(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178757
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】ワーク回転台
(51)【国際特許分類】
G01B 5/00 20060101AFI20241218BHJP
【FI】
G01B5/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097142
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000242792
【氏名又は名称】牧野フライス精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100227835
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 剛孝
(72)【発明者】
【氏名】樋渡 鯨
【テーマコード(参考)】
2F062
【Fターム(参考)】
2F062AA01
2F062BB03
2F062CC22
2F062FF07
2F062MM01
(57)【要約】
【課題】ワークの寸法に応じて簡便に係止軸を位置合わせすることができるワーク回転台を提供する。
【解決手段】円柱状の外周形状を有するワークWを長手方向軸線回りに回転可能に載置するためのワーク回転台10であって、基部12と、基部12上に長手方向に沿って形成されたV字溝を有し、V字溝にワークWを載置する載置部14と、V字溝に着脱可能に配置されるベース18と、ベース18内にスライド可能に貫通して配置され、長手方向が前記ワークWの長手方向軸線に対して傾斜し、先端部がワークWの端部を係止する係止軸20と、係止軸20をベース18に対して固定するためのストッパ固定ノブ22とを有するストッパ16と、を備え、係止軸20の先端部がワークWの軸中心部分を係止するように、係止軸20のワークWの長手方向軸線に対して傾斜する角度は、V字溝の溝角度θに対応して設定されていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状の外周形状を有するワークを長手方向軸線回りに回転可能に載置するためのワーク回転台であって、
基部と、
前記基部上に長手方向に沿って形成されたV字溝を有し、前記V字溝に前記ワークを載置する載置部と、
前記V字溝に着脱可能に配置されるベースと、前記ベース内にスライド可能に貫通して配置され、長手方向が前記ワークの長手方向軸線に対して傾斜し、先端部が前記ワークの端部を係止する係止軸と、前記係止軸を前記ベースに対して固定するための固定機構とを有するストッパと、
を備え、
前記係止軸の前記先端部が前記ワークの軸中心部分を係止するように、前記係止軸の前記ワークの長手方向軸線に対して傾斜する角度は、前記V字溝の溝角度に対応して設定されていることを特徴とするワーク回転台。
【請求項2】
前記ベースは、一方の端部同士が接続された第1の部材及び第2の部材を備え、
前記第1の部材の他方の端部には、前記V字溝に配置可能な第1の載置部が形成され、
前記係止軸が貫通して配置される前記第2の部材の他方の端部には、前記V字溝に配置可能な第2の載置部が形成され、
前記第1の載置部を前記V字溝に配置したときに前記先端部が前記ワークの外周部に当接するように前記係止軸を固定し、前記係止軸を固定した状態で前記第2の載置部を前記V字溝に配置することによって、前記先端部が前記ワークの前記軸中心部分を係止する請求項1に記載のワーク回転台。
【請求項3】
前記V字溝には、前記ワークに当接する当接部材を配置可能な複数の当接部材配置部が前記V字溝の長手方向に沿って形成されている、請求項2に記載のワーク回転台。
【請求項4】
前記ワークを前記V字溝に保持するための保持機構と、
前記V字溝に載置した前記ワークを回転させるための回転機構と、をさらに備える請求項3に記載のワーク回転台。
【請求項5】
前記ワークの長手方向軸線に対して前記係止軸の傾斜する角度α、前記V字溝の溝角度θ、及び、前記ベースの前記第1の部材と前記第2の部材とがなす角度α+βは、以下の関係式
α=arcsin[sinβ/{1+sin(θ/2)}]
で表される、請求項2から請求項4の何れか1項に記載のワーク回転台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク回転台に関する。
【背景技術】
【0002】
軸状の部材や工具の振れを検査するための検査装置が知られており、このような検査装置では、振れを精密に検査するために、支持部に載置した軸状の部材や工具の軸心回りの回転を許容したうえで、軸心に沿った方向や径方向に並進移動をさせないことが求められる。そこで、例えば、特許文献1には、検査時における軸心に沿った方向の並進移動を抑制するために、棒状部材の先端の半球端部を被検部品の軸心を含む点に接触させるように構成された位置決め装置が開示されている。
【0003】
この位置決め装置は、滑動するためのスリーブが形成された基部と、基部のスリーブにスライド可能に挿し込まれた棒状部材とを備え、棒状部材をスライドさせることで被検部品に接触する棒状部材の接触点の高さ位置を調整できるように構成されている。具体的には、被検部品を載置するためのV字型体の角度が90度であるとの前提において、高さ位置は被検部品の半径と2の平方根との積により求まるとして、被検部品の軸心との間にV字型体の角度の半分、すなわち、45度の角度を形成する方向に沿って棒状部材をスライドできるようにスリーブが構成されている。これによって、棒状部材の接触点を被検部品の軸心を含む点に接触させることができる。しかしながら、スライドさせることによって基部から露出する棒状部材の長さが変化するため、棒状部材の先端が当接する被検部材を軸心に沿った方向にスライドさせる必要が生じる。このため、高さ位置の調整作業が煩雑になる場合がある。
【0004】
さらに、特許文献1に記載の検査装置では、棒状部材の端部に連結された基板と基部の上面との間に被検部材を挟み込むことによって、棒状部材の高さ位置を位置決めするように構成されている。しかしながら、高さ位置の調整作業が煩雑になることに加えて、被検部材の直径が大きい場合や重量が重い場合には、挟み込むことが困難になる場合がある。さらに、基板と基部の上面との間に挟み込んだ被検部材を取り外すために棒状部材が多少スライドし得るため、位置決めした高さ位置にずれが生じる可能性がある。また、特許文献1に記載の検査装置では、側微ネジを用いて棒状部材を固定しているが、被検部品の径が大きくなるにつれて側微ネジを回す量が増えるため、作業工数が増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情を鑑み、ワークの寸法に応じて簡便に係止軸を位置合わせすることができるワーク回転台の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の態様によれば、円柱状の外周形状を有するワークを長手方向軸線回りに回転可能に載置するためのワーク回転台であって、基部と、基部上に長手方向に沿って形成されたV字溝を有し、V字溝にワークを載置する載置部と、V字溝に着脱可能に配置されるベースと、ベース内にスライド可能に貫通して配置され、長手方向がワークの長手方向軸線に対して傾斜し、先端部がワークの端部を係止する係止軸と、係止軸をベースに対して固定するための固定機構とを有するストッパと、を備え、係止軸の先端部がワークの軸中心部分を係止するように、係止軸のワークの長手方向軸線に対して傾斜する角度は、V字溝の溝角度に対応して設定されていることを特徴とする、ワーク回転台が提供される。
【0008】
また、本発明の一の態様によれば、ベースは、一方の端部同士が接続された第1の部材及び第2の部材を備えてもよく、第1の部材の他方の端部には、V字溝に配置可能な第1の載置部が形成され、係止軸が貫通して配置される第2の部材の他方の端部には、V字溝に配置可能な第2の載置部が形成され、第1の載置部をV字溝に配置したときに先端部がワークの外周部に当接するように係止軸を固定し、係止軸を固定した状態で第2の載置部をV字溝に配置することによって、先端部がワークの軸中心部分を係止してもよい。
【0009】
さらに、本発明の一の態様によれば、V字溝には、ワークに当接する当接部材を配置可能な複数の当接部材配置部がV字溝の長手方向に沿って形成されてもよい。
【0010】
また、本発明の一の態様によれば、ワークをV字溝に保持するための保持機構と、V字溝に載置したワークを回転させるための回転機構と、をさらに備えてもよい。
【0011】
さらに、本発明の一の態様によれば、ワークの長手方向軸線に対して係止軸の傾斜する角度α、V字溝の溝角度θ、及び、ベースの第1の部材と第2の部材とがなす角度α+βは、以下の関係式
α=arcsin[sinβ/{1+sin(θ/2)}]
で表されてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一の態様に係るワーク回転台によると、V字溝に着脱可能に配置されるベースと、ベース内にスライド可能に貫通して配置され、長手方向がワークの長手方向軸線に対して傾斜し、先端部がワークの端部を係止する係止軸と、係止軸をベースに対して固定するための固定機構とを有するストッパを備える。このため、ワークの長手方向軸線に対して傾斜した係止軸をベース内においてスライドさせることによって、係止軸の先端部の位置をV字溝に載置したワークの軸中心部分の位置に位置合わせすることができる。また、位置合わせした係止軸を固定機構によってベースに対して固定することができる。このため、位置合わせした係止軸がずれることを防止又は抑制することができる。さらに、係止軸を配置するためのベースは、V字溝に着脱可能に配置することができる。このため、係止軸を位置合わせするときには、ベースをV字溝に対して移動するだけでよく、ワークが長手方向、すなわち軸心方向に沿って並進移動することを防止又は抑制したうえで、係止軸をベースに対して位置合わせすることができる。また、係止軸の先端部がワークの軸中心部分を係止するように、係止軸のワークの長手方向軸線に対して傾斜する角度は、V字溝の溝角度に対応して設定されている。このため、係止軸をベース内においてスライドさせることによって、先端部の位置をワークの軸中心部分の位置に簡便に位置合わせすることができる。これらによって、ワークの寸法に応じた係止軸の位置合わせを簡便にすることができる。
【0013】
また、本発明の一の態様に係るワーク回転台によると、ベースは、一方の端部同士が接続された第1の部材及び第2の部材を備え、係止軸が第2の部材に貫通して配置されている。このため、第1の部材の第1の載置部をV字溝に配置した状態で係止軸の先端部をワークの円柱形状を有する外周部に当接させることができる。さらに、この状態で係止軸を固定機構によって固定し、第2の載置部をV字溝に配置することによって、先端部がワークの軸中心部分を係止させることができる。このため、係止軸をワークに対して位置合わせするときには、V字溝に配置するベースの位置を変更するだけでよく、ワークが軸心方向に沿って並進移動することを防止又は抑制したうえで、係止軸をベースに対して位置合わせすることができる。これによって、ワークの寸法に応じた係止軸の位置合わせを簡便にすることができる。
【0014】
さらに、本発明の一の態様に係るワーク回転台によると、V字溝の長手方向に沿って複数の当接部材配置部が形成されており、当接部材配置部にはワークに当接する当接部材を配置することができる。これによって、ワークをV字溝に安定して配置することができるため、ワークの寸法に応じた係止軸の位置合わせを簡便にすることができる。
【0015】
また、本発明の一の態様に係るワーク回転台によると、ワークをV字溝に保持するための保持機構と、V字溝に載置したワークを回転させるための回転機構と、をさらに備える。このため、ワークの軸心方向や径方向への並進移動を防止又は抑制した上で、V字溝に載置したワークを回転させることができる。
【0016】
さらに、本発明の一の態様に係るワーク回転台によると、ワークの長手方向軸線に対して係止軸の傾斜する角度α、V字溝の溝角度θ、及び、ベースの第1の部材と第2の部材とがなす角度α+βは幾何学的な関係を有する。このため、第1の載置部をV字溝に配置したときに先端部がワークの外周部に当接するように係止軸を固定し、係止軸を固定した状態で第2の載置部をV字溝に配置することによって、先端部によってワークの軸中心部分を係止することができる。これによって、ワークの寸法に応じた係止軸の位置合わせを簡便にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るワーク回転台の斜視図を示す。
【
図2】
図2は、ワークを載置していない状態のワーク回転台の斜視図を示す。
【
図5】
図5は、ワーク回転台を長手方向の端部側から見た正面図を示す。
【
図7A】
図7Aは、V字溝の中央においてワーク回転台を長手方向に沿って切断した断面図であって、第1の部材をV字溝に載置した状態を示す。
【
図7B】
図7Bは、V字溝の中央においてワーク回転台を長手方向に沿って切断した断面図であって、第2の部材をV字溝に載置した状態を示す。
【
図8】
図8は、V字溝とストッパの係止軸及びベースとの幾何学的関係の説明図を示す。
【
図9】
図9は、ワークの軸心方向の振れの発生メカニズムの説明図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、実施形態に係るワーク回転台を説明する。同様な又は対応する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。理解を容易にするために、図の縮尺を変更して説明する場合がある。
【0019】
図1及び
図2には、ワーク回転台10の斜視図を示す。ワーク回転台10は、円柱状の外周形状を有する部材(ワークW)や工具を検査するように構成されており、土台部分となる基部12と、基部12上に形成され、ワークWを載置するための載置部14とを備える。載置部14のワークWを載置する部分は、V字溝状に形成されており、ワークWは、外周部分がこのV字溝部分に当接するように載置される。ここでは、V字溝部分は、
図5に示すように、V字溝部分の溝角度θが90度(直角)となるように形成されている。なお、ここでは、V字溝部分の溝角度θが直角であるとして説明するが、これに限らず、V字溝部分の溝角度は、後述するように鋭角又は鈍角であってもよい。
【0020】
また、
図1に示すように、ワーク回転台10は、載置部14に載置したワークWの長手方向、すなわち、軸心方向に沿った並進移動を防止又は抑制するために、ストッパ16を備える。ストッパ16は、ワークWの一方の端部、すなわち、載置部14に載置されている側の端部を係止するように構成されている。ストッパ16は、V字溝部分に載置するためのベース18と、ベース18にスライド可能に貫通して配置された係止軸20とを備える。ベース18は、V字溝部分に載置された状態をワーク回転台10の側方から見た側面視で逆L字状に形成されている。具体的には、直方体状の第1の部材18aと第2の部材18bとを有し、これらが一方の端部側で一体に形成され、互いに直行するように延在することによって全体として逆L字状に形成されている。このため、第1の部材18aと第2の部材18bとがなす角度α+β(
図7A及び
図7B参照)は、90度(直角)となるように形成されている。なお、ここでは、ベース18の第1の部材18aと第2の部材18bとがなす角度α+βは直角であるとして説明するが、これに限らず、第1の部材と第2の部材とは、後述するように鋭角又は鈍角をなすように形成されてもよい。また、ここでは、第1の部材18aと第2の部材18bとは一体で形成されているとして説明するが、これに限らず、第1の部材及び第2の部材は別個の部品とされ、これらを組み立ててストッパが構成されてもよい。
【0021】
第1の部材18aの他方の端部側には、V字溝部分に載置するための第1の載置部19aが形成され、第2の部材18bの他方の端部側には、V字溝部分に載置するための第2の載置部19bが形成されている。ここでは、第1の載置部19a及び第2の載置部19bは、V字溝部分に載置したときの形状が、載置部14の長手方向端部側から見て台形状になるように形成されている。このため、第1の載置部19a及び第2の載置部19bをV字溝部分に当接することができ、ストッパ16を安定して載置することができる。なお、ここでは、第1の載置部19a及び第2の載置部19bは、台形状に形成されているとして説明するが、これに限らず、例えば、第1の載置部及び第2の載置部は、V字溝部分に密着できるようにV字状に形成されてもよく、あるいは、V字溝部分の外側に固定することができる脚部や取り付け部であってもよい。また、これに限らず、第1の載置部及び第2の載置部の表面に後述するラック溝部に勘合させるための突起を形成し、あるいは、第1の載置部及び第2の載置部並びにV字溝部分を磁性体で形成することによって、V字溝部分におけるストッパの保持力を向上させてもよい。
【0022】
ベース18の第2の部材18bには、これを斜めに貫通する方向に沿って貫通孔が形成され、その内部に棒形状の係止軸20がスライド可能に配置されている。このため、ストッパ16の第2の載置部19bをV字溝部分に載置したときに、係止軸20が、ワークWの長手方向の軸線、すなわち、軸心に対して所定の傾斜角αで傾斜するように構成されている(
図7B参照)。これによって、ストッパ16の第2の載置部19bをV字溝部分に載置したときに、係止軸20の半球形状の先端部20aをワーク回転台10の下方側かつワークWの端部側へ向けることができ、係止軸20をスライドさせることによって、先端部20aの高さ位置がワークWの軸心の高さ位置に合うように調整することができる。このように係止軸20の先端部20aをワークWの端面に当接させることによって、ワークWの軸心方向に沿った並進移動を防止又は抑制することができる。
【0023】
図3に示すように、係止軸20の先端部20aとは反対側の端部には、ユーザ(図示省略)が係止軸20のスライドを簡便に行うための係止軸ノブ20bが取り付けられている。このため、ユーザは、係止軸ノブ20bを把持することによって係止軸20のスライドを簡便に行うことができる。さらに、ストッパ16は、ワークWの軸心の高さ位置に合うように調整した係止軸20を固定するための固定機構としてのストッパ固定ノブ22及びストッパ押さえ部材24を備える。外周形状が円筒状に形成されたストッパ押さえ部材24は、係止軸20と接触する位置に配置されており、ストッパ固定ノブ22は、そのねじ部分の先端がストッパ押さえ部材24と接触するように配置されている。このため、ストッパ固定ノブ22を回転して、ストッパ押さえ部材24を下方側へ向けて押圧しながら押し下げることによって、ストッパ押さえ部材24を介して係止軸20を固定することができる。また、
図4に示すように、ストッパ押さえ部材24の係止軸20と接触する部分には、係止軸20の外周形状に沿って円弧状に形成された凹み部24aが形成されている。これによって、ストッパ固定ノブ22の回転によるねじり力をストッパ押さえ部材24を介して係止軸20に効率よく伝達することができるため、係止軸20を安定して固定し、かつ、固定時の微動も防止又は低減することができる。
【0024】
図2及び
図5に示すように、載置部14は、上方側に当接部材配置部としてのラック溝部28を有し、基部12の上方側において傾斜して配置された一対のラック状部材26を有する。載置部14のV字溝部分は、これらのラック状部材26によって形成されている。なお、以下の説明では、V字溝部分は、ラック状部材26によって形成されているとして説明するが、これに限らず、例えば、ラック部分を有しておらず表面が平面の部材によってV字溝部分が形成されてもよい。
【0025】
ラック溝部28は、ラック状部材26の上方側において長手方向に沿って連続的に形成されており、これらのラック溝部28には、円筒状に形成された当接部材としての円筒ピン30が脱着可能に配置されている。ここでは、V字溝部分の両側、かつ、載置部14に載置するワークWの長手方向に間隔を空けて4つの円筒ピン30がラック溝部28に配置されている。このため、ワークWを載置部14に載置したときに、ワークWが4つの円筒ピン30と当接する(
図1参照)。これによって、V字溝部分においてワークWを安定して保持することができると共に、V字溝部分においてワークWを安定して回転させることができる。さらに、円筒ピン30は脱着可能であるため、ワークWの長さに合わせて、4つの円筒ピン30でワークWを保持する長手方向のスパン、すなわち保持スパンを簡便に変更することができる。また、ラック状部材26や円筒ピン30は、いずれも広く普及している機械部品であるため、低コストで容易に調達することができると共に、円筒ピン30が消耗した場合には円筒ピン30だけを交換すればよいため、作業工数及びコストの増加を抑制することができる。
【0026】
図2に示すように、基部12の一方の側部には、その長手方向に沿ってガイド溝32が形成されており、ガイド溝32には、ドライバベース34がガイド溝32に沿ってスライド可能に配置されている。
図5に示すように、ドライバベース34は、ガイド溝32内に配置された円板状のガイドローラ34aと連結されており、ユーザがドライバベース34をスライドさせると、ガイドローラ34aがガイド溝32内で回転移動する。これによって、ドライバベース34を基部12の長手方向に沿ってスライドさせることができる。なお、ここでは、ガイド溝32及びドライバベース34は、ワークWを載置する側から基部12を見て左側に配置されているが、これに限らず、例えば、ユーザの利き手の違いや組み合わせる測定器を考慮して、ガイド溝32を基部の右側に形成し、ドライバベースを同一部品で左右勝手を変更して、右側に配置してもよい。
【0027】
また、
図5に示すように、ドライバベース34の上方側には板形状のアーム36が回動可能に取り付けられている。アーム36の上方側にはアームレバー36aが形成されており、ユーザは、アームレバー36aを下方側に押し下げることによって(
図5中の矢印)、アーム36の先端側、すなわち、載置部14側の端部を上方側へ向けて回動させることができる(
図2参照)。アーム36の載置部14側の端部には、円板状に形成された保持機構としてのドライブローラ38が回転可能に取り付けられている。このため、アーム36を載置部14側に下げている場合には、載置部14に載置されたワークWをドライブローラ38によって押さえつけることができ、ワークWを載置部14のV字溝部分に安定して保持することができる。
【0028】
図6に示すように、アーム36には、また、回転機構としてのベルト40及び一対のプーリ42が取り付けられている。一方のプーリ42はドライブローラ38と連結され、他方のプーリ42は、ユーザがこれを回転するために設けられたドライブノブ44と連結されている。このため、ユーザがドライブノブ44を回転させることによって他方のプーリ42が回転し、ベルト40を介して一方のプーリ42を回転させることによってドライブローラ38が回転する。これによって、ドライブローラ38が当接するワークWを回転させることができる。ここで、アーム36及びドライブローラ38は、載置部14の長手方向及びワークWの軸心方向に直交する方向(
図6中の一点鎖線)からずらして配置されている。このため、ドライブローラ38は、ワークWを押さえつけながら回転させることができる。
【0029】
図7A及び
図7Bには、ストッパ16の係止軸20の位置合わせの手順を示す。
図7Aに示すように、はじめに、ストッパ16の第1の載置部19aを載置部14のV字溝部分に載置し、係止軸20の先端部20aをワークWの外周面に当接させることによって、ベース18に対する係止軸20の位置合わせをすることができる。このとき、すなわち、第1の載置部19aを載置部14のV字溝部分に載置したとき、係止軸20は、ワークWの長手方向の軸線、すなわち、軸心に対して所定の傾斜角βで傾斜するように構成されている。位置合わせをした係止軸20は、ストッパ固定ノブ22によって固定される。
【0030】
つぎに、
図7Bに示すように、係止軸20を固定した状態で、ベース18を反転し、第2の載置部19bを載置部14のV字溝部分に載置する。これによって、係止軸20の先端部20aをワークWの軸中心部分、すなわち軸心部分に当接させて、ワークWを係止することができる。
【0031】
このように、係止軸20の先端部20aをワークWの外周面に当接させることによって、ベース18に対する係止軸20の位置合わせをすることができるのは、ワークWの軸心に対して係止軸20の傾斜する角度α、載置部14のV字溝部分の溝角度θ、及び、ベース18の第1の部材18aと第2の部材18bとがなす角度α+βが、以下の関係式
α=arcsin[sinβ/{1+sin(θ/2)}] (1)
を満たすことによる。
【0032】
この関係式(1)は、
図8に示す幾何学的関係に基づいて導かれる。
図8における左側の図は、載置部14のV字溝部分に載置されたワークWを模式的に示す。ここでは、ワークWの寸法(外径)が変化することによって生じる軸心の高さ位置の変化量X及びワークWの外周位置の変化量Yを説明するために、外径r、Rの異なる2つのワークWを示す。また、
図8における真ん中及び右側の図は、位置合わせをする際及びワークWを係止する際の係止軸20及び先端部20aを模式的に示す。
【0033】
軸心の高さ位置の変化量X及びワークWの外周位置の変化量Yは、次式で表される。
X=R/sin(θ/2)-r/sin(θ/2)
=(R-r)/sin(θ/2) (2)
Y=R+R/sin(θ/2)-{r+r/sin(θ/2)}
=(R-r)+(R-r)/sin(θ/2) (3)
また、
図8における真ん中及び右側の図から、係止軸20の傾斜する角度α及び第1の部材18aと第2の部材18bとがなす角度α+βと変化量X及び変化量Yとの関係は、次式で表される。
Y/sinβ=X/sinα (4)
幾何学的関係によって導かれた式(2)及び式(3)を式(4)に代入することによって、関係式(1)を導くことができる。
【0034】
このように、係止軸20の傾斜する角度α、載置部14のV字溝部分の溝角度θ、及び、ベース18の第1の部材18aと第2の部材18bとがなす角度α+βは、関係式(1)に基づく幾何学的関係を有するため、V字溝部分の溝角度θに合わせて、設定した係止軸20の角度α及び第1の部材18aと第2の部材18bとがなす角度α+βを有するストッパ16を構成することができる。
【0035】
続いて、本実施形態に係るワーク回転台10の作用効果を以下に説明する。
【0036】
図9に示すように、ワークWの端面は、一般的には、軸心に対して傾斜している、すなわち軸心に対して垂直ではないことが多い。このため、係止軸20の先端部20aがワークWを係止する位置が軸心に対して心ずれ量SAだけずれている場合には、ワークWを係止軸20の先端部20aに接触した状態で回転させると、ワークWはその軸心方向に沿って振れる、すなわち、ワークWの並進移動が発生する。例えば、
図9中の点線で示すようにワークWが180度回転した状態では、軸心方向に振れ量SLの振れが生じる。一方、本実施形態に係るワーク回転台10によれば、係止軸20の先端部20aは、ワークWの軸心を係止することができるため、ワークWの振れを防止又は抑制することができる。
【0037】
本実施形態に係るワーク回転台10によると、V字溝部分に着脱可能に配置されるベース18と、ベース18内にスライド可能に貫通して配置され、長手方向がワークWの長手方向軸線に対して傾斜し、先端部20aがワークWの端部を係止する係止軸20と、係止軸20をベース18に対して固定するためのストッパ固定ノブ22とを有するストッパ16を備える。このため、ワークWの長手方向軸線に対して傾斜した係止軸20をベース18内においてスライドさせることによって、係止軸20の先端部の位置をV字溝部分に載置したワークWの軸心の位置に位置合わせすることができる。また、位置合わせした係止軸20をストッパ固定ノブ22によってベース18に対して固定することができる。このため、位置合わせした係止軸20がずれることを防止又は抑制することができる。さらに、係止軸20を配置するためのベース18は、V字溝部分に着脱可能に配置することができる。このため、係止軸20を位置合わせするときには、ベース18をV字溝部分に対して移動するだけでよく、ワークWが長手方向、すなわち軸心方向に沿って並進移動することを防止又は抑制したうえで、係止軸20をベース18に対して位置合わせすることができる。また、係止軸20の先端部20aがワークWの軸心を係止するように、係止軸20のワークWの軸心に対して傾斜する角度αは、V字溝部分の溝角度θに対応して設定されている。このため、係止軸20をベース18内においてスライドさせることによって、先端部20aの位置をワークWの軸心位置に簡便に位置合わせすることができる。これらによって、ワークWの寸法に応じた係止軸20の位置合わせを簡便にすることができる。
【0038】
また、本実施形態に係るワーク回転台10によると、ベース18は、一方の端部同士が接続された第1の部材18a及び第2の部材18bを備え、係止軸20が第2の部材18bに貫通して配置されている。このため、第1の部材18aの第1の載置部19aをV字溝部分に載置した状態で係止軸20の先端部20aをワークWの円柱形状を有する外周部に当接させることができる。さらに、この状態で係止軸20をストッパ固定ノブ22によって固定し、第2の載置部19bをV字溝部分に載置することによって、先端部20aがワークWを軸心位置で係止することができる。このため、係止軸20をワークWに対して位置合わせするときには、V字溝部分に載置するベース18の位置を変更するだけでよく、ワークWが軸心方向に沿って並進移動することを防止又は抑制したうえで、係止軸20をベース18に対して位置合わせすることができる。これによって、ワークWの寸法に応じた係止軸20の位置合わせを簡便にすることができる。
【0039】
さらに、本実施形態に係るワーク回転台10によると、V字溝部分の長手方向に沿って複数のラック溝部28が形成されており、ラック溝部28にはワークWに当接する円筒ピン30を配置することができる。これによって、ワークWをV字溝部分に安定して配置することができるため、ワークWの寸法に応じた係止軸20の位置合わせを簡便にすることができる。
【0040】
また、本実施形態に係るワーク回転台10によると、ワークWをV字溝部分に保持するためのドライブローラ38と、V字溝部分に載置したワークWをドライブローラ38によって回転させるためのベルト40及びプーリ42をさらに備える。このため、ワークWの軸心方向や径方向への並進移動を防止又は抑制した上で、V字溝部分に載置したワークWを回転させることができる。
【0041】
さらに、本実施形態に係るワーク回転台10によると、ワークWの長手方向軸線に対して係止軸20の傾斜する角度α、V字溝の溝角度θ、及び、ベース18の第1の部材18aと第2の部材18bとがなす角度α+βは幾何学的な関係を有する。このため、第1の載置部19aをV字溝部分に載置したときに先端部20aがワークWの外周部に当接するように係止軸20を固定し、係止軸20を固定した状態で第2の載置部19bをV字溝部分に載置することによって、先端部20aによってワークWの軸心部分を係止することができる。これによって、ワークWの寸法に応じた係止軸20の位置合わせを簡便にすることができる。
【0042】
以上により、本実施形態に係るワーク回転台10は、ワークWの寸法に応じて簡便に係止軸20を位置合わせすることができる。
【0043】
以上、ワーク回転台10の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。当業者であれば、上記の実施形態の様々な変形が可能であることを理解できると考えられる。
【符号の説明】
【0044】
10 ワーク回転台
12 基部
14 載置部
16 ストッパ
18 ベース
18a 第1の部材
18b 第2の部材
19a 第1の載置部
19b 第2の載置部
20 係止軸
20a 先端部
22 ストッパ固定ノブ(固定機構)
24 ストッパ押さえ部材(固定機構)
28 ラック溝部(当接部材配置部)
30 円筒ピン(当接部材)
38 ドライブローラ(保持機構)
40 ベルト(回転機構)
42 プーリ(回転機構)
W ワーク
α 係止軸の傾斜する角度
α+β 第1の部材と第2の部材とがなす角度
θ V字溝の溝角度