(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178706
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】車両空調システム
(51)【国際特許分類】
B60H 3/00 20060101AFI20241218BHJP
B60H 1/32 20060101ALI20241218BHJP
B60H 3/02 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
B60H3/00 A
B60H1/32 621J
B60H3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097055
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】丸山 浩一
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA04
3L211CA19
3L211DA28
3L211DA72
3L211GA72
(57)【要約】
【課題】小型で、且つ、多様な調湿が可能な車両空調システムを提供する。
【解決手段】車両空調システムAは、外気を吸引するブロア51と、外気と流体との間で熱交換し、外気を冷却又は加温可能な熱交換器52と、水分含有空気に含まれる水分を吸着して加温乾燥空気を生成する吸着部53と、吸着部53に吸着された水分を蒸発させて冷却加湿空気を生成する加温部54と、を備え、熱交換器52は、加温乾燥空気又は冷却加湿空気と前記流体との間で熱交換して車室冷房用空気又は車室暖房用空気を生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気を吸引するブロアと、
前記外気と流体との間で熱交換し、前記外気を冷却又は加温可能な熱交換器と、
水分含有空気に含まれる水分を吸着して加温乾燥空気を生成する吸着部と、
前記吸着部に吸着された前記水分を蒸発させて冷却加湿空気を生成する加温部と、を備え、
前記熱交換器は、前記加温乾燥空気又は前記冷却加湿空気と前記流体との間で熱交換して車室冷房用空気又は車室暖房用空気を生成する車両空調システム。
【請求項2】
前記流体は、凝縮器及び蒸発器の間を循環する冷媒と熱交換する冷却液である請求項1に記載の車両空調システム。
【請求項3】
前記冷却液が流通する冷却液流路には、前記凝縮器に前記冷却液を循環させる第一状態と、前記蒸発器に前記冷却液を循環させる第二状態とに切換可能な切換弁が配置されている請求項2に記載の車両空調システム。
【請求項4】
前記ブロア、前記熱交換器、前記吸着部、及び前記加温部を有する空調ユニットと、
前記冷却液を流通させる冷却液流路を有する冷却液モジュールと、を備え、
前記空調ユニット及び前記冷却液モジュールが一体化されている請求項2又は3に記載の車両空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、室内の冷房除湿運転あるいは暖房加湿運転を高効率に行う温度調節システムが知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1には、室内の空気を外部に排気する第1通路、外気を室内に給気する第2通路、第1通路に配置された凝縮器と加熱手段、第2通路に配置された蒸発器、第1通路と第2通路とに亘って配置された除湿ロータ、第1通路と第2通路の外部に配置された圧縮機、及び凝縮器と蒸発器との間に配置された膨張弁を備えた温度調節システム(特許文献1においてはデシカント空調システム)が開示されている。該温度調節システムにおいては、第2通路を流通する外気に含有される水分を除湿ロータに吸着させて除去することにより外気は乾燥空気となり、該乾燥空気を蒸発器により冷却して室内に給気する。また、室内から排出された空気は第1通路において凝縮器と加熱手段とにより加熱されて排気空気となり、該排気空気が除湿ロータに吸着された水分を除去して除湿ロータを再生(脱着、乾燥)させる。除湿ロータ、凝縮器、蒸発器、圧縮機、及び膨張弁により圧縮式空調機が構成されている。加熱手段は固体高分子燃料電池の冷却水の廃熱である。除湿ロータは、内部にシリカゲル、活性炭などの吸着材が充填されており、低速で回転して第1通路と第2通路とに交互に対向する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたデシカント空調システムを車両に搭載する場合、凝縮器を車両の前方に配置する必要があり、大型化や圧損増加のおそれがある。また、特許文献1に開示されたデシカント空調システムでは、外気を加湿した後に加熱する暖房除湿運転を行えないため、例えば車両に搭載した場合に、冬季等のデフロスター機能の使用の際に除湿暖房空気を供給できない。
【0005】
そこで、小型で、且つ、多様な調湿が可能な車両空調システムが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両空調システムの一つの実施形態は、外気を吸引するブロアと、前記外気と流体との間で熱交換し、前記外気を冷却又は加温可能な熱交換器と、水分含有空気に含まれる水分を吸着して加温乾燥空気を生成する吸着部と、前記吸着部に吸着された前記水分を蒸発させて冷却加湿空気を生成する加温部と、を備え、前記熱交換器は、前記加温乾燥空気又は前記冷却加湿空気と前記流体との間で熱交換して車室冷房用空気又は車室暖房用空気を生成する。
【0007】
本実施形態によると、吸着部によって水分含有空気に含有される水分を吸着して加温乾燥空気が生成され、加温部によって吸着部に吸着された水分を蒸発させて冷却加湿空気が生成される。また、熱交換器によって加温乾燥空気又は冷却加湿空気が流体との間で熱交換されることで、車室冷房用空気又は車室暖房用空気が生成される。これにより、車室冷房の際に、加温乾燥空気を冷却して車室冷房空気を生成でき、車室暖房の際に、冷却加湿空気を加温して車室暖房空気を生成できる。さらに、車室暖房の際に、加温乾燥空気を加温して車室暖房空気を生成することもでき、除湿暖房が可能となる。その結果、多様な調湿が可能な車両空調システムを提供することができた。
【0008】
また、熱交換器、吸着部及び加温部にて車室冷暖房用空気を生成するので、従来のような圧縮式空調機に比べて簡素な構成にすることができる。これにより、車両空調システムは、小型化及び低コスト化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図5】その他の実施形態に係る車両用空調システムの回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る車両空調システムは、車室内の冷暖房を行うことができるよう構成される。以下、本実施形態の車両空調システムAについて説明する。ただし、車両空調システムAは、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0011】
図1は、車両空調システムAの回路構成を示した図である。車両空調システムAは、車両に搭載され、
図1に示されるように、冷媒モジュールB、冷却液モジュールC、及びHVAC(Heating, Ventilation, and Air Conditioning)ユニット(「空調ユニット」の一例)Dを備えている。冷媒モジュールBは冷媒流路B1が設けられ、冷媒マニホールドとして構成されている。また、冷却液モジュールCは冷却液流路C1が設けられ、冷却液マニホールドとして構成されている。ここで、マニホールドは、冷却液流路C1や冷媒流路B1が彫られたハウジング本体にプレート部材を積層して封止した流路ハウジングである。流路ハウジングはアルミニウムを含む熱伝導率の高い金属材料で形成されている。
【0012】
冷媒流路B1にはハイドロフルオロカーボン(HFC)やハイドロフルオロオレフィン(HFO)等の冷媒が流通し、冷却液流路C1にはエチレングリコール等を主成分とした不凍液やロングライフクーラント等の冷却水、又はパラフィン系等の絶縁油で構成される冷却液が流通する。
図2には、車両空調システムAにおける冷媒モジュールB、冷却液モジュールC、及びHVACユニットDの配置が示される。
図2の(A)は平面図であり、
図2の(B)は側面図である。また、
図2では、車両空調システムAを車両に搭載した状態における車両の進行方向前側をF、進行方向後側をRとして示している。冷却液モジュールCには、冷却液の導入及び排出がされるポートPO1,PO2が設けられている。
【0013】
図1及び
図2に示されるように、冷媒流路B1は水冷コンデンサ12とチラー14とに亘って冷媒を循環させる。冷媒モジュールBは、アキュムレータ10と、コンプレッサ11と、水冷コンデンサ12(「凝縮器」の一例)と、膨張弁13と、チラー14(「蒸発器」の一例)との間で冷媒流路B1を介して冷媒を流通可能に構成される。
【0014】
アキュムレータ10は、液体状の冷媒が貯留され、貯留している冷媒の気液分離を行う。アキュムレータ10によって分離された気体状の冷媒は、第1冷媒路21を流通してコンプレッサ11に送られる。
【0015】
コンプレッサ11は、アキュムレータ10からの冷媒を圧縮する。これにより、冷媒が高温圧縮気体となる。コンプレッサ11は、この高温圧縮気体となった冷媒を、第2冷媒路22を介して水冷コンデンサ12に送る。したがって、コンプレッサ11は、アキュムレータ10からの冷媒を水冷コンデンサ12に圧送する。
【0016】
水冷コンデンサ12は、コンプレッサ11を経た冷媒が流通する。水冷コンデンサ12には、第1冷却液流路31から冷却液が流入し、第2冷却液流路32から冷却液が流出するように構成されている。第1冷却液流路31及び第2冷却液流路32は、第2冷媒路22とは別体で構成される。第2冷媒路22からの冷媒は、冷却液に熱を奪われることにより凝縮されて液化する。液化した冷媒は、第3冷媒路23に送出される。この第3冷媒路23も、第2冷媒路22と同様に、第1冷却液流路31及び第2冷却液流路32とは別体で構成される。
【0017】
膨張弁13では、第3冷媒路23を流通する冷媒(液化された冷媒)が膨張されて低温、低圧の霧状にされる。霧状の冷媒は、第4冷媒路24に送出される。
【0018】
チラー14は、第4冷媒路24を介して冷媒が流通する。第4冷媒路24には、上述したように、膨張弁13で膨張されて、低温、低圧の霧状にされた冷媒が流通し、このような冷媒がチラー14に送られる。チラー14には、第3冷却液流路33から、熱交換器52において熱交換が行われた冷却液が流入し、第4冷却液流路34から冷却液が流出するように構成されている。第3冷却液流路33及び第4冷却液流路34は、第4冷媒路24とは別体で構成される。チラー14では、霧状にされた冷媒が冷却液の熱を奪って蒸発する。蒸発して気化された冷媒は、第5冷媒路25を通ってアキュムレータ10に流通する。
【0019】
また、冷却液流路C1は、水冷コンデンサ12及びチラー14にて冷媒と熱交換する冷却液が流通する。冷却液モジュールCは、第1ポンプP1、及び第2ポンプP2により、水冷コンデンサ12と、チラー14と、切換弁42と、ラジエータ43と、熱交換器52との間で冷却液流路C1を介して冷却液を流通可能に構成される。
【0020】
水冷コンデンサ12には、上述したように、第1冷却液流路31から冷却液が流入し、第2冷却液流路32から冷却液が流出するように構成されている。第1冷却液流路31には第1ポンプP1が設けられており、この第1ポンプP1により冷却液が送出される。
【0021】
切換弁42は、水冷コンデンサ12及びチラー14から冷却液が流通可能に構成されている。切換弁42には、水冷コンデンサ12から第2冷却液流路32を介して冷却液が送られ、チラー14から第4冷却液流路34を介して冷却液が送られる。第4冷却液流路34には第2ポンプP2が設けられており、この第2ポンプP2によりチラー14から切換弁42に冷却液が送られる。切換弁42は、冷却液を第5冷却液流路35及び第6冷却液流路36に送出可能に構成される。
【0022】
切換弁42から第5冷却液流路35に送出された冷却液は、熱交換器52に流通する。熱交換器52に送られた冷却液は、第1冷却液流路31を介して水冷コンデンサ12に送出可能に構成されるとともに、第3冷却液流路33を介してチラー14に送出可能に構成される。
【0023】
また、切換弁42から第6冷却液流路36に送出された冷却液は、ラジエータ43に流通する。ラジエータ43では、外気と熱交換が行われ、冷却液が冷却される。熱交換された後の冷却液は、第7冷却液流路37を介して第1冷却液流路31に送出される。
【0024】
HVACユニットDは、ブロア51、熱交換器52、及びデシカント53(乾燥材、「吸着部」の一例)、電気ヒータ54(「加温部」の一例)を含んで構成される。ブロア51は、外気を吸引し、吸引した外気を熱交換器52に送る。
【0025】
熱交換器52は、車室内の冷暖房のために、空気と冷却液との間で熱交換を行う。空気とは、ブロア51によって吸引された外気である。また、熱交換器52には、上述したように第5冷却液流路35を介して冷却液が導入され、この冷却液は第1冷却液流路31及び第3冷却液流路33の一方又は双方に送出される。したがって、熱交換器52において、ブロア51から送られた外気と第5冷却液流路35を介して供給される冷却液との間で熱交換が行われ、熱交換がされた後の空気が車室内に導入される。具体的には、熱交換器52において外気が冷却された場合には、車室内に冷風が導入され、熱交換器52において外気が加温された場合には、車室内に温風が導入される。これにより、車室内を冷房したり、暖房したりすることが可能となる。
【0026】
デシカント53は、水分含有空気に含まれる水分を吸着して加温乾燥空気を生成する。デシカント53は、水分を吸着する吸着部として機能し、例えばゼオライト、シリカゲル、活性炭等の吸着剤を用いて構成することが可能である。デシカント53は、ブロア51と熱交換器52との間に設けられる。したがって、ブロア51から送られた外気は、デシカント53を経て熱交換器52に排出される。
【0027】
電気ヒータ54は、デシカント53に吸着された水分を蒸発させて冷却加湿空気を生成する。電気ヒータ54は、デシカント53に吸着された水分を蒸発させる加温部として機能する。
図1に示されるように、電気ヒータ54は、例えばデシカント53に組付けられている。この場合には、電気ヒータ54によってデシカント53が加熱されることで、デシカント53に吸着された水分が蒸発する。電気ヒータ54は、デシカント53に組付けずに、デシカント53の上流側であってデシカント53から離間した位置に設けてもよい。この場合には、電気ヒータ54によって加熱された空気がデシカント53に供給されることで、デシカント53に吸着された水分が蒸発する。こうして、デシカント53に吸着された水分が蒸発することで、デシカント53に供給された空気が蒸発した水分によって加湿されて冷却加湿空気が生成される。デシカント53に吸着された水分を蒸発させる加温部は、電気ヒータ54以外の空気加熱装置であってもよい。
【0028】
デシカント53に水分が吸着していない状態で、ブロア51からデシカント53に水分含有空気が供給されると、デシカント53は水分含有空気中の水分を吸着して水分含有空気の湿度を低下させる。これにより、デシカント53に供給された水分含有空気は、デシカント53で除湿された乾燥空気になって熱交換器52に排出される。
【0029】
一方、デシカント53に水分が吸着されている状態で、デシカント53が電気ヒータ54によって加熱されるか、又は、ブロア51からの高温空気がデシカント53に供給されると、デシカント53は吸着している水分を脱離し、脱離した水分によって空気が加湿される。これにより、デシカント53に供給された空気は、デシカント53で加湿された湿潤空気になって熱交換器52に排出される。
【0030】
熱交換器52は、加温乾燥空気又は冷却加湿空気と冷却液との間で熱交換して車室冷房用空気又は車室暖房用空気を生成する。したがって、熱交換器52では、乾燥空気と第5冷却液流路35を介して導入された冷却液との間で熱交換して車室冷房用空気が生成される。また、熱交換器52では、加湿空気と第5冷却液流路35を介して導入された冷却液との間で熱交換して車室暖房用空気が生成される。さらに、熱交換器52では、乾燥空気と第5冷却液流路35を介して導入された冷却液との間で熱交換して車室暖房用空気を生成することもできる。この場合には、例えば冬季等のデフロスター機能の使用の際に除湿暖房空気を車室内に供給できる。このような車室冷房用空気や車室暖房用空気が車室内に導入されることで、車室内の湿度を調節することが可能となる。
【0031】
ここで、上述したように、切換弁42には、水冷コンデンサ12から冷却液とチラー14からの冷却液とが流通可能に構成されている。水冷コンデンサ12から冷却液とチラー14からの冷却液とを比較した場合、相対的に水冷コンデンサ12から冷却液の温度は、チラー14からの冷却液の温度よりも高い。したがって、車室内を暖房する場合には、切換弁42は水冷コンデンサ12に冷却液を循環させる第一状態にされ、車室内を冷房する場合には、切換弁42はチラー14に冷却液を循環させる第二状態にされる。
【0032】
本実施形態では、切換弁42は、第一状態及び第二状態を同時に実現するように開度を変更可能に構成されている。このため、切換弁42において、水冷コンデンサ12からの相対的に温度が高い冷却液と、チラー14からの相対的に温度が低い冷却液とを混合して第5冷却液流路35に送出することが可能である。
【0033】
本実施形態では、
図2に示されるように、冷媒モジュールB及び冷却液モジュールCが、HVACユニットDと一体化されている。ここで、「一体化」とは、HVACユニットDに対して冷媒モジュールB及び冷却液モジュールCがボルト等で固定されている状態を意味する。なお、この「一体化」には、HVACユニットD、冷媒モジュールB、及び冷却液モジュールCの材質を一緒にして、同一ケースを形成することも含まれる。具体的には、
図2の(A)に示されるように、HVACユニットDを車両に搭載した状態において、冷媒モジュールBはHVACユニットDにおける車両の進行方向前側に設けられている。これにより、
図2の(A)及び(B)に示されるように、水冷コンデンサ12や膨張弁13やチラー14を車両の前方に配置することができるので、車両の走行に伴って水冷コンデンサ12や膨張弁13やチラー14に走行風を吹き付けることが可能となる。したがって、水冷コンデンサ12や膨張弁13やチラー14の結露を防止することが可能となる。
【0034】
また、
図2の(B)に示されるように、HVACユニットDを車両に搭載した状態において、冷却液モジュールCはHVACユニットDにおける車両の左側面に設けられている。これにより、
図2の(B)に示されるように、ポートPO1,PO2を設けて冷却液モジュールCにおける冷却液の導入及び送出ルートを容易に確保することが可能となる。また、第1ポンプP1や第2ポンプP2や切換弁42をHVACユニットDの側面に配置し、メンテナンス性を向上することが可能となる。
【0035】
〔その他の実施形態〕
次に、車両空調システムAのその他の実施形態について説明する。
【0036】
上記の実施形態では、車両空調システムAが、HVACユニットDに1つの熱交換器52が配置されて構成される例を示した。これに代えて、
図5に示されるように、車両空調システムAは、HVACユニットDに、2つの熱交換器52A,52Bを配置して構成してもよい。
図5に示す例では、HVACユニットDには、熱交換器52が、チラー14との間で熱交換を行う第1熱交換器52Aと、水冷コンデンサ12との間で熱交換を行う第2熱交換器52Bとによって構成されている。第3冷却液流路33には、第3ポンプP3が設けられており、この第3ポンプP3によりチラー14から第1熱交換器52Aに冷却液が送られる。熱交換器52A,52Bは、いずれもデシカント53の下流側に向けて並設されており、下流側に向けて第1熱交換器52A、第2熱交換器52Bの順で配置されている。熱交換器52A,52Bは、一方がデシカント53の上流側に配置され、他方がデシカント53の下流側に配置されてもよい。
【0037】
上記実施形態では、車両空調システムAは、冷却液流路C1に、水冷コンデンサ12に冷却液を循環させる第一状態と、チラー14に冷却液を循環させる第二状態とに切換可能な切換弁42が配置されているとして説明した。しかしながら、車両空調システムAは切換弁42を備えずに構成することも可能である。この場合には、水冷コンデンサ12と熱交換器52との間で冷却液を循環させる流路と、チラー14と熱交換器52との間で冷却液を循環させる流路とを、夫々別体で(独立して)設け、更に、夫々の流路に開閉弁を設けるとよい。このような開閉弁を、夫々開状態と閉状態とに切り換えることにより、熱交換器52に水冷コンデンサ12からの冷却液と、チラー14からの冷却液とを循環させることが可能である。また、水冷コンデンサ12からの冷却液と、チラー14からの冷却液とを同時に熱交換器52に流通させるように構成することも可能である。
【0038】
上記実施形態では、切換弁42は、第一状態及び第二状態を同時に実現するように開度を変更可能であるとして説明した。しかしながら、切換弁42は、第一状態及び第二状態を同時に実現しないように構成することも可能である。例えば、
図5に示される第1熱交換器52A及び第2熱交換器52Bに循環する冷却液の期間を変更すれば、空調温度を多段階に変更可能となる。
【0039】
上記実施形態では、冷却液流路C1を有する冷却液モジュールCが、熱交換器52を有し、車室内の冷暖房を行うHVACユニットDと一体化されているとして説明した。しかしながら、冷却液モジュールCがHVACユニットDと一体化しないで構成することも可能である。更に、上記実施形態では、冷媒流路B1を有する冷媒モジュールBが、熱交換器52を有し、車室内の冷暖房を行うHVACユニットDと一体化されているとして説明した。しかしながら、冷媒モジュールBがHVACユニットDと一体化しないで構成することも可能である。
【0040】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上述した実施形態では、下記の構成が想起される。
<1>車両空調システム(A)の1つの態様は、外気を吸引するブロア(51)と、外気と流体との間で熱交換し、外気を冷却又は加温可能な熱交換器(52)と、水分含有空気に含まれる水分を吸着して加温乾燥空気を生成する吸着部(53)と、吸着部(53)に吸着された水分を蒸発させて冷却加湿空気を生成する加温部(54)と、を備え、熱交換器(52)は、加温乾燥空気又は冷却加湿空気と流体との間で熱交換して車室冷房用空気又は車室暖房用空気を生成する。
【0041】
本実施形態によると、吸着部(53)によって水分含有空気に含有される水分を吸着して加温乾燥空気が生成され、加温部(54)によって吸着部に吸着された水分を蒸発させて冷却加湿空気が生成される。また、熱交換器(52)によって加温乾燥空気又は冷却加湿空気が流体との間で熱交換されることで、車室冷房用空気又は車室暖房用空気が生成される。したがって、車室冷房の際に、加温乾燥空気を冷却して車室冷房空気を生成でき、車室暖房の際に、冷却加湿空気を加温して車室暖房空気を生成できる。さらに、車室暖房の際に、加温乾燥空気を加温して車室暖房空気を生成することができ、除湿暖房が可能となる。その結果、多様な調湿が可能な車両空調システム(A)を提供することができた。
【0042】
また、熱交換器(52)が、熱交換器(52)、吸着部(53)及び加温部(54)にて車室冷暖房用空気を生成するので、従来のような圧縮式空調機に比べて簡素な構成にすることができる。これにより、車両空調システム(A)は、小型化及び低コスト化を実現できる。
【0043】
<2>流体は、凝縮器(12)及び蒸発器(14)の間を循環する冷媒と熱交換する冷却液であると好適である。
【0044】
本構成によれば、車室内の暖房時は、凝縮器(12)を流通する冷媒によって加熱された冷却液を熱交換器(52)に流通させて外気との熱交換を行い、車室内の冷房時は、蒸発器(14)を流通する冷媒によって冷却された冷却液を熱交換器(52)に流通させて外気との熱交換を行うことができる。このように、熱交換器(52)を外気と冷却液との間で熱交換する構成にすることで、熱交換器(52)を簡素に構成できる。これにより、車両空調システム(A)は、小型化及び低コスト化を実現できる。
【0045】
<3>冷却液が流通する冷却液流路(C1)には、凝縮器(12)に冷却液を循環させる第一状態と、蒸発器(14)に冷却液を循環させる第二状態とに切換可能な切換弁(42)が配置されていると好適である。
【0046】
本構成によれば、車室内の暖房時は、切換弁(42)を第一状態に切り換えることで、凝縮器(12)で温かくなった冷却液を熱交換器(52)に流通することができ、車室内の冷房時は、切換弁(42)を第二状態に切り換えることで、蒸発器(14)で冷たくなった冷却液を熱交換器(52)に流通することできる。このように、切換弁(42)により、熱交換器(52)に流通させる冷却液を容易に切り換えることが可能である。
【0047】
<4>ブロア(51)、熱交換器(52)、吸着部(53)、及び加温部(54)を有する空調ユニット(D)と、冷却液を流通させる冷却液流路(C1)を有する冷却液モジュール(C)と、を備え、空調ユニット(D)及び冷却液モジュール(C)が一体化されて構成されていると好適である。
【0048】
本構成によれば、空調ユニット(D)と冷却液モジュール(C)とが一体化されているので、冷却液モジュール(C)からの冷却液を、空調ユニット(D)の熱交換器(52)への流路の引き回しを容易に行うことができる。また、冷却液モジュール(C)から空調ユニット(D)への流路を短くできるので、車両空調システム(A)の小型化、及び低コスト化にも寄与できる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、車両空調システムに広く利用可能である。
【符号の説明】
【0050】
51:ブロア、52:熱交換器、52A:第1熱交換器、52B:第2熱交換器、53:デシカント(吸着部)、54:電気ヒータ(加温部)、A:車両空調システム、B:冷媒モジュール、B1:冷媒流路、C:冷却液モジュール、C1:冷却液流路、D:HVACユニット(空調ユニット)