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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178725
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】ガス発生器
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/264 20060101AFI20241218BHJP
   B01J 7/00 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
B60R21/264
B01J7/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097094
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 友也
(72)【発明者】
【氏名】井上 優二
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄一郎
【テーマコード(参考)】
3D054
4G068
【Fターム(参考)】
3D054DD15
3D054DD17
3D054DD28
3D054FF17
4G068DA08
4G068DB14
(57)【要約】
【課題】製造コストの増大を抑制しつつ所望のガス出力を安定して得ることができるガス発生器を提供する。
【解決手段】ガス発生器1Aは、金属製のハウジング本体10と、ホルダ組立体20と、点火器40とを備える。ホルダ組立体20は、点火器40の基部41を保持する金属製の第1ホルダ20Aと、点火器40の点火部41を収容する樹脂製の第2ホルダ20Bとを有する。第1ホルダ20Aは、ハウジング本体10に設けられた第1かしめ部11および第2かしめ部12によって挟み込まれることでハウジング本体10に固定される。第1かしめ部11は、第2ホルダ20Bの第2胴部23によって覆われるとともにこれに圧接触する。第2胴部23の内周面には、周方向に沿って点列状に位置する複数の突起部24が設けられ、複数の突起部24が点火部42の外周面に当接することにより、点火部42の外周面と第2胴部23の内周面との間に間隙部Gが設けられる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス発生剤が収容された燃焼室を内部に含む筒状の金属製のハウジング本体と、
前記ハウジング本体の軸方向の開口端に内挿され、前記ハウジング本体の軸方向と平行な方向に沿って延びる中空部を含むホルダ組立体と、
点火薬が装填された点火部、前記点火部に接続された端子ピン、ならびに、前記端子ピンが挿通されるとともに前記点火部および前記端子ピンの双方を支持する基部を含み、前記点火部が前記燃焼室側に位置しかつ前記端子ピンが前記燃焼室側とは反対側に位置した状態で前記中空部の内部に少なくともその一部が配置された点火器とを備え、
前記ホルダ組立体は、前記基部を受け入れることで前記点火器を保持する金属製の第1ホルダと、前記第1ホルダから見て前記燃焼室側に位置するとともに前記点火部を収容する樹脂製の第2ホルダとを有し、
前記第1ホルダは、前記中空部を規定する筒状の第1胴部と、前記ハウジング本体の径方向に沿って前記第1胴部から突出する環状突部とを含み、
前記第2ホルダは、前記中空部を規定する筒状の第2胴部を含み、
前記ハウジング本体は、径方向内側に向けて縮径した第1かしめ部と、前記第1かしめ部から見て前記開口端側に位置し、径方向内側に向けて縮径した第2かしめ部とを有し、
前記第1ホルダは、前記第1かしめ部および前記第2かしめ部によって前記環状突部が前記ハウジング本体の軸方向において挟み込まれることにより、前記ハウジング本体に固定され、
前記第1かしめ部は、前記第2胴部によって覆われているとともに、前記第2胴部の外周面の少なくとも一部に圧接触し、
前記第2胴部のうち、前記第1かしめ部が圧接触することで径方向内側に向けて圧縮させられた部分の内周面であってかつ前記点火部の外周面に面する部分には、前記ハウジング本体の軸方向に沿って見た場合に前記第2胴部の周方向に沿って点列状に位置するとともに前記点火部側に向けて突出する複数の突起部が設けられ、
前記複数の突起部が前記点火部の外周面に当接することにより、前記点火部の外周面と前記第2胴部の内周面との間に間隙部が設けられている、ガス発生器。
【請求項2】
前記複数の突起部が、前記点火部の軸線と直交する方向において当該軸線を挟み込まないように配置されている、請求項1に記載のガス発生器。
【請求項3】
前記複数の突起部が、前記第2胴部の周方向に沿って均等に配置されている、請求項2に記載のガス発生器。
【請求項4】
前記第2胴部のうちの前記複数の突起部が設けられた部分の径方向外側の位置に、前記第2胴部を周回するように溝部が設けられている、請求項1に記載のガス発生器。
【請求項5】
前記第1ホルダ側に位置する前記第2ホルダの軸方向端部が、前記第1ホルダに嵌め込まれることで前記第1ホルダに固定されている、請求項1に記載のガス発生器。
【請求項6】
前記ホルダ組立体が、前記第1ホルダから見て前記燃焼室側とは反対側に位置するとともに前記端子ピンに接続される接続コネクタを受け入れ可能な樹脂製の第3ホルダをさらに有し、
前記第3ホルダは、前記中空部を規定する筒状の第3胴部を含み、
前記第2かしめ部が、前記第3胴部の外周面の少なくとも一部に圧接触している、請求項1に記載のガス発生器。
【請求項7】
前記第1ホルダ側に位置する前記第3ホルダの軸方向端部が、前記第1ホルダに嵌め込まれることで前記第1ホルダに固定されている、請求項6に記載のガス発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に装備される乗員保護装置としてのエアバッグ装置に組み込まれるガス発生器に関し、特に、サイドエアバッグ装置等に好適に組み込まれる外形が長尺円柱状のいわゆるシリンダ型ガス発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の乗員の保護の観点から、乗員保護装置であるエアバッグ装置が普及している。エアバッグ装置は、車両等衝突時に生じる衝撃から乗員を保護する目的で装備されるものであり、車両等衝突時に瞬時にエアバッグを膨張および展開させることにより、エアバッグがクッションとなって乗員の体を受け止めるものである。
【0003】
ガス発生器は、このエアバッグ装置に組み込まれ、車両等衝突時にコントロールユニットからの通電によって点火器を着火し、点火器において生じる火炎によりガス発生剤を燃焼させて多量のガスを瞬時に発生させ、これによりエアバッグを膨張および展開させる機器である。
【0004】
ガス発生器には、車両等に対する設置位置や出力等の仕様に基づき、種々の構成のものが存在している。その一つに、シリンダ型ガス発生器と称されるものがある。シリンダ型ガス発生器は、その外形が長尺円柱状であり、サイドエアバッグ装置やカーテンエアバッグ装置、ニーエアバッグ装置、シートクッションエアバッグ装置等に好適に組み込まれる。
【0005】
通常、シリンダ型ガス発生器においては、ハウジングの軸方向の一端部に点火器が組付けられるとともに当該一端部側にガス発生剤が収容された燃焼室が設けられ、ハウジングの軸方向の他端部側にフィルタが収容されたフィルタ室が設けられ、当該フィルタ室を規定する部分のハウジングの周壁部にガス噴出口が設けられる。
【0006】
このように構成されたシリンダ型ガス発生器においては、燃焼室にて発生したガスがハウジングの軸方向に沿ってフィルタ室に流入することでフィルタの内部を通過し、フィルタを通過した後のガスがガス噴出口を介して外部に噴出される。
【0007】
シリンダ型ガス発生器においては、作動時において点火器で発生する熱粒子(すなわち火炎)を効率的にガス発生剤に導くことが重要であり、点火部にて発生する熱粒子の進行方向に指向性を与えるガイドとしての指向性付与部材が点火器の周囲に設置されることがある。通常、指向性付与部材は、点火器のうちの点火薬が収容された点火部を取り囲む筒状の形状を有しており、ハウジングの周壁部と点火部との間の隙間を埋めるようにハウジングの内部に設置される。
【0008】
このような指向性付与部材を具備したシリンダ型ガス発生器の具体的な構成が開示された文献としては、たとえば特開2017-1588号公報(特許文献1)や特開2017-81343号公報(特許文献2)等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2017-1588号公報
【特許文献2】特開2017-81343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、シリンダ型ガス発生器においては、点火器とガス発生剤との間の距離を精緻に管理することが必要である。これは、点火器とガス発生剤との間の距離に個体差が生じた場合に、点火器が作動した時点からガスがガス噴出口を介して外部に噴出され始める時点までの時間やガス発生剤の燃焼特性自体にばらつきが生じてしまうためである。
【0011】
そのため、指向性付与部材を具備したシリンダ型ガス発生器においては、点火器ならびにガス発生剤に近接して指向性付与部材が配置されることになるため、点火器とガス発生剤との間の距離に個体差が生じないようにするために、当該指向性付与部材を移動不能に安定的にハウジングの内部において固定することが必要になる。
【0012】
この点、上記特許文献1および2に開示のシリンダ型ガス発生器においては、指向性付与部材とガス発生剤との間にクッション材やコイルバネ等の弾性体が介装されており、弾性体が有する弾性付勢力によって指向性付与部材が点火器側に向けて押圧されることにより、その安定的な固定が実現されている。
【0013】
しかしながら、そもそも指向性付与部材とガス発生剤との間に弾性体を介装した場合には、弾性体の圧縮変形の程度によって点火器とガス発生剤との間の距離に個体差が生じてしまうことになる。そのため、このような弾性体を利用した固定方法とは異なる他の固定方法にて、指向性付与部材をハウジングの内部において安定的に固定することが求められている。また、当該他の固定方法を検討するに当たっては、製造コストを低減する観点から、当然にその組付構造が複雑でないことが好ましい。
【0014】
したがって、本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、製造コストの増大を抑制しつつ所望のガス出力を安定して得ることができるガス発生器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に基づくガス発生器は、ハウジング本体と、ホルダ組立体と、点火器とを備えている。上記ハウジングは、ガス発生剤が収容された燃焼室を内部に含む筒状の金属製の部材からなる。上記ホルダ組立体は、上記ハウジング本体の軸方向の開口端に内挿されており、上記ハウジング本体の軸方向と平行な方向に沿って延びる中空部を含んでいる。上記点火器は、点火薬が装填された点火部と、上記点火部に接続された端子ピンと、上記端子ピンが挿通されるとともに上記点火部および上記端子ピンの双方を支持する基部とを含んでおり、上記点火部が上記燃焼室側に位置しかつ上記端子ピンが上記燃焼室側とは反対側に位置した状態で上記中空部の内部に少なくともその一部が配置されている。上記ホルダ組立体は、上記基部を受け入れることで上記点火器を保持する金属製の第1ホルダと、上記第1ホルダから見て上記燃焼室側に位置するとともに上記点火部を収容する樹脂製の第2ホルダとを有している。上記第1ホルダは、上記中空部を規定する筒状の第1胴部と、上記ハウジング本体の径方向に沿って上記第1胴部から突出する環状突部とを含んでおり、上記第2ホルダは、上記中空部を規定する筒状の第2胴部を含んでいる。上記ハウジング本体は、径方向内側に向けて縮径した第1かしめ部と、上記第1かしめ部から見て上記開口端側に位置し、径方向内側に向けて縮径した第2かしめ部とを有しており、上記第1ホルダは、上記第1かしめ部および上記第2かしめ部によって上記環状突部が上記ハウジング本体の軸方向において挟み込まれることにより、上記ハウジング本体に固定されている。上記第1かしめ部は、上記第2胴部によって覆われているとともに、上記第2胴部の外周面の少なくとも一部に圧接触している。上記第2胴部のうち、上記第1かしめ部が圧接触することで径方向内側に向けて圧縮させられた部分の内周面であってかつ上記点火部の外周面に面する部分には、上記ハウジング本体の軸方向に沿って見た場合に上記第2胴部の周方向に沿って点列状に位置するとともに上記点火部側に向けて突出する複数の突起部が設けられている。上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記複数の突起部が上記点火部の外周面に当接することにより、上記点火部の外周面と上記第2胴部の内周面との間に間隙部が設けられている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、製造コストの増大を抑制しつつ所望のガス出力を安定して得ることができるガス発生器を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態1に係るシリンダ型ガス発生器の概略図である。
図2図1に示すシリンダ型ガス発生器の点火器近傍の拡大断面図である。
図3図1に示すシリンダ型ガス発生器の仕切り部材近傍の拡大断面図である。
図4図1に示す第2ホルダの斜視図である。
図5図1に示す第2ホルダの平面図、底面図および断面図である。
図6図1に示すシリンダ型ガス発生器におけるホルダ組立体の組付手順ならびに当該ホルダ組立体のハウジング本体への組付手順を示す模式断面図である。
図7図1に示すシリンダ型ガス発生器の断面図である。
図8図1に示すシリンダ型ガス発生器の要部拡大断面図である。
図9】実施の形態2に係るシリンダ型ガス発生器の点火器近傍の拡大断面図である。
図10】実施の形態3に係るシリンダ型ガス発生器の点火器近傍の拡大断面図である。
図11】実施の形態4に係るシリンダ型ガス発生器の点火器近傍の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態は、サイドエアバッグ装置に組み込まれるシリンダ型ガス発生器に本発明を適用した場合を例示するものである。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器の概略図である。図2および図3は、それぞれ図1に示すシリンダ型ガス発生器の点火器近傍の拡大断面図および仕切り部材近傍の拡大断面図である。まず、これら図1ないし図3を参照して、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Aの構成について説明する。
【0020】
図1ないし図3に示すように、シリンダ型ガス発生器1Aは、長尺円柱状の外形を有しており、軸方向に位置する一端および他端が閉塞された長尺略円筒状のハウジングを有している。ハウジングは、ハウジング本体10と、ホルダ組立体20と、閉塞部材30と、仕切り部材50とを含んでおり、このうちのハウジング本体10、ホルダ組立体20および閉塞部材30がハウジングの外殻を規定している。
【0021】
ハウジングの外殻を規定するハウジング本体10、ホルダ組立体20および閉塞部材30の内部には、内部構成部品としての点火器40、ガス発生剤60、オートイグニッション剤61、コイルバネ70およびフィルタ80等が収容されており、これらに加えて内部構成部品でもある上述した仕切り部材50が配置されている。また、ハウジングの内部には、上述した内部構成部品のうちのガス発生剤60、オートイグニッション剤61およびコイルバネ70が収容された燃焼室S1と、フィルタ80が収容されたフィルタ室S2とが位置している。
【0022】
ここで、ホルダ組立体20は、金属製の第1ホルダ20Aと、樹脂製の第2ホルダ20Bと、樹脂製の第3ホルダ20Cとを含んでいる。第1ホルダ20Aは、主として点火器40を保持する部材であり、第2ホルダ20Bは、主として指向性付与部材として機能するものであり、第3ホルダ20Cは、主として雌型コネクタを構成する部材である。なお、当該ホルダ組立体20の詳細については、後において説明することとする。
【0023】
ハウジング本体10は、ハウジングの周壁部を構成しており、軸方向の両端に開口が形成された長尺円筒状の部材からなる。ホルダ組立体20は、上述したように第1ホルダ20A、第2ホルダ20Bおよび第3ホルダ20Cを有しており、全体として見た場合に、ハウジング本体10の軸方向と平行な方向に沿って延びる中空部を有する略筒状の部材からなる。閉塞部材30は、略円盤状の部材からなる。
【0024】
ハウジング本体10は、ステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成されていてもよいし、SPCEに代表される圧延鋼板をプレス加工することで円筒状に成形したプレス成形品にて構成されていてもよい。また、ハウジング本体10は、STKMに代表される電縫管にて構成されていてもよい。
【0025】
特に、ハウジング本体10を圧延鋼板のプレス成形品や電縫管にて構成した場合には、ステンレス鋼や鉄鋼等の金属製の部材を用いた場合に比べて安価にかつ容易にハウジング本体10を形成することができるとともに、大幅な軽量化が可能になる。
【0026】
一方、ホルダ組立体20のうちの第1ホルダ20Aと、閉塞部材30とは、ステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成されている。
【0027】
ホルダ組立体20は、ハウジング本体10の軸方向の一方の開口端を閉塞するようにハウジング本体10に固定されている。具体的には、ハウジング本体10の上記一方の開口端にホルダ組立体20が内挿された状態で、当該ホルダ組立体20に向けてハウジング本体10の所定位置が径方向内側に向けて縮径させられるとともに、当該ホルダ組立体20に向けてハウジング本体10の他の所定位置が径方向内側に向けて縮径させられることにより、ホルダ組立体20がハウジング本体10に対してかしめ固定されている。これにより、ハウジングの軸方向の一端部がホルダ組立体20によって構成されることになる。
【0028】
閉塞部材30は、ハウジング本体10の軸方向の他方の開口端を閉塞するようにハウジング本体10に固定されている。具体的には、ハウジング本体10の上記他方の開口端に閉塞部材30が内挿されることでその軸方向の一端面がフィルタ80に当て留めされた状態で、当該閉塞部材30の軸方向の他端面の近傍に向けてハウジング本体10の所定位置が径方向内側に向けて縮径させられることにより、閉塞部材30がハウジング本体10に対してかしめ固定されている。これにより、ハウジングの軸方向の他端部が閉塞部材30によって構成されることになる。
【0029】
ここで、これらかしめ固定は、ハウジング本体10を径方向内側に向けて略均等に縮径させる八方かしめと呼ばれるかしめ固定である。この八方かしめを行なうことにより、ハウジング本体10には、ホルダ組立体20を固定するための第1かしめ部11および第2かしめ部12と、閉塞部材30を固定するための第3かしめ部13とが設けられることになる。これにより、ハウジング本体10とホルダ組立体20および閉塞部材30とがそれぞれ直接接触することになり、これらの間に隙間が生じることが防止されている。なお、ホルダ組立体20のハウジング本体10に対する固定については、後においてさらに詳細に説明することとする。
【0030】
ハウジング本体10に対する閉塞部材30の組付構造は、上述した組付構造に限定されるものではなく、他の組付構造を採用することとしてもよい。また、ハウジング本体10と閉塞部材30とを別体とはせずに、有底筒状の形状を有する一つの部材にてこれを構成することとしてもよい。
【0031】
図1および図2に示すように、点火器40は、ホルダ組立体20によって支持されることでハウジングの軸方向の上述した一端部に組付けられている。点火器40は、ガス発生剤60を燃焼させるためのものであり、ハウジングの内部の空間に面するように設置されている。
【0032】
点火器40は、火炎を発生させるためのものであり、スクイブとも称される。点火器40は、基部41と、点火部42と、一対の端子ピン43とを含んでいる。基部41は、点火部42および一対の端子ピン43を保持する部位であり、当該基部41には、一対の端子ピン43のうちの少なくとも一方が挿通されている。一対の端子ピン43は、シリンダ型ガス発生器1Aを外部に設けられた車両等のコントロールユニット(不図示)に電気的に接続するためのものである。
【0033】
点火部42は、その内部に、作動時において着火して燃焼することで火炎を発生する点火薬と、この点火薬を着火させるための抵抗体(ブリッジワイヤ)とを含んでいる。一対の端子ピン43は、点火薬を着火させるために点火部42に接続されている。
【0034】
より詳細には、点火部42は、カップ状に形成されたスクイブカップを含んでおり、このスクイブカップ内に挿入された一対の端子ピン43の先端を連結するように上述した抵抗体が取付けられ、この抵抗体を取り囲むようにまたはこの抵抗体に近接するようにスクイブカップ内に点火薬が装填された構成を有している。また、点火部42内には、必要に応じて伝火薬が装填されていてもよい。
【0035】
ここで、抵抗体としては、一般にニクロム線やプラチナおよびタングステンを含む合金製の抵抗線等が用いられ、点火薬としては、一般にZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、ZWPP(ジルコニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)、鉛トリシネート等が用いられる。また、伝火薬としては、B/KNO、B/NaNO、Sr(NO等に代表される金属粉/酸化剤からなる組成物や、水素化チタン/過塩素酸カリウムからなる組成物、B/5-アミノテトラゾール/硝酸カリウム/三酸化モリブデンからなる組成物等が用いられる。
【0036】
衝突を検知した際には、端子ピン43を介して抵抗体に所定量の電流が流れる。抵抗体に所定量の電流が流れることにより、抵抗体においてジュール熱が発生し、点火薬が燃焼を開始する。燃焼により生じた高温の熱粒子は、点火薬を収納しているスクイブカップを開裂させる。抵抗体に電流が流れてから点火器40が作動するまでの時間は、抵抗体にニクロム線を利用した場合には一般に2ミリ秒以下である。
【0037】
点火器40は、その点火部42が基部41よりも燃焼室S1側に向けて突出して位置するとともに、その一部がホルダ組立体20の上述した中空部の内部に配置された状態でホルダ組立体20に固定されている。これにより、点火器40は、その点火部42が燃焼室S1側に位置するとともに、その端子ピン43が燃焼室S1側とは反対側に位置している。
【0038】
ここで、ホルダ組立体20と点火器40との間の所定位置には、Oリング等からなるシール部材28が介装されており、これによってホルダ組立体20と点火器40との間の隙間がシール部材28によって埋め込まれることで当該隙間が封止されている。このように構成することにより、当該部分における気密性の確保が可能になるが、その詳細については後において詳述することとする。
【0039】
図1および図3に示すように、ハウジングの内部の空間の所定位置には、上述したようにハウジングの一部を構成する仕切り部材50が配置されている。仕切り部材50は、ハウジングの内部の空間を軸方向において燃焼室S1とフィルタ室S2とに仕切るための部材である。
【0040】
仕切り部材50は、有底円筒状の形状を有しており、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成されている。仕切り部材50は、ハウジング本体10の軸方向に直交するように配置された平板状の隔壁部51と、当該隔壁部51の周縁から燃焼室S1側に向けて立設された筒板状の環状壁部52とを有している。仕切り部材50は、その隔壁部51の外側の主面がフィルタ80に当接するように配置されており、環状壁部52の外周面は、ハウジング本体10の内周面に当接している。
【0041】
隔壁部51のフィルタ80に当接する主面には、スコア51aが設けられている。スコア51aは、ガス発生剤60の燃焼による燃焼室S1の内圧上昇に伴って隔壁部51が破断して開口部が形成されるようにするためのものであり、たとえば放射状に互いに交差するように設けられた複数の溝にて構成される。スコア51aは、フィルタ80のうちの空洞部81に対向する部分に設けられている。
【0042】
仕切り部材50は、ハウジング本体10に内挿された状態で当該ハウジング本体10に接合されることで組付けられている。より詳細には、仕切り部材50は、ハウジング本体10の内部に圧入されるとともに、仕切り部材50の環状壁部52とハウジング本体10との接触部またはその近傍においてこれらが溶接等によって接合されることにより、ハウジング本体10に固定されている。
【0043】
これにより、仕切り部材50が内挿された部分に対応するハウジングには、当該ハウジングの周方向に沿って延在する溶接部90が設けられることになり、この溶接部90によってハウジング本体10と仕切り部材50との間の隙間が埋め込まれることになる。そのため、当該隙間が溶接部90によって封止されることになり、当該部分における気密性の確保が可能になる。なお、ハウジング本体10と仕切り部材50との溶接には、電子ビーム溶接やレーザ溶接、抵抗溶接等が好適に利用できる。
【0044】
ここで、ハウジング本体10に対する仕切り部材50の組付構造は、上述した圧入および溶接を利用した組付構造に限られず、他の組付構造を採用することとしてもよい。また、その場合におけるハウジング本体10と仕切り部材50との間の気密性の確保は、Oリング等を適宜の位置に設けること等でこれを実現することができる。
【0045】
図1ないし図3に示すように、ハウジングの内部の空間のうち、ホルダ組立体20と仕切り部材50とによって挟まれた空間(すなわち燃焼室S1)には、ガス発生剤60と、オートイグニッション剤61と、コイルバネ70とが配置されている。
【0046】
このうち、コイルバネ70は、燃焼室S1のうちの仕切り部材50が位置する側に配置されており、ガス発生剤60は、ホルダ組立体20およびコイルバネ70の間に配置されている。また、オートイグニッション剤61は、仕切り部材50に当接するように、当該仕切り部材50およびコイルバネ70の間に配置されている。
【0047】
ガス発生剤60は、点火器40が作動することによって生じた熱粒子によって着火されて燃焼することでガスを発生させる薬剤である。ガス発生剤60としては、非アジド系ガス発生剤を用いることが好ましく、ガス発生剤60は、一般に燃料と酸化剤と添加剤とを含む成形体として構成される。
【0048】
燃料としては、たとえばトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、グアニジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体、ヒドラジン誘導体等またはこれらの組み合わせが利用される。具体的には、たとえばニトログアニジンや硝酸グアニジン、シアノグアニジン、5-アミノテトラゾール等が好適に利用される。
【0049】
酸化剤としては、たとえば塩基性硝酸銅、塩基性炭酸銅等の塩基性金属塩、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アンモニアから選ばれたカチオンを含む硝酸塩等が利用される。硝酸塩としては、たとえば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が好適に利用される。
【0050】
添加剤としては、バインダやスラグ形成剤、燃焼調整剤等が挙げられる。バインダとしては、たとえばカルボキシメチルセルロースの金属塩、ステアリン酸塩等の有機バインダや、合成ヒドロタルサイト、酸性白土等の無機バインダが好適に利用可能である。スラグ形成剤としては、窒化珪素、シリカ、酸性白土等が好適に利用可能である。燃焼調整剤としては、金属酸化物、フェロシリコン、活性炭、グラファイト等が好適に利用可能である。
【0051】
ガス発生剤60の成形体の形状には、顆粒状、ペレット状、円柱状等の粒状のもの、ディスク状のものなど様々な形状のものがある。また、円柱状のものでは、成形体内部に貫通孔を有する有孔状(たとえば単孔筒形状や多孔筒形状等)の成形体も利用される。これらの形状は、シリンダ型ガス発生器1Aが組み込まれるエアバッグ装置の仕様に応じて適宜選択されることが好ましく、たとえばガス発生剤60の燃焼時においてガスの生成速度が時間的に変化する形状を選択するなど、仕様に応じた最適な形状を選択することが好ましい。また、ガス発生剤60の形状の他にもガス発生剤60の線燃焼速度、圧力指数などを考慮に入れて成形体のサイズや充填量を適宜選択することが好ましい。
【0052】
コイルバネ70は、成形体からなるガス発生剤60が振動等によって粉砕されてしまうことを防止する目的で設けられるものであり、金属線材を曲げ加工することによって形成されたバネ部71およびその両端に位置する一対の押圧部72を有している。
【0053】
バネ部71は、金属線材が螺旋状に巻き回された略筒状の部位からなる。一方、一対の押圧部72は、その一方がバネ部71の一端に設けられており、他方がバネ部71の他端に設けられている。一対の押圧部72は、たとえば金属線材が所定の間隔をもって略平行に配置されるか、あるいは、金属線材が所定の間隔をもって渦巻き状に配置されることにより、全体として略円板状の形状を有するように構成されている。この一対の押圧部72の一方は、ガス発生剤60に接触しており、他方は、オートイグニッション剤61に接触している。
【0054】
ここで、コイルバネ70は、オートイグニッション剤61とガス発生剤60とによって挟み込まれることにより、圧縮された状態とされている。そのため、ガス発生剤60は、コイルバネ70によってホルダ組立体20側に向けて弾性付勢されることになり、これによってガス発生剤60が燃焼室S1の内部において移動してしまうことが防止されている。そのため、このように構成することにより、成形体からなるガス発生剤60が振動等によって粉砕されてしまうことが未然に防止できることになる。
【0055】
また、コイルバネ70の組付け時において、当該コイルバネ70がオートイグニッション剤61とガス発生剤60とによって挟み込まれて圧縮することにより、ハウジングの内部に収容される各種の構成部品の寸法ばらつきが当該コイルバネ70によって吸収できることにもなる。
【0056】
オートイグニッション剤61は、偏平略円柱状に成形されたペレットからなる。オートイグニッション剤61は、コイルバネ70から見てガス発生剤60が位置する側とは反対側(すなわちフィルタ80側)に配置されており、仕切り部材50の隔壁部51とコイルバネ70とによって挟み込まれて保持されている。これにより、オートイグニッション剤61は、コイルバネ70によってガス発生剤60と隔てられている。
【0057】
オートイグニッション剤61は、点火器40の作動に依らずに自動発火する薬剤である。より詳細には、オートイグニッション剤61は、ガス発生剤60よりも低い温度で自然発火するものであり、シリンダ型ガス発生器1Aが組み込まれたエアバッグ装置が装備された車両等において万が一火災等が発生した場合に、シリンダ型ガス発生器1Aが外部から加熱されることによって異常動作が誘発されないようにするためのものである。
【0058】
図1および図3に示すように、ハウジングの内部の空間のうち、閉塞部材30と仕切り部材50とによって挟まれた空間(すなわちフィルタ室S2)には、フィルタ80が配置されている。フィルタ80は、ハウジング本体10の軸方向と平行な方向に沿って延びる空洞部81を有する円筒状の部材からなり、その軸方向の一方の端面が閉塞部材30に当接しており、その軸方向の他方の端面が仕切り部材50の隔壁部51に当接している。
【0059】
フィルタ80は、ガス発生剤60が燃焼することによって発生したガスがこのフィルタ80中を通過する際に、ガスが有する高温の熱を奪い取ることによってガスを冷却する冷却手段として機能するとともに、ガス中に含まれるスラグ(残渣)等を除去する除去手段としても機能する。上述したように円筒状の部材からなるフィルタ80を利用することにより、作動時においてフィルタ室S2を流動するガスに対する流動抵抗が低く抑えられることになり、効率的なガスの流動が実現可能となる。
【0060】
フィルタ80としては、好適にはステンレス鋼や鉄鋼等からなる金属線材または金属網材の集合体にて構成されたものが利用できる。具体的には、メリヤス編みの金網や平織りの金網、クリンプ織りの金属線材の集合体、またはこれらをプレスにより押し固めたもの等が利用できる。
【0061】
また、フィルタ80として、孔あき金属板を巻き回したもの等を利用することもできる。この場合、孔あき金属板としては、たとえば、金属板に千鳥状に切れ目を入れるとともにこれを押し広げて孔を形成して網目状に加工したエキスパンドメタルや、金属板に孔を穿つとともにその際に孔の周縁に生じるバリを潰すことでこれを平坦化したフックメタル等が利用できる。
【0062】
フィルタ室S2を規定する部分のハウジング本体10には、ガス噴出口14が周方向および軸方向に沿って複数設けられている。これら複数のガス噴出口14は、フィルタ80を通過した後のガスをハウジングの外部に導出するためのものである。
【0063】
次に、図1を参照して、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Aの作動時における動作について説明する。
【0064】
図1を参照して、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Aが搭載された車両が衝突した場合には、車両に別途設けられた衝突検知手段によって衝突が検知され、これに基づいて車両に別途設けられたコントロールユニットからの通電によって点火器40が作動する。
【0065】
点火器40が作動すると、点火薬またはこれに加えて伝火薬が燃焼することによって点火部42内の圧力が上昇し、これによって点火部42のスクイブカップが開裂し、点火薬またはこれに加えて伝火薬が燃焼することで発生した熱粒子が点火部42の外部へと流出する。ガス発生剤60に達した熱粒子は、ガス発生剤60を燃焼させ、これにより燃焼室S1内において多量のガスが発生する。
【0066】
これに伴い、燃焼室S1の圧力が上昇し、当該燃焼室S1の内圧が所定の圧力にまで達することにより、仕切り部材50のうちのスコア51aが設けられた部分に破断が生じる。これにより、フィルタ80の空洞部81に対向する部分において仕切り部材50に開口部が形成されることになり、燃焼室S1とフィルタ室S2とが当該開口部を介して連通した状態となる。
【0067】
これに伴い、燃焼室S1において発生したガスが、仕切り部材50に形成された開口部を介してフィルタ室S2へと流入する。フィルタ室S2に流れ込んだガスは、フィルタ80の空洞部81を軸方向に沿って流動した後に径方向に向けて向きを変え、フィルタ80の内部を通流する。その際に、フィルタ80によって熱が奪われてガスが冷却されるとともに、ガス中に含まれるスラグがフィルタ80によって除去される。
【0068】
そして、フィルタ80を通流した後のガスは、ハウジング本体10に設けられたガス噴出口14を介してハウジングの外部へと噴出される。噴出されたガスは、シリンダ型ガス発生器1Aに隣接して設けられたエアバッグの内部に導入され、エアバッグを膨張および展開する。なお、オートイグニッション剤61は、ガス発生剤60の燃焼時において共に燃焼することになる。
【0069】
図4(A)および図4(B)は、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器が具備するホルダ組立体のうちの第2ホルダの斜視図である。図5(A)および図5(B)は、それぞれ当該第2ホルダの平面図および底面図であり、図5(C)は、図5(A)および図5(B)中に示すVC-VC線に沿った断面図である。図6(A)ないし図6(C)は、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器におけるホルダ組立体の組付手順ならびに当該ホルダ組立体のハウジング本体への組付手順を段階的に示した模式断面図である。図7は、図2中に示すVII-VII線に沿った断面図であり、図8(A)および図8(B)は、それぞれ図7中に示すVIIIA-VIIIA線およびVIIIB-VIIIB線に沿った要部拡大断面図である。次に、これら図4(A)ないし図8(B)と前述の図2とを参照して、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Aにおける点火器40近傍の詳細な構造について説明する。
【0070】
図2を参照して、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、上述したように、ハウジングの軸方向の上述した一端部を閉塞するようにハウジング本体10に組付けられたホルダ組立体20によって点火器40が支持されており、これによりハウジングの軸方向の当該一端部に点火器40が組付けられている。ホルダ組立体20は、金属製の第1ホルダ20Aと、樹脂製の第2ホルダ20Bと、樹脂製の第3ホルダ20Cとを含んでおり、当該ホルダ組立体20は、ハウジング本体10の所定位置に設けられた第1かしめ部11および第2かしめ部12によってハウジング本体10に固定されている。
【0071】
図2に示すように、第1ホルダ20Aは、その中央部に軸方向に沿って延びる貫通部を有する偏平な略円盤状の部材にて構成されており、筒状の第1胴部21と、第1胴部21の外周面から外側に向けて突出する環状突部22とを含んでいる。
【0072】
第1ホルダ20Aは、その軸方向がハウジング本体10の軸方向と平行となるようにハウジング本体10に内挿されている。これにより、第1ホルダ20Aに設けられた貫通部は、ホルダ組立体20の上述した中空部の一部を規定しており、また、環状突部22は、ハウジング本体10の径方向に沿って第1胴部21から外側に向けて突出している。なお、上述した環状突部22は、第1胴部21の燃焼室S1側の端部に設けられている。
【0073】
第1ホルダ20Aは、点火器40を受け入れてこれを保持するための部材であり、点火器40を受け入れるために、その軸方向の燃焼室S1側の端部に凹状形状の第1収容部21aを有している。この第1収容部21aは、第1ホルダ20Aに設けられた貫通部に通じており、ホルダ組立体20の上述した中空部の一部を規定している。また、第1ホルダ20Aの燃焼室S1側の端部には、第1収容部21aを取り囲むようにかしめ部21bが設けられている。かしめ部21bは、点火器40を第1ホルダ20Aにかしめ固定するための部位である。
【0074】
点火器40は、その基部41が第1ホルダ20Aの第1収容部21aに収容された状態で第1ホルダ20Aに固定されている。具体的には、第1ホルダ20Aの第1収容部21aに基部41が挿入されるとともに、当該基部41が第1収容部21aの底面に当て留めされ、この状態において第1ホルダ20Aに設けられたかしめ部21bが折り曲げられることにより、点火器40が第1ホルダ20Aに固定されている。これにより、点火器40は、第1ホルダ20Aによって保持されることになる。
【0075】
ここで、上述したOリング等からなるシール部材28は、これら第1ホルダ20Aと点火器40との間に介装されている。具体的には、シール部材28は、第1ホルダ20Aの第1収容部21aの底面の外縁上に配置されている。これにより、シール部材28は、上述したかしめ部21bがかしめられることによって発生する押圧力により、第1ホルダ20Aと点火器40とによって挟み込まれて圧縮し、これによってホルダ組立体20と点火器40との間に生じる隙間が封止されることになる。
【0076】
図2および図4(A)ないし図5(C)に示すように、第2ホルダ20Bは、その中央部に軸方向に沿って延びる概ね貫通孔形状の第2収容部23aを有する略円筒状の部材にて構成されており、筒状の第2胴部23と、第2収容部23aの軸方向の一端を覆うように設けられた蓋部26とを含んでいる。
【0077】
第2ホルダ20Bは、第1ホルダ20Aから見て燃焼室S1側に配置されており、当該第1ホルダ20Aに隣接して位置している。第2ホルダ20Bは、その軸方向がハウジング本体10の軸方向と平行となるようにハウジング本体10に内挿されている。これにより、第2ホルダ20Bに設けられた第2収容部23aは、ホルダ組立体20の上述した中空部の一部を規定している。
【0078】
第2ホルダ20Bに設けられた第2収容部23aには、点火器40の点火部42が収容されている。すなわち、第2ホルダ20Bは、第1ホルダ20Aによって保持された点火器40の点火部42の周囲を取り囲むように位置しており、これにより第2ホルダ20Bの第2胴部23のうちの第1ホルダ20A寄りの部分が、点火部42の周面を取り囲むように位置している。
【0079】
上述した蓋部26は、点火部42から所定距離だけ離れて位置するように、第2胴部23の第1ホルダ20A側とは反対側の軸方向端部に設けられている。ここで、第2胴部23は、ハウジング本体10の軸方向に沿って点火部42よりもさらに燃焼室S1側に向けて突出して位置するように延在しており、その先端側の軸方向端部に蓋部26が設けられることにより、蓋部26は、点火部42から所定距離だけ離れて位置している。
【0080】
蓋部26には、複数の開口部26aが設けられており、ハウジング本体10の軸方向に沿って見た場合におけるこれら複数の開口部26aの各々の最大外形寸法は、ガス発生剤60の最小外形寸法よりも小さく構成されている。より詳細には、本実施の形態においては、蓋部26の中央部に円形状の1つの開口部26aが設けられるとともに、これを取り囲むように湾曲長孔形状の3つの開口部26aが設けられており、これにより各開口部26aの最大外形寸法が、ガス発生剤60の最小外形寸法よりも小さく構成されている。
【0081】
これにより、点火部42から見て基部41側とは反対側に位置する部分の第2収容部23aが点火部42から所定距離だけ離れた位置において蓋部26によって実質的に閉じられることになり、ガス発生剤60が第2収容部23aに侵入することが防止されるとともに、ガス発生剤60が点火部42から距離をもって配置されるように隔てられることになる。
【0082】
このように、第2ホルダ20Bは、点火器40の点火部42とハウジング本体10との間の隙間を埋めることにより、シリンダ型ガス発生器1Aの作動時において点火部42にて発生する熱粒子の進行方向に指向性を与える指向性付与部材として機能するものであり、特に、第2ホルダ20Bのうちの第2胴部23が、当該機能を有している。
【0083】
また、第2ホルダ20Bは、点火部42とガス発生剤60との間の距離を予め定めた適切な距離に維持するためのスペーサとしても機能するものであり、特に、第2ホルダ20Bのうちの蓋部26が、当該機能を有している。
【0084】
ここで、第2ホルダ20Bの第1ホルダ20A側に位置する軸方向端部には、第2胴部23の一部が切り欠かれることで形成された第1環状段差部23bが設けられている。この第1環状段差部23bは、第2胴部23の第1ホルダ20A側の端部の内縁に設けられている。この第2ホルダ20Bに設けられた第1環状段差部23bには、第1ホルダ20Aのかしめ部21bが嵌め込まれている。
【0085】
図2に示すように、第3ホルダ20Cは、その中央部に軸方向に沿って延びる貫通孔形状の第3収容部27aを有する略円筒状の部材にて構成されており、筒状の第3胴部27を含んでいる。
【0086】
第3ホルダ20Cは、第1ホルダ20Aから見て燃焼室S1側とは反対側に配置されており、当該第1ホルダ20Aに隣接して位置している。第3ホルダ20Cは、その軸方向がハウジング本体10の軸方向と平行となるようにハウジング本体10に内挿されている。これにより、第3ホルダ20Cに設けられた第3収容部27aは、ホルダ組立体20の上述した中空部の一部を規定している。
【0087】
第3ホルダ20Cに設けられた第3収容部27aには、点火器40の一対の端子ピン43が収容されている。すなわち、第3ホルダ20Cは、第1ホルダ20Aによって保持された点火器40の一対の端子ピン43の周囲を取り囲むように位置しており、これにより第3ホルダ20Cの内部には、点火器40の一対の端子ピン43が配置されている。当該第3収容部27aは、上述したハーネスの接続コネクタを受け入れるための部位を構成している。
【0088】
より詳細には、上述したように、シリンダ型ガス発生器1Aにおいては、点火器40が、外部に設けられた車両等のコントロールユニットと電気的に接続される必要があり、この電気的な接続には、通常ハーネスが用いられる。このハーネスの先端には、雄型コネクタが取付けられており、第3ホルダ20Cには、この雄型コネクタに接続可能な雌型コネクタが設けられる必要がある。第3ホルダ20Cに設けられた第3収容部27aは、この雌型コネクタを構成している。
【0089】
なお、雌型コネクタとして機能する第3収容部27aにハーネスの雄型コネクタが挿し込まれることにより、ハーネスの芯線と端子ピン43との電気的導通が実現されることになる。そのため、これにより点火器40と車両等のコントロールユニットとの結線が行なわれることになる。
【0090】
ここで、第3ホルダ20Cの第1ホルダ20A側に位置する軸方向端部には、第3胴部27の一部が切り欠かれることで形成された第2環状段差部27bが設けられている。この第2環状段差部27bは、第3胴部27の第1ホルダ20A側の端部の内縁に設けられている。この第3ホルダ20Cに設けられた第2環状段差部27bには、第1ホルダ20Aの第1胴部21の燃焼室S1側とは反対側の軸方向端部が嵌め込まれている。
【0091】
上述した第2ホルダ20Bおよび第3ホルダ20Cの材質としては、特にこれが制限されるものではないが、たとえば6ナイロン、66ナイロン、および、これらにガラスフィラーが充填されたもの等に代表されるようなナイロン系樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂等を好適に用いることができる。また、第2ホルダ20Bと第3ホルダ20Cとは、同種の材料にて構成されていてもよいし、異種の材料によって構成されていてもよい。
【0092】
以上のように構成することにより、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、上述したように、指向性付与部材としての機能を第2ホルダ20Bに具備させることができる。すなわち、点火部42とハウジング本体10との間の隙間が第2ホルダ20Bによって実質的に埋め込まれることにより、シリンダ型ガス発生器1Aの作動時においてスクイブカップの開裂の程度が意図的に制限されることになるため、当該スクイブカップのうちのガス発生剤60側に位置する先端部において主として開口が形成されることになり、これに伴って点火部42にて発生する熱粒子の進行方向がハウジング本体10の軸方向に絞られることになる。そのため、点火部42にて発生する熱粒子を効率的にガス発生剤60に導くことが可能になり、所望のガス出力を得るために必要となるガス発生剤60の充填量を削減することが可能になる。
【0093】
また、点火部42とハウジング本体10との間の隙間が第2ホルダ20Bによって実質的に埋め込まれることにより、当該部分を埋め込まない場合に比べて燃焼室S1の容積を減少させることが可能になり、シリンダ型ガス発生器1Aの作動時において燃焼室S1の内圧上昇が促進されることになる。そのため、この点にもいても効率的にガス発生剤60を燃焼させることが可能になるため、所望のガス出力を得るために必要となるガス発生剤60の充填量を削減することが可能になる。
【0094】
また、上記のように構成することにより、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、上述したように、第2ホルダ20Bに蓋部26が設けられることにより、点火部42とガス発生剤60との間の距離を予め定めた適切な距離に維持するためのスペーサとしての機能を第2ホルダ20Bに具備させている。したがって、このように構成することにより、点火器40とガス発生剤60との間の距離に個体差が生じ難くなり、シリンダ型ガス発生器1Aの作動時において、所望のガス出力を安定して得ることが可能になる。
【0095】
図6(A)ないし図6(C)に示すように、ハウジング本体10の軸方向の上記一端部に点火器40を組付けるに際しては、まず、ホルダ組立体20および点火器40が組み立てられることでこれらホルダ組立体20および点火器40がサブアセンブリ化され、その後、このサブアセンブリ化されたホルダ組立体20および点火器40(以下、これを点火器組立体と称する)がハウジング本体10に組付けられる。
【0096】
具体的には、図6(A)に示すように、点火器40およびシール部材28が予め組付けられてなる第1ホルダ20Aが準備され、当該第1ホルダ20Aに対して第2ホルダ20Bおよび第3ホルダ20Cが組付けられることにより、点火器組立体が製作される。
【0097】
第2ホルダ20Bは、その第2収容部23aに点火部42が収容されることとなるように、図中矢印DR1方向に向けて第1ホルダ20Aに組付けられる。このとき、第2ホルダ20Bに設けられた第1環状段差部23bに第1ホルダ20Aのかしめ部21bが嵌め込まれるようにするとともに、第2ホルダ20Bの第2胴部23に点火部42が圧入される。なお、この第2胴部23に対する点火部42の圧入については、後において詳述することとする。これにより、第2ホルダ20Bが第1ホルダ20Aに対して固定されることになる。
【0098】
第3ホルダ20Cは、その第3収容部27aに一対の端子ピン43が収容されることとなるように、図中矢印DR2方向に向けて第1ホルダ20Aに組付けられる。このとき、第3ホルダ20Cに設けられた第2環状段差部27bに第1ホルダ20Aの軸方向端部が嵌め込まれることで圧入される。これにより、第3ホルダ20Cが第1ホルダ20Aに対して固定されることになる。
【0099】
次に、図6(B)に示すように、第1ホルダ20A、第2ホルダ20B、第3ホルダ20C、点火器40およびシール部材28が組み立てられることで製作された点火器組立体が、図中矢印DR3方向に向けてハウジング本体10の軸方向の上述した一端部に内挿されることで圧入される。これにより、第1ホルダ20A、第2ホルダ20Bおよび第3ホルダ20Cの各々の最大外径部分に該当する外周面がハウジング本体10の内周面に圧接触することになり、ハウジング本体10に内挿された点火器組立体が、当該ハウジング本体10の内部の所定位置に位置決めして配置されることにより、当該所定位置において点火器組立体がハウジング本体10によって保持されることになる。
【0100】
次に、図6(C)に示すように、ハウジング本体10が、所定位置において径方向内側に向けて縮径させられることにより、点火器組立体がハウジング本体10にかしめ固定される。
【0101】
具体的には、ハウジング本体10は、第2ホルダ20Bのうちの第1ホルダ20Aに隣接する部分に対応した位置において図中に示す矢印A方向に向けて縮径させられるとともに、第3ホルダ20Cのうちの第1ホルダ20Aに隣接する部分に対応した位置において図中に示す矢印B方向に向けて縮径させられる。ハウジング本体10に対するこれら2箇所における縮径加工は、いずれも上述した八方かしめと呼ばれるかしめであり、専用のかしめ機が用いられることで同時に行なわれる。
【0102】
これにより、図2に示すように、当該2箇所において縮径したハウジング本体10により、第1ホルダ20Aの環状突部22が、ハウジング本体10の軸方向において挟み込まれることになる。すなわち、ハウジング本体10の縮径した上記2箇所である第1かしめ部11および第2かしめ部12により、環状突部22が移動不能に挟持された状態となり、これによってホルダ組立体20を含む点火器組立体がハウジング本体10にかしめ固定される。
【0103】
また、その際、図2に示すように、第1かしめ部11は、その内周面が第2ホルダ20Bの第2胴部23の外周面に圧接触するように縮径されるとともに、第2かしめ部12は、その内周面が第3ホルダ20Cの第3胴部27の外周面に圧接触するように縮径される。これにより、第1かしめ部11と第2ホルダ20Bとが密着することになるとともに、第2かしめ部12と第3ホルダ20Cとが密着することになり、ハウジング本体10とホルダ組立体20との間に隙間が生じることが防止され、これにより当該隙間が封止されることになる。なお、このかしめによる固定だけでは封止性能が不十分である場合には、ハウジング本体10とホルダ組立体20との間に液状のシール剤を塗布すること等によって封止性能を確保してもよい。
【0104】
ここで、上述したように、第1ホルダ20Aに対する第2ホルダ20Bの組付けの際には、第2ホルダ20Bに設けられた第1環状段差部23bに第1ホルダ20Aのかしめ部21bが嵌め込まれるのみならず、第2ホルダ20Bの第2胴部23に点火部42が圧入される。これは、かしめ部21bの形状や大きさに起因して、第1環状段差部23bにかしめ部21bを圧入することが困難であるためである。また、仮に第1ホルダ20Aに対して第2ホルダ20Bを十分には固定しなかった場合には、後において実施される上述したハウジング本体10に対する点火器組立体のかしめ固定の際に第2ホルダ20Bが位置ずれを起こしてしまう可能性がある。
【0105】
しかしながら、第2胴部23に点火部42を圧入するに際しては、当該圧入による点火部42の変形(すなわちスクイブカップの変形)を可能な限り抑制することが必要になる。これは、当該圧入によって点火部42が大きく変形した場合には、この変形に伴って作動時における点火薬の燃焼性能に少なからず影響が生じる可能性があり、ひいてはこれがシリンダ型ガス発生器1Aの出力特性に悪影響を生じさせるおそれがあるためである。
【0106】
加えて、ハウジング本体10に対する点火器組立体のかしめ固定の際には、第1かしめ部11が形成される部分のハウジング本体10の内周面が第2ホルダ20Bの第2胴部23の外周面に圧接触するようにハウジング本体10が縮径されることに伴い、当該部分において第2胴部23にも局所的に圧縮力が加わる。そのため、これに伴って点火部42に対しても第2胴部23を介して圧縮力が作用することになり、この圧縮力に起因して点火部42が大きく変形するおそれがある。そのため、このハウジング本体10に対する点火器組立体のかしめ固定の際にも、点火部42が変形することを可能な限り抑制することが必要になる。
【0107】
この点、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Aにあっては、第2胴部23に対して点火部42を圧入しつつも、これによる点火部42の変形を最小限に抑制することを可能にするとともに、ハウジング本体10に対する点火器組立体のかしめ固定の際にも、点火部42が変形することを可能な限り抑制可能にしている。以下、その仕組みについて詳細に説明する。
【0108】
図4(A)ないし図5(C)に示すように、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Aにあっては、第2ホルダ20Bの第2胴部23のうち、第1かしめ部11が圧接触することで径方向内側に向けて圧縮させられる部分の内周面であってかつ点火部42の外周面に面する部分に、複数の突起部24が設けられている。これら複数の突起部24は、第2ホルダ20Bの軸方向(すなわち、組付け後の状態におけるハウジング本体10の軸方向)に沿って見た場合に、第2胴部23の周方向に沿って点列状に位置するとともに、点火部42側に向けて突出している。
【0109】
ここで、図2および図7に示すように、第2ホルダ20Bの内径(すなわち、第2収容部23aの直径)は、点火部42の直径よりも僅かに大きく構成されており、当該複数の突起部24は、第2ホルダ20Bの第2胴部23に点火部42が内挿された状態において、それらの先端が点火部42の外周面に比較的弱い力にて圧接触するようにその突出量が調整されている。
【0110】
そのため、第2胴部23に対する点火部42の圧入の際ならびに圧入後の状態においては、複数の突起部24のみが点火部42の外周面に当接することになり、これら突起部24が設けられた部分以外の部分においては、点火部42の外周面と第2胴部23の内周面との間に間隙部(当該圧入後の状態を表わした図7図8(A)および図8(B)において符号Gで示す部分)が形成されることになる。
【0111】
したがって、このように構成することにより、第2胴部23に対する点火部42の圧入の際ならびに圧入後の状態において、点火部42と第2胴部23とが対向する領域において、その大部分が当該間隙部Gによって隔てられる(すなわち、直接的に接触しない)ことになり、点火部42に対しては複数の突起部24の先端部のみが圧接触することになる。そのため、第2胴部23に対して点火部42を圧入しつつも、これによる点火部42の変形を最小限に抑制することが可能になる。
【0112】
加えて、特に図7図8(A)および図8(B)に示すように、ハウジング本体10に対する点火器組立体のかしめ固定の際にも、点火部42に対しては複数の突起部24の先端部のみが比較的弱い力にて圧接触した状態にあるため、ハウジング本体10が縮径されることで第2胴部23に対して印加される圧縮力のうちの大部分が、間隙部Gが設けられることによって点火部42には伝搬せず、複数の突起部24と当接した部分においてのみこれが点火部42に伝搬することになる。そのため、ハウジング本体10に対する点火器組立体のかしめ固定の際にも、点火部42が変形することが抑制可能になる。
【0113】
ここで、これら複数の突起部24は、点火部42の軸線と直交する方向において当該軸線を挟み込まないように配置されていることが好ましい。このように構成することにより、複数の突起部24が点火部42に圧接触することで点火部42に印加される力の方向が互いに交差することになり(換言すれば、これら力が同一直線上において逆向きに重なることが回避できることになり)、点火部42が変形することをより確実に抑制することが可能になる。
【0114】
また、これら複数の突起部24は、第2胴部23の周方向に沿って均等に設けられていることが好ましい。このように構成することにより、点火部42に加わる力を分散させることが可能になるため、点火部42が変形することをより確実に抑制することが可能になる。
【0115】
これらの観点に基づけば、複数の突起部24は、第2胴部23の周方向に沿って均等に奇数個設けられていることが最も好ましく、本実施の形態においては、これら複数の突起部24が、第2胴部23の周方向に沿って均等に3個設けられている。
【0116】
加えて、図2および図4(A)ないし図8(B)に示すように、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、第2ホルダ20Bの第2胴部23のうちの複数の突起部24が設けられた部分の径方向外側の位置に、当該第2胴部23を周回するように溝部25が設けられている。当該溝部25は、第2胴部23の第1ホルダ20A側の軸方向端面に設けられている。
【0117】
このように構成することにより、第2胴部23のうちの複数の突起部24が設けられた部分の剛性を相当程度に低減することができるため、第2胴部23に対する点火部42の圧入の際ならびに圧入後の状態において、複数の突起部24によって点火部42に印加される力を低減することが可能になる。したがって、第2胴部23に対して点火部42を圧入しつつも、点火部42が変形することがより確実に抑制できることになる。
【0118】
また、このように構成することにより、ハウジング本体10に対する点火器組立体のかしめ固定の際にも、ハウジング本体10が縮径されることで第2胴部23に対して印加される圧縮力が当該溝部25を設けることによって第2胴部23によって効果的に吸収されることになる。したがって、ハウジング本体10に対する点火器組立体のかしめ固定の際にも、点火部42が変形することがより確実に抑制できることになる。
【0119】
以上において説明したように、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Aとすることにより、点火部42の変形を抑制しつつ第2胴部23に対して点火部42を圧入することにより、第2ホルダ20Bを第1ホルダ20Aに対して強固に固定することが可能になるとともに、ハウジング本体10に第1かしめ部11および第2かしめ部12を設けることにより、第1ホルダ20A、第2ホルダ20Bおよび第3ホルダ20Cならびに点火器40等を含む点火器組立体を当該ハウジング本体10に対して強固に固定することが可能になる。
【0120】
そのため、上記構成を採用することにより、指向性付与部材としての機能を有する第2ホルダ20Bを含むホルダ組立体20、さらには当該ホルダ組立体20を含む点火器組立体を、ハウジングに対して移動不能に安定的に固定することが可能になる。したがって、ハウジング本体10の内部において指向性付与部材としての第2ホルダ20Bが位置ずれを起こすことが抑制できるため、点火器40とガス発生剤60との間の距離に個体差が生じ難くなり、所望のガス出力を安定して得ることができるシリンダ型ガス発生器とすることができる。
【0121】
また、当該構成を採用した場合には、比較的簡素な構成にて指向性付与部材としての機能を有する第2ホルダ20Bをシリンダ型ガス発生器1Aに具備させることが可能になり、しかも圧入やかしめといった比較的容易な組付作業を経ることでこれを組付けることが可能になるため、製造コストの増大を抑制することもできる。
【0122】
したがって、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Aとすれば、製造コストの増大を抑制しつつ所望のガス出力を安定して得ることができるシリンダ型ガス発生器とすることができる。
【0123】
加えて、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、上述したように、第2ホルダ20Bに蓋部26が設けられることにより、点火器40とガス発生剤60との間の距離に個体差が生じ難くなる。したがって、この点においても、所望のガス出力を安定して得ることができるシリンダ型ガス発生器とすることができる。
【0124】
ここで、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、上記構成を採用することにより、第1かしめ部11が設けられた部分のハウジング本体10が、燃焼室S1を規定する部分のハウジング本体10とは異なり、ハウジング本体10の軸方向において湾曲した形状を有することになる。そのため、第1かしめ部11が設けられた部分のハウジング本体10は、燃焼室S1を規定する部分のハウジング本体10に比較してその強度が劣ることになる。
【0125】
しかしながら、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、第1かしめ部11の内周面が、第2ホルダ20Bの第2胴部23によって実質的に覆われることになるため、シリンダ型ガス発生器1Aの作動時において、第2ホルダ20Bの第2胴部23が当該第1かしめ部11を保護することになる。したがって、シリンダ型ガス発生器1A全体としてみた場合の耐圧性能も向上することになる。
【0126】
(実施の形態2)
図9は、実施の形態2に係るシリンダ型ガス発生器の点火器近傍の拡大断面図である。以下、この図9を参照して、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Bについて説明する。
【0127】
図9に示すように、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Bは、上述した実施の形態1に係るシリンダ型ガス発生器1Aと比較した場合に、第2ホルダ20Bの第2胴部23に溝部25(図2等参照)が設けられていない点においてのみその構成が相違しているものの、その他の構成については、上述したシリンダ型ガス発生器1Aと同様である。
【0128】
そのため、このように構成した場合にも、上述した実施の形態1において説明した効果のうち、第2胴部23に溝部25を設けることで得られる効果以外のすべての効果が得られることになるため、製造コストの増大を抑制しつつ所望のガス出力を安定して得ることができるシリンダ型ガス発生器とすることができる。
【0129】
(実施の形態3)
図10は、実施の形態3に係るシリンダ型ガス発生器の点火器近傍の拡大断面図である。以下、この図10を参照して、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Cについて説明する。
【0130】
図10に示すように、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Cは、上述した実施の形態1に係るシリンダ型ガス発生器1Aと比較した場合に、第2ホルダ20Bに蓋部26(図2等参照)が設けられていない点においてのみその構成が相違しているものの、その他の構成については、上述したシリンダ型ガス発生器1Aと同様である。
【0131】
そのため、このように構成した場合にも、上述した実施の形態1において説明した効果のうち、第2ホルダ20Bに蓋部26を設けることで得られる効果以外のすべての効果が得られることになるため、製造コストの増大を抑制しつつ所望のガス出力を安定して得ることができるシリンダ型ガス発生器とすることができる。
【0132】
(実施の形態4)
図11は、実施の形態4に係るシリンダ型ガス発生器の点火器近傍の拡大断面図である。以下、この図11を参照して、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Dについて説明する。
【0133】
図11に示すように、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Dは、上述した実施の形態1に係るシリンダ型ガス発生器1Aと比較した場合に、第2ホルダ20Bに蓋部26(図2等参照)が設けられていない点、ならびに、第2ホルダ20Bの第2胴部23が点火部42とハウジング本体10との間の空間のみを充填する大きさに構成されている点においてのみその構成が相違しているものの、その他の構成については、上述したシリンダ型ガス発生器1Aと同様である。
【0134】
そのため、このように構成した場合にも、上述した実施の形態1において説明した効果のうち、第2ホルダ20Bに蓋部26を設けることで得られる効果以外のすべての効果が得られることになるため、製造コストの増大を抑制しつつ所望のガス出力を安定して得ることができるシリンダ型ガス発生器とすることができる。
【0135】
(実施の形態1ないし4の要約)
上述した実施の形態1ないし4において開示したガス発生器の特徴的な構成を要約すると、以下のとおりとなる。
【0136】
[付記1]
ガス発生剤が収容された燃焼室を内部に含む筒状の金属製のハウジング本体と、
上記ハウジング本体の軸方向の開口端に内挿され、上記ハウジング本体の軸方向と平行な方向に沿って延びる中空部を含むホルダ組立体と、
点火薬が装填された点火部、上記点火部に接続された端子ピン、ならびに、上記端子ピンが挿通されるとともに上記点火部および上記端子ピンの双方を支持する基部を含み、上記点火部が上記燃焼室側に位置しかつ上記端子ピンが上記燃焼室側とは反対側に位置した状態で上記中空部の内部に少なくともその一部が配置された点火器とを備え、
上記ホルダ組立体は、上記基部を受け入れることで上記点火器を保持する金属製の第1ホルダと、上記第1ホルダから見て上記燃焼室側に位置するとともに上記点火部を収容する樹脂製の第2ホルダとを有し、
上記第1ホルダは、上記中空部を規定する筒状の第1胴部と、上記ハウジング本体の径方向に沿って上記第1胴部から突出する環状突部とを含み、
上記第2ホルダは、上記中空部を規定する筒状の第2胴部を含み、
上記ハウジング本体は、径方向内側に向けて縮径した第1かしめ部と、上記第1かしめ部から見て上記開口端側に位置し、径方向内側に向けて縮径した第2かしめ部とを有し、
上記第1ホルダは、上記第1かしめ部および上記第2かしめ部によって上記環状突部が上記ハウジング本体の軸方向において挟み込まれることにより、上記ハウジング本体に固定され、
上記第1かしめ部は、上記第2胴部によって覆われているとともに、上記第2胴部の外周面の少なくとも一部に圧接触し、
上記第2胴部のうち、上記第1かしめ部が圧接触することで径方向内側に向けて圧縮させられた部分の内周面であってかつ上記点火部の外周面に面する部分には、上記ハウジング本体の軸方向に沿って見た場合に上記第2胴部の周方向に沿って点列状に位置するとともに上記点火部側に向けて突出する複数の突起部が設けられ、
上記複数の突起部が上記点火部の外周面に当接することにより、上記点火部の外周面と上記第2胴部の内周面との間に間隙部が設けられている、ガス発生器。
【0137】
[付記2]
上記複数の突起部が、上記点火部の軸線と直交する方向において当該軸線を挟み込まないように配置されている、付記1に記載のガス発生器。
【0138】
[付記3]
上記複数の突起部が、上記第2胴部の周方向に沿って均等に配置されている、付記1または2に記載のガス発生器。
【0139】
[付記4]
上記第2胴部のうちの上記複数の突起部が設けられた部分の径方向外側の位置に、上記第2胴部を周回するように溝部が設けられている、付記1から3のいずれかに記載のガス発生器。
【0140】
[付記5]
上記第1ホルダ側に位置する上記第2ホルダの軸方向端部が、上記第1ホルダに嵌め込まれることで上記第1ホルダに固定されている、付記1から4のいずれかに記載のガス発生器。
【0141】
[付記6]
上記ホルダ組立体が、上記第1ホルダから見て上記燃焼室側とは反対側に位置するとともに上記端子ピンに接続される接続コネクタを受け入れ可能な樹脂製の第3ホルダをさらに有し、
上記第3ホルダは、上記中空部を規定する筒状の第3胴部を含み、
上記第2かしめ部が、上記第3胴部の外周面の少なくとも一部に圧接触している、付記1から5のいずれかに記載のガス発生器。
【0142】
[付記7]
上記第1ホルダ側に位置する上記第3ホルダの軸方向端部が、上記第1ホルダに嵌め込まれることで上記第1ホルダに固定されている、付記6に記載のガス発生器。
【0143】
(その他の形態等)
上述した本発明の実施の形態1ないし4においては、主として点火器を保持する機能を有する金属製の第1ホルダと、主として指向性付与部材としての機能を有する樹脂製の第2ホルダと、主として雌型コネクタ部を構成する樹脂製の第3ホルダとによってホルダ組立体を構成した場合を例示して説明を行なったが、第1ホルダと第3ホルダとは、これらを単一の部材にて兼用することとしてもよい。その場合には、当該単一の部材を金属製とし、これに点火器を保持する機能をもたせつつこれに雌型コネクタ部を設けることとすればよい。
【0144】
また、上述した本発明の実施の形態1および2においては、第2ホルダの蓋部に複数の開口部を設けた場合を例示して説明を行なったが、蓋部に単一の開口部を設けることとしてもよい。また、蓋部自体を薄く脆弱に構成したり蓋部にスコアを設けたりすること等により、シリンダ型ガス発生器の作動時においてこれが点火薬の燃焼によって開口するように構成した場合には、必ずしも蓋部に開口部を設ける必要はない。
【0145】
また、上述した本発明の実施の形態1ないし4において開示した各部材の形状や大きさ、数、配置位置等は、本発明の趣旨に照らして逸脱しない範囲において、当然にこれを種々変更することができる。
【0146】
さらには、上述した本発明の実施の形態1ないし4においては、本発明をサイドエアバッグ装置に組み込まれるシリンダ型ガス発生器に適用した場合を例示して説明を行なったが、本発明の適用対象はこれに限られるものではなく、カーテンエアバッグ装置やニーエアバッグ装置、シートクッションエアバッグ装置等に組み込まれるシリンダ型ガス発生器や、シリンダ型ガス発生器と同様に長尺状の外形を有するいわゆるT字型ガス発生器にもその適用が可能である。
【0147】
このように、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0148】
1A~1D シリンダ型ガス発生器、10 ハウジング本体、11 第1かしめ部、12 第2かしめ部、13 第3かしめ部、14 ガス噴出口、20 ホルダ組立体、20A 第1ホルダ、20B 第2ホルダ、20C 第3ホルダ、21 第1胴部、21a 第1収容部、21b かしめ部、22 環状突部、23 第2胴部、23a 第2収容部、23b 第1環状段差部、24 突起部、25 溝部、26 蓋部、26a 開口部、27 第3胴部、27a 第3収容部、27b 第2環状段差部、28 シール部材、30 閉塞部材、40 点火器、41 基部、42 点火部、43 端子ピン、50 仕切り部材、51 隔壁部、51a スコア、52 環状壁部、60 ガス発生剤、61 オートイグニッション剤、70 コイルバネ、71 バネ部、72 押圧部、80 フィルタ、81 空洞部、90 溶接部、G 間隙部、S1 燃焼室、S2 フィルタ室。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11