(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178721
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20241218BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20241218BHJP
G02B 5/32 20060101ALI20241218BHJP
H10K 50/00 20230101ALI20241218BHJP
H10K 50/86 20230101ALI20241218BHJP
H10K 77/10 20230101ALI20241218BHJP
H10K 50/842 20230101ALI20241218BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B5/30
G02B5/32
H10K50/00
H10K50/86
H10K77/10
H10K50/842
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097089
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大島 徹也
(72)【発明者】
【氏名】小村 真一
(72)【発明者】
【氏名】多胡 恵二
【テーマコード(参考)】
2H149
2H199
2H249
3K107
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB01
2H149BA04
2H149DA04
2H149DA12
2H149EA06
2H149FC02
2H199CA23
2H199CA25
2H199CA29
2H199CA47
2H199CA48
2H199CA63
2H199CA64
2H199CA65
2H199CA66
2H199CA68
2H199CA86
2H199CA87
2H249CA01
2H249CA06
2H249CA07
2H249CA09
2H249CA22
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC32
3K107DD11
3K107EE26
3K107EE42
(57)【要約】
【課題】表示品位の低下を抑制できる表示装置を提供する。
【解決手段】一実施形態によれば、表示装置は、直線偏光の表示光を出射するように構成された表示素子と、前記表示素子に重なる第1位相差板と、前記表示素子及び前記第1位相差板に重なり、レンズ作用を有する光学素子と、前記光学素子に重なる第2位相差板と、前記第2位相差板に対して空気層を介して重なり、前記第2位相差板に対して相対回転可能な反射型偏光板と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線偏光の表示光を出射するように構成された表示素子と、
前記表示素子に重なる第1位相差板と、
前記表示素子及び前記第1位相差板に重なり、レンズ作用を有する光学素子と、
前記光学素子に重なる第2位相差板と、
前記第2位相差板に対して空気層を介して重なり、前記第2位相差板に対して相対回転可能な反射型偏光板と、
を備える、表示装置。
【請求項2】
前記第1位相差板及び前記第2位相差板は、1/4波長板であり、
前記反射型偏光板は、第1直線偏光を反射し、前記第1直線偏光と異なる第2直線偏光を透過するように構成されている、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記表示素子は、照明装置と、前記照明装置と前記第1位相差板との間に配置された液晶パネルと、前記照明装置と前記液晶パネルとの間に配置された第1偏光板と、前記液晶パネルと前記第1位相差板との間に配置された第2偏光板と、を備える、請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記光学素子は、ホログラフィック光学素子であり、前記反射型偏光板で反射された光を前記反射型偏光板に向けて反射するように構成されている、請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記光学素子は、前記第2位相差板と向かい合う側が凹状に形成された半透過層であり、前記反射型偏光板で反射された光を前記反射型偏光板に向けて反射するように構成されている、請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
さらに、前記光学素子及び第2位相差板が配置される第1透明支持体と、
前記反射型偏光板が配置される第2透明支持体と、を備える、請求項1に記載の表示装置。
【請求項7】
前記第1位相差板、前記第2位相差板、及び、前記反射型偏光板は、それぞれ反射防止層で覆われている、請求項1に記載の表示装置。
【請求項8】
さらに、前記第1透明支持体または前記第2透明支持体の回転角度を調整する調整機構を備える、請求項6に記載の表示装置。
【請求項9】
前記第1透明支持体または前記第2透明支持体は、円形に形成され、
前記調整機構は、前記第1透明支持体または前記第2透明支持体の中心を回転軸として回転させるように構成されている、請求項8に記載の表示装置。
【請求項10】
前記調整機構は、前記第1透明支持体または前記第2透明支持体の外縁に接する固定点を回転軸として回転させるように構成されている、請求項8に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、ユーザの頭部に装着されるヘッドマウントディスプレイを用いて、例えば仮想現実(VR:VirtualReality)を提供する技術が注目されている。ヘッドマウントディスプレイは、ユーザの眼前に設けられたディスプレイに画像が表示されるように構成されている。これにより、ヘッドマウントディスプレイを装着したユーザは、臨場感のある仮想現実空間を体験することができる。
このような表示装置において、表示品位を改善する観点で、不所望な反射光に起因した迷光の低減が要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-148655号公報
【特許文献2】特開2013-167779号公報
【特許文献3】特開2009-54305号公報
【特許文献4】特開平9-105928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態の目的は、表示品位の低下を抑制できる表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態によれば、表示装置は、
直線偏光の表示光を出射するように構成された表示素子と、前記表示素子に重なる第1位相差板と、前記表示素子及び前記第1位相差板に重なり、レンズ作用を有する光学素子と、前記光学素子に重なる第2位相差板と、前記第2位相差板に対して空気層を介して重なり、前記第2位相差板に対して相対回転可能な反射型偏光板と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本実施形態の表示装置DSPを適用したメガネ1の外観の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した表示装置DSPの一構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、
図2に示した表示装置DSPに適用可能な表示素子DEの一構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、
図2に示した表示装置DSPの光学作用を説明するための図である。
【
図5】
図5は、第1軸角度θ1及び第2軸角度θ2を説明するための図である。
【
図6】
図6は、第2透明支持体BS2の回転角度を調整する調整機構3の一構成例を示す図である。
【
図7】
図7は、第2透明支持体BS2の回転角度を調整する調整機構3の他の構成例を示す図である。
【
図8】
図8は、
図2に示した表示装置DSPに含まれる界面での反射光を説明するための図である。
【
図9】
図9は、比較例としての表示装置DSPに含まれる界面での反射光を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0008】
なお、図面には、必要に応じて理解を容易にするために、互いに直交するX軸、Y軸、及び、Z軸を記載する。X軸に沿った方向を第1方向Xと称し、Y軸に沿った方向を第2方向Yと称し、Z軸に沿った方向を第3方向Zと称する。X軸、Y軸、及び、Z軸は、90°以外の角度で交差していてもよい。X軸及びY軸によって規定される面をX-Y平面と称し、X-Y平面を見ることを平面視という。
【0009】
図1は、本実施形態の表示装置DSPを適用したメガネ1の外観の一例を示す斜視図である。
メガネ1は、例えば、右眼用の表示装置DSPRと、左眼用の表示装置DSPLと、を備えている。表示装置DSPR、DSPLは、第2方向Yに並んでいる。このようなメガネ1は、例えば、仮想現実を提供する用途、拡張現実を提供する用途などに利用することができる。
表示装置DSPR、DSPLは、実質的に同一構成であり、以下、単に表示装置DSPとして説明する。
【0010】
図2は、
図1に示した表示装置DSPの一構成例を示す図である。
【0011】
表示装置DSPは、表示素子DEと、第1位相差板R1と、ホログラフィック光学素子HEと、第2位相差板R2と、反射型偏光板RPと、を備えている。表示素子DE、第1位相差板R1、ホログラフィック光学素子HE、第2位相差板R2、及び、反射型偏光板RPは、いずれもX-Y平面に沿った平板状に形成されている。後に詳述するが、第2位相差板R2及び反射型偏光板RPの少なくとも一方は、X-Y平面で回転可能に構成されている。
【0012】
表示素子DEは、照明装置ILと、液晶パネルPNLと、第1偏光板P1と、第2偏光板P2と、を備えている。第1偏光板P1は、第3方向Zにおいて照明装置ILと液晶パネルPNLとの間に配置されている。液晶パネルPNLは、第3方向Zにおいて第1偏光板P1と第2偏光板P2との間に配置されている。第1偏光板P1の透過軸T1と、第2偏光板P2の透過軸T2とは、互いに直交している。一例では、透過軸T1は第1方向Xに平行であり、透過軸T2は第2方向Yに平行である。このような表示素子DEは、直線偏光の表示光DLを第2偏光板PL2から出射するように構成されている。第2偏光板PL2から出射時の表示光DLの偏光軸は、透過軸T2に平行である。第2偏光板PL2から出射時の表示光DLは、例えば、発散光である。
【0013】
なお、表示素子DEの構成は、図示した例に限らない。例えば、表示素子DEは、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子、マイクロLED、ミニLEDなどの自発光型の発光素子を備えた表示パネルであってもよい。表示素子DEが発光素子を備えた表示パネルである場合、照明装置や第1偏光板は省略される。
【0014】
第1位相差板R1は、第3方向Zにおいて表示素子DEに重なっている。図示した例では、第1位相差板R1は、第2偏光板P2に重なり、第2偏光板P2に対して固定されている。このような第1位相差板R1は、1/4波長板であり、透過する所定波長の光に対して1/4波長の位相差を付与するものである。後述するが、第1位相差板R1の遅相軸は、第1偏光板P1の透過軸T1に対して約45°の角度で交差している。
本明細書で、2つの部材が「重なる」状態とは、一方の部材の法線上に他の部材の一部が存在している状態と定義する。そして、「重なる」状態は、2つの部材が互いに接している状態、2つの部材が互いに接着されている状態、2つの部材の間に空間や他の部材が存在している状態を含むものとする。
【0015】
ホログラフィック光学素子HEは、レンズ作用を有する光学素子の一例に相当する。ホログラフィック光学素子HEは、第3方向Zにおいて表示素子DE及び第1位相差板R1に重なっている。ホログラフィック光学素子HEは、干渉縞のパターンを記録した樹脂フィルムであり、特定波長の入射光を所定の方向に回折するとともに、入射光を集光するレンズ作用を有している。
【0016】
第2位相差板R2は、第3方向Zにおいてホログラフィック光学素子HEに重なっている。一例では、第2位相差板R2は、ホログラフィック光学素子HEに積層されている。このような第2位相差板R2は、1/4波長板であり、透過する所定波長の光に対して1/4波長の位相差を付与するものである。後述するが、第2位相差板R2の遅相軸は、第2偏光板P2の透過軸T2に対して約45°の角度で交差し、また、第1位相差板R1の遅相軸と直交している。
【0017】
第1透明支持体BS1は、平板状に形成され、第3方向Zにおいて第1位相差板R1と向かい合う第1面S1と、第1面S1の反対側の第2面S2と、を有している。第1面S1及び第2面S2は、いずれもX-Y平面に平行な平面である。図示した例では、ホログラフィック光学素子HE及び第2位相差板R2の積層体は、第2面S2に配置されている。
なお、ホログラフィック光学素子HE及び第2位相差板R2の積層体は、第1面S1に配置されてもよい。また、ホログラフィック光学素子HEは第1面S1に配置され、第2位相差板R2は第2面S2に配置されてもよい。
【0018】
反射型偏光板RPは、第3方向Zにおいて、第2位相差板R2に対して空気層Aを介して重なっている。反射型偏光板RPとしては、多層薄膜型のものや、ワイヤグリッド型のものなどを適用可能である。このような反射型偏光板RPは、第1直線偏光を反射し、第1直線偏光とは異なる第2直線偏光を透過するように構成されている。反射型偏光板RPの透過軸Trpと、第2偏光板P2の透過軸T2とは、互いに直交している。一例では、透過軸Trpは第1方向Xに平行であり、第1直線偏光の偏光軸は透過軸Trpに直交し、第2直線偏光の偏光軸は透過軸Trpに平行である。
【0019】
第2透明支持体BS2は、平板状に形成され、第3面S3と、第3面S3の反対側の第4面S4と、を有している。第3面S3及び第4面S4は、いずれもX-Y平面に平行な平面である。反射型偏光板RPは、第3面S3に配置されている。なお、反射型偏光板RPは、第4面S4に配置されてもよい。
第1透明支持体BS1及び第2透明支持体BS2は、ガラス基板あるいは樹脂基板である。
【0020】
以下に、表示装置DSPにおける光学作用について簡単に説明する。
表示素子DEから出射された表示光DLは、破線で示すように、第1位相差板R1を透過した後に、第1透明支持体BS1、ホログラフィック光学素子HE及び第2位相差板R2を透過し、空気層Aを経由して反射型偏光板RPで反射される。反射型偏光板RPで反射された表示光DLは、空気層Aを経由して第2位相差板R2を透過した後に、ホログラフィック光学素子HEで反射される。ホログラフィック光学素子HEで反射された表示光DLは、第2位相差板R2を透過した後に、空気層Aを経由して反射型偏光板RPを透過し、さらに、第2透明支持体BS2を透過し、ホログラフィック光学素子HEのレンズ作用を受けてユーザの瞳Eに集光される。
【0021】
図3は、
図2に示した表示装置DSPに適用可能な表示素子DEの一構成例を示す図である。
【0022】
表示素子DEは、液晶パネルPNLと、照明装置ILと、プリズムシートPSと、を備えている。プリズムシートPSは、第3方向Zにおいて液晶パネルPNLと照明装置ILとの間に配置されている。
【0023】
液晶パネルPNLは、透過型であり、第1基板SUB1と、第2基板SUB2と、液晶層LCと、を備えている。液晶層LCは、第3方向Zにおいて第1基板SUB1と第2基板SUB2との間に保持され、シールSEによって封止されている。
液晶パネルPNLは、第3方向Zにおいて照明装置ILと第1位相差板R1との間に配置されている。第1偏光板P1は、第3方向Zにおいて照明装置ILと液晶パネルPNLとの間に配置され、例えば第1基板SUB1に接着されている。第2偏光板P2は、第3方向Zにおいて液晶パネルPNLと第1位相差板R1との間に配置され、例えば第2基板SUB2に接着されている。
表示部DAは、液晶パネルPNLにおいて、画像を表示するように構成された領域である。
【0024】
照明装置ILは、導光板LGと、光源LSと、を備えている。導光板LGは、第3方向ZにおいてプリズムシートPSと向かい合っている。光源LSは、第1方向Xにおいて導光板LGの側面LGaと向かい合っている。光源LSは、詳述しないが、青波長の光を出射するように構成された発光素子、緑波長の光を出射するように構成された発光素子、及び、赤波長の光を出射するように構成された発光素子と、を備えている。これらの発光素子としては、例えば、レーザー素子が適用される。
【0025】
光源LSから出射された光は、導光板LGの内部で全反射されながら伝播される。伝播される光のうち、全反射条件から外れた光は、導光板LGから液晶パネルPNLに向かって出射される。導光板LGから出射された光は、プリズムシートPSで屈折され、第3方向Zに沿って出射される照明光を形成する。液晶パネルPNLは、表示部DAにおいて照明光を選択的に変調する。そして、照明光の一部は、第2偏光板P2の透過時には直線偏光の表示光DLを形成する。
【0026】
図4は、
図2に示した表示装置DSPの光学作用を説明するための図である。
【0027】
まず、表示素子DEの第2偏光板P2を透過した第1直線偏光LP1の表示光DLは、第1位相差板R1を透過して第1円偏光CP1に変換される。第1位相差板R1を透過した第1円偏光CP1は、ホログラフィック光学素子HEを透過した後に、第2位相差板R2を透過して第1直線偏光LP1に変換される。なお、第1位相差板R1を透過した第1円偏光CP1のうち、ホログラフィック光学素子HEで反射された第1円偏光CP1は、再び第1位相差板R1を透過して第2直線偏光に変換された後に、第2偏光板P2で吸収される。第2直線偏光LP2は、第1直線偏光LP1と直交する偏光軸を有する直線偏光である。
【0028】
第2位相差板R2を透過した第1直線偏光LP1は、反射型偏光板RPで反射される。反射型偏光板RPで反射された第1直線偏光LP1は、第2位相差板R2を透過して第2円偏光CP2に変換される。第2円偏光CP2は、第1円偏光CP1とは逆回りの円偏光である。
【0029】
第2位相差板R2を透過した第2円偏光CP2は、ホログラフィック光学素子HEで反射・回折される。ホログラフィック光学素子HEで反射された第2円偏光CP2は、第2位相差板R2を透過して第2直線偏光LP2に変換される。なお、第2位相差板R2を透過した第2円偏光CP2のうち、ホログラフィック光学素子HEを透過した第2円偏光CP2は、ユーザ側には反射されず、表示に寄与しない。
【0030】
ホログラフィック光学素子HEで反射された後に第2位相差板R2を透過した第2直線偏光LP2は、反射型偏光板RPを透過し、ホログラフィック光学素子HEのレンズ作用を受けてユーザの瞳Eに集光される。
【0031】
なお、
図4を参照して説明した第1直線偏光LP1を第2直線偏光LP2に置換してもよいし、第1円偏光CP1を第2円偏光CP2に置換してもよい。
【0032】
このような構成例によれば、ガラスや樹脂などで形成された光学部品を備える光学システムと比較して、第3方向Zに沿った厚さを薄くすることができ、しかも、軽量化を実現することができる。したがって、表示装置DSPの小型化が可能となる。
【0033】
ところで、
図4に実線で示した光路とは異なる光路で瞳Eに到達した光は、いわゆる迷光となり、表示品位の低下を招く。
図4に示した例において迷光を抑制する観点では、ホログラフィック光学素子HEを透過した後に第2位相差板R2から反射型偏光板RPに向かう光の第1直線偏光LP1が反射型偏光板RPの透過軸Trpと精度よく直交することが重要である。第2位相差板R2から反射型偏光板RPに向かう光の第1直線偏光LP1が反射型偏光板RPの透過軸Trpと精度よく直交しない場合には、一部の光が透過し、迷光が発生する。第1直線偏光LP1が反射型偏光板RPの透過軸Trpと精度よく直交しない状態が発生する一因としては、第2偏光板P2の透過軸T2と第1位相差板R1の遅相軸との間の第1軸角度と、反射型偏光板RPの透過軸Trpと第2位相差板R2の遅相軸との間の第2軸角度との不整合が挙げられる。
【0034】
そこで、本実施形態においては、第2偏光板P2及び第1位相差板R1が互いに固定されている一方で、反射型偏光板RP及び第2位相差板R2は、それぞれX-Y平面で相対回転可能に構成されている。以下、より詳細に説明する。
【0035】
図5は、第1軸角度θ1及び第2軸角度θ2を説明するための図である。
【0036】
上記の通り、第2偏光板P2の透過軸T2は、例えば第2方向Yに平行である。第1位相差板R1の遅相軸AX1は、X-Y平面において、透過軸T2あるいは第2方向Yに対して交差している。第1軸角度θ1は、透過軸T2と遅相軸AX1とのなす角度に相当する。第2偏光板P2を透過した第1直線偏光LP1を第1円偏光CP1に変換するためには、第1軸角度θ1は、45°に設定される。
【0037】
反射型偏光板RPの透過軸Trpは、例えば第1方向Xに平行である。第2位相差板R2の遅相軸AX2は、X-Y平面において、透過軸Trpあるいは第1方向Xに対して交差している。第2軸角度θ2は、透過軸Trpと遅相軸AX2とのなす角度に相当する。第2軸角度θ2は、第1軸角度θ1と同一に設定され、ここでは45°に設定される。
【0038】
なお、遅相軸AX1と遅相軸AX2とのなす角度に相当する第3軸角度θ3は、90°に設定される。
【0039】
第1直線偏光LP1と反射型偏光板RPの透過軸Trpとが精度良く直交する状態を実現するには、第1軸角度θ1と第2軸角度θ2を整合させれば良い。このために、第2位相差板R2及び反射型偏光板RPの少なくとも一方は、X-Y平面で回転可能に構成し、第1軸角度θ1と第2軸角度θ2との不整合が生じた場合、第2位相差板R2及び反射型偏光板RPの少なくとも一方を回転させることで、第2軸角度θ2を第1軸角度θ1に整合させることができる。これにより、不所望な迷光を抑制し、表示品位の低下を抑制することができる。
【0040】
以下、反射型偏光板RPが配置された第2透明支持体BS2を回転させる例について説明する。
【0041】
図6は、第2透明支持体BS2の回転角度を調整する調整機構3の一構成例を示す図である。
【0042】
メガネ1において、右眼用の表示装置DSPR及び左眼用の表示装置DSPLは、それぞれフレーム2に保持されている。表示装置DSPR及び表示装置DSPLの各々において、反射型偏光板RPが配置される第2透明支持体BS2は、円形に形成されている。例えば、表示装置DSPRの第2透明支持体BS2は、拡大して示すように、円形の外縁Ebsを有している。ダイヤル式の調整機構3は、外縁Ebsに接する円形の接触部3aを有している。
【0043】
図示した例では、調整機構3が右回りに回転すると、第2透明支持体BS2は、その中心Obsを回転軸として左回りに回転する。つまり、調整機構3により、第2透明支持体BS2の回転角度を調整することができる。第2透明支持体BS2が回転するのに伴って、反射型偏光板RPが回転する。これにより、反射型偏光板RPの透過軸TrpのX-Y平面内における方位を調整することができる。
【0044】
例えば、第2透明支持体BS2の直径が60mmであり、接触部3aの直径が6mmである場合、調整機構3が10°回転すると、第2透明支持体BS2及び反射型偏光板RPは1°回転する。
【0045】
なお、図示しないが、第2位相差板R2が配置される第1透明支持体BS1は、フレーム2に固定され、回転しない。
【0046】
このように、固定された第2位相差板R2に対して、反射型偏光板RPが回転することで、第2軸角度θ2を微調整することができ、第2軸角度θ2を第1軸角度θ1に整合させることができる。
【0047】
図7は、第2透明支持体BS2の回転角度を調整する調整機構3の他の構成例を示す図である。
【0048】
表示装置DSPR及び表示装置DSPLの各々において、反射型偏光板RPが配置される第2透明支持体BS2は、非円形に形成されている。例えば、表示装置DSPRの第2透明支持体BS2は、拡大して示すように、略四角形に形成され、外縁Ebsとして、4つの辺E1乃至E4を有している。辺E1は辺E3に対向し、辺E2は辺E4に対向している。
【0049】
ネジ式の調整機構3は、辺E2のうち、辺E1の近傍に接している。辺E3及び辺E4が交差する角の近傍は、フレーム2の固定点4に接している。辺E1とフレーム2との間、及び、辺E4とフレーム2との間には、それぞれバネ等の弾性体5が介在している。
図示した例では、調整機構3を回転させて辺E2に向かって押し込むと、第2透明支持体BS2は、固定点4を回転軸として左回りに回転する。つまり、調整機構3により、第2透明支持体BS2の回転角度を調整することができる。第2透明支持体BS2が回転するのに伴って、反射型偏光板RPが回転する。これにより、反射型偏光板RPの透過軸TrpのX-Y平面内における方位を調整することができる。
【0050】
例えば、第2透明支持体BS2が正方形であり、辺E1乃至E4の各々の長さが50mmであり、調整機構3のネジ径が2mmであり、調整機構3のネジピッチが0.25mmである場合、調整機構3が1回転すると、第2透明支持体BS2及び反射型偏光板RPは0.46°回転する。
【0051】
なお、図示しないが、第2位相差板R2が配置される第1透明支持体BS1は、フレーム2に固定され、回転しない。
【0052】
このように、固定された第2位相差板R2に対して、反射型偏光板RPが回転することで、第2軸角度θ2を微調整することができ、第2軸角度θ2を第1軸角度θ1に整合させることができる。
【0053】
また、
図6及び
図7に示した各構成例においては、第2透明支持体BS2がフレーム2に固定され、第1透明支持体BS1が調整機構3によって回転するように構成されてもよい。この場合、固定された反射型偏光板RPに対して、第2位相差板R2が回転することで、第2軸角度θ2を微調整することができる。
【0054】
次に、表示装置DSPに含まれる界面での反射の影響について検討する。
【0055】
図8は、
図2に示した表示装置DSPに含まれる界面での反射光を説明するための図である。
【0056】
ここで検討する界面とは、第2位相差板R2と空気層Aとの界面B1、及び、反射型偏光板RPと空気層Aとの界面B2である。
【0057】
ホログラフィック光学素子HEから第2位相差板R2に向かう光の一部が界面B1で反射された場合、この反射光は、瞳Eに向かって反射されることはなく、表示に寄与しない。
第2位相差板R2から反射型偏光板RPに向かう光の一部が界面B2で反射された場合も、この反射光も、瞳Eには到達せず、表示に寄与しない。
【0058】
反射型偏光板RPから第2位相差板に向かう光の一部が界面B2で反射された場合、この反射光は、第1直線偏光の偏光状態に維持されており、反射型偏光板RPを透過せず、表示に寄与しない。
反射型偏光板RPから第2位相差板に向かう光の一部が界面B1で反射された場合、この反射光も、反射型偏光板RPを透過せず、表示に寄与しない。
【0059】
つまり、本実施形態によれば、第1軸角度θ1と第2軸角度θ2との不整合に起因した迷光を抑制できるのに加えて、界面B1及びB2での不所望な反射に起因した迷光も抑制することができる。
【0060】
図9は、比較例としての表示装置DSPに含まれる界面での反射光を説明するための図である。
【0061】
図示した比較例は、
図8に示した本実施形態と比較して、第2位相差板及び反射型偏光板RPが積層され、ホログラフィック光学素子HEと第2位相差板R2との間に空気層Aが介在している点で相違している。ここで検討する界面とは、ホログラフィック光学素子HEと空気層Aとの界面B11、及び、第2位相差板R2と空気層Aとの界面B12である。
【0062】
ここで注目すべき反射光は、反射型偏光板RPで反射された光のうち、界面B11及び界面B12で反射される光である。界面B11及び界面B12において反射型偏光板RPに向かって反射された光は、第2位相差板R2を透過した際に第2直線偏光LP2に変換される。このため、実線で示した光路とは別の光路の一部の反射光が反射型偏光板RPを透過し、迷光として瞳Eに到達し、表示品位の低下を招く。
【0063】
しかも、ここに示す比較例では、第2偏光板P2及び第1位相差板R1が積層され、且つ、第2位相差板R2及び反射型偏光板RPが積層されている。このため、第1軸角度θ1及び第2軸角度θ2の不整合が生じた場合に、第1軸角度θ1及び第2軸角度θ2のいずれも調整することができず、さらなる表示品位の低下を招くおそれがある。
【0064】
このような比較例に対して、本実施形態は、迷光を抑制することができ、表示品位の低下が抑制できる点で優位である。
【0065】
図10は、
図1に示した表示装置DSPの他の構成例を示す図である。
図10に示す構成例は、
図2に示した構成例と比較して、第1位相差板R1、第2位相差板R2、及び、反射型偏光板RPがそれぞれ反射防止層ARで覆われている点で相違している。図示した例では、さらに、第1透明支持体BS1の第1面S1、及び、第2透明支持体BS2の第4面S4もそれぞれ反射防止層ARで覆われている。
図10に示す構成例によれば、第1位相差板R1と空気層との界面、第1面S1と空気層との界面、第2位相差板R2と空気層との界面、反射型偏光板RPと空気層との界面、及び、第4面S4と空気層との界面において、不所望な反射が抑制される。このため、表示品位の低下を抑制することができる。
【0066】
図11は、
図1に示した表示装置DSPの他の構成例を示す図である。
図11に示す構成例は、
図2に示した構成例と比較して、レンズ作用を有する光学素子として、ホログラフィック光学素子HEの代わりに、第2位相差板R2と向かい合う側が凹状に形成された半透過層(ハーフミラー)HMである点で相違している。
図示した例では、第1透明支持体BS1は、平凸レンズとして形成されている。すなわち、第1透明支持体BS1において、第1面S1は凸面として形成され、第2面S2はX-Y平面に平行な平面として形成されている。半透過層HMは、第1面S1に配置されている。第2位相差板R2は、第2面S2に配置されている。
【0067】
以下に、表示装置DSPにおける光学作用について簡単に説明する。
表示素子DEから出射された表示光DLは、破線で示すように、第1位相差板R1を透過した後に、半透過層HMを透過し、さらに、第1透明支持体BS1及び第2位相差板R2を透過し、空気層Aを経由して反射型偏光板RPで反射される。反射型偏光板RPで反射された表示光DLは、空気層Aを経由して第2位相差板R2及び第1透明支持体BS1を透過した後に、半透過層HMで反射される。半透過層HMで反射された表示光DLは、第1透明支持体BS1及び第2位相差板R2を透過した後に、空気層Aを経由して反射型偏光板RPを透過し、さらに、第2透明支持体BS2を透過し、半透過層HMのレンズ作用を受けてユーザの瞳Eに集光される。
【0068】
このような構成例においても、上記の構成例と同様の効果が得られる。
【0069】
図示していないが、
図10に示した構成例と同様に、反射防止層ARが適用されてもよい。
【0070】
次に、発明者は、第1軸角度θ1及び第2軸角度θ2の不整合の影響について、シミュレーションにより検証した。
【0071】
図12は、シミュレーション結果を示す図である。
シミュレーションの条件は以下の通りである。第2偏光板P2の透過軸T2のX-Y平面内での方位を基準とし、透過軸T2は0°の方位に設定する。第1位相差板R1の遅相軸AX1は45°の方位に設定し、第1軸角度θ1は45°とする。
第2位相差板R2の遅相軸AX2は135°の方位を設計値とし、設計値からのズレ量をΔθrと表す。
反射型偏光板RPの透過軸Trpは90°の方位を設計値とし、設計値からのズレ量をΔθpと表す。
第1位相差板R1及び第2位相差板R2のリタデーションΔn・dは、いずれも144nmである。Δnは、各位相差板における屈折率異方性あるいは複屈折性を示すパラメータである。dは、各位相差板の厚さに相当する。
【0072】
図12の横軸はズレ量Δθr(°)であり、縦軸は漏れ光量(a.u.)である。漏れ光とは、
図9を参照して説明したように、第2軸角度θ2と第1軸角度θ1との不整合による不所望な迷光であり、反射型偏光板RPを透過して瞳Eに到達する光に相当する。
【0073】
図中の実線は、ズレ量Δθpが0°の場合に生ずる漏れ光量のシミュレーション結果を示している。ズレ量Δθrが0°の場合、第2軸角度θ2は、第1軸角度θ1と等しく、45°となる。この場合には漏れ光量が最低となる。ズレ量Δθrの絶対値が増加するにしたがって、第1軸角度θ1と第2軸角度θ2との差分が増加し、漏れ光量が増加することが確認できた。
【0074】
図中の破線は、ズレ量Δθpが2°の場合に生ずる漏れ光量のシミュレーション結果を示している。ズレ量Δθrが2°の場合、第2軸角度θ2は、第1軸角度θ1と等しく、45°となる。この場合には漏れ光量が最低となる。ズレ量Δθrが2°よりも増加するあるいは2°よりも減少するにしたがって、第1軸角度θ1と第2軸角度θ2との差分が増加し、漏れ光量が増加することが確認できた。
【0075】
図中の一点鎖線は、ズレ量Δθpが5°の場合に生ずる漏れ光量のシミュレーション結果を示している。ズレ量Δθrが5°の場合、第2軸角度θ2は、第1軸角度θ1と等しく、45°となる。この場合には漏れ光量が最低となる。ズレ量Δθrが5°よりも増加するあるいは5°よりも減少するにしたがって、第1軸角度θ1と第2軸角度θ2との差分が増加し、漏れ光量が増加することが確認できた。
【0076】
以上説明したように、本実施形態によれば、表示品位の低下を抑制できる表示装置を提供することができる。
【0077】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0078】
DSP…表示装置
DE…表示素子 PNL…液晶パネル IL…照明装置 P1…第1偏光板 P2…第2偏光板 R1…第1位相差板 R2…第2位相差板 RP…反射型偏光板
HE…ホログラフィック光学素子 HM…半透過層
SB1…第1透明支持体 SB2…第2透明支持体
1…メガネ 2…フレーム 3…調整機構