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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178683
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】リレー回路および電気的接続装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 1/067 20060101AFI20241218BHJP
   G01R 1/073 20060101ALI20241218BHJP
   G01R 31/26 20200101ALI20241218BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
G01R1/067 D
G01R1/073 D
G01R31/26 J
H01L21/66 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097008
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000153018
【氏名又は名称】株式会社日本マイクロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 宣行
(72)【発明者】
【氏名】鹿末 壮一
(72)【発明者】
【氏名】木本 雅孝
(72)【発明者】
【氏名】門脇 章学
(72)【発明者】
【氏名】▲崎▼山 伸
【テーマコード(参考)】
2G003
2G011
4M106
【Fターム(参考)】
2G003AA07
2G003AG04
2G003AG15
2G003AH09
2G011AA02
2G011AA16
2G011AC08
2G011AC11
2G011AC33
2G011AF02
2G011AF07
4M106AA01
4M106AA02
4M106BA01
4M106DD01
4M106DD03
4M106DD10
4M106DD11
4M106DD23
(57)【要約】
【課題】ループバック回路の損失およびノイズを低減できるリレー回路および電気的接続装置を提供する。
【解決手段】電気的接続装置は、検査用端子、配線基板、およびリレー回路を備える。配線基板は、検査用端子とそれぞれと電気的に接続する第1電極、第1電極とそれぞれ接続する接続配線、および、接続配線を介して第1電極とそれぞれ電気的に接続する第2電極を含む。リレー回路は、互いに異なる第1電極のいずれかとそれぞれ電気的に接続する第1配線および第2配線と接続する。リレー回路は、共通端子、第1配線に接続する第1配線端子、第2配線に接続する第2配線端子、検査装置とそれぞれ電気的に接続する第1検査端子および第2検査端子を含む。リレー回路は、第1配線端子を共通端子又は第1検査端子のいずれかと選択的に接続し、第2配線端子を共通端子又は第2検査端子のいずれかと選択的に接続する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査装置による検査対象物の検査に使用される電気的接続装置であって、
前記検査対象物と接触する複数の検査用端子と、
前記検査用端子のいずれかとそれぞれと電気的に接続する複数の第1電極、前記第1電極のいずれかとそれぞれ接続する複数の接続配線、および、前記接続配線を介して前記第1電極のいずれかとそれぞれ電気的に接続する複数の第2電極を含む配線基板と、
互いに異なる前記第1電極とそれぞれ電気的に接続する第1配線および第2配線と接続するリレー回路と
を備え、
前記リレー回路が、
共通端子と、
前記第1配線に接続する第1配線端子と、
前記第2配線に接続する第2配線端子と、
前記検査装置とそれぞれ電気的に接続可能な第1検査端子および第2検査端子と
を含み、
前記第1配線端子を前記共通端子又は前記第1検査端子のいずれかと選択的に接続し、
前記第2配線端子を前記共通端子又は前記第2検査端子のいずれかと選択的に接続する、
電気的接続装置。
【請求項2】
前記共通端子と電気的に接続された第1の前記検査用端子と、前記共通端子と電気的に接続された第2の前記検査用端子とを含み、前記検査対象物の2つの信号端子を電気的に接続するループバック回路を構成可能である、請求項1に記載の電気的接続装置。
【請求項3】
前記共通端子、前記第1配線端子、前記第2配線端子、前記第1検査端子、および前記第2検査端子が一体的に形成されている、請求項1に記載の電気的接続装置。
【請求項4】
前記共通端子がコンデンサを含み、
前記コンデンサの第1電極端子が前記第1配線と電気的に接続可能であり、
前記コンデンサの第2電極端子が前記第2配線と電気的に接続可能である、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電気的接続装置。
【請求項5】
前記リレー回路が前記配線基板に配置され、
前記第1配線および前記第2配線が前記接続配線に含まれる、
請求項1に記載の電気的接続装置。
【請求項6】
前記第1検査端子および前記第2検査端子が前記第2電極と電気的に接続されている、請求項5に記載の電気的接続装置。
【請求項7】
前記配線基板に積層され、前記第2電極と前記検査装置を電気的に接続する配線パターンを含むプリント基板を更に備える、請求項5に記載の電気的接続装置。
【請求項8】
前記配線基板が、前記配線基板の主面の法線方向から見た平面視において、前記検査用端子の間隔を前記配線パターンの間隔まで拡張するスペーストランスフォーマである、請求項7に記載の電気的接続装置。
【請求項9】
前記第1配線端子を前記共通端子又は前記第1検査端子のいずれかと選択的に接続させ、且つ、前記第2配線端子を前記共通端子又は前記第2検査端子のいずれかと選択的に接続させる制御信号を、前記リレー回路が前記検査装置から受信可能である、請求項1に記載の電気的接続装置。
【請求項10】
前記第1配線端子を前記共通端子又は前記第1検査端子のいずれかと選択的に接続させ、且つ、前記第2配線端子を前記共通端子又は前記第2検査端子のいずれかと選択的に接続させる制御信号を、前記リレー回路が前記検査対象物から受信可能である、請求項1に記載の電気的接続装置。
【請求項11】
前記検査用端子が、一方の端部が前記配線基板に接続され、他方の端部が前記検査対象物の信号端子と接触するプローブである、請求項1に記載の電気的接続装置。
【請求項12】
前記検査用端子が、前記検査対象物を実装したパッケージの外部端子と接続するテストソケットに配置されている、請求項1に記載の電気的接続装置。
【請求項13】
共通端子と、
第1配線端子および第2配線端子と、
第1検査端子および第2検査端子と
を備え、
前記第1配線端子を前記共通端子又は前記第1検査端子のいずれかと選択的に接続し、
前記第2配線端子を前記共通端子又は前記第2検査端子のいずれかと選択的に接続し、
前記共通端子、前記第1配線端子、前記第2配線端子、前記第1検査端子および前記第2検査端子が一体的に形成されている、
リレー回路。
【請求項14】
MEMSプロセスを用いて、前記共通端子、前記第1配線端子、前記第2配線端子、前記第1検査端子および前記第2検査端子が一体的に形成されている、請求項13に記載のリレー回路。
【請求項15】
前記共通端子がコンデンサを含み、
前記コンデンサの第1電極端子が前記第1配線端子と電気的に接続可能であり、
前記コンデンサの第2電極端子が前記第2配線端子と電気的に接続可能である、
請求項13又は14に記載のリレー回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リレー回路および検査対象物の電気的特性の検査に使用される電気的接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路などの検査対象物の電気的特性を測定するために、検査対象物に接触させる検査用端子を有する電気的接続装置が用いられている。電気的接続装置を用いる測定では、検査用端子を介して検査対象物をテスタなどの検査装置と電気的に接続させる。
【0003】
検査対象物の特性を検査するために、検査対象物の出力端子から出力された信号を検査対象物の入力端子に入力させて、検査対象物の出力部と入力部が機能していることを検査することがある。そのために、検査対象物の出力端子と入力端子を電気的に接続する回路(以下、「ループバック回路」とも称する。)を構成可能な電気的接続装置が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2020-0063009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
検査対象物の特性を高い精度で測定するためには、信号が伝搬するループバック回路の損失およびノイズを低減することが重要である。本発明は、ループバック回路の損失およびノイズを低減できるリレー回路および電気的接続装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る電気的接続装置は、複数の検査用端子、配線基板、およびリレー回路を有することを要旨とする。配線基板は、検査用端子のいずれかとそれぞれ電気的に接続する複数の第1電極、第1電極のいずれかとそれぞれ接続する複数の接続配線、および、接続配線を介して第1電極のいずれかとそれぞれ電気的に接続する複数の第2電極を含む。リレー回路は、互いに異なる第1電極のいずれかとそれぞれ電気的に接続する第1配線および第2配線と接続する。リレー回路は、共通端子、第1配線に接続する第1配線端子、第2配線に接続する第2配線端子、検査装置とそれぞれ電気的に接続する第1検査端子および第2検査端子を含む。リレー回路は、第1配線端子を共通端子又は第1検査端子のいずれかと選択的に接続し、第2配線端子を共通端子又は第2検査端子のいずれかと選択的に接続する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ループバック回路の損失およびノイズを低減できるリレー回路および電気的接続装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施形態に係る電気的接続装置の構成を示す模式図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る電気的接続装置のリレー回路の構成を示す模式図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る電気的接続装置の第1の接続状態を示す模式図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る電気的接続装置の第2の接続状態を示す模式図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る電気的接続装置のリレー回路に含まれるコンデンサの構成を示す模式図である。
図6A図6Aは、第1の実施形態に係る電気的接続装置のリレー回路の構成を示す模式的な側面図である。
図6B図6Bは、第1の実施形態に係る電気的接続装置のリレー回路の構成を示す模式的な断面図である。
図6C図6Cは、第1の実施形態に係る電気的接続装置のリレー回路の構成を示す模式的な正面図である。
図7A図7Aは、図6Aに示すリレー回路の第1の接続状態を示す模式的な側面図である。
図7B図7Bは、図6Bに示すリレー回路の第1の接続状態を示す模式的な断面図である。
図7C図7Cは、図6Cに示すリレー回路の第1の接続状態を示す模式的な正面図である。
図8A図8Aは、図6Aに示すリレー回路の第2の接続状態を示す模式的な側面図である。
図8B図8Bは、図6Bに示すリレー回路の第2の接続状態を示す模式的な断面図である。
図8C図8Cは、図6Cに示すリレー回路の第2の接続状態を示す模式的な正面図である。
図9A図9Aは、比較例のリレー回路の第1の接続状態を示す模式図である。
図9B図9Bは、比較例のリレー回路の第2の接続状態を示す模式図である。
図10A図10Aは、第2の実施形態に係る電気的接続装置のリレー回路の構成を示す模式的な側面図である。
図10B図10Bは、第2の実施形態に係る電気的接続装置のリレー回路の構成を示す模式的な断面図である。
図10C図10Cは、第2の実施形態に係る電気的接続装置のリレー回路の構成を示す模式的な正面図である。
図11A図11Aは、図10Aに示すリレー回路の第1の接続状態を示す模式的な側面図である。
図11B図11Bは、図10Bに示すリレー回路の第1の接続状態を示す模式的な断面図である。
図11C図11Cは、図10Cに示すリレー回路の第1の接続状態を示す模式的な正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各部の厚みの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置などを下記のものに特定するものでない。
【0010】
(第1の実施形態)
図1に示す第1の実施形態に係る電気的接続装置1は、検査対象物2の検査に使用される。電気的接続装置1は、検査対象物2の検査時に検査対象物2と接触する複数のプローブ10と、プローブ10に接続された配線基板20と、配線基板20に配置されたリレー回路30を備える。電気的接続装置1は、配線基板20に積層されたプリント基板40と、プリント基板40に積層されたスティフナ50を更に備える。
【0011】
プローブ10の一方の端部(以下、「基端部」とも称する。)が、配線基板20に接続されている。検査対象物2の検査時には、プローブ10の他方の端部(以下、「先端部」とも称する。)が検査対象物2の信号端子(図示略)と接触する。複数のプローブ10は、検査対象物2と検査装置を電気的に接続させる複数の検査用端子として機能する。図1は、プローブ10と検査対象物2が離隔した状態を示す。プローブ10は、プローブ10が貫通するプローブヘッド60によって支持されてもよい。プローブヘッド60は、内部に空間が設けられた筐体であってもよい。プローブヘッド60は、例えば配線基板20に固定される。
【0012】
配線基板20は、図1に示すように、複数のプローブ10のいずれかとそれぞれ電気的に接続する複数の第1電極21と、第1電極21のいずれかとそれぞれ電気的に接続する複数の第2電極22を含む。第2電極22は、第1電極21のいずれかとそれぞれ接続する複数の接続配線200を介して、第1電極21と電気的に接続されている。第1電極21は、プローブ10の基端部と接続している。接続配線200は、例えば配線基板20の内部に配置された内部配線であってよい。配線基板20に、例えばMLO(Multi-Layer Organic)やMLC(Multi-Layer Ceramic)などの多層配線基板を使用してもよい。
【0013】
プリント基板40は、配線基板20の第2電極22と検査装置とを電気的に接続する配線パターン400を含む。例えば、プリント基板40の内部および表面に配置された配線パターン400の第1端部41が配線基板20の第2電極22と接続され、配線パターン400の第2端部42が検査装置と電気的に接続されている。
【0014】
配線基板20は、例えば配線基板20の主面の法線方向から見た平面視において、プローブ10の基端部の間隔をプリント基板40の配線パターン400の間隔まで拡張するスペーストランスフォーマである。配線基板20にスペーストランスフォーマを使用することにより、検査対象物2に配置された信号端子の間隔に対応するプローブ10の基端部を、基端部の間隔よりも広い間隔で配置されたプリント基板40の配線パターン400と電気的に接続することができる。
【0015】
図1に示すように、プリント基板40にスティフナ50が積層されていてもよい。スティフナ50はプリント基板40よりも剛性が高く、プリント基板40が撓むなどしないようにして電気的接続装置1の機械的強度を確保する。更に、スティフナ50は、電気的接続装置1の構成部品のそれぞれを固定する支持体として使用してよい。スティフナ50は、例えばネジによりプリント基板40に固定してもよい。
【0016】
リレー回路30は、互いに異なる第1電極21のいずれかとそれぞれ電気的に接続する第1配線201Aおよび第2配線202Aと接続する。図1に示したリレー回路30は、配線基板20に配置された接続配線200に含まれる第1配線201Aおよび第2配線202Aと接続する。第1配線201Aは、複数のプローブ10のうちの第1のプローブ101と電気的に接続する。第2配線202Aは、複数のプローブ10のうちの第2のプローブ102と電気的に接続する。
【0017】
図2に示すように、リレー回路30は、共通端子300、第1配線201Aに接続する第1配線端子301A、第2配線202Aに接続する第2配線端子302A、第1検査端子301B、第2検査端子302Bを含む。第1検査端子301Bは、配線基板20の接続配線200に含まれる第1検査配線201Bおよびプリント基板40の配線パターン400の一部を介して、検査装置と電気的に接続可能である。第2検査端子302Bは、配線基板20の接続配線200に含まれる第2検査配線202Bおよびプリント基板40の配線パターン400の一部を介して、検査装置と電気的に接続可能である。
【0018】
リレー回路30は、第1配線端子301Aを共通端子300又は第1検査端子301Bのいずれかと選択的に接続する。更に、リレー回路30は、第2配線端子302Aを共通端子300又は第2検査端子302Bのいずれかと選択的に接続する。以下において、リレー回路30により第1配線端子301Aと第2配線端子302Aの接続対象を切り替える動作を「切り替え動作」とも称する。リレー回路30の切り替え動作は、例えば、リレー回路30が検査装置から受信する制御信号CSによって制御されてもよい。
【0019】
リレー回路30は、第1配線端子301Aを共通端子300と接続するタイミングでは、第2配線端子302Aを共通端子300と接続させる。第1配線端子301Aおよび第2配線端子302Aが共通端子300と接続された状態を、以下において「第1の接続状態」と称する。一方、リレー回路30は、第1配線端子301Aを第1検査端子301Bと接続するタイミングでは、第2配線端子302Aを第2検査端子302Bと接続させる。第1配線端子301Aが第1検査端子301Bと接続され、第2配線端子302Aが第2検査端子302Bと接続された状態を、以下において「第2の接続状態」と称する。
【0020】
図3に、第1の接続状態における配線経路を示す。図3に示すように、検査対象物2と検査装置3との間の配線経路は、第1区間P1~第4区間P4により構成される(以下において同様。)。第1区間P1は、検査対象物2の信号端子と先端部が接触した状態のプローブ10を介する配線経路である。第2区間P2は、配線基板20の接続配線200により構成される配線経路である。第3区間P3は、プリント基板40の配線パターン400により構成される配線経路である。第4区間P4はプリント基板40と検査装置3までの配線経路である。
【0021】
図3に示すように、第1の接続状態においては、第1配線201Aと電気的に接続する第1のプローブ101と、第2配線202Aと電気的に接続する第2のプローブ102とが、共通端子300を介して電気的に接続する。つまり、電気的接続装置1では、共通端子300にそれぞれ電気的に接続された第1のプローブ101と第2のプローブ102とにより、ループバック回路を構成可能である。
【0022】
第1の接続状態において構成されるループバック回路により、検査対象物2の2つの信号端子が電気的に接続されている。図3は、第1のプローブ101が接触する検査対象物2の第1信号端子2Aと、第2のプローブ102が接触する検査対象物2の第2信号端子2Bが、共通端子300を介して電気的に接続されている場合を例示的に示している。例えば、検査対象物2が受信回路であって、第1信号端子2Aが検査対象物2の出力端子であり、第2信号端子2Bが検査対象物2の入力端子である場合に、検査対象物2からの出力を入力へ戻すことにより伝送試験を行うことができる。つまり、検査対象物2の出力部や入力部が正常に機能しているかどうかを、伝送する相手方の機器がなくても試験することができる。例えば、受信回路について行うジッタ・トレランス・テストに準じた検査として、第1信号端子2A(出力端子)から出力された出力信号を入力信号として第2信号端子2B(入力端子)に入力して、規定のエラーレートが確保されているかを検査してもよい。
【0023】
一方、図4に示すように、第2の接続状態においては、第1配線201Aと電気的に接続する第1のプローブ101が、配線基板20およびプリント基板40を介して検査装置3と電気的に接続されている。言い換えると、検査対象物2の第1信号端子2Aが、電気的接続装置1を介して、検査装置3の第1端子3Aと電気的に接続されている。そして、第2配線202Aと電気的に接続する第2のプローブ102が、配線基板20およびプリント基板40を介して検査装置3と電気的に接続されている。言い換えると、検査対象物2の第2信号端子2Bが、電気的接続装置1を介して、検査装置3の第2端子3Bと電気的に接続されている。
【0024】
上記のように、第2の接続状態においては、検査対象物2の信号端子が、リレー回路30を介して検査装置3の端子と電気的に接続されている。第2の接続状態では、ICテスタなどの検査装置3と検査対象物2の間で電気信号が伝搬されて、検査対象物2の特性が測定される。
【0025】
リレー回路30の共通端子300が、第1配線201Aおよび第2配線202Aと電気的に接続可能なコンデンサを含んでもよい。図5に、共通端子300に含まれるコンデンサ33の例を示す。コンデンサ33には、半導体製造プロセスを用いて半導体基板に形成されたコンデンサ(以下、「プロセスコンデンサ」とも称する。)などを使用してよい。図5に示すコンデンサ33は、第1電極層33Aと第2電極層33Bの間に誘電体層33Cを配置した積層体が、半導体基板330の内部に形成されている。半導体基板330の一方の主面に、第1電極層33Aに接続する第1電極端子331、および第2電極層33Bに接続する第2電極端子332が配置されている。
【0026】
図6A図6Cに、コンデンサ33を含むリレー回路30の構成の例を示す。図6Aは、第1配線201Aに対向する第1電極端子331の位置を示す。図6Bは、第2配線202Aに対向する第2電極端子332の位置を示す。図6A図6Bにおける紙面の上方から下方に向かう方向をZ方向、Z方向と垂直に紙面の右側から左側に向かう方向をX方向、Z方向と垂直に紙面の手前側から奥側に向かう方向をY方向とする。図6Cは、X方向から見た第1電極端子331と第2電極端子332の相対的な位置関係を示す。図6Bは、図6CのVIB-VIB方向に沿った断面図である。以下において、X方向から見た図面を正面図、Y方向から見た図面を側面図とする。
【0027】
図6A図6Cに示すリレー回路30は、主面がXY平面に平行な支持部311、支持部311のZ方向に向いた主面に配置された第1短絡配線3121と第2短絡配線3122、支持部311に一端が接続してZ方向に延伸する柱部313を有する。支持部311は絶縁性を有し、第1短絡配線3121および第2短絡配線3122は導電性を有する。第1短絡配線3121と第2短絡配線3122は、Y方向に沿って平行に配置され、それぞれX方向に延伸する。以下において、第1短絡配線3121と第2短絡配線3122のそれぞれを限定しない場合は、短絡配線312とも表記する。
【0028】
柱部313の他端にコンデンサ33が接続されている。コンデンサ33の支持部311に対向する主面に、第1電極端子331と第2電極端子332がY方向に沿って配置されている。
【0029】
図6A図6Cに示すように、第1配線201Aと第2配線202Aが、支持部311とコンデンサ33の間に位置する。第1配線201A、第2配線202A、第1短絡配線3121および第2短絡配線3122は、同一のXY平面レベルに配置されている。
【0030】
Z方向から見て、第1電極端子331は第1配線201Aに対向し、第2電極端子332は第2配線202Aに対向する。第1短絡配線3121は、Z方向から見て第1配線201Aと第1検査配線201Bに対向する。第2短絡配線3122は、Z方向から見て第2配線202Aと第2検査配線202Bに対向する。
【0031】
図6A図6Cに示すリレー回路30は、第1配線201A、第2配線202A、第1検査配線201Bおよび第2検査配線202Bに対して、Z方向に沿ってM方向に相対的に移動可能に構成されている。短絡配線312が配置された支持部311、柱部313、およびコンデンサ33は、一体的に移動する。例えば、リレー回路30は、制御信号CSに応答して、第1の接続状態と第2の接続状態の間でZ方向に移動する。
【0032】
図6A図6Cに示すリレー回路30の第1の接続状態の例を、図7A図7Cに示す。図7Bは、図7CのVIIB-VIIB方向に沿った断面図である。第1の接続状態において、リレー回路30は図6A図6Cの状態から-Z方向に移動する。これにより、第1の接続状態では、コンデンサ33の第1電極端子331が第1配線201Aと電気的に接続し、第2電極端子332が第2配線202Aと電気的に接続する。第1の接続状態において、第1電極端子331が第1配線端子301Aに対応し、第2電極端子332が第2配線端子302Aに対応する。そして、コンデンサ33が共通端子300に対応する。
【0033】
第1の接続状態では、検査対象物2の第1信号端子2Aと第2信号端子2Bが、コンデンサ33を介して電気的に接続されている。言い換えると、第1の接続状態において、コンデンサ33を含むループバック回路が第1信号端子2Aと第2信号端子2Bの間に構成される。
【0034】
図6A図6Cに示すリレー回路30の第2の接続状態の例を、図8A図8Cに示す。図8Bは、図8CのVIIIB-VIIIB方向に沿った断面図である。第2の接続状態において、リレー回路30は図6A図6Cの状態からZ方向に移動する。これにより、第2の接続状態では、第1短絡配線3121に第1配線201Aと第1検査配線201Bが接続する。更に、第2短絡配線3122に第2配線202Aと第2検査配線202Bが接続する。つまり、第1短絡配線3121を介して第1配線201Aと第1検査配線201Bが電気的に接続し、第2短絡配線3122を介して第2配線202Aと第2検査配線202Bが電気的に接続する。
【0035】
第2の接続状態において、第1短絡配線3121の第1配線201Aと接続する部分が第1配線端子301Aに相当し、第1短絡配線3121の第1検査配線201Bと接続する部分が第1検査端子301Bに相当する。そして、第2短絡配線3122の第2配線202Aと接続する部分が第2配線端子302Aに相当し、第2短絡配線3122の第2検査配線202Bと接続する部分が第2検査端子302Bに相当する。
【0036】
第2の接続状態では、検査対象物2の第1信号端子2Aと第2信号端子2Bが、検査装置3の第1端子3Aと第2端子3Bとそれぞれ電気的に接続されている。これにより、第2の接続状態において、検査装置3と検査対象物2の間で電気信号が伝搬されて、検査対象物2の特性が測定される。
【0037】
上記のように、リレー回路30として、共通端子300、第1配線端子301A、第2配線端子302A、第1検査端子301Bおよび第2検査端子302Bが一体的に形成されている。このため、リレー回路30は、回路構成が簡素であり、且つ内部の信号経路が短い。更に、回路構成が一体化されたリレー回路30は、外形サイズを小さくできる。例えば、リレー回路30をMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)プロセスを用いて一体的に形成することにより、リレー回路30を小型化できる。
【0038】
一方、図9Aおよび図9Bに示すように2つのリレーと外部容量33Mを含む比較例のリレー回路(以下、「比較リレー回路30M」とも称する。)を使用しても、第1の接続状態および第2の接続状態と同様の構成を実現できる。制御信号CSに制御される比較リレー回路30Mは、第1のリレー310により、検査対象物2の第1信号端子2Aを検査装置3の第1端子3Aと外部容量33Mのいずれかと電気的に接続する。そして、比較リレー回路30Mは、第2のリレー320により、検査対象物2の第2信号端子2Bを検査装置3の第2端子3Bと外部容量33Mのいずれかと接続する。すなわち、比較リレー回路30Mは、図9Aに示すように、検査対象物2の第1信号端子2Aを外部容量33Mの一方の端子と電気的に接続し、検査対象物2の第2信号端子2Bを外部容量33Mの他方の端子と電気的に接続する。或いは、比較リレー回路30Mは、図9Bに示すように、検査対象物2の第1信号端子2Aを検査装置3の第1端子3Aと電気的に接続し、検査対象物2の第2信号端子2Bを検査装置3の第2端子3Bと電気的に接続する。
【0039】
しかし、比較リレー回路30Mは、小型化が難しい。すなわち、比較リレー回路30Mは、2つのリレーと外部容量を配置するために、リレー回路30と比較して構造が複雑であり、外形サイズが大きい。このため、リレー回路30に比べて比較リレー回路30Mの信号経路は長く、信号の損失およびノイズが大きい。
【0040】
更に、リレー回路30を小型化することにより、リレー回路30の配置位置の自由度が大きくなる。例えば、プリント基板40よりもプローブ10との距離が近い配線基板20にリレー回路30を配置することができる。プローブ10とリレー回路30の距離を短くすることにより、プローブ10とリレー回路30を接続する配線の長さを短くできる。その結果、例えばループバック回路を用いて検査対象物2の高周波特性を測定する際に、配線を伝搬する信号の損失およびノイズの発生を抑制することができる。
【0041】
以上に説明したように、リレー回路30を含む第1の実施形態に係る電気的接続装置1によれば、ループバック回路の損失およびノイズを低減することができる。
【0042】
なお、リレー回路30の切り替え動作は、例えば検査装置からの制御信号CSに応じて行ってもよい。リレー回路30が検査装置から制御信号CSを受信可能に構成されていることにより、検査対象物2の一連の検査の途中で、ループバック回路を任意のタイミングで構成することができる。例えば、リレー回路30と検査装置の間を制御信号CSが伝搬する配線を、配線基板20とプリント基板40に形成してもよい。或いは、手動によりリレー回路30の切り替え動作を行ってもよい。
【0043】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る電気的接続装置1は、図10A図10Cに示すように、支持部311に一端が接続する柱部313の他端に、コンデンサ33ではなく、連結配線34が主面に配置された支持基板35が接続されている。連結配線34は導電性材料からなり、支持基板35の支持部311に対向する主面に配置されている。連結配線34は、第1配線201Aおよび第2配線202Aに対向する。第2の実施形態に係る電気的接続装置1は、リレー回路30がコンデンサ33の代わりに連結配線34を含むことが、第1の実施形態と異なる点である。その他の構成については、第2の実施形態に係る電気的接続装置1は、図1に示す第1の実施形態と同様である。
【0044】
第1の接続状態において、図11A図11Cに示すように、リレー回路30は図10A図10Cの位置から-Z方向に移動する。これにより、第1配線201Aと第2配線202Aが連結配線34と接続する。その結果、第1配線201Aと第2配線202Aが連結配線34を介して電気的に接続されている。
【0045】
したがって、第1の接続状態では、検査対象物2の第1信号端子2Aと第2信号端子2Bが、連結配線34を介して電気的に接続されている。言い換えると、第1の接続状態において、第1信号端子2Aと第2信号端子2Bが直列に接続されたループバック回路が構成される。
【0046】
第2の実施形態に係る電気的接続装置1においても、第2の接続状態は図8A図8Cを参照して説明した構成と同様である。すなわち、検査対象物2の第1信号端子2Aと第2信号端子2Bが、短絡配線312を介して、検査装置3の第1端子3Aと第2端子3Bとそれぞれ電気的に接続されている。このため、第2の接続状態については説明を省略する。
【0047】
例えば、検査対象物2の入出力端子に容量付きの保護素子が接続されていると、測定波形になまりが生じる。このため、保護素子が接続されていない状態で検査装置による検査対象物2の測定が行われることがある。その場合に、第1の実施形態に係る電気的接続装置1のリレー回路30に含まれるコンデンサ33が、保護素子の代わりに機能する。
【0048】
一方、検査対象物2に保護素子が接続されない場合、或いは保護素子の容量が測定の問題にならない場合などには、第2の実施形態に係る電気的接続装置1のように、リレー回路30がコンデンサ33を含まなくてもよい。リレー回路30がコンデンサ33を含まないことにより、リレー回路30の回路構成を更に簡素にすると共に、内部の信号経路を短くできる。他は、第2の実施形態に係る電気的接続装置1は第1の実施形態と実質的に同様であり、重複した記載を省略する。
【0049】
(その他の実施形態)
上記のように本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0050】
例えば、上記では、リレー回路30を配線基板20に配置する場合を例示的に説明した。しかし、リレー回路30を電気的接続装置1のどの位置に配置してもよい。電気的接続装置1では、リレー回路30が小型化したことにより、リレー回路30を配置する自由度が高い。このため、例えばリレー回路30をプリント基板40に配置してもよい。ただし、プローブ10とリレー回路30とを接続する配線が短いほど、リレー回路30に伝搬する信号の損失およびノイズを低減する点で好ましい。
【0051】
また、リレー回路30が1つである場合を例示的に説明したが、電気的接続装置1が複数のリレー回路30を含んでもよい。複数のリレー回路30を含む電気的接続装置1によれば、検査対象物2の任意の2点の信号端子についてループバック回路を構成したり、複数のループバック回路を同時に構成したりできる。
【0052】
上記では、リレー回路30がコンデンサ33を含む場合を例示的に説明したが、コンデンサ33以外にもインダクタ又は抵抗素子などの素子をリレー回路30に配置してもよい。例えば、ループバック回路のインピーダンス整合をとるためにリレー回路30に含まれる受動素子を選択してもよい。このように、電気的接続装置1では、検査対象物2の検査内容などに応じて、ループバック回路に挿入する素子を任意に選択することができる。
【0053】
なお、図1では、リレー回路30が配置された電気的接続装置1が、検査対象物2と接触するプローブ10を含む場合を示した。図1に示した電気的接続装置1によれば、例えば、ウェハから分離しない状態又はチップ化された状態の検査対象物2の電気的特性を測定することができる。一方、パッケージなどに検査対象物2を実装した状態で行う電気的特性の測定に対応して、テストソケットを含む電気的接続装置にリレー回路30を配置してもよい。例えば、図1に示した電気的接続装置1のプローブ10に代えて、検査対象物2を実装したパッケージの外部端子と接続する検査用端子が配置されたテストソケットを配線基板20に配置してもよい。パッケージに実装された検査対象物2の信号端子について、テストソケットとパッケージを接続させて、パッケージの外部端子およびテストソケットの検査用端子を介したループバック回路を構成することができる。テストソケットを含む電気的接続装置においても、上記に説明したプローブ10を含む電気的接続装置1と同様に、第1の接続状態と第2の接続状態を切り替えることができる。
【0054】
また、リレー回路30の切り替え動作は、検査対象物2の制御によって行ってもよい。例えば、検査対象物2である半導体装置が、切り替え動作を制御する制御信号CSをリレー回路30に出力すると共にループバック回路を用いた測定を行う自己診断機能を有してもよい。言い換えると、リレー回路30が検査対象物2から制御信号CSを受信可能なように電気的接続装置1および検査対象物2を構成し、検査対象物2がリレー回路30の動作を制御してもよい。制御信号CSにより、リレー回路30は、第1配線端子301Aを共通端子300又は第1検査端子301Bのいずれかと選択的に接続させ、且つ、第2配線端子302Aを共通端子300又は第2検査端子302Bのいずれかと選択的に接続させる。例えば、検査対象物2が内蔵する検査回路が、制御信号CSを電気的接続装置1の検査用端子を介してリレー回路30に送信してループバック回路を構成し、検査対象物2による自己診断を行ってもよい。上記のように、検査対象物2が検査装置を内蔵するような構成においても、ループバック回路の損失およびノイズを低減することができる。
【0055】
このように、本発明は上記では記載していない様々な実施形態などを含むことはもちろんである。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0056】
1 電気的接続装置
10 プローブ
20 配線基板
21 第1電極
22 第2電極
30 リレー回路
33 コンデンサ
40 プリント基板
50 スティフナ
60 プローブヘッド
200 接続配線
201A 第1配線
201B 第1検査配線
202A 第2配線
202B 第2検査配線
300 共通端子
301A 第1配線端子
301B 第1検査端子
302A 第2配線端子
302B 第2検査端子
400 配線パターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C