(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178704
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】積層体及びその製造方法、並びに、積層体からなる包装用紙、包装袋及び包装体
(51)【国際特許分類】
D21H 27/30 20060101AFI20241218BHJP
B32B 29/00 20060101ALI20241218BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
D21H27/30 C
B32B29/00
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097050
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000219680
【氏名又は名称】株式会社トライフ
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】羽明駿
(72)【発明者】
【氏名】大坂篤史
(72)【発明者】
【氏名】森下栄男
(72)【発明者】
【氏名】北町宜暖
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4L055
【Fターム(参考)】
3E086AC12
3E086AD01
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4F100AK01B
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4L055AA02
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4L055GA05
(57)【要約】
【課題】低環境負荷であり、柔軟性及び引張伸びを両立することにより優れた包装適性を備える、ヒートシール可能な紙ベースの透気性積層体を提供すること。
【解決手段】紙基材、及び、透気性熱可塑性樹脂層を備える積層体であって、JAPAN TAPPI No.34に準拠して測定されるソフトネスが500mN/50mm以下であり、JIS P 8113:2006に準拠して測定される引張破断伸びが3%以上である、積層体。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材、及び、
透気性熱可塑性樹脂層
を備える積層体であって、
JAPAN TAPPI No.34に準拠して測定されるソフトネスが500mN/50mm以下であり、
JIS P 8113:2006に準拠して測定される引張破断伸びが3%以上である、積層体。
【請求項2】
前記紙基材がクレープ紙である、請求項1記載の積層体。
【請求項3】
前記紙基材の坪量が60g/m2未満である、請求項1記載の積層体。
【請求項4】
前記透気性熱可塑性樹脂層がアイオノマーを含む、請求項1記載の積層体。
【請求項5】
前記透気性熱可塑性樹脂層の存在量が1g/m2~8g/m2である、請求項1記載の積層体。
【請求項6】
前記紙基材及び前記透気性熱可塑性樹脂層のみからなる、請求項1記載の積層体。
【請求項7】
透気度が200秒以下である、請求項1記載の積層体。
【請求項8】
請求項1記載の積層体の製造方法であって、
前記紙基材の少なくとも一方の表面に熱可塑性樹脂粒子の分散液を塗工する工程、及び
前記塗工後の前記紙基材を乾燥して前記透気性熱可塑性樹脂層を形成する工程
を含む、製造方法。
【請求項9】
前記分散液が水を含む、請求項8記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1記載の積層体からなる包装用紙。
【請求項11】
請求項10記載の包装用紙からなる包装袋。
【請求項12】
被包装物、及び、
前記被包装物を収容する請求項11記載の包装袋
を備える包装体。
【請求項13】
前記包装袋がヒートシールされている、請求項12記載の包装体。
【請求項14】
前記被包装物が衛生紙である、請求項12記載の包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシール可能な紙ベースの積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートシール可能な紙ベースの積層体は様々な用途に使用されており、例えば、板紙上に熱可塑性樹脂層を備えるものが紙コップの製造に使用されている。
【0003】
また、ヒートシール可能な紙ベースの積層体はティッシュペーパー、ペーパータオル等の衛生紙の包装にも使用されており、例えば、特許文献1には、熱可塑性樹脂の押出ラミネート層を紙基材上に備える積層体からなる、衛生紙の包装袋が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
紙ベースの積層体は従来の石油由来のプラスチックフィルムをベースとする積層体に比べて環境負荷を低減することができる。しかし、環境負荷を更に低減することがより好ましい。
【0006】
また、包装用途では、柔軟性が高い方が好ましい場合がある。そのような場合は、例えば、積層体の紙基材を薄くして当該積層体の柔軟性を高めることができるが、その一方で、積層体の引張伸びが低下する。引張伸びが低下すると、外力に対する変形性が低下し、積層体が破れやすくなる。
【0007】
更に、熱可塑性樹脂の押し出しラミネート層を備える紙ベースの積層体では透気性がほぼ失われるが、包装物の使用態様によっては、透気性を有する方が好ましい場合がある。
【0008】
本発明は、低環境負荷であり、柔軟性及び引張伸びを両立することにより優れた包装適性を備える、ヒートシール可能な紙ベースの透気性積層体を提供することをその目的とする。また、本発明は上記積層体の用途を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
紙基材、及び、
透気性熱可塑性樹脂層
を備える積層体であって、
JAPAN TAPPI No.34に準拠して測定されるソフトネスが500mN/50mm以下であり、
JIS P 8113:2006に準拠して測定される引張破断伸びが3%以上である、積層体である。
【0010】
前記紙基材がクレープ紙であることが好ましい。
【0011】
前記紙基材の坪量が60g/m2未満であることが好ましい。
【0012】
前記透気性熱可塑性樹脂層がアイオノマーを含むことが好ましい。
【0013】
前記透気性熱可塑性樹脂層の存在量が1g/m2~8g/m2であることが好ましい。
【0014】
本発明の積層体は前記紙基材及び前記透気性熱可塑性樹脂層のみからなることが好ましい。
【0015】
本発明の積層体の透気度が200秒以下であることが好ましい。
【0016】
本発明は、本発明の積層体の製造方法であって、
前記紙基材の少なくとも一方の表面に熱可塑性樹脂粒子の分散液を塗工する工程、及び
前記塗工後の前記紙基材を乾燥して前記透気性熱可塑性樹脂層を形成する工程
を含む、製造方法にも関する。
【0017】
前記分散液が水を含むことが好ましい。
【0018】
本発明は、本発明の積層体からなる包装用紙にも関する。
【0019】
本発明は、本発明の包装用紙からなる包装袋にも関する。
【0020】
本発明は、
被包装物、及び、
前記被包装物を収容する本発明の包装袋
を備える包装体にも関する。
【0021】
前記包装袋がヒートシールされていることが好ましい。
【0022】
前記被包装物が衛生紙であることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の積層体は、熱可塑性樹脂層の存在により、ヒートシール可能である。したがって、本発明の積層体はヒートシールを行う包装用途に好適に使用することができる。
【0024】
本発明の積層体は、紙ベースであり、環境に優しいものであるところ、熱可塑性樹脂の押出ラミネート層を紙基材上に備えるものに比べて、環境負荷を更に低減することができる。
【0025】
本発明の積層体は透気性を有するので、通気性が求められる場合でも好ましく使用することができる。
【0026】
本発明の積層体は柔軟性及び引張伸びを両立することができる。したがって、本発明の積層体は、被包装物の形状に良好に追従することができ、また、外力に対する変形性に優れており破れにくい。よって、本発明の積層体は、優れた包装適性を備えており、包装用紙として好適に使用することができる。
【0027】
そして、本発明の包装袋は、製造中だけでなく、製造後の破れをも抑制することができ、また、本発明の包装体は容積を低減することが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図2】本発明の積層体の一例の紙基材の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の積層体は、
紙基材、及び、
透気性を有する熱可塑性樹脂層(以下、「透気性熱可塑性樹脂層」という)
を備えており、
JAPAN TAPPI No.34に準拠して測定されるソフトネスが500mN/50mm以下であり、
JIS P 8113:2006に準拠して測定される引張破断伸びが3%以上である。
【0030】
[紙基材]
本発明の積層体は、紙基材を備える。紙基材は複数あってもよいが、全体の層厚の抑制のためには紙基材は1つであることが好ましい。
【0031】
紙基材は紙からなる基材であり、シート形状を備える。
【0032】
紙基材の坪量(測定方法:JIS P 8124 [2011])は60g/m2未満が好ましく、55g/m2未満がより好ましく、50g/m2未満が更により好ましい。紙基材の坪量を抑制することにより、紙基材の厚みを抑制することができる。そして、これにより、紙基材の柔軟性を高めることができ、ひいては、本発明の積層体の柔軟性をも高めることができる。
【0033】
一方、製造の容易性等の点で、紙基材の坪量は、10g/m2以上が好ましく、20g/m2以上がより好ましく、30g/m2以上が更により好ましい。したがって、紙基材の坪量は、10g/m2~60g/m2未満が好ましく、20g/m2~55g/m2未満がより好ましく、30g/m2~50g/m2未満が更により好ましい。
【0034】
紙基材の厚み(測定方法:JIS P 8118 [2014])は、200μm以下が好ましく、180μm以下がより好ましく、160μm以下が更により好ましい。また、紙基材の厚みは、40μm以上が好ましく、60μm以上がより好ましく、80μm以上が更により好ましい。したがって、紙基材の厚みは、40μm~200μmが好ましく、60μm~180μmがより好ましく、80μm~160μmが更により好ましい。
【0035】
紙基材の原料としては、特に限定されるものではなく、例えば、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ等の木材パルプが挙げられる。なお、木材パルプにレーヨン繊維、ポリエチレン繊維、コットン繊維等の非セルロース繊維を少量混合してもよい。
【0036】
紙基材の種類も、特に限定されるものではなく、様々な種類の紙を使用することができるが、クレープ紙が好ましい。クレープ紙は、多数の皺を有しており、そのために、薄くても優れた伸縮性を備えることができる。したがって、紙基材としてクレープ紙を使用する場合、本発明の積層体の柔軟性及び引張伸びを両立することが容易である。
【0037】
クレープ紙を構成する繊維材料としては、木材パルプが好ましく、バージン木材パルプ若しくは古紙パルプ又はこれらの混合物を使用することができる。木材パルプとしては、例えば、NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)、NUKP(針葉樹未晒しパルプ)等の針葉樹パルプ、LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)、LUKP(広葉樹未晒しパルプ)等の広葉樹パルプ、並びに、針葉樹パルプ及び広葉樹パルプの混合物を使用することができる。
【0038】
クレープ紙は、従来公知の方法で製造することができる。例えば、加熱された円筒状ヤンキードライヤーの表面に湿紙を押し付けて付着させ、一定の乾燥を経たのち、ドクターブレードを介して、紙体をヤンキードライヤーから引き剥がしてクレープ処理することにより製造することができる。
【0039】
[透気性熱可塑性樹脂層]
本発明の積層体は、透気性熱可塑性樹脂層を備える。透気性熱可塑性樹脂層は複数あってもよいが、全体の層厚の抑制のためには透気性熱可塑性樹脂層は1つであることが好ましい。
【0040】
透気性熱可塑性樹脂層は透気性を備えており、気体が通過することができる。透気性熱可塑性樹脂層は気体が通過可能な多孔層であることが好ましい。
【0041】
透気性熱可塑性樹脂層の存在により、本発明の積層体はヒートシール可能であり、例えば、ヒートシールにより包装袋を容易に製造することができる。
【0042】
透気性熱可塑性樹脂層は紙基材の表面の全面に存在する必要はなく、紙基材の表面の少なくとも一部(例えば端部)に存在すればよいが、紙基材の表面の全面に存在してもよい。
【0043】
透気性熱可塑性樹脂層は少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含む。単一種類の熱可塑性樹脂を使用してもよく、複数種類の樹脂を併用してもよい。
【0044】
熱可塑性樹脂の種類は特には限定されるものではないが、柔軟性の点で、スチレン-ブタジエン共重合体等のスチレン共重合体でないことが好ましい。
【0045】
熱可塑性樹脂としては粒子の形態のものが好ましく、水分散性のものがより好ましい。水分散性熱可塑性樹脂は、非水溶性であるが、エマルション、サスペンション等のように水中で分散可能な熱可塑性樹脂である。
【0046】
熱可塑性樹脂の種類は特には限定されるものではなく、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリルポリマー、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル/ブタジエンコポリマー、ABS樹脂、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、オレフィン/不飽和カルボン酸コポリマー等が挙げられる。
【0047】
ヒートシール後の強度等の点で、エチレン/酢酸ビニルコポリマー及びオレフィン/不飽和カルボン酸コポリマーが好ましい。
【0048】
オレフィン/不飽和カルボン酸コポリマーとしては、エチレン/(メタ)アクリル酸コポリマー、エチレン/(メタ)アクリル酸アルキルエステルコポリマー等が挙げられ、エチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーが好ましい。エチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーとしてはアイオノマーが好ましい。すなわち、透気性熱可塑性樹脂層はアイオノマーを含むことが好ましい。なお、アイオノマーとは、金属イオンによる凝集力を利用して高分子を凝集体とした合成樹脂の総称であり、金属イオンにより、高分子鎖がイオン的に架橋されている。アイオノマーとしては、三井化学株式会社製のケミパールSシリーズ等が挙げられる。
【0049】
透気性熱可塑性樹脂層は、押出ラミネート層ではなく、熱可塑性樹脂粒子の分散液を紙基材上に塗布・乾燥して得られた、塗工層であることが好ましい。更なる環境負荷低減の点では、塗工層は水性分散液から得られた水系塗工層であることが好ましい。熱可塑性樹脂粒子の粒径は、例えば、0.01μm~100μm、好ましくは0.1μm~10μmとすることができる。
【0050】
押出ラミネート層は熱可塑性樹脂のフィルムからなるのでほぼ透気性を欠くが、塗工層は熱可塑性樹脂微粒子の集合体からなり、熱可塑性樹脂微粒子同士の間隙に由来する多数の微細孔を有する多孔層であるために、透気性を有することができる。
【0051】
透気性熱可塑性樹脂層の存在量(固形分)は1g/m2以上が好ましく、2g/m2以上がより好ましく、3g/m2以上が更により好ましい。また、透気性熱可塑性樹脂層の存在量は8g/m2以下が好ましく、7g/m2以下がより好ましく、6g/m2以下が更により好ましい。したがって、透気性熱可塑性樹脂層の存在量は1g/m2~8g/m2が好ましく、2g/m2~7g/m2がより好ましく、3g/m2~6g/m2が更により好ましい。
【0052】
透気性熱可塑性樹脂層は、任意の添加剤を含むことができる。添加剤としては、例えば、各種の有機フィラー又は無機フィラー、粘着付与剤、酸化防止剤、防曇剤、各種の有機顔料又は無機顔料、難燃剤、架橋剤、紫外線防止剤、滑剤等を挙げることができる。
【0053】
[積層体]
本発明の積層体は、JAPAN TAPPI No.34に準拠して測定されるソフトネスが500mN/50mm以下である。これにより、本発明の積層体は良好な柔軟性を備えることができる。本発明の積層体のJAPAN TAPPI No.34に準拠して測定されるソフトネスは、400mN/50mm以下が好ましく、300mN/50mm以下がより好ましく、200mN/50mm以下が更により好ましい。
【0054】
なお、取扱性の点では、本発明の積層体のJAPAN TAPPI No.34に準拠して測定されるソフトネスは、50mN/50mm以上が好ましく、100mN/50mm以上がより好ましく、150mN/50mm以上が更により好ましい。
【0055】
本発明の積層体は、JIS P 8113:2006に準拠して測定される引張破断伸びが3%以上である。これにより、本発明の積層体は良好な引張伸びを備えることができる。本発明の積層体のJIS P 8113:2006に準拠して測定される引張破断伸びは4%以上が好ましく、5%以上がより好ましく。6%以上が更により好ましく、7%以上が更により好ましく、8%以上が更により好ましく、9%以上が更により好ましい。
【0056】
なお、たるみの抑制の点では、本発明の積層体のJIS P 8113:2006に準拠して測定される引張破断伸びは50%以下が好ましく、40%以下がより好ましく。30%以下が更により好ましく、20%以下が更により好ましい。
【0057】
本発明の積層体のMD方向及びCD方向の一方又は両方が上記のソフトネス及び引張破断伸びを有すればよいが、本発明の積層体の少なくともMD方向が上記のソフトネス及び引張破断伸びを有することが好ましい。
【0058】
本発明の積層体は透気性を備えることができる。本発明の積層体の透気度(測定方法:JIS P 8117 [2009])は200秒以下が好ましく、100秒以下がより好ましく、50秒以下が、更により好ましく、20秒以下が更により好ましい。透気度が小さいほど、気体の透過性に優れている。
【0059】
本発明の積層体は通気性が求められる用途に好ましく使用することができる。例えば、食品包装用途では、包装体中の食品を加熱すると当該食品から水蒸気等の気体が生じることがあるが、本発明の積層体は透気性を有するので、本発明の積層体からなる包装体は当該気体を外部に放散することができる。これにより、例えば、電子レンジによる加熱時に水蒸気が急速に発生しても包装袋が破裂等する可能性を低減することができる。
【0060】
本発明の積層体は紙基材及び透気性熱可塑性樹脂層以外の他の層を備えることが可能であり、例えば、紙基材と透気性熱可塑性樹脂層の間に接着層等の任意の中間層を備えることができる。しかし、全体の層厚の抑制等のためには、紙基材と透気性熱可塑性樹脂層の間には他の層が介在しない方が好ましい。すなわち、紙基材と透気性熱可塑性樹脂層は直接接触する方が好ましい。
【0061】
また、紙基材の透気性熱可塑性樹脂層が存在する表面の反対側の表面に保護層等の任意の層を備えることができる。しかし、透気性を維持するために、本発明の積層体は押出コーティング層を有さないことが好ましい。そして、全体の厚みを抑制し、紙基材の変形性を損なわないためには、本発明の積層体は紙基材及び透気性熱可塑性樹脂層のみを備えることが好ましい。
【0062】
[製造方法]
本発明の積層体は
紙基材の少なくとも一方の表面に熱可塑性樹脂粒子の分散液を塗工する工程、及び
前記塗工後の前記紙基材を乾燥して透気性熱可塑性樹脂層を形成する工程
を含む方法によって製造することができる。
【0063】
前記熱可塑性樹脂粒子の分散液の分散媒体の種類は、特に限定されるものではないが、水、或いは、エタノール、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、トルエン等の有機溶媒を用いることができる。環境負荷低減等の点で水又はエタノール、イソプロピルアルコール等の親水性有機溶媒が好ましく、水がより好ましい。
【0064】
分散液中の熱可塑性樹脂粒子の配合量は、特に限定されるものではないが、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更により好ましい。一方、塗布性の点では、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下が更により好ましい。したがって、分散液中の熱可塑性樹脂の量は、3質量%~80質量%が好ましく、5質量%~70質量%がより好ましく、10質量%~60質量%が更により好ましい。
【0065】
分散液を紙基材上に塗工する工程は公知の機器を使用して実施することができる。そのような公知の塗工機器としては、ブレードコーター、バーコーター、エアナイフコーター、スリットダイコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ロールコーター、サイズプレス、ゲートロールコーター、シムサイザー等が挙げられる。また、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷などにより、紙基材上の全面または部分的に分散液を塗工してもよい。
【0066】
塗工後の紙基材の乾燥工程も公知の機器を使用して実施することができる。そのような公知の乾燥機器としては、熱風乾燥機、赤外線乾燥機等が挙げられる。乾燥温度・乾燥時間は、熱可塑性樹脂の種類、分散液の分散媒体の種類、分散液中の熱可塑性樹脂粒子の配合量等を考慮して、適宜設定することができる。
【0067】
[用途]
本発明の積層体は様々な用途に使用することができる。本発明の積層体は包装用途に好適に使用することができる。
【0068】
本発明は、
上記積層体からなる包装用紙、
上記包装用紙からなる包装袋、
並びに
被包装物、及び、被包装物を収容する上記包装袋を備える包装体
にも関する。
【0069】
本発明の積層体は、透気性熱可塑性樹脂層を備えており、ヒートシールが可能である。したがって、本発明の積層体は包装用紙として使用することができ、ヒートシールにより、包装袋の製造が容易である。
【0070】
本発明の積層体は透気性を備えることができる。したがって、通気性が求められる場合でも好ましく使用することができる。
【0071】
本発明の積層体は、良好な柔軟性と良好な引張伸びを備えることができる。したがって、本発明の積層体からなる包装用紙は、被包装物の形状に良好に追従することができ、また、外力に対する変形性に優れており破れにくい。よって、本発明の積層体は優れた包装適性を備えることができる。
【0072】
そして、本発明の包装袋は製造が容易であり、製造中だけでなく、製造後の破れをも抑制することができる。また、本発明の包装袋は被包装物の形状への追従性に優れているので、当該包装袋からなる包装体はその容積を低減することが容易であり、運搬等を効率的に行うことができる。
【0073】
本発明の包装体は、紙ベースの積層体からなる包装袋を使用するので、プラスチックフィルム製の包装袋を使用する場合に比べて、廃棄時のプラスチックの環境中への残存による環境汚染等の環境問題により対応することができる。
【0074】
特に、包装袋を構成する紙基材は、もともと、植物に由来する有機物であり、カーボンニュートラルな再生可能な資源であるので、環境への負荷を低減することができる。したがって、本発明の包装体は環境に優しいものである。
【0075】
なお、紙基材としてクレープ紙を使用する場合は、本発明の積層体からなる包装袋と被包装物との接触点が低減されるので、包装袋への被包装物の引っかかりも抑制することができる。したがって、包装袋への引っかかりが包装に悪影響を及ぼしやすい衛生紙等の被包装物の包装が容易である。
【0076】
以下、本発明の包装袋及び包装体の一例について説明する。
【0077】
本発明の包装袋は本発明の積層体からなる。包装袋の形状は特には限定されるものではなく、例えば、非箱形又は箱形とすることが可能である。
【0078】
本発明の包装体の製造方法は特には限定されるものではなく、例えば、平面状の上記積層体を変形して収容部を備える袋状とし、当該収容部に被包装物を収容後に、収容部の開口部(透気性熱可塑性樹脂層を備える)をヒートシールにより封止して包装体を製造することができる。
【0079】
ヒートシールの温度は透気性熱可塑性樹脂層に含まれる熱可塑性樹脂の種類によるが、80℃~350℃が好ましく、100℃~300℃がより好ましく、150℃~250℃が更により好ましい。
【0080】
ヒートシールの時間も透気性熱可塑性樹脂層に含まれる熱可塑性樹脂の種類によるが、5秒以下が好ましく、3秒以下がより好ましく、1秒以下が更により好ましい。
【0081】
本発明の包装体に含まれる被包装物は特には限定されるものではなく、食品等の様々な物品を被包装物とすることができるが、衛生紙を被包装物とすることができる。
【0082】
衛生紙とは衛生状態の向上を目的として使用される紙であり、例えば、ティッシュペーパー(顔ふき紙、化粧紙等と呼ばれるもの)、ちり紙、ペーパータオル(キッチンペーパー等)、トイレットペーパー、ワッティング(紙綿)等の使い捨て紙(例えば、紙パルプ技術便覧第5版、第459頁参照、1992年1月30日発行、紙パルプ技術協会編集・発行)等を挙げることができる。衛生紙は衛生用紙とも呼称される(JIS P0001:1998)。
【0083】
衛生紙としては、キッチンペーパー等のペーパータオルが好ましい。キッチンペーパー(クッキングペーパーも含む)は、主にキッチンにおいて、肉、魚、野菜等の水切り、油切り;まな板の上敷;食器の拭き取り;フライパンの油拭き;ガスレンジ、換気扇等の手入れ;食卓の汚れ拭き、等の用途に使用される。
【0084】
衛生紙は、多孔性であり、液体の吸収能を有する。液体としては、水、油等が挙げられる。したがって、衛生紙は吸水性、吸油性を備えており、例えば、キッチンでの使用に適している。
【0085】
衛生紙を構成する繊維材料は特には限定されるものではなく、綿、木材パルプ、羊毛等の天然繊維、レーヨン等の再生繊維、ビニロン、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル等の合成高分子から製造した合成繊維を挙げることができる。これら繊維は単独で用いてもよく、混合複合化してもよい。衛生紙を構成する繊維材料としては、木材パルプが好ましく、バージン木材パルプ若しくは古紙パルプ又はこれらの混合物を使用することができる。木材パルプとしては、例えば、NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)、NUKP(針葉樹未晒しパルプ)等の針葉樹パルプと、LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)、LUKP(広葉樹未晒しパルプ)等の広葉樹パルプと、をそれぞれ単独で、或いは、適宜の比率で混合したものを使用することが可能であり、例えば、針葉樹パルプ:広葉樹パルプの比を1(25%):3(75%)~1(50%):1(50%)とすることができる。
【0086】
衛生紙の坪量は特には限定されるものではないが、坪量(測定方法:JIS P 8124 [2011])10g/m2~100g/m2が好ましく、30g/m2~50g/m2がより好ましい。また、衛生紙の紙厚も特には限定されるものではないが、紙厚(測定方法:JIS P 8118 [2014])は50μm~300μmが好ましく、80μm~200μmがより好ましい。
【0087】
衛生紙はその一方の表面又は両面に凹凸を有することが好ましい。凹凸は衛生紙の表面の一部に存在してもよく、或いは、表面の全面に存在してもよい。
【0088】
凹凸はエンボス加工により付与されることが好ましい。凹凸の高さ(凹部の最底面から凸部の頂点のレベルまでの垂直高さ)は特には限定されるものではないが、例えば、0.1mm~5mmでもよく、1mm~3mmでもよい。
【0089】
衛生紙の形態は特には限定されるものではなく、長尺の衛生紙を巻き取ったロールの形態であってもよいが、衛生紙は非ロール形態であることが好ましく、複数の平面状の衛生紙の積層物の形態であることがより好ましく、平面状の衛生紙を折り畳んで包装袋内に収容されることが更により好ましい。衛生紙は、1枚(所謂、1プライ)を2つ折りにして利用する形態でも、また、2枚(所謂、2プライ)又は3枚(所謂、3プライ)以上の積層構造の一組を2つ折りにして1枚と同様に利用する形態のいずれでもよい。
【0090】
衛生紙がポップアップ式に包装袋に収容されることが好ましい。ポップアップ式であると、衛生紙を包装袋から取り出した後に次の衛生紙の一部が包装袋の外に出てきているので、次の衛生紙の取り出しが容易である。
【0091】
衛生紙は、おむつ、成人用失禁パンツ、幼児用トレーニングパンツ等の衣類ではない方が好ましい。
【0092】
[包装体例]
図1は本発明の包装体の一実施態様を示す図であり、
図1(A)及び
図1(B)は、それぞれ、本発明の包装体の一実施態様の表側及び裏側を示している。
図1(C)は
図1(A)のA-A線での断面図である。
【0093】
図1において1は包装体を表し、2は包装体の包装袋であり、3は包装袋2内の収容部に収容されている複数の平面状の衛生紙である。
図1の例では、衛生紙3は積層物の形態とされている。
【0094】
包装袋2には複数の空気孔4が形成されており、包装袋2内の空気を外界に迅速に排出可能とされている。包装袋2内の空気を空気孔4を介して外界に迅速に排出することにより、包装袋2の体積を迅速に低減して、例えば、包装袋2の梱包運搬を容易とすることができる。
【0095】
図1に示す態様では、包装袋2の表面の一部に衛生紙3を取り出すための取出口を形成可能なミシン目2-1が形成されており、衛生紙3を取り出す際にはミシン目2-1を破って取出口を形成し、当該取出口から衛生紙3を外部に取り出すことができる。
【0096】
図1に示す態様では衛生紙3は所謂ポップアップ式に重ねて包装袋2内に収容されているので、取出口から1枚の衛生紙3を取り出すと、次の衛生紙3の一部が取出口から突出することができ、衛生紙3の取り出しを容易に実施することができる。
【0097】
図2は、
図1の包装袋2を形成する積層体の一例の紙基材の拡大断面図である。
図2に示す例では、クレープ紙を紙基材5として使用している。
【0098】
図2に示すように、クレープ紙からなる紙基材5は、多数の皺を備えており、優れた伸縮性を有する。したがって、クレープ紙からなる紙基材5からなる包装袋2は優れた伸縮性を備えており、外力に対する変形性が高く、薄くても良好な引張伸びを維持することができるので、包装袋2が破れにくい。
【0099】
図3は、
図1の包装袋2を形成する積層体の一例の拡大断面図である。
図3に示すように、紙基材5は、その一方の表面の全面に1つの透気性熱可塑性樹脂層6を備えている。したがって、
図3に示す例では、透気性熱可塑性樹脂層6を任意の箇所でヒートシールすることによって包装袋2をより容易に製造することができる。なお、透気性熱可塑性樹脂層は、フィルム形態ではなく、多孔性であり、また、
図3に示す例では、透気性熱可塑性樹脂層6の層厚は十分に薄いので紙基材5の伸縮性を維持することができる。
【0100】
図3に示す透気性熱可塑性樹脂層6は、熱可塑性樹脂製フィルムの形態の押出ラミネート層とは異なり、多数の熱可塑性樹脂微粒子の集合体又は堆積層の形態であり、多数の微細な孔を備えており、そのために、透気性を有することができる。なお、
図3では、便宜的に、熱可塑性樹脂微粒子を球形で表しているが、実際には、熱可塑性樹脂粒子微粒子の形状は球形に限定されるものではなく、任意の粒子形状をとることができる。
【0101】
紙基材5及び透気性熱可塑性樹脂層6の合計厚み(測定方法:JIS P 8118 [2014])は41μm~200μmが好ましく、61μm~180μmがより好ましく、81μm~160μmが更により好ましい。
【0102】
紙基材5及び透気性熱可塑性樹脂層6の合計坪量は55g/m2~65g/m2が好ましく、50g/m2~60g/m2がより好ましく、45g/m2~55g/m2が更により好ましい。
【0103】
図3に示す例では、透気性熱可塑性樹脂層6が
図1(C)に示す衛生紙3側を向いている。透気性熱可塑性樹脂層6の表面は紙基材5の表面に比べてより平滑であるので、衛生紙3の包装袋2への引っかかりが抑制される。したがって、
図3に示す例でも、衛生紙3の包装袋2への引っかかりが抑制され、包装袋2内への衛生紙3の包装作業が容易である。
【0104】
図1に示す包装袋2では紙基材5がその外表面を形成している。したがって、包装袋2が紙製であることを外部から容易に認識することができる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の積層体は、環境負荷が低減された包装用紙として、包装用途に好適に使用することができる。
【0106】
また、本発明の積層体は透気性を有するので、通気性が求められる場合でも好適に使用することができる。
【0107】
そして、本発明の積層体は良好な柔軟性と良好な引張伸びを両立することができるので、例えば、包装用途では、被包装物の形状に良好に追従することができ、また、外力に対する変形性を維持できるので破れにくい。よって、本発明の積層体は優れた包装適性を備えることができる。
【0108】
本発明の包装袋及び包装体は、製造中だけでなく、製造後の破れをも抑制することができ、また、本発明の包装体は容積を低減することもできる。したがって、本発明の包装体は運搬を効率的に行うことができる。
【0109】
更に、本発明の積層体からなる包装袋は、毛羽立ちやすい衛生紙の包装袋への引っかかりも抑制可能であるので、本発明の包装体は、衛生紙の包装に好適である。
【実施例0110】
[実施例1]
NUKP(針葉樹未晒クラフトパルプ)及びLUKP(広葉樹未晒クラフトパルプ)を40:60の重量比で混合した木材パルプ(フリーネス410cc)を含むスラリーに乾燥紙力剤(星光PMC社製DS4424)及び湿潤紙力剤(星光PMC社製WS4030)をそれぞれ木材パルプに対して0.2重量%となる濃度で添加し、円網ヤンキー抄紙機にて、厚み100μm及び坪量45g/m2のクレープ紙を製造した。
上記クレープ紙を基材とし、フレキソ印刷機にて熱可塑性樹脂粒子の分散液(三井化学社製ケミパールS100)を5g/m2塗布して透気性熱可塑性樹脂層を備える積層体を製造した。
【0111】
[比較例1]
基材として坪量40g/m2の片艶クラフト紙を使用した他は実施例1と同様に、透気性熱可塑性樹脂層を備える積層体を製造した。
【0112】
[比較例2]
基材として坪量70g/m2のクルパック紙を使用した他は実施例1と同様に、透気性熱可塑性樹脂層を備える積層体を製造した。
【0113】
実施例1、比較例1及び比較例2の積層体について、以下に示す評価方法により評価を行った。結果を表1に示す。
【0114】
[評価方法]
(ソフトネス)
JAPAN TAPPI No.34に規定された方法で測定した。
(引張破断伸び)
JIS P 8113:2006に規定された方法で測定した。
(追従性)
横ピロー包装機(フジキカイ社製αwrapper6)を使用し、ペーパータオルの充填包装を行い、包装時にシワなく使用可能なものを○、包装時にシワが発生してしまうものを×とした。
(破れ)
横ピロー包装機(フジキカイ社製αwrapper6)を使用し、ペーパータオルの充填包装を行い、包装時に破れなく使用可能なものを○、包装時に破れてしまうものを×とした。
【0115】
【0116】
JAPAN TAPPI No.34 に準拠して測定されるソフトネスが500 mN/50mm以下であり、且つ、JIS P 8113:2006に準拠して測定される引張破断伸びが3%以上である実施例1の積層体は、被包装物への追従性が良好であり、包装時に破れもなく、包装適性が良好であった。
【0117】
一方、JAPAN TAPPI No.34 に準拠して測定されるソフトネスが500 mN/50mm超、且つ、JIS P 8113:2006に準拠して測定される引張破断伸びが3%未満である比較例1の積層体は、包装時に破れが生じた。また、JIS P 8113:2006に準拠して測定される引張破断伸びが3%以上であるが、JAPAN TAPPI No.34 に準拠して測定されるソフトネスが500 mN/50mm超の比較例2の積層体は被包装物への追従性が不良であった。