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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178714
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】放射線検出モジュール
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/20 20060101AFI20241218BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20241218BHJP
   H01L 27/144 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
G01T1/20 L
G01T1/20 E
G01T1/20 G
H01L27/146 D
H01L27/144 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097076
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】503382542
【氏名又は名称】キヤノン電子管デバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榛葉 勇一
【テーマコード(参考)】
2G188
4M118
【Fターム(参考)】
2G188AA03
2G188BB02
2G188CC15
2G188CC17
2G188CC19
2G188CC22
2G188DD05
2G188DD11
2G188DD34
2G188DD36
2G188DD41
2G188DD42
2G188DD44
2G188DD47
2G188EE07
2G188EE32
4M118AA10
4M118AB01
4M118BA05
4M118CA02
4M118CB11
4M118FB03
4M118FB09
4M118FB13
4M118GA08
4M118HA02
4M118HA25
4M118HA26
4M118HA30
4M118HA32
(57)【要約】
【課題】 狭額縁化が可能な放射線検出モジュールを提供する。
【解決手段】 放射線検出モジュールは、光電変換基板2と、シンチレータ層5と、配線基板と、防湿カバー7と、封止部8と、を備えている。封止部8は、光電変換基板2と防湿カバー7との間と、上記配線基板と防湿カバー7との間と、に位置している。封止部8は、非検出領域NDAに枠状に設けられ、光電変換基板2及び防湿カバー7とともにシンチレータ層5を覆っている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出領域に位置した光電変換素子と、前記検出領域より外側の非検出領域に位置し前記光電変換素子に電気的に接続されたパッドと、を有する光電変換基板と、
前記光電変換基板の上に設けられ前記検出領域に位置したシンチレータ層と、
前記光電変換基板の前記非検出領域に固定され前記パッドに電気的に接続された配線基板と、
前記光電変換基板及び前記シンチレータ層の上方に設けられ前記検出領域及び前記非検出領域に位置した防湿カバーと、
前記光電変換基板と前記防湿カバーとの間と前記配線基板と前記防湿カバーとの間とに位置し前記非検出領域に枠状に設けられ前記光電変換基板及び前記防湿カバーとともに前記シンチレータ層を覆った封止部と、を備える、
放射線検出モジュール。
【請求項2】
前記封止部は、ポリエチレン及びポリプロピレンの少なくとも一方である熱可塑性樹脂を含む材料で形成されている、
請求項1に記載の放射線検出モジュール。
【請求項3】
前記防湿カバーは、金属層を含むシート、無機絶縁層を含むシート、樹脂層と前記金属層とが積層された第1積層シート、及び前記樹脂層と前記無機絶縁層とが積層された第2積層シートの何れか一である、
請求項1に記載の放射線検出モジュール。
【請求項4】
防湿部をさらに備え、
前記光電変換基板は、
前記検出領域及び前記非検出領域を延在し前記光電変換素子及び前記パッドに電気的に接続され上面と前記検出領域から最も離れて位置した端面とを含んでいる金属配線と、
前記金属配線の前記上面を覆った絶縁層と、をさらに有し、
前記パッドは、前記絶縁層の上方に設けられ、
前記端面は、前記絶縁層の外側に露出し、
前記防湿部は、前記端面を覆っている、
請求項1に記載の放射線検出モジュール。
【請求項5】
前記パッドと前記配線基板との間に位置し前記パッドを含む前記光電変換基板と前記配線基板とに接合され前記パッドと前記配線基板とに電気的に接続された接続材をさらに備え、
前記防湿部は、前記光電変換基板、前記配線基板、及び前記封止部とともに前記接続材を覆っている、
請求項4に記載の放射線検出モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、放射線検出モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線検出器として、例えばX線検出器(X線平面検出器)が知られている。X線検出器のX線検出モジュールは、X線を蛍光に変換するシンチレータ層と、蛍光を電気信号に変換する光電変換基板と、を備えている。シンチレータ層は、例えばヨウ化セシウム(CsI)を含んでいる。また、蛍光の利用効率を高めて感度特性を改善するために、X線検出モジュールは、シンチレータ層の上に設けられた光反射層をさらに備える場合もある。
【0003】
ここで、水蒸気などに起因する特性の劣化を抑制するために、シンチレータ層と光反射層を、外部雰囲気から隔離する必要がある。そこで、高い防湿性能が得られる構造として、シンチレータ層と光反射層をハット形状の防湿カバーで覆い、防湿カバーの周縁部を光電変換基板に接着する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-189101号公報
【特許文献2】特開2021-105591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本実施形態は、狭額縁化が可能な放射線検出モジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係る放射線検出モジュールは、
検出領域に位置した光電変換素子と、前記検出領域より外側の非検出領域に位置し前記光電変換素子に電気的に接続されたパッドと、を有する光電変換基板と、
前記光電変換基板の上に設けられ前記検出領域に位置したシンチレータ層と、
前記光電変換基板の前記非検出領域に固定され前記パッドに電気的に接続された配線基板と、
前記光電変換基板及び前記シンチレータ層の上方に設けられ前記検出領域及び前記非検出領域に位置した防湿カバーと、
前記光電変換基板と前記防湿カバーとの間と前記配線基板と前記防湿カバーとの間とに位置し前記非検出領域に枠状に設けられ前記光電変換基板及び前記防湿カバーとともに前記シンチレータ層を覆った封止部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一実施形態に係るX線検出器を示す断面図である。
図2図2は、上記X線検出器の支持基板、X線検出パネル、回路基板、複数のFPC、及び画像伝送部を示す斜視図である。
図3図3は、上記X線検出パネルの一部を示す拡大断面図である。
図4図4は、上記X線検出パネル、回路基板、及び複数のFPCを示す回路図である。
図5図5は、上記X線検出パネルを示す平面図であり、パッドと封止部との位置関係等を説明するための図である。
図6図6は、図5に示したX線検出パネルを線VI-VIに沿って示す断面図であり、FPC及び接続材を併せて示す図である。
図7図7は、上記X線検出パネルの検出領域及び非検出領域を示す拡大断面図であり、FPC及び接続材を併せて示す図である。
図8図8は、図7に示したX線検出パネル、FPC、及び接続材を線VIII-VIIIに沿って示す拡大断面図である。
図9図9は、比較例に係るX線検出パネル、FPC、接続材、及び防湿部を示す断面図である。
図10図10は、上記実施形態の変形例1に係るX線検出パネル、FPC、接続材、及び防湿部を示す断面図である。
図11図11は、上記実施形態の変形例2に係る上記X線検出パネルの検出領域及び非検出領域を示す拡大断面図であり、FPC、接続材、及び防湿部を併せて示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の各実施形態、各変形例、及び比較例について、図面を参照しながら説明する。
(一実施形態)
まず、一実施形態に係るX線検出器について詳細に説明する。図1は、本実施形態に係るX線検出器1を示す断面図である。X線検出器1は、X線画像検出器であり、X線検出パネルを利用するX線平面検出器である。X線検出器1は、例えば、一般医療用途等に用いられている。
【0009】
図1に示すように、X線検出器1は、X線検出モジュール10、支持基板12、スペーサ9a,9b,9c,9d、筐体51、入射窓52等を備えている。X線検出モジュール10は、X線検出パネルPNL、回路基板11、FPC(フレキシブルプリント基板)2e1等を備えている。X線検出パネルPNLは、支持基板12と入射窓52との間に位置している。X線検出パネルPNLは、入射窓52と対向した防湿カバー7を備えている。
【0010】
入射窓52は、筐体51の開口に取付けられている。入射窓52はX線を透過させる。そのため、X線は入射窓52を透過してX線検出パネルPNLに入射される。入射窓52は、板状に形成され、筐体51内部を保護する機能を有している。入射窓52は、X線吸収率の低い材料で薄く形成することが望ましい。これにより、入射窓52で生じる、X線の散乱と、X線量の減衰とを低減することができる。そして、薄くて軽いX線検出器1を実現することができる。
X線検出モジュール10、支持基板12等は、筐体51及び入射窓52で囲まれた空間の内部に収容されている。
【0011】
X線検出パネルPNLは、薄い部材を積層して構成されているため、軽く機械的強度の低いものである。このため、X線検出パネルPNLは、粘着シートを介して支持基板12の平坦な一面に固定されている。支持基板12は、例えばアルミニウム合金で板状に形成され、X線検出パネルPNLを安定して保持するために必要な強度を有している。これにより、X線検出器1に外部から振動や衝撃が加わった際におけるX線検出パネルPNLの破損を抑制することができる。
【0012】
支持基板12の他面には、スペーサ9a,9bを介して回路基板11が固定されている。電気絶縁材料で形成されたスペーサ9a,9bを使用することで、主に金属から構成される支持基板12から回路基板11までの電気的絶縁距離を保持することができる。
筐体51の内面には、スペーサ9c,9dを介して回路基板11が固定されている。電気絶縁材料で形成されたスペーサ9c,9dを使用することで、主に金属から構成される筐体51から回路基板11までの電気的絶縁距離を保持することができる。筐体51は、回路基板11及びスペーサ9a,9b,9c,9dを介して支持基板12等を支持している。
【0013】
回路基板11にはFPC2e1に対応するコネクタが実装され、FPC2e1はコネクタを介して回路基板11に電気的に接続されている。FPC2e1とX線検出パネルPNLとの接続には、ACF(異方性導電フィルム)を利用した熱圧着法が用いられる。この方法により、X線検出パネルPNLの複数の微細なパッドと、FPC2e1の複数の微細なパッドとの電気的接続が確保され、FPC2e1がX線検出パネルPNLに物理的に固定される。なお、X線検出パネルPNLのパッドと、FPC2e1のパッドと、に関しては後述する。
【0014】
上記のように、回路基板11は、上記コネクタ、FPC2e1等を介してX線検出パネルPNLに電気的に接続されている。回路基板11は、X線検出パネルPNLを電気的に駆動し、かつ、X線検出パネルPNLからの出力信号を電気的に処理するものである。
【0015】
図2は、本実施形態に係るX線検出器1の支持基板12、X線検出パネルPNL、回路基板11、複数のFPC2e1,2e2、及び画像伝送部4を示す斜視図である。なお、図2には、X線検出器1の全ての部材を示していない。後述する封止部等、X線検出器1のいくつかの部材の図示は、図2において省略している。光電変換基板2に関して、検出領域(後述する検出領域DA)は示されているが、非検出領域(後述する非検出領域NDA)は示されていない。
【0016】
図2に示すように、X線検出パネルPNLは、光電変換基板2、シンチレータ層5等を備えている。光電変換基板2は、基材2a、複数の光電変換部2b、複数のゲート線(又は制御線)G1、複数のデータ線(又はシグナル線)T1等を有している。なお、光電変換部2b、ゲート線G1、データ線T1、及びFPC2e1,2e2の数、配置等は図2の例に限定されるものではない。FPC2e1,2e2は、それぞれ配線基板として機能している。
【0017】
複数のゲート線G1は、基材2aの上方に設けられ、第1方向としての行方向Xに延在し、第1方向に交差する第2方向としての列方向Yに所定の間隔をあけて並べられている。複数のデータ線T1は、基材2aの上方に設けられ、列方向Yに延在し、複数のゲート線G1と交差し、行方向Xに所定の間隔をあけて並べられている。
【0018】
複数の光電変換部2bは、基材2aの一方の面側に設けられている。光電変換部2bは、ゲート線G1とデータ線T1とにより区画された四角形状の領域に設けられている。1つの光電変換部2bは、X線画像の1つの画素に対応している。複数の光電変換部2bは、行方向X及び列方向Yにマトリクス状に並べられている。上記のことから、光電変換基板2は、アレイ基板である。
【0019】
各々の光電変換部2bは、光電変換素子である薄膜フォトダイオード15aと、検出スイッチング素子としてのTFT(薄膜トランジスタ)13aと、を有している。以下、薄膜フォトダイオード15aをTFD15aと言う。TFT13aは、基材2aの上方に設けられ、対応する一のゲート線G1と、対応する一のデータ線T1とに接続されている。TFD15aは、基材2aの上方に設けられ、TFT13aに電気的に接続されている。
【0020】
ゲート線G1は、FPC2e1を介して回路基板11に電気的に接続されている。回路基板11は、FPC2e1を介して複数のゲート線G1に制御信号S1を与える。データ線T1は、FPC2e2を介して回路基板11に電気的に接続されている。TFD15aによって変換された画像データ信号S2(光電変換部2bに蓄積された電荷)は、TFT13a、データ線T1、及びFPC2e2を介して回路基板11に伝送される。
【0021】
X線検出器1は、画像伝送部4を備えている。画像伝送部4は、配線4aを介して回路基板11に接続されている。なお、画像伝送部4は、回路基板11に組込まれてもよい。画像伝送部4は、図示しない複数のアナログ-デジタル変換器によりデジタル信号に変換された画像データの信号に基づいて、X線画像を生成する。生成されたX線画像のデータは、画像伝送部4から外部の機器に向けて出力される。
【0022】
図3は、本実施形態に係るX線検出パネルPNLの一部を示す拡大断面図である。
図3に示すように、光電変換基板2は、基材2a、複数の光電変換部2b、絶縁層21,22,23,24,25を有している。複数の光電変換部2bは、検出領域DAに位置している。各々の光電変換部2bは、TFD15aと、TFT13aと、を備えている。TFT13aは、ゲート電極GE、半導体層SC、ソース電極SE、及びドレイン電極DEを有している。TFD15aは、薄膜のフォトダイオードで構成されている。
【0023】
基材2aは、板状の形状を有し、絶縁材料で形成されている。上記絶縁材料としては、無アルカリガラスなどのガラスを挙げることができる。本実施形態において、基材2aは、ガラスで形成されているが、樹脂等の有機絶縁材料で形成されてもよい。基材2aの平面形状は、例えば四角形である。基材2aの厚みは、例えば0.5乃至0.7mmである。絶縁層21は、基材2aの上に設けられている。
【0024】
絶縁層21の上に、ゲート電極GEが形成されている。ゲート電極GEは、上記ゲート線G1に電気的に接続されている。絶縁層22は、絶縁層21及びゲート電極GEの上に設けられている。半導体層SCは、絶縁層22の上に設けられ、ゲート電極GEに対向している。半導体層SCは、非晶質半導体としての非晶質シリコン、多結晶半導体としての多結晶シリコン等の半導体材料で形成されている。
【0025】
絶縁層22及び半導体層SCの上に、ソース電極SE及びドレイン電極DEが設けられている。ゲート電極GE、ソース電極SE、ドレイン電極DE、上記ゲート線G1、及び上記データ線T1は、アルミニウムやクロムなどの低抵抗金属を用いて形成されている。
【0026】
ソース電極SEは、半導体層SCのソース領域に電気的に接続されている。また、ソース電極SEは、上記データ線T1に電気的に接続されている。ドレイン電極DEは、半導体層SCのドレイン領域に電気的に接続されている。
【0027】
絶縁層23は、絶縁層22、半導体層SC、ソース電極SE、及びドレイン電極DEの上に設けられている。導電層CLは、絶縁層23の上方に形成され、ドレイン電極DEに電気的に接続されている。TFD15aは、導電層CLの上に形成され、導電層CLに電気的に接続されている。TFD15aは、成膜工程及びドライエッチング法を用いたパターニング工程を経て形成されている。
【0028】
絶縁層24は、絶縁層23、導電層CL、及びTFD15aの上に設けられている。バイアス線BL1は、絶縁層24の上に設けられ、絶縁層24に形成されたコンタクトホールを通りTFD15aに接続されている。絶縁層25は、絶縁層24及びバイアス線BL1の上に設けられている。
【0029】
絶縁層21,22,23,24,25は、無機絶縁材料、有機絶縁材料等の絶縁材料で形成されている。無機絶縁材料としては、酸化物絶縁材料、窒化物絶縁材料、及び酸窒化物絶縁材料を挙げることができる。有機絶縁材料としては樹脂を挙げることができる。
【0030】
シンチレータ層5は、光電変換基板2(複数の光電変換部2b)の上に設けられている。シンチレータ層5は、少なくとも検出領域DAに位置し、複数の光電変換部2bの上方を覆っている。シンチレータ層5は、入射されるX線を光(蛍光)に変換するように構成されている。
【0031】
なお、TFD15aは、シンチレータ層5から入射される光を電荷に変換する。変換された電荷はTFD15aに蓄積される。TFT13aは、TFD15aへの蓄電及びTFD15aからの放電を切替えることができる。なお、TFD15aの自己容量が不十分である場合、光電変換基板2はコンデンサ(蓄積キャパシタ)をさらに有し、TFD15aで変換された電荷をコンデンサに蓄積してもよい。
【0032】
シンチレータ層5は、タリウム賦活ヨウ化セシウム(CsI:Tl)で形成されている。真空蒸着法を用いてシンチレータ層5を形成すれば、複数の柱状結晶の集合体からなるシンチレータ層5が得られる。シンチレータ層5の厚みは、例えば、600μmである。シンチレータ層5の最表面において、シンチレータ層5の柱状結晶の太さは、8乃至12μmである。
【0033】
シンチレータ層5を形成する材料は、CsI:Tlに限定されるものではない。シンチレータ層5は、タリウム賦活ヨウ化ナトリウム(NaI:Tl)、ナトリウム賦活ヨウ化セシウム(CsI:Na)、ユーロピウム賦活臭化セシウム(CsBr:Eu)、ヨウ化ナトリウム(NaI)等で形成されてもよい。
【0034】
なお、真空蒸着法を用いてシンチレータ層5を形成する際には、開口を有するマスクが用いられる。この場合、光電変換基板2上の開口に対峙する領域にシンチレータ層5が形成される。また、蒸着によるシンチレータ材は、マスクの表面にも堆積する。そして、シンチレータ材は、マスクの開口の近傍にも堆積し、開口の内部に徐々に張り出すように結晶が成長する。マスクから開口の内部に結晶が張り出すと、開口の近傍において、光電変換基板2へのシンチレータ材の蒸着が抑制される。そのため、図2に示したように、シンチレータ層5の周縁近傍は、外側になるに従い厚みが漸減している。
【0035】
又は、シンチレータ層5は、マトリクス状に並べられ、光電変換部2bに一対一で設けられ、それぞれ四角柱状の形状を有する複数のシンチレータ部を有してもよい。そのようなシンチレータ層5を形成する際、酸硫化ガドリニウム(GdS)蛍光体粒子をバインダ材と混合したシンチレータ材を、光電変換基板2上に塗布し、シンチレータ材を焼成して硬化させる。その後、ダイサによりダイシングするなどし、シンチレータ材に格子状の溝部を形成する。上記の場合、複数のシンチレータ部の間には、空気又は酸化防止用の窒素(N)等の不活性ガスが封入される。又は、複数のシンチレータ部の間の空間は、大気圧より減圧された空間に設定されてもよい。
【0036】
本実施形態において、X線検出パネルPNLは、光反射層6をさらに備えている。光反射層6は、シンチレータ層5の上に設けられている。言い換えると、光反射層6は、シンチレータ層5のX線の入射側に設けられている。光反射層6は、少なくとも検出領域DAに位置し、シンチレータ層5の上面を覆っている。光反射層6は、光(蛍光)の利用効率を高めて感度特性の向上を図るために設けられている。すなわち、光反射層6は、シンチレータ層5において生じた光のうち、光電変換部2bが設けられた側とは反対側に向かう光を反射させて、光電変換部2bに向かうようにする。ただし、光反射層6は、必ずしも必要ではなく、X線検出パネルPNLに求められる感度特性などに応じて設ければよい。
【0037】
例えば、酸化チタン(TiO)等からなる光散乱性粒子と、樹脂と、溶媒とを混合した塗布材料をシンチレータ層5上に塗布し、続いて塗布材料を乾燥することで光反射層6を形成することができる。
【0038】
なお、光反射層6の構造及び光反射層6の製造方法は、上記の例に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、銀合金やアルミニウムなどの光反射率の高い金属からなる層をシンチレータ層5上に成膜することで光反射層6を形成してもよい。又は、表面が銀合金やアルミニウムなどの光反射率の高い金属層を含むシートや、光散乱性粒子を含む樹脂シート等をシンチレータ層5の上に設けることで光反射層6を形成してもよい。
【0039】
なお、ペースト状の塗布材料をシンチレータ層5の上に塗布し、上記塗布材料を乾燥する場合は、乾燥に伴い塗布材料が収縮するので、シンチレータ層5に引っ張り応力が加わり、シンチレータ層5が光電変換基板2から剥離する場合がある。そのため、シート状の光反射層6を、シンチレータ層5の上に設けることが好ましい。この場合、光反射層6を、例えば、両面テープなどを用いて、シンチレータ層5の上に接合することもできるが、光反射層6をシンチレータ層5の上に載置する方が好ましい。シート状の光反射層6をシンチレータ層5の上に載置すれば、光反射層6の膨張または収縮に起因した、光電変換基板2からシンチレータ層5の剥離を容易に抑制することができる。
【0040】
防湿カバー(防湿シート)7は、シンチレータ層5及び光反射層6を覆っている。防湿カバー7は、空気中に含まれる水分により、光反射層6の特性やシンチレータ層5の特性が劣化するのを抑制するために設けられている。防湿カバー7は、シンチレータ層5の露出部分を完全に覆っている。防湿カバー7は光反射層6等との間に隙間を空けてもよいし、防湿カバー7は光反射層6等と接触してもよい。
【0041】
防湿カバー7は、金属を含むシートで形成されている。上記金属としては、アルミニウムを含む金属、銅を含む金属、マグネシウムを含む金属、タングステンを含む金属、ステンレス、コバール等を挙げることができる。防湿カバー7が金属を含んでいる場合、防湿カバー7は、水分の透過を、防止したり、大幅に抑制したりすることができる。
【0042】
また、防湿カバー7は、樹脂層と金属層とが積層された積層シートで形成されてもよい。この場合、樹脂層は、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、テフロン(登録商標)、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、弾性ゴム等の材料で形成することができる。金属層は、例えば、前述した金属を含むものとすることができる。金属層は、スパッタリング法、ラミネート法等を用いて形成することができる。
【0043】
この場合、樹脂層より金属層をシンチレータ層5側に設けた方が好ましい。樹脂層により金属層を覆うことができるので、外力などにより金属層が受け得る損傷を抑制することができる。また、金属層が樹脂層よりもシンチレータ層5側)に設けられていれば、樹脂層を介した透湿によるシンチレータ層5の特性の劣化を抑制することができる。
【0044】
防湿カバー7としては、金属層を含むシート、無機絶縁層を含むシート、樹脂層と金属層とが積層された積層シート(第1積層シート)、及び樹脂層と無機絶縁層とが積層された積層シート(第2積層シート)を挙げることができる。上記のことから、防湿カバー7の無機層は、金属層にかぎらず、無機絶縁層であってもよい。又は、防湿カバー7は、金属層及び無機絶縁層の両方を有してもよい。無機絶縁層は、酸化珪素、酸化アルミニウム等を含む層で形成することができる。無機絶縁層は、スパッタリング法等を用いて形成することができる。
【0045】
金属層を含む積層シートで防湿カバー7を形成する場合には、例えば、樹脂層の厚みを金属層の厚みと実質的に同一とすることができる。防湿カバー7はこの様な厚みを持つ樹脂層を含んでいれば、防湿カバー7の剛性を増加させることができるので、製造工程中において、防湿カバー7におけるピンホールの発生を抑制することができる。なお、一般的に、樹脂の線膨張係数は、金属の線膨張係数よりも大きいため、樹脂層の厚みを大きくし過ぎると、光電変換基板2の反りが発生し易くなる。そのため、防湿カバー7において、樹脂層の厚みは、金属層の厚み以下である方が好ましい。
【0046】
また、防湿カバー7の厚みは、X線の吸収や剛性などを考慮して決定することができる。この場合、防湿カバー7の厚みを大きくする程、防湿カバー7に吸収されるX線の量が多くなる。一方、防湿カバー7の厚みを小さくする程、防湿カバー7は、剛性の低下を招き、破損し易くなる。
【0047】
例えば、防湿カバー7の厚みを10μm未満にすると、防湿カバー7の剛性が低くなりすぎて、外力などによるダメージにより防湿カバー7にピンホールが生じ、リークが発生する恐れがある。防湿カバー7の厚みが50μmを超えると、防湿カバー7の剛性が高くなり過ぎて、シンチレータ層5の上端の凹凸への追従性が悪くなる。そのため、前述した隙間やリークパスの確認が困難となる恐れがある。さらに、光電変換基板2の反りが発生し易くなる恐れがある。
【0048】
そのため、防湿カバー7の厚みは、10μm以上、50μm以下であることが好ましい。この場合、防湿カバー7は、例えば、厚みが10乃至50μmのアルミニウム箔とすることができる。アルミニウム箔の厚みが10乃至50μmであれば、厚みが100μmのアルミニウム箔に比べてX線の透過量を20乃至30%程度多くすることができる。また、厚みが10乃至50μmのアルミニウム箔とすれば、前述したリークの発生を抑制することができ、且つ、前述した隙間やリークパスの確認が容易となる。また、光電変換基板2の反りを抑制することができる。
【0049】
金属の熱膨張及び熱収縮を小さくするため、アルミニウムなどの金属の厚さは30μm以下である方が望ましい。すると、防湿カバー7は、10乃至30μmのアルミニウム箔を含んでいる方が望ましい。
【0050】
ここで、人体に対して大量のX線照射を行うと健康への悪影響があるため、人体へのX線照射量は必要最低限に抑えられる。そのため、医療に用いられるX線検出器1の場合には、照射されるX線の強度が低くなり、防湿カバー7を透過するX線の強度が非常に低くなる恐れがある。本実施形態に係る防湿カバー7は、厚みが10乃至50μmのシートであるため、照射されるX線の強度が低い場合であってもX線画像の撮影が可能となる。
【0051】
図4は、本実施形態に係るX線検出パネルPNL、回路基板11、及び複数のFPC2e1,2e2を示す回路図である。
図2乃至図4に示すように、回路基板11には、駆動回路としての読み出し回路11a及び検出回路としての信号検出回路11bが設けられている。なお、これらの回路を1つの基板に設けることもできるし、これらの回路を複数の基板に分けて設けることもできる。FPC2e1に設けられた複数の配線の他端は、読み出し回路11aとそれぞれ電気的に接続されている。FPC2e2に設けられた複数の配線の他端は、信号検出回路11bとそれぞれ電気的に接続されている。
【0052】
読み出し回路11aは、TFT13aのオン状態とオフ状態を切り替える。読み出し回路11aは、複数のゲートドライバ11aaと行選択回路11abとを有する。行選択回路11abには、X線検出器1の外部に設けられた図示しない画像処理部などから制御信号S1が入力される。行選択回路11abは、X線画像の走査方向に従って、対応するゲートドライバ11aaに制御信号S1を入力する。ゲートドライバ11aaは、対応するゲート線G1に制御信号S1を入力する。
【0053】
例えば、読み出し回路11aは、FPC2e1を介して、制御信号S1を複数のゲート線G1に順に入力する。ゲート線G1に入力された制御信号S1によりTFT13aがオン又はオフされ、TFT13aがオン状態となることで、TFD15aからの電荷(画像データ信号S2)がFPC2e2に出力される。
【0054】
信号検出回路11bは、複数の積分アンプ11ba、複数の選択回路11bb、及び複数のADコンバータ(Analog-to-digital converter)11bcを有している。1つの積分アンプ11baは、1つのデータ線T1と電気的に接続されている。積分アンプ11baは、複数の光電変換部2bからの画像データ信号S2を順に受信する。そして、積分アンプ11baは、一定時間内に流れる電流を積分し、その積分値に対応した電圧を選択回路11bbへ出力する。この様にすれば、所定の時間内にデータ線T1を流れる電流の値(電荷量)を電圧値に変換することが可能となる。すなわち、積分アンプ11baは、シンチレータ層5において発生した蛍光の強弱分布に対応した画像データ情報を、電位情報へと変換する。
【0055】
選択回路11bbは、読み出しを行う積分アンプ11baを選択し、電位情報へと変換された画像データ信号S2を順に読み出す。ADコンバータ11bcは、読み出された画像データ信号S2をデジタル信号に順に変換する。デジタル信号に変換された画像データ信号S2は、配線を介して画像処理部に入力される。なお、デジタル信号に変換された画像データ信号S2は、無線により画像処理部に送信されてもよい。画像処理部は、デジタル信号に変換された画像データ信号S2に基づいてX線画像を構成する。なお、画像処理部は、回路基板11と一体化することもできる。
【0056】
図5は、本実施形態に係るX線検出パネルPNLを示す平面図であり、パッド2d1,2d2と封止部8との位置関係等を説明するための図である。図5において、シンチレータ層5には右上がりの斜線を付し、封止部8には右下がりの斜線を付している。図6は、図5に示したX線検出パネルPNLを線VI-VIに沿って示す断面図であり、FPC2e1及び接続材ADを併せて示す図である。ここでは、図5及び図6を用いてX線検出パネルPNLの左側端部とFPC2e1の構造について説明するが、図5及び図6を用いた説明は、X線検出パネルPNLの下側端部とFPC2e2の構造にも適用可能である。
【0057】
図5及び図6に示すように、光電変換基板2は、検出領域DAと、検出領域DAより外側の非検出領域NDAと、を有している。本実施形態において、非検出領域NDAは枠状の形状を有している。基材2aは、検出領域DAと、非検出領域NDAとに位置している。
【0058】
シンチレータ層5は、少なくとも検出領域DAに位置している。光電変換基板2は、さらに複数のパッド2d1及び複数のパッド2d2を有している。パッド2d1及びパッド2d2は、非検出領域NDAに位置している。本実施形態において、複数のパッド2d1は基材2aの左辺に沿って並べられ、複数のパッド2d2は基材2aの下辺に沿って並べられている。なお、図5には複数のパッドを模式的に示しており、複数のパッドの個数、形状、サイズ、位置、及びピッチは、図5に示す例に限定されるものではない。
【0059】
1つのゲート線G1は、金属配線であり、検出領域DA及び非検出領域NDAを延在し、行方向Xに並んだ複数のTFD15aと複数のパッド2d1のうちの1つとに電気的に接続されている。詳しくは、各光電変換部2bにおいて、ゲート線G1は、TFT13aを介してTFD15aに電気的に接続されている。
【0060】
1つのデータ線T1は、金属配線であり、検出領域DA及び非検出領域NDAを延在し、列方向Yに並んだ複数のTFD15aと複数のパッド2d2のうちの1つとに電気的に接続されている。詳しくは、各光電変換部2bにおいて、データ線T1は、TFT13aを介してTFD15aに電気的に接続されている。
【0061】
FPC2e1は、光電変換基板2の非検出領域NDAに固定されパッド2d1に電気的に接続されている。FPC2e1は、接続材ADにより光電変換基板2に固定されている。接続材ADは、ACFで形成されている。接続材ADは、パッド2d1とFPC2e1との間に位置している。接続材ADは、パッド2d1を含む光電変換基板2とFPC2e1とに接合され、パッド2d1とFPC2e1とに電気的に接続されている。
【0062】
X線検出パネルPNLは、封止部8をさらに備えている。封止部8は、シンチレータ層5の周囲に設けられている。封止部8は、枠状の形状を有し、シンチレータ層5の周囲を連続的に延在している。封止部8は、光電変換基板2(例えば、上記絶縁層25)に接合されている。本実施形態において、封止部8は、平面視にて複数のパッド2d1及び複数のパッド2d2に重なっている。詳しくは、封止部8は、平面視にて複数のパッド2d1の全体及び複数のパッド2d2の全体に重なっている。
【0063】
防湿カバー7は、光電変換基板2、シンチレータ層5、及び光反射層6の上方に設けられている。防湿カバー7は、検出領域DA及び非検出領域NDAに位置している。防湿カバー7は、図5に示す平面図において、シンチレータ層5を完全に覆っている。図6に示すように、シンチレータ層5のうち光電変換基板2及び封止部8で覆われていない部分は、防湿カバー7で完全に覆われている。防湿カバー7は、封止部8に接合されている。防湿カバー7は、光電変換基板2及び封止部8とともにシンチレータ層5及び光反射層6を密封している。
【0064】
例えば、大気圧よりも減圧された環境において防湿カバー7と封止部8とを接合すれば、防湿カバー7を光反射層6等に接触させることができる。また、一般的に、シンチレータ層5には、その体積の10乃至40%程度の空隙が存在する。大気圧よりも減圧された環境において防湿カバー7と封止部8とを接合すれば、X線検出器1が航空機などで輸送された場合であっても防湿カバー7の破損を抑制することができる。上記のことから、封止部8と防湿カバー7とにより画された空間の圧力は、大気圧よりも低くした方が好ましい。
【0065】
封止部8は、光電変換基板2と防湿カバー7との間と、FPC2e1と防湿カバー7との間と、に位置している。封止部8は、非検出領域NDAに枠状に設けられている。封止部8は、光電変換基板2及び防湿カバー7とともにシンチレータ層5及び光反射層6を覆っている。
【0066】
封止部8は、熱可塑性樹脂を含む材料で形成されている。封止部8は、熱可塑性樹脂を主成分として含む材料で形成されている。封止部8は、100%熱可塑性樹脂で形成されてもよい。又は、封止部8は、熱可塑性樹脂に添加物が混在した材料で形成されてもよい。
【0067】
封止部8を形成する際、まず、加熱した材料(熱可塑性樹脂)を光電変換基板2の非検出領域NDA、FPC2e1等の上にディスペンサにて塗布する。その後、上記材料は、固化し、光電変換基板2、FPC2e1等に接着される。続いて、防湿カバー7を上記材料の外面に接触させる。次いで、上記材料を防湿カバー7の周縁近傍等とともに加熱する。これにより、上記材料が溶融し、防湿カバー7に接合された封止部8が形成される。
【0068】
ここで、例えば、封止部8が紫外線硬化型樹脂を主成分として含んでいれば、封止部8を、光電変換基板2、防湿カバー7等と接合する際に紫外線を照射する必要がある。ところが、防湿カバー7は金属などを含んでいるため紫外線を透過させることができない。また、防湿カバー7が紫外線を透過するものであると、紫外線によりシンチレータ層5が変色し、シンチレータ層5で発生した光(蛍光)がシンチレータ層5で吸収される恐れがある。
【0069】
これに対し、封止部8は、熱可塑性樹脂を含んでいるので、加熱により容易に接合を行うことができる。また、シンチレータ層5が紫外線により変色することもない。また、封止部8の加熱と冷却に要する時間は短くてすむので、製造時間の短縮、ひいては製造コストの低減を図ることができる。
【0070】
熱可塑性樹脂は、ナイロン、PET(Polyethyleneterephthalate)、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)、アクリル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン等を利用することができる。この場合、ポリエチレンの水蒸気透過率は0.068g・mm/day・mであり、ポリプロピレンの水蒸気透過率は0.04g・mm/day・mである。ポリエチレン及びポリプロピレンの水蒸気透過率は低い。そのため、封止部8は、ポリエチレン及びポリプロピレンの少なくとも一方である熱可塑性樹脂を含む材料で形成されている方が望ましい。封止部8が、ポリエチレン及びポリプロピレンの少なくとも一方を主成分として含んでいれば、封止部8の内部を透過してシンチレータ層5に到達する水分を大幅に少なくすることができる。
【0071】
図7は、X線検出パネルPNLの検出領域DA及び非検出領域NDAを示す拡大断面図であり、FPC2e1及び接続材ADを併せて示す図である。
図7に示すように、ゲート線G1は、金属配線である第1配線L1aと、金属配線である第2配線L1bと、を有している。第1配線L1aは、ゲート電極GEと同様、絶縁層21と絶縁層22との間に位置している。第1配線L1aは検出領域DAを延在し、第1配線L1aの端部は非検出領域NDAに位置している。第1配線L1a及びゲート電極GEは、同一材料で形成されている。
【0072】
第2配線L1bは、ソース電極SEと同様、絶縁層22と絶縁層23との間に位置している。第2配線L1bは、非検出領域NDAに設けられ、第1配線L1aと対向する領域からパッド2d1と対向する領域まで延在している。第2配線L1b及びソース電極SEは、同一材料で形成されている。第2配線L1bは、絶縁層22に形成されたコンタクトホールを通り第1配線L1aに接続されている。
【0073】
パッド2d1は、絶縁層23の上に形成され、絶縁層23に形成されたコンタクトホールを通り第2配線L1bに接続されている。パッド2d1は、金属で形成されている。本実施形態において、パッド2d1と対向する領域に絶縁層24及び絶縁層25は形成されていない。パッド2d1は、光電変換基板2の上面側に露出している。
なお、本実施形態と異なり、パッド2d1は、金属で形成された金属層と、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明な導電材料で形成された保護層と、の積層体で形成されてもよい。その場合、上記保護層がパッド2d1の上面を有している。パッド2d1の金属層は、ITO等の無機材料で形成された保護層で覆われている。そのため、パッド2d1を金属材料のみで形成した場合と比較し、パッド2d1の金属部分の腐食を抑制することができる。
【0074】
なお、ゲート線G1は、第2配線L1b無しに形成されてもよい。その場合、第1配線L1aをパッド2d1と対向する領域まで延在して形成し、パッド2d1を絶縁層22及び絶縁層23に形成されたコンタクトホールを通して第1配線L1aに接続させればよい。
【0075】
シンチレータ層5は、側面5a及び上面5bを有している。側面5aは、非検出領域NDAに位置している。側面5aは、順テーパ面である。シンチレータ層5の上面5bは、光反射層6及び防湿カバー7と対向している。
防湿カバー7は、封止部8の外面に直に接着されている。
【0076】
FPC2e1は、基材31と、配線L2と、絶縁層33と、パッド34と、を備えている。基材31は、樹脂等の電気絶縁材料で形成されている。配線L2は、金属配線であり、基材31及び絶縁層33の間に位置している。パッド34は、絶縁層33のパッド2d1側の面に設けられ、絶縁層33に形成されたコンタクトホールを通って配線L2に接続されている。パッド34は、高さ方向Zにてパッド2d1と対向している。
【0077】
図8は、図7に示したX線検出パネルPNL、FPC2e1、及び接続材ADを線VIII-VIIIに沿って示す拡大断面図である。
図8に示すように、光電変換基板2は、複数の第2配線L1bと複数のパッド2d1とを有し、第2配線L1b及びパッド2d1は一対一で接続されている。FPC2e1は、複数の配線32と複数のパッド34とを有し、配線32及びパッド34は一対一で接続されている。
【0078】
図7及び図8に示すように、封止部8は、絶縁層23、絶縁層24、絶縁層25、シンチレータ層5の側面5a、FPC2e1、接続材AD等に接している。接続材ADのうちシンチレータ層5側の側面と、接続材ADのうち列方向Yの両端に位置した側面とは、封止部8で覆われている。
ここでは、図7及び図8を用いてX線検出パネルPNLの左側端部とFPC2e1の構造について説明したが、図7及び図8を用いた説明は、X線検出パネルPNLの下側端部とFPC2e2の構造にも適用可能である。
【0079】
上記のように構成された一実施形態に係るX線検出器1によれば、X線検出モジュール10は、光電変換基板2と、シンチレータ層5と、FPC2e1と、防湿カバー7と、封止部8と、を備えている。封止部8は、FPC2e1と防湿カバー7との間に位置している。FPC2e1及びパッド2d1に重なっている領域を、封止部8を形成するための領域として使用することができる。また、封止部8は、FPC2e2と防湿カバー7との間に位置している。FPC2e2及びパッド2d2に重なっている領域を、封止部8を形成するための領域として使用することができる。
【0080】
封止部8はFPC2e1及びFPC2e2に重なっているため、封止部8がFPC2e1及びFPC2e2に重なっていない場合と比較し、光電変換基板2の左辺側及び下辺側における非検出領域NDAの幅を狭くすることができる。そのため、狭額縁化が可能なX線検出モジュール10(X線検出パネルPNL)を得ることができ、X線検出モジュール10(X線検出パネルPNL)の小型化を図ることができる。
【0081】
封止部8は、光電変換基板2のパッドと、FPC2e1及び2e2のパッドと、接続材ADとを覆うことができる。そのため、光電変換基板2とFPC2e1との電気的接続部と、光電変換基板2とFPC2e2との電気的接続部とが露出している場合と比較し、上記電気的接続部の腐食を抑制することができ、上記電気的接続部における信頼性の向上を図ることができる。
【0082】
封止部8は、熱可塑性樹脂を含む材料で形成されている。そのため、封止部8は、光電変換基板2、シンチレータ層5、FPC2e1、及びFPC2e2の凹凸を吸収することができ、高い密着力を持つ封止部8を形成することができる。
【0083】
(比較例)
次に、比較例に係るX線検出器について詳細に説明する。図9は、本比較例に係るX線検出パネルPNL、FPC2e1、接続材AD、及び防湿部40を示す断面図である。X線検出器1は、本比較例で説明する構成以外、上記実施形態と同様に構成されている。
【0084】
図9に示すように、封止部8は、FPC2e1及びパッド2d1に重なっていない。FPC2e1及びパッド2d1は、封止部8より外側に位置し、封止部8に隙間を置いて設けられている。そのため、本比較例において、X線検出パネルPNLの狭額縁化を図ることは困難である。
【0085】
X線検出モジュール10は、防湿部40をさらに備えている。防湿部40は、光電変換基板2、FPC2e1、接続材AD等に接している。防湿部40は、接続材ADのうちシンチレータ層5側の側面、接続材ADのうち列方向Yの両端に位置した側面等を覆っている。本比較例において、X線検出モジュール10の構成に防湿部40を追加することにより、光電変換基板2とFPC2e1との電気的接続部における信頼性の向上を図ることは可能である。
【0086】
(変形例1)
次に、上記実施形態の変形例1に係るX線検出器について詳細に説明する。図10は、本変形例1に係るX線検出パネルPNL、FPC2e1、接続材AD、及び防湿部50を示す断面図である。X線検出器1は、本変形例1で説明する構成以外、上記実施形態と同様に構成されている。
【0087】
図10に示すように、X線検出モジュール10は、防湿部50をさらに備えている。防湿部50は、防湿材料として例えばシリコーン樹脂で形成されている。防湿部50は、接続材ADのうち光電変換基板2の外周縁側の側面を覆っている。防湿部50は、光電変換基板2、FPC2e1、及び封止部8とともに接続材ADを覆っている。光電変換基板2とFPC2e1との電気的接続部が外気に晒されることの無いように、上記電気的接続部の全体を防湿部50等で覆うことができる。これにより、上記電気的接続部の腐食を一層抑制することができる。
【0088】
(変形例2)
次に、上記実施形態の変形例2に係るX線検出器について詳細に説明する。図11は、本変形例2に係る上記X線検出パネルPNLの検出領域DA及び非検出領域NDAを示す拡大断面図であり、FPC2e1、接続材AD、及び防湿部50を併せて示す図である。X線検出器1は、本変形例2で説明する構成以外、上記変形例1と同様に構成されている。
【0089】
図11に示すように、金属配線である第2配線L1bは、上面Sa及び端面Sbを含んでいる。上面Saは、絶縁層23で覆われている。端面Sbは、検出領域DAから最も離れて位置し、絶縁層22及び絶縁層23の外側に露出している。本変形例2のように、第2配線L1bは光電変換基板2の端まで延在し得る。例えば、製造時における光電変換基板2の外形を決定するカッティング工程の前に、第2配線L1bは、検査用のパッド、静電気対策用の電気回路等に接続されている場合があるものである。
パッド2d1は、絶縁層23の上方に設けられている。
【0090】
防湿部50は、光電変換基板2とFPC2eとの電気的接続部だけではなく、端面Sbも覆っている。金属配線(ゲート線G1、データ線T1等)が光電変換基板2の端まで延在し、金属配線の端面が露出する場合であっても、防湿部50は上記端面を覆うことができる。そのため、本変形例2では、金属配線の腐食を抑制することができる。
【0091】
本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上記の新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0092】
例えば、上述した技術は、上記X線検出モジュール10及び上記X線検出器1への適用に限定されるものではなく、他のX線検出モジュール等の各種の放射線検出モジュール、及び、他のX線検出器等の各種の放射線検出器に適用することができる。放射線検出モジュールは、X線検出パネルPNLの替わりに、放射線を検出する放射線検出パネルを備えていればよい。
【符号の説明】
【0093】
1…X線検出器、10…X線検出モジュール、PNL…X線検出パネル、2…光電変換基板、2b…光電変換部、13a…TFT、15a…TFD、G1…ゲート線、T1…データ線、L1a…第1配線、L1b…第2配線、Sa…上面、Sb…端面、2d1,2d2…パッド、21~25…絶縁層、5…シンチレータ層、6…光反射層、7…防湿カバー、8…封止部、11…回路基板、2e1,2e2…FPC、34…パッド、50…防湿部、AD…接続材、DA…検出領域、NDA…非検出領域、X…行方向、Y…列方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11