与された三角波信号によってトリガされ、そのトリガされた一定時間後にクリアされるフリップフロップ(39)と、を備え、
前記フリップフロップの出力信号に基いて前記スイッチング素子を駆動する請求項3記載の整流回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電力を直流電力に整流する回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電界結合式や磁界結合式等で用いられる非接触給電(WPT:Wireless Power Transfer)システムでは、電力の伝送効率を向上させるためや、電力の反射を抑制するため、送電経路上のリアクタンス成分をキャンセルしたりインピーダンス整合をさせる整合回路や、結合器のLC値と交流電源周波数とで共振させる共振回路を設けている。
【0003】
結合器の共振周波数や送電経路上のリアクタンス成分は、結合器等の経年による寸法変動や受電側の移動等により変動する場合がある。整合回路や共振回路が、定数が固定のLC素子で構成されていると、発生したリアクタンス成分に対応できず、電力反射が発生し、電力伝送性能が劣化することが懸念される。
【0004】
そのような問題に対処するため、可変リアクタ回路を挿入し,リアクタ値を自動調整して影響をキャンセルする手法がある。可変リアクタ回路は、機械式やスイッチング素子とLC部品とで構成した電子式の構成がある。しかし、その場合、回路体格の増大が懸念される。特に、受電側の回路は、移動体や飛行体等に搭載される想定により体格や重量に制約がある場合が多く、小型化が求められる。そこで、電力伝送性能と受電側回路の小型化を両立するため、可変リアクタ回路と整流回路を一体にした回路が提案されている。
【0005】
非特許文献1は、+jX又は-jX成分を付与するLC共振回路と、スイッチ二つとコンデンサで構成された2つの整流部と、これらの整流部にそれぞれ接続されるDC-DCコンバータとで構成された整流回路を開示している。この構成では、各DC-DCコンバータの電圧変換比を制御することで、コンバータ、ひいては整流部の入力抵抗を制御する。それにより、+jXと-jXの寄与を制御してインピーダンスZrを制御し、送電経路上のリアクタンスをキャンセルしている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】IEEE JOURNAL OF EMERGING AND SELECTED TOPICS IN POWER ELECTRONICS, VOL.8,NO.3,SEPTEMBER 2020
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の構成では、LC直列回路、整流部及びコンバータの組み合わせが2組必要であり、回路体格の増大が懸念される。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、より簡素な構成で使用可能な、可変リアクタ機能と整流機能とを一体にした整流回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の整流回路によれば、2つのLC共振回路(12a,12b)の一端は、交流電力が入力される2つの入力端子(11a,11b)のそれぞれに接続される。2つのLC共振回路の他端間には、互いに逆方向で接続される第1及び第2スイッチング素子(S1、S2)の直列回路が接続される。第1及び第2ダイオード(D1、D2)は、第1及び第2スイッチング素子のそれぞれに並列に、且つカソード又はアノードが共通となるように接続される。第1及び第2コンデンサ(C1、C2)は、第1及び第2ダイオードにそれぞれ並列に接続される。フィルタ回路(15)は、第1及び第2スイッチング素子の直列回路に並列に接続される2つのインダクタ(13a,13b)の直列回路、及び直流出力端子間に接続される出力コンデンサ(14)を有する。制御部(5)は、第1及び第2スイッチング素子を、互いに180度の位相差でスイッチングすることでリアクタンスの可変制御を行う。
【0009】
制御部により可変制御されるリアクタンスを-jXrecとすると、その絶対値の大きさは第1及び第2コンデンサの容量Cで調整することができる。第1及び第2コンデンサの容量Cは、リアクタンスについて必要とされる可変制御値をΔXとすると、ΔX≦(|jXrec|の最大値)を満たすように設定する。2つのLC共振回路のリアクタンスの合計値jXにより、入力端子から見たリアクタンスjXrを正側にシフトさせて、当該リアクタンスjXrの可変範囲を両極性にする。制御部は、第1及び第2スイッチング素子の内、対応するダイオードがオンした後に前記スイッチング素子をオンさせ、前記ダイオードがオフした後、所定時間の経過後に前記スイッチング素子をオフさせて、そのオフデューティ比によりリアクタンスの可変制御を行う。
【0010】
このように構成すれば、出力コンデンサに1つのDC-DCコンバータを接続すればよく、整流回路によってリアクタンスjXrを両極性で可変制御することができる。したがって、従来構成よりも回路規模を低減できる。
【0011】
請求項2記載の整流回路によれば、LC共振回路(12)及びスイッチング素子(S1の直列回路は、交流電力が入力される入力端子(11a、11b)間に接続される。ダイオード(D1)は、スイッチング素子に並列に、且つカソードがLC共振回路側となるように接続され、コンデンサ(C1)は、ダイオードに並列に接続される。インダクタ(13)及び出力コンデンサ(14)を有するフィルタ回路(52)は、スイッチング素子に並列に接続される。制御部(5)は、スイッチング素子をスイッチングすることで、リアクタンスの可変制御を行う。ダイオードに並列に接続されるコンデンサの容量Cは、リアクタンスについて必要とされる可変制御値をΔXとし,制御部により可変制御されるリアクタンスを-jXrecとすると、ΔX≦(|jXrec|の最大値)を満たすように設定される。LC共振回路のリアクタンスjXにより、入力端子から見たリアクタンスjXrを正側にシフトさせて、当該リアクタンスjXrの可変範囲を両極性とする。
【0012】
制御部は、ダイオードがオンした後にスイッチング素子をオンさせ、ダイオードがオフした後、所定時間の経過後にスイッチング素子をオフさせて、そのオフデューティ比により前記リアクタンスの可変制御を行う。このように構成した場合も、整流回路によってリアクタンスjXrを両極性で可変制御することができる。したがって、従来構成よりも回路規模を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態であり、電力給電システムの構成を示す図
【
図3】スイッチのオフデューティ比に対するリアクタンス値の変化を示す図
【
図5】電圧-電流位相差に応じた位相差検出回路の出力電圧の変化を示す図
【
図7】位相調整回路の動作を示すタイミングチャート
【
図8】可変リアクタ整流回路の動作をスイッチS1について示すタイミングチャート
【
図9】可変リアクタ整流回路の動作をスイッチS1及びS2について示すタイミングチャート
【
図10】第2実施形態であり、可変リアクタ整流回路の構成を示す図
【
図11】可変リアクタ整流回路の動作をスイッチS1について示すタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態の電力給電システムは、高周波電源1に接続される位相差検出回路2、整合回路・結合器等3、可変リアクタ整流回路4及びゲート制御回路5を備え、これらにより変換した直流電源を負荷6に供給する。位相差検出回路2は、高周波電源1より入力される交流電源について電圧と電流との位相差を検出し、その位相差に応じた直流電圧Vbをゲート制御回路5に出力する。整合回路・結合器等3は、インピーダンスの整合や、次段の可変リアクタ整流回路4に対する入力へのカップリングを行う。可変リアクタ整流回路4は、ゲート制御回路5により制御され、整合回路・結合器等3において、経年劣化等により発生するリアクタンス成分の変動を補償するように動作しつつ、交流電力を直流電力に変換する。
【0015】
図2に示すように、可変リアクタ整流回路4においては、入力端子11a,11bのそれぞれに、インダクタ及びコンデンサの直列回路であるLC共振回路12a,12bの一端が接続されている。LC共振回路12a,12bの他端間には、スイッチS1及びS2の直列回路が接続されている。第1及び第2スイッチング素子であるスイッチS1及びS2は、何れもNチャネルMOSFETである。各FETのドレインは共通に接続され、LC共振回路12a,12bの他端には、それぞれのソースが接続されている。
【0016】
スイッチS1及びS2には、それぞれ第1及び第2ダイオードD1及びD2が並列に接続されており、これらのカソード側が共通となっている。ダイオードD1及びD2には、それぞれ第1及び第2コンデンサC1及びC2が並列に接続されている。スイッチS1及びS2の直列回路には、インダクタ13a及び13bの直列回路が並列に接続されている。スイッチS1及びS2の共通に接続されたドレインと、インダクタ13a及び13bの共通接続点との間には、出力コンデンサ14が接続されている。出力コンデンサ14は、インダクタ13a及び13bと共にフィルタ回路15を構成している。出力コンデンサ14の両端は、直流電力の出力端子となる。
【0017】
同図に示すように、入力端子11a,11bより見た入力リアクタンスをjXrとし、LC共振回路12a,12bそれぞれのリアクタンスをjX/2とする。動作の詳細については後述するが、可変リアクタ整流回路4により制御されるリアクタンスの大きさを-jXrecとすると、jXr=jX-jXrec、となる。
【0018】
これは、
図3に示すように、LC共振回路12a,12bのリアクタンスを合計したjXにより、入力リアクタンスjXrを正側にシフトさせることになる。結果として、可変リアクタ整流回路4により制御される入力リアクタンスjXrは、正負の両極に亘る範囲となる。|jXrec|の最大値は、第1及び第2コンデンサC1及びC2の容量Cによって決まる。すなわち、-jXrec∝-j/(ωC)の関係にある。したがって、システムにおいて必要とされる|jXrec|の最大値を満たすように容量Cを設定する。
【0019】
図4に示すように、位相差検出回路2では、交流入力端子16a,16b間に、コンデンサ17a及び17bの直列回路が接続されている。コンデンサ17aに対して並列に、トランス18、コンデンサ19並びにダイオード20a及び20bを組み合わせた回路が接続されている。トランス18の1次巻線は交流入力端子16aに接続され、2次巻線にはコンデンサ19が並列に接続されている。
【0020】
ダイオード20aのカソード及びダイオード20bのアノードは、コンデンサ17a及び17bの共通接続点に接続されている。そして、ダイオード20aのアノードと、ダイオード20bのカソードとは、それぞれコンデンサ19の一端、他端に接続されている。コンデンサ17a及び17bの共通接続点からは、抵抗素子21を介して電圧Vbが出力される。電圧Vbの出力端子とグランドとの間には、コンデンサ22及び抵抗素子23の並列回路が接続されている。
【0021】
コンデンサ17a及び17b2の共通接続点の電圧をVvd,コンデンサ19の端子電圧をVidとすると、位相差検出回路2の出力電圧Vbは、
図5に示すように、電圧Vvdに対する電圧Vidの位相差に応じた値、つまり電流電圧位相差となる。位相差の遅れ、進みに応じて、電圧Vbは負の値から正の値に変化する。
【0022】
図6に示すように、制御部に相当するゲート制御回路5は、エラーアンプ24、位相調整回路25、180°遅延回路26、並びにゲートドライバ27(1)及び27(2)を備えている。エラーアンプ24は、オペアンプ31、抵抗素子32及び33、並びにコンデンサ34で構成されている。位相差検出回路2の出力電圧Vbは、抵抗素子32を介してオペアンプ31の反転入力端子に入力され、基準電圧は、抵抗素子33を介して同非反転入力端子に入力されている。コンデンサ4は、反転入力端子とオペアンプ31の出力端子との間に接続されている。エラーアンプ24は、電圧Vbと基準電圧との差に応じた誤差電圧を出力する。
【0023】
位相調整回路25において、矩形波発生器35が発生させた矩形波信号は、抵抗素子Rtr及びコンデンサCtrからなり、三角波出力回路に相当する三角波発生部36に入力される。抵抗素子Rtr及びコンデンサCtrの共通接続点は、カップリングコンデンサ37及びバッファ38を介して、Dフリップフロップ39のクロック端子CLKに接続されている。エラーアンプ24を構成するオペアンプ31の出力端子は、抵抗素子40及び41の直列回路を介してグランドに接続されている。抵抗素子40及び41の共通接続点は、バッファ38の入力端子に接続されている。抵抗素子40及び41は、オフセット付与部に相当する。
【0024】
Dフリップフロップ39の入力端子Dは電源にプルアップされている。出力端子Qは、ゲートドライバ27(1)の入力端子に直接接続されていると共に、180°遅延回路26を介してゲートドライバ27(2)の入力端子に接続されている。出力端子Qバーは、抵抗素子42及びコンデンサ43の直列回路を介してグランドに接続されている。また、出力端子Qバーは、抵抗素子44及びダイオード45の直列回路を介して抵抗素子42及びコンデンサ43の共通接続点に接続されている。出力端子Qバーのレベルがローになると、コンデンサ43が放電されてDフリップフロップ39はクリアされる。
【0025】
図7に示すように、位相調整回路25では、入力されるパルス信号1に基づき三角波発生部36により発生させた三角波に、エラーアンプ24により出力される誤差電圧がオフセットとして印加される。これにより、三角波の振幅が、バッファ38の閾値Vthを超えるタイミングを変化させる。その変化に応じて、Dフリップフロップ39の出力端子Qより出力される位相が変化する。
【0026】
次に、本実施形態の作用ついて説明する。スイッチS1、S2は、位相が180°異なる同じスイッチングパターンとなるので、スイッチS1の動作を説明する。尚、区間に付す括弧付きの数字は、図中の丸数字に対応する。
図8に示す区間(1)では、交流入力によりダイオードD1がオンして、順方向電流Id1が流れ始める。続く区間(2)では、スイッチS1のドレイン-ソース間電圧Vdsが略ゼロになった後、スイッチS1のゲート信号Vgs1をハイレベルにしてスイッチS1をオンにする。この時、スイッチS1のターンオンは、ゼロ電圧スイッチング;ZVSとなる。
【0027】
区間(3)では、ダイオードD1がオフになるがスイッチS1はオンしているので、スイッチS1に電流Is1が流れ続ける。所定の時間が経過した後、スイッチS1のゲート信号Vgs1をローレベルにしてスイッチS1をオフにする。この時、スイッチS1に並列に接続されているコンデンサC1により、ターンオフもZVSとなる。続く区間(4)は、スイッチS1をオフになることで、ドレイン-ソース間電圧Vdsが立ち上がる。
【0028】
尚、
図9は、スイッチS1及びS2の動作タイミングチャートを示している。すなわち、可変リアクタ整流回路4により制御されるリアクタンス-jXrecは、コンデンサC1,C2によって負の値となる。その大きさは、スイッチS1,S2のオフデューティ比、つまり
図9に示すオフ期間の長さによって決まる。本実施形態では、ゲート信号Vgs1,Vgs2によってスイッチS1,S2のオフ期間を制御し、
図3に示したようにリアクタンス-jXrecの値を変動させて、入力リアクタンスjXrを可変制御する。
【0029】
以上のように本実施形態によれば、可変リアクタ整流回路4において、LC共振回路12a,12bの一端を、交流電力が入力される入力端子11a,11bのそれぞれに接続する。LC共振回路12a,12bの他端間には、スイッチS1及びS2の直列回路を接続する。ダイオードD1、D2をスイッチS1,S2のそれぞれに並列に、且つカソードが共通となるように接続する。コンデンサC1、C2を、ダイオードD1、D2にそれぞれ並列に接続する。フィルタ回路15は、スイッチS1及びS2の直列回路に並列に接続されるインダクタ13a及び13bの直列回路、及び直流出力端子間に接続される出力コンデンサ15を有する。ゲート制御回路5は、スイッチS1,S2を、互いに180度の位相差でスイッチングすることで、リアクタンスの可変制御を行う。
【0030】
より具体的には、スイッチS1,S2の内、対応するダイオードがオンした後にそのスイッチをオンさせ、前記ダイオードがオフした後、所定時間の経過後にそのスイッチをオフさせて、オフデューティ比によりリアクタンスの可変制御を行う。このように構成すれば、出力コンデンサ14に1つのDC-DCコンバータを接続すれば良く、可変リアクタンス整流回路4によってリアクタンスjXrを両極性で可変制御することができる。したがって、従来構成よりも回路規模を低減できる。
【0031】
(第2実施形態)
以下、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。
図10に示すように、第2実施形態の可変リアクタ整流回路51は、シングルエンドのシステムに適用するため、可変リアクタ整流回路4の片側を切り出したような構成である。交流入力端子11a、11b間には、LC共振回路12及びスイッチS1の直列回路が接続されている。このスイッチS1及び並列に接続されるダイオードD1及びコンデンサC1は、第1実施形態のスイッチS2、ダイオードD2およびコンデンサC2に対応し、これらと同じ方向となっている。フィルタ回路15に替わるフィルタ回路52は、インダクタ13及び出力コンデンサ14の直列回路で構成されている。
【0032】
図11に示すように、可変リアクタ整流回路51は、第1実施形態のゲート制御回路5によって、何れか一方のスイッチを制御する信号のパターンにより制御される。
第2実施形態では、LC共振回路12のリアクタンスをjXに設定することで、入力リアクタンスjXrを、jXr=jX-jXrec、とする。そして、スイッチS1のスイッチングを第1実施形態と同様に制御し、オフデューティ比によってリアクタンスを可変制御する。コンデンサC1の容量を第1実施形態と同じ値に設定すると、リアクタンスの可変範囲は狭くなるが回路規模はより小さくなる。
【0033】
(その他の実施形態)
第1及び第2ダイオードは、MOSFETの内蔵ダイオードでも良い。
第1及び第2コンデンサは、MOSFETのドレイン,ソース間の寄生容量のみで構成しても良いし、その寄生容量とMOSFETに並列に接続したコンデンサとで構成しても良い。
第1実施形態のスイッチS1、S2は、NチャネルMOSFETのソースが共通となる方向に接続しても良い。
スイッチング素子は、NチャネルMOSFETに限らない。
第1及び第2コンデンサの容量Cは、ΔX<(|jXrec|の最大値)を満たすように設定しても良い。
【0034】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0035】
図面中、1は高周波電源、2は位相差検出回路、4は可変リアクタ整流回路。5はゲート制御回路、6は負荷、11a,11bは入力端子、12a,12bはLC共振回路、13a及び13bはインダクタ、14は出力コンデンサ、15はフィルタ回路、S1、S2はスイッチ、C1及びC2はコンデンサ、D1及びD2はダイオードを示す。