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特開2024-178767断熱構造及び断熱構造の設計支援システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178767
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】断熱構造及び断熱構造の設計支援システム
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/76 20060101AFI20241218BHJP
   G06F 30/20 20200101ALI20241218BHJP
   G06F 30/13 20200101ALI20241218BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20241218BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
E04B1/76 500Z
G06F30/20
G06F30/13
F16F15/02 L
E04H9/02 331A
E04H9/02 ESW
E04H9/02 331E
E04B1/76 400C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097157
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】513002441
【氏名又は名称】株式会社サドル
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】清水 扶
(72)【発明者】
【氏名】丹治 春一郎
(72)【発明者】
【氏名】菓子 進
(72)【発明者】
【氏名】最上 利美
(72)【発明者】
【氏名】森 洋一
(72)【発明者】
【氏名】奥山 誠司
【テーマコード(参考)】
2E001
2E139
3J048
5B146
【Fターム(参考)】
2E001DD01
2E001EA01
2E001FA21
2E001GA11
2E001HF11
2E139AA01
2E139AC10
2E139AC26
2E139CA02
2E139CC02
3J048AA01
3J048BA08
3J048BB08
3J048DA01
3J048EA38
5B146AA04
5B146DJ01
5B146EA01
(57)【要約】
【課題】冷却による応力の発生や変形を抑制することができる断熱構造及び断熱構造の設計支援システムを提供する。
【解決手段】冷蔵倉庫10における下部基礎11に配置され、フーチング12aを介して、上部構造体を支持する免震装置18と、上部構造体10aの下面に配置された第1断熱材と、を備えた断熱構造において、下部基礎11の温度と上部構造体10aの温度とに応じて、免震装置18の温度条件を満たす配置形態で、フーチング12aの周囲に第2断熱材を設けた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物における下部構造体に配置され、コンクリート部材を介して、上部構造体を支持する免震装置と、
前記上部構造体の下面に配置された第1断熱材と、を備えた断熱構造において、
前記下部構造体の温度と前記上部構造体の温度とに応じて、前記免震装置の温度条件を満たす配置形態で、前記コンクリート部材の周囲に第2断熱材を設けたことを特徴とする断熱構造。
【請求項2】
前記第2断熱材の配置形態は、前記第1断熱材の厚さよりも薄くした形態であることを特徴とする請求項1に記載の断熱構造。
【請求項3】
前記第2断熱材の配置形態は、前記免震装置に近づくにつれて厚さを薄くした形態であることを特徴とする請求項1に記載の断熱構造。
【請求項4】
熱伝導シミュレーションを行なう制御装置を備えた断熱構造の設計支援システムであって、
前記制御装置が、
建物における下部構造体に配置され、コンクリート部材を介して、上部構造体を支持する免震装置と、前記上部構造体の下面に配置された第1断熱材と、を備えた前記建物の3次元モデルを取得し、
前記上部構造体及び前記下部構造体の温度を取得し、
前記コンクリート部材の周囲に配置する第2断熱材の配置形態を変更して、前記免震装置の温度を算出する熱伝導シミュレーションを実行し、
前記熱伝導シミュレーションにより、前記第2断熱材の配置形態を決定することを特徴とする断熱構造の設計支援システム。
【請求項5】
前記制御装置が、
前記建物が建設される地域の気温情報を取得し、
前記気温情報に基づいて、前記下部構造体の温度を特定することを特徴とする請求項4に記載の断熱構造の設計支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、免震装置を備えた冷蔵倉庫等の断熱構造及び断熱構造の設計支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍品や冷蔵品は、10℃以下の低温に冷却した冷蔵倉庫で保管される。この冷蔵倉庫においても、下部構造体と上部構造体との間に免震装置を設けることがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-105073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
倉庫内を冷却すると、冷気により建物の部材が低温となるため、各部材が収縮する。特許文献1の倉庫では、上部構造体の地中梁(上部基礎)の上側に断熱層を設けているため、上部構造体の上方と下方である上部基礎とで、冷却による収縮率が異なる。この場合、収縮率の相違から、建物の上方と下方とで歪が生じる。ここで、上部構造体の上方と下方とで均一に収縮するように断熱した場合、上部基礎が低温になるため、免震装置の冷却が顕著になる。免震装置が必要以上に冷却されると、免震層における免震機能を発揮できなくなる。一方、免震装置周囲の断熱が十分でないと、冷蔵倉庫の内部空間を目的の温度に冷却することができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する断熱構造は、建物における下部構造体に配置され、コンクリート部材を介して、上部構造体を支持する免震装置と、前記上部構造体の下面に配置された第1断熱材と、を備える。そして、前記下部構造体の温度分布と、前記上部構造体の温度分布に応じて、前記免震装置の温度条件を満たす配置形態で、前記コンクリート部材の周囲に第2断熱材を設ける。
【0006】
また、上記課題を解決する断熱構造の設計支援システムは、熱伝導シミュレーションを行なう制御装置を備える。そして、前記制御装置が、建物における下部構造体に配置され、コンクリート部材を介して、上部構造体を支持する免震装置と、前記上部構造体の下面に配置された第1断熱材と、を備えた前記建物の3次元モデルを取得し、前記上部構造体及び前記下部構造体の温度を取得し、前記コンクリート部材の周囲に配置する第2断熱材の配置形態を変更して、前記免震装置の温度を算出する熱伝導シミュレーションを実行し、前記熱伝導シミュレーションにより、前記第2断熱材の配置形態を決定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、冷却による免震層への影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態における建物構造を有する建物の説明図である。
図2】実施形態における建物構造の要部の断面図である。
図3】実施形態における建物構造の要部の断面図である。
図4】実施形態における設計支援システムの説明図である。
図5】実施形態における処理手順の説明図である。
図6】実施形態における温度分布の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1図6を用いて、断熱構造及び断熱構造の設計支援システムを具体化した一実施形態を説明する。ここでは、10℃以下の低温に保存される空間を有する冷蔵倉庫として、マイナス25℃前後(-20℃~-30℃未満)となるF1級の冷蔵倉庫を想定する。この冷蔵倉庫として、例えば、約350m×約100mの大きさの3階建てで建設される場合を想定する。更に、この冷蔵倉庫は、下部基礎と上部基礎との間に免震装置を設けた免震層を有する免震構造で構成されている。
【0010】
図1は、冷蔵倉庫10の構成を説明する概略断面図であり、図2及び図3は、冷蔵倉庫10の要部(1階床スラブ及び基礎)の縦断面図である。図2は、紙面に直交する方向に延在する上部大梁12bにおける断面図、図3は、冷蔵倉庫10の内側に配置された柱部材22の端部における断面図である。
【0011】
図1に示すように、冷蔵倉庫10は、上部構造体10aにおいて、約マイナス25℃に冷却して冷凍品等を保管する保管空間を有する建物である。この冷蔵倉庫10は、基礎F1、1階床スラブ15、複数の柱部材21,22、2階の床スラブ27、3階の床スラブ28及び屋上スラブ29を有する。ここで、基礎F1の上には、柱部材21,22が立設されるとともに、柱部材21,22の間に1階床スラブ15が設けられている。なお、柱部材21は、冷蔵倉庫10の外周に配置された柱を構成する部材、柱部材22は、冷蔵倉庫10の内側に配置された柱を構成する部材を示している。
【0012】
図2に示すように、基礎F1は、下部基礎11(下部構造体)と上部基礎12(上部構造体)とを備える。下部基礎11は、冷蔵倉庫10の柱部材21,22の直下において上方に突出した設置部11aを備える。設置部11aは、水平断面が略長方形状を有している。
【0013】
上部基礎12は、フーチング12a(コンクリート部材)及び上部大梁12b,12cを有する。
フーチング12aは、設置部11aに対向するように下方に突出して設けられている。フーチング12aは、設置部11aと同様に、水平断面が略長方形状を有している。設置部11a及びフーチング12aの間のそれぞれには、免震装置18が設けられている。本実施形態では、免震装置18として、積層ゴム支承の免震装置を用いる。
【0014】
上部大梁12b,12cは、冷蔵倉庫10の躯体を支持する。ここで、上部大梁12b,12cは、それぞれ、紙面方向に延在する部分、図の左右方向に延在する部分を示している。これら上部大梁12b,12cは、フーチング12aの中心軸上に延在するように設けられている。
【0015】
更に、上部基礎12の側面及び底面は、免震装置18が当接する部分以外、断熱材で覆われている。具体的には、上部基礎12のフーチング12aの側面の外周には、側面断熱材31が配置されている。ここで、免震装置18と当接するフーチング12aの下面には、断熱材は配置されていない。
【0016】
上部大梁12b,12cの外周には、断熱材32,33がそれぞれ配置されている。具体的には、上部大梁12bの側面及び底面には、一続きの側面断熱材32a及び底面断熱材32bが設けられている。更に、上部大梁12cの側面及び底面には、一続きの側面断熱材33a及び底面断熱材33bが設けられている。これら断熱材32,33としては、例えば、スタイロフォーム(登録商標)等の押出法発泡ポリスチレンフォームを用いることができる。また、硬質ウレタンフォームやロックウール等の断熱材料を吹き付けたりすることも可能である。
なお、上部大梁12cの下面を覆う底面断熱材33bは、フーチング12aの側面断熱材31とも接続している。
【0017】
上部基礎12の上面には、1階床スラブ15が一体的に形成されている。
1階床スラブ15は、スラブ本体16と、床下防熱部材17とを備える。
【0018】
図3に示すように、スラブ本体16は、鉄筋コンクリートにより構成され、床本体部16a、接続部16b及び柱周辺部16cを有する。床本体部16aは、1階床スラブ15のほぼ全面を構成する部分であり、その上面が1階の床面になる。柱周辺部16cは、柱部材22の周辺に位置し、床本体部16aよりも低い位置に形成される。接続部16bは、床本体部16aと柱周辺部16cとを接続する段差部である。
【0019】
床下防熱部材17は、スラブ本体16の下側(下面や側面)を覆うように配置された断熱材である。具体的には、床下防熱部材17は、床本体部16aの下面を覆う第1下面部17a、接続部16bの側面を覆う側面部17b、接続部16bの下面及び柱周辺部16cの下面を覆う第2下面部17cを備える。この床下防熱部材17は、断熱材32,33と同様な材料で構成される。
【0020】
柱部材22の下部の外周及びその周囲の1階床スラブ15は、断熱材40に覆われている。この断熱材40は、断熱材32,33と同じ材料で構成される。断熱材40は、柱部材22の下部の側面の外周を覆う柱側面断熱材41と、柱部材22の周囲の1階床スラブ15を覆う床上断熱材42とを備える。柱側面断熱材41は、例えば、1階床スラブ15の上面から約2mの高さを有する。本実施形態の床上断熱材42は、1階床スラブ15のスラブ本体16の柱周辺部16cの上に載置して形成されている。この床上断熱材42は、水平断面の形状が、例えば、柱部材22を中心とする正方形状で構成され、柱部材22から約2mの大きさで広がっている。
【0021】
更に、断熱材40の床上断熱材42の上には、押さえコンクリート部材45が形成されている。この押さえコンクリート部材45は、1階床スラブ15のスラブ本体16の床本体部16aの上面と面一になる厚さで構成される。更に、この押さえコンクリート部材45は、柱部材22側の周縁部45aが少し高くなっており、断熱材40の柱側面断熱材41の最下部を押さえ付けている。
【0022】
(ハードウェア構成の説明)
図4を用いて、設計支援システムH10を構成する情報処理装置のハードウェア構成を説明する。設計支援システムH10は、通信装置H11、入力装置H12、表示装置H13、記憶装置H14、制御装置H15を備える。なお、このハードウェア構成は一例であり、他のハードウェアにより実現することも可能である。
【0023】
通信装置H11は、他の装置との間で通信経路を確立して、データの送受信を実行するインターフェースであり、例えばネットワークインタフェースや無線インターフェース等である。入力装置H12は、各種情報の入力を受け付ける装置であり、例えばマウスやキーボード等である。表示装置H13は、各種情報を表示するディスプレイ等である。
【0024】
記憶装置H14は、各処理の各種機能を実行するためのデータや各種プログラムを格納する記憶装置である。記憶装置H14の一例としては、ROM、RAM、ハードディスク等がある。
【0025】
制御装置H15は、記憶装置H14に記憶されるプログラムやデータを用いて、各処理を制御する。制御装置H15の一例としては、例えばCPUやMPU等がある。この制御装置H15は、ROM等に記憶されるプログラムをRAMに展開して、各処理のための各種プロセスを実行する。
【0026】
(設計支援システムH10)
設計支援システムH10は、建物の設計を支援するコンピュータシステムである。
制御装置H15は、後述する処理(管理段階、設計処理段階、解析段階等を含む処理)を行なう。このための処理プログラムを実行することにより、制御装置H15は、管理部H151、設計処理部H152、解析部H153等として機能する。
【0027】
管理部H151は、設計処理部H152、解析部H153を管理する。この管理部H151は、フーチング12a周囲に配置する側面断熱材31について、複数の断熱層候補(配置形態)を保持する。複数の断熱層候補としては、例えば、異なる厚さで構成された断熱層を用いる。
【0028】
設計処理部H152は、BIM(Building Information Modeling)アプリケーションによりBIMモデルを作成する処理を実行する。
解析部H153は、設計処理部H152によって生成された建物のBIMモデルを用いて、熱伝導シミュレーションを行なう。
【0029】
記憶装置H14には、設計処理部H152により作成されたBIMモデルが記録される。このBIMモデルは、3次元CADを用いて、建築物の設計を行なった場合に記録される。BIMモデルは、プロジェクトコード、固有コード、要素モデル、配置、属性を含んで構成される。
【0030】
プロジェクトコードは、各プロジェクト(冷蔵倉庫10)を特定するための識別子である。
固有コードは、このプロジェクトで用いる要素(部品)を特定するための識別子である。
【0031】
要素モデルは、この要素(部品)の3次元モデル(オブジェクト)である。
配置は、各要素モデルを配置する座標に関する情報である。
属性は、この要素の属性情報(仕様、素材等)である。この属性情報を用いることにより、素材から熱伝導率を取得して、要素モデルにおける温度分布を算出する熱伝導シミュレーションを行なうことができる。
【0032】
(冷蔵倉庫10の設計方法)
次に、上述した冷蔵倉庫10の設計方法について説明する。
まず、設計支援システムH10を用いて、保管空間の設計を行なう(ステップS1)。ここでは、管理部H151を用いて、設計処理部H152を起動する。そして、入力装置H12を用いて、設計処理部H152により、保管空間を構成する冷蔵倉庫10(柱、梁、壁、床等)のBIMモデルを生成する。更に、設計処理部H152を用いて、保管空間が所望の冷却温度に維持できる素材や厚さで、上部構造体10aに用いる第1断熱材(床下防熱部材17、断熱材40等)のBIMモデルを設定する。そして、設計処理部H152は、作成したBIMモデルを記憶装置H14に記録する。
【0033】
次に、設計支援システムH10は、フーチング周囲の断熱層を配置する(ステップS2)。ここでは、フーチング12a周囲の側面断熱材31(第2断熱材)は、上部構造体10aの断熱層と同じ素材を用いる場合を想定する。この場合、管理部H151は、フーチング12a周囲の側面断熱材31について、シミュレーションに用いる断熱層候補を設定する。断熱層候補としては、同じ材質で、異なる断熱層の厚さ候補を用いる。ここで、フーチング12aが冷え過ぎないように、側面断熱材31の厚さを第1断熱材(床下防熱部材17、断熱材40等)より薄くしておく。そして、管理部H151は、設計処理部H152を用いて、断熱層候補で、フーチング12a周囲の側面断熱材31の要素モデルを、記憶装置H14に記録されたBIMモデルに配置する。そして、管理部H151は、このBIMモデルを解析対象として特定する。
【0034】
次に、設計支援システムH10は、冷却時シミュレーションを行なう(ステップS3)。具体的には、管理部H151は、外気温、下部基礎の温度(常温)を季節に応じて取得する。この場合、管理部H151は、入力装置H12を用いて入力された外気温を取得する。
【0035】
次に、管理部H151は、解析部H153を用いて、解析対象において、保管空間の冷却温度、季節毎の外気温、構造体・断熱材の熱伝導率を用いて、上部構造体10a、フーチング12aの温度分布を算出する。この場合、解析部H153は、熱伝導シミュレーションにより、フーチング12aから上部構造体への熱伝播を解析して、温度分布から、免震装置18の冷却温度を算出する。そして、解析部H153は、断熱層候補に関連付けて、季節毎の解析結果(温度分布)、免震装置18の冷却温度を仮記憶する。
【0036】
そして、管理部H151は、すべての断熱層候補について、フーチング周囲の断熱層の配置(ステップS2)、冷却時シミュレーション(ステップS3)を行なった後で、フーチング周囲の断熱層を決定する(ステップS4)。ここでは、管理部H151は、入力装置H12を用いて入力された免震装置18の温度条件を用いる。そして、管理部H151は、解析結果において、保管空間の冷却温度を維持できるとともに、すべての季節において、免震装置18の温度条件を満たす断熱層候補を特定し、表示装置H13に出力する。
【0037】
(作用)
フーチング周囲の断熱層を、個別に設計することにより、免震装置の冷却を抑制することができる。
【0038】
図6に示すように、保管空間を構成するスラブ本体16を冷却した場合にも、スラブ本体16とフーチング12aを介して接触する免震装置18の過冷却を抑制することができる。
【0039】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、1階床スラブ15のスラブ本体16の下側を、床下防熱部材17で覆う。これにより、1階床スラブ15は、2階や3階の床スラブ(27,28)と同様に冷却される。このため、免震装置18上の冷蔵倉庫10の最下階の1階床スラブ15も、上層階の床スラブ(27、28)と同様に温度収縮するので、冷蔵倉庫10の躯体に過大な応力が生じない。
【0040】
(2)本実施形態では、設計支援システムH10は、フーチング周囲の断熱層の配置(ステップS2)、冷却時シミュレーション(ステップS3)を行なった後で、フーチング周囲の断熱層を決定する(ステップS4)。これにより、免震装置18の機能を維持できる断熱層を設定できる。そして、側面断熱材31の厚さを第1断熱材(床下防熱部材17、断熱材40等)より薄くすることにより、フーチング12aが冷え過ぎを抑制して、免震装置18の機能を維持できる。
【0041】
(3)本実施形態では、設計支援システムH10は、外気温、下部基礎の温度(常温)を季節に応じて取得する。これにより、年間を通じて、免震装置18の機能を維持できるフーチング周囲の断熱層を決定できる。
【0042】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、断熱層候補として、同じ材質で異なる厚さの断熱層を用いる。断熱層候補として、フーチング12a周囲の断熱層の厚さを上方から下方に向けて薄くするようにしてもよい。例えば、上方は、側面断熱材31の厚さを第1断熱材(床下防熱部材17、断熱材40等)と同じ厚さにしておき、下方になるに従って単調減少させる。この場合には、連続的に厚さを変更してもよいし、上段と下段のように段階的に変更してもよい。例えば、厚さが異なるシート状の断熱材を用いたり、断熱材の吹き付け量を変更したりする。
【0043】
・上記実施形態では、管理部H151は、入力装置H12を用いて入力された外気温を取得する。これに代えて、公開された天候情報サイトから外気温(気温情報)を取得してもよい。この場合、管理部H151は、冷蔵倉庫10が建設される地域を特定し、通信装置H11を用いて、この地域の外気温を取得する。
【0044】
・上記実施形態では、管理部H151は、入力装置H12を用いて入力された免震装置18の温度条件を用いる。これに代えて、免震装置18の温度条件をBIMモデルから取得してもよい。この場合には、記憶装置H14に記録された免震装置18のBIMモデルの要素として、使用可能な温度条件を記録しておく。そして、管理部H151は、記憶装置H14に記録されたBIMモデルの属性情報から、免震装置18の温度条件を取得する。この場合には、設置場所によって異なる種類の免震装置18の温度条件に応じて、フーチング周囲の断熱層を決定できる。
【0045】
・上記実施形態では、冷蔵倉庫10の上部基礎12と下部基礎11の間に配置される免震装置18として、積層ゴム支承の免震装置を用いた。冷蔵倉庫10に設ける免震装置18は、上部基礎12の水平方向の移動を許容できるものであれば、積層ゴム支承に限られず、例えば、すべり支承等を用いてもよい。この場合も、免震装置18毎に使用可能な温度条件を特定する。
【符号の説明】
【0046】
H10…設計支援システム、H11…通信装置、H12…入力装置、H13…表示装置、H14…記憶装置、H15…制御装置、H151…管理部、H152…設計処理部、H153…解析部、F1…基礎、10…冷蔵倉庫、11…下部基礎、11a…設置部、12…上部基礎、12a…フーチング、12b,12c…上部大梁、15…1階床スラブ、16…スラブ本体、16a…床本体部、16b…接続部、16c…柱周辺部、17…床下防熱部材、17a…第1下面部、17b…側面部、17c…第2下面部、18…免震装置、21,22…柱部材、27,28…床スラブ、29…屋上スラブ、31,32a,33a…側面断熱材、32b,33b…底面断熱材、32,33,40…断熱材、41…柱側面断熱材、42…床上断熱材、45…押さえコンクリート部材、45a…周縁部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6