(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178758
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】エレベータシステム
(51)【国際特許分類】
B66B 1/14 20060101AFI20241218BHJP
【FI】
B66B1/14 L
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097143
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西 美織
【テーマコード(参考)】
3F502
【Fターム(参考)】
3F502HB02
3F502KA02
3F502KA19
3F502MA17
(57)【要約】
【課題】利用者の両手が荷物等で塞がっている状態を正確に検出して、その利用者の行先階を登録することのできるエレベータシステムを提供する。
【解決手段】一実施形態に係るエレベータシステムは、カメラと、検知手段と、判定手段と、登録制御手段とを備える。前記カメラは、乗りかご内に設置される。前記検知手段は、前記カメラによって撮影された前記乗りかご内の画像に基づいて、前記乗りかご内に乗車した利用者を検知する。前記判定手段は、前記利用者の手の形状、及び前記利用者と物体との位置関係に基づいて、前記利用者の両手が塞がっているか否かを判定する。前記登録制御手段は、利用者の両手が塞がっている場合に、音声認識による行先階の登録を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかご内に設置されたカメラと、
前記カメラによって撮影された前記乗りかご内の画像に基づいて、前記乗りかご内に乗車した利用者を検知する検知手段と、
前記利用者の手の形状、及び前記利用者と物体との位置関係に基づいて、前記利用者の両手が塞がっているか否かを判定する判定手段と、
前記利用者の両手が塞がっている場合に、音声認識による行先階の登録を行う登録制御手段と
を具備するエレベータシステム。
【請求項2】
前記判定手段は、
前記利用者の手が前記物体の一部を掴み持つ形状にあり、かつ、前記利用者の手の先に前記物体が存在する場合に、前記利用者の両手が塞がっていると判定する
請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項3】
前記物体の一部を掴み持つ形状は、前記利用者の手が前記物体の一部を上端部方向から掴む形状を含む
請求項2に記載のエレベータシステム。
【請求項4】
前記判定手段は、
前記利用者の手が前記物体の一部を支え持つ形状にあり、かつ、前記利用者の両手の間に前記物体が存在する場合に、前記利用者の両手が塞がっていると判定する
請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項5】
前記物体の一部を支え持つ形状は、前記利用者の手が前記物体を側面方向から支える形状を含む
請求項4に記載のエレベータシステム。
【請求項6】
前記物体の一部を支え持つ形状は、前記利用者の手が前記物体を下端部方向から支える形状を含む
請求項4に記載のエレベータシステム。
【請求項7】
前記判定手段は、
前記画像上で前記利用者の一部が一定値以上の直線で途切れている場合に、前記利用者の両手が塞がっていると判定する
請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項8】
前記判定手段により前記利用者の両手が塞がっていると判定された場合、音声認識による行先階の登録が行える旨を前記利用者に通知する通知手段をさらに具備する
請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項9】
前記判定手段により前記利用者の両手が塞がっていると判定された場合、前記乗りかごの戸開時間を延長する戸開時間制御手段をさらに具備する
請求項1に記載のエレベータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、乗りかごに乗車した利用者は、乗りかご内に設置された行先階ボタンを押下して行先階を登録する。しかし、例えば、両手に荷物を抱え持っている利用者が乗車した場合、当該利用者が行先階ボタンを押下するためには、荷物を床に置く必要があり、スムーズに行先階を登録することができない。
【0003】
近年では、音声認識により行先階の登録を行うことができるシステムが知られている。このシステムを利用すれば、利用者の両手が荷物で塞がっている場合であっても、荷物を置くことなく行先階を登録できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したシステムにおいて、音声認識による行先階の登録を常に有効としておくと、乗りかご内の利用者の会話や雑音等により、行先階が誤登録されることがある。そのため、通常は音声認識による行先階の登録を無効(OFF)にしておき、荷物等で両手が塞がっている利用者が乗車したときだけ、音声認識による行先階の登録を有効(ON)とすることが望ましい。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、利用者の両手が荷物等で塞がっている状態を正確に検出して、その利用者の行先階を登録することのできるエレベータシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係るエレベータシステムは、カメラと、検知手段と、判定手段と、登録制御手段とを備える。前記カメラは、乗りかご内に設置される。前記検知手段は、前記カメラによって撮影された前記乗りかご内の画像に基づいて、前記乗りかご内に乗車した利用者を検知する。前記判定手段は、前記利用者の手の形状、及び前記利用者と物体との位置関係に基づいて、前記利用者の両手が塞がっているか否かを判定する。前記登録制御手段は、利用者の両手が塞がっている場合に、音声認識による行先階の登録を行う。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るエレベータシステムの概略構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、同実施形態に係る乗りかご内の出入口周辺部分の構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、同実施形態に係るエレベータシステムの動作の概要を説明するための図である。
【
図4】
図4は、同実施形態に係るエレベータシステムの処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、同実施形態における「物体の一部を掴み持つ形状」を説明するための図である。
【
図6】
図6は、同実施形態における「物体を支え持つ形状」を説明するための図である。
【
図7】
図7は、利用者が両手で荷物の持ち手部分を掴んでいる状態を示す図である。
【
図8】
図8は、利用者が両手で台車のハンドル部分を上端部方向から掴んでいる状態を示す図である。
【
図9】
図9は、利用者が両手で側面方向から荷物を支え持つ状態を示す図である。
【
図10】
図10は、利用者が両手で下端部方向から荷物を支え持つ状態を示す図である。
【
図11】
図11は、利用者の両手が空いている状態を示す図である。
【
図12】
図12は、利用者の片手が空いている状態を示す図である。
【
図13】
図13は、画像上で検出された利用者が両手で横から荷物を抱えている状態を示す図である。
【
図14】
図14は、画像上で検出された利用者と他の利用者が重なっている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に相当し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施形態に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0010】
図1は、一実施形態に係るエレベータシステムの概略構成例を示す図である。なお、ここでは、一台の乗りかごを例にして説明するが、複数台の乗りかごでも同様の構成である。
【0011】
乗りかご11の出入口上部にカメラ12が設置されている。具体的には、カメラ12は、乗りかご11の出入口上部を覆う幕板11aの中に、レンズ部分を直下方向、もしくは、乗場15側あるいは乗りかご11内部側に所定の角度だけ傾けて設置される。
【0012】
カメラ12は、例えば車載カメラ等の小型の監視カメラであり、広角レンズ又は魚眼レンズを有し、乗りかご11内の所定の範囲を撮影する。カメラ12は、1秒間に数コマ(例えば30コマ/秒)の画像を連続的に撮影可能である。カメラ12は、乗りかご11が各階の乗場15に到着したときに起動され、所定の範囲L1を撮影する。
【0013】
各階の乗場15において、乗りかご11の到着口には乗場ドア14が開閉自在に設置されている。乗場ドア14は、乗りかご11の到着時にかごドア13に係合して開閉動作する。なお、動力源(ドアモータ)は乗りかご11側にあり、乗場ドア14はかごドア13に追従して開閉するだけである。以下の説明においては、かごドア13を戸開している時には乗場ドア14も戸開しており、かごドア13が戸閉しているときには乗場ドア14も戸閉しているものとする。
【0014】
カメラ12によって取得された各画像は、画像処理装置20によってリアルタイムに解析処理される。なお、
図1では、便宜的に画像処理装置20を乗りかご11から取り出して示しているが、実際には、画像処理装置20はカメラ12と共に幕板11aの中に収納されている。
【0015】
画像処理装置20には、記憶部21と制御部22とが備えられている。記憶部21は、撮影画像を逐次保存するとともに、制御部22の処理に必要なデータを一時的に保存しておくためのバッファエリアを有する。なお、記憶部21には、撮影画像に対する前処理として、歪み補正や拡大縮小、一部切り取り等の処理が施された画像が保存されるとしても良い。
【0016】
制御部22は、記憶部21に記憶された画像に基づいて、利用者の両手が塞がっているか否かの判定を行うための処理を行う。制御部22は、検知部23、物体検出部24、手形状検出部25、位置関係検出部26、及び判定部27で構成される。なお、制御部22の処理方法の詳細については、
図4のフローチャートを用いて後述するため、ここでは簡単に説明する。
【0017】
検知部23は、カメラ12によって撮影された乗りかご11内の画像に基づいて、乗りかご11内に乗車した利用者を検知する。物体検出部24は、検知部23によって検知された利用者の付近にある物体を検出する。なお、「物体」とは、例えば荷物や鞄、台車等を含み、利用者が手で運ぶことができるものをいう。手形状検出部25は、検知部23によって検知された利用者の手の形状を検出する。「手の形状」とは、利用者が物体の一部を掴み持つときの指の形状、物体を支え持つときの指の形状等を含む(
図5,
図6参照)。位置関係検出部26は、検知部23によって検知された利用者と、物体検出部24によって検出された物体との位置関係を検出する。
【0018】
判定部27は、手形状検出部25によって検出された利用者の手の形状、及び位置関係検出部26によって検出された利用者と物体との位置関係に基づいて、利用者の両手が塞がっているか否かを判定する。詳しくは、判定部27は、下記(1)及び(2)の何れかの条件に該当する場合に、画像上で利用者の両手が塞がっていると判定する。
【0019】
(1)利用者の手が物体の一部を掴み持つ形状にあり、かつ、その利用者の手の先に物体が存在する。
(2)利用者の手が物体を支え持つ形状にあり、かつ、その利用者の両手の間に物体が存在する。
【0020】
エレベータ制御装置30は、乗りかご11の昇降動作や乗りかご11に設置される各種機器類(行先階ボタンや照明等)の動作を制御する。また、エレベータ制御装置30は、登録制御部31、通知部32、戸開閉制御部33を備える。
【0021】
登録制御部31は、利用者の行先階の登録を行う。具体的には、登録制御部31は、操作盤45上の行先階ボタン44により、利用者の行先階を登録する。また、登録制御部31は、乗りかご11内に設置された音声入力装置16から利用者の音声信号を入力し、当該音声信号を解析処理して、利用者の行先階を登録する。
【0022】
以下では、このような音声信号により行先階を登録することを、「音声認識による行先階の登録」と表記する。音声認識による行先階の登録は、既知の音声認識技術を用いて実現される。例えば、登録制御部31は、音声入力装置16に入力された音声信号と、予め記憶された階床を示す音声信号とを比較し、両者が所定の条件で一致した場合に、当該音声信号に対応する階床を、利用者の行先階として登録する。
【0023】
ここで、音声認識による行先階の登録を常に有効としておくと、乗りかご11内の利用者の会話や雑音等によって、行先階の誤登録がされる可能性がある。そのため、登録制御部31は、通常時は音声認識を無効にしておき、判定部27によって利用者の両手が塞がっていると判定された場合に、音声認識による行先階の登録を有効とする。
【0024】
通知部32は、利用者の両手が塞がっている場合、乗りかご11内に設置されたスピーカ46を介して、音声認識による行先階の登録が行える旨を利用者に通知する。
【0025】
戸開閉制御部33は、乗りかご11が乗場15に到着したときのかごドア13の戸開閉を制御する。詳しくは、戸開閉制御部33は、乗りかご11が乗場15に到着したときにかごドア13を戸開し、所定時間経過後に戸閉する。
【0026】
図2は、乗りかご11内の出入口周辺部分の構成例を示す図である。
乗りかご11の出入口にかごドア13が開閉自在に設けられている。
図2の例では2枚戸両開きタイプのかごドア13が示されており、かごドア13を構成する2枚のドアパネル13a,13bが間口方向(水平方向)に沿って互いに逆方向に開閉動作する。なお、「間口」とは、乗りかご11の出入口と同じである。
【0027】
正面柱41a,41bの一方あるいは両方に表示器43や、行先階ボタン44等が配設された操作盤45、スピーカ46が設置されている。
図2の例では、正面柱41aにスピーカ46、正面柱41bに表示器43、操作盤45が設置されている。
【0028】
ここで、乗りかご11の出入口上部の幕板11aの中央部に、魚眼レンズ等の超広角レンズを有するカメラ12が設置されている。カメラ12は、幕板11aの下部から下方向に向けて設置される。
【0029】
また、操作盤45には、音声入力装置16が設置される。音声入力装置16は、利用者が音声を入力できるように、入力部分を乗りかご11内に向けて設置される。なお、音声入力装置16は、乗りかご11内の利用者の音声を入力しやすい位置であれば、操作盤45以外の場所に設置されていてもよい。
【0030】
図3は、本実施形態に係るエレベータシステムの動作の概要を説明するための図である。本実施形態に係るエレベータシステムは、乗りかご11の出入口上部に設置されたカメラ12の撮影画像に基づいて、乗りかご11に乗車した利用者Uを検知する。そして、その利用者Uの両手が塞がっているか否かを判定する。利用者Uの両手が塞がっている場合、音声認識による行先階の登録を有効とする。
【0031】
次に、
図4のフローチャートを参照して、本実施形態に係るエレベータシステムの処理手順の一例について説明する。
乗りかご11が任意の階に到着すると(ステップS11のYES)、戸開閉制御部33は、かごドア13を戸開する(ステップS12)。かごドア13が戸開すると、検知部23は、カメラ12によって撮影された画像に基づいて、乗りかご11に乗車した利用者を検知する(ステップS13)。
【0032】
利用者の検知方法として、例えば、カメラ12によって撮影された画像を、予め所定のブロック単位でマトリックス状に分割し、これらのブロックの中で動きのあるブロックを輝度変化に基づいて検出する動き検知処理が挙げられる。動き検知処理によれば、画像上に映った利用者が動きブロックの集合体として検知される。検知部23は、動きブロックの集合体が、乗りかご11内に移動したことにより、乗りかご11内に乗車した利用者を検知する。
【0033】
なお、利用者の検知方法は上記動き検知処理に限られず、他の画像認識手法が用いられてもよい。例えば、教師あり学習を用いる画像認識手法の一つであるSSD(Single Shot Multibox Detector)を用いてもよい。この場合には、乗りかご11内に乗車した利用者の画像を学習しておくことで、新たに取得された画像の中から、乗りかご11内に乗車した利用者をその乗車位置を含めて効率よく検出することができる。
【0034】
検知部23によって乗りかご11内に乗車した利用者が検知された場合(ステップS13のYES)、物体検出部24は、検知部23によって検知された利用者の近くに存在する物体の有無を検出する(ステップS14)。
【0035】
具体的には、予め荷物等の画像パターンを記憶しておき、利用者の付近において上記画像パターンと一致するものを物体として検出する。なお、ステップS13によって上述したSSD等の画像認識処理によって、利用者の近くに存在する物体を検出してもよい。
【0036】
利用者の付近に物体がない場合(ステップS14のNO)、利用者の両手が塞がっている可能性は低い。このため、登録制御部31は、音声認識による行先階の登録を有効にせず、利用者のボタン操作による行先階登録のみを行う(ステップS15)。
【0037】
利用者の付近に物体がある場合(ステップS14のYES)、判定部27は、利用者の両手が物体(荷物等)によって塞がっている状態を以下のような手順で判定する。まず、判定部27は、手形状検出部25によって利用者の手の形状を検出する(ステップS16)。詳しくは、手形状検出部25は、利用者の手の指が「物体の一部を掴み持つ形状」あるいは「物体を支え持つ形状」であることを検出する。
【0038】
図5は「物体の一部を掴み持つ形状」を説明するための図である。
図5(a)は、利用者の手50a、50bが鞄の持ち手部分(物体の一部)を掴むときの形状を示している。
図5(b)は、利用者の手51a、51bが台車のハンドル部分(物体の一部)を上端部方向から掴むときの手の形状を示している。
図5(b)の例では、手51a、51bの甲を上にしてハンドル部分を上から握っている形(順手の形を示しているが、手51a、51bが逆手の形、あるいは一方が順手、他方が逆手の形であってもよい。これらの形状は、「物体の一部を掴み持つ形状」として検出される。
【0039】
図6は「物体を支え持つ形状」を説明するための図である。
図6(a)は、利用者の手52a、52bが荷物を側面方向から支えるときの形状を示している。
図6(b)は、利用者の手53a、53bが荷物を下端部方向から支えるときの手の形状を示している。これらの形状は、「物体を支え持つ形状」として検出される。
なお、物体の一部を掴み持つ形状、物体を支え持つ形状は、
図5と
図6の例に限られず、物体の一部を掴み持つとき、物体を支え持つときにおける様々な手の形を含む。
【0040】
記憶部21には、利用者が荷物等の物体の一部を掴み持つときの手の形状、及び物体を支え持つときの手の形状を様々な角度から見た画像(以下、画像パターンと表記)が予め記憶されている。手形状検出部25は、記憶部21に記憶された画像パターンと、利用者の両手付近の画像とを比較することによって、物体に接している利用者の左右の手の形状をそれぞれ検出する。
【0041】
また、判定部27は、位置関係検出部26によって、利用者と物体との位置関係を検出する(ステップS17)。「利用者と物体との位置関係を検出する」とは、例えば、利用者の手の指先に物体が存在することを検出すること、利用者の両手の間に物体が存在することを検出すること等を含む。
【0042】
判定部27は、手形状検出部25によって検出された利用者の手の形状、及び位置関係検出部26によって検出された利用者と物体との位置関係に基づいて、利用者の両手が塞がっているか否かを判定する(ステップS18)。具体的には、(1)利用者の手が物体の一部を掴み持つ形状にあり、かつ、その利用者の手の先に物体が存在する場合、又は(2)利用者の手が物体を支え持つ形状にあり、かつ、その利用者の両手の間に物体が存在する場合に、利用者の両手が塞がっていると判定する。
【0043】
利用者の両手が塞がっていると判定された場合(ステップS18のYES)、通知部32によって、音声認識による行先階の登録が可能である旨が通知される(ステップS19)。登録制御部31は、音声認識による行先階の登録機能を有効(ON)にし、音声認識による行先階の登録と行先階ボタン44による行先階の登録のどちらも利用できる状態にする(ステップS20)。
【0044】
一方、利用者の両手が塞がっていないと判定された場合(ステップS18のNO)、登録制御部31は、音声認識による行先階の登録機能を無効(OFF)にし、利用者のボタン操作による行先階登録のみを利用できる状態にする(ステップS15)。
【0045】
その後、乗りかご11が戸閉して目的階に向けて出発すると(ステップS21)、ここでの処理を終了する。なお、音声認識による行先階の登録が有効にされている場合は、乗りかご11内の利用者の会話による誤登録を防ぐため、乗りかご11が全戸閉された時に行先階の登録を無効(OFF)にする。
【0046】
ここで、
図7~
図12を用いて、利用者の両手が塞がっている状態を判定する場合の具体例について説明する。
【0047】
図7は、利用者U1が両手で荷物b1の持ち手部分を掴んでいる状態を示す図である。この場合、利用者U1の手h1-1の形状は、荷物b1-1の持ち手部分を掴み持つ形状(
図5(a)参照)にある。また、利用者U1の手h1-1の先に、荷物b1-1が存在する。さらに、利用者U1の他方の手h1-2の形状は、荷物b1-2の持ち手部分を掴み持つ形状(
図5(a)参照)にあり、利用者U1の手h1-2の先に、荷物b1-2が存在する。したがって、利用者の手の形状、及び利用者と物体との位置関係が、上記(1)の条件に該当するため、利用者U1は、両手が塞がっていると判定される。
【0048】
図8は、利用者U2が両手で台車c2のハンドル部分を上端部方向から掴んでいる状態を示す図である。この場合、利用者U2の手h2-1及び手h2-2の形状は、台車c2のハンドル部分を掴み持つ形状(
図5(b)参照)にある。また、利用者U2の手h2-1及び手h2-2の先に、物体(台車c2のハンドル及び荷物b2)が存在する。したがって、利用者の手の形状、及び利用者と物体との位置関係が、上記(1)の条件に該当するため、利用者U2は、両手が塞がっていると判定される。
【0049】
図9は、利用者U3が両手で側面方向から荷物b3を支え持つ状態を示す図である。この場合、利用者U3の手h3-1及び手h3-2の形状は、荷物b3を支え持つ形状(
図6(a)参照)にある。また、利用者U3の手h3-1と手h3-2の間に、荷物b3が存在する。したがって、利用者の手の形状、及び利用者と物体との位置関係が、上記(2)の条件に該当するため、利用者U3は、両手が塞がっていると判定される。
【0050】
図10は、利用者U4が両手で下端部方向から荷物b4を支え持つ状態を示す図である。この場合、利用者U4の手h4-1及び手h4-2の形状は、荷物b4を支え持つ形状(
図6(b)参照)にある。また、利用者U4の手h4-1と手h4-2の間に、荷物b4が存在する。したがって、利用者の手の形状、及び利用者と物体との位置関係が、上記(2)の条件に該当するため、利用者U4は、両手が塞がっていると判定される。
【0051】
図11は、利用者U5の両手が空いている状態を示す図である。この場合、利用者U5の服の図柄pが誤って物体として検出され、手h5-1及び手h5-2の間に物体があると判定される可能性がある。しかし、手h5-1及び手h5-2の形状は、物体の一部を掴み持つ形状、物体を支え持つ形状の何れにも該当しない。したがって、利用者の手の形状、及び利用者と物体との位置関係が、(1)及び(2)の条件の何れにも該当しないため、利用者U5は両手が塞がっていないと判定される。
【0052】
図12は、片方の荷物b6-2を肘にかけているため、利用者U6の片手h6-2が空いている一例を示す図である。利用者U6の手h6-1の形状は、荷物b6-1の持ち手部分を掴み持つ形状(
図5(a)参照)にある。また、手h6-2の形状においても、
図12に示すように、物体を掴み持つ形状に類似する形状となる可能性がある。しかし、荷物b6-1及び荷物b6-2は、いずれも手h6-2の先に存在せず、手h6-1及び手h6-2の間にも存在しない。したがって、利用者の手の形状、及び利用者と物体との位置関係が、(1)及び(2)の条件の何れにも該当しないため、利用者U6は、両手が塞がっていないと判定される。
【0053】
このように本実施形態によれば、「利用者の手の形状」と「利用者と物体との位置関係」とに基づいて、利用者の両手が塞がっているか否かが判定される。この場合、一般的に知られている方法では、「利用者と物体との位置関係」だけで判定しているため、例えば乗りかご11内で他の利用者が持つ荷物等が検知対象とする利用者の両手近くに存在すると、当該利用者の両手が塞がっていると誤判定してしまう可能性がある。これに対し、本実施形態のように、「利用者と物体との位置関係」だけでなく、「利用者の手の形状」にも着目することで、利用者の物体に対する持ち方を含めた判定を行うことができるので、乗りかご11内で他の利用者に影響されずに、当該利用者の両手が塞がっている状態を正確に検出することができる。これにより、両手が塞がっている利用者が乗りかご11に乗車したときのみ、音声認識による行先階の登録を有効(ON)にして、当該利用者がハンズフリーで行先階を登録できる環境を提供できる。
【0054】
なお、音声認識による行先階の登録では、周囲の雑音等で、利用者の発声した行先階が音声認識されなかった場合に、再度、行先階を発声する必要があるため、行先階の登録完了まで時間がかかる。そこで、利用者の両手が塞がっていると判定した場合に、戸開閉制御部33によって戸開時間を通常よりも延長することが好ましい。これにより、利用者が音声で行先階の登録を繰り返している間に戸閉してしまうことを防ぐことができる。
【0055】
また、本実施形態では、乗りかご11に乗車した利用者の両手が塞がっているか否かを判定したが、乗りかご11に乗車する前の利用者(すなわち、乗場15にいる利用者)の両手が塞がっているか否かを判定してもよい。
【0056】
(変形例)
エレベータの乗りかご内は狭いため、利用者と他の利用者とが重なってカメラ12に映ることもある。この場合、利用者の前に他の利用者がいると、その他の利用者を物体として誤検出する可能性がある。
【0057】
そこで、本実施形態の変形例では、検知対象とする利用者の画像の途切れに着目して、物体が当該利用者に重なった他の利用者であるか否かの判定を行う。
【0058】
図13は、画像上で検出された利用者U7が両手で横から荷物を抱えている状態を示す図である。b7は、物体検出部24により物体として検出された荷物部分を示す。
図13に示すように、利用者U7の身体の中央部分の画像が荷物部分b7によって途切れている場合には、その途切れの部分は、所定の長さL2(例えば、3cm)以上の直線となる。
【0059】
図14は、画像上で検出された利用者U8と他の利用者が重なっている状態を示す図である。b8は、物体検出部24により物体として誤検出された、他の利用者の一部である。
図14に示すように、利用者U8の身体の一部の画像が他の利用者の部分b8によって途切れている場合には、その途切れの部分は、直線にはならない。
【0060】
本実施形態の変形例では、このような利用者の画像の途切れの状態に基づいて、画像上で検出された物体が当該利用者に重なった他の利用者であるか否かを判定する。具体的には、利用者の付近の物体が検出されたときに、その物体による利用者の画像の途切れの状態を検出する。「途切れの状態」とは、利用者の身体の一部が物体との重なりで途切れている状態のことであり、服の模様の途切れている状態も含む。
【0061】
判定部27は、利用者の身体の一部に一定の長さL2以上の直線で途切れている箇所があるか否かを判定する。長さL2以上の直線で途切れている箇所がある場合、判定部27は、その途切れの箇所を当該利用者が持つ物体であると判断し、利用者の手の形状、及び利用者と物体との位置関係によって、利用者の両手が塞がっているか否かを判定する。
【0062】
一方、利用者の身体の一部に一定の長さL2以上の直線で途切れている箇所がない場合、判定部27は、当該利用者の前にいる他の利用者の一部が重なったことによると途切れと判断する。この場合、判定部27は、利用者の手の形状、及び利用者と物体との位置関係が上記(1),(2)の条件に該当していても、利用者の両手が塞がっていないと判定する。
【0063】
その他の構成及び処理の流れについては、検出された物体が利用者か否かを判定する処理を追加すること以外は、上述した実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0064】
このように、画像上における利用者の途切れを見ることで、利用者と他の利用者が重なって映っている場合に、他の利用者を荷物等の物体として誤検出することを防いで、利用者の両手が塞がっているか否かを正しく判定することができる。
【0065】
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、利用者の両手が荷物等で塞がっている状態を正確に検出して、その利用者の行先階を登録することのできるエレベータシステムを提供することができる。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0067】
11…乗りかご、12…カメラ、13…ドア、14…乗場ドア、15…乗場、16…音声入力装置、20…画像処理装置、21…記憶部、22…制御部、23…検知部、24…物体検出部、25…手形状検出部、26…位置関係検出部、27…判定部、30…エレベータ制御装置、31…登録制御部、32…通知部、33…戸開閉制御部、44…行先階ボタン、45…操作盤、46…スピーカ。
【手続補正書】
【提出日】2024-10-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかご内に設置されたカメラと、
前記カメラによって撮影された前記乗りかご内の画像に基づいて、前記乗りかご内に乗車した利用者と前記利用者が持っている物体を検知する検知手段と、
前記カメラによって撮影された前記乗りかご内の画像における、前記検知手段により検知された前記利用者の手の形状、及び前記利用者と前記物体との位置関係に基づいて、前記利用者の両手が塞がっているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記利用者の両手が塞がっていると判定された場合に、音声認識による行先階の登録を行う登録制御手段と
を具備するエレベータシステム。
【請求項2】
前記判定手段は、
前記利用者の手が前記物体の一部を掴み持つ形状にあり、かつ、前記利用者の手の先に前記物体が存在する場合に、前記利用者の両手が塞がっていると判定する
請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項3】
前記物体の一部を掴み持つ形状は、前記利用者の手が前記物体の一部を上端部方向から掴む形状を含む
請求項2に記載のエレベータシステム。
【請求項4】
前記判定手段は、
前記利用者の手が前記物体の一部を支え持つ形状にあり、かつ、前記利用者の両手の間に前記物体が存在する場合に、前記利用者の両手が塞がっていると判定する
請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項5】
前記物体の一部を支え持つ形状は、前記利用者の手が前記物体を側面方向から支える形状を含む
請求項4に記載のエレベータシステム。
【請求項6】
前記物体の一部を支え持つ形状は、前記利用者の手が前記物体を下端部方向から支える形状を含む
請求項4に記載のエレベータシステム。
【請求項7】
前記判定手段は、
前記画像上で前記利用者の一部が一定値以上の直線で途切れている場合に、前記利用者の両手が塞がっていると判定する
請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項8】
前記判定手段により前記利用者の両手が塞がっていると判定された場合、音声認識による行先階の登録が行える旨を前記利用者に通知する通知手段をさらに具備する
請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項9】
前記判定手段により前記利用者の両手が塞がっていると判定された場合、前記乗りかごの戸開時間を延長する戸開時間制御手段をさらに具備する
請求項1に記載のエレベータシステム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
一実施形態に係るエレベータシステムは、カメラと、検知手段と、判定手段と、登録制御手段とを備える。前記カメラは、乗りかご内に設置される。前記検知手段は、前記カメラによって撮影された前記乗りかご内の画像に基づいて、前記乗りかご内に乗車した利用者と前記利用者が持っている物体を検知する。前記判定手段は、前記カメラによって撮影された前記乗りかご内の画像における、前記検知手段により検知された前記利用者の手の形状、及び前記利用者と前記物体との位置関係に基づいて、前記利用者の両手が塞がっているか否かを判定する。前記登録制御手段は、前記判定手段により利用者の両手が塞がっていると判定された場合に、音声認識による行先階の登録を行う。