(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178684
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】異常検出システム
(51)【国際特許分類】
D06H 3/08 20060101AFI20241218BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20241218BHJP
B65H 63/032 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
D06H3/08
G06T7/00 610Z
B65H63/032 A
B65H63/032 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097011
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100201455
【弁理士】
【氏名又は名称】横尾 宏治
(72)【発明者】
【氏名】高田 大智
(72)【発明者】
【氏名】篠宮 寛樹
(72)【発明者】
【氏名】金川 直孝
【テーマコード(参考)】
3B154
3F115
5L096
【Fターム(参考)】
3B154AB01
3B154BA53
3B154BB47
3B154BC22
3B154BC42
3B154CA13
3B154CA16
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3F115CA44
3F115CB18
3F115CC23
3F115CC24
5L096AA06
5L096BA03
5L096CA09
5L096DA02
5L096DA03
5L096EA02
5L096EA05
5L096EA43
5L096FA17
5L096FA32
5L096FA33
5L096FA59
5L096GA02
5L096GA51
(57)【要約】
【課題】本発明は、繊維においてキズ糸等の異常を検出できる異常検出システムを提供する。
【解決手段】複数の繊維が帯状に広げられ、かつ一定方向に走行する繊維帯に対して光を照射する照明部と、繊維帯の幅方向に並設され、繊維帯での反射光を受光して撮像する複数の撮像部と、各撮像部が撮像した各画像に対して、各画像における繊維帯の輝度の平均値に対して所定の関係にある輝度閾値を基準として二値化処理をそれぞれ行い、第1色と第2色で構成される二値化画像をそれぞれ生成する二値化処理部と、各二値化画像を結合して結合画像を作成する画像結合部と、結合画像を元に複数の繊維の異常を判定する異常判定部を備える構成とする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の繊維が帯状に広げられ、かつ一定方向に走行する繊維帯に対して光を照射する照明部と、
前記繊維帯の幅方向に並設され、前記繊維帯での反射光を受光して撮像する複数の撮像部と、
各撮像部が撮像した各画像に対して、各画像における前記繊維帯の輝度の平均値に対して所定の関係にある輝度閾値を基準として二値化処理をそれぞれ行い、第1色と第2色で構成される二値化画像をそれぞれ生成する二値化処理部と、
各二値化画像を結合して結合画像を作成する画像結合部と、
前記結合画像を元に前記複数の繊維の異常を判定する異常判定部を備える、異常検出システム。
【請求項2】
前記輝度閾値は、前記繊維帯の輝度の平均値よりも小さい、請求項1に記載の異常検出システム。
【請求項3】
前記輝度閾値は、前記繊維帯の輝度の標準偏差から算出される、請求項1又は2に記載の異常検出システム。
【請求項4】
前記結合画像に対して前記繊維帯の幅方向の膨張処理又は収縮処理を行う、請求項1又は2に記載の異常検出システム。
【請求項5】
前記複数の撮像部は、直線状又は千鳥状に並設されている、請求項1又は2に記載の異常検出システム。
【請求項6】
前記照明部と前記複数の撮像部は、撮像装置を構成しており、
前記撮像装置は、各撮像部の撮像軸が前記繊維帯に対して所定の角度で傾斜するように設けられている、請求項1又は2に記載の異常検出システム。
【請求項7】
前記異常判定部は、前記第1色で表される部分の面積が所定の面積以上の場合に異常と判定する、請求項1又は2に記載の異常検出システム。
【請求項8】
前記結合画像は、各二値化画像に対応して複数のエリアに区画されており、
前記異常判定部は、前記第1色で表される部分が3つ以上のエリアに跨る場合に異常と判定する、請求項1又は2に記載の異常検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維の異常を検出する異常検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、人の髪の毛(人毛)を模して頭部に取り付ける人工毛髪用の繊維として合成繊維が使用されている(例えば、特許文献1)。
例えば、特許文献1では、人工毛髪用の繊維として難燃性のポリエステル系樹脂が使用されており、特許文献1の人工毛髪用繊維によれば、難燃性に優れ、かつ、人毛に近い光沢を有するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、合成繊維は、製造工程において、テンション等により糸が切れたり乾燥などの熱により縮んだりして絡みついたキズ糸や、糸条形成不良により発生した塊部や複数本の糸が合一して凝固した融着糸、熱により変色した変色糸等の異常が発生する場合がある。
キズ糸等の異常が発生すると、人工毛髪用に加工等を行ったときに見栄えが悪くなったり、品質が低下したりする問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、繊維においてキズ糸等の異常を検出できる異常検出システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するための一つの様相は、複数の繊維が帯状に広げられ、かつ一定方向に走行する繊維帯に対して光を照射する照明部と、前記繊維帯の幅方向に並設され、前記繊維帯での反射光を受光して撮像する複数の撮像部と、各撮像部が撮像した各画像に対して、各画像における前記繊維帯の輝度の平均値に対して所定の関係にある輝度閾値を基準として二値化処理をそれぞれ行い、第1色と第2色で構成される二値化画像をそれぞれ生成する二値化処理部と、各二値化画像を結合して結合画像を作成する画像結合部と、前記結合画像を元に前記複数の繊維の異常を判定する異常判定部を備える、異常検出システムである。
【0007】
本様相によれば、複数の繊維が帯状に広がった状態で繊維の異常を検出するので、繊維の異常を検出しやすい。
本様相によれば、各撮像部で小分けに撮像された各画像に対して個別に二値化処理を施すので、撮像部間の画像の輝度差の影響を受けることなく、結合画像を作成できる。
本様相によれば、異常判定部が結合画像を元に繊維の異常を判定できるので、判定結果により、繊維における異常を検出できる。
【0008】
ところで、キズ糸は、製造時に、一又は複数の糸が絡み合って形成されるため、ある程度の大きさがあり、ほとんどの場合に他の部分に対して隆起して形成される。そのため、キズ糸の発生個所は、照明部から光を照射したときに、撮像部で受光する光の輝度が他の部分に比べて低下する可能性が高い。すなわち、キズ糸の発生個所は、撮像部で撮像される画像の平均輝度よりも低い輝度となることが多く、輝度値をヒストグラムで表すと、平均輝度よりも低輝度側であって、分布のピークの裾野部分に現れることが多い。
【0009】
そこで、好ましい様相は、前記輝度閾値は、前記繊維帯の輝度の平均値よりも小さい。
【0010】
本様相によれば、輝度閾値を繊維帯の輝度の平均値よりも低く設定しているため、キズ糸による異常個所を抽出しやすく、キズ糸の異常を検出しやすい。
【0011】
好ましい様相は、前記輝度閾値は、前記繊維帯の輝度の標準偏差から算出される。
【0012】
本様相によれば、撮像部で撮像した各画像に合わせた二値化処理を各画像で行うので、二値化処理により異常個所を正常個所からより正確に分離しやすい。
【0013】
好ましい様相は、前記結合画像に対して前記繊維帯の幅方向の膨張処理又は収縮処理を行う。
【0014】
本様相によれば、結合画像において各撮像部による撮像画像間の境界を跨ぐ異常を分割することなく、ノイズを除去することができる。
【0015】
好ましい様相は、前記複数の撮像部は、直線状又は千鳥状に並設されている。
【0016】
本様相によれば、連続した結合画像を生成しやすい。
【0017】
好ましい様相は、前記照明部と前記複数の撮像部は、撮像装置を構成しており、前記撮像装置は、各撮像部の撮像軸が前記繊維帯に対して所定の角度で傾斜するように設けられている。
【0018】
本様相によれば、繊維帯における凹凸が反映されやすく異常個所をより正確に検出できる。
【0019】
好ましい様相は、前記異常判定部は、前記第1色で表される部分の面積が所定の面積以上の場合に異常と判定する。
【0020】
本様相によれば、異常をより正確に検出できる。
【0021】
好ましい様相は、前記結合画像は、各二値化画像に対応して複数のエリアに区画されており、前記異常判定部は、前記第1色で表される部分が3つ以上のエリアに跨る場合に異常と判定する。
【0022】
本様相によれば、異常をより簡単に検出できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の異常検出システムによれば、繊維においてキズ糸等の異常を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1実施形態の異常検出システムの説明図であり、(a)は異常検出システムを模式的に示した側面図であり、(b)は(a)の要部の斜視図である。
【
図2】
図1の異常検出システムのブロック図である。
【
図3】
図2の二値化処理部による二値化処理に用いられる輝度閾値の説明図であり、撮像画像の輝度値ヒストグラム(実線)と当該撮像画像の正規化した輝度値ヒストグラム(二点鎖線)を表す。
【
図4】
図1の異常検出システムによる異常検出動作の説明図であり、(a)は撮像工程で得られる各撮像画像の一例を表し、(b)は(a)の各撮影画像に基づいて結合工程で生成される結合画像を表す。
【
図5】
図1の異常検出システムによる異常検出動作の説明図であり、(a)は
図4の(b)の結合画像に基づいてノイズ除去工程によってノイズが除去された結合画像を表し、(b)は(a)の結合画像に基づいて輪郭抽出工程によって輪郭を抽出した結合画像を表す。
【
図6】本発明の他の実施形態の異常検出システムを模式的に示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0026】
本発明の第1実施形態の異常検出システム1は、複数の繊維が帯状に広げられて一定方向(搬送方向)に走行する繊維帯201においてキズ糸等の異常を検出するものである。
異常検出システム1は、
図1(a)のように、繊維供給部2と、扁平加工部3と、搬送部5と、繊維回収部6と、検出装置7を備えている。
【0027】
(繊維供給部2)
繊維供給部2は、複数の繊維の束(以下、繊維束200ともいう)を供給する部位である。
【0028】
(扁平加工部3)
扁平加工部3は、繊維供給部2から供給された繊維束200を幅方向に実質的に隙間なく広げ、搬送方向に帯状に延びた繊維帯201に加工する部位である。
本実施形態の扁平加工部3は、
図1(a)のように、少なくとも二つの挟持ローラ30a,30bを備え、繊維供給部2から供給された繊維束200を挟持ローラ30a,30bで挟んで繊維帯201に加工可能となっている。
【0029】
(搬送部5)
搬送部5は、繊維帯201を所定の速度で搬送する部位であり、
図1(a)のように複数の搬送ローラ50a~50eから構成されている。
搬送ローラ50a~50eのうち少なくとも一つの搬送ローラは、駆動源を持ち、駆動源によって自転可能な駆動ローラであり、残りの搬送ローラは駆動源を持たず自由回転可能な従動ローラである。
なお、搬送ローラ50a~50eの全ての搬送ローラが駆動ローラであってもよい。
搬送ローラ50dは、光沢のある金属製の金属ローラであり、光反射性を有している。
また、搬送ローラ50dは、搬送方向を他の方向に変換する搬送方向変換ローラであり、繊維帯201に対して張力を発生させるテンションローラでもある。
【0030】
(繊維回収部6)
繊維回収部6は、搬送部5によって搬送された繊維帯201を回収する部位である。
【0031】
(検出装置7)
検出装置7は、
図1のように、搬送ローラ50dに対向して設けられ、搬送ローラ50d上を走行する繊維帯201の異常を検出する装置である。
検出装置7は、
図2のように、主に管理装置102と、撮像装置103で構成されている。
【0032】
(管理装置102)
管理装置102は、ハードウェア構成として、各装置を制御する制御装置とデータに対する演算を行う演算装置で構成される中央処理装置と、データを記憶する記憶装置、外部からデータを入力する入力装置、外部にデータを出力する出力装置を備えたコンピュータである。
管理装置102は、
図2のように、データ蓄積部110と、画像抽出部111と、二値化処理部112と、画像結合部113と、ノイズ除去部115と、輪郭抽出部116と、異常判定部117と、報知部118と、入出力部120を備えている。
【0033】
データ蓄積部110は、過去及び現在の撮像画像データや二値化画像データ、結合画像データ、異常検知に関するデータ等の各種データを蓄積する部位である。
【0034】
画像抽出部111は、撮像装置103の撮像群132の各撮像部135で撮像された各撮像画像から繊維帯201のみが表された部分をそれぞれ抽出する部位である。
画像抽出部111は、具体的には、各撮像部135で撮像された撮像画像から搬送ローラ50dの部分や繊維の隙間部分を削除して繊維帯201のみが表された撮像画像を生成可能となっている。
【0035】
二値化処理部112は、画像抽出部111により繊維帯201の部分が抽出された各撮像画像に対して、
図3のように輝度を正規分布にし、輝度閾値Ltを基準に二値化処理を行い、第1色と第2色のみで表された二値化画像を生成する部位である。
本実施形態の二値化処理部112は、輝度が輝度閾値Lt以下の範囲を第1色にし、輝度閾値Lt超過の範囲を第2色にしている。
【0036】
画像結合部113は、二値化処理部112によって二値化処理され、第1色と第2色で表現された各二値化画像を一枚の結合画像に結合する部位である。
すなわち、画像結合部113は、各二値化画像を繊維帯201の幅方向に並設して結合し、重複した部分を削除することで連続した一枚の結合画像を生成することが可能となっている。
【0037】
ノイズ除去部115は、各二値化画像の並設方向における膨張処理又は収縮処理によって結合画像における各二値化画像に対応するエリア140(140A~140L)間を跨ぐ異常を分離することなく、ノイズを除去する部位である。
【0038】
輪郭抽出部116は、ノイズ除去部115によって膨張処理又は収縮処理された結合画像において第1色で表された部分の輪郭を抽出する部位である。
【0039】
異常判定部117は、結合画像における第1色で表された部分の輪郭から第1色で表された部分の面積によって異常を判定する部位である。
【0040】
報知部118は、異常判定部117が異常と判定した場合に作業者に報知する部位である。
報知部118による報知方法は、特に限定されるものではなく、例えば、音、色、映像、画像、言語等により報知することができる。
【0041】
入出力部120は、無線又は有線により、撮像装置103の入出力部133との間で双方向通信が可能であり、データの入出力が可能な部位である。
【0042】
(撮像装置103)
撮像装置103は、ライン状に撮像対象物たる繊維帯201を撮像するラインセンサーであり、具体的には、コンタクトイメージセンサー(CIS)である。
撮像装置103は、
図1(b),
図2のように、照明部130,131と、撮像群132と、入出力部133を備えている。
【0043】
照明部130,131は、
図1(b)のように、撮像対象物たる繊維帯201の撮像領域Pに対して光を照射する部位である。
照明部130,131は、繊維帯201の幅方向に一又は複数の発光素子が並設されている。
発光素子は、光を放射可能であれば、特に限定されるものではない。例えば、LED、有機ELなどが使用できる。
【0044】
撮像群132は、
図1(b)のように、複数の撮像部135(135A~135L)で構成されている。
本実施形態の撮像装置103は、撮像群132が12個の撮像部135A~135Lで構成されており、各撮像部135A~135Lによって12個の撮像画像を取得可能となっている。
すなわち、本実施形態の撮像装置103は、各撮像部135A~135Lによって、繊維帯201を幅方向において12個のエリア140A~140Lに区画して撮像画像を取得可能となっている。
【0045】
撮像部135は、照明部130,131から照射された光が、撮像対象物たる繊維帯201の撮像領域Pで反射した反射光を受光し撮像する部位である。
隣接する撮像部135のうち最近接する撮像部135,135間の間隔は、0.1cm以上5cm以下であることが好ましく、1cm以上2cm以下であることがより好ましい。
【0046】
(繊維)
繊維は、用途について特に限定されるものではなく、例えば、ウィッグやブレードなどに使用される人工毛髪用繊維として使用できる。
繊維の材質は、特に限定されるものではないが、再生繊維や半合成繊維、合成繊維などの化学繊維であることが好ましく、湿式紡糸装置により製造可能な合成繊維であることがより好ましい。
繊維の断面形状は、特に限定されるものではなく、例えば円形、楕円形、異形(例えば馬蹄形、C字形、Y字形)などの形状とすることができる。
【0047】
ここで、搬送部5によって繊維帯201を搬送する際の撮像装置103と繊維帯201の撮像領域Pの位置関係について説明する。
【0048】
撮像装置103は、
図1(b)のように、照明部130,131の間に撮像群132が配されており、撮像群132の各撮像部135が幅方向に千鳥状に並んでいる。すなわち、搬送方向において交互にずれながら、幅方向に並設されている。
撮像装置103は、撮像領域Pを平面視したときに、第1照明部130と第2照明部131が搬送方向において撮像領域Pを挟んでおり、撮像群132が撮像領域Pと重なるか撮像領域Pよりも搬送方向の上流側に位置している。
撮像装置103は、
図1(a)のように、搬送ローラ50dの回転軸方向から視たときに、第1照明部130の光軸が撮像領域Pに対して搬送方向の上流側に傾いており、第2照明部131の光軸が撮像領域Pに対して搬送方向の下流側に傾いている。
撮像装置103は、撮像群132の各撮像部135の撮像軸が撮像領域Pに対して所定の傾斜角度θ1で傾斜するように設けられている。すなわち、撮像装置103は、撮像群132の各撮像部135の撮像軸が搬送ローラ50dの回転軸と撮像領域Pを繋いだ方向(搬送ローラ50dの回転軸の法線方向)に対して傾斜している。
図1(a)に示される各撮像部135の撮像軸と搬送ローラ50dの回転軸と撮像領域Pを繋いだ方向とのなす傾斜角度θ1は、0度超過であり、30度以上であることが好ましい。傾斜角度θ1は、90度未満であり、60度以下であることが好ましい。
【0049】
続いて、本実施形態の異常検出システム1における異常検出動作について説明する。
【0050】
本実施形態の異常検出システム1の異常検出動作は、繊維供給部2から繊維束200を供給し、供給された繊維束200を扁平加工部3によって繊維帯201にし、搬送部5によって所定の速度で撮像領域Pを通過させ、繊維回収部6で繊維帯201を回収する。
異常検出動作は、この一連の運転動作において、搬送部5を走行中の繊維帯201におけるキズ糸等の異常を検知する動作である。
【0051】
具体的には、搬送部5によって所定の速度で走行中の繊維帯201に対して、撮像群132の各撮像部135で繊維帯201の撮像領域Pを撮像し、撮像装置103の入出力部133から管理装置102の入出力部120に撮像データを入力する(撮像工程)。
【0052】
このときの搬送部5による搬送速度は、各撮像部135によって検出できる速度であれば特に限定されるものではない。
搬送部5による搬送速度は、0.5m/s以上3.0m/s以下であることが好ましく、1.0m/s以上2.5m/s以下であることがより好ましい。
【0053】
また、このとき、撮像部135A~135Lの中には、幅方向において繊維帯201の一方の端部と搬送ローラ50dとの境界部分に跨った撮像部135Aと、繊維帯201の他方の端部と搬送ローラ50dとの境界部分に跨った撮像部135Lがあり、撮像部135Aの撮像画像と撮像部135Lの撮像画像には、
図4(a)のように、搬送ローラ50dの繊維帯201の露出部分が撮像されている。
【0054】
続いて、画像抽出部111が入力された撮像データを用いて各撮像部135で撮像された各撮像画像に対して、濃淡処理を行い、下地となる搬送ローラ50dの色と同色部分についてデータを除去し、繊維帯201の部分のみのデータを抽出する(帯抽出工程)。
【0055】
具体的には、搬送ローラ50dが光反射性を有しており、反射光の輝度が高いと考えられるため、各撮像部135での撮像画像をグレースケールにし、輝度が高い白色部分について背景色である搬送ローラ50dの色が表れているものとして撮像画像から当該白色部分のデータを削除し、黒又はグレー色で表現される繊維帯201の部分のみを抽出する。
【0056】
続いて、二値化処理部112が、
図3のように画像抽出部111によって繊維帯201が抽出された撮像画像における輝度値ヒストグラム(実線)を正規化して正規分布(二点鎖線)にし、当該正規分布において繊維帯201の部分の輝度の平均値Laから所定の輝度L1小さい値に輝度閾値Ltを設定する。そして、二値化処理部112が、輝度閾値Ltを基準として二値化処理を行い、低輝度側を第1色(本実施形態では黒色)にし、高輝度側を第2色(本実施形態では白色)にして第1色と第2色で表された二値化画像を生成する(二値化工程)。
【0057】
このときの輝度閾値Ltは、繊維帯201の輝度の平均値Laと繊維帯201の輝度の標準偏差σから算出されるものであることが好ましい。
輝度閾値Ltは、(La-1.5σ)以上であることが好ましく、(La-2.5σ)以下であることがより好ましい。
すなわち、所定の輝度L1は、1.5σ以上であることが好ましく、2.5σ以下であることが好ましい。本実施形態では、所定の輝度L1は、2σに設定している。
【0058】
続いて、画像結合部113が、
図4(b)のように二値化処理部112によって二値化された各二値化画像を結合させて一つの結合画像を生成する(結合工程)。
【0059】
このとき、画像結合部113は、各二値化画像を各撮像部135の位置関係に基づいて幅方向に結合し、重複部分については隣接する撮像部135のうち一方側を優先して他方側を削除する。
またこのとき、
図4(b)のように、各二値化画像に対応するエリア140A~140Lにおいてノイズによる第1色で表される線状部分が形成される。
エリア140A~140Lは、撮像部135A~135Lの撮像画像に対応する領域であり、繊維帯201の幅方向に区画される。
【0060】
続いて、ノイズ除去部115が、画像結合部113によって結合された結合画像に対して幅方向において膨張処理又は収縮処理を行う(ノイズ除去工程)。
すなわち、ノイズ除去部115が、結合画像において、隣接するエリア140,140間のノイズ(線状部分)を消失する程度に、第1色の部分を幅方向に収縮させるか、第2色の部分を幅方向に膨張させる。
本実施形態では、ノイズ除去部115が膨張処理を行い、第2色で表された部分を並設方向に膨張させ、第1色で表された部分を収縮させる。
【0061】
続いて、輪郭抽出部116がノイズ除去部115によってノイズが除去された
図5(a)に示される結合画像に対して、
図5(b)のように結合画像における第1色で表される部分の輪郭を抽出する(輪郭抽出工程)。
【0062】
このとき、輪郭抽出部116は、
図5(b)のように必要に応じて輪郭の面積が一定以下の除去閾値となるものを結合画像から削除する。
この除去閾値は、繊維の材質や太さ等によって適宜設定されるが、例えば、0mm
2超過499mm
2以下とできる。
【0063】
続いて、異常判定部117が、輪郭抽出部116によって抽出された輪郭(
図5(b)参照)の面積が判定閾値(所定の面積)以上の場合に、異常と判定して、異常検出動作を終了し、報知部118によって作業者に報知する。
一方、異常判定部117が、輪郭抽出部116によって抽出された輪郭の面積が判定閾値(所定の面積)未満の場合に、正常と判定して、そのまま異常検出動作を継続する(判定工程)。
【0064】
このとき、判定閾値は、繊維の材質や太さ等によって適宜設定されるが、例えば、500mm2以上1000mm2以下とできる。
【0065】
本実施形態の異常検出システム1によれば、複数の繊維が帯状に広がった状態の繊維帯201で繊維の異常を検出するので、繊維の異常を検出しやすい。
ここで、本実施形態の異常検出システム1では各撮像部135が千鳥配置となっており、搬送方向にずれているため、撮像部135ごとに撮像画像の色味に差がある問題がある。
そこで、本実施形態の異常検出システム1によれば、複数の撮像部135で撮像された各撮像画像に対して二値化処理部112が個別に二値化処理を施すので、撮像部135間の撮像画像の輝度差や色味の影響を受けることなく、画像結合部113で結合画像を作成できる。
本実施形態の異常検出システム1によれば、異常判定部117が結合画像を元に繊維の異常を判定できるので、判定結果により、繊維における異常を検出できる。
【0066】
本実施形態の異常検出システム1によれば、輝度閾値Ltが繊維帯201の輝度の平均値Laよりも小さいので、キズ糸の異常を特に検出しやすい。
【0067】
本実施形態の異常検出システム1によれば、輝度閾値Ltは、繊維帯201の輝度の標準偏差σから算出されるので、各撮像画像に合わせた二値化処理が可能であり、二値化処理により異常個所をより正確に分離しやすい。
【0068】
本実施形態の異常検出システム1によれば、結合画像に対して繊維帯201の幅方向の膨張処理又は収縮処理を行うので、結合画像において各撮像部による撮像画像間の境界を跨ぐ異常を分離することなく、ノイズを除去することができる。
【0069】
本実施形態の異常検出システム1によれば、複数の撮像部135は、千鳥状に並設されているので、連続した結合画像を生成しやすい。
【0070】
本実施形態の異常検出システム1によれば、撮像装置103は、各撮像部135の撮像軸が繊維帯201に対して所定の角度で傾斜するように設けられているので、繊維帯201における凹凸が反映されやすく異常をより正確に検出できる。
【0071】
本実施形態の異常検出システム1によれば、異常判定部117は、第1色で表される部分の面積が判定閾値以上の場合に異常と判定するので、異常をより正確に検出できる。
【0072】
本実施形態の異常検出システム1によれば、合成画像が第1色と第2色のみで表されるので、異常判定部117が異常と判定したときに、合成画像によって異常個所を特定できる。
【0073】
上記した実施形態では、異常判定部117は、第1色で表される部分の面積が判定閾値以上の場合に異常と判定したが、本発明はこれに限定されるものではない。結合画像を用いた他の方法により異常を判定してもよい。例えば、異常判定部117は、結合画像の第1色で表される部分が3つ以上のエリア140,140,140に跨る場合に異常と判定してもよい。こうすることで、面積の計算が必要なく、異常をより簡単に検出できる。
また、異常判定部117は、結合画像の第1色で表される部分が一つのエリア140を横断する場合に異常と判定してもよい。こうすることで、面積の計算が必要なく、異常をより簡単に検出できる。
【0074】
上記した実施形態では、繊維帯201の搬送ローラ50d上に位置した部分に撮像領域Pを設定して異常を検出したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、
図6のように繊維帯201の搬送ローラ50a,50b間に位置した部分に撮像領域Pを設定して異常を検出してもよい。この場合、繊維帯201の下地として撮像領域Pに属するように光反射性を有した金属製又は白色のベース部材150を設けることが好ましい。こうすることで撮像画像における背景色であるベース部材150の色を基準として帯抽出工程において繊維帯201の部分のみを抽出することができる。
【0075】
上記した実施形態では、帯抽出工程において各撮像部135での撮像画像を白色と黒色で濃淡が表されたグレースケールにし、撮像画像から繊維帯201の部分を抽出したが、たが、本発明はこれに限定されるものではない。有色であって異なる2色のグラデーションによって撮像画像から繊維帯201の部分を抽出してもよい。
【0076】
上記した実施形態では、第1色が黒色で第2色が白色であったが、本発明はこれに限定されるものではない。第1色と第2色は、他の色であってもよい。例えば、第1色と第2色は、それぞれ赤色、緑色、青色等の原色であってもよい。
【0077】
上記した実施形態では、撮像群132が12個の撮像部135A~135Lによって構成されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。撮像群132は、少なくとも2個以上の撮像部135によって構成されていればよく、11個以下の撮像部135によって構成されていてもよいし、13個以上の撮像部135によって構成されていてもよい。
【0078】
上記した実施形態では、撮像群132の各撮像部135は、幅方向に千鳥状に並設されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。撮像群132の各撮像部135は、幅方向に直線状に並設されていてもよい。
【0079】
上記した実施形態では、繊維供給部2から供給された繊維束200を扁平加工部3によって繊維帯201に加工したが、本発明はこれに限定されるものではない。繊維供給部2から繊維帯201が供給される場合には、扁平加工部3を設けなくてもよい。
【0080】
上記した実施形態では、撮像装置103は、撮像部135の撮像軸が撮像領域Pに対して搬送方向の上流側に傾倒するように設けられていたが、本発明はこれに限定されるものではない。撮像装置103は、撮像部135の撮像軸が撮像領域Pに対して搬送方向の下流側に傾倒するように設けられていてもよい。
【0081】
上記した実施形態では、管理装置102は、1台のコンピュータによって構成されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。複数台のコンピュータで構成されていてもよい。このとき、管理装置102を構成するコンピュータ間は、無線又は有線で接続されていてもよいし、インターネットやイントラネット等のネットワークを介して接続されていてもよい。
【0082】
上記した実施形態は、本発明の技術的範囲に含まれる限り、各実施形態間で各構成部材を自由に置換や付加できる。
【符号の説明】
【0083】
1 異常検出システム
103 撮像装置
112 二値化処理部
113 画像結合部
117 異常判定部
130 第1照明部(照明部)
131 第2照明部(照明部)
135,135A~135L 撮像部
140,140A~140L エリア
201 繊維帯