(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178688
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】住宅用建物
(51)【国際特許分類】
E04B 1/70 20060101AFI20241218BHJP
E04H 1/02 20060101ALI20241218BHJP
F24F 7/10 20060101ALI20241218BHJP
F24F 13/02 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
E04B1/70 B
E04H1/02
F24F7/10 A
F24F7/10 101Z
F24F13/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097021
(22)【出願日】2023-06-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)令和5年6月3日にパンフレット「HOME DESIGN with WALL」を配布して公開 (2)令和5年6月5日にウェブサイトhttps://ak-consul.com/に掲載して公開
(71)【出願人】
【識別番号】523225210
【氏名又は名称】佐々木秋雄
(74)【代理人】
【識別番号】100208454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 章夫
(72)【発明者】
【氏名】佐々木秋雄
【テーマコード(参考)】
2E001
2E025
3L080
【Fターム(参考)】
2E001DB02
2E001FA04
2E001FA12
2E001FA16
2E001FA21
2E001HA11
2E025AA03
2E025AA13
2E025AA14
2E025AA15
3L080AC01
3L080AC02
3L080AC03
(57)【要約】
【課題】安定した温度の空気の層で建物全体が取り囲まれる住宅用建物を、より少ない消費電力で実現することを目的とする。
【解決手段】建物の側壁や屋根のほぼ全体を覆うガラス部と、建物の基礎部分の床下通気層G1と、建物の側壁構造体とガラス部との間の側壁通気層G2と、建物の天井とガラス部との間の小屋裏通気層G3と、床下通気層G1と側壁通気層G2との間を接続する基礎接続部と、側壁通気層G2と小屋裏通気層G3との間を接続する屋根接続部と、建物の天井に設置した天井ファンおよび建物の床に設置した床ファンと、を有し、床下通気層G1の空気が、気密性が高い側壁通気層G2から小屋裏通気層G3へと移動するように構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の側壁や屋根のほぼ全体を覆うガラス部と
前記建物の基礎部分に設けられた床下通気層G1と、
前記建物の側壁構造体と前記ガラス部との間に設けられ、前記ガラス部により、外気との間の気密が保たれた側壁通気層G2と、
前記建物の天井と前記ガラス部との間に設けられ、前記ガラス部により、外気との間の気密が保たれた小屋裏通気層G3と、
外気との間の気密を保ちながら、前記床下通気層G1と前記側壁通気層G2との間を、空気の移動が可能なように接続する基礎接続部と、
外気との間の気密を保ちながら、前記側壁通気層G2と前記小屋裏通気層G3との間を、空気の移動が可能なように接続する屋根接続部と、
前記建物の天井に設置された天井ファンおよび前記建物の床に設置された床ファンと、
を有する住宅用建物。
【請求項2】
前記ガラス部の設置金具であって、
一方向に長い矩形形状を有する3枚の板状部分である固定板、内側係止板および外側係止板の部分と、これら板状部分の長手方向の辺どうしを繋いでいる結合部とから構成され、
前記固定板と前記内側係止板との間の間隔は、前記側壁通気層G2または前記小屋裏通気層G3の厚さと略同じであり、
前記内側係止板と前記外側係止板との間の間隔は、前記ガラス部の厚さと略同じである、設置金具を用いて、前記ガラス部が前記建物に設置されている
請求項1に記載する住宅用建物。
【請求項3】
前記基礎接続部は、前記建物の下部の周囲全体に設けられており、
前記屋根接続部は、前記建物の上部の周囲全体に設けられている、
請求項1または請求項2に記載する住宅用建物。
【請求項4】
前記床下通気層G1は、水平方向には、前記建物の床と略等しい広さを有し、鉛直方向には略400mmの深さを有する空間であり、
前記側壁通気層G2は、前記建物の側壁全体と略等しい広さを有し、略20mmの厚さを有する空間であり、
前記小屋裏通気層G3は、前記建物の天井と略等しい広さを有し、略60mmの厚さを有する空間である、
請求項1または請求項2に記載する住宅用建物。
【請求項5】
前記建物は、階数が2~3階までの住宅用建物である、請求項1または請求項2に記載する住宅用建物。
【請求項6】
前記ガラス部は、発電ガラスからなる、請求項1または請求項2に記載する住宅用建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の側壁部や屋根部に通気層を有する住宅用建物に関する。
【背景技術】
【0002】
エア断熱建物と呼ばれる建物が知られている。エア断熱建物は、建物を取り囲む通気層を設けて、外気や建物内の空気を、通気層を通して循環させる構造を有する建物である(例えば、特許文献1)。エア断熱建物は、木材等より熱伝導率が低い空気を、建物の断熱性向上に利用している。
【0003】
従来のエア断熱建物は、例えば、床下空間の空気を、ダクトを通して天井に移動させ、各部屋に設置したエアーコンデショナーにより、通気層を通して建物外部に排気していた(例えば、特許文献2)。通気層は建物外部に開孔しており、また、通気層を構成する部材が通気性を有するサイディング壁であるなどの理由で、通気層と建物外部との間で空気の移動があった。このため、建物を取り囲んでいる通気層内の空気の温度が安定せず、建物内部の温度もこの影響を受けて変動してしまうという問題があった。
【0004】
また、従来のエア断熱建物は、各部屋の空気を、通気層の狭い空間に排気するのにエアーコンデショナーを高出力で稼働させる必要があった。このため、通気層を通した空気の循環を維持するために必要な消費電力が大きくなってしまうという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-161208号公報
【特許文献2】特開2021-134529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、建物の側壁部や屋根部に設けられた通気層と建物外部との間の空気の移動を無くして、通気層内の空気の温度を安定させ、安定した温度の空気の層で建物全体が取り囲まれる住宅用建物を、より少ない消費電力で実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的の達成のために、本発明に係る住宅用建物は、
建物の側壁や屋根のほぼ全体を覆うガラス部と、建物の基礎部分に設けられた床下通気層G1と、建物の側壁構造体とガラス部との間に設けられ、ガラス部により、外気との間の気密が保たれた側壁通気層G2と、建物の天井とガラス部との間に設けられ、ガラス部により、外気との間の気密が保たれた小屋裏通気層G3と、外気との間の気密を保ちながら、床下通気層G1と側壁通気層G2との間を、空気の移動が可能なように接続する基礎接続部と、外気との間の気密を保ちながら、側壁通気層G2と小屋裏通気層G3との間を、空気の移動が可能なように接続する屋根接続部と、建物の天井に設置された天井ファンおよび建物の床に設置された床ファンと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る住宅用建物は、適切な温度の室内環境を、より少ない費用で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る住宅用建物1の概略の構成例を示す(A)外観図、および(B)断面図であ
【
図2】(A)ガラス部26が上下に配置されている繋ぎ目付近、(B)ガラス部26が左右に配置されている繋ぎ目付近の側壁部20の構成例を示す斜視図である。
【
図3】側壁部20の角部の構成例を示す斜視図である。
【
図4】基礎接続部30の構成例を示す斜視図である。
【
図5】サイディング部40の構成例を示す斜視図である。
【
図6】オーバハング部50の構成例を示す斜視図である。
【
図8】屋根接続部70および屋根部80の構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態に係る住宅用建物1の例について、図面を参照しながら説明する。尚、本実施形態は、2階建ての住宅用建物1の例について説明するが、本発明は、階数が2~3階までの事務所用建物、店舗用建物などにも適用可能である。各図面において、座標系は、Z方向が鉛直方向を、XY方向が水平方向を表すものとする。また、各図面において、同じ符号を付した部分は同じ構成部分を表すものとする。
【0011】
図1(A)は、実施形態に係る住宅用建物1の概略の構成例を示す外観図である。
図1(A)に示す住宅用建物1は、外観において、側壁部20、基礎接続部30、サイディング部40、オーバハング部50、窓部60、屋根接続部70、および屋根部80などから構成されている。
【0012】
住宅用建物1は、窓や玄関(出入口)などを除き、側壁部20や屋根部80のほぼ全面が、ガラス材料からなる部材、即ちガラス部26で覆われている。ガラス部26は、例えば、縦幅が2.4m程度、横幅が0.9m程度であり、厚さ15mm程度の板状のガラスを、側壁部20や屋根部80の表面に沿って敷き詰めたものである。ガラス部26は、透光性と気密性を有する材料から構成される。即ち、ガラス部26は、太陽光を透過させるが、空気を通さない材料から構成される。ガラス部26を設置する方法については、図面を用いて後ほど説明する。
【0013】
尚、ガラス部26は発電ガラスであってよい。発電ガラスは、ガラスと一体になった太陽電池である。発電ガラスは、太陽光を透過させるという通常のガラスの機能に加えて、太陽光の照射により電気を生成するという特性を有している。ガラス部26として発電ガラスを用いる場合に期待される効果についても後ほど記載する。
【0014】
図1(B)は、住宅用建物1の概略の構成例を示す断面図である。
図1(B)は、建物の外周がガラス部26で構成されている部分の切断面α(
図1(A)参照)で、住宅用建物1を切断した断面図である。
【0015】
住宅用建物1の室内10は、鉛直方向には、天井12と床11とによって上下から挟まれている。天井12の上方には、天井12との間に間隔をあけて、上部構造体82が設置されている。床11の下方には、床11と密着して下部構造体32が設置されている。また、住宅用建物1の室内10は、水平方向の周囲には、側壁構造体22で囲まれている。側壁構造体22は、室内10の形状に応じて、室内10を取り囲むように設置されている。
【0016】
側壁構造体22、上部構造体82、および下部構造体32には、既存の工法として、構造体の外側と室内10側との間の気密を保つための気密シートが貼り付けられている。また、側壁構造体22、上部構造体82、および下部構造体32には、既存の工法として、室内10の湿気を構造体の外側に逃がし、漏水した雨水等による構造体に対する影響を避けるために透湿・防水・遮熱シートが貼り付けられている。
【0017】
床11および下部構造体32の下方には、主にコンクリートで形成された基礎土台31が設けられている。基礎土台31は、床11および下部構造体32とともに、床11の下方に床下通気層G1を形成する。床下通気層G1は、水平方向には、住宅用建物1の床11と略等しい広さを有しており、鉛直方向には、略400mmの深さを有する容量が大きい空間である。床下通気層G1は、空気がその中を妨げられることなく移動できるような空間である。
【0018】
住宅用建物1の側壁部20には、側壁構造体22の外側(室内10とは反対側)に、側壁構造体22の表面から、例えば、20mmの間隔をあけてガラス部26が設置されている。側壁通気層G2は、側壁構造体22とガラス部26との間に形成された空間である。側壁通気層G2は、住宅用建物1の室内10を取り囲む側壁部20と略等しい広さを有し、側壁構造体22とガラス部26との間の間隔である、略20mmの厚さを有する空間である。
【0019】
側壁通気層G2は、図面を用いて後ほど説明するように、ガラス部26およびその保持構造により外気との間の気密が保たれている。側壁通気層G2は、側壁構造体22に、例えば気密シートを貼るという既存の工法によって、室内10との間の気密も保たれている。ここで気密あるいは気密性とは、外気や室内10との間で空気の出入りがほとんど発生しないことを表している。また、後ほど説明するように、側壁通気層G2は、空気がその中を、ほとんど妨げられることなく移動できるように構成されている。
【0020】
天井12の鉛直上方には、例えば、40mmの間隔をあけて、上部構造体82が配置されている。上部構造体82のさらに上側には、例えば、20mm程度の間隔をあけて、ガラス部26が配置されている。天井12と上部構造体82との間の空間、および上部構造体82とガラス部26との間の空間は、屋根通気孔81によって繋がっており、一体で小屋裏通気層G3を形成する。小屋裏通気層G3は、天井12とガラス部26との間に形成された空間である。小屋裏通気層G3は、水平方向には、天井12と略等しい広さを有し、鉛直方向には、両空間を合わせた厚さ、即ち、略60mmの厚さを有する空間である。
【0021】
小屋裏通気層G3は、図面を用いて後ほど説明するように、ガラス部26およびその保持構造により外気との間の気密が保たれている。また、小屋裏通気層G3は、空気がその中を、妨げられることなく移動できるような空間である。
【0022】
床下通気層G1と側壁通気層G2とは、基礎接続部30において、外気との間の気密を保ちながら、空気の移動が可能なように接続される。基礎接続部30は、基礎土台31の外周と側壁部20の下端とが接する部分に相当し、住宅用建物1の下部の周囲全体に設けられている。基礎接続部30の構造は、図面を用いて後ほど説明する。
【0023】
側壁通気層G2と小屋裏通気層G3とは、屋根接続部70において、外気との間の気密を保ちながら、空気の移動が可能なように接続される。屋根接続部70は、屋根部80の外周と側壁部20の上端とが接する部分に相当し、住宅用建物1の上部の周囲全体に設けられている。屋根接続部70の構造も、図面を用いて後ほど説明する。
【0024】
図1(B)に示す天井ファンF2は、比較的小さい容量の小屋裏通気層G3と、大きな容量を有する室内10との間の天井12に取り付けられている。天井ファンF2は、小屋裏通気層G3の空気を室内10に移動させる。天井ファンF2は、外気との間で気密性が高い小屋裏通気層G3の空間内を、室内10に比べて減圧するように動作する。
【0025】
床ファンF1は、室内10と床下通気層G1との間の床11および下部構造体32に取り付けられる。床ファンF1は、室内10の空気を床下通気層G1に移動させる。天井ファンF2および床ファンF1は、室内10を挟んで、床下通気層G1と小屋裏通気層G3との間に圧力差を発生させるように動作する。
【0026】
この圧力差を補償するように、床下通気層G1の中の空気は、住宅用建物1の下部の周囲全体に設けられた基礎接続部30を通して側壁通気層G2に移動する。外壁通気層G2の中の空気は、住宅用建物1の室内10を取り囲んで、側壁部20のほぼ全体に分布する側壁通気層G2の中を移動する。
【0027】
さらに、側壁通気層G2の中の空気は、住宅用建物1の上部の周囲全体に設けられた屋根接続部70を通して、小屋裏通気層G3に移動する。小屋裏通気層G3の中の空気は、住宅用建物1の室内10の上方を覆っている小屋裏通気層G3の中を移動する。
【0028】
住宅用建物1の側壁部20および屋根部80のほぼ全体を取り囲んでいる側壁通気層G2および小屋裏通気層G3の中の空気は、住宅用建物1の外部と室内10との間の熱の伝導を抑える断熱層として機能する。実際、空気の熱伝導率は約0.03W/mKであり、例えば木材の熱伝導率の約0.15W/mKと比べて1/5以下とされている(理科年表2022参照)。
【0029】
床下通気層G1の中の空気は、住宅用建物1の外部の温度変化に比べて、温度が安定していることが知られている(特許文献2参照)。このような特性を有する床下通気層G1の中の空気が、側壁通気層G2および小屋裏通気層G3の中をほとんど妨げられることなく移動する。側壁通気層G2および小屋裏通気層G3では、外気との間で空気の出入りが発生しないため、その中で空気は安定した温度を維持することができる。
【0030】
住宅用建物1の室内10は、側壁通気層G2や小屋裏通気層G3の中の空気により、住宅用建物1の外部との間で効果的に断熱され、側壁通気層G2や小屋裏通気層G3に外気の流入や流出がある場合に比べて、より安定した温度の空気の層に囲まれることになる。
【0031】
また、床下通気層G1の空気は、床下通気層G1と小屋裏通気層G3との圧力差によって、側壁通気層G2を経由して小屋裏通気層G3に移動している。床下通気層G1の空気は、少ない消費電力で側壁通気層G2および小屋裏通気層G3を循環する。これらにより、本実施形態に係る住宅用建物1は、安定した温度の空気からなる断熱層で建物全体が取り囲まれることにより、少ない消費電力で室内10を適温に維持することが可能である。
【0032】
尚、本実施形態に係る住宅用建物1は、階数が2~3階までの建物に限定してよい。これにより、床下通気層G1と小屋裏通気層G3との圧力差を有効に利用できるとともに、床下通気層G1の空気が、側壁通気層G2や小屋裏通気層G3を通過するのに時間がかからなくなる。空気が側壁通気層G2や小屋裏通気層G3の中を通過するのに時間がかかりすぎると、熱伝導により、建物外部の温度の影響を受ける可能性があるからである。
【0033】
以上のような住宅用建物1における、住宅用建物1の各部の構成を、図面を用いて説明する。
【0034】
図2は、ガラス部26を設置している側壁部20(
図1(A)参照)の構成例を示す斜視図である。
図2(A)は、ガラス部26が上下方向に配置されている繋ぎ目付近の構成例を示す。
図2(B)は、ガラス部26が左右方向に配置されている繋ぎ目付近の構成例を示す。
図2は、ガラス部26が設置される側壁部20の構造が分かるように、YZ断面と、±Z方向および+X方向における側壁部20の適切な範囲を示す斜視図である。
【0035】
側壁構造体22には、既存の工法として、構造体の外側と室内10との間の気密を保つための気密シートや透湿、防水、遮熱等のためのシート221が貼り付けられている。ガラス部26は、保持アングル23、受けアングル24、および縦アングル27によって、側壁構造体22から所定の間隔をあけて設置されている。
【0036】
図2(A)に示す保持アングル23は、その鉛直上方に配置されるガラス部26の荷重を支え、ガラス部26の板面を側壁構造体22の表面と平行に設置するアングル状の設置金具である。
図2(A)に示す受けアングル24は、その鉛直下方に配置されるガラス部26を受けて、ガラス部26の板面を側壁構造体22の表面と平行に設置するアングル状の設置金具である。保持アングル23や受けアングル24は、この明細書に記載する他の設置金具と同様に、鉄、鉄を含む合金、アルミニウム、アルミニウムを含む合金などの金属材料から作成される。
【0037】
保持アングル23は、一方向に長い矩形形状を有する3枚の板状部分である固定板231、内側係止板232および外側係止板233の部分と、これら板状部分の長手方向の辺どうしを繋いでいる結合部234とから構成される。一枚目の板状部分である固定板231は、長手方向に所定の間隔でボルト穴が設けられた平板状の金属板である。
【0038】
二枚目の板状部分である内側係止板232は、固定板231の板面と平行で、固定板231との間に側壁通気層G2の厚さに相当する間隔を有する平板状の金属板である。三枚目の板状部分である外側係止板233は、固定板231および内側係止板232の板面と平行で、内側係止板232との間に、ガラス部26の厚さよりわずかに大きい間隔を有する平板状の金属板である。
【0039】
固定板231、内側係止板232、および外側係止板233は、結合部234によって、それぞれの配置関係を保ちながら接続されている。また、結合部234には、固定板231と内側係止板232との間に、保持アングル23の長手方向に所定の間隔で通気孔25が設けられている。
【0040】
固定板231、内側係止板232、外側係止板233、および結合部234は、一体となって、保持アングル23を構成する。また、固定板231、内側係止板232、および結合部234が一体であり、それに外側係止板233を結合部234にビス等で固定することによって保持アングル23を構成してもよい。
【0041】
受けアングル24は、保持アングル23と同様に、一方向に長い矩形形状を有する3枚の板状部分である固定板241、内側係止板242、および外側係止板243の部分と、これら板状部分の長手方向の辺どうしを繋いでいる結合部244とから構成されている。固定板241には、長手方向に所定の間隔でボルト穴が設けられている。
【0042】
内側係止板242は、固定板241の板面と平行で、固定板241との間に側壁通気層G2の厚さに相当する間隔を有する。外側係止板243は、固定板241および内側係止板242の板面と平行で、内側係止板242との間に、ガラス部26の厚さよりわずかに大きい間隔を有する。結合部244は、固定板241、内側係止板242、および外側係止板243の配置関係を保ちながら、これらの板状部分を接続する。
【0043】
受けアングル24においても、結合部244には、固定板241と内側係止板242との間に、受けアングル24の長手方向に所定の間隔で通気孔25が設けられている。受けアングル24は、固定板241、内側係止板242、および結合部244が一体であり、それに外側係止板243を結合部244にビス等で固定することによって、受けアングル24が構成される構造になっていてよい。
【0044】
保持アングル23は、固定板231の長手方向を、側壁部20の水平方向(
図2(A)ではX方向)に合わせて、固定板231のボルト穴を使って、側壁構造体22に固定される。受けアングル24は、固定板241の長手方向を、側壁部20の水平方向に合わせて、固定板241のボルト穴を使って、側壁構造体22に固定される。保持アングル23と受けアングル24とは、鉛直方向(Z方向)に、側壁部20に設置するガラス部26を構成する矩形ガラス板の縦方向幅と略等しい間隔を置いて、側壁構造体22に固定される。
【0045】
ガラス部26を構成する矩形ガラス板は、その下端部が、保持アングル23の内側係止板232と外側係止板233との間の保持アングル溝235に挿入されており、ガラス板の荷重が、保持アングル23によって支持される。また、ガラス部26を構成する矩形ガラス板は、その上端部が、受けアングル24の内側係止板242に押し当てられる。ガラス板は、外側係止板243によって内側係止板242との間に挟まれ、その上端部が受けアングル溝245に挿入された状態で固定される。
【0046】
以上によって、ガラス部26は、設置金具である保持アングル23および受けアングル24によって、側壁構造体22との間に、固定板231と内側係止板232との間隔、あるいは固定板241と内側係止板242との間隔をあけて、側壁構造体22の表面と平行に設置される。ガラス部26と、側壁構造体22の表面との間に形成される空間が側壁通気層G2に相当する。
【0047】
図2(A)は、ガラス部26が側壁構造体22に設置された状態における、保持アングル23の上方に配置されたガラス部26と、受けアングル24の下方に配置されたガラス部26との繋ぎ目部分の構造を示している。保持アングル23と受けアングル24とは、結合部234と結合部244とが背中合わせになって、鉛直上下方向にガラス部26を繋いでいる。
【0048】
保持アングル溝235に挿入されたガラス部26と外側係止板233との間は、樹脂等によって隙間を埋めるコーキング処理が施される。これにより、ガラス部26と保持アングル23との間において、側壁通気層G2と外気との間の気密が保たれている。受けアングル溝245に挿入されたガラス部26と外側係止板243との間は、樹脂等によって隙間を埋めるコーキング処理が施される。これにより、ガラス部26と受けアングル24との間において、側壁通気層G2と外気との間の気密が保たれている。これらにより、側壁部20の側壁通気層G2は、既存の工法によって側壁構造体22の気密性が高められていることと相まって、外気および室内10との間で気密性が高い空間となっている。
【0049】
保持アングル23の結合部234に設けられている通気孔25と、受けアングル24の結合部244に設けられている通気孔25とは、それぞれのアングルの長手方向の略同じ位置に、略同じ大きさで設けられている。また、通気孔25は、保持アングル23がガラス部26の荷重を支えられる強度を持つ範囲内で、できるだけ大きな通気孔25が設けられている。
【0050】
これにより、保持アングル23の上方で、ガラス部26と側壁構造体22との間に形成された側壁通気層G2と、受けアングル24の下方で、ガラス部26と側壁構造体22との間に形成された側壁通気層G2との間を、空気は妨げられることなく移動する。
【0051】
尚、背中合わせに固定されている保持アングル23と受けアングル24との間における、側壁通気層G2と外気との間の気密を保持するために、保持アングル23と受けアングル24が接触している部分に、両者の間の隙間を埋めるコーキング処理を施してもよい。保持アングル23と受けアングル24との間で、側壁通気層G2と外気との間の気密を保つ別の手段として、保持アングル23の外側係止板233と受けアングル24の外側係止板243とを一枚の共通な外側係止板233にして、両者の間の隙間が構造的になくなるようにしてもよい。
【0052】
この場合、側壁部20におけるガラス部26の上下繋ぎ部分では、下方のガラス部26を受けアングル24の内側係止板242に押し付けて設置したあと、上方の保持アングル23を取り付けることにより、下方の受けアングル24におけるガラス部26の押さえと、上方の保持アングル23の固定を同時に行うことができる。
【0053】
図2(B)に示す縦アングル27は、側壁部20のガラス部26を水平左右方向に繋ぐアングル状の設置金具である。
【0054】
縦アングル27は、一方向に長い矩形形状を有する2枚の板状部分である固定板271と突当板272の部分と、これらを繋いでいる結合部274とから構成される。一枚目の板状部分である固定板271は、矩形の長手方向に所定の間隔でボルト穴が設けられた平板状の金属板である。二枚目の板状部分である突当板272は、固定板271の板面と平行で、固定板271との間に側壁通気層G2の厚さに相当する間隔を有する平板状の金属板である。
【0055】
固定板271および突当板272は、結合部274によって、それぞれの配置関係を保ちながら繋がれている。また、結合部274には、固定板271と突当板272との間に、縦アングル27の長手方向に所定の間隔で、通気孔28が設けられている。固定板271、突当板272、および結合部274は、一体となって、縦アングル27を構成する。
【0056】
縦アングル27は、その長手方向を側壁部20の鉛直方向(
図2(B)ではZ方向)に合わせて、固定板271のボルト穴により、側壁構造体22に固定される。
図2(B)は、このように固定した縦アングル27と、縦アングル27の左右に配置されたガラス部26の繋ぎ目部分の構造とを示している。
【0057】
縦アングル27は、左右のガラス部26の端部を突当板272の板上で突き当てることにより、ガラス部26と側壁構造体22との間に所定間隔をあけて、ガラス部26を側壁構造体22の表面と平行に設置する。縦アングル27の右側で側壁構造体22とガラス部26との間に形成される空間、および縦アングル27の左側で側壁構造体22とガラス部26との間に形成される空間が側壁通気層G2に相当する。
【0058】
縦アングル27の結合部274に設けられている通気孔28は、ガラス部26と側壁構造体22との間隔を保てる範囲内で、できるだけ大きな通気孔28が設けられている。これにより、縦アングル27の右側で、側壁構造体22とガラス部26との間に形成された側壁通気層G2と、縦アングル27の左側で側壁構造体22とガラス部26との間に形成された側壁通気層G2との間を、空気は妨げられることなく移動する。
【0059】
縦アングル27の突当板272の板上で突き当てられる左右ガラス部26の端部に、樹脂等によって隙間を埋めるコーキング処理を施すコーキング封止部261を設ける。これにより、左右ガラス部26の間においても、側壁通気層G2と外気との間の気密が保たれている。側壁部20の側壁通気層G2は、既存の工法によって側壁構造体22の気密性が高められていることと相まって、外気および室内10との間で気密性が高い空間となる。
【0060】
図3は、住宅用建物1の側壁部20の角部の構成例を示す斜視図である。
図3は、角部におけるガラス部26の設置が分かるように、±Z方向、+X方向、+Y方向における側壁部20の適切な範囲が示された斜視図である。
【0061】
+X方向の側壁部20では、側壁構造体22のXZ面に気密のためのシートや、透湿、防水、遮熱等のためのシート221が貼られ、その上に縦アングル27が取り付けられている。ガラス部26は、側壁構造体22のXZ面に固定された縦アングル27により、側壁構造体22の表面から、側壁通気層G2の厚さに相当する間隔をあけて設置される。縦アングル27は、
図2(B)で説明した縦アングル27と同じものである。
【0062】
+Y方向の側壁部20では、側壁構造体22のYZ面に気密のためのシートや、透湿、防水、遮熱等のためのシート221が貼られ、その上に縦アングル27が取り付けられている。ガラス部26は、側壁構造体22のYZ面に固定された縦アングル27により、側壁構造体22の表面から、側壁通気層G2の厚さに相当する間隔をあけて設置される。縦アングル27は、
図2(B)で説明した縦アングル27と同じものである。
【0063】
XZ面に設置されたガラス部26と、YZ面に設置されたガラス部26とは、側壁構造体22の表面との間に側壁通気層G2の厚さに相当する空間が空いている状態で、側壁部20の角部で接する。両ガラス部26の接する部分は、側壁部20の角部において、Z方向に延伸する直線であってよい。
【0064】
XZ面に設置されたガラス部26とYZ面に設置されたガラス部26とが接する直線に沿って、樹脂等によって隙間を埋めるコーキング封止部261を設ける。これにより、両ガラス部26の接続部分において、側壁通気層G2と外気との間の気密が保たれている。ガラス部26と側壁構造体22との間に形成される側壁通気層G2は、既存の工法によって側壁構造体22の気密性が高められていることと相まって、外気および室内10との間で気密性が高い空間となる。
【0065】
縦アングル27は、その長手方向に所定の間隔で、通気孔28が設けられている。側壁部20のXZ面およびYZ面において、空気は妨げられることなく側壁通気層G2内を移動する。さらに、XZ面の側壁通気層G2とYZ面の側壁通気層G2とが上記のように接続されていることから、側壁通気層G2内の空気は、側壁部20の角部においても妨げられることなく移動する。
【0066】
図4は、住宅用建物1の基礎部分と側壁部20とを繋ぐ基礎接続部30(
図1(A)参照)の構成例を示す斜視図である。
図4は、基礎接続部30の構造が分かるように、YZ断面と、+Z方向および+X方向における側壁部20の適切な範囲を示している。
【0067】
床下通気層G1は、主にコンクリートからなる基礎土台31と、下部構造体32および床11とで囲まれた、住宅用建物1の基礎部分に形成された空間である。基礎土台31の外気に近い部分には、断熱材311が設置されていてよい。断熱材311は、住宅用建物1の外部の温度変化が、床下通気層G1に伝わりにくくするために設置される。床下通気層G1の内部の空気は、住宅用建物1の外部の外気に比べて、安定した温度が維持される。
【0068】
ガラス部26は、基礎土台31と接する側壁部20の下部において、側壁構造体22に固定された保持アングル33によって支持されている。ガラス部26は、下端部を保持アングル溝335に挿入した状態で、保持アングル33との間をコーキング処理され、側壁構造体22との間に側壁通気層G2を形成する。
【0069】
保持アングル33は、
図2(A)に示した保持アングル23と同様なアングル状の設置金具である。但し、保持アングル33は、結合部334の断面(
図4に示すYZ断面)がコの字型をしており、側壁構造体22に保持アングル33を固定したとき、外気との間の気密が保たれた空間336を形成する。この空間336は、保持アングル33の結合部334に設けられた通気孔25(
図2(A)参照)によって側壁通気層G2と繋がっている。空間336の内部の空気は、保持アングル33に設けられた通気孔25を通って、側壁通気層G2との間で移動する。
【0070】
通気パッキング39は、住宅用建物1の側壁構造体22と基礎土台31との間に設置された、建物の荷重を受けるゴム製の部材である。通気パッキング39には、パッキングを
図4のY方向に貫通する溝が設けられており、溝の方向である
図4のY方向に通気性を有している。通気パッキング39の両側にある床下通気層G1と空間336は、通気パッキング39を通して、その中の空気が移動する(通気する)ように構成される。
【0071】
保持アングル33および通気パッキング39を含む基礎接続部30は、住宅用建物1の下部の周囲全体に設けられている。住宅用建物1の基礎部に設けられた床下通気層G1と、側壁部20に設けられた側壁通気層G2は、住宅用建物1の下部の周囲全体に設けられた基礎接続部30を通して、外気との間の気密を保ちながら、空気の移動が可能なように接続される。
【0072】
図5は、サイディング壁41の周りにガラス部26が配置されているサイディング部40(
図1(A)参照)の構成例を示す。
図5は、サイディング部40の構成を示すために、YZ断面と、±Z方向および+X方向における側壁部20の適切な範囲を示した斜視図である。
【0073】
サイディング壁41は、既存の工法で用いられるサイディング保持部42で保持され、通気胴縁43を挟んで、側壁構造体22に固定される。
図5は、ガラス部26が、受けアングル44に支持されて、サイディング壁41の下方に設置される場合を示している。ガラス部26は、上端部を受けアングル溝445に挿入された状態で、受けアングル44との間をコーキング処理され、側壁構造体22との間に側壁通気層G2を形成している。
【0074】
受けアングル44は、
図2(A)に示した受けアングル24と同様な部材である。但し、この受けアングル44は、結合部444に通気孔25(
図2(A)参照)を有していない。ガラス部26と側壁構造体22との間に形成される側壁通気層G2は、受けアングル44より上部には繋がっていない。サイディング壁41は、ガラス部26に比べて高い通気性を有し、サイディング壁41と側壁構造体22とに挟まれた空間は、ガラス部26と側壁構造体22とに挟まれた空間に比べて、気密性が低くなる可能性があるからである。
【0075】
即ち、サイディング壁41の上下方向および左右方向とガラス部26との境界部分において、ガラス部26を設置するアングル状の設置金具は、
図2で説明した保持アングル23、受けアングル24および縦アングル27と同様な設置金具であってよいが、結合部234、244、274などに通気孔を有していない。
【0076】
これにより、側壁通気層G2は、気密性の低いサイディング壁41の部分とは繋がらず、サイディング壁41の部分は迂回して、ガラス部26と側壁構造体22との間のみで側壁通気層G2を形成する。サイディング部40においても、側壁通気層G2は、既存の工法によって側壁構造体22の気密性が高められていることと相まって、外気および室内10との間で気密性が高い空間となっている。
【0077】
尚、サイディング壁41であっても、表面にガラス材料等の皮膜を形成して、サイディング壁41の気密性を高めている場合はこの限りではない。このような場合、サイディング壁41とガラス部26との境界部分において、ガラス部26を設置する設置金具の結合部234、244、274などに相当する部分に通気孔25や通気孔28(
図2参照)があるものを用いて、サイディング壁41と側壁構造体22との間に形成された空間に、側壁通気層G2の空気が流れるようにしてもよい。
【0078】
図6は、住宅用建物1の2階下部の外周部に設けられた、オーバハング部50(
図1(A)参照)の構成例を示す。
図5は、オーバハング部50の構成を示すために、XZ断面と、+Z方向および-Y方向における側壁部20の適切な範囲を示した斜視図である。
【0079】
保持アングル53は、軒天材13、柱14、側壁構造体22などを含む建物構造体に固定される。保持アングル53は、
図2(A)に示した保持アングル23と同様な部材である。但し、この保持アングル53は、支持部534に通気孔25(
図2(A)参照)を有していない。ガラス部26は、下端部を保持アングル溝535に挿入された状態で、保持アングル53との間をコーキング処理される。ガラス部26は、側壁構造体22との間に側壁通気層G2を形成する。
【0080】
ガラス部26と側壁構造体22との間に形成された側壁通気層G2は、保持アングル53より下側には繋がっていない。側壁通気層G2は、保持アングル53の部分で終端し、ガラス部26と側壁構造体22の間のみで側壁通気層G2を形成する。オーバハング部50においても、側壁通気層G2は、既存の工法によって側壁構造体22の気密性が高められていることと相まって、外気および室内10との間で気密性が高い空間となっている。
【0081】
尚、水切りアングル51は、オーバハング部50の下場用の水切りアングルを示している。水切りアングル51は、オーバハング部50の下場において、雨水の侵入を防ぐ防水構造として設けられている。
【0082】
図7は、窓61の周りにガラス部26が配置されている窓部60(
図1(A)参照)の構成例を示す。
図7は、窓部60の構成を示すために、YZ断面と、±Z方向および+X方向における側壁部20の適切な範囲を示した斜視図である。
【0083】
図7は、窓61が窓枠62に囲まれ、その鉛直上下方向に、保持アングル63および受けアングル64に支持されたガラス部26が設置されている場合を示している。保持アングル63および受けアングル64はそれぞれ、
図2(A)に示した保持アングル23および受けアングル24と同様な部材である。但し、この保持アングル63および受けアングル64は、結合部634、644に通気孔25(
図2(A)参照)を有さない。
【0084】
ガラス部26は、下端部および上端部をそれぞれ、保持アングル溝635および受けアングル溝645に挿入された状態で、保持アングル63および受けアングル64との間をコーキング処理される。ガラス部26は、側壁構造体22との間に側壁通気層G2を形成する。
【0085】
ガラス部26と側壁構造体22との間に形成された側壁通気層G2は、保持アングル63より下側には繋がっていない。ガラス部26と側壁構造体22との間に形成された側壁通気層G2は、受けアングル64より上側には繋がっていない。側壁通気層G2は、保持アングル63および受けアングル64の部分で終端し、ガラス部26と側壁構造体22の間のみで気密性が高い側壁通気層G2を形成する。
【0086】
即ち、窓61および窓枠62の上下方向および左右方向におけるガラス部26との境界部分において、ガラス部26を設置するアングル状の設置金具は、
図2で説明した保持アングル23、受けアングル24および縦アングル27と同様な設置金具であってよいが、結合部234、244、274などに通気孔を有していない。
【0087】
これにより、側壁通気層G2は、窓61や窓枠62の部分を迂回して、気密性が高いガラス部26と側壁構造体22との間のみで側壁通気層G2を形成する。窓部60においても、側壁通気層G2は、既存の工法によって側壁構造体22の気密性が高められていることと相まって、外気および室内10との間で気密性が高い空間となっている。
【0088】
図8は、住宅用建物1の側壁部20と屋根部80とを繋ぐ屋根接続部70(
図1(A)参照)の構成例を示す斜視図である。
図8は、屋根接続部70や屋根部80の構成が分かるように、YZ断面と、-Z方向および+X方向における側壁部20や屋根部80の適切な範囲を示している。
【0089】
ガラス部26は、側壁部20の上部において、側壁構造体22に固定された設置金具である受けアングル74によって設置されている。ガラス部26は、上端部を受けアングル溝745に挿入された状態で、受けアングル74との間をコーキング処理され、側壁構造体22との間に側壁通気層G2を形成している。
【0090】
受けアングル74は、
図2(A)に示した受けアングル24と同様な部材である。但し、受けアングル74は、結合部744の断面(
図8に示すYZ断面)がコの字型をしており、側壁構造体22に受けアングル74を固定したとき、外気との間で気密が保たれた空間746を形成する。この空間746は、受けアングル74の結合部744に設けられた通気孔25(
図2(A)参照)によって側壁通気層G2と繋がっている。空間746の内部の空気は、受けアングル74に設けられた通気孔25を通って、側壁通気層G2との間で移動する。
【0091】
屋根部80は、天井ファンF2を設置した天井12の上方に、天井12から所定の間隔をあけて上部構造体82があり、さらにその上方にガラス部26が設置される。上部構造体82には、既存の工法として、透湿、防水、遮熱等のためのシート221が貼り付けられている。天井12と上部構造体82との間の空間は小屋裏通気層G3の一部を構成する。
【0092】
屋根部80のガラス部26は、側壁部20に近い側において、上部構造体82に固定されたアングル状の設置金具である、保持アングル83に支持されている。また、屋根部80のガラス部26は、例えば、屋根部80の中央部において、上部構造体82に固定された屋根アングル87に支持されている。保持アングル83および屋根アングル87はそれぞれ、
図2(A)に示した保持アングル23および縦アングル27と同様な部材である。それぞれのアングルの結合部234および結合部274に相当する部分には、通気孔25および通気孔28が設けられている。
【0093】
ガラス部26は、一端部を保持アングル溝835に挿入した状態で、保持アングル83および屋根アングル87によって支持される。ガラス部26と上部構造体82との間の空間は小屋裏通気層G3の一部を構成する。
【0094】
天井12と上部構造体82との間の空間と、上部構造体82とガラス部26との間の空間は、両者を貫通する屋根通気孔81によって接続され、両者を合わせて小屋裏通気層G3を形成する。小屋裏通気層G3は、上方をガラス部26で覆われ、ガラス部26と保持アングル83との間や、ガラス部26と屋根アングル87との間をコーキング処理することにより、外気との気密性が高い空間となっている。
【0095】
小屋裏通気層G3は、保持アングル83の結合部834に設けられた通気孔25(
図2(A)参照)、および上部構造体82と側壁構造体22との間に設けられた隙間によって、空間836と繋がっている。空間836は、保持アングル83の結合部834が、側壁構造体22に沿ってパラペット部75に延伸することにより、結合部834と側壁構造体22との間に形成された、外気との間の気密性が高い空間836である。
【0096】
空間746と空間836との間には、通気パッキング79が設置されている。通気パッキング79は、住宅用建物1のパラペット部75に設置されたゴム製の部材である。通気パッキング79は、外気との間の気密を保つために結合部834の延伸部分の直下に配置されている。通気パッキング79には、パッキングを
図8のY方向に貫通する溝が設けられており、溝の方向である
図8のY方向に通気性を有している。通気パッキング79の両側にある空間746と空間836は、通気パッキング79を通して、その中の空気が移動する(通気する)ように構成される。
【0097】
側壁部20の受けアングル74、屋根部80の保持アングル83、および通気パッキング79を含む屋根接続部70は、住宅用建物1の上部の周囲全体に設けられている。住宅用建物1の屋根部80に設けられた小屋裏通気層G3と、側壁部20に設けられた側壁通気層G2は、住宅用建物1の上部の周囲全体に設けられた屋根接続部70を通して、外気との間の気密を保ちながら、空気の移動が可能なように接続される。
【0098】
天井12に取り付けられた天井ファンF2は、床11に取り付けられた床ファンF1と共働して、床下通気層G1と小屋裏通気層G3との間に圧力差を発生させるように動作する。床下通気層G1の空気は、側壁通気層G2および小屋裏通気層G3を通じて、住宅用建物1の側壁部20および屋根部80を効率的に循環する。床下通気層G1の空気の循環は、床下通気層G1と小屋裏通気層G3との間に発生する圧力差で駆動されており、より少ない消費電力で実現される。
【0099】
これにより、住宅用建物1の室内10は、側壁通気層G2および小屋裏通気層G3の空気によって建物外から断熱されるとともに、比較的温度が安定した床下通気層G1から流れ出た空気の層で囲まれることになる。住宅用建物1は、安定した温度の空気からなる断熱層で建物全体が取り囲まれることにより、より少ない消費電力で適切な室内温度を実現することができる。
【0100】
以上の明細書において、ガラス部26は、側壁通気層G2および小屋裏通気層G3と外気との間の気密を確保するためにガラス材料からなる部材を用いるものとした。ガラス部26は、発電ガラスであってよい。発電ガラスは、ガラスと一体になった太陽電池である。発電ガラスは、例えば、製品名サンジュール(AGC硝子建材製)を用いることができる。ガラス部26として発電ガラスを用いる場合に期待される効果について記載する。
【0101】
本実施形態において、住宅用建物1の側壁部20や屋根部80のほぼ全体を覆うガラス部26を発電ガラスとする場合、住宅用建物1は、太陽電池を屋根部80だけに設置する場合に比べて、3~5倍の自家発電量が得られることが期待できる。これは、側壁構造体22や上部構造体82に貼り付けているシート221に、ガラス部26を透過した太陽光を反射させるシート部材を持ちいることが可能であり、発電ガラスの表裏両面から太陽光を入射させて、発電させることができるからである。
【0102】
本特許出願人の試算によれば、季節による変動や地域による差はあるが、ガラス部26に発電ガラスを用いることにより、本実施形態の住宅用建物1は、平均で50~100KWの自家発電が可能である。自家発電した電気は、住宅用建物1において消費するだけでなく、その余剰分を電気会社に売却できる。ガラス部26に発電ガラスを用いることにより、本実施形態の住宅用建物1は、自家発電によって、10万円/月、即ち120万円/年程度の売電収入額を得られることが期待される。この売電収入額は、住宅用建物1の購入におけるローン返済額とほぼ同等になることが期待できる。ガラス部26に発電ガラスを用いることにより、本実施形態の住宅用建物1は、建物購入者の購入後の負担を軽減し、建物購入に対する動機付けを与えるという効果を有する。
【0103】
以上、本発明に係る、住宅用建物について、実施形態の例をもとに説明した。本発明は説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項に記載した範囲において変形を行うことが可能である。このような変形を行った形態も本発明の権利範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0104】
1…住宅用建物、10…室内、11…床、12…天井、13…軒天材、14…柱、20…側壁部、22…側壁構造体、221…シート、26…ガラス部、261…コーキング封止部、
23、33、53、63、83…保持アングル、24、44、64、74…受けアングル、25、28…通気孔、27…縦アングル、231、241、271…固定板、272…突当板、232、242…内側係止板、233、243…外側係止板、234、244、274、334、444、534、634、644、744、834…結合部、235、335、535、635、835…保持アングル溝、245、445、645、745…受けアングル溝、
30…基礎接続部、31…基礎土台、311…断熱材、32…下部構造体、336、746、836…空間、39、79…通気パッキング、40…サイディング部、41…サイディング壁、42…サイディング保持部、43…通気胴縁、50…オーバハング部、51…水切りアングル、60…窓部、61…窓、62…窓枠、70…屋根接続部、75…パラペット部、80…屋根部、81…屋根通気孔、82…上部構造体、87…屋根アングル、G1…床下通気層、G2…側壁通気層、G3…小屋裏通気層、F1…床ファン、F2…天井ファン