(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178747
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】カバー部材
(51)【国際特許分類】
F01N 13/18 20100101AFI20241218BHJP
F01N 13/14 20100101ALI20241218BHJP
F01N 13/08 20100101ALI20241218BHJP
【FI】
F01N13/18
F01N13/14
F01N13/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097122
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大嵜 辰俊
【テーマコード(参考)】
3G004
【Fターム(参考)】
3G004FA04
3G004GA04
(57)【要約】
【課題】排気部材を覆うカバー部材を小型化できるようにする。
【解決手段】本開示の一態様のカバー部材は、第1周端部と、第2周端部と、加締部と、を備える。第1周端部及び第2周端部は、流れ方向に沿って延び、周回方向の端部を形成する。第2周端部は、第1周端部に突き合わせて配置される。加締部は、当該カバー部材の一部を加締めることで第1周端部及び第2周端部を結合させる。当該カバー部材は、第1周端部側の第1領域、及び第2周端部側の第2領域が厚さ方向で重なるように配置される。第1領域には第1孔部が形成され、第2領域には第2孔部が形成され、第1孔部及び第2孔部は、少なくとも一部が重なるように配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気が流れる筒状の排気部材を覆うカバー部材であって、
当該カバー部材は、前記排気部材の外周面を周回するように配置された緩衝部材のさらに外周側を周回するように配置され、
前記排気が流れる方向を流れ方向、前記排気部材の外周面を周回する方向を周回方向、前記流れ方向に直交し前記排気部材の中心軸を通過する任意の仮想線の方向を厚さ方向として、
当該カバー部材は、
前記流れ方向に沿って延び、前記周回方向の端部を形成する第1周端部と、
前記流れ方向に沿って延び、前記周回方向の端部を形成する第2周端部であって、前記第1周端部に突き合わせて配置される第2周端部と、
当該カバー部材の一部を加締めることで前記第1周端部及び前記第2周端部を結合させた加締部と、
を備え、
当該カバー部材は、前記第1周端部側の第1領域、及び前記第2周端部側の第2領域が前記厚さ方向で重なるように配置され、
前記第1領域には第1孔部が形成され、前記第2領域には第2孔部が形成され、前記第1孔部及び前記第2孔部は、少なくとも一部が重なるように配置される
カバー部材。
【請求項2】
請求項1に記載のカバー部材であって、
前記周回方向において前記緩衝部材の一部の部位を覆う第1部材であって、前記第1領域を備え、前記第1周端部及び前記第1孔部が形成される第1部材と、
前記周回方向において前記緩衝部材の残りの部位を覆い、少なくとも前記加締部にて前記第1部材と連結される第2部材であって、前記第2領域を備え、前記第2周端部及び前記第2孔部が形成される第2部材と、
をさらに備え、
前記第1部材及び前記第2部材は、前記流れ方向に直交する断面での形状が円弧状に形成されるカバー部材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のカバー部材であって、
前記第1孔部及び前記第2孔部のうちの少なくとも一方は、前記第1周端部と前記第2周端部とを突き合わせる際に前記第2周端部を前記第1周端部に対して移動させる方向に伸びる長孔として形成されている
カバー部材。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のカバー部材であって、
前記第1周端部及び前記第2周端部のうちの一方から前記周回方向に沿って延出するように構成された延出部と、
当前記第1周端部及び前記第2周端部のうちの他方側に配置され、前記延出部が挿通される加締スリット部と、
をさらに備えるカバー部材。
【請求項5】
請求項4に記載のカバー部材であって、
前記加締部は、前記加締スリット部に挿入された延出部を折り曲げることで形成される
カバー部材。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載のカバー部材であって、
前記第2領域は、前記第2周端部から前記周回方向に沿って延出するように構成され、
当該カバー部材の前記第1周端部側には、前記第2領域が挿通される位置決めスリット部が備えられる
カバー部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排気部材を覆うカバー部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1には、排気管として構成された排気部材と、排気部材の外周面を周回するように配置された断熱材とを、上下から挟み込むように構成されたカバー部材が開示されている。このカバー部材は、上側の部材と下側の部材とに分割されており、上側の部材と下側の部材が、ボルト及びナットで締結する締結部材によって排気部材に対して固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の構成では、締結部材を配置するためのスペースが必要であるためカバー部材が小型化しにくいという課題が見出された。
本開示の1つの局面は、排気部材を覆うカバー部材を小型化できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、排気が流れる筒状の排気部材を覆うカバー部材である。当該カバー部材は、排気部材の外周面を周回するように配置された緩衝部材のさらに外周側を周回するように配置される。なお、排気が流れる方向を流れ方向、排気部材の外周面を周回する方向を周回方向とする。
【0006】
当該カバー部材は、第1周端部と、第2周端部と、加締部と、を備える。第1周端部は、流れ方向に沿って延び、周回方向の端部を形成する。第2周端部は、流れ方向に沿って延び、周回方向の端部を形成し、第1周端部に突き合わせて配置される。加締部は、当該カバー部材の一部を加締めることで第1周端部及び第2周端部を結合させる。
【0007】
当該カバー部材は、第1周端部側の第1領域、及び第2周端部側の第2領域が厚さ方向で重なるように配置される。第1領域には第1孔部が形成され、第2領域には第2孔部が形成され、第1孔部及び第2孔部は、少なくとも一部が重なるように配置される。
【0008】
このような構成によれば、第1孔部及び第2孔部を用いて第1周端部及び第2周端部を位置決めしつつ、加締部にて良好に固定することができる。この際、加締部はボルトやナット等の締結部材を配置するためのスペースが不要であるため、カバー部材を小型化することができる。
【0009】
本開示の一態様は、第1部材と、第2部材と、をさらに備えてもよい。第1部材は、周回方向において緩衝部材の一部の部位を覆い、第1領域を備え、第1周端部及び第1孔部が形成される。第2部材は、周回方向において緩衝部材の残りの部位を覆い、少なくとも加締部にて第1部材と連結される。また、第2部材は、第2領域を備え、第2周端部及び第2孔部が形成される。第1部材及び第2部材は、流れ方向に直交する断面での形状が円弧状に形成されてもよい。
このような構成によれば、カバー部材を第1部材と第2部材とを含む複数の部材に分割した構造とするので、排気部材を周回するようにカバー部材を配置しやすくすることができる。
【0010】
本開示の一態様では、第1孔部及び第2孔部のうちの少なくとも一方は、第1周端部と第2周端部とを突き合わせる際に第2周端部を第1周端部に対して移動させる方向に伸びる長孔として形成されてもよい。
このような構成によれば、第1周端部と第2周端部とを突き合わせることで第1周端部と第2周端部とを位置決めすることができる。
【0011】
本開示の一態様は、延出部と、加締スリット部と、をさらに備えてもよい。延出部は、第1周端部及び第2周端部のうちの一方から周回方向に沿って延出するように構成される。加締スリット部は、当第1周端部及び第2周端部のうちの他方側に配置され、延出部が挿通される。
このような構成によれば、延出部を加締スリット部に挿通することによって第1周端部及び第2周端部が隔離しにくいように位置決めすることができる。
【0012】
本開示の一態様では、加締部は、加締スリット部に挿入された延出部を折り曲げることで形成されてもよい。
このような構成によれば、加締スリット部を用いて第1周端部及び第2周端部を固定することができる。
【0013】
本開示の一態様では、第2領域は、第2周端部から周回方向に沿って延出するように構成されてもよい。当該カバー部材の第1周端部側には、第2領域が挿通される位置決めスリット部が備えられてもよい。
【0014】
このような構成によれば、位置決めスリット部を用いて第1周端部及び第2周端部を位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態の排気ユニットを示す斜視図である。
【
図3】
図3Aはスリット部を示す拡大斜視図、
図3Bは孔部を示す拡大斜視図、
図3Cは延出部がスリット部に挿通された状態を示す拡大斜視図である。
【
図4】
図4Aは延出部が1回折り曲げられた状態を示す拡大斜視図、
図4Bは延出部が2回折り曲げられた状態を示す拡大斜視図、
図4Cは延出部が3回折り曲げられた状態を示す拡大斜視図である。
【
図5】
図5Aは第1変形例の孔部を示す平面図、
図5Bは第2変形例の孔部を示す平面図である。
【
図6】第2変形例の排気ユニットを示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
[1.実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す排気ユニット1Aは、車両に搭載された内燃機関からの排気を通過させるための流路の一部を構成する部品である。
図1及び
図2に示すように、排気ユニット1Aは、排気部材3と、カバー部材10Aと、緩衝部材5と、を備える。なお、
図2では、排気部材3を透過して内部が見えるように図示している。
【0017】
排気部材3は、内部を排気が流れる筒状の部材である。例えば、排気部材3は、金属製の略円筒状の排気管である。なお、以下では、排気部材3内にて排気が流れる方向を流れ方向、排気部材3の外周面を周回する方向を周回方向、流れ方向に直交し排気部材3の中心軸Pを通過する任意の仮想線の方向を厚さ方向或いは径方向として説明する。
【0018】
排気部材3は、
図2に示すように、大径部3Aと、2つの接続部3Bとを備える。大径部3Aは、排気部材3のうちの相対的に径が大きく設定された部位である。大径部3Aの内部には、例えば触媒7が収容される。なお、径とは中心軸Pから部材(例えば排気部材3)の内周面又は外周面まで距離である。
【0019】
2つの接続部3Bは、大径部3Aを挟むように大径部3Aの流れ方向の両側に配置される。2つの接続部3Bは、大径部3Aから遠ざかるにつれて径が小さくなる先細り形状である。
【0020】
カバー部材10Aは、排気部材3の外周面との間に隙間を有しつつ、外周面を周回するように配置される筒状の部材である。つまり、カバー部材10Aは、排気部材3の外周面を覆うように配置される。例えば、カバー部材10Aは略円筒状の形状を有し、カバー部材10Aの中心軸は排気部材3の中心軸Pと一致する。なお、排気部材3の中心軸Pが延びる方向は、流れ方向と一致する。
【0021】
緩衝部材5は、排気部材3の外周面とカバー部材10Aの内周面との間に配置され、断熱材としての機能を備える。緩衝部材5は、クッション性を有する部材、すなわち厚みが変化したときに反発力を発生する部材である。緩衝部材5の素材としては、例えばグラスウール、金属製のワイヤメッシュ等が採用される。緩衝部材5は触媒7が作動可能な温度に保温する機能を備える。
【0022】
なお、緩衝部材5は、カバー部材10Aの振動、及び、排気部材3とカバー部材10Aとの干渉による異音を抑制する機能を備えてもよい。このように緩衝部材5は、保温、断熱、制振の何れかの機能を備える。緩衝部材5は、排気部材3とカバー部材10Aとの間の隙間において、大径部3A及び2つの接続部3Bにおける周方向全体を覆うリング状に構成される。ただし、緩衝部材5は、
図2に示すように、第1緩衝部材5Aと第2緩衝部材5Bとに分割されて構成される。第1緩衝部材5Aは、後述する第1部材30と概ね同様の形状であり、第2緩衝部材5Bは、後述する第2部材50と概ね同様の形状である。
【0023】
カバー部材10Aは、高温の排気が通過することにより生じる排気部材3からの熱、或いは騒音を遮断するように構成されるインシュレータである。カバー部材10Aは、例えば、ステンレスやアルミニウム等の金属材料により構成される。
【0024】
カバー部材10Aは、排気部材3の外周面に沿って配置されるため、排気部材3と同様の形状を有する。すなわち、
図1に示すように、カバー部材10Aは、大径部11Aと、2つの接続部11Bと、を備える。大径部11Aは、相対的に径が大きく設定された部位である。
【0025】
2つの接続部11Bは、大径部11Aを挟むように大径部11Aの流れ方向の両側に配置される。2つの接続部11Bは、大径部11Aから遠ざかるにつれて径が小さくなる先細り形状である。
【0026】
このような構成のカバー部材10Aは、2つの接続部11Bの内径の一部が排気部材3の大径部3Aの外径よりも小さく構成される。このため、カバー部材10Aが流れ方向に移動することを抑制できる。
【0027】
カバー部材10Aは、
図1に示すように、複数の加締部71をさらに備える。加締部71は、当該カバー部材10Aの一部を加締めることで、カバー部材10Aの周端部である第1周端部31及び第2周端部51を結合させるための部位である。加締部71の詳細については後述する。
【0028】
図1及び
図2に示すように、カバー部材10Aは、第1部材30と、第2部材50と、を備える。第1部材30及び第2部材50は、互いに対面するように配置され、排気部材3を挟み込む。第1部材30は、周回方向において緩衝部材5の一部の部位を覆う。また、第2部材50は、周回方向において、緩衝部材5の第1部材30が覆う部位を除く残りの部位を覆う。
【0029】
より詳細には、本実施形態では、第1部材30は、周方向に約180°程度にわたって広がり、排気部材3の外周面の上方を覆う。第2部材50は、第1部材30の下方に位置し、周方向に約180°程度にわたって広がり、排気部材3の外周面の下方を覆う。つまり、第1部材30及び第2部材50は、流れ方向に直交する断面での形状がそれぞれ円弧状に形成される。
図1に示すように、カバー部材10Aは、第1部材30及び第2部材50を連結することで製造される。すなわち、流れ方向に垂直な断面が半円弧状の第1部材30及び半円弧状の第2部材50を対面するように配置して筒状のカバー部材10Aが形成される。これにより、カバー部材10の内部に、緩衝部材5で覆われた排気部材3を収容する空間が形成される。
【0030】
第1部材30は、
図2に示すように、第1周端部31と、複数の第1領域32とを備える。第1周端部31は、第1部材30の流れ方向の両端部を結ぶように流れ方向に沿って延び、第1部材30の周回方向の端部を形成する部位である。複数の第1領域32は、平面状に形成される。第1部材30には、第1周端部31に沿って、複数の加締ベース部34及び位置決めベース部36がさらに備えられる。
【0031】
第1周端部31及び後述する第2周端部51は、第1部材30と第2部材50とを組み付ける際に突き合わされる部位、換言すれば接合される部位である。
図1及び
図2等では、紙面手前側の第1周端部31及び第2周端部51を図示しているが、紙面奥側においても同様に、図示しない第1周端部31及び第2周端部51が存在する。紙面奥側においても第1周端部31及び第2周端部51を連結させるために、後述する構成と同様の構成を採用できる。
【0032】
それぞれの第1領域32は、第1部材30の第1周端部31付近に設けられる領域であり、後述する複数の第2領域52のうちの対応する第2領域52が、厚さ方向に重ねて配置される領域である。それぞれの第2領域52は、第1領域32と良好に近接するように第1領域32と同様に平面状に形成される。複数の第1領域32には、それぞれ第1孔部32Hが形成される。
【0033】
複数の加締ベース部34及び複数の位置決めベース部36は、
図3Aに示すように、第1部材30の外周面から厚さ方向(
図3Aでは右下方向)に突出するように構成される。そして、複数の加締ベース部34には、それぞれ複数の加締ベース部34を周回方向に貫通する加締スリット部33が形成される。加締ベース部34は、例えば第1領域32の流れ方向の両側に位置しているが、これに限られない。また、加締ベース部34(加締スリット部33)は、接続部11Bに形成されていてもよい。なお、
図3Aは
図1における領域Aの拡大図である。また、位置決めベース部36には、位置決めベース部36を周回方向に貫通する位置決めスリット部35が形成される。位置決めベース部36と第1領域32とは、周回方向に並び、隣接するように配置される。位置決めベース部36(位置決めスリット部35)は、接続部11Bに形成されていてもよい。
【0034】
第2部材50は、
図2に示すように、第2周端部51を備える。第2周端部51は、第2部材50の流れ方向の両端部を結ぶように流れ方向に沿って延び、第2部材50の周回方向の端部を形成する部位である。第2部材50には、第2周端部51に沿って、複数の第2領域52と、複数の延出部53とがさらに備えられる。複数の第2領域52には、それぞれ第2孔部52Hが形成される。複数の第2領域52及び複数の延出部53は、それぞれ、第2周端部51から周回方向に沿って延出するように構成された部位である。第2領域52及び延出部53は、接続部11Bに形成されていてもよい。
【0035】
ここで、
図3Bに示すように、第1孔部32Hは、第1方向に伸びる長孔として形成される。第1方向は、第1周端部31と第2周端部51とを突き合わせる際に第2周端部51を第1周端部31に対して移動させる方向と一致し、本実施形態では、第1周端部31及び第2周端部51での周回方向(換言すれば接線方向)と一致するように設定される。
【0036】
具体的には、第1孔部32Hの周回方向の長さLは、流れ方向の長さD1よりも長くなるように構成される。周回方向の長さLと流れ方向の長さD1との差は、例えば、緩衝部材5の厚み以下であって、緩衝部材5の厚みの半分以上に設定される。一方で、第2孔部52Hは、直径D2の円形の孔として形成される。D1とD2とは一致するように設定される。ただし、D1とD2とは一致しなくてもよい。
【0037】
[1-2.連結手順]
次に、カバー部材10Aにおいて、第1部材30及び第2部材50を連結する手順を
図3C、
図4A~
図4Cを参照して説明する。
【0038】
第1部材30及び第2部材50を連結する際には、
図3Cに示すように、まず、全ての第2領域52を対応する位置決めスリット部35に挿通するとともに、全ての延出部53を対応する加締スリット部33に挿通する。すると、第1周端部31側の第1領域32、及び第2周端部51側の第2領域52が厚さ方向で重なるように配置される。
【0039】
この際、緩衝部材5が圧縮されて反発力が生じる程度に、第1部材30及び第2部材50が近づくように加圧する。このように加圧したときに、第1孔部32H及び第2孔部52Hの少なくとも一部が重なるように設定されている。
【0040】
このように第1孔部32H及び第2孔部52Hの少なくとも一部が重なった状態で、各孔部32H,52Hを貫通するように図示しないピンを各孔部32H,52Hに差し込む。ピンは、第2孔部52Hの直径D2よりもやや小さい外径を有するように構成される。
【0041】
なお、第1孔部32Hは長孔として形成されているので、僅かな位置ずれが許容され、ピンは良好に差し込まれる。また、全ての孔部32H,52Hにピンを差し込んでもよいし、一部の孔部32H,52Hにピンを差し込んでもよい。
【0042】
ピンが差し込まれた状態で第1部材30及び第2部材50が近づくような加圧をやめると、加圧されていた緩衝部材5が復元しようとする反発力によって、第1部材30及び第2部材50が離れる方向に移動する。この際、ピンは長孔である第1孔部32Hの下端部に当接するとともに、円形の第2孔部52Hの上端部に当接する。このようにして第1部材30及び第2部材50はピンによって位置決めされる。
【0043】
なお、第1部材30及び第2部材50がピンによって位置決めされる際に、緩衝部材5が完全に復元することはなく、緩衝部材5による反発力の一部が残存する。このため、緩衝部材5と排気部材3との摩擦抵抗、及び緩衝部材5とカバー部材10Aとの摩擦抵抗が生じやすくすることができるので、緩衝部材5が排気部材3とカバー部材10Aとの間で移動しにくく構成できる。
【0044】
次に、このようにピンが差し込まれた状態で、
図4A~
図4Cに示すように、加締スリット部33に挿入された全ての延出部53を順次折り曲げる。まず、
図4Aに示すように、周回方向に延びる延出部53を厚さ方向の外側に約90°折り曲げ、続いて、
図4Bに示すように、延出部53を周回方向の反対側(すなわち延出部53が加締スリット部33に挿入される方向とは反対側)にさらに約90°折り曲げる。さらに、
図4Cに示すように、延出部53を厚さ方向の外側に折り曲げる。このようにして、延出部53が加締ベース部34に巻き付くように3段階に分けて折り曲げ加工することで、加締部71が形成される。なお、位置決めスリット部35に挿通された第2領域52については折り曲げられない。
【0045】
その後、孔部32H,52Hに差し込まれたピンを抜き去り、第1部材30及び第2部材50の連結が完了する。
【0046】
[1-3.効果]
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0047】
(1a)本開示の一態様のカバー部材10Aは、第1周端部31と、第2周端部51と、加締部71と、を備える。第1周端部31は、流れ方向に沿って延び、周回方向の端部を形成する。第2周端部51は、流れ方向に沿って延び、周回方向の端部を形成する。第2周端部51は、第1周端部31に突き合わせて配置される。加締部71は、当該カバー部材10Aの一部を加締めることで第1周端部31及び第2周端部51を結合させる。
【0048】
当該カバー部材10Aは、第1周端部31側の第1領域32、及び第2周端部51側の第2領域52が厚さ方向で重なるように配置される。第1領域32には第1孔部32Hが形成され、第2領域52には第2孔部52Hが形成され、第1孔部32H及び第2孔部52Hは、少なくとも一部が重なるように配置される。
【0049】
このような構成によれば、第1孔部32H及び第2孔部52Hを用いて第1周端部31及び第2周端部51を位置決めしつつ、加締部71にてカバー部材10Aを良好に固定することができる。この際、加締部71はボルトやナット等の締結部材を配置するためのスペースが不要であるため、カバー部材10Aを小型化することができる。また、第1周端部31及び第2周端部51の位置決めの際には、緩衝部材5が圧縮された際の復元しようとする力、すなわち反発力が適切になるように、孔の位置が設定される。この結果、上記の摩擦抵抗によって加締部71が形成された後での緩衝部材5の移動を抑制できる。また、締結部材を用いることなく加締部71を用いる構成では、構成部品の増加を抑制し、カバー部材10A全体の質量の増加を抑制できる。
【0050】
(1b)本開示の一態様は、第1部材30と、第2部材50と、をさらに備える。第1部材30は、周回方向において緩衝部材5の一部の部位を覆う第1部材30であって、第1領域32を備え、第1周端部31及び第1孔部32Hが形成される。第2部材50は、周回方向において緩衝部材5の残りの部位を覆い、少なくとも加締部71にて第1部材30と連結される。また、第2部材50は、第2領域52を備え、第2周端部51及び第2孔部52Hが形成される。第1部材30及び第2部材50は、流れ方向に直交する断面での形状が円弧状に形成される。
このような構成によれば、カバー部材10Aを第1部材30と第2部材50とを含む複数の部材に分割した構造とするので、排気部材3を周回するようにカバー部材10Aを配置しやすくすることができる。
【0051】
(1c)本開示の一態様では、第1孔部32H及び第2孔部52Hのうちの少なくとも一方は、第1方向に伸びる長孔として形成される。第1方向は、第1周端部31と第2周端部51とを突き合わせる際に第2周端部51を第1周端部31に対して移動させる方向と一致するように構成される。
【0052】
このような構成によれば、第1周端部31と第2周端部51とを突き合わせることで第1周端部31と第2周端部51とを位置決めすることができる。
【0053】
(1d)本開示の一態様は、延出部53と、加締スリット部33と、をさらに備える。延出部53は、第1周端部31及び第2周端部51のうちの一方から周回方向に沿って延出するように構成される。加締スリット部33は、当第1周端部31及び第2周端部51のうちの他方側に配置され、延出部53が挿通される。
このような構成によれば、延出部53を加締スリット部33に挿通することによって第1周端部31及び第2周端部51が隔離しにくいように位置決めすることができる。
【0054】
(1e)本開示の一態様では、加締部71は、加締スリット部33に挿入された延出部53を折り曲げることで形成される。
このような構成によれば、加締スリット部33を用いて第1周端部31及び第2周端部51を固定することができる。
【0055】
(1f)本開示の一態様では、第2領域52は、第2周端部51から周回方向に沿って延出するように構成される。当該カバー部材10Aの第1周端部31側には、第2領域52が挿通される位置決めスリット部35が備えられる。
このような構成によれば、位置決めスリット部35を用いて第1周端部31及び第2周端部51を位置決めすることができる。
接続部11Bに加締を行う構成とすることにより、カバー部材10Aが流れ方向にずれる力が生じても、接続部11Bが流れ方向に交差する方向に延びているため、カバー部材10Aの流れ方向へのずれを抑制できる。
【0056】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0057】
(2a)上記実施形態では、第1孔部32Hが長孔として構成されたが、これに限定されない。例えば、第2孔部52Hが長孔として構成され、第1孔部32Hは任意の形状でもよい。また、孔部32H,52Hの形状は、例えば、
図5Aの第1変形例に示すように、長方形の孔部32Jであってもよく、
図5Bの第2変形例に示すように、複数の曲線と複数の直線とを組み合わせた複合形の孔部32Kでもよい。特に、
図5Bに示す複合形の孔部32Kでは、排気部材3Cと第2部材50Bとの組付け方向が考慮される。例えば、
図6に示す第2変形例の排気ユニット1Bにおいて、排気部材3Cには、例えば、排水用のパイプ3P、図示しないセンサボス等の突起物が備えられている。このような場合、突起物は、第2部材50Bに設けられた貫通孔50Cに挿通された状態で、排気部材3Cと第2部材50とが組み付けられる。この際、第2部材50は、矢印にて示す組付け方向、すなわちパイプ3Pの突出方向に沿って移動され、その後、第1部材30に近づくように移動される。
【0058】
つまり、排気部材3Cと第2部材50とを組み付ける際の移動方向と、第1部材30及び第2部材50が近づく方向とが異なる。このような場合、
図5Bに示すように、これらの両方の軌跡を考慮して、これらの軌跡の両方に沿う方向が長くなるような孔部32Kが形成されていると好ましい。このような構成によれば、第2部材50Bが排気部材3C及び第1部材30に組み付けられる際の2つの方向を考慮して孔部32Kが形成されているので、カバー部材10Bを組み付ける際に、ピンを差し込みやすく構成できる。
【0059】
(2b)上記実施形態では、第1部材30に加締スリット部33を形成し、第2部材50に延出部53を備えたが、これらを逆にし、第2部材50に加締スリット部33を形成し、第1部材30に延出部53を備えてもよい。
【0060】
(2c)上記実施形態では、第1部材30に位置決めスリット部35を形成し、第2部材50に第2領域52を備えたが、これらを逆にし、第2部材50に位置決めスリット部35を形成し、第1部材30に第2領域52を備えてもよい。
【0061】
(2d)上記実施形態では、カバー部材10Aを第1部材30及び第2部材50の2部材で構成したが、3部材以上を組み合わせて構成してもよいし、1部材のみから構成してもよい。カバー部材10Aを1部材のみから構成する場合には、カバー部材10Aが可撓性を有するように構成し、第1周端部31及び第2周端部51を1つずつ備えるカバー部材10Aを準備する。そして、下記手順でカバー部材10Aと排気部材3とを組み付ける。例えば、第1周端部31及び第2周端部51が離れるように押し広げて、この隙間から排気部材3をカバー部材10Aの内周面側に挿入する。その後、上記と同様の手順で第1周端部31及び第2周端部51を連結する。
【0062】
(2e)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0063】
(2f)上述した排気ユニット1A,1Bの他、当該排気ユニット1A,1Bを構成要素とするシステム、カバー部材10Aなど、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【0064】
[本明細書が開示する技術思想]
[項目1]
排気が流れる筒状の排気部材を覆うカバー部材であって、
当該カバー部材は、前記排気部材の外周面を周回するように配置された緩衝部材のさらに外周側を周回するように配置され、
前記排気が流れる方向を流れ方向、前記排気部材の外周面を周回する方向を周回方向とし、前記流れ方向に直交し前記排気部材の中心軸を通過する任意の仮想線の方向を厚さ方向として、
当該カバー部材は、
前記流れ方向に沿って延び、前記周回方向の端部を形成する第1周端部と、
前記流れ方向に沿って延び、前記周回方向の端部を形成する第2周端部であって、前記第1周端部に突き合わせて配置される第2周端部と、
当該カバー部材の一部を加締めることで前記第1周端部及び前記第2周端部を結合させた加締部と、
を備え、
当該カバー部材は、前記第1周端部側の第1領域、及び前記第2周端部側の第2領域が前記厚さ方向で重なるように配置され、
前記第1領域には第1孔部が形成され、前記第2領域には第2孔部が形成され、前記第1孔部及び前記第2孔部は、少なくとも一部が重なるように配置される
カバー部材。
[項目2]
項目1に記載のカバー部材であって、
前記周回方向において前記緩衝部材の一部の部位を覆う第1部材であって、前記第1領域を備え、前記第1周端部及び前記第1孔部が形成される第1部材と、
前記周回方向において前記緩衝部材の残りの部位を覆い、少なくとも前記加締部にて前記第1部材と連結される第2部材であって、前記第2領域を備え、前記第2周端部及び前記第2孔部が形成される第2部材と、
をさらに備え、
前記第1部材及び前記第2部材は、前記流れ方向に直交する断面での形状が円弧状に形成されるカバー部材。
[項目3]
項目1又は項目2に記載のカバー部材であって、
前記第1孔部及び前記第2孔部のうちの少なくとも一方は、前記第1周端部と前記第2周端部とを突き合わせる際に前記第2周端部を前記第1周端部に対して移動させる方向に伸びる長孔として形成される
ように構成されたカバー部材。
[項目4]
項目1から項目3までのいずれか1項に記載のカバー部材であって、
前記第1周端部及び前記第2周端部のうちの一方から前記周回方向に沿って延出するように構成された延出部と、
当前記第1周端部及び前記第2周端部のうちの他方側に配置され、前記延出部が挿通される加締スリット部と、
をさらに備えるカバー部材。
[項目5]
項目4に記載のカバー部材であって、
前記加締部は、前記加締スリット部に挿入された延出部を折り曲げることで形成される
カバー部材。
[項目6]
項目1から項目5までのいずれか1項に記載のカバー部材であって、
前記第2領域は、前記第2周端部から前記周回方向に沿って延出するように構成され、
当該カバー部材の前記第1周端部側には、前記第2領域が挿通される加締スリット部が備えられる
カバー部材。
【符号の説明】
【0065】
1A,1B…排気ユニット、3,3C…排気部材、5…緩衝部材、7…触媒、10A,10B…カバー部材、30…第1部材、31…第1周端部、32…第1領域、32H…第1孔部、33…加締スリット部、34…加締ベース部、35…位置決めスリット部、36…位置決めベース部、50,50B…第2部材、51…第2周端部、52…第2領域、52H…第2孔部、53…延出部、71…加締部。