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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178766
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】撮像システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20241218BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20241218BHJP
   G03B 19/07 20210101ALI20241218BHJP
   G03B 30/00 20210101ALI20241218BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20241218BHJP
   H04N 5/222 20060101ALI20241218BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
G01N21/88 J
G03B15/00 U
G03B15/00 T
G03B15/00 W
G03B19/07
G03B30/00
H04N23/60 500
H04N5/222 100
E01D22/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097156
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉田 孝男
(72)【発明者】
【氏名】塩永 亮介
【テーマコード(参考)】
2D059
2G051
2H054
5C122
【Fターム(参考)】
2D059AA03
2D059GG39
2G051AA90
2G051AB03
2G051AC16
2G051CA04
2G051CA07
2G051ED21
2H054BB05
2H054BB07
5C122DA12
5C122EA68
5C122FA18
5C122FB06
5C122FH11
5C122GD11
5C122HA88
5C122HB01
5C122HB10
(57)【要約】
【課題】検査面における撮像範囲の位置を特定する。
【解決手段】撮像システム100は、検査面を撮像して広角画像を生成する広角カメラ210と、広角カメラ210よりも撮像範囲が狭く、検査面を撮像して狭角画像を生成する狭角カメラ220と、広角カメラ210および狭角カメラ220を一体的に保持する保持部240と、広角画像における予め定められた3以上の基準点に基づいて、検査面上の狭角画像の位置を特定する位置特定部256と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査面を撮像して広角画像を生成する広角カメラと、
前記広角カメラよりも撮像範囲が狭く、前記検査面を撮像して狭角画像を生成する狭角カメラと、
前記広角カメラおよび前記狭角カメラを一体的に保持する保持部と、
前記広角画像における予め定められた3以上の基準点に基づいて、前記検査面上の前記狭角画像の位置を特定する位置特定部と、
を備える、撮像システム。
【請求項2】
前記検査面に対してレーザー光を照射する、3つ以上のレーザー照射部を備え、
前記保持部は、前記広角カメラ、前記狭角カメラ、および、前記レーザー照射部を一体的に保持する、請求項1に記載の撮像システム。
【請求項3】
検査面を撮像して広角画像を生成する広角カメラと、
前記広角カメラよりも撮像範囲が狭く、前記検査面を撮像して狭角画像を生成する狭角カメラと、
前記検査面に対してレーザー光を照射する、3つ以上のレーザー照射部と、
前記狭角カメラおよび前記レーザー照射部を一体的に保持する保持部と、
前記広角画像における予め定められた3以上の基準点、および、前記広角画像における、前記レーザー照射部による前記レーザー光の照射点に基づいて、前記検査面上の前記狭角画像の位置を特定する位置特定部と、
を備える、撮像システム。
【請求項4】
前記広角カメラによる前記広角画像の生成タイミングと、前記狭角カメラによる前記狭角画像の生成タイミングとを同期させる撮像制御部を備える、請求項1または3に記載の撮像システム。
【請求項5】
前記狭角カメラは、前記狭角画像を異なるタイミングで複数生成し、
複数の前記狭角画像において、前記検査面上の位置が同じ領域を抽出する領域抽出部と、
抽出された前記領域に基づいて検査を行う検査部と、
を備える、請求項1または3に記載の撮像システム。
【請求項6】
前記保持部が設けられ、前記検査面近傍に飛行可能な無人航空機を備える、請求項1または3に記載の撮像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁、高速道路、トンネル、ダム、ビル等のコンクリートで構成された構造物の表面を撮像し、得られた画像を解析することで、ひび割れ、塗膜劣化、塩分濃度等の構造物の劣化状態を検査する技術が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、構造物の表面を撮像して得られた画像に対し、画像処理を施して画像を正対化した正対化画像を生成し、正対化画像を解析して、構造物のひび割れを検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-34576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
構造物の劣化状態の検査において、検査すべきひび割れの幅は、例えば、0.1mm程度と小さい。このため、画像を用いて構造物の劣化状態を検査する場合、高い解像度を有する画像が必要となり、撮像範囲が狭くなる。
【0006】
ひび割れの経時変化、塗膜劣化の経時変化、塩分濃度を検査する場合、構造物の検査面における同じ検査範囲を複数回撮像し、得られた複数枚の画像を解析する。このため、撮像範囲に検査範囲が含まれるようにカメラを設置する。
【0007】
しかし、カメラを同じ位置に固定できない場合、同じ検査範囲を複数回撮像することは困難である。具体的に説明すると、上記のように、高い解像度を有する画像を取得するためには、撮像範囲を狭くする必要がある。コンクリートで構成された検査面や、一様に塗料が塗布された検査面を撮像する場合、狭い撮像範囲において、指標となりうる特徴的な部分が含まれない。このため、検査面において、どこを撮像したのか、つまり、検査面における撮像範囲の位置が不明となってしまう。このため、カメラを固定できない場合、同じ検査範囲を複数回撮像することは困難である。
【0008】
そこで、本開示は、このような課題に鑑み、検査面における撮像範囲の位置を特定することが可能な撮像システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る撮像システムは、検査面を撮像して広角画像を生成する広角カメラと、広角カメラよりも撮像範囲が狭く、検査面を撮像して狭角画像を生成する狭角カメラと、広角カメラおよび狭角カメラを一体的に保持する保持部と、広角画像における予め定められた3以上の基準点に基づいて、検査面上の狭角画像の位置を特定する位置特定部と、を備える。
【0010】
また、上記撮像システムは、検査面に対してレーザー光を照射する、3つ以上のレーザー照射部を備え、保持部は、広角カメラ、狭角カメラ、および、レーザー照射部を一体的に保持してもよい。
【0011】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る他の撮像システムは、検査面を撮像して広角画像を生成する広角カメラと、広角カメラよりも撮像範囲が狭く、検査面を撮像して狭角画像を生成する狭角カメラと、検査面に対してレーザー光を照射する、3つ以上のレーザー照射部と、狭角カメラおよびレーザー照射部を一体的に保持する保持部と、広角画像における予め定められた3以上の基準点、および、広角画像における、レーザー照射部によるレーザー光の照射点に基づいて、検査面上の狭角画像の位置を特定する位置特定部と、を備える。
【0012】
また、上記撮像システムは、広角カメラによる広角画像の生成タイミングと、狭角カメラによる狭角画像の生成タイミングとを同期させる撮像制御部を備えてもよい。
【0013】
また、上記狭角カメラは、狭角画像を異なるタイミングで複数生成し、上記撮像システムは、複数の狭角画像において、検査面上の位置が同じ領域を抽出する領域抽出部と、抽出された領域に基づいて検査を行う検査部と、を備えてもよい。
【0014】
また、上記撮像システムは、保持部が設けられ、検査面近傍に飛行可能な無人航空機を備えてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、検査面における撮像範囲の位置を特定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本実施形態に係る撮像システムの使用形態を説明する図である。
図2図2は、本実施形態に係る撮像システムの概略構成を示す模式図である。
図3図3は、本実施形態に係る撮像システムの機能ブロック図である。
図4図4は、本実施形態に係る撮像方法の処理の流れを示すフローチャートである。
図5図5は、広角画像の一例を示す図である。
図6図6は、狭角画像の一例を示す図である。
図7図7は、位置特定処理を説明するための第1の図である。
図8図8は、位置特定処理を説明するための第2の図である。
図9図9は、変形例に係る撮像システムの機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
[撮像システム100]
図1は、本実施形態に係る撮像システム100の使用形態を説明する図である。図2は、本実施形態に係る撮像システム100の概略構成を示す模式図である。図3は、本実施形態に係る撮像システム100の機能ブロック図である。図3において、破線の矢印は、信号の流れを示す。
【0019】
図1図3に示すように、撮像システム100は、無人航空機110と、撮像ユニット120とを備える。
【0020】
図1に示すように、撮像システム100は、例えば、橋梁10、高速道路、トンネル、ダム、ビル等の構造物における、作業員の立ち入りが困難な検査面を撮像し、得られた画像から検査面の塩分濃度、ひび割れ、塗膜劣化等を検査する。撮像システム100は、例えば、橋梁10の側面、床版、橋脚12等の所定の検査面を検査する。本実施形態において、撮像システム100は、橋梁10の橋脚12の所定の検査面14を撮像し、得られた画像から、検査面14の塩分濃度を測定する場合を例に挙げる。
【0021】
無人航空機110は、小型の航空機である。無人航空機110は、ドローンとも呼ばれる。無人航空機110は、検査面14近傍に飛行可能である。無人航空機110は、後述する飛行制御部252によって飛行制御される。無人航空機110には、撮像ユニット120が搭載される。
【0022】
図2図3に示すように、撮像ユニット120は、広角カメラ210と、狭角カメラ220と、4つのレーザー照射部230と、保持部240と、中央制御部250とを含む。
【0023】
広角カメラ210は、検査面14の比較的広い範囲を撮像して広角画像を生成する。広角カメラ210は、例えば、一般的なデジタルカメラである。広角画像は、例えば、橋梁10の一部を構成する複数の指標S1~S3および検査面14が含まれる画像である。指標S1~S3については、後述する。
【0024】
狭角カメラ220は、検査面14の比較的狭い範囲を撮像して狭角画像を生成する。狭角カメラ220は、広角カメラ210よりも狭い撮像範囲を有する。狭角カメラ220の撮像範囲は、例えば、広角カメラ210の1/2以下である。狭角カメラ220は、高い解像度が要求されるため、撮像範囲が狭くなる。つまり、狭角カメラ220は、広角カメラ210とは異なり広範囲を撮像できない。狭角画像は、例えば、広角カメラ210の撮像範囲の一部を撮像することにより得られる画像である。狭角カメラ220は、例えば、ハイパースペクトルカメラである。
【0025】
レーザー照射部230は、検査面14に対してレーザー光を照射する。レーザー照射部230は、例えば、レーザーポインタで構成される。
【0026】
保持部240は、広角カメラ210、狭角カメラ220、および、4つのレーザー照射部230を、その位置関係が変化しないように一体的に保持する。つまり、保持部240は、広角カメラ210、狭角カメラ220、および、レーザー照射部230を固定する。また、保持部240は、無人航空機110に固定される。本実施形態において、保持部240は、例えば、広角カメラ210の光軸と、狭角カメラ220の光軸とが略平行となるように、広角カメラ210および狭角カメラ220を保持する。また、本実施形態において、保持部240は、4つのレーザー照射部230の位置関係が、例えば、狭角カメラ220の撮像範囲を規定する4隅、つまり、狭角画像の4隅の位置関係と略等しくなるように、4つのレーザー照射部230を保持する。
【0027】
中央制御部250は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成される。中央制御部250は、ROMからCPUを動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出す。中央制御部250は、プログラムやパラメータ等に基づき、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働して撮像システム100全体を管理および制御する。
【0028】
なお、本実施形態に係る中央制御部250の機能は複数の装置に分割されてもよく、複数の機能が1つの装置によって実現されてもよい。
【0029】
本実施形態において、中央制御部250は、飛行制御部252、撮像制御部254、位置特定部256、領域抽出部258、検査部260として機能する。
【0030】
飛行制御部252は、無人航空機110の飛行を制御する。撮像制御部254は、広角カメラ210、狭角カメラ220、および、レーザー照射部230の駆動を制御する。位置特定部256は、広角画像に基づいて、検査面14上の狭角画像の位置を特定する。領域抽出部258は、複数の狭角画像における、検査面14上の位置が同じ領域を抽出する。検査部260は、抽出された複数の領域に基づいて検査を行う。
【0031】
[撮像方法]
続いて、本実施形態に係る撮像システム100による撮像方法について説明する。図4は、本実施形態に係る撮像方法の処理の流れを示すフローチャートである。図4に示すように、本実施形態に係る撮像方法は、画像生成処理S110、位置特定処理S120、領域抽出処理S130、検査処理S140を実行する。以下、各処理について説明する。
【0032】
[画像生成処理S110]
図5は、広角画像212の一例を示す図である。図6は、狭角画像222の一例を示す図である。画像生成処理S110は、広角カメラ210によって広角画像212を生成し、狭角カメラ220によって狭角画像222を生成する処理である。
【0033】
画像生成処理S110では、まず、飛行制御部252が、橋脚12近傍を飛行するように無人航空機110を制御する。本実施形態において、飛行制御部252は、広角カメラ210によって生成される広角画像212に、複数の指標S1~S3が含まれ、狭角カメラ220によって生成される狭角画像222に各レーザー照射部230による照射点PA~PDが含まれるように無人航空機110をホバリングさせる。飛行制御部252は、狭角カメラ220による撮像範囲が、可能な限り同じ位置となるように無人航空機110をホバリングさせる。なお、指標S1~S3は、橋梁10の一部であって、その位置が変動せず、広角画像212上、他と識別可能な特徴的な部分である。指標S1~S3は、例えば、橋脚12の縁、角等である。
【0034】
撮像制御部254は、レーザー照射部230を制御して、検査面14に対してレーザー光を照射させる。そして、撮像制御部254は、広角カメラ210を制御して、広角画像212を生成させ、狭角カメラ220を制御して狭角画像222を生成させる。
【0035】
そうすると、図5に示すように、広角画像212には、指標S1~S3、および、各レーザー照射部230による照射点PA~PDが含まれることになる。
【0036】
一方、図6に示すように、狭角画像222には、指標S1~S3が含まれず、照射点PA~PDが含まれることとなる。なお、狭角画像222に指標S1~S3の一部が含まれる場合もある。
【0037】
本実施形態において、撮像制御部254は、広角カメラ210による広角画像212の生成タイミングと、狭角カメラ220による狭角画像222の生成タイミングとを同期させる。つまり、撮像制御部254は、広角カメラ210と狭角カメラ220とを同じタイミングで撮像させる。また、撮像制御部254は、広角カメラ210および狭角カメラ220を制御して、生成タイミングを同期させた広角画像212および狭角画像222を、異なるタイミングで複数生成させる。例えば、撮像制御部254は、60Hz(1枚/10秒)で、広角画像212および狭角画像222を生成させる。
【0038】
[位置特定処理S120]
図7は、位置特定処理S120を説明するための第1の図である。図8は、位置特定処理S120を説明するための第2の図である。なお、図7中、理解を容易にするために、橋梁10を破線で示す。
【0039】
図7に示すように、位置特定部256は、まず、広角画像212上の3つの指標S1~S3を基準点K1~K3として、広角画像212上において、座標軸を決定し、第1の画像座標系を設定する。例えば、位置特定部256は、広角画像212において、指標S1の中央に位置する画素(詳細には画素の中心)を基準点K1とし、指標S2の中央に位置する画素を基準点K2とし、指標S3の中央に位置する画素を基準点K3とする。そして、位置特定部256は、基準点K1を原点とし、基準点K1と基準点K2とを通る仮想線をX軸とし、基準点K1と基準点K3とを通る仮想線をY軸とした、第1の画像座標系(XY座標系)を広角画像212上に設定する。
【0040】
続いて、位置特定部256は、XY座標系における、照射点PA~PDそれぞれの座標を演算する。
【0041】
また、位置特定部256は、狭角画像222上において、座標軸を決定し、第2の画像座標系を設定する。例えば、図8に示すように、位置特定部256は、狭角画像222における照射点PAの中央の画素を原点とし、原点と、照射点PBの中央の画素とを通る仮想線をx軸とし、原点と、照射点PCの中央の画素とを通る仮想線をy軸とした、第2の画像座標系(xy座標系)を狭角画像222上に設定する。
【0042】
そして、位置特定部256は、xy座標系における照射点PA~PDそれぞれの座標を演算する。
【0043】
続いて、位置特定部256は、xy座標系における狭角画像222の照射点PA~PDのそれぞれの座標を、XY座標系における座標に変換する。
【0044】
位置特定部256は、例えば、ホモグラフィー変換行列を用いて、xy座標系における狭角画像222の照射点PA~PDの座標を、XY座標系における座標に変換する。具体的に説明すると、広角画像212のXY座標系における照射点PAの座標を(XA,YA)、照射点PBの座標を(XB,YB)、照射点PCの座標を(XC,YC)、照射点PDの座標を(XD,YD)とする。また、狭角画像222のxy座標系における照射点PA(原点)の座標を(0,0)、照射点PBの座標を(xmax,0)、照射点PCの座標を(0,ymax)、照射点PDの座標を(xmax,ymax)とする。そして、下記式(1)~(4)から8つの連立方程式を作成し、h00、h01、h02、h10、h11、h12、h20、および、h21の8つの定数を求める。これにより、式(5)のホモグラフィー変換行列(H)を用いて、xy座標系における狭角画像222の任意の画素の座標(xE,yE)を、XY座標系の座標(XE,YE)に変換することができる。
【0045】
【数1】
【0046】
このようにして、位置特定部256は、まず、広角画像212における予め定められた3以上の基準点K1~K3に基づいて、XY座標系を設定する。そして、位置特定部256は、広角画像212上の照射点PA~PDの位置と、狭角画像222上の照射点PA~PDの位置との相対関係に基づいて、広角画像212における狭角画像222の位置関係を把握する。これにより、位置特定部256は、検査面14上の狭角画像222の位置を、XY座標系の座標で特定する。
【0047】
なお、位置特定部256は、狭角画像222と同期した生成タイミングで生成された広角画像212に基づいて、検査面14上の狭角画像222の位置を特定する。
【0048】
[領域抽出処理S130]
図4に戻って説明すると、領域抽出部258は、複数の狭角画像222において、検査面14上の位置が同じ領域を抽出する。本実施形態において、領域抽出部258は、XY座標系において同じ座標を有する画素を、複数の狭角画像222から抽出する。例えば、領域抽出部258は、1枚目の狭角画像222と、2枚目の狭角画像222において、座標が重複する画素の領域を特定する。そして、1枚目と2枚目とで重複した画素の領域と座標が重複する画素の領域を3枚目の狭角画像222から抽出する。このように、1枚目からn-1枚目までにおいて座標が重複する画素の領域と、当該領域と座標が重複する画素の領域をn枚目の狭角画像222から抽出する。
【0049】
[検査処理S140]
検査部260は、領域抽出部258によって抽出された領域に基づいて検査を行う。例えば、検査部260は、抽出された、同じ座標を有する複数の画素に対し、波長ごとにフーリエ変換する。そして、検査部260は、塩分を示す波長(例えば、2266nm)の強度に基づき、各画素の塩分量を検出する。
【0050】
なお、検査部260は、抽出された、同じ座標を有する複数の画素の情報を積算し、当該画素の積算数で除算して、積算平均を算出し、ひび割れ、塗膜劣化等を検査してもよい。
【0051】
以上説明したように、本実施形態に係る撮像システム100は、複数の指標S1~S3が含まれる広角画像212を生成する広角カメラ210と、高い解像度を要求されるため撮像範囲が狭い狭角カメラ220と、レーザー照射部230と、を一体的に保持する保持部240を備える。これにより、検査面14における、広角画像212と、狭角画像222(照射点PA~PD)との位置関係を不変とすることができる。
【0052】
そして、本実施形態に係る撮像システム100は、広角画像212に含まれる複数の指標S1~S3に基づいて、XY座標系を決定し、広角画像212の各画素の座標を設定する。また、撮像システム100は、広角画像212に含まれる照射点PA~PDの座標、すなわち、狭角画像222の位置を、XY座標系の座標に変換することができる。したがって、撮像システム100は、コンクリートで構成される、または、一様に塗料が塗布される、指標を含まない検査面14における、狭角カメラ220の撮像範囲の位置を特定することが可能となる。
【0053】
このため、撮像システム100は、無人航空機110によって狭角カメラ220が動いた場合であっても、検査面14における狭角カメラ220の撮像範囲の位置を特定することができ、複数の狭角画像222から、検査面14において同じ位置となる領域(画素)を抽出することが可能となる。したがって、撮像システム100は、複数の狭角画像222における同じ位置の領域に基づいて、検査面14の塩分濃度、ひび割れの経時変化、塗膜劣化の経時変化等を検査することができる。
【0054】
また、上記のように、撮像システム100の撮像制御部254は、広角カメラ210による広角画像212の生成タイミングと、狭角カメラ220による狭角画像222の生成タイミングとを同期させる。これにより、撮像システム100は、ホバリング中の無人航空機110の振動によって生じる、広角カメラ210による撮像範囲と、狭角カメラ220による撮像範囲との位置ズレを抑制することができる。したがって、撮像システム100は、狭角画像222の位置を高精度に特定することができる。
【0055】
また、上記のように、撮像システム100の撮像ユニット120は、無人航空機110に搭載される。したがって、撮像システム100は、作業員の立ち入りが困難な構造物の検査が可能となる。
【0056】
[変形例]
図9は、変形例に係る撮像システム300の機能ブロック図である。図9において、破線の矢印は、信号の流れを示す。
【0057】
図9に示すように、変形例に係る撮像システム300は、無人航空機110と、撮像ユニット320と、広角カメラ210とを含む。なお、上記撮像システム100と実質的に等しい構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0058】
変形例において、無人航空機110に搭載される撮像ユニット320は、狭角カメラ220と、4つのレーザー照射部230と、保持部340と、中央制御部250とを含む。
【0059】
そして、保持部340は、狭角カメラ220、および、4つのレーザー照射部230を、その位置関係が変化しないように一体的に保持する。
【0060】
また、変形例において、広角カメラ210は、無人航空機110に搭載されず、橋梁10の近傍に設置される。なお、変形例において、広角カメラ210は、複数の指標S1~S3が含まれる広角画像212を生成できる位置に固定される。
【0061】
変形例において、飛行制御部252は、広角画像212に照射点PA~PDが含まれるように、無人航空機110をホバリングさせる。
【0062】
変形例に係る撮像システム300は、高い解像度を要求されるため撮像範囲が狭い狭角カメラ220と、レーザー照射部230とを一体的に保持する保持部340を備える。これにより、撮像システム300は、広角画像212において、狭角カメラ220の撮像範囲を照射点PA~PDによって示すことができる。
【0063】
そして、変形例に係る撮像システム300は、広角画像212に含まれる照射点PA~PDの座標を、狭角画像222の4隅の座標として、狭角画像222の位置を、XY座標系の座標に変換することができる。したがって、撮像システム300は、コンクリートで構成される、または、一様に塗料が塗布される、指標を含まない検査面14における、狭角カメラ220の撮像範囲の位置を特定することが可能となる。
【0064】
以上、添付図面を参照しながら実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0065】
例えば、上記実施形態において、撮像システム100が、レーザー照射部230を備える場合を例に挙げた。しかし、撮像システム100の保持部240が、広角カメラ210および狭角カメラ220を一体的に保持していれば、レーザー照射部230を省略することもできる。保持部240が、広角カメラ210および狭角カメラ220を一体的に保持することにより、広角カメラ210における撮像範囲と、狭角カメラ220の撮像範囲との位置関係を不変とすることができる。このため、撮像システム100は、レーザー照射部230を備えずとも、検査面14における狭角カメラ220の撮像範囲の位置を特定することが可能となる。
【0066】
また、上記実施形態および変形例において、撮像システム100、300が、4つのレーザー照射部230を備える場合を例に挙げた。しかし、撮像システム100、300は、3つ、または、5つ以上のレーザー照射部230を備えてもよい。
【0067】
また、上記実施形態において、位置特定部256が、広角画像212における3つの基準点K1~K3に基づいて、第1の画像座標系を設定する場合を例に挙げた。しかし、位置特定部256は、4以上の基準点に基づいて、第1の画像座標系を設定してもよい。
【0068】
また、上記実施形態において、撮像制御部254が、広角カメラ210による広角画像212の生成タイミングと、狭角カメラ220による狭角画像222の生成タイミングとを同期させる場合を例に挙げた。しかし、撮像制御部254は、広角カメラ210による広角画像212の生成タイミングと、狭角カメラ220による狭角画像222の生成タイミングとを同期させずともよい。
【0069】
また、上記実施形態において、撮像システム100が、無人航空機110を備える場合を例に挙げた。しかし、撮像システムは、無人航空機110を備えずともよい。この場合、撮像システムの撮像ユニット120は、検査面14が移動する場合であっても、検査面14における狭角カメラ220の撮像範囲の位置を特定することができる。
【0070】
また、撮像システム100は、広角画像212において基準点を設定可能な指標を有する構造物であれば、どのような構造物でも検査することができる。
【0071】
本開示は、例えば、持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することができる。
【符号の説明】
【0072】
14 検査面
100 撮像システム
110 無人航空機
210 広角カメラ
212 広角画像
220 狭角カメラ
222 狭角画像
230 レーザー照射部
240 保持部
254 撮像制御部
256 位置特定部
258 領域抽出部
260 検査部
300 撮像システム
340 保持部
図1
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図9