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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178759
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】ベルトコンベアの発停感知方法
(51)【国際特許分類】
   B65G 43/08 20060101AFI20241218BHJP
【FI】
B65G43/08 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097144
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉川 たかし
(72)【発明者】
【氏名】谷山 奈津美
【テーマコード(参考)】
3F027
【Fターム(参考)】
3F027AA02
3F027DA22
3F027EA09
3F027FA01
(57)【要約】
【課題】ベルトコンベアの稼働に伴う摩擦による劣化が無く、設置及び調整時にベルトコンベアを停止する必要が無く、安全に発停感知を行うことができる、ベルトコンエアの発停感知方法を提供する。
【解決手段】ベルトコンベアの稼働部とは非接触な位置に設置された振動センサ及び音センサからなる群から選ばれる少なくとも1種の発停センサによってベルトコンベアの発停を感知する、ベルトコンベアの発停感知方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトコンベアの稼働部とは非接触な位置に設置された振動センサ及び音センサからなる群から選ばれる少なくとも1種の発停センサによってベルトコンベアの発停を感知する、ベルトコンベアの発停感知方法。
【請求項2】
前記発停センサから得られたデータが閾値未満であればベルトコンベアが停止と判断し、閾値以上であればベルトコンベアが稼働と判断する発停判断工程を有する、請求項1に記載のベルトコンベアの発停方法。
【請求項3】
前記発停判断工程における判断結果に基づき、他設備の運転を制御する、請求項2に記載のベルトコンベアの発停方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトコンベアの発停感知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベルトコンベアの発停感知には、以下の技術が適用されていた。
(1)メリック式ベルトスケール(コンベアスケール)(非特許文献1)
(2)ローラエンコーダー(ロータリーエンコーダー)(非特許文献2)
(3)ベルトコンベア稼働モーターの電流値
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】紙パ技協誌 第23巻第4号P.36~43「現場運転員のためのやさしい計器の口座(7)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jtappij1955/23/4/23_4_36/_pdf
【非特許文献2】株式会社メリテックHP「エンコーダとは」https://e-meltec.jp/about-encorder
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したベルトコンベアの発停感知(1)~(3)のうち、(1)及び(2)は、ベルトコンベアとベルトスケールないしエンコーダといった発停センサとを接触させる必要があり、且つベルトの動きに合わせた稼働部を有するため、腐食や粉塵などによる稼働不良や、摩擦による劣化などが発生する。また、ベルトコンベアと発停センサとの接触程度を調整する必要があるなど煩雑である。さらに、ベルトコンベアを停止した状態で設置及び調整する必要があるため、工場の稼働を止める必要が生じる。
上記(3)は、電流値の測定に危険を伴うため、監視には適さない。
【0005】
本発明は、ベルトコンベアの稼働に伴う摩擦による劣化が無く、設置及び調整時にベルトコンベアを停止する必要が無く、安全に発停感知を行うことができる、ベルトコンエアの発停感知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、次の[1]~[3]を提供するものである。
[1]ベルトコンベアの稼働部とは非接触な位置に設置された振動センサ及び音センサからなる群から選ばれる少なくとも1種の発停センサによってベルトコンベアの発停を感知する、ベルトコンベアの発停感知方法。
[2]前記発停センサから得られたデータが閾値未満であればベルトコンベアが停止と判断し、閾値以上であればベルトコンベアが稼働と判断する発停判断工程を有する、上記[1]に記載のベルトコンベアの発停方法。
[3]前記発停判断工程における判断結果に基づき、他設備の運転を制御する、上記[2]に記載のベルトコンベアの発停方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るベルトコンエアの発停感知方法によれば、ベルトコンベアの稼働に伴う摩擦による劣化が無く、設置及び調整時にベルトコンベアを停止する必要が無く、安全に発停感知を行うことができる、ベルトコンエアの発停感知方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係るベルトコンエアの発停感知方法について説明する。
本発明に係るベルトコンベアの発停感知方法は、ベルトコンベアの稼働部とは非接触な位置に設置された振動センサ及び音センサからなる群から選ばれる少なくとも1種の発停センサによってベルトコンベアの発停を感知する、ベルトコンベアの発停感知方法である。
ベルトコンベアの稼働時には振動及び音が発生し、停止時は振動及び音は発生しない。本発明によれば、振動センサ及び音センサからなる群から選ばれる少なくとも1種の発停センサによってベルトコンベアの発停を感知するため、当該発停を確実に検知することができる。なお、発停センサの周囲にはベルトコンベアに由来しない振動や音も存在するが、こうした周囲の振動や音は対象となるベルトコンベア由来の振動や音に比較して弱いため、区別が可能である。
また、本発明によれば、発停センサが、ベルトコンベア稼働部と接触しないため、ベルトコンベアの稼働に伴う摩擦による劣化が無く、設置及び調整時にベルトコンベアを停止する必要が無い。また、当該発停センサは、ベルトコンベアの稼働部の電流値の測定を行わないので、安全に発停感知を行うことができる。
【0009】
本発明において、発停センサは、ベルトコンベアのベルト、ローラー、プーリーなどの稼働部へは設置せず、例えばモーター等ケーシング、稼働部周辺の架台、ベルトコンベア付近に位置する歩道などに設置することが好ましい。特に発停センサが音センサの場合、モーターやローラーなど音が発生する付近に設置することが望ましい。また対象のベルトコンベアの周囲に対象外のベルトコンベアがある場合は、特に音センサの場合は対象ベルトコンベアになるべく近接した箇所へ設置することが望ましい。
発停センサの取付け方法としては、発停センサをベルトコンベアの周辺設備に接着剤などで取り付けても良いし、ネジなどで付けても良い。また、ベルトコンベアの周囲の歩道などに設置されている、ベルトコンベアへの接触防止用の柵などに取り付けても良い。また、板に設置した発停センサを、ベルトコンベアの周辺設備や接触防止用の柵に取り付けても良い。
【0010】
音センサとしては、動電型、静電型、圧電型等のいずれを用いても良いが、特に安定性が高く小型化可能な静電型を用いることが望ましい。
振動センサとしては、加速度検出タイプ、速度検出タイプ、変位検出タイプなどに分類されるが、いずれのタイプを用いても良い。これらの中で、特に加速度検出タイプが好ましい。加速度検出タイプとしては、圧電型、動電型、ストレインゲージ型等が挙げられるが、広い周波数範囲をカバーできることから圧電型が好ましい。
【0011】
本発明において、発停センサから得られたデータが閾値未満であればベルトコンベアが停止と判断し、閾値以上であればベルトコンベアが稼働と判断する発停判断工程を有することが好ましい。
このように閾値を設定することで、対象のベルトコンベア以外の設備からの振動や音によって発停センサが誤作動してしまうことが確実に防止される。
【0012】
発停センサにより得られたデータは、有線又は無線を介して、PCに送信しても良い。
本発明において、前記発停判断工程における判断結果に基づき、他設備の運転を制御しても良い。例えば、BC稼働の状況を知らせるパトランプの点灯・消灯の制御に使用しても良い。
【0013】
ベルトコンベアの稼働部とは非接触な位置に、発停センサを1機設けてもよく、2機以上設けてもよい。1機設けた場合、コスト削減が図られる。2機以上設けた場合、複数の発停センサのうちの一部が故障した場合であっても、ベルトコンベアの発停の感知を継続して実施することができる。
発停センサを2機以上設置する場合、例えば2機以上が「発進」を感知した場合に「発進」と判断し、1機のみが「発進」を感知したが他の発停センサが「停止」を感知した場合には「停止」と判断することが好ましい。これにより、対象となるベルトコンベア以外の振動又は音に起因して発停センサが誤判断することが防止できる。
発停センサが1機の場合、所定時間内に時間をあけて複数回、音又は振動を感知し、複数回にわたり「発進」を感知した場合には「発進」と判断し、1回のみ「発進」を感知し残りの回で「停止」を感知した場合には、「停止」と判断することが好ましい。
更には発停センサの台数に関わらず、所定時間内に時間をあけて複数回又は連続的に、音又は振動を感知し、ある一定時間の平均値より「発信」又は「停止」を判断しても良い。これにより、対象となるベルトコンベア以外の振動又は音に起因して発停センサが誤判断することが防止できる。
【0014】
対象となるベルトコンベアの振動の周波数帯域を測定しておき、発停センサが当該周波数帯域を感知したときに「発進」と判断し、発停センサが当該周波数帯域を感知しないときに「停止」と判断することが好ましい。これにより、対象となるベルトコンベア以外から発出される振動に起因して発停センサが誤判断することが防止できる。
また、対象となるベルトコンベアの音の周波数帯域を測定しておき、発停センサが当該周波数帯域を感知したときに「発進」と判断し、発停センサが当該周波数帯域を感知しないときに「停止」と判断することが好ましい。これにより、対象となるベルトコンベア以外から発出される音に起因して発停センサが誤判断することが防止できる。
【0015】
対象となるベルトコンベアの振動の波形パターンを測定しておき、発停センサが当該波形パターンを感知したときに「発進」と判断し、発停センサが当該波形パターンを感知しないときに「停止」と判断することが好ましい。これにより、対象となるベルトコンベア以外から発出される振動に起因して発停センサが誤判断することが防止できる。
また、対象となるベルトコンベアの音の波形パターンを測定しておき、発停センサが当該波形パターンを感知したときに「発進」と判断し、発停センサが当該波形パターンを感知しないときに「停止」と判断することが好ましい。これにより、対象となるベルトコンベア以外から発出される音に起因して発停センサが誤判断することが防止できる。
【0016】
発停センサは、対象となるベルトコンベア以外の影響を低減するため、他の稼働設備とは離れた箇所に設置することが望ましい。この場合、「発進」や「停止」の判断が容易となる。
一方で、対象となるベルトコンベアの乗継部近傍に発停センサを設置してもよい。
この場合、例えば、以下のとおりにしてベルトコンベアの発停を感知してもよい。
(1)乗継部の上流側のベルトコンベア及び下流側のベルトコンベアのうち発進中における音量が小さい方のベルトコンベアのみが稼働している場合の音量V1、乗継部の上流側のベルトコンベア及び下流側のベルトコンベアのうち発進中における音量が大きい方のベルトコンベアのみが稼働している場合の音量V2、乗継部の上流側のベルトコンベア及び下流側のベルトコンベアの両方が稼働している場合の音量V3を、予め測定しておく。
(2)第1の閾値T1、第2の閾値T2、第3の閾値T3及び第4の閾値T4を、以下のとおり設定する。
T1<V1<T2<V2<T3<V3<T4
(3)発停センサが第1の閾値T1未満の音を感知したか音を感知しなかった場合に「音量が小さい方のベルトコンベア及び音量が大きい方のベルトコンベアの両方が停止している」と判断し、
発停センサが第1の閾値T1以上かつ第2の閾値T2以下の音を感知した場合に「音量が小さい方のベルトコンベアのみが稼働している」(異常状態であると判断)と判断し、
発停センサが第2の閾値T2を超えかつ第3の閾値T3以下の音を感知した場合に「音量が大きい方のベルトコンベアのみが稼働している」(異常状態であると判断)と判断し、
発停センサが第3の閾値T3を超えかつ第4の閾値T4以下の音を感知した場合に「音量が小さい方のベルトコンベア及び音量が大きい方のベルトコンベアの両方が稼働している」と判断する。
【0017】
対象となるベルトコンベアの乗継部近傍に発停センサを設置し、かつ、以下のとおりにしてベルトコンベアの発停を感知してもよい。
(1)乗継部の上流側のベルトコンベア及び下流側のベルトコンベアのうち発進中における音量が小さい方のベルトコンベアのみが稼働している場合の音量V1、乗継部の上流側のベルトコンベア及び下流側のベルトコンベアのうち発進中における音量が大きい方のベルトコンベアのみが稼働している場合の音量V2、乗継部の上流側のベルトコンベア及び下流側のベルトコンベアの両方が稼働している場合の音量V3を、予め測定しておく。
(2A)第1Aの閾値T1A、第2Aの閾値T2A、及び第3Aの閾値T3Aを、以下のとおり設定する。
T1A<V1<V2<T2A<V3<T3A
(3A)発停センサが第1の閾値T1未満の音を感知したか音を感知しなかった場合に「音量が小さい方のベルトコンベア及び音量が大きい方のベルトコンベアの両方が停止している」と判断し、
発停センサが第1Aの閾値T1A以上かつ第2Aの閾値T2A以下の音を感知した場合に「音量が小さい方のベルトコンベア及び音量が大きい方のベルトコンベアのうち、いずれか一方のみが稼働している」と判断(異常状態であると判断)し、
発停センサが第2の閾値T2Aを超えかつ第3Aの閾値T3A以下の音を感知した場合に「音量が小さい方のベルトコンベア及び音量が大きい方のベルトコンベアの両方が稼働している」と判断する。
【0018】
対象となるベルトコンベアの乗継部近傍に発停センサを設置してもよい。
この場合、例えば、以下のとおりにしてベルトコンベアの発停を感知してもよい。
(1)乗継部の上流側のベルトコンベア及び下流側のベルトコンベアのうち発進中における振動強度が小さい方のベルトコンベアのみが稼働している場合の振動強度S1、乗継部の上流側のベルトコンベア及び下流側のベルトコンベアのうち発進中における振動強が大きい方のベルトコンベアのみが稼働している場合の振動強度S2、乗継部の上流側のベルトコンベア及び下流側のベルトコンベアの両方が稼働している場合の振動強度S3を、予め測定しておく。
(2)第1の閾値T1、第2の閾値T2、第3の閾値T3及び第4の閾値T4を、以下のとおり設定する。
T1<S1<T2<S2<T3<S3<T4
(3)発停センサが第1の閾値T1未満の振動強度を感知したか音を感知しなかった場合に「振動強度が小さい方のベルトコンベア及び振動強度が大きい方のベルトコンベアの両方が停止している」と判断し、
発停センサが第1の閾値T1以上かつ第2の閾値T2以下の振動強度を感知した場合に「振動強度が小さい方のベルトコンベアのみが稼働している」(異常状態であると判断)と判断し、
発停センサが第2の閾値T2を超えかつ第3の閾値T3以下の振動強度を感知した場合に「振動強度が大きい方のベルトコンベアのみが稼働している」(異常状態であると判断)と判断し、
発停センサが第3の閾値T3を超えかつ第4の閾値T4以下の振動強度を感知した場合に「振動強度が小さい方のベルトコンベア及び振動強度が大きい方のベルトコンベアの両方が稼働している」と判断する。
【0019】
対象となるベルトコンベアの乗継部近傍に発停センサを設置し、かつ、以下のとおりにしてベルトコンベアの発停を感知してもよい。
(1)乗継部の上流側のベルトコンベア及び下流側のベルトコンベアのうち発進中における振動強度が小さい方のベルトコンベアのみが稼働している場合の振動強度S1、乗継部の上流側のベルトコンベア及び下流側のベルトコンベアのうち発進中における音量が大きい方のベルトコンベアのみが稼働している場合の振動強度S2、乗継部の上流側のベルトコンベア及び下流側のベルトコンベアの両方が稼働している場合の振動強度S3を、予め測定しておく。
(2A)第1Aの閾値T1A、第2Aの閾値T2A、及び第3Aの閾値T3Aを、以下のとおり設定する。
T1A<S1<S2<T2A<S3<T3A
(3A)発停センサが第1の閾値T1未満の振動強度を感知した振動強度を感知しなかった場合に「振動強度が小さい方のベルトコンベア及び振動強度が大きい方のベルトコンベアの両方が停止している」と判断し、
発停センサが第1Aの閾値T1A以上かつ第2Aの閾値T2A以下の振動強度を感知した場合に「振動強度が小さい方のベルトコンベア及び振動強度が大きい方のベルトコンベアのうち、いずれか一方のみが稼働している」と判断(異常状態であると判断)し、
発停センサが第2の閾値T2Aを超えかつ第3Aの閾値T3A以下の振動強度を感知した場合に「振動強度が小さい方のベルトコンベア及び振動強度が大きい方のベルトコンベアの両方が稼働している」と判断する。