(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017876
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】超純水製造装置の運転管理方法および運転管理システム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/42 20230101AFI20240201BHJP
G01N 30/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
C02F1/42 A
G01N30/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120813
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】津田 晃彦
(72)【発明者】
【氏名】蔦野 恭平
(72)【発明者】
【氏名】菅原 広
【テーマコード(参考)】
4D025
【Fターム(参考)】
4D025AA04
4D025AB18
4D025AB19
4D025AB20
4D025AB21
4D025AB22
4D025AB23
4D025BA08
4D025BA13
4D025BB04
4D025BB07
4D025CA02
4D025CA05
4D025DA04
4D025DA05
4D025DA10
(57)【要約】
【課題】安定した運転を継続しながら、イオン交換樹脂の性能低下による交換の要否を適切に判断する。
【解決手段】イオン交換装置6を有する超純水製造装置1の運転管理方法は、イオン交換装置6からの処理水に含まれる金属成分を経時的に定量する工程と、経時的に定量した結果に基づいて、金属成分の濃度の経時変化を取得する工程と、取得した経時変化に基づいて、イオン交換装置6の内部に充填されたイオン交換樹脂の性能を評価する工程と、を含んでいる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換装置を有する超純水製造装置の運転管理方法であって、
前記イオン交換装置からの処理水に含まれる金属成分を経時的に定量する工程と、
前記経時的に定量した結果に基づいて、前記金属成分の濃度の経時変化を取得する工程と、
前記取得した経時変化に基づいて、前記イオン交換装置の内部に充填されたイオン交換樹脂の性能を評価する工程と、を含む、超純水製造装置の運転管理方法。
【請求項2】
前記イオン交換樹脂の性能を評価する工程が、前記金属成分の濃度の単位時間当たりの変化量が所定値以上である場合に、前記イオン交換樹脂の性能が低下していると判断することを含む、請求項1に記載の超純水製造装置の運転管理方法。
【請求項3】
前記所定値は、前記金属成分を定量する際の誤差に応じて設定される、請求項2に記載の超純水製造装置の運転管理方法。
【請求項4】
前記イオン交換樹脂の性能が低下していると判断した場合に、前記超純水製造装置の使用者に前記イオン交換樹脂の交換を促す警報を発する工程をさらに含む、請求項2または3に記載の超純水製造装置の運転管理方法。
【請求項5】
前記警報を発した後、前記使用者に新品のイオン交換樹脂を提供する工程をさらに含む、請求項4に記載の超純水製造装置の運転管理方法。
【請求項6】
前記金属成分を経時的に定量する工程が、多孔質イオン交換体を充填した容器に前記処理水の一部を通水することで前記処理水中の前記金属成分を前記多孔質イオン交換体で捕捉し、該捕捉した金属成分を溶離液に溶離させ、前記溶離液中の前記金属成分を定量する一連の処理を繰り返し行うことを含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の超純水製造装置の運転管理方法。
【請求項7】
前記金属成分を経時的に定量する工程が、前記容器を複数用意し、前記一連の処理を前記複数の容器に対して時間をずらしながら並行して繰り返し行うことを含む、請求項6に記載の超純水製造装置の運転管理方法。
【請求項8】
前記金属成分がナトリウムを含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の超純水製造装置の運転管理方法。
【請求項9】
イオン交換装置を有する超純水製造装置の運転管理システムであって、
前記イオン交換装置からの処理水に含まれる金属成分の定量値から前記金属成分の濃度の経時変化を取得し、該取得した経時変化に基づいて、前記イオン交換装置の内部に充填されたイオン交換樹脂の性能を評価する評価手段を有する、超純水製造装置の運転管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超純水製造装置の運転管理方法および運転管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスや液晶デバイスの製造プロセスでは、洗浄工程など様々な用途に、不純物が高度に除去された超純水が用いられている。超純水に含まれる金属成分は、それが微量であってもデバイスの特性に大きな影響を及ぼすことから、その濃度を厳しく管理することが求められている。近年では、半導体デバイスの急激な高集積化・微細化に伴い、超純水中の金属濃度に対する要求はますます厳しくなっており、金属濃度がpg/Lレベルの超純水が求められている。
【0003】
超純水は、一般に、原水(河川水、地下水、工業用水など)を、前処理システム、一次純水システム、および二次純水システム(サブシステム)で順次処理することで製造されるが、その中でも、超純水中の金属濃度を管理する上で大きな役割を果たしているのは、イオン交換装置である。イオン交換装置は、内部にイオン交換樹脂が充填され、多くの場合、サブシステムの最も下流側、あるいは、サブシステムの最も下流側に設けられた限外ろ過膜装置の次に下流側に設けられている。超純水の製造過程では、使用する配管やポンプなどから金属成分が溶出することが知られているが、イオン交換装置は、それより上流側で金属成分が溶出しても、その影響が超純水の水質に現れるのを抑制することができる。
【0004】
このようなイオン交換装置を備えた超純水製造装置では、イオン交換樹脂の性能低下が超純水の水質悪化に直結するため、イオン交換樹脂の性能を正確に評価し、それに基づいて、イオン交換樹脂の交換が必要か否かを判断することが重要になる。特許文献1には、イオン交換樹脂に吸着している吸着物質の組成分析を行い、その分析結果に基づいて、イオン交換樹脂の交換時期を判断する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の方法では、吸着物質の組成分析を行うために、実際に負荷のかかったイオン交換樹脂の一部を試料としてイオン交換装置から採取する必要があり、そのためには、被処理水の供給を停止してイオン交換装置の運転を停止せざるを得ない。また、イオン交換樹脂の採取に伴って、装置の汚染が懸念され、それによる処理水の水質の悪化も懸念される。
【0007】
そこで、本発明の目的は、安定した運転を継続しながら、イオン交換樹脂の性能低下による交換の要否を適切に判断することができる超純水製造装置の運転管理方法および運転管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するために、本発明の超純水製造装置の運転管理方法は、イオン交換装置を有する超純水製造装置の運転管理方法であって、イオン交換装置からの処理水に含まれる金属成分を経時的に定量する工程と、経時的に定量した結果に基づいて、金属成分の濃度の経時変化を取得する工程と、取得した経時変化に基づいて、イオン交換装置の内部に充填されたイオン交換樹脂の性能を評価する工程と、を含んでいる。
【0009】
本発明の超純水製造装置の運転管理システムは、イオン交換装置を有する超純水製造装置の運転管理システムであって、イオン交換装置からの処理水に含まれる金属成分の定量値から金属成分の濃度の経時変化を取得し、取得した経時変化に基づいて、イオン交換装置の内部に充填されたイオン交換樹脂の性能を評価する評価手段を有している。
【0010】
このような超純水製造装置の運転管理方法および運転管理システムによれば、イオン交換装置からの処理水の実際の水質変化を監視することで、イオン交換樹脂の性能を正確に評価することができる。その結果、良好な水質の超純水を安定的に製造しながら、イオン交換樹脂の適切な交換時期を把握することが可能になる。
【発明の効果】
【0011】
以上、本発明によれば、安定した運転を継続しながら、イオン交換樹脂の性能低下による交換の要否を適切に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る超純水製造装置の構成を示す概略図である。
【
図2】試料水中の金属濃度の経時変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。本明細書では、超純水製造装置を例示するが、本発明の運転管理方法が適用される装置はこれに限定されず、純水装置であってもよい。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る超純水製造装置の構成を示す概略図である。なお、図示した超純水製造装置の構成は、単なる一例であり、本発明を制限するものではない。
【0015】
超純水製造装置1は、一次純水タンク2と、ポンプ3と、熱交換器4と、紫外線酸化装置5と、イオン交換装置6と、限外ろ過(UF)膜装置7とを有している。これらは、循環ラインL1によって接続されて二次純水システム(サブシステム)を構成し、一次純水システム(図示せず)で製造された一次純水を順次処理して超純水を製造し、その超純水をユースポイント8に供給するものである。
【0016】
一次純水タンク2に貯留された被処理水(一次純水)は、ポンプ3により送出され、熱交換器4に供給される。熱交換器4を通過して温度調節された被処理水は、紫外線酸化装置5に供給されて紫外線を照射され、被処理水中の全有機炭素(TOC)が分解される。その後、被処理水は、イオン交換装置6においてイオン交換処理により金属などが除去され、UF膜装置7において微粒子が除去される。こうして得られた超純水は、一部がユースポイント8に供給され、残りが一次純水タンク2に返送されるようになっている。一次純水タンク2には、必要に応じて、一次純水システム(図示せず)から一次純水が供給される。一次純水タンク2、ポンプ3、熱交換器4、紫外線酸化装置5、イオン交換装置6、およびUF膜装置7としては、超純水製造装置のサブシステムにおいて一般的に用いられているものを使用することができる。例えば、イオン交換装置6としては、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とが混床で充填された非再生型混床式イオン交換装置(カートリッジポリッシャー)を使用することができる。
【0017】
超純水製造装置1では、製造される超純水が半導体デバイスや液晶デバイスなどの洗浄に使用される場合、上述したように、超純水中の金属濃度を厳しく管理することが求められるが、このときの金属濃度は、イオン交換装置6に充填されたイオン交換樹脂の性能に大きく左右される。すなわち、イオン交換樹脂の性能が低下すると、被処理水に含まれる金属成分がイオン交換装置6で除去されずに超純水中にリークしてしまい、超純水の水質が要求されるレベルを満たさなくなる。したがって、安定した水質の超純水をユースポイント8に供給するための運転管理として、イオン交換樹脂の性能を正確に評価し、それに基づいて、イオン交換樹脂の交換が必要か否かを判断することが必要になる。イオン交換樹脂の性能を評価するために、本実施形態では、イオン交換装置6からの処理水中の金属濃度が分析されるが、このために、超純水製造装置1には、イオン交換装置6からの処理水に含まれる金属成分を採取するサンプリング装置10が設けられている。
【0018】
サンプリング装置10は、サンプリングラインL2と、サンプリングラインL2に設けられた濃縮カラム11とから構成されている。サンプリングラインL2は、イオン交換装置6とUF膜装置7との間の循環ラインL1にバルブV1を介して接続されている。濃縮カラム11は、サンプリングラインL2を通じて供給される試料水(イオン交換装置6からの処理水)中の金属成分を捕捉して濃縮するものであり、内部に捕捉部材としての多孔質イオン交換体を備えている。この多孔質イオン交換体としては、例えば、イオン吸着膜(特に、カチオン交換能を有する多孔質膜)を用いることもできるが、より高い空間速度での通水が可能になり、濃縮のための所要時間の短縮が可能になる点で、モノリス状有機多孔質イオン交換体を用いることが好ましい。なお、サンプリング装置10の少なくとも接液部は、非金属製であることが好ましく、例えば、合成樹脂製、特に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフッ素樹脂製やポリプロピレン(PP)製であることが好ましい。
【0019】
ここで、上述したサンプリング装置10を用いた、イオン交換装置6からの処理水中の金属濃度の分析方法と、その分析結果に基づいた、イオン交換樹脂の性能評価方法について説明する。
【0020】
まず、バルブV1を開放し、イオン交換装置6からの処理水の一部を試料水としてサンプリングラインL2に供給して濃縮カラム(容器)11に通水し、試料水中の金属成分を濃縮カラム11に充填された多孔質イオン交換体で捕捉して濃縮する。このときの通水時間(濃縮時間)は、濃縮カラム11への通水量にもよるが、分析対象となる金属成分が十分な精度で定量できる程度に濃縮される限り特に限定されず、例えば、数日間である。その後、所定の通水時間が経過したら、バルブV1を閉鎖し、濃縮カラム11への通水を停止する。そして、サンプリングラインL2から濃縮カラム11を取り外し、内部に充填された多孔質イオン交換体を回収する。
【0021】
次に、回収した多孔質イオン交換体に捕捉された金属成分を溶離液(例えば、所定の濃度に希釈した硝酸など)に溶離させる。そして、溶離液中の金属成分を定量し、得られた金属量(定量値)から試料水中の金属濃度を算出する。金属成分の定量方法としては、例えば、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)を用いることができ、試料水中の金属濃度は、得られた金属量を溶離液の濃縮倍率で除した値として算出することができる。
【0022】
ここで分析対象とする金属成分の種類に特に制限はなく、例えば、Na、K、Ca、Mg、Fe、Cu、Al、Zn、Ni、Cr、およびPbの少なくともいずれかを分析対象とすることができるが、その中でも、Na(ナトリウム)を分析対象とすることが好ましい。これは、他の金属成分に比べて、(原水の水質や一次純水システムの構成にもよるが)イオン交換装置6に供給される被処理水中での含有量が多く、かつイオン交換装置6内のカチオン交換樹脂に吸着されにくい(選択性が比較的低い)ためである。すなわち、イオン交換樹脂の性能が低下すると、他の金属成分よりも先にナトリウムが吸着されなくなり、結果として処理水中のナトリウム濃度が上昇する。そのため、ナトリウムを分析対象とすることで、他の金属成分がイオン交換装置6からリークすることを事前に予測することが可能になり、良好な水質の超純水をユースポイント8に安定して供給することが可能になる。なお、ここでいう金属成分とは、金属イオンと金属粒子(微粒子)の両方の形態を含むことを意味する。
【0023】
こうした定量分析を経時的(好ましくは、定期的)に繰り返し行い、その結果に基づいて、試料水中の金属濃度の経時変化を取得する。すなわち、捕捉した金属成分の分析のために濃縮カラム11をサンプリングラインL2から取り外した後、別の濃縮カラム11をサンプリングラインL2に取り付け、その濃縮カラム11を用いて、試料水中の金属成分の捕捉および分析を再度実施する。そして、算出された金属濃度を、濃縮カラム11を取り外した時点でのイオン交換装置6への通水時間(イオン交換樹脂の使用開始時からの経過時間)に対してプロットし、試料水中の金属濃度の経時変化を取得する。その後、こうして取得した経時変化に基づいて、イオン交換装置6に充填されたイオン交換樹脂の性能を評価する。以下、
図2を参照して、具体的な評価方法について説明する。
図2は、試料水中の金属濃度の経時変化の一例を示すグラフである。
【0024】
時刻tiにおいて金属濃度Ciを取得すると、その前に金属濃度を取得した時刻ti-1との時間差Δt(=ti-ti-1)と、そのときの金属濃度Ci-1との濃度差ΔC(=Ci-Ci-1)とから、金属濃度の単位時間当たりの変化量ΔC/Δtを算出する。そして、算出した変化量ΔC/Δtが予め設定した所定値以上であるか否かを判定し、所定値以上である場合に、分析対象となる金属成分がイオン交換装置6で除去されずにリークしていると判断し、したがって、イオン交換装置6内のイオン交換樹脂の性能が低下していると判断する。なお、このときの所定値は、特に限定されず、実験的な検証に基づいて予め設定することができるが、上述した定量分析における誤差に応じて設定されることが好ましい。すなわち、定量誤差が大きくなると、イオン交換樹脂の性能低下による金属濃度の変化がその誤差に埋もれてしまい、正確に検出できなくなる可能性があるため、定量誤差が大きいほど、所定値を大きくすることが好ましい。
【0025】
このように、本実施形態によれば、イオン交換装置6からの処理水の実際の水質変化(分析対象となる金属成分の濃度変化)を監視することで、イオン交換樹脂の性能を正確に評価することができる。その結果、良好な水質の超純水を安定的に製造しながら、イオン交換樹脂の適切な交換時期を把握することが可能になる。なお、イオン交換樹脂の性能を評価するには、例えば、上述した定量分析を単発的に行い、その都度、得られる定量値(金属濃度)を所定の閾値と比較することも考えられる。しかしながら、このような方法では、定量値が閾値を上回ったことが確認され、それにより、イオン交換樹脂の性能が低下していることが確認された時点で、すでに水質が悪化した超純水がユースポイントに供給されていることになる。したがって、上述した定量分析を経時的に行い、イオン交換装置6からの処理水中の金属濃度を経時的に監視することは、イオン交換樹脂の性能が低下する前にそれを予測することが可能になる点でも好ましい。
【0026】
上述したイオン交換樹脂の性能評価は、超純水製造装置1の管理者が行ってもよいが、超純水製造装置1の運転管理を行う運転管理システム(図示せず)が実行するようになっていてもよい。すなわち、運転管理システムの制御装置(評価手段)が、超純水製造装置1の管理者により入力された入力データ(金属成分の定量値またはそれから算出された試料水中の金属濃度)から試料水中の金属濃度の経時変化を取得し、取得した経時変化に基づいて、上述した手法によりイオン交換樹脂の性能を評価するようになっていてもよい。また、このとき、制御装置は、イオン交換樹脂の性能が低下していると判断した場合に、超純水製造装置1の管理者にイオン交換樹脂の交換を促す警報を発することが好ましい。
【0027】
一方で、超純水製造装置1から濃縮カラム11を取り外した後の定量分析を含め、イオン交換樹脂の性能評価は、超純水製造装置1が設置された現場から離れた場所で行われるケースも多い。そのようなケースでも、現場から離れた場所でイオン交換樹脂の性能が低下していると判断した場合に、現場でのより迅速な対応を可能にするために、イオン交換樹脂の交換を促す警報を現場の作業者(使用者)に発することが好ましい。また、上述した定量分析とそれに基づいた性能評価をイオン交換樹脂の製造または販売会社が行う場合には、警報を発した後で、新品のイオン交換樹脂を超純水製造装置1の使用者に提供(販売)するようになっていてもよい。
【0028】
イオン交換樹脂の性能評価をより正確に行うためには、上述した定量分析をできるだけ短い間隔で実施し、より多くの時系列データを収集することが好ましい。しかしながら、定量の精度を向上させる意味でも、試料水中の金属成分を濃縮カラム11で十分に濃縮する必要があり、そのための通水には時間がかかるため、時系列データの時間間隔を短くするには限界がある。そこで、サンプリングラインL2を複数に分岐するか、あるいは、複数のサンプリングラインL2を設け、そのそれぞれに濃縮カラム11を設置した上で、上述した金属成分の捕捉から定量までの一連の工程を、それぞれの濃縮カラム11に対して時間をずらしながら並行して繰り返し行ってもよい。それにより、単一の濃縮カラム11を用いて一連の工程を繰り返し行う場合に比べて、金属濃度を取得する時間間隔を短くすることができる。
【0029】
なお、試料水中の金属成分を濃縮する方法としては、上述した多孔質イオン交換体を用いる方法の他、採取した試料水を加熱して濃縮する方法も考えられる。しかしながら、この方法では、加熱による濃縮倍率に限界があり、十分な感度を得るためには大量の試料水を採取する必要がある。また、加熱濃縮工程は、開放環境下で行われるため、試料水の汚染のリスクも高くなってしまう。したがって、試料水中の金属成分を濃縮する方法としては、濃縮効率が高く、濃縮工程における試料水の汚染のリスクも低い点で、本実施形態のように多孔質イオン交換体で金属成分を捕捉して濃縮する方法を用いることが好ましい。
【符号の説明】
【0030】
1 超純水製造装置
2 一次純水タンク
3 ポンプ
4 熱交換器
5 紫外線酸化装置
6 イオン交換装置
7 限外ろ過膜装置
8 ユースポイント
10 サンプリング装置
11 濃縮カラム
L1 循環ライン
L2 サンプリングライン
V1 バルブ