(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178727
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】ファクシミリ通信装置およびファクシミリ通信方法
(51)【国際特許分類】
H04N 1/32 20060101AFI20241218BHJP
H04M 1/00 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
H04N1/32 037
H04M1/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097096
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【弁理士】
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】山口 剛
【テーマコード(参考)】
5K127
【Fターム(参考)】
5K127AA36
5K127BA13
5K127CB11
5K127CB36
5K127EA22
5K127EA24
5K127EA26
5K127HA02
5K127HA07
5K127JA04
5K127JA11
5K127JA57
5K127KA04
(57)【要約】
【課題】着信が拒否された場合に相手先が自動応答メッセージを流した後に通信を切断したのか否かを適切に判断する。
【解決手段】相手先番号を送出し発信する発呼回路部と、発信後に送受される通信信号を検出する回線信号検出部と、通信信号の種類と時間間隔を検出する信号認識部と、特定の相手先へ発信後にビジートーンが検出されて相手先に通信切断される事象が繰り返される場合、何れの発呼も通信切断までの切断応答期間が所定の範囲内にあれば相手先の着信拒否による通信エラーと判断する通信制御部とを備えるファクシミリ通信装置。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手先番号を送出し発信する発呼回路部と、
前記発信の後に送受される通信信号を検出する回線信号検出部と、
前記通信信号の種類と時間間隔を検出する信号認識部と、
特定の相手先へ発信後にビジートーンが検出されて相手先に通信切断される事象が繰り返される場合、何れの発呼も前記通信切断までの切断応答期間が所定の範囲内にあれば相手先の着信拒否による通信エラーと判断する通信制御部とを備えるファクシミリ通信装置。
【請求項2】
通信に係る情報をユーザに提供する操作ユニットをさらに備え、
前記通信制御部は、前記着信拒否と判断した場合に相手先の着信拒否を前記操作ユニットに記録または情報提供させる請求項1に記載のファクシミリ通信装置。
【請求項3】
前記回線信号検出部が前記ビジートーンの検出前に何れの発呼でも極性反転を検出した場合、前記信号認識部は前記極性反転の検出から前記ビジートーンの検出までの期間を前記切断応答期間として採用する請求項1に記載のファクシミリ通信装置。
【請求項4】
前記回線信号検出部が前記ビジートーンの検出前に極性反転を検出ないが何れの発呼でもリングバックトーンを検出した場合、前記信号認識部は前記リングバックトーンの検出から前記ビジートーンの検出までの期間を前記切断応答期間として採用する請求項1に記載のファクシミリ通信装置。
【請求項5】
前記回線信号検出部が前記ビジートーンの検出前に極性反転もリングバックトーンも検出しない場合、前記信号認識部は前記相手先番号の送出完了から前記ビジートーンの検出までの期間を前記切断応答期間として採用する請求項1に記載のファクシミリ通信装置。
【請求項6】
前記通信制御部は、前記着信拒否と判断した場合に、自局電話番号を通知して相手先へ発呼するようにユーザを促す情報を前記操作ユニットに提供させる請求項2に記載のファクシミリ通信装置。
【請求項7】
前記通信制御部は、前記着信拒否と判断した場合、以降は自局電話番号を通知する設定で前記発呼回路部に発呼させる請求項2に記載のファクシミリ通信装置。
【請求項8】
前記通信制御部は、自局電話番号を通知する設定で前記発呼回路部に発呼させたにもかかわらず前記着信拒否になった場合、相手先もしくは通信サービス提供者に着信拒否に係る設定を確認してもらうようにユーザを促す情報を前記操作ユニットに提供させる請求項7に記載のファクシミリ通信装置。
【請求項9】
前記回線信号検出部が相手先からの音声を検出した場合その音声を認識する音声応答認識部をさらに備え、
通信制御部は、前記切断応答期間の判定に加えて前記音声応答認識部が着信拒否に関する音声を認識した場合に前記着信拒否と判断する請求項1に記載のファクシミリ通信装置。
【請求項10】
ファクシミリ装置の通信を制御する制御部が、
発呼回路部を用いて相手先番号を送出し相手先へ発信するステップと、
回線信号検出部を用いて前記相手先番号の送出後に送受される通信信号を検出するステップと、
送受される通信信号の種類と時間間隔を検出するステップと、
通信未完了で通信切断された場合にリダイヤルを行うステップと、
相手先番号送出完了後にビジートーンが検出されて通信切断される事象が繰り返される場合、相手先番号送出完了から前記通信切断までの切断応答期間が何れも所定の範囲内にあるか否かを判定するステップと、
何れの切断応答期間も前記所定の範囲内にある場合、相手先の着信拒否による通信エラーと判断するステップとを備えるファクシミリ通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、相手先が自動応答を行って通信を切断したか否かを判断するファクシミリ通信装置およびファクシミリ通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ファクシミリ送信において、相手先から電話番号非通知拒否などの理由で相手先(受信機や通信サービスの提供者、即ち電話通信サービス提供者)が発する自動応答の音声メッセージの後に通信が切断される場合がある。通話のための発呼であれば、音声メッセージの内容を理解して対応をとることができる。しかし、ファクシミリ装置が発信を行う場合、相手先からの音声メッセージを理解できずに何度もリダイヤルを繰り返し、相手先が迷惑することがある。
【0003】
これに関して、例えば次のような技術が知られている。複数の電話機を接続することが可能IP電話対応装置に関する技術である。一の電話機からの発信が発信者電話番号非通知を理由に拒否された場合に、所定時間内にメッセージを受信したら、発信者非通知による着信拒否と判断する。ユーザによる操作で、その後、どの電話機からの発信であっても特定番号「186」を付加して発信することを可能とし、発信者電話番号非通知を理由とする着信拒否を回避する技術である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、別の技術として相手端末が応答直後、もしくは応答してから所定時間以内に話中音を検出し、回線が切断された場合には、そのときに用いた電話番号を発信者番号通知状態に再設定するものが提案されている。再設定に代えて、レポート出力する、もしくは回線モニタONにしてリダイヤルすることも開示されている(例えば、特許文献2参照)。また、相手端末が電話番号非通知のため着信を拒否したことを検出すると、その旨を表示回路に表示し、表示に対してオペレータがこの宛先への電話番号通知を許可した場合、「186」を自動付与する技術が開示されている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-004825号公報
【特許文献2】特開平11-298637号公報
【特許文献3】特開2000-004311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ファクシミリ送信先の側で着信拒否の設定がなされている場合、電話通信サービス提供者や送信先装置によって様々な応答の仕方がある。そのために着信拒否かどうかを正確に判定することは難く、着信拒否された場合でも単に相手機ビジー(通話中)と判断するなど、別のエラーとして通信記録に残ることもあった。
【0007】
特許文献1の手法は、着信拒否を示す特定のメッセージが出されることを想定している。しかし、実際の使用環境では、電話通信サービス提供者によりメッセージが異なる。また、明確に着信拒否を示す応答がされない場合がある。特許文献2の手法は、所定時間内の話中音を検出している。そのため、内線交換機側などで即話中になる場合も含まれてしまう。また、所定時間を決めるためには、事前に電話通信サービス提供者ごとのメッセージの内容(長さ)を知っている必要がある。また、特許文献3の手法では、電話番号非通知により通信断となったことの検出方法として、リングバックトーンを検出後に35秒でタイムアウトが発生するという検出方法のみ記載されている。しかし、メッセージによってはこれよりも短い時間で通信断となることがある。また、電話通信サービスによってはリングバックトーンが発せられない場合があり、そうすると検出ができない。
【0008】
本開示は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、電話通信サービス提供者や送信先の装置によって応答の態様が異なっても、着信が拒否された場合に相手先が自動応答メッセージを流した後に通信を切断したのか否かを適切に判断できる手法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、相手先番号を送出し発信する発呼回路部と、前記発信後に送受される通信信号を検出する回線信号検出部と、前記通信信号の種類と時間間隔を検出する信号認識部と、特定の相手先へ発信後にビジートーンが検出されて相手先に通信切断される事象が繰り返される場合、何れの発呼も前記通信切断までの切断応答期間が所定の範囲内にあれば相手先の着信拒否による通信エラーと判断する通信制御部とを備えるファクシミリ通信装置を提供する。
【0010】
また、異なる観点から本開示は、ファクシミリ装置の通信を制御する制御部が、発呼回路部を用いて相手先番号を送出し相手先へ発信するステップと、回線信号検出部を用いて前記相手先番号の送出後に送受される通信信号を検出するステップと、送受される通信信号の種類と時間間隔を検出するステップと、通信未完了で通信切断された場合にリダイヤルを行うステップと、相手先番号送出完了後にビジートーンが検出されて通信切断される事象が繰り返される場合、相手先番号送出完了から前記通信切断までの切断応答期間が何れも所定の範囲内にあるか否かを判定するステップと、何れの切断応答期間も前記所定の範囲内にある場合、相手先の着信拒否による通信エラーと判断するステップとを備えるファクシミリ通信方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によるファクシミリ装置は、相手先に通信切断される事象が繰り返される場合、何れの発呼も前記通信切断までの切断応答期間が所定の範囲内にあれば相手先の着信拒否による通信エラーと判断する通信制御部を備えるので、着信が拒否された場合に相手先が自動応答メッセージを流した後に通信を切断したのか否かを適切に判断できる。
本開示によるファクシミリ通信方法も同様の作用効果を奏する。
本開示によれば、電話通信サービス提供者毎に異なるメッセージに対しても有効であり、事前にメッセージの長さを認識しておく必要も無く、より正確に自動応答による切断を判断できる。また、ユーザに正しい送信失敗理由を提示することで、状況の改善を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】この発明によるファクシミリ通信装置の一態様であるこの実施形態の複合機を示す外観斜視図である。
【
図2】
図1に示す複合機の構成例を示すブロック図である。
【
図3】本開示の実施形態において、制御部が実行する通信エラーの処理の流れを示す第1のフローチャートである。
【
図4】本開示の実施形態において、制御部が実行する通信エラーの処理の流れを示す第2のフローチャートである。
【
図5】複合機が音声応答認識部を備える場合、音声応答認識部が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】複合機が音声応答認識部を備える場合、
図4に代えて制御部が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本開示をさらに詳述する。なお、以下の説明は、すべての点で例示であって、本開示を限定するものと解されるべきではない。
以下、図面を用いてこの発明をさらに詳述する。なお、以下の説明は、すべての点で例示であって、この発明を限定するものと解されるべきではない。
【0014】
≪ファクシミリ通信装置の構成例≫
図1および
図2は、本開示によるファクシミリ通信装置の一実施形態である複合機の外観を示す説明図である。
図1および
図2に示すように、複合機10は、ファクシミリ通信機能を有しており、本体の上方に、原稿を読み取る画像読取デバイス11および原稿を読取り部に搬送する原稿搬送ユニット12を備えている。さらに、画像読取デバイス11の手前側に、操作ユニット17を備えている。
【0015】
また、画像読取デバイス11の左側の下方に排出トレイ16aおよび排出トレイ16bが配置され、右方に排出トレイ16cが配置されている。
排出トレイ16bの下方には、画像形成を行う画像形成デバイス13および4つの給送トレイ14を備えている。さらに、画像形成デバイス13の下端部の右側に、手差トレイ15を備えている。
画像形成デバイス13は、この実施形態において電子写真方式による画像形成を行うものである。
【0016】
複合機10は、後述する
図2に図示するファクシミリ通信回路26を介して受信したファクシミリデータを、画像形成デバイス13で可視像化する。そして、何れかの給送トレイ14または手差トレイ15から給送される用紙に印刷し、排出トレイ16a、16bおよび16cの何れかへ出力する。
それぞれの給送トレイ14および手差トレイ15には、異なるサイズまたは種類の用紙がセットされる。前記用紙は、何れかの給送トレイ14または手差トレイ15から内部の用紙搬送経路(
図1に図示せず)に沿って給送され、上方の画像形成デバイス13に至る。画像形成デバイス13は、受信したファクシミリデータに対応するトナー像を形成し、給送された用紙に転写する。用紙上に転写されたトナー像は、用紙と共にさらに上方へ搬送されて排出トレイ16a、16bと排出トレイ16cに挟まれた位置にある定着ユニット(
図1に符号を付さず)で溶融され用紙上に定着される。その後、用紙は排出トレイ16a、16bおよび16cの何れかに出力される。
【0017】
さらに、複合機10は、操作ユニット17で受付けたユーザからの指示に応答して、ファクシミリの送信先を決定する。そして、ユーザがセットした原稿を原稿搬送ユニット12に搬送させ、画像読取デバイス11で読み取ってファクシミリデータに変換し、前述のファクシミリ通信回路26を介して決定された送信先へ送る。
この実施形態における複合機10は、上述したファクシミリの受信および送信に係るジョブの他に、ユーザからの指示に基づいて、コピー、スキャンおよびプリントのジョブを実行する。
【0018】
続いて、複合機10の電気的な構成を簡単に説明しておく。
図2は、本実施形態の複合機10の電気的構成を示すブロック図である。
図2に示すように、複合機10は、ファクシミリ通信回路26およびネットワーク通信回路27を備える。ファクシミリ通信回路26は、発呼回路部26Cおよび回線信号検出部26Sを含む。発呼回路部26Cは、相手先のダイヤル番号を回線に送出して相手先に発信する回路、即ち電話をかける回路である。また、回線信号検出部26Sは、発呼に対する相手先の応答を示す通信信号やその応答に対して発呼側が送出する通信信号を検出する回路である。複合機10は、上述の画像読取デバイス11、原稿搬送ユニット12、画像形成デバイス13、操作ユニット17、制御部20の他に画像処理回路24、画像メモリ25およびを備える。
【0019】
制御部20は、複合機10を統合的に制御するものである。制御部20は、ハードウェア資源としてプロセッサを中心に、RAM(Random Access Memory)やフラッシュメモリ等のメモリおよび入出力回路等を備える。入出力回路は、制御部20と
図2に示す種々のユニット、デバイスおよび回路との入出力インターフェースである。フラッシュメモリは、プロセッサが実行する制御プログラムを予め格納する。プロセッサが制御プログラムを実行することによって、ハードウェアとソフトウェアが協働して制御部20の機能が実現される。
制御部20は、通信制御部21および信号認識部22を含む。さらに、任意に音声応答認識部28を備える。信号認識部22は、ファクシミリ通信において相手先と送受される通信信号を検出し、通信の終了までに送受されたそれらの通信信号の種類とそれぞれの通信信号を検出した時刻を記憶する。この明細書において、回路信号検出部が検出する通信信号は相手先番号の送出、リングバックトーン、極性反転、ビジートーン、CED信号および通信切断を含むものとする。通信制御部21は、ファクシミリ通信回路26を介した相手先との通信を制御する。音声応答認識部28は、ファクシミリ通信回路26を介して相手先から受信した音声メッセージの音声を認識するものである。
【0020】
操作ユニット17は、複合機10の設定や状態をユーザに知らせる表示デバイス17D、ユーザの操作を受付ける入力デバイス17Sを備える。表示デバイス17Dには、例えば、液晶表示装置が適用される。入力デバイス17Sには、例えばタッチパネルが適用される。操作ユニット17は、任意で音声メッセージを出力する音声出力デバイス17Aを備えていてもよい。音声出力デバイス17Aは、例えば音声データを記憶するメモリとその音声データに基づく音声メッセージを生成する回路、音声メッセージを出力する増幅回路およびスピーカで構成される。
画像処理回路24は、画像読取デバイス11が読み取った画像の処理を行う。また、ファクシミリ通信回路26を介して受信したファクシミリデータや、ネットワーク通信回路27を介して受信した印刷データに係る画像処理を行う。
【0021】
画像メモリ25は、画像読取デバイス11が読み取った画像データ、ファクシミリ通信回路26を介して受信したファクシミリデータ、およびネットワーク通信回路27を介して外部の機器から受信した印刷データ等の画像データを格納するメモリである。画像メモリ25は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性のメモリとHDD(Hard Disk Drive)等の不揮発性メモリの組合せで構成されてもよい。
【0022】
ネットワーク通信回路27は、ネットワークを介して接続された外部の機器、例えばパーソナルコンピュータ等の情報処理装置と通信を行う回路である。
【0023】
≪ファクシミリ通信エラーの処理≫
続いて、この実施形態において、制御部20が実行する通信エラーの処理について述べる。
図3および
図4は、この実施形態において、制御部20が実行する通信エラー処理の流れを示すフローチャートである。
以下の説明において、通信制御部21は、発呼したファクシミリ通信が終了してからエラー処理を実行するものとしており、そのために信号認識部22は、相手先番号を送出してから通信終了までに送受される通信信号を記憶しているものとする。このようにすれば、相手先が着信拒否で通信切断していると判断される場合ユーザにその状況を知らせて適切な対応を促すことができる。通信終了は、通信が正常終了する場合と何らかの原因でエラー終了する場合を含む。ただし、これは一例である。通信制御部21は、通信信号が送受される各段階で状況に応じたエラー処理を行うようにしてもよい。その場合、信号認識部22は、送受される通信信号を必ずしも通信終了まで記憶しておく必要はない。
【0024】
図3に示すように、通信制御部21として制御部20は、例えば操作ユニット17を介したユーザの操作による発呼の指示を受けると、指示された相手先番号へ発呼する。そして、発呼を行った通信が終了するとその通信が正常終了したかエラー終了したかの判定を行う(ステップS11)。
通信の結果が正常終了であれば(ステップS13のNo)、通信エラーに係る特段の処理は行わず、その通信に係る処理を終了する。一方、通信の結果がエラー終了であれば(ステップS13のYes)、通信制御部21として制御部20は、相手先が無応答のまま所定の期間が経過(タイムアウト)して発呼側が通信を切断したことによるエラー終了か否かを判定する(ステップS15)。
【0025】
相手先が無応答のままタイムアウトした場合(ステップS15のYes)、同じ相手先が前回も同様のエラー終了であったか否かを判定する(ステップS17)。前回の通信結果は、履歴として記録されているものとする。前回も同様のエラー終了であった場合(ステップS17のYes)、通信制御部21として制御部20は、その相手先に係る無応答エラー終了のカウンタを1つ加算する(ステップS19)。そして、そのカウンタの値が予め定められた閾値(一例で3)を超えたか否かを判定する(ステップS21)。閾値を超えた場合、相手先の応答がなかったことによるエラー終了として通信結果を履歴に残し、エラー終了の情報を操作ユニット17の表示デバイス17Dに表示(および/または音声出力デバイス17Aに音声出力)させて処理を終了する。
【0026】
一方、前記ステップS21の判定でカウンタの値が閾値以下であれば(ステップS21のNo)、所定の期間が経過した後にリダイヤル発信するようにする(ステップS27)。リダイヤル発信の時間が到来したら、前述のステップS11へ処理を戻して同じ処理を繰り返す。
前述のステップS17の判定で、同じ相手先が前回の通信では正常終了または異なる原因のエラー終了であった場合(ステップS17のNo)、通信制御部21として制御部20は、その相手先に係る無応答エラー終了のカウンタを1にする(ステップS25)。そして、処理を前述のステップS27へ進めて、所定の期間が経過した後にリダイヤル発信するようにする。
【0027】
また、前述のステップS15の判定で、相手先無応答で発呼側が通信切断したのではない場合(ステップS15のNo)、通信制御部21として制御部20は、相手先のCED信号が検出されたか、即ち相手先がファクシミリ機であることを示す応答が検出されたか否かを判定する(ステップS31)。CED信号が検出された場合は、相手先無応答が原因のエラー終了でもなく、相手先ビジーが原因のエラー終了でもなく、それ以外の通信エラーとして通信結果の履歴を残し、必要に応じてエラーメッセージを操作ユニットに表示する等のエラー時の処理を行う(ステップS33)。そして、エラー処理を終了する。
【0028】
前述のステップS31の判定で、相手先のCED信号が検出されなかった場合(ステップS31のNo)、続いて通信制御部21として制御部20は、ビジートーンにて通信切断した結果、通信が終了したのか否かを判定する(
図4に示すステップS41)。ビジートーン検出にて通信切断したことによるエラー終了でない場合も(ステップS41のNo)、前述のステップS33と同様に相手先無応答が原因のエラー終了でもなく、相手先ビジーが原因のエラー終了でもなく、それ以外の通信エラーとして通信結果の履歴を残す。また、必要に応じてエラーメッセージを操作ユニットに表示する等のエラー時の処理を行う(ステップS42)。そして、エラー処理を終了する。
【0029】
一方、前述のステップS41の判定で、ビジートーン検出にて通信切断したことによるエラー終了である場合(ステップS41のYes)、通信制御部21として制御部20は、それが固定メッセージ応答による着信拒否で相手側が通信切断したものか否かを以下のように判定する。まず、相手先番号の最終桁までダイヤルした後にビジートーンが検出されたか、あるいは最終桁までダイヤルする前にビジートーンが検出されたかを判定する(ステップS43)。最終桁までダイヤルする前にビジートーンが検出された場合、それは発呼側が回線ビジーであると判断したことが原因の通信エラーであると判定する。そして、所定の時間後にリダイヤルするか、あるいは回線ビジーである旨のメッセージを操作ユニットに表示させる等してユーザに知らせる処理を行う(ステップS44)。そして、エラー処理を終了する。回線ビジーとは、例えば、ファクシミリ機が発呼に使用可能な複数の外線がすべて使用中であって回線の空きがない状態であったり、通信サービス提供者の回線が混雑しているために発呼に割り当て可能な回線がなかったりする状態である。
【0030】
前述のステップS43の判定で、最終桁までダイヤルした後にビジートーンが検出された場合(ステップS43のYes)、続けて通信制御部21として制御部20は、通信切断までに相手先の極性反転が検出されたか否かを判定する(ステップS46)。極性反転は、発信に応答した相手先が受話器を上げた状態を示す信号である。通信切断までに極性反転が検出されていた場合(ステップS46のYes)、信号認識部22として制御部20は、極性反転を検出した時刻を起点にビジートーンが検出される時刻までの時間間隔を後述するステップS55の判定の対象(切断応答期間)として提供する(ステップS47)。
【0031】
切断応答期間の終期を通信切断の時点としてもよい。これを基本の態様(実施の形態1)とする。それに対し、より好ましい態様(実施の形態2)として、ビジートーンが検出された時点とする態様が挙げられる。それは、後述するステップS55が、固定メッセージ応答による着信拒否であるか否かを判定することを目的としているからである。そして、固定メッセージが終了するとビジートーンが検出され、その後に通信切断するものとしている。その固定メッセージの開始および終了の時点にできるだけ近い事象を検出された通信信号から特定しようとしている。よって、固定メッセージが終了する時点としてビジートーンが検出された時刻を採用している。
【0032】
一方、固定メッセージの開始にできるだけ近い事象を特定しようとしているのが後述するステップS46~S53の処理である。基本の態様(実施の形態1)は、切断応答期間の始期を相手先番号の全桁を送出し終えた時点とするものである。この態様によれば、発呼に対して後述する極性反転もリングバックトーンも検出されずにビジートーンが検出され切断された場合、信号認識部による記録に基づき相手先番号の全桁を送出し終えた時刻から通信切断またはビジートーンが検出された時刻までの期間を得ることによって、通信制御部は相手先が自動応答しているか否かを判断することができる。
より好ましい態様として、通信切断までに極性反転が検出されている場合、切断応答期間の始期を極性反転の検出時点とする態様が挙げられる(実施の形態3)。この態様によれば、発呼に対して相手先との通信接続を示す極性反転が検出された後にビジートーンが検出され切断された場合、極性反転から通信切断またはビジートーンの検出までの時間間隔を信号認識部が判定することによって、通信制御部は相手先が自動応答しているか否かを判断することができる。
【0033】
さらに、通信切断までに極性反転が検出されないがリングバックトーンが検出されている場合、切断応答期間の始期をリングバックトーンの検出時点とする態様が挙げられる(実施の形態4)。この態様によれば、発呼に対してリングバックトーンが検出された後にビジートーンが検出され切断された場合、リングバックトーン検出から通信切断またはビジートーンの検出までの期間を信号認識部が検出することによって、通信制御部は相手先が自動応答しているか否かを判断することができる。
【0034】
図4に示すフローチャートでは、実施の形態2~4を組み合わせて示しているが、そのフローチャートから実施の形態1~4を把握することは当業者なら容易であろう。
図4のフローチャートに沿って説明する。通信切断までに極性反転が検出されている場合(ステップS46のYes)、信号認識部22として制御部20は、極性反転の検出を起点にビジートーンが検出されるまでの時間間隔を後述するステップS55の判定の対象(切断応答期間)に適用する(ステップS47)。通信切断までに極性反転が検出されていない場合は(ステップS46のNo)、通信サービス提供者のサービスで固定メッセージが流れていることが考えられる。その場合、信号認識部22として制御部20は、信号切断までにリングバックトーンが検出されているか否かに応じて切断応答時間の起点を決定する(ステップS49)。信号切断までにリングバックトーンが検出されている場合は(ステップS49のYes)、リングバックトーンの検出を起点にビジートーンが検出されるまでの時間間隔を前述の切断応答期間に適用する(ステップS51)。信号切断までにリングバックトーンが検出されていない場合は(ステップS49のNo)、相手先番号の全桁を送出し終えた時点を起点にビジートーンが検出されるまでの時間間隔を前述の切断応答期間に適用する(ステップS53)。なお、上述のように、切断応答期間の終期をビジートーン検出時点とすることに代えて通信切断の時点としてもよく、それは実施の形態1に対応する。
【0035】
以上のようにして、ステップS47、S51またはS53で得られた切断応答期間は、着信拒否時に流れる固定メッセージが流れる期間と想定されるものである。通信制御部21として制御部20は、これまでの通信結果の履歴を参照して、同じ相手先から所定の回数を超えて連続して通信切断されており、しかも何れも切断応答期間のバラツキが所定の範囲内にあるか否かを判定する(ステップS55)。連続して通信切断されているか否かを判定する所定の回数は、一例で3回である。バラツキを判定する範囲の値は、一例で2秒である。即ち、バラツキが2秒以内か否かを判定する。想定される切断応答期間の一例は、ステップS47で得られる切断応答期間が3~60秒、ステップS51で得られる切断応答期間が6~60秒、ステップS53で得られる切断応答期間が3~60秒である。固定メッセージが最短で3秒と想定している。また、相手先が極性反転を行わない場合、相手先または通信サービス提供者が発呼側のダイヤルトーンを検出してから最短3秒で固定メッセージを開始すると想定した数値の例である。
【0036】
毎回の切断応答期間のバラツキが所定の範囲内である場合(ステップS55のYes)、通信制御部21として制御部20は、相手先が固定メッセージを流した後に通信切断をしていると判断する。例えば、「186を付けてダイヤルするなど、あなたの電話番号を通知しておかけ直しください。」といったような固定の音声ガイダンスが自動的に流れた後に電話が切られているものと判断する。そして、相手先が着信拒否したことが原因の通信エラーであると推定し、エラー処理を行う(ステップS57)。そして、エラー処理を終了する。一方、同じ相手先からの通信切断が所定の回数を超えて連続していない場合や、切断応答期間のバラツキが所定の範囲を超えている場合は(ステップS55のNo)、通常のビジートーン検出と判定し、それに対するエラー処理を行って(ステップS59)エラー処理を終了する。また、60秒を超える固定メッセージが流されることは考えにくいので、切断応答期間が予め定められた上限を超える場合も、相手先の着信拒否による通信切断ではない(ステップS55のNo)と判定して、通常のビジートーン検出に対するエラー処理を行うようにすればよい。
【0037】
相手先が着信拒否したことが原因の通信エラーの場合の処理として、例えば次の対応が考えられる。まず、相手先番号送出およびリダイヤル完了後所定の時間範囲内にビジートーンの検出後の切断が繰り返される状況を、相手先ビジーでなく着信拒否として操作ユニット17にメッセージ表示する等、ユーザに状況を知らせる対応が挙げられる。この態様によれば、相手先が自動応答メッセージを流した後切断している可能性がある場合、着信拒否が自局電話番号非通知による可能性があるので設定を確認するようにユーザを促して適切な対応を取らせることができる。あるいは、リダイヤルの場合を含めて、同じ相手先へ次に発呼する場合、強制的に自局番号を通知する設定、例えば特定の番号「186」を付与してダイヤルすることが考えられる。この態様によれば、相手先が自動応答メッセージを流した後切断している可能性がある場合、以降のリダイヤル時等において強制的に自局電話番号を通知する設定で発呼させることで、自局電話番号非通知による着信拒否か否かを確認することができる。番号非通知で着信拒否されている場合は、この対応で着信拒否を回避することができる。ただし、「186」を付与してダイヤルしても着信拒否されることもあり得る。例えば、相手先が迷惑電話お断りサービスに発呼側の番号を故意にあるいは誤って登録している場合である。さらに、「186」付与でも同様の結果になる場合は、発信側にIP電話専用の050番号が割り振られておらずに発信者番号通知ができていない可能性がある。よって、必要なら電話会社に依頼して電話番号を付与してもらう対応があることを操作ユニット17に表示等してユーザに提示する対応が考えられる。この態様によれば、強制的に自局電話番号を通知する設定で発呼させたにもかかわらず着信拒否が解消されない場合に、相手先もしくは通信サービス提供者に着信拒否に係る設定を確認してもらうようにユーザを促して適切な対応を取らせることができる。
【0038】
また、音声応答認識部28を備える態様では、相手先から応答メッセージが流れる場合、その応答メッセージに音声認識を適用し、「186」や「発信者番号」などの特定の語が認識された場合は操作ユニット17に「発信者番号要」といった表示を行うようにする対応が考えられる。さらに、相手先の応答メッセージをメモリに保存してユーザがその内容を確認できるようにしてもよい。
図5および
図6は、音声応答認識部28を備える態様に係るフローチャートである。
図5は、音声応答認識部28として制御部20が実行する処理の一例を示している。
図6は、音声応答認識部28を備える場合に
図4に代えて制御部20が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【0039】
図5に示すように、音声応答認識部28として制御部20は、発呼からビジートーン検出までの期間(ステップS71のYes以下のループ)、回線音を記録して音声認識する(ステップS73)。そして、音声認識した回線音に、上述した、「186」や「発信者番号」などのような特定の語句が含まれているか否かを判定する(ステップS75)。特定の語句が含まれていると判定した場合(ステップS75のYes)、その判定結果を後述する
図6の処理で通信制御部21に伝えるためにメモリに格納しておく(ステップS77)。なお、発呼後にビジートーンが検出されず通信切断された場合、音声応答認識部28は、発呼後に記録した回線音と判定結果を破棄するようにしてもよい。
【0040】
図6は、音声応答認識部28を備える態様において
図4に代わる処理を示しており、
図4に対応する処理には対応する符号を付している。
図6に示す処理は、
図4にないステップS45の処理を含んでいる。ステップS45において、通信制御部21は、
図5のステップS77でメモリに格納された判定結果を参照する。そして、音声応答認識部28が回線音に特定の語句が含まれていると判定したか否かを調べる。特定の語句が含まれているとの判定結果が前記メモリに格納されていない場合は(ステップS45のYes)、
図4と同様にステップS46以降の切断応答期間の取得と判定に係るステップS46~S59の処理を実行する。一方、特定の語句が含まれているとの判定結果が格納されている場合は(ステップS45のNo)、ステップS46~S55の処理を飛ばしてステップS57の処理へ進み、相手先が着信拒否したことが原因の通信エラーであると推定したエラー処理を行う(ステップS57)。
【0041】
この態様によれば、相手先が自動応答メッセージを流した後切断している可能性がある場合に、自動応答メッセージの内容を認識することで着信拒否か否かを適切に判断することができる。保存した音声をユーザが確認できるようにする場合、ユーザ認証を行ってファクシミリ送信をした場合は、同じユーザ認証で認証されたユーザのみ音声が確認できるようにするとよい。
【0042】
以上は、相手先が着信拒否したことが原因の通信エラーの場合の処理の例である。一方、通常のビジートーン検出が原因の通信エラーの場合の処理としては、相手先ビジーを通信結果の履歴に残し、所定の期間が経過してからリダイヤルする対応や、相手先がビジーで通信エラーになった旨を操作ユニット17に表示等させる対応が考えられる。
【0043】
本開示には、上述した複数の態様のうちの何れかを組み合わせたものも含まれると解されるべきである。
前述した実施の形態の他にも、本開示についての種々の変形例があり得る。それらの変形例は、本開示の範囲に属さないと解されるべきものではない。本開示に係る発明には、請求の範囲と均等の意味および本開示の範囲に属するすべての変形が含まれるべきである。
【符号の説明】
【0044】
10:複合機、 11:画像読取デバイス、 12:原稿搬送ユニット、 13:画像形成デバイス、 14:給送トレイ、 15:手差トレイ、 16a,16b,16c:排出トレイ、 17:操作ユニット、 17A:音声出力デバイス、 17D:表示デバイス、 17S:入力デバイス、 20:制御部、 21:通信制御部、 22:信号認識部、 24:画像処理回路、 25:画像メモリ、 26:ファクシミリ通信回路、 26C:発呼回路部、 26S:回線信号検出部、 27:ネットワーク通信回路、 28:音声応答認識部