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特開2024-178735電子写真感光体、それを備えたプロセスカートリッジおよび画像形成装置
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  • 特開-電子写真感光体、それを備えたプロセスカートリッジおよび画像形成装置 図1
  • 特開-電子写真感光体、それを備えたプロセスカートリッジおよび画像形成装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178735
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】電子写真感光体、それを備えたプロセスカートリッジおよび画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 5/05 20060101AFI20241218BHJP
   G03G 5/06 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
G03G5/05 104A
G03G5/06 316
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097106
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【弁理士】
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】森下 翠
(72)【発明者】
【氏名】鳥山 幸一
(72)【発明者】
【氏名】木原 彰子
【テーマコード(参考)】
2H068
【Fターム(参考)】
2H068AA14
2H068AA20
2H068AA37
2H068BA16
2H068BA63
2H068CA06
2H068FA03
2H068FA27
(57)【要約】      (修正有)
【課題】優れた耐光性および耐摩耗性を有し、繰り返し使用時の電気特性の悪化がなく、良好な画質を連続して得ることができる電子写真感光体。
【解決手段】導電支持体上に感光層を少なくとも備えた電子写真感光体であり、感光層が、シリカフィラーおよび一般式(I):

で表される特定の電子輸送物質を含有し、シリカフィラーの前記感光層の全固形分に対する含有量をw(質量%)、前記シリカフィラーの平均一次粒子径をd(nm)および前記電子輸送物質の前記感光層の全固形分に対する含有量をx(質量%)としたときに、0.12<w/(d×x)<0.54の関係を満たすことを特徴とする電子写真感光体により、上記の課題を解決する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電支持体上に感光層を少なくとも備えた電子写真感光体であり、
前記感光層が、シリカフィラーおよび一般式(I):
【化1】
(式中、RaおよびRbは、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、エステル基、シクロアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、アリル基、アミド基、アミノ基 、アシル基、アルケニル基、アルキニル基、カルボキシル基、カルボニル基、カルボン酸基またはハロゲン化アルキル基を表し、該置換基は、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、水酸基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基またはハロゲン化アルキル基である)
で表される電子輸送物質を含有し、
前記シリカフィラーの前記感光層の全固形分に対する含有量をw(質量%)、前記シリカフィラーの平均一次粒子径をd(nm)および前記電子輸送物質の前記感光層の全固形分に対する含有量をx(質量%)としたときに、
0.12<w/(d×x)<0.54
の関係を満たすことを特徴とする電子写真感光体。
【請求項2】
前記電子輸送物質が、波長515~560nmに極大吸収波長λmaxを有する請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記電子輸送物質は、前記一般式(I)における置換基Rbが置換基を有してもよいアリール基を表し、該置換基は、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、水酸基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基またはハロゲン化アルキル基である化合物である請求項1または2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記電子輸送物質は、前記一般式(I)における置換基RaおよびRbが共に置換基を有してもよいアリール基である化合物である請求項3に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記感光層が、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層との積層型感光層である請求項1または2に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
前記シリカフィラーの前記感光層の全固形分に対する含有量wと、前記シリカフィラーの平均一次粒子径dとの割合w/dが、0.20~0.95の範囲である請求項1または2に記載の電子写真感光体。
【請求項7】
前記シリカフィラーの前記感光層の全固形分に対する含有量wと、前記電子輸送物質の前記感光層の全固形分に対する含有量xとの割合w/xが、2.2~8.0の範囲である請求項1または2に記載の電子写真感光体。
【請求項8】
前記シリカフィラーの平均一次粒子径dと、前記電子輸送物質の前記感光層の全固形分に対する含有量xとを乗じた値d×xが、20~110の範囲である請求項1または2に記載の電子写真感光体。
【請求項9】
前記シリカフィラーが、前記感光層の全固形分に対して7~20質量%の割合で含まれる請求項1または2に記載の電子写真感光体。
【請求項10】
前記電子輸送物質が、前記感光層の全固形分に対して0.65~6.5質量%の割合で含まれる請求項1または2に記載の電子写真感光体。
【請求項11】
前記シリカフィラーが、10~40nmの平均一次粒子径を有する請求項1または2に記載の電子写真感光体。
【請求項12】
請求項1または2に記載の電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段、露光により形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段および前記電子写真感光体に残留するトナーを除去するクリーニング手段から選択される少なくとも1種とを備えることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項13】
請求項1または2に記載の電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された前記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を記録媒体上に転写する転写手段とを少なくとも備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子写真感光体、それを備えたプロセスカートリッジおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真技術を用いて画像を形成する電子写真方式の画像形成装置(電子写真装置)は、複写機、プリンタ、ファクシミリ装置などに多用されている。
この電子写真プロセスに用いられる電子写真感光体(以下「感光体」ともいう)は、基体上に光導電性材料を含有する感光層が積層されて構成され、有機系光導電性材料を主成分とする感光層を備えた感光体(「有機系感光体」ともいう)が広く用いられている。
【0003】
感光体の欠点として、耐光性が挙げられる。感光体は、通常の使用時には、蛍光灯などの外部光に曝されることはないが、感光体や周辺部材などの交換パーツのメンテナンスの際や、機内において紙詰まりが起こり紙を取り出す際には、外部光に曝される。感光体が外部光に曝された場合、大きなダメージが与えられ、画像上問題となることがある。
この欠点を克服する手段として、特定の電子輸送物質(ETM)を感光層に添加する方法が提案されている(例えば、特開2010-164639号公報:特許文献1、国際公開第WO2018/150693号:特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-164639号公報
【特許文献2】国際公開第WO2018/150693号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の先行技術では、いずれも十分な耐光性が得られる量の電子輸送物質を感光層に添加すると、電子輸送物質自体がトラップになり、電位の繰り返し安定性が悪化するという問題、感光層中の低分子成分の割合が増加することにより、十分な耐摩耗性が得られなくなるという問題が生じる。
そこで、本開示は、優れた耐光性および耐摩耗性を有し、繰り返し使用時の電気特性の悪化がなく、良好な画質を連続して得ることができる電子写真感光体、それを備えたプロセスカートリッジおよび画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、感光層に特定の構造を有する電子輸送物質とシリカフィラーとを含有させることで、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
かくして、本開示によれば、導電支持体上に感光層を少なくとも備えた電子写真感光体であり、
前記感光層が、シリカフィラーおよび一般式(I):
【化1】
【0008】
(式中、RaおよびRbは、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、エステル基、シクロアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、アリル基、アミド基、アミノ基 、アシル基、アルケニル基、アルキニル基、カルボキシル基、カルボニル基、カルボン酸基またはハロゲン化アルキル基を表し、該置換基は、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、水酸基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基またはハロゲン化アルキル基である)
で表される電子輸送物質を含有し、
【0009】
前記シリカフィラーの前記感光層の全固形分に対する含有量をw(質量%)、前記シリカフィラーの平均一次粒子径をd(nm)および前記電子輸送物質の前記感光層の全固形分に対する含有量をx(質量%)としたときに、
0.12<w/(d×x)<0.54
の関係を満たすことを特徴とする電子写真感光体が提供される。
【0010】
また、本開示によれば、上記の電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段、露光により形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段および前記電子写真感光体に残留するトナーを除去するクリーニング手段から選択される少なくとも1種とを備えることを特徴とするプロセスカートリッジが提供される。
【0011】
さらに、本開示によれば、上記の電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された前記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を記録媒体上に転写する転写手段とを少なくとも備えることを特徴とする画像形成装置が提供される
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、優れた耐光性および耐摩耗性を有し、繰り返し使用時の電気特性の悪化がなく、良好な画質を連続して得ることができる電子写真感光体、それを備えたプロセスカートリッジおよび画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の感光体(積層型感光体)1の要部の構成を示す概略断面図である。
図2】本開示の画像形成装置100の要部の構成を示す模式側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の感光体は、導電支持体上に感光層を少なくとも備えた電子写真感光体であり、
前記感光層が、シリカフィラーおよび後述する一般式(I)で表される電子輸送物質を含有し、
前記シリカフィラーの前記感光層の全固形分に対する含有量をw(質量%)、前記シリカフィラーの平均一次粒子径をd(nm)および前記電子輸送物質の前記感光層の全固形分に対する含有量をx(質量%)としたときに、
0.12<w/(d×x)<0.54
の関係を満たすことを特徴とする。
シリカフィラーおよび電子輸送物質の「感光層の全固形成分に対する含有量」とは、それぞれシリカフィラーおよび電子輸送物質が含まれる感光層中の全固形成分に対する含有量を意味する。したがって、後述する感光層が電荷発生層と電荷輸送層との積層型感光層である場合、シリカフィラーおよび電子輸送物質が含まれる電荷輸送層中の全固形成分に対するシリカフィラーおよび電子輸送物質のそれぞれの含有量を意味する。
本明細書において数値範囲「A~B」は「A以上B以下」を意味し、例えば、変数が「x」である場合、「A≦x≦B」を意味する。
【0015】
以下に、本開示の感光体の特徴となる構成要件について説明し、その後で(1)感光体、(2)プロセスカートリッジおよび(3)画像形成装置について説明する。
なお、以下に記述する実施形態および実施例は本発明の具体的な一例にすぎず、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0016】
<電子輸送物質の含有量と、シリカフィラーの平均一次粒子径および含有量との関係>
蛍光灯やLEDなどの外部光により感光体に与えられるダメージは、外部光が電荷輸送層を透過し、その透過した光が電荷発生物質に作用し、電荷トラップを発生することで起こる。感光層がシリカフィラーを含有することで、外部から光が当たったときにメモリ(電荷)が発生し易く、耐光性が悪化する傾向がみられる。この原因は定かではないが、感光層がシリカのような負帯電になり易い微粒子を含有することで、光が当たり電荷発生層で生成した余剰キャリアが安定化し易くなるためと考えられる。
【0017】
積層型感光体においては、さらに感光体の耐光性が悪くなる傾向にある。電荷輸送層がシリカフィラーを含有すると電荷輸送層と電荷発生層の界面の表面積が増大する。これにより、電荷輸送層と電荷発生層の接触面積が大きくなる結果、電荷発生層への正孔輸送物質の侵入の割合が増えるため、本来規則正しく並んでいる電荷発生物質のスタッキング構造が乱れてしまう。これにより、光曝露を受けた時に発生するトラップが再結合することなく安定化してしまい易くなるため、耐光性が悪くなる。一方で、層間の電荷のやり取りがスムーズに行われ残留電位の上昇が起こり難くなり電位安定性が良好になる。シリカフィラーの平均一次粒径が小さいほど、また、シリカフィラーの含有量が多いほど接触面積は増えるので、メリット・デメリットともに助長される。
【0018】
電子輸送物質は、外部光の光波長成分による電荷発生物質への作用を効果的に遮断する機能と光曝露によるダメージからの回復を促進する機能を有する。本開示では、電子輸送物質が外部光を吸収して、電荷トラップの発生を抑制する。また、トラップが発生した際には、その電子輸送能の働きによって電荷トラップの再結合を促してダメージからの回復を促進する。電子輸送物質は添加量が多いほど耐光性が良好になる一方で電子輸送物質自身がトラップとなり、電気特性悪化の原因となり得る。
【0019】
上述のように、電子輸送物質の含有量、シリカフィラーの含有量とその平均一次粒径はそれぞれ耐光性や電位安定性に大きな影響を与えるため、これらのバランスが重要である。電子輸送物質の感光層の全固形分に対する含有量をx(質量%)、シリカフィラーの感光層の全固形分に対する含有量をw(質量%)、シリカフィラーの平均一次粒径をd(nm)としたとき、0.12<w/(d×x)<0.54の関係を満たす場合に、優れた耐光性・繰り返し使用時の電位安定性を両立した感光体を得ることができる。
w/(d×x)が0.12以下では、(d×x)値に対してw値が大きすぎるため、電位安定性が悪化することがある。一方、w/(d×x)が0.54以上では、(d×x)値に対してw値が小さ過ぎるため、所望の耐光性・光ダメージからの回復性が得られないことがある。
好ましくは、0.15<w/(d×x)<0.50であり、より好ましくは0.20<w/(d×x)<0.43である。
【0020】
<電子輸送物質>
一般的な蛍光灯は、波長550nm付近に強い光波長成分を有することから、これらの光波長成分は、電荷発生材料に作用して電荷トラップを発生させることになる。一方、波長600nm付近の光波長成分は、感光体を露光して静電潜像を形成するLEDやレーザ光および感光体に残留する表面電荷を除電するLEDなどで使われるため、この波長の光を遮ってしまうと、残留電位が上昇してしまい、繰り返し電位安定性を保つことができなくなる。したがって、電子輸送物質は、波長515~560nmの範囲内に極大吸収波長λmaxを有することが好ましい。より好ましい波長域は525~555nmである。
【0021】
本開示の電子輸送物質は、一般式(I):
【化2】
【0022】
(式中、RaおよびRbは、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、エステル基、シクロアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、アリル基、アミド基、アミノ基 、アシル基、アルケニル基、アルキニル基、カルボキシル基、カルボニル基、カルボン酸基またはハロゲン化アルキル基を表し、置換基は、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、水酸基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基またはハロゲン化アルキル基である)
で表される。
【0023】
一般式(I)における置換基RaおよびRbおよび有していてもよい置換基ついて説明する。
アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシルなどの炭素数1~6のアルキル基、およびn-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシルなどの炭素数7~12のアルキル基が挙げられる。
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、tert-ブトキシ、n-ペンチルオキシ、n-ヘキシルオキシなどの炭素数が1~6のアルコキシ基、およびn-ヘキシルオキシ、n-オクチルオキシ、n-ノニルオキシ、n-デシルオキキシ、n-ウンデシルオキキシ、n-ドデシルオキシなどの炭素数7~12のアルコキシ基が挙げられる。
アリール基としては、例えばフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ビフェニリル、o-テルフェニルなどが挙げられる。
【0024】
複素環基としては、例えばピリジル、インドリル、カルバゾール、チオフェンなどが挙げられる。
シクロアルキル基としては、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどが挙げられる。
アシル基としては、例えばアセチル、プロパノイル、ベンジルなどが挙げられる。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル、フェネチル、ベンズヒドリル、トリチルなどが挙げられる。
アルケニル基としては、例えば、ビニル、プロぺニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニルなどが挙げられる。
アルキニル基としては、例えばエチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニルなどが挙げられる。
カルボン酸基としては、例えばホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリルなどが挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられる。
【0025】
本開示の電子輸送物質は、溶解性、樹脂との相互作用の点で、一般式(I)における置換基RaおよびRbが同一または異なって、炭素数1~12のアルキル基または置換基を有してもよいアリール基を表し、置換基は、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、水酸基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基またはハロゲン化アルキル基である化合物であることが好ましく、置換基Rbが置換基を有してもよいアリール基を表し、置換基は、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、水酸基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基またはハロゲン化アルキル基である化合物であることが好ましく、置換基RaおよびRbが共に置換基を有してもよいアリール基である化合物が特に好ましい。例えば、下記の化合物1-1~1-4が挙げられ、移動度と吸収する光の波長の点で化合物1-1が特に好ましい。
【0026】
【化3】
【0027】
電子輸送物質は、感光層の全固形分に対して0.65~6.5質量%であることが好ましい。
電子輸送物質の含有量が0.65質量%未満では、耐光性や光ダメージからの回復性の効果が十分に得られないことがある。一方、電子輸送物質の含有量が6.5質量%を超えると、電子輸送物質自身がトラップとなり感光体の電気特性が悪化することがある。
より好ましい電子輸送物質の含有量は、1.0~5.2質量%であり、さらに好ましくは1.4~3.5質量%である。
【0028】
<シリカフィラー>
シリカフィラーの「シリカ」とは、二酸化珪素(SiO2)を意味する。
本開示において好適に用いられるシリカフィラーは、製法由来に限定されず、四塩化ケイ素を燃焼して得られるヒュームドシリカ、プラズマなどの高エネルギーによりシリカを気相中で微粒子化するアーク法シリカなどの乾式法シリカ;ケイ酸ナトリウム水溶液を原料としてアルカリ条件で合成した沈降法シリカ;酸性条件で合成したゲル法シリカなどの湿式法シリカ;有機シラン化合物の加水分解によって得られるゾルゲル法シリカなどが挙げられる。
【0029】
シリカフィラーは、感光体の電気特性を向上させるために、表面処理剤で表面処理されてもよい。表面処理剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、N-メチルーヘキサメチルジシラザン、N-エチルーヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルーN-プロピルジシラザン、ジメチルジクロロシラン、またはポリジメチルシロキサンが挙げられる。
これらの中でも、ジメチルジクロロシランおよびヘキサメチルジシラザンは、シリカフィラー表面の水酸基との反応性が良好であるため、シリカフィラー表面の水酸基量をへらすことができ、その結果、水分(湿度)による感光体の電気特性の低下を抑制することができることから特に好ましい。
【0030】
本開示においては、上記の表面処理剤で処理したシリカフィラーを用いることができるが、表面処理剤で処理された市販のシリカフィラーを用いることもできる。市販のシリカフィラーとしては、例えば、日本アエロジル株式会社の製品名:R972、R972V、R974、R976、RX200、NX130、NX90G、NX90S、NAX50、RX50;キャボットジャパン株式会社の製品名:TS610、TG709F、TG6110G、株式会社アドマテックスの製品名:YA010Cが挙げられる。
【0031】
シリカフィラーは10~40nmの範囲の平均一次粒子径を有するのが好ましい。
シリカフィラーの平均一次粒子径が10nm未満では、シリカフィラーの凝集力が強く、解砕し難くなり、その分散性が低下することがある。一方、シリカフィラーの平均一次粒子径が40nmを超えると、感光層中に生成する凝集構造が大きくなることより、クリーニング不良などの問題が発生し易くなる。
より好ましい平均一次粒子径は、12~35nmであり、15~25nmがさらに好ましい。
なお、平均一次粒子径は、シリカフィラーを走査型電子顕微鏡観察によって30000~300000倍、例えば100000倍に拡大し、ランダムに100個の粒子を一次粒子として観察し、画像解析によって算出したフェレ方向の粒径(長径)の平均値である。
【0032】
シリカフィラーは、感光層の感光層全固形分に対して7~20質量%の割合で含まれるのが好ましい。
シリカフィラーの含有量が感光体の感光層の全固形分に対して7質量%未満では、耐摩耗性への効果が十分に得られないことがある。一方、シリカフィラーの含有量が20質量%を超えると、感光体の電気特性が悪化することがある。
より好ましいシリカフィラーの含有量は7~18質量%であり、特に好ましくは10~15質量%である。
【0033】
シリカフィラーの平均一次粒径が小さいほど、シリカフィラーの含有量が多いほど、接触面積が増え、耐光性が悪くなるのでシリカフィラーの含有量と平均一次粒径の関係は重要である。
シリカフィラーの含有量w(質量%)と平均一次粒径d(nm)の割合w/dは、0.20~0.95の範囲であることが好ましい。
w/dが0.20未満では、所望の耐刷性が得られないことやクリーニング不良が起こることがある。一方、w/dが0.95を超えると、シリカフィラーの平均一次粒径に対して含有量が多過ぎるために、耐光性が悪くなることがある。
より好ましいw/dの範囲は、0.30~0.80であり、0.45~0.75が特に好ましい。
【0034】
<電子輸送物質とシリカフィラーの関係>
シリカフィラーの平均一次粒径が小さいほど、シリカフィラーの含有量が多いほど、耐光性は悪くなるので、所望の耐光性を得るためには電子輸送物質の添加量を多くする必要がある。反対に、シリカフィラーの平均一次粒径が大きいほど、シリカフィラーの含有量が少ないほど耐光性は良化する一方で、電位安定性は悪くなるので電子輸送物質の添加量には制限がある。
シリカフィラーの含有量w(%)と電子輸送物質の含有量x(%)との割合w/xは、2.2~8.0の範囲であることが好ましい。
w/xが2.2未満では、シリカフィラーの含有量に対して電子輸送物質の含有量が多過ぎるために、電位安定性が悪くなることがある。一方、w/xが8.0を超えると、シリカの含有量に対して電子輸送物質の含有量が少な過ぎるため、所望の耐光性が得られないことがある。
より好ましいw/xの範囲は、2.8~7.0であり、3.0~6.2が特に好ましい。
【0035】
シリカフィラーの平均一次粒径d(nm)と電子輸送物質の含有量x(質量%)とを乗じた値d×xは、20~110の範囲であることが好ましい。
d×xが20未満では、シリカフィラーの平均一次粒径に対して電子輸送物質の含有量が少な過ぎるため、所望の耐光性が得られないことがある。一方、d×xが110を超えると、シリカフィラーの平均一次粒径に対して電子輸送物質の含有量が多過ぎるため、電位安定性が悪くなることがある。
より好ましいd×xの範囲は、20~90であり、30~80が特に好ましい。
【0036】
(1)電子写真感光体
本開示の感光体は、導電性支持体上に感光層を少なくとも備える。
感光層は、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送物質(正孔輸送物質および電子輸送物質)を含有する電荷輸送層とがこの順で積層された積層型感光層、または電荷発生物質および電荷輸送物質(正孔輸送物質および電子輸送物質)を含有する単層型感光層であるのが好ましく、積層型感光層であるのが特に好ましい。
単層型感光層を備える単層型感光体では、電荷発生物質が感光層内に均一に存在しているため、積層型感光層を備える積層型感光体と比較すると電子の移動距離が長くなり、感光層中に存在するトラップとなる物質の影響を受け易い。本開示の感光体のように感光層中にシリカを含有する場合には、シリカがトラップになるため、電気特性の観点から積層感光体の方が好ましい。
以下に図面を用いて、積層型感光層を備える本開示の積層型感光体を説明するが、本発明は、これらにより限定されるものではない。
【0037】
図1は、本開示の感光体(積層型感光体)F01の要部の構成を示す概略断面図である。
積層型感光体F01は、導電性支持体F1上に、下引き層F21および電荷発生物質を含有する電荷発生層F22と正孔輸送物質を含有する電荷輸送層F23とがこの順で積層された感光層を備えている。図中、Faは感光体表面を示す。
本開示の感光体は、感光層上に保護層(表面保護層)を備えていてもよい。
【0038】
<導電性支持体F1>
導電性支持体(「導電性基体」または「基体」ともいう)は、感光体の電極としての機能と支持部材としての機能を有し、その構成材料は、当該技術分野で用いられる材料であれば特に限定されない。
具体的には、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、亜鉛、ステンレス鋼およびチタンなどの金属材料、ならびに表面に金属箔ラミネート、金属蒸着処理または導電性高分子、酸化スズ、酸化インジウムなどの導電性化合物の層を蒸着もしくは塗布した、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンおよびポリスチレンなどの高分子材料、硬質紙ならびにガラスなどが挙げられる。これらの中でも、加工の容易性の点からアルミニウムが好ましく、JIS3003系、JIS5000系およびJIS6000系などのアルミニウム合金が特に好ましい。
【0039】
導電性支持体の形状は、図2に示すような円筒状(ドラム状)に限定されず、シート状、円柱状、無端ベルト状などであってもよい。
また、導電性支持体の表面には、必要に応じて、画質に影響のない範囲内で、レーザ光による干渉縞防止のために、陽極酸化皮膜処理、薬品もしくは熱水などによる表面処理、着色処理、または表面を粗面化するなどの乱反射処理が施されていてもよい。
【0040】
<下引き層F21>
本開示の感光体は、導電性支持体と感光層との間に下引き層(「中間層」ともいう)を備えるのが好ましい。
下引き層は、一般に、導電性支持体の表面の凸凹を被覆し均一にして、積層型感光層、ここでは電荷発生層の成膜性を高め、積層型感光層の導電性支持体からの剥離を抑え、導電性支持体と積層型感光層との接着性を向上させる。具体的には、導電性支持体からの積層型感光層への電荷の注入が防止され、積層型感光層の帯電性の低下を防ぎ、画像のかぶり(いわゆる黒ぽち)を防止することができ、ライフを通じて、帯電性などの良好な電子写真特性を維持できる。
【0041】
下引き層は、例えば、バインダ樹脂を適当な溶剤に溶解させて下引き層用塗布液を調製し、この塗布液を導電性支持体の表面に塗布し、乾燥により有機溶剤を除去することによって形成することができる。
【0042】
バインダ樹脂としては、後述する積層型感光層に含まれるものと同様のバインダ樹脂に加えて、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エチルセルロースなどの天然高分子材料などが挙げられ、これらの1種または2種以上を使用できる。
バインダ樹脂は、下引き層上に感光体層を形成する際に用いられる溶剤に対して溶解や膨潤などが起こらないこと、導電性支持体との接着性に優れること、可撓性を有することなどの特性が要求されることから、上記のバインダ樹脂の中でも、ポリアミド樹脂が好ましく、特にアルコール可溶性ナイロン樹脂が好ましい。
アルコール可溶性ナイロン樹脂としては、例えば、6-ナイロン、66-ナイロン、610-ナイロン、11-ナイロンおよび12-ナイロンなどの単独重合または共重合ナイロン、N-アルコキシメチル変性ナイロンのように、ナイロンを化学的に変性させた樹脂などが挙げられる。
【0043】
樹脂材料を溶解または分散させる溶剤としては、例えば、水、メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール類、メチルカルビトール、ブチルカルビトールなどのグライム類、ジクロロエタン、クロロホルムもしくはトリクロロエタンなどの塩素系溶剤、アセトン、ジオキソラン、これらの溶剤を2種以上混合した混合溶剤などが挙げられる。これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、非ハロゲン系有機溶剤が好適に用いられる。
【0044】
また、下引き層用塗布液は、無機化合物微粒子を含んでいてもよい。この下引き層の無機化合物微粒子は、最表面層の無機化合物微粒子とは配合目的が異なり、同一化合物であっても異なっていてもよい。
無機化合物微粒子は、下引き層の体積抵抗値を容易に調節でき、積層型感光層への電荷の注入をさらに抑制できると共に、各種環境下において感光体の電気特性を維持できる。
無機化合物微粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化スズなどの微粒子が挙げられる。
下引き層用塗布液におけるバインダ樹脂と無機化合物微粒子との合計質量Cと溶剤の質量Dとの比率(C/D)は、1/99~40/60が好ましく、2/98~30/70が特に好ましい。
また、バインダ樹脂の質量Eと無機化合物微粒子の質量Fとの比率E/Fは、90/10~1/99が好ましく、70/30~5/95が特に好ましい。
【0045】
無機化合物微粒子を下引き層用塗布液に分散させるために、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミル、超音波分散機およびペイントシェーカなどの公知の装置を用いてもよい。
下引き層用塗布液の塗布方法は、塗布液の物性および生産性などを考慮に入れて最適な方法を適宜選択すればよく、例えば、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法および浸漬塗布法などが挙げられる。
これらの中でも、浸漬塗布法は、塗布液を満たした塗工槽に基体を浸漬した後、一定速度または逐次変化する速度で引上げることによって基体の表面に層を形成する方法であり、比較的簡単で、生産性および原価の点で優れているので、感光体の製造に好適に用いることができる。浸漬塗布法に用いる装置には、塗布液の分散性を安定させるために、超音波発生装置に代表される塗布液分散装置が設けられていてもよい。
【0046】
自然乾燥により塗膜中の溶剤を除去してもよいが、加熱により強制的に塗膜中の溶剤を除去してもよい。
このような乾燥工程における温度は、使用した溶剤を除去し得る温度であれば特に限定されないが、50~140℃程度が適当であり、80~130℃程度が特に好ましい。
乾燥温度が50℃未満では、乾燥時間が長くなることがあり、また溶剤が充分に蒸発せず感光体層中に残ることがある。また、乾燥温度が約140℃を超えると、感光体の繰り返し使用時の電気的特性が悪化して、得られる画像が劣化することがある。
このような温度条件は、下引き層のみならず後述する積層型感光層などの層形成や他の処理においても共通する。
なお、導電性支持体の構成材料がアルミニウムの場合には、アルマイトを含む層(アルマイト層)を形成し、下引き層とすることができる。
【0047】
下引き層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは0.01~20μm、より好ましくは0.05~10μmである。
下引き層の膜厚が0.01μm未満では、下引き層として実質的に機能しなくなり、導電性支持体の欠陥を被覆して均一な表面性を得ることができず、導電性支持体からの積層型感光層への電荷の注入を防止することができなくなるおそれがある。一方、下引き層の膜厚が20μmを超えると、均一な下引き層を形成し難く、また感光体の感度も低下するおそれがある。
【0048】
<電荷発生層F22>
電荷発生層は、画像形成装置などにおいて半導体レーザ光などの照射された光を吸収することによって電荷を発生する機能を有し、電荷発生物質を主成分とし、必要に応じてバインダ樹脂や添加剤を含有する。
【0049】
電荷発生物質としては、当該分野で用いられる化合物を使用でき、具体的には、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料およびトリスアゾ系顔料などのアゾ系顔料;インジゴおよびチオインジゴなどのインジゴ系顔料;ペリレンイミドおよびペリレン酸無水物などのペリレン系顔料;アントラキノンおよびピレンキノンなどの多環キノン系顔料;チタニルフタロシアニンなどの金属フタロシアニンおよび無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料;スクアリリウム色素、ピリリウム塩類、チオピリリウム塩類、トリフェニルメタン系色素などの有機光導電性材料;ならびにセレンおよび非晶質シリコンなどの無機光導電性材料などが挙げられ、露光波長域に感度を有するものを適宜選択して用いることができる。これらの電荷発生物質は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの電荷発生物質の中でも、下記一般式(A):
【0050】
【化4】
【0051】
(式中、X1、X2、X3およびX4は、同一または異なって、ハロゲン原子、アルキル基またはアルコキシ基であり、r、s、yおよびzは、同一または異なって0~4の整数である)
で表されるチタニルフタロシアニンを用いることが好ましい。
チタニルフタロシアニンは、現在一般的に用いられているレーザ光およびLED光の発信波長域(近赤外光)で高い電荷発生効率と電荷注入効率とを有する電荷発生物質であり、光を吸収することにより多量の電荷を発生させると共に、発生した電荷をその内部に蓄積することなく正孔輸送物質に効率よく注入することができる。
【0052】
一般式(A)で表されるチタニルフタロシアニンは、例えば、Moser, Frank HおよびArthur L. ThomasによるPhthalocyanine Compounds、Reinhold Publishing Corp.、New York、1963に記載されている方法などの公知の製造方法によって製造することができる。
例えば、一般式(A)で表されるチタニルフタロシアニン化合物のうち、r、s、yおよびzが0である無置換のチタニルフタロシアニンの場合は、フタロニトリルと四塩化チタンとを、加熱融解するかまたはα-クロロナフタレンなどの適当な溶剤中で加熱反応させることによってジクロロチタニルフタロシアニンを合成した後、塩基または水で加水分解することによって得られる。
また、イソインドリンとテトラブトキシチタンなどのチタニウムテトラアルコキシドとを、N-メチルピロリドンなどの適当な溶剤中で加熱反応させることによっても、チタニルフタロシアニン組成物を製造することができる。
【0053】
電荷発生層の形成方法としては、電荷発生物質を導電性支持体上に真空蒸着する方法、および溶剤中に電荷発生物質を分散して得られる電荷発生層用塗布液を導電性支持体上に塗布する方法などがある。これらの中でも、バインダ樹脂を溶剤中に混合して得られるバインダ樹脂溶液中に、電荷発生物質を従来公知の方法によって分散させ、電荷発生層用塗布液を導電性支持体上に塗布する方法が好ましい。以下、この方法について説明する。
【0054】
バインダ樹脂としては、特に限定されず、当該分野で公知の樹脂をいずれも使用でき、例えば、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタン、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリフェノキシ、ポリビニルブチラールおよびポリビニルホルマールなどの樹脂、ならびにこれらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂などを挙げることができる。
共重合体樹脂としては、例えば、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体樹脂およびアクリロニトリル-スチレン共重合体樹脂などの絶縁性樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
溶剤としては、例えば、ジクロロメタンおよびジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、アセトン、メチルエチルケトンおよびシクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチルおよび酢酸ブチルなどのエステル類、テトラヒドロフラン(THF)およびジオキサンなどのエーテル類、1,2-ジメトキシエタンなどのエチレングリコールのアルキルエーテル類、ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素類、またはN,N-ジメチルホルムアミドおよびN,N-ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性極性溶剤などが挙げられる。これらの溶剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
電荷発生物質とバインダ樹脂との配合比率は、電荷発生物質の割合が10~99質量%の範囲にあることが好ましい。
電荷発生物質の割合が10質量%未満であると、感度が低下することがある。一方、電荷発生物質の割合が99質量%を超えると、電荷発生層の膜強度が低下するだけでなく、電荷発生物質の分散性が低下して粗大粒子が増大し、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷が減少して画像欠陥、特に白地にトナーが付着し微小な黒点が形成される黒ポチと呼ばれる画像のかぶりが多く発生することがある。
【0057】
バインダ樹脂溶液中に電荷発生物質を分散させる前に、予め電荷発生物質を粉砕機によって粉砕処理してもよい。粉砕処理に用いられる粉砕機としては、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミルおよび超音波分散機などを挙げることができる。
電荷発生物質をバインダ樹脂溶液中に分散させる際に用いられる分散機としては、ペイントシェーカ、ボールミルまたはサンドミルなどを挙げることができる。このときの分散条件としては、用いる容器および分散機を構成する部材の摩耗などによる不純物の混入が起こらないように適当な条件を選択すればよい。
電荷発生層用塗布液の塗布方法としては、下引き層用塗布液の塗付方法と同様の方法が挙げられ、浸漬塗布法が特に好ましい。
【0058】
電荷発生層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは0.05~5μmであり、より好ましくは0.1~1μmである。
電荷発生層の膜厚が0.05μm未満では、光吸収の効率が低下し、感光体の感度が低下することがある。一方、電荷発生層の膜厚が5μmを超えると、電荷発生層内部での電荷移動が積層型感光層表面の電荷を消去する過程の律速段階となり感光体の感度が低下することがある。
【0059】
<電荷輸送層F23>
電荷輸送層は、電荷発生物質で発生した電荷を受入れて感光体の表面まで輸送する機能を有し、正孔輸送物質およびバインダ樹脂、電子輸送物質、シリカフィラー、必要に応じて添加剤を含有する。
【0060】
正孔輸送物質としては、当該分野で用いられる化合物を使用できる。
具体的には、カルバゾール誘導体、ピレン誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、多環芳香族化合物、インドール誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、トリアリールメタン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体、ベンジジン誘導体、これらの化合物から誘導される基を主鎖または側鎖に有するポリマー(ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリ-1-ビニルピレン、エチルカルバゾール-ホルムアルデヒド樹脂、トリフェニルメタンポリマー、ポリ-9-ビニルアントラセンなど)、ポリシランなどが挙げられる。これらの正孔輸送物質は1種を単独でまたは2種以上を組み合せて使用することができる。
【0061】
これらの種々の正孔輸送物質の中でも、電気特性、耐久性および化学的安定性において、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体およびこれらの化合物が複数種結合したものが好ましく、波長300~480nmの範囲に光吸収があり、正孔輸送物質として広範囲に吸収があるためスチルベン誘導体がより好ましく、下記の一般式(II):
【0062】
【化5】
【0063】
(式中、R1、R2、R5およびR6は、同一または異なって、アルキル基、アルコキシ基、アリール基またはアラルキル基であり、m、n、pおよびqは、同一または異なって、0~3の整数であり、R3およびR4は、同一または異なって、水素原子またはアルキル基である。)
で表されるスチルベン化合物が,残留電位上昇、感度悪化が少なく、良好な電子写真特性を発現できる点で特に好ましい。
【0064】
一般式(II)における置換基R1、R2、R5およびR6について説明する。
アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシルなどの炭素数1~6のアルキル基が挙げられる。
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、tert-ブトキシ、n-ペンチルオキシ、n-ヘキシルオキシなどの炭素数が1~6のアルコキシ基が挙げられる。
アリール基としては、例えばフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ビフェニリル、o-テルフェニルなどが挙げられる。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル、フェネチル、ベンズヒドリル、トリチルなどが挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられる。
【0065】
置換基R1、R2、R5およびR6の指数を示すm、n、pおよびqは、同一または異なって、0~3の整数であり、この指数が2以上のとき、各置換基は互いに異なっていてもよい。
また、一般式(II)における置換基R3およびR4のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピルなどの炭素数1~3のアルキル基が挙げられる。
一般式(II)で表されるスチルベン化合物は、例えば、特許第3272257号公報に記載の方法により合成することができる。
【0066】
一般式(II)で表されるスチルベン化合物としては、例えば、下記の化合物2-1~2-3が挙げられ、積層型感光層にした時の耐刷性の点で化合物2-1が特に好ましい。
【0067】
【化6】
【0068】
電荷輸送層の形成方法としては、バインダ樹脂を溶剤中に混合して得られるバインダ樹脂溶液中に、正孔輸送物質を従来公知の方法によって分散させ、電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に塗布する方法が好ましい。以下、この方法について説明する。
【0069】
バインダ樹脂としては、特に限定されず、当該技術分野で用いられる結着性を有する樹脂を使用することができ、正孔輸送物質との相溶性に優れるものが好ましい。
具体的には、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどのビニル重合体樹脂およびそれらの共重合体樹脂、ならびにポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアリレート、ポリアミド、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリアクリルアミド、フェノール樹脂、ポリフェニレンオキサイドなどの樹脂、これらの樹脂を部分的に架橋した熱硬化性樹脂などが挙げられる。これらのバインダ樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらの中でも、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレートおよびポリフェニレンオキサイドは、体積抵抗値が1013Ω以上であって電気絶縁性に優れ、かつ成膜性、電位特性などにも優れるので好ましく、ポリカーボネートおよびポリアリレートがより好ましく、ポリカーボネートが特に好ましい。
【0070】
電荷輸送層は、酸化防止剤、可塑剤、レベリング剤などの添加剤を含有してもよい。
酸化防止剤としては、トリベンジルアミンなどが挙げられる。
可塑剤としては、例えば、フタル酸エステルなどの二塩基酸エステル、脂肪酸エステル、リン酸エステル、塩素化パラフィン、エポキシ型可塑剤などが挙げられる。
レベリング剤としては、例えば、シリコン系レベリング剤などが挙げられる。
【0071】
溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびモノクロルベンゼンなどの芳香族炭化水素;ジクロロメタンおよびジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素;テトラヒドロフラン、ジオキサンおよびジメトキシメチルエーテルなどのエーテル類;、並びに、N,N-ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性極性溶剤などが挙げられる。また、必要に応じてアルコール類、アセトニトリルまたはメチルエチルケトンなどの溶剤をさらに加えて使用することもできる。これらの溶剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、例えば、非ハロゲン系有機溶剤を好適に用いることができる。
正孔輸送物質の質量Gとバインダ樹脂の質量Hとの比率(G/H)としては、例えば、10/12~10/30程度が好ましい。
【0072】
電荷輸送層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは20~40μm、より好ましくは25~40μm程度である。
電荷輸送層の膜厚が20μm未満であると、耐光性への効果が十分に得られないことがある。一方、電荷輸送層の膜厚が40μmを超えると、電気特性が悪化することがある。
【0073】
(2)プロセスカートリッジ
本開示のプロセスカートリッジは、本開示の感光体と、感光体を帯電させる帯電手段、露光により形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段および感光体に残留するトナーを除去するクリーニング手段から選択される少なくとも1種とを備えることを特徴とする。
例えば、本開示のプロセスカートリッジは、本開示の感光体、帯電装置、現像装置およびクリーニング装置が支持部材に一体化されることで構成される。このようなプロセスカートリッジが画像形成装置100に組み込まれることにより、プロセスカートリッジの構成要素である各部が画像形成装置100に備えられることになる。
プロセスカートリッジが画像形成装置100に脱着可能であることにより、消耗時の交換が容易になる。
【0074】
(3)画像形成装置
本開示の画像形成装置は、本開示の感光体と、感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、静電潜像を現像してトナー像を形成する(可視像化する)現像手段と、トナー像を記録媒体上に転写する転写手段とを少なくとも備えることを特徴とする。
本開示の画像形成装置は、転写されたトナー像を記録媒体上に定着して画像を形成する定着手段と、感光体に残留するトナーを除去し回収するクリーニング手段、および感光体に残留する表面電荷を除電する除電手段から選択される手段を備えていてもよい。
以下、図面を用いて本開示の画像形成装置およびその動作について説明するが、本開示の画像形成装置はこれらにより限定されるものではない。
【0075】
図2は、本開示の画像形成装置の要部の構成を模式側面図である。
図2の画像形成装置(レーザプリンタ)100は、本開示の感光体1と、露光手段(半導体レーザ)31と、帯電手段(帯電器)32と、現像手段(現像器)33と、転写手段(転写帯電器)34と、搬送ベルト(図示せず)と、定着手段(定着器)35と、クリーニング手段(クリーナ)36とを含んで構成される。符号51は記録媒体(記録紙または転写紙)を示す。
【0076】
感光体1は、画像形成装置100本体に回転自在に支持され、図示しない駆動手段によって回転軸線44回りに矢符41方向に回転駆動される。駆動手段は、例えば電動機と減速歯車とを含んで構成され、その駆動力を感光体1の芯体を構成する導電性支持体に伝えることによって、感光体1を所定の周速度で回転駆動させる。帯電手段(帯電器)32、露光手段31、現像手段(現像器)33、転写手段(転写帯電器)34およびクリーニング手段(クリーナ)36は、この順序で、感光体1の外周面に沿って、矢符41で示される感光体1の回転方向上流側から下流側に向って設けられる。
【0077】
帯電器32は、感光体1の外周面を均一に所定の電位に帯電させる帯電手段である。
露光手段31は、半導体レーザを光源として備え、光源から出力されるレーザビーム光を、帯電器32と現像器33との間の感光体1の表面に照射することによって、帯電された感光体1の外周面に対して画像情報に応じた露光を施す。光は、主走査方向である感光体1の回転軸線44の延びる方向に繰返し走査され、これらが結像して感光体1の表面に静電潜像が順次形成される。すなわち、帯電器32により均一に帯電された感光体1の帯電量がレーザビームの照射および非照射によって差異が生じて静電潜像が形成される。
【0078】
現像器33は、露光によって感光体1の表面に形成される静電潜像を、現像剤(トナー)によって現像する現像手段であり、感光体1を臨んで設けられ、感光体1の外周面にトナーを供給する現像ローラ33aと、現像ローラ33aを感光体1の回転軸線44と平行な回転軸線まわりに回転可能に支持すると共にその内部空間にトナーを含む現像剤を収容するケーシング33bとを備える。
【0079】
転写帯電器34は、現像によって感光体1の外周面に形成される可視像であるトナー像を、図示しない搬送手段によって矢符42方向から感光体1と転写帯電器34との間に供給される記録媒体である転写紙51上に転写させる転写手段である。転写帯電器34は、例えば、帯電手段を備え、転写紙51にトナーと逆極性の電荷を与えることによってトナー像を転写紙51上に転写させる接触式の転写手段である。
【0080】
クリーナ36は、転写帯電器34による転写動作後に感光体1の外周面に残留するトナーを除去し回収する清掃手段であり、感光体1の外周面に残留するトナーを剥離させるクリーニングブレード36aと、クリーニングブレード36aによって剥離されたトナーを収容する回収用ケーシング36bとを備える。また、このクリーナ36は、図示しない除電ランプと共に設けられる。
【0081】
また、画像形成装置100には、感光体1と転写帯電器34との間を通過した転写紙51が搬送される下流側に、転写された画像を定着させる定着手段である定着器35が設けられる。定着器35は、図示しない加熱手段を有する加熱ローラ35aと、加熱ローラ35aに対向して設けられ、加熱ローラ35aに押圧されて当接部を形成する加圧ローラ35bとを備える。
符号37は、転写紙と感光体を分離する分離手段、符号38は、画像形成装置の各手段を収容するケーシングを示す。
【0082】
この画像形成装置100による画像形成動作は、次のようにして行われる。
まず、感光体1が駆動手段によって矢符41方向に回転駆動されると、露光手段31による光の結像点よりも感光体1の回転方向上流側に設けられる帯電器32によって、感光体1の表面が正の所定電位に均一に帯電される。
【0083】
次いで、露光手段31から、感光体1の表面に対して画像情報に応じた光が照射される。感光体1は、この露光によって、光が照射された部分の表面電荷が除去され、光が照射された部分の表面電位と光が照射されなかった部分の表面電位とに差異が生じ、静電潜像が形成される。
露光手段31による光の結像点よりも感光体1の回転方向下流側に設けられる現像器33から、静電潜像の形成された感光体1の表面にトナーが供給されて静電潜像が現像され、トナー像が形成される。
【0084】
感光体1に対する露光と同期して、感光体1と転写帯電器34との間に、転写紙51が供給される。転写帯電器34によって、供給された転写紙51にトナーと逆極性の電荷が与えられ、感光体1の表面に形成されたトナー像が、転写紙51上に転写される。
トナー像の転写された転写紙51は、搬送手段によって定着器35に搬送され、定着器35の加熱ローラ35aと加圧ローラ35bとの当接部を通過する際に加熱および加圧され、トナー像が転写紙51に定着されて堅牢な画像となる。このようにして画像が形成された転写紙51は、搬送手段によって画像形成装置100の外部へ排紙される。
【0085】
一方、転写帯電器34によるトナー像の転写後も感光体1の表面上に残留するトナーは、クリーナ36によって感光体1の表面から剥離されて回収される。このようにしてトナーが除去された感光体1の表面の電荷は、除電ランプからの光によって除去され、感光体1の表面上の静電潜像が消失する。その後、感光体1はさらに回転駆動され、再度帯電から始まる一連の動作が繰返されて連続的に画像が形成される。
【0086】
上記の画像形成装置100は、モノクロの画像形成装置(プリンタ)であるが、例えば、カラー画像を形成できる中間転写方式のカラー画像形成装置であってもよい。具体的には、トナー像がそれぞれ形成される複数の電子写真感光体を所定方向(例えば水平方向Hまたは略水平方向H)に並設した構成、所謂タンデム式のフルカラー画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置100は、他のカラー画像形成装置、複写機、複合機またはファクシミリ装置であってもよい。
【実施例0087】
以下に、実施例および比較例により本開示を具体的に説明するが、その要旨を越えない限り、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。
実施例および比較例では、積層型感光層を備えた積層型感光体を採用したが、単層型感光層を備えた単層型感光体を用いても同様の効果が得られる。
なお、実施例および比較例において、用いた材料の物性を下記の方法により測定した。
【0088】
(1)電子輸送物質の極大吸収波長λmax
電子輸送物質の分光吸収スペクトルを、紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所製、UV-VIS SPECTROPHOTOMETER、型式:UV-2450)を用い、波長領域400~900nmで測定し、波長500~600nmに極大値を有する場合、その波長を極大吸収波長λmaxとする。
【0089】
(2)シリカフィラーの平均一次粒子径
走査型電子顕微鏡(SEM、株式会社日立ハイテクノロジーズ製、型式:S-4800)を用いて、シリカ粒子を倍率30000~300000倍、例えば100000倍で撮影し、得られた画像から任意に100個のシリカ粒子を一次粒子として観察し、画像解析によってフェレ方向の粒径(長径)の平均値を算出し、これを平均一次粒子径(nm)とする。
【0090】
[実施例1]
(下引き層の形成)
酸化チタン(石原産業株式会社製、製品名:タイベークTTO-D-1)3質量部および共重合ポリアミド(ナイロン)(東レ株式会社製、製品名:アミラン(登録商標)、グレード:CM8000)2質量部を、メチルアルコール25質量部に加え、ペイントシェーカにて8時間分散処理して下引き層用塗布液3リットルを調製した。
得られた下引き層用塗布液を塗布槽に満たし、導電性支持体F1として直径30mm、長さ255mmのアルミニウム製のドラム状支持体を浸漬した後に引き上げ、得られた塗膜を自然乾燥させて、導電性支持体F1上に膜厚1μmの下引き層F21を形成した。
【0091】
(電荷発生層の形成)
予め、電荷発生物質として使用する、下記構造式で表されるチタニルフタロシアニンを調製した。
【化7】
【0092】
ジイミノイソインドリン29.2gおよびスルホラン200mlを混合し、さらにチタニウムテトライソプロポキシド17.0gを加え、窒素雰囲気下、140℃で2時間反応させた。得られた反応混合物を放冷した後、析出物を濾取し、クロロホルムおよび2%の塩酸水溶液で順次洗浄し、さらに水およびメタノールで順次洗浄し、乾燥させて青紫色の結晶物25.5gを得た。
得られた化合物の化学分析の結果、上記構造式で表されるチタニルフタロシアニンであることを確認した(収率88.5%)。
得られたチタニルフタロシアニン1質量部およびブチラール樹脂(積水化学株式会社製、製品名:エスレックBM-2)1質量部を、メチルエチルケトン98質量部に加え、ペイントシェーカにて2時間分散処理して電荷発生層用塗布液3リットルを調製した。
得られた電荷発生層用塗布液を、下引き層形成の場合と同様の浸漬法で、下引き層F21上に塗布し、得られた塗膜を自然乾燥させて、膜厚0.3μmの電荷発生層F22を形成した。
【0093】
(電荷輸送層の形成)
次いで、シリカフィラー(平均一次粒子径16nm、ジメチルクロロシラン表面処理、日本アエロジル株式会社製、製品名:AEROSIL(登録商標)R972)3.4gを、テトラヒドロフラン30.3gに加えて懸濁させ、30時間、撹拌処理を行った。得られたシリカフィラー懸濁液に対して、正孔輸送物質として下記構造式で表される化合物2-1(スチルベン誘導体)10.0g、酸化防止剤としてのトリベンジルアミン(東京化成株式会社製)0.30g、ポリカーボネート(帝人化成株式会社製、製品名:TS2050)19.0g、電子輸送物質としての下記構造式(式中、Phはフェニル基を表す)で表される化合物1-1(λmax=528nm)1.0gおよびテトラヒドロフラン104.4gを加え、混合した。
【0094】
【化8】
【0095】
【化9】
【0096】
得られた混合物を、超微粒化装置(吉田機械興業株式会社製、製品名:ダマトリシステム)を用いて5分間、撹拌処理を行った。次いで、粒子分散装置(マイクロフルイディックス社製、型式:マイクロフルイタイザーM-110P)を用いて、10Pass分散処理して電荷輸送層用塗布液168.3gを調製した。
得られた電荷輸送層用塗布液を、下引き層形成の場合と同様の浸漬法で、電荷発生層F22上に塗布し、得られた塗膜を温度115℃で1.5時間乾燥させて、膜厚35μmの電荷輸送層F23を形成し、図1に示す実施例1の感光体F01を作製した。
【0097】
なお、上記化合物1-1は特許第4041741号公報に記載の方法に基づいて、上記化合物2-1(スチルベン誘導体)は特許第3272257号公報に記載の方法に基づいて、予め調製したものを使用した。
【0098】
(実施例2)
電荷輸送層用塗布液の調製において、電子輸送物質を化合物1-1の代わりに下記構造式で表される化合物1-2(λmax=510nm)を用いること以外は、実施例1と同様にして実施例2の感光体を作製した。
なお、上記化合物1-2は特許第4041741号公報に記載の方法に基づいて予め調製したものを使用した。
【化10】
【0099】
(実施例3)
電荷輸送層用塗布液の調製において、電子輸送物質を化合物1-1の代わりに下記構造式で表される化合物1-3(λmax=580nm)を用いること以外は、実施例1と同様にして実施例3の感光体を作製した。
なお、上記化合物1-3は特許第4041741号公報に記載の方法に基づいて予め調製したものを使用した。
【化11】
【0100】
(実施例4)
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカフィラー(平均一次粒子径40nm、ヘキサメチルジシラザン表面処理、日本アエロジル株式会社製、製品名:AEROSIL(登録商標)RX-50)2.24gに変更し、テトラヒドロフランの配合量を29.8gに、懸濁液に加える電子輸送物質の配合量を0.45gに、テトラヒドロフランの配合量を98.2gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例4の感光体を作製した。
【0101】
(実施例5)
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカフィラーの配合量を6.21gに、懸濁液に加えるテトラヒドロフランの配合量を115.7gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例5の感光体を作製した。
【0102】
(実施例6)
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカフィラー(平均一次粒子径12nm、ジメチルクロロシラン表面処理、日本アエロジル株式会社製、製品名:AEROSIL(登録商標)R974)2.64gに変更し、テトラヒドロフランの配合量を30.4gに、懸濁液に加える電子輸送物質の配合量を1.10gに、テトラヒドロフランの量を101.8gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例6の感光体を作製した。
【0103】
(実施例7)
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカフィラーの配合量を3.68g、テトラヒドロフランの配合量を29.8gに、懸濁液に加える電子輸送物質の添加量を0.50gに、テトラヒドロフランの配合量を104.13gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例7の感光体を作製した。
【0104】
(実施例8)
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカフィラー(平均一次粒子径12nm、ジメチルクロロシラン表面処理、日本アエロジル株式会社製、製品名:AEROSIL(登録商標)R974)2.59gに変更し、テトラヒドロフランの配合量を29.8gに、懸濁液に加える電子輸送物質の配合量を0.50gに、テトラヒドロフランの配合量を99.77gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例8の感光体を作製した。
【0105】
(実施例9)
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカフィラー(平均一次粒子径30nm、ヘキサメチルジシラザン表面処理、日本アエロジル株式会社製、製品名:AEROSIL(登録商標)NAX-50)6.29gに変更し、テトラヒドロフランの配合量を30.7gに、懸濁液に加える電子輸送物質の配合量を1.40gに、テトラヒドロフランの配合量を117.3gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例9の感光体を作製した。
【0106】
(実施例10)
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカフィラーの配合量を1.58gに、テトラヒドロフランの配合量を30.0gに、懸濁液に加える電子輸送物質の配合量を0.70gに、テトラヒドロフランの配合量を96.3gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例10の感光体を作製した。
【0107】
(実施例11)
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカフィラー(平均一次粒子径30nm、ヘキサメチルジシラザン表面処理、日本アエロジル株式会社製、製品名:AEROSIL(登録商標)NAX-50)10.1gに変更し、懸濁液に加えるテトラヒドロフランの配合量を131.3gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例11の感光体を作製した。
【0108】
(実施例12)
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカフィラー(平均一次粒子径30nm、ヘキサメチルジシラザン表面処理、日本アエロジル株式会社製、製品名:AEROSIL(登録商標)NAX-50)2.21gに変更し、テトラヒドロフランの配合量を29.5gに、懸濁液に加える電子輸送物質の配合量を0.18gに、テトラヒドロフランの配合量を97.3gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例12の感光体を作製した。
【0109】
(実施例13)
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカフィラー(平均一次粒子径12nm、ジメチルクロロシラン表面処理、日本アエロジル株式会社製、製品名:AEROSIL(登録商標)R974)8.00gに変更し、テトラヒドロフランの配合量を32.0gに、懸濁液に加える電子輸送物質の配合量を2.70gに、テトラヒドロフランの配合量を128.00gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例13の感光体を作製した。
【0110】
(実施例14)
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカフィラー(数平均一次粒子径7nm、ジメチルクロロシラン表面処理、日本アエロジル株式会社製、製品名:AEROSIL(登録商標)R976)3.39gに変更し、テトラヒドロフランの配合量を30.5gに、懸濁液に加える電子輸送物質の配合量を1.20gに、テトラヒドロフランの配合量を105.06gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例14の感光体を作製した。
【0111】
(実施例15)
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカフィラー(平均一次粒子径100nm、ヘキサメチルジシラザン表面処理、日本アエロジル株式会社製、製品名:AEROSIL(登録商標)VPRX-40)7.45gに変更し、テトラヒドロフランの配合量を29.8gに、懸濁液に加える電子輸送物質の配合量を0.50gに、テトラヒドロフランの配合量を119.20gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例15の感光体を作製した。
【0112】
(実施例16)
電荷輸送層用塗布液の調製において、電子輸送物質を化合物1-1の代わりに下記構造式で表される化合物1-4(λmax=553nm)を用いること以外は、実施例1と同様にして実施例16の感光体を作製した。
なお、上記化合物1-4は特許第4041741号公報に記載の方法に基づいて予め調製したものを使用した。式中、Phはフェニル基、t-Buはtert-ブチル基を表す。
【化12】
【0113】
(実施例17)
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカフィラー(平均一次粒子径16nm、ヘキサメチルジシラザン表面処理、日本アエロジル株式会社製、製品名:AEROSIL(登録商標)NX130)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例17の感光体を作製した。
【0114】
(実施例18)
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカフィラーの配合量を3.86gに、テトラヒドロフランの配合量を31.2gに、懸濁液に加える電子輸送物質の配合量を1.92gに、テトラヒドロフランの配合量を109.10gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例18の感光体を作製した。
【0115】
(実施例19)
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカフィラー(平均一次粒子径12nm、ジメチルクロロシラン表面処理、日本アエロジル株式会社製、製品名:AEROSIL(登録商標)R974)3.11gに変更し、テトラヒドロフランの配合量を29.8gに、懸濁液に加える電子輸送物質の配合量を0.53gに、テトラヒドロフランの配合量を102.75gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例19の感光体を作製した
【0116】
(比較例1)
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカフィラーを2.87gに、テトラヒドロフランの配合量を30.9gに、懸濁液に加える電子輸送物質の配合量を1.60gに、テトラヒドロフランの配合量を104.18gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例1の感光体を作製した。
【0117】
(比較例2)
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカフィラー(平均一次粒子径12nm、ジメチルクロロシラン表面処理、日本アエロジル株式会社製、製品名:AEROSIL(登録商標)R974)7.62gに変更し、テトラヒドロフランの配合量を30.5gに、懸濁液に加える電子輸送物質の配合量を1.17gに、テトラヒドロフランの配合量を121.88gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例2の感光体を作製した。
【0118】
(比較例3)
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカフィラーを用いず、正孔輸送物質として化合物2-1の10.0g、酸化防止剤としてのトリベンジルアミン(東京化成株式会社製、製品名:トリベンジルアミン)0.30g、ポリカーボネート(帝人化成株式会社製、製品名:TS2050)19.0gおよび電子輸送物質として化合物1-1の1.0gを、溶剤としてテトラヒドロフラン107.4gに加え、混合して30時間撹拌処理を行う方法に変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例3の感光体を作製した。
【0119】
(比較例4)
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカフィラーの配合量を3.26gに、テトラヒドロフランの配合量を29.3gに変更し、懸濁液には電子輸送物質を添加せず、テトラヒドロフランの配合量を100.92gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例4の感光体を作製した。
【0120】
(比較例5)
電荷輸送層用塗布液の調製において、電子輸送物質として色素C.I.Solvent Red52(λmax=540nm、紀和化学工業株式会社製、製品名:KP Plast Red 5B)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例5の感光体を作製した。
【0121】
(比較例6)
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカフィラーの配合量を3.30gに、テトラヒドロフランの配合量を29.7gに変更し、電子輸送物質として色素C.I.Solvent Red52(λmax=540nm、紀和化学工業株式会社製、製品名:KP Plast Red 5B)0.40gを用い、テトラヒドロフランの配合量を102.30gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例6の感光体を作製した。
【0122】
[評価]
下記の項目で実施例1~19および比較例1~6で作製した感光体を評価した。
下記の評価(1)および(2)には、試験用に改造したデジタル複写機(シャープ株式会社製、型式:MX-B455W)のユニットに各感光体を装着して評価した。
【0123】
(1)耐光性
評価対象の感光体を、それぞれ蛍光灯1000Luxの光に10分間、蛍光灯400Luxの光に20分間曝露したときの、1分後の画像への影響を評価した。光の曝露箇所と非曝露箇所との画像を目視で比較し、下記の基準で耐光性を評価した。
<評価基準>
VG:両曝露条件共に、画像への影響なし
G :1000Luxの曝露では軽微な画像不良がみられるが、400Luxの曝露のでは画像への影響がなく、問題がない
NB:400Luxの曝露でも軽微な画像不良がみられるが、実使用上問題なし
B :光曝露の後、明確な画像不良が確認できる
【0124】
(2)光ダメージからの回復性
上記(1)の評価を実施後、感光体を暗所に10分間放置し、上記(1)と同様にして画像への影響を評価した。光の曝露箇所と非曝露箇所との画像を目視で比較し、下記の基準で耐光性(光ダメージからの回復性)を評価した。
<評価基準>
VG:両曝露条件共に、画像への影響なし
G :1000Luxの曝露では10分間暗所放置後に軽微な画像不良がみられるが、400Lux曝露では10分間暗所放置後に画像への影響がなく、問題がない
NB: 400Luxの曝露でも10分間暗所放置後に軽微な画像不良がみられるが、実使用上問題なし
B :光曝露の後、10分間暗所放置後にでも明確な画像不良が確認できる
【0125】
(3)感度安定性
試験用に改造したデジタル複写機(シャープ株式会社製、型式:BP-40C26)のユニットに評価対象の感光体を装着し、デジタル複写機から現像器を取り外し、代わりに現像部位に表面電位計(トレック・ジャパン社製、型式:MODEL 344)を取り付けた。温度25℃/相対湿度50%の環境下において、初期の残留電位および通電疲労後の感光体の表面電位を計測し、これら差分ΔVr(V)を下記の評価基準で、繰り返し使用による感度悪化の指標となる感度安定性を評価した。
【0126】
<評価基準>
VG:ΔVr<40
高感度を要求される高速の複合機もしくはプリンタにおいても問題なく使用可
G :40≦ΔVr<80
中低速の複合機もしくはプリンタにおいては問題なく使用可
NB:80≦ΔVr<140
低速で安価な複合機もしくはプリンタの場合であれば、やや濃度は薄いものの問題なく使用可
B:140≦ΔVr
感度が悪いため、濃度が薄く、実使用上問題あり
【0127】
(4)耐刷性
試験用に改造したデジタル複写機(シャープ株式会社製、型式:BP-40C26)のユニットに評価対象の感光体を装着し、現像器を取り付け、クリーニング手段のクリーニングブレードが感光体に接する圧力、いわゆるクリーニングブレード圧を21gf/cm(2.05×10-1N/cm:初期線圧)に調整した。温度25℃/相対湿度85%の環境下で、文字テストチャート(ISO19752)を記録紙20万枚に印刷することで、耐刷試験を行なった。
耐刷試験開始時および20万枚画像形成後の感光層の厚みを、膜厚測定装置(フィルメトリクス株式会社製、型式:F-20-EXR)を用いて測定した。
耐刷試験開始時の膜厚と20万枚画像形成後の膜厚との差から、感光体ドラム10万回転あたりの膜減り量を求め、得られた膜減り量から下記の基準で耐刷性を評価した。
なお、膜減り量が多いほど、耐刷性が悪いと評価した。
【0128】
<評価基準>
VG:膜減り量<0.50μm/10万回転
ロングライフを要求される複合機もしくはプリンタにおいても問題なく使用可
G :0.50μm/10万回転≦膜減り量<0.70μm/10万回転
膜減り量がやや多いものの、ロングライフを要求される複合機やプリンタ以外であれば、問題なく使用可
NB:0.70μm/10万回転≦膜減り量<0.85μm/10万回転
膜減り量が多いものの、安価な複合機やプリンタであれば、問題なく使用可
B :0.85μm/10万回転≦膜減り量
膜減り量が多く、実使用性上問題あり
【0129】
[総合評価]
上記の評価(1)~(4)の結果から、4項目中に「B」がなければ「実使用可」、4項目中、少なくとも1項目に「B」があれば「実使用不可」と評価した。
実施例および比較例の感光体の作製に使用した主要構成材料およびその含有量ならびにそれらの関係を表1に、得られた感光体の評価結果を表2に示す。
表1では、シリカフィラーをその製品名の英数字またはその一部で、電子輸送物質を化合物1-1~1-4で表す。
【0130】
【表1】
【0131】
【表2】
【0132】
表1および2から、次のことがわかる。
(1)本開示の構成要件を備えた感光体(実施例1~19)は、耐光性・光ダメージからの回復性・感度安定性および耐刷性のいずれにおいても優れていること
(2)シリカフィラーの含有量wとその平均一次粒子径をdおよび電子輸送物質の含有量xの関係w/(d×x)が0.12以下の場合(比較例1)、(d×x)に対してwが大き過ぎるため、電位安定性が悪くなり、一方、w/(d×x)が0.54を超える場合(比較例2)、(d×x)に対してwがシリカフィラーの添加量・平均一次粒径に対して電子輸送物質の添加量が小さ過ぎるため、所望の耐光性・光ダメージからの回復性が得られないこと
(3)実施例18では実使用上問題になるレベルではないが電位安定性の悪化が見られ、実施例19では実使用上問題になるレベルではないが光ダメージに対する弱さが見られたことから、0.12<w/(x*d)<0.54の範囲が好ましいこと
【0133】
(4)感光層がシリカフィラーを含有しない場合(比較例3)、所望の耐刷性が得られないことから、シリカフィラーが感光層の必須の構成成分であること
(5)感光層に本開示の電子輸送物質の代わりに、蛍光灯の光波長の吸収を有する色素を添加した場合、光の遮蔽効果により耐光性に関しては一定の効果が見られるが、光ダメージからの回復性に関しては効果が見られず、耐光性に効果を示す量を添加すると感度安定性を担保できないこと(比較例5)および一定の感度安定性を担保するために色素の含有量を減量すると耐光性が悪化し、実使用上の問題が起こること(比較例6)から、本開示の電子輸送物質が感光層の必須の構成成分であること、
【0134】
(6)極大吸収波長λmaxが小さい電子輸送物質を用いると耐光性の効果が小さくなることから、波長550nm付近の波長成分を十分に遮る材料を選定する必要があり(実施例2)、λmaxが大きい電子輸送物質を用いると感度安定性が悪くなることから、波長600nm付近の光波長成分を遮り過ぎない材料を選定する必要があること(実施程3)
(7)波長500nm付近/600nm付近の波長を遮るバランスが良好な材料では同等の効果が得られ(実施例16)、シリカの表面処理が異なっても同等の効果が得られること(実施例17)
【符号の説明】
【0135】
F01 積層型電子写真感光体
F1 導電性支持体(支持体)
F21 下引き層(中間層)
F22 電荷発生層
F23 電荷輸送層
Fa 感光体表面
【0136】
1 感光体
31 露光手段(半導体レーザ)
32 帯電手段(帯電器)
33 現像手段(現像器)
33a 現像ローラ
33b ケーシング
34 転写手段(転写帯電器)
35 定着手段(定着器)
35a 加熱ローラ
35b 加圧ローラ
36 クリーニング手段(クリーナ)
36a クリーニングブレード
36b 回収用ケーシング
37 分離手段
38 ハウジング
41、42 矢符
44 回転軸線
51 記録媒体(記録紙または転写紙)
100 画像形成装置(レーザプリンタ)
図1
図2