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特開2024-178769プレート取付装置及びプレートの取付方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178769
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】プレート取付装置及びプレートの取付方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/16 20060101AFI20241218BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
E04G21/16
E04B1/58 503G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097159
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】西田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】山田 弥慶
【テーマコード(参考)】
2E125
2E174
【Fターム(参考)】
2E125AA13
2E125AB01
2E125AC15
2E125AG03
2E125AG12
2E125AG45
2E125BB02
2E125BB22
2E125BD01
2E125BE06
2E125CA05
2E125EA33
2E174DA32
(57)【要約】
【課題】上部フランジ及び下部フランジのスプライスプレートの取り付け作業の効率を向上できるプレート取付装置を提供する。
【解決手段】プレート取付装置1は、梁材Bに対し、梁材同士を連結するプレートPを取り付けるために用いられる。プレート取付装置1は、上下方向に長尺な基台2と、基台2の下方部分に取り付けられ、梁材Bの下部フランジF1に取り付ける下プレートP1を支持し、下プレートP1の水平位置を調整するための下部調整ユニット3と、基台2の上方部分に取り付けられ、梁材Bの上部フランジF2に取り付ける上プレートP2を支持し、上プレートP2の高さ位置を調整するための上部調整ユニット4と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
梁材に対し、梁材同士を連結するプレートを取り付けるために用いられるプレート取付装置であって、
上下方向に長尺な基台と、
前記基台の下方部分に取り付けられ、前記梁材の下部フランジに取り付ける下プレートを支持し、前記下プレートの水平位置を調整可能な下部調整ユニットと、
前記基台の上方部分に取り付けられ、前記梁材の上部フランジに取り付ける上プレートを支持し、前記上プレートの高さ位置を調整可能な上部調整ユニットと、を備えることを特徴とするプレート取付装置。
【請求項2】
前記下部調整ユニットは、前記基台に対して昇降するリフト部材と、前記リフト部材に対して水平方向に移動可能に設けられ、前記下プレートを載置する載置部材と、を有し、
前記上部調整ユニットは、前記基台に対して昇降する吊り部材と、前記吊り部材に取り付けられ、前記上プレートを保持する保持部材と、を有することを特徴とする請求項1に記載のプレート取付装置。
【請求項3】
前記載置部材は、前記下プレートを載置する台座部と、前記リフト部材に対して前記台座部を水平方向に移動可能な移動部と、を有し、
前記移動部は、前記台座部に取り付けられるキャスタであることを特徴とする請求項2に記載のプレート取付装置。
【請求項4】
前記リフト部材は、前記基台に固定される固定部と、前記載置部材を載置するテーブル部と、前記固定部に対して前記テーブル部を昇降させる昇降部と、を有し、
前記テーブル部は、前記テーブル部の上面から上方に突出し、前記移動部を水平方向において囲む枠状ストッパを有し、
前記移動部は、水平方向において前記枠状ストッパに囲まれた枠内を移動可能であることを特徴とする請求項3に記載のプレート取付装置。
【請求項5】
前記リフト部材は、上下方向に貫通する第一環状部を有し、
前記載置部材は、上面視において前記第一環状部に重なる位置に設けられ、上下方向に貫通する第二環状部を有し、
前記下部調整ユニットは、前記第一環状部及び前記第二環状部を貫通し、前記リフト部材に対する前記載置部材の水平移動を規制するロック部材を有することを特徴とする請求項2に記載のプレート取付装置。
【請求項6】
前記保持部材は、上下方向に延びて前記上プレートに形成された貫通孔に挿通可能な挿通部と、前記挿通部の下端部に回動可能に取り付けられる回動部と、を有し、
前記回動部は、前記挿通部に沿って延びて前記上プレートに形成された前記貫通孔に挿通される挿通状態と、前記挿通状態から前記挿通部に対して回動して前記上プレートを下方から保持する保持状態と、に切り替え可能であることを特徴とする請求項2に記載のプレート取付装置。
【請求項7】
前記基台は、前記下部調整ユニットを支持するベース部材と、前記ベース部材から上方に延びる支柱部材と、前記支柱部材の上端部に設けられる天井部材と、前記ベース部材に取り付けられ、前記基台を走行させる走行部材と、を有し、
前記吊り部材は、電動バランサであって、前記天井部材に取り付けられ、
前記支柱部材の上下方向における中間部分には、前記電動バランサの電源を支持するための電源支持部が設けられることを特徴とする請求項2に記載のプレート取付装置。
【請求項8】
請求項2に記載のプレート取付装置を用いたプレートの取付方法であって、
前記保持部材によって前記上プレートを保持する保持工程と、
前記吊り部材によって前記上プレートを吊り上げる吊り上げ工程と、
前記梁材の前記上部フランジに前記上プレートを取り付ける上プレート取付工程と、
前記載置部材に前記下プレートを載置する載置工程と、
前記載置部材によって前記下プレートの水平位置を調整する下部位置調整工程と、
前記梁材の前記下部フランジに前記下プレートを取り付ける下プレート取付工程と、を含むことを特徴とするプレートの取付方法。
【請求項9】
前記載置工程では、前記下部フランジの下側に取り付けられる下側下プレートを前記載置部材に載置し、前記下部フランジの上側に取り付けられる上側下プレートを、スペーサを介して前記下側下プレートよりも上方に載置し、
前記下部位置調整工程では、前記下側下プレート及び前記上側下プレートが前記スペーサにより上下方向において離間した状態で、前記載置部材を移動させることで、前記下側下プレート及び前記上側下プレートの水平位置を調整することを特徴とする請求項8に記載のプレートの取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレート取付装置及びプレートの取付方法に係り、特に、梁材に対し梁材同士を連結するプレートを取り付けるために用いられるプレート取付装置及びプレートの取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設現場において複数の梁材の端部同士を接合する作業が行われている。梁材は、例えばウェブの上下にフランジが設けられたH形鋼であって、H形鋼に対してスプライスプレートを架け渡してボルト締めすることで、梁材の端部同士が接合される。
一般に、梁材は、工場において、接合する一方のH形鋼の上下のフランジに、スプライスプレートを取り付けた状態(仮止めの状態)とされる。そして、梁材は、工場から建設現場へ搬入され、建設現場において柱に接合される、又は梁材同士が接合される。
【0003】
工場においてスプライスプレートを取り付ける作業を行うとき、作業者は、梁材のフランジ孔の位置に合わせるように、スプライスプレートの取付孔の位置を調整する。そして、作業者は、スプライスプレートを片手で支持した状態で、フランジ孔及び取付孔にボルトを挿通し、ボルトとナットによって締結することで、スプライスプレートをフランジに取り付け、仮止めの状態とする。
このように、作業者は、スプライスプレートを片手で支持した状態で、スプライスプレートを梁材のフランジに取り付けるため、作業効率が低下する。
【0004】
そこで作業効率の改善を図るため、特許文献1では、スプライスプレートの取り付け治具が提案されている。スプライスプレート取り付け治具では、下部フランジの上側に添プレートを載置し、2本のスプライスプレート支持棒にスプライスプレートを載置することで、スプライスプレート及び添プレートを支持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-012791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、建設現場で用いられるH形鋼が大型化している。H形鋼の大型化に伴い、スプライスプレートの大きさ及び重量も拡大している。下部フランジに重量物であるスプライスプレートを取り付ける際は、台車で下部フランジの近傍までスプライスプレートを搬送し、スプライスプレートを支持した状態で取付作業をする必要があった。また、上部フランジに重量物であるスプライスプレートを取り付ける際は、クレーン作業が必要となる。クレーン作業は、移動や玉掛け等の作業が発生するため、作業効率が低下するおそれがあった。
このように、スプライスプレートの大型化によって、下部フランジ及び上部フランジにスプライスプレートを取り付ける作業において、作業効率の向上が求められていた。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、上部フランジ及び下部フランジに対するプレートの取り付け作業の効率を向上できるプレート取付装置及びプレートの取付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、本発明のプレート取付装置によれば、梁材に対し、梁材同士を連結するプレートを取り付けるために用いられるプレート取付装置であって、上下方向に長尺な基台と、前記基台の下方部分に取り付けられ、前記梁材の下部フランジに取り付ける下プレートを支持し、前記下プレートの水平位置を調整可能な下部調整ユニットと、前記基台の上方部分に取り付けられ、前記梁材の上部フランジに取り付ける上プレートを支持し、前記上プレートの高さ位置を調整可能な上部調整ユニットと、を備えることにより解決される。
上記構成により、上部フランジ及び下部フランジに対するプレートの取り付け作業の効率を向上できる。
詳しく述べると、本発明のプレート取付装置は、下プレートの水平位置を調整するための下部調整ユニットと、上プレートの高さ位置を調整するための上部調整ユニットを備えている。そのため、上部調整ユニットにより、梁材の上部フランジに対するクレーン作業を不要とし、梁材に対して上プレートを効率よく取り付けることができる。また、下部調整ユニットにより、上部フランジに上プレートを取り付ける作業に続いて、下部フランジに対する下プレートの水平位置の調整を、効率よく行うことができる。そのため、梁材に対して下プレートを効率よく取り付けることができる。
【0009】
このとき、前記下部調整ユニットは、前記基台に対して昇降するリフト部材と、前記リフト部材に対して水平方向に移動可能に設けられ、前記下プレートを載置する載置部材と、を有し、前記上部調整ユニットは、前記基台に対して昇降する吊り部材と、前記吊り部材に取り付けられ、前記上プレートを保持する保持部材と、を有するとよい。
上記構成により、下部調整ユニットは、リフト部材によって下プレートの高さ位置を容易に調整することができ、載置部材によって下プレートの水平位置を容易に調整することができる。さらに、上部調整ユニットは、保持部材によって上プレートを容易に支持することができ、吊り部材によって上プレートの高さ位置を容易に調整することができる。
【0010】
このとき、前記載置部材は、前記下プレートを載置する台座部と、前記リフト部材に対して前記台座部を水平方向に移動可能な移動部と、を有し、前記移動部は、前記台座部に取り付けられるキャスタであるとよい。
上記構成により、キャスタによって、簡易な構成で下プレートの水平位置を容易に調整することができる。
【0011】
このとき、前記リフト部材は、前記基台に固定される固定部と、前記載置部材を載置するテーブル部と、前記固定部に対して前記テーブル部を昇降させる昇降部と、を有し、前記テーブル部は、前記テーブル部の上面から上方に突出し、前記移動部を水平方向において囲む枠状ストッパを有し、前記移動部は、水平方向において前記枠状ストッパに囲まれた枠内を移動可能であるとよい。
上記構成により、リフト部材に枠状ストッパを設けることによって、載置部材によって下プレートの水平位置を調整する際に、載置部材がリフト部材から落下してしまうことを抑制できる。
【0012】
このとき、前記リフト部材は、上下方向に貫通する第一環状部を有し、前記載置部材は、上面視において前記第一環状部に重なる位置に設けられ、上下方向に貫通する第二環状部を有し、前記下部調整ユニットは、前記第一環状部及び前記第二環状部を貫通し、前記リフト部材に対する前記載置部材の水平移動を規制するロック部材を有するとよい。
上記構成により、下部調整ユニットによる水平位置の調整作業を行わないときに、載置部材をリフト部材に対して固定することができる。したがって、基台の移動時や上部ユニットの高さ位置の調整時に、不用意に載置部材が移動してしまうことを抑制できる。
【0013】
このとき、前記保持部材は、上下方向に延びて前記上プレートに形成された貫通孔に挿通可能な挿通部と、前記挿通部の下端部に回動可能に取り付けられる回動部と、を有し、前記回動部は、前記挿通部に沿って延びて前記上プレートに形成された前記貫通孔に挿通される挿通状態と、前記挿通状態から前記挿通部に対して回動して前記上プレートを保持する保持状態と、に切り替え可能であるとよい。
上記構成により、簡易な構成で上プレートを容易に支持することができる。
【0014】
このとき、前記基台は、前記下部調整ユニットを支持するベース部材と、前記ベース部材から上方に延びる支柱部材と、前記支柱部材の上端部に設けられる天井部材と、前記ベース部材に取り付けられ、前記基台を走行させる走行部材と、を有し、前記吊り部材は、電動バランサであって、前記天井部材に取り付けられ、前記支柱部材の上下方向における中間部分には、前記電動バランサの電源を支持するための電源支持部が設けられるとよい。
上記構成により、走行部材によって、基台の水平方向への移動を容易に行うことができる。また、吊り上げ作業時に必要なリモコンを不要とし、簡易な構成で容易に上プレートの高さ位置を調整することができる。
さらに、電動バランサの電源を支柱部の中間部分に設けることで、作業スペースを広くすることができる。また、電動バランサと電源とを近い位置に配置し、電動バランサと電源を接続するケーブルを短くすることができるので、余分なケーブルを引っ張る必要がなくなる。
【0015】
また前記課題は、本発明のプレート取付装置を用いたプレートの取付方法によれば、プレート取付装置を用いたプレートの取付方法であって、前記保持部材によって前記上プレートを保持する保持工程と、前記吊り部材によって前記上プレートを吊り上げる吊り上げ工程と、前記梁材の前記上部フランジに前記上プレートを取り付ける上プレート取付工程と、前記載置部材に前記下プレートを載置する載置工程と、前記載置部材によって前記下プレートの水平位置を調整する下部位置調整工程と、前記梁材の前記下部フランジに前記下プレートを取り付ける下プレート取付工程と、を含む、ことにより解決される。
上記構成により、上部フランジ及び下部フランジに対するプレートの取り付け作業の効率を向上できる。
【0016】
このとき、前記載置工程では、前記下部フランジの下側に取り付けられる下側下プレートを前記載置部材に載置し、前記下部フランジの上側に取り付けられる上側下プレートを、スペーサを介して前記下側下プレートよりも上方に載置し、前記下部位置調整工程では、前記下側下プレート及び前記上側下プレートが前記スペーサにより上下方向において離間した状態で、前記載置部材を移動させることで、前記下側下プレート及び前記上側下プレートの水平位置を調整するとよい。
上記構成により、スペーサによって下側下プレート(本プレート)及び上側下プレート(添プレート)の間隔を空けた状態で、本プレート及び添プレートの水平位置を調整することができる。そのため、下部フランジを挟み込む位置に本プレート及び添プレートを容易に配置することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のプレート取付装置及びプレート取付装置を用いたプレートの取付方法によれば、上部フランジ及び下部フランジに対するプレートの取り付け作業の効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態のプレート取付装置によって梁材にプレートを取り付けた状態を示す図である。
図2】プレート取付装置の斜視図である。
図3】下部調整ユニットの斜視図である。
図4】下部調整ユニットの上面図である。
図5】下部調整ユニットの側面図である。
図6】上部調整ユニットの斜視図である。
図7】上部調整ユニットの部分拡大図である。
図8】プレートの取付方法の工程図である。
図9】保持工程を示す図である。
図10】吊り上げ工程を示す図である。
図11】上部位置調整工程を示す図である。
図12】上プレート取付工程を示す図である。
図13】載置工程を示す図である。
図14】下部位置調整工程を示す図である。
図15】下プレート取付工程を示す図である。
図16】下プレートと上プレートを同時に保持した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1図16に基づき、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)のプレート取付装置1について説明する。以下の説明中、図1に示すように、「上下方向」とは、プレートPを吊り上げる際の上下方向を意味する。また、「前後方向」とは、プレート取付装置1側から梁材B側を見たときの前後方向を意味する。また、「左右方向」とは、「上下方向」及び「前後方向」と直交する方向であって、プレート取付装置1側から梁材B側を見たときの左右方向を意味する。
【0020】
<プレート取付装置>
プレート取付装置1は、図1に示すように、梁材Bに対し、柱又は梁材同士を連結するためのプレートPを取り付けるために用いられる。
詳しく述べると、プレート取付装置1は、梁材Bの下側のフランジFである下部フランジF1に下プレートP1を取り付け、梁材Bの上側のフランジFである上部フランジF2に上プレートP2を取り付けるために用いられる装置である。
【0021】
ここで、梁材B及びプレートPについて詳しく説明する。梁材Bは、例えばH形鋼からなる鉄骨梁部材であって、建設現場において複数の梁材Bが接合される。複数の梁材Bの各端部が互いに接合されることで、長尺な鉄骨梁が形成される。
梁材Bは、柱又は梁材同士を連結するプレートPによって接合される。例えば、複数の梁材Bは、プレートPを介してフランジFの端部同士をボルト締めすることで、互いに接合される。
【0022】
梁材Bは、鉄骨梁部材の工場において、接合する梁材BのフランジFにプレートPを取り付けた状態(仮止めの状態)とされる。そして、梁材Bは、フランジFにプレートPを取り付けた状態で、工場から建設現場に搬入され、建設現場においてプレートPをボルト固定することで、梁材Bが柱又は他の梁材に接合される。
【0023】
プレートPは、例えばスプライスプレートであって、梁材同士を連結するための鋼製の長尺な板状部材である。プレートPは、下部フランジF1に取り付けられる下プレートP1と、上部フランジF2に取り付けられる上プレートP2と、から主に構成される。
【0024】
下プレートP1は、下部フランジF1の下側に取り付けられる下本プレートP11(下側下プレート)と、下部フランジF1の上側に取り付けられる下添プレートP12(上側下プレート)と、から構成される。
なお、建設現場においては、例えば、下本プレートP11が下部フランジF1の下側にボルト固定され、下添プレートP12が下部フランジF1の上側にボルト固定されることで、梁材同士が接合される。
【0025】
下本プレートP11は、ボルト等の固定具Aによって、下部フランジF1の下面に取り付けられる。下本プレートP11の重量は、例えば約50kg/枚である。下本プレートP11には、固定具Aを挿通させるための取付孔P11aが形成される。
下添プレートP12は、下本プレートP11を長手方向に略2分割したものである。下添プレートP12は、ウェブWを挟む位置において、下部フランジF1の上面に固定具Aによって取り付けられる。下添プレートP12には、固定具Aを挿通させるための取付孔P12aが形成される。
【0026】
下本プレートP11及び下添プレートP12は、上下方向において離間した状態で、下部フランジF1に取り付けられる。言い換えると、下本プレートP11及び下添プレートP12は、下部フランジF1の厚み分離間した状態で、下部フランジF1を上下方向から挟持するように、固定具Aによって下部フランジF1に取り付けられる。
【0027】
上プレートP2は、上部フランジF2の上側に取り付けられる上本プレートP21(上側上プレート)と、上部フランジF2の上側に取り付けられる上添プレートP22(上側下プレート)と、から構成される。
なお、建設現場においては、例えば、上本プレートP21が上部フランジF2の上側にボルト固定され、上添プレートP22が上部フランジF2の下側にボルト固定されることで、梁材同士が接合される。
【0028】
上本プレートP21は、ボルト及びナット等の固定具Aによって、上部フランジF2の上面に取り付けられる。上本プレートP21の重量は、例えば約50kg/枚である。上本プレートP21には、固定具Aを挿通させるための取付孔P21aが形成される。
上添プレートP22は、上本プレートP21を長手方向に略2分割したものである。上添プレートP22は、ウェブWを挟む位置において、上本プレートP21の上面に固定具Aによって取り付けられる。上添プレートP22には、固定具Aを挿通させるための取付孔P22aが形成される。
【0029】
なお、本実施形態では、工場においてプレート取付装置1は、梁材BのフランジFにプレートPを仮止めするために用いられる例を説明する。しかしこれに限らず、建設現場において梁材B同士を接合する際や、柱に梁材Bを接合する際に使用されてもよい。
また、本実施形態では、上本プレートP21及び上添プレートP22が上部フランジF2の上側に取り付けられる例を説明する。しかしこれに限らず、上本プレートP21が上部フランジF2の上側に取り付けられ、上添プレートP22が上部フランジF2の下側に取り付けられてもよい。
また、本実施形態では、図1図9に示すように、梁材BのウェブWに予めスプライスプレート(ウェブプレートP3)が取り付けられている例を説明する。しかしこれに限らず、プレート取付装置1は、梁材BのウェブWにウェブプレートP3を取り付けるために使用されてもよい。
【0030】
プレート取付装置1は、図1に示すように、工場の床に設置され、作業台に載せられた梁材Bに対してプレートPを取り付けるための装置である。
プレート取付装置1は、上下方向に長尺な基台2と、基台2の下方部分に取り付けられ、梁材Bの下部フランジF1に取り付ける下プレートP1を支持し、下プレートP1の水平位置を調整可能な下部調整ユニット3と、基台2の上方部分に取り付けられ、梁材Bの上部フランジF2に取り付ける上プレートP2を支持し、上プレートP2の高さ位置を調整可能な上部調整ユニット4と、を主に備える。
【0031】
下プレートP1は、下部調整ユニット3によって支持され、上下方向及び水平方向に移動されて下部フランジF1に取り付けられる。上プレートP2は、上部調整ユニット4によって支持され、上下方向及び水平方向に移動されて上部フランジF2に取り付けられる。
作業者は、プレート取付装置1によって、下プレートP1及び上プレートP2の位置を容易に調整できるため、プレートPが重量物であっても、プレートPをフランジFに容易に取り付けることができる。したがって、梁材Bに対するプレートPの取り付け作業の効率が向上する。
【0032】
<基台>
基台2は、図1図2に示すように、上下方向に長尺なフレームであって、側面視において前方側が開放する略コ字状を有する。基台2は、下部調整ユニット3を支持するベース部材10と、ベース部材10から上方に延びる支柱部材20と、支柱部材20の上端部に設けられる天井部材30と、ベース部材10に取り付けられ、基台2を走行させる走行部材40と、を有する。
【0033】
ベース部材10は、図1図2に示すように、複数の長尺な角筒部材で構成され、下部調整ユニット3を下方から支持する。ベース部材10の下面には、走行部材40が取り付けられる。
【0034】
支柱部材20は、図1図2に示すように、上下方向に延びる長尺な角筒部材で構成され、天井部材30を支持する。支柱部材20は、ベース部材10のベース後端部10aの右側部分から上方に延びる右支柱部21と、ベース部材10のベース後端部10aの左側部分から上方に延びる左支柱部22と、を有する。
【0035】
支柱部材20の上下方向における中間部分20aには、後述する吊り部材80の電源85を載置するための電源支持部23が設けられる。電源支持部23に電源85を載置することで、電源85を床に直接載置する場合よりも、基台2を移動させ易くなる。また、電源支持部23は、支柱部材20の中間部分20aに設けられるため、電源85をベース部材10に載置する場合よりも、省スペース化することができる。
【0036】
電源支持部23は、電源支持面23aを有する板状部材であって、右支柱部21及び左支柱部22の間に架け渡されるように右支柱部21及び左支柱部22に固定される。電源支持面23aは、右支柱部21及び左支柱部22よりも前方側に配置されるため、作業者が基台2の後方で基台2を移動させるときに、作業者と電源85が接触してしまうことを抑制できる。
【0037】
支柱部材20の中間部分20aには、作業者が把持するための把持部24が設けられる。
把持部24は、側面視において略L字状を有する棒状部材であって、右支柱部21及び左支柱部22にそれぞれ設けられる。把持部24は、電源支持部23の下方位置に設けられ、右支柱部21及び左支柱部22に固定される。
【0038】
天井部材30は、図1図2に示すように、複数の長尺な角筒部材で構成され、上部調整ユニット4を上方から支持する。天井部材30は、右支柱部21及び左支柱部22の各上端部に設けられ、右支柱部21及び左支柱部22から前方側に向かって延在する。
天井部材30は、上部調整ユニット4を取り付けるための被取付部31を有する。被取付部31は、前後方向における中間部30aに設けられる。なお、天井部材30の前端部30bは、補強部32によって、支柱部材20の中間部分20aに支持される。
【0039】
走行部材40は、図1図2に示すように、複数の走行キャスタで構成され、ベース部材10を下方から支持する。走行部材40は、ベース部材10の下面に取り付けられ、ベース部材10を走行可能に支持する。
作業者は、把持部24を把持して、基台2を梁材Bに対して走行部材40によって移動させることで、梁材Bに対するプレートPの水平位置を調整することができる。
【0040】
<下部調整ユニット>
下部調整ユニット3は、図1図5に示すように、基台2の下方部分に取り付けられ、下プレートP1を下方から支持し、下プレートP1の水平位置又は高さ位置を調整するものである。
下部調整ユニット3は、図3に示すように、基台2に対して昇降するリフト部材50と、リフト部材50に対して水平方向に移動可能に設けられ、下プレートP1を載置する載置部材60と、リフト部材50に対する載置部材60の水平移動を規制するロック部材70と、を有する。
【0041】
下プレートP1は、載置部材60によって下方から支持される。下プレートP1がリフト部材50によって上下方向に移動されることで、下プレートP1の高さ位置が調整される。また、下プレートP1が載置部材60によって水平方向に移動されることで、下プレートP1の水平位置が調整される。そして、梁材Bに対する下プレートP1の高さ位置及び水平位置が調整されることで、下プレートP1は下部フランジF1に取り付けられる。
作業者は、下部調整ユニット3のリフト部材50の昇降及び載置部材60の水平移動によって、下プレートP1の高さ位置及び水平位置を容易に調整することができる。
【0042】
リフト部材50は、例えば公知の油圧式テーブルリフタであって、載置部材60を下方から支持し、基台2に対して載置部材60を昇降させる。言い換えると、リフト部材50は、基台2に対して載置部材60に載置された下プレートP1を昇降させる。
リフト部材50は、図3図5に示すように、基台2に固定される固定部51と、載置部材60を載置するテーブル部52と、固定部51に対してテーブル部52を昇降させる昇降部53と、テーブル部52に設けられる第一環状部54と、工具等の物品を収納するための収納部55と、を有する。
【0043】
固定部51は、図3図5に示すように、ベース部材10の上面にボルトや溶接等で固定される。固定部51の上面には、昇降部53が設けられる。固定部51の後端部51aには、後述する昇降部53の油圧シリンダ53cを動作させるためのペダル53d及びレバー53eが取り付けられる。また、固定部51の後端部51aには、収納部55が取り付けられる。
【0044】
テーブル部52は、図3図5に示すように、テーブル状の部材であって、載置部材60を載置するためのテーブル上面52aを有する。
テーブル部52は、昇降部53の上部に取り付けられ、昇降部53の動作によって、図5に二点鎖線で示す下降位置から固定部51に対して上昇した上昇位置までの間で、無段階に昇降される。
【0045】
テーブル部52は、テーブル上面52aから上方に突出する枠状ストッパ52bを有する。枠状ストッパ52bは、図4に示すように、載置部材60の後述する移動部62を水平方向において囲む位置に設けられ、テーブル上面52aに取り付けられる。
詳しく述べると、枠状ストッパ52bは、載置部材60の四隅に設けられた移動部62を水平方向における外側から覆う位置において、各移動部62から離間するように4つ設けられる。
【0046】
このように、移動部62が水平方向において枠状ストッパ52bに囲まれた枠内を移動可能であるため、載置部材60は、枠状ストッパ52bの内側を前後方向及び左右方向に移動可能となる。そして、載置部材60は、枠状ストッパ52bによって、載置部材60がリフト部材50のテーブル部52から落下してしまうことを抑制できる。
また、枠状ストッパ52bを4つに分割して設けることで、簡易な構成で載置部材60の落下を抑制できる。なお、枠状ストッパ52bは、環状をなす一つの部材とすることで、移動部62の周囲を全て囲う構成としてもよい。
【0047】
昇降部53は、図5に示すように、固定部51上に設けられ、支点軸53aを中心に回動する側面視において略X字状の脚部53bと、脚部53bを回動させるための油圧シリンダ53cと、を有する。脚部53bの上端部には、テーブル部52が取り付けられる。
また、昇降部53は、油圧シリンダ53cを作動させてテーブル部52を上昇させるペダル53dと、テーブル部52を下降させるレバー53eと、を有する。作業者は、ペダル53dを足踏みすることで、テーブル部52を上昇させることができる。また、レバー53eを操作することで、上昇したテーブル部52を下降させることができる。
【0048】
第一環状部54は、図5に示すように、上下方向に貫通する第一貫通孔54aを有するリング状の部材であって、テーブル上面52aに固定される。第一貫通孔54aには、ロック部材70が挿通される。
【0049】
収納部55は、図3に示すように、工具等の物品を収納するために設けられる。収納部55は、物品を収納可能な収納ボックス55aと、収納ボックス55aを着脱可能に取り付ける収納取付板55bと、収納取付板55bを支持する収納支持部55cと、を有する。
収納ボックス55aは、工具等の物品やロック部材70を収納可能な箱状部材であって、収納取付板55bに着脱可能に取り付けられる。収納取付板55bは、左右方向に長尺な板状部材であって、収納支持部55cに取り付けられる。収納支持部55cは、正面視において上下方向に長尺な略逆U字状の棒状部材であって、固定部51の後端部51aに取り付けられる。
【0050】
載置部材60は、下プレートP1を下方から支持し、リフト部材50のテーブル部52に対して水平方向に移動する。言い換えると、載置部材60は、下プレートP1を支持し、基台2に対して下プレートP1を水平方向に移動させる。
載置部材60は、図3図5に示すように、下プレートP1を載置する台座部61と、リフト部材50に対して台座部61を水平方向に移動可能な移動部62と、台座部61に設けられる第二環状部63と、を有する。
【0051】
台座部61は、図3に示すように、上面視で「王」字形状(2つのE字を背中合わせにした形状)を有し、下プレートP1を下方から支持する。台座部61を王字形状とすることで、下プレートP1の安定性を高めつつ、下プレートP1及び下部フランジF1に対して固定具Aを取り付けるときの作業スペースを確保できる。なお、台座部61の形状はこれに限らず、H字形状やE字形状、直線状等であってもよい。
【0052】
移動部62は、図3に示すように、台座部61の下面に取り付けられるキャスタであって、例えば複数のボールキャスタである。詳しく述べると、移動部62は、台座部61の四隅の下面に4つ取り付けられ、台座部61の中心部分の下面に1つ取り付けられる。
図5に示すように、枠状ストッパ52bは、移動部62の高さと略同じ高さに形成される。したがって、図4に示すように、移動部62は、水平方向において枠状ストッパ52bの内側を移動可能となる。このように、移動部62が水平方向において枠状ストッパ52bの内側に当接することで、載置部材60は、リフト部材50上において安定して移動することができる。
【0053】
第二環状部63は、図5に示すように、上下方向に貫通する第二貫通孔63aを有するリング状の部材であって、台座部61の後端面61aに固定される。第二環状部63は、上面視において第一環状部54に重なる位置に設けられる。言い換えると、第一貫通孔54a及び第二貫通孔63aが上下に重なる位置に配置される。第二貫通孔63aには、ロック部材70が挿通される。
【0054】
ロック部材70は、第一環状部54及び第二環状部63を貫通し、リフト部材50に対する載置部材60の水平移動を規制する。詳しく述べると、ロック部材70は、第一環状部54の第一貫通孔54aと第二環状部63の第二貫通孔63aに挿通され、テーブル部52に対する台座部61の水平移動を規制する。
このように、下部調整ユニット3による下プレートP1の水平位置の調整作業を行わないときには、ロック部材70を第一環状部54及び第二環状部63に挿通させることで、載置部材60をリフト部材50に対して固定することができる。したがって、基台2の移動時や上部調整ユニット4の高さ調整時に、不用意に載置部材60が移動してしまうことを抑制できる。
【0055】
<上部調整ユニット>
上部調整ユニット4は、図1図2図6に示すように、基台2の上方部分に取り付けられ、上プレートP2を上方から支持し、上プレートP2の高さ位置を調整するものである。
上部調整ユニット4は、図6に示すように、基台2に対して昇降する吊り部材80と、吊り部材80に取り付けられ、上プレートP2を保持する保持部材90と、を有する。
【0056】
上プレートP2は、保持部材90によって上方から支持される。保持部材90に保持された上プレートP2が吊り部材80によって上下方向に移動されることで、上プレートP2の高さ位置が調整される。また、基台2が走行部材40によって水平方向に移動されることで、上プレートP2の水平位置が調整される。そして、梁材Bに対する上プレートP2の高さ位置及び水平位置が調整されることで、上プレートP2は上部フランジF2に取り付けられる。
【0057】
作業者は、上部調整ユニット4の吊り部材80による昇降、及び基台2の水平移動によって、上プレートP2の高さ位置及び水平位置を容易に調整することができる。
なお本実施形態では、上プレートP2の水平位置は、基台2によって調整される構成としたが、これに限らない。例えば、吊り部材80が、基台2の天井部材30に対して移動可能に取り付けられてもよい。吊り部材80の移動によって、上部調整ユニット4が、上プレートP2の水平位置を調整する構成としてもよい。
【0058】
吊り部材80は、例えば電動バランサである。吊り部材80は、図6に示すように、基台2の天井部材30に取り付けられ、保持部材90を上方から支持し、基台2に対して保持部材90を昇降させる。言い換えると、吊り部材80は、基台2に対して保持部材90に保持された上プレートP2を昇降させる。
【0059】
吊り部材80は、図6に示すように、電動バランサの本体部81と、本体部81から下方に延びる接続部82と、接続部82の下端部に設けられた連結部83と、本体部81を天井部材30の被取付部31に取り付けるための取付部84と、本体部81を動作させる電源85と、本体部81及び電源85を接続するケーブル86と、を有する。
【0060】
本体部81は、取付部84が被取付部31に取り付けられることによって、基台2の天井部材30に吊り下げられる。なお、取付部84は、基台2の天井部材30に対して、前後方向又は左右方向に移動可能に取り付けられてもよい。
本体部81は、内部に駆動モータ81aを備え、駆動モータ81aによって接続部82を巻き取り及び巻き出しするよう構成される。本体部81は、接続部82に保持部材90及び上プレートP2が吊り下げられたとき、保持部材90及び上プレートP2を無重力に近い状態で保持できるバランス機能を有する。
【0061】
接続部82は、例えば金属製のチェーンであって、保持部材90を吊り下げることが可能な強度を有する紐状の長尺部材である。接続部82は、本体部81から下方に延びており、下端部には連結部83が取り付けられる。
連結部83は、例えば金属製のフックであって、保持部材90を着脱可能に連結するものである。上プレートP2は、保持部材90及び連結部83を介して接続部82に支持され、接続部82の移動に伴って本体部81に対して上下方向に移動する。
取付部84は、例えば金属製のフックであって、天井部材30の被取付部31に着脱可能に取り付けられる。
【0062】
電源85は、本体部81の駆動モータ81aを駆動するためのバッテリ装置であって、基台2の電源支持部23に載置される。
ケーブル86は、本体部81と電源85を電気的に接続するための電源ケーブルである。なお、ケーブル86は、上プレートP2の位置調整時に邪魔にならないよう、支柱部材20に巻き付けられていてもよい。
【0063】
このように、吊り部材80を電動バランサとすることで、上プレートP2が重量物である場合にも、上プレートP2の上下位置を容易に調整することができる。また、吊り部材80を電動バランサとすることで、上プレートP2を昇降させるリモコン操作が不要となるため、作業効率が向上する。
なお、吊り部材80は、電動バランサに限らず、電動ホイスト、電動チェーンブロック等であってもよく、手動のチェーンブロックであってもよい。
【0064】
保持部材90は、図6図7に示すように、吊り部材80の連結部83に取り付けられ、上プレートP2を昇降可能に保持するためのものである。保持部材90は、連結部83に連結するための連結板90aを介して、連結部83に複数設けられる。
なお、保持部材90は、連結部83に対して2つ設けられるが、上プレートP2をバランス良く吊り下げ可能であれば、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。
また、保持部材90は、連結板90aを介して、連結部83に取り付けられるが、連結部83に直接取り付けられてもよい。
【0065】
保持部材90は、図7に示すように、保持部材90は、上下方向に延びる挿通部91と、挿通部91の下端部に回動可能に取り付けられる回動部92と、を有する。
回動部92は、挿通部91に沿って延びて、上プレートP2に形成された取付孔P21a、P22aに挿通される挿通状態と、挿通状態から挿通部91に対して回動して上プレートP2を下方から保持する保持状態と、に切り替え可能である。言い換えると、保持部材90は、回動部92が保持状態のとき、側面視において略L字状を有し、回動部92が挿通状態のとき、側面視において略I字状を有する。
【0066】
挿通部91は、図7に示すように、上下方向に長尺であって、上面視において断面略コ字状の金属部材である。挿通部91は、上本プレートP21の取付孔P21a及び上添プレートP22の取付孔P22aに挿通可能な大きさに形成される。
挿通部91の上端部には連結リング91aが設けられる。連結リング91aが連結板90aの下方部分に形成された連結孔90bに取り付けられることによって、保持部材90は、連結板90aを介して、吊り部材80の連結部83に吊り下げられる。
【0067】
回動部92は、図7に示すように、前後方向に長尺であって、正面視において断面略コ字状の金属部材である。回動部92は、挿通部91の下端部に、左右方向に延びる回動軸92aを中心として回動可能に取り付けられる。
通常、回動部92は保持状態にあり、作業者が回動部92を挿通部91に対して回動させることで、保持状態から挿通状態へ切り替わる。挿通状態の回動部92は、挿通部91の内部空間に収納される。
回動部92は、上本プレートP21の取付孔P21a及び上添プレートP22の取付孔P22aに挿通された後、保持状態へ切り替えられることで、上プレートP2を下方から支持する。
【0068】
このように、本発明のプレート取付装置1は、下プレートP1の水平位置を調整するための下部調整ユニット3と、上プレートP2の高さ位置を調整するための上部調整ユニット4を備えている。そのため、上部調整ユニット4により、大掛かりなクレーン作業を不要とし、上部フランジF2に上プレートP2を効率よく取り付けることができる。また、下部調整ユニット3により、上部フランジF2に上プレートP2を取り付ける作業に続けて、下プレートP1の水平位置を調整可能とし、下部フランジF1に下プレートP1を効率よく取り付けることができる。
【0069】
<プレート取付装置を用いたプレートの取付方法>
次に、プレート取付装置1を用いたプレートPの取付方法について、図8図16に基づいて説明する。本実施形態では、工場において、プレート取付装置1を用いて、梁材BのフランジFにプレートPを仮止めする例を説明する。
【0070】
当該方法は、図8に示すように、「保持工程(S1)」と、「吊り上げ工程(S2)」と、「上部位置調整工程(S3)」と、「上プレート取付工程(S4)」と、「載置工程(S5)」と、「下部位置調整工程(S6)」と、「下プレート取付工程(S7)」と、を含むものである。
プレートPの取付作業にあたって、その他の工程については、説明を省略する。
【0071】
なお、各工程の順序はこれに限られない。例えば、作業者は、先に下プレートP1の位置調整及び取り付け作業をしてもよく、上下両方のプレートPの位置調整をしたあとに、各プレートPの取り付け作業をしてもよい。また、作業者は、プレート取付装置1によって、下プレートP1及び上プレートP2を同時に取り付けてもよい。
また、本実施形態では、梁材BのウェブWにウェブプレートP3が予め取り付けられているが、作業者は、プレート取付装置1によって、梁材BのウェブWにウェブプレートP3を取り付けてもよい。
【0072】
図9に示すように、作業者は、工場の床に設置されたプレート取付装置1によって、作業台(不図示)に載せられた梁材Bに対してプレートPを取り付ける。
フランジFの下部フランジF1には、固定具Aを挿通するためのフランジ孔F1aが形成される。また、フランジFの上部フランジF2には、固定具Aを挿通するためのフランジ孔F2aが形成される。作業者は、梁材Bに対する下プレートP1及び上プレートP2の位置を調整して、フランジ孔F1a,F2aに固定具Aを挿通し、プレートPを梁材Bに取り付ける。
なお各工程において、作業者は、作業を行い易い場所に適宜基台2を移動させる。
【0073】
「保持工程(S1)」では、図9に示すように、作業者が、保持部材90によって上プレートP2を保持する。詳しく述べると、作業者は、回動部92を挿通部91に対して回動させることで、回動部92を保持状態から挿通状態へ切り替える。そして、作業者は、挿通部91及び挿通状態の回動部92を、上プレートP2の取付孔P21a、P22aに挿通する。その後、作業者は、回動部92を保持状態へ切り替えて、保持部材90に上プレートP2を支持させる。
【0074】
「吊り上げ工程(S2)」では、図10に示すように、作業者が、吊り部材80によって上プレートP2を吊り上げる。詳しく述べると、作業者は、上プレートP2を把持して、上プレートP2の取り付け位置まで上プレートP2を持ち上げる。このとき、本体部81の駆動モータ81aによって、上プレートP2を持ち上げる力がアシストされるため、作業者は、容易に上プレートP2を取り付け位置まで容易に持ち上げることができる。このように、作業者は、吊り部材80によって上プレートP2を吊り上げることで、上プレートP2の上下位置を容易に調整することができる。
【0075】
「上部位置調整工程(S3)」では、図11に示すように、作業者が、走行部材40によって上プレートP2の水平位置を調整する。詳しく述べると、作業者は、上プレートP2を吊り上げた状態で、把持部24を把持して基台2を動かし、上プレートP2の水平位置を調整する。具体的には、作業者は、上部フランジF2のフランジ孔F2aと上下に重なるように、上本プレートP21及び上添プレートP22の各取付孔P21a,P22aを配置する。このように、作業者は、走行部材40によって基台2を移動させ、上プレートP2の水平位置を容易に調整することができる。
【0076】
なお、上部位置調整工程(S3)は、保持工程(S1)又は吊り上げ工程(S2)の前に行われてもよい。また、吊り部材80が基台2に対して移動可能に設けられている場合には、作業者は、吊り部材80を水平方向に動かすことによって、上プレートP2の水平位置を調整してもよい。
さらに、上部位置調整工程(S3)において、上プレートP2の水平位置を調整する必要がない場合には、吊り上げ工程(S2)の上プレートP2の高さ位置の調整のみ行うようにしてもよい。
【0077】
「上プレート取付工程(S4)」では、図12に示すように、作業者が、梁材Bの上部フランジF2に上プレートP2を取り付ける。詳しく述べると、作業者は、上本プレートP21及び上添プレートP22の各取付孔P21a,P22aと、上部フランジF2のフランジ孔F2aとにボルト等の固定具Aを挿通させて、ナット締めすることによって、上部フランジF2に上プレートP2を取り付ける。
【0078】
「載置工程(S5)」では、図13に示すように、作業者が、載置部材60に下プレートP1を載置する。詳しく述べると、作業者は、下部フランジF1の下側に取り付けられる下本プレートP11を載置部材60の台座部61に載置する。そして、作業者は、下部フランジF1の上側に取り付けられる下添プレートP12を、スペーサSを介して、下本プレートP11よりも上方に載置する。
【0079】
スペーサSは、ゴム状の弾性部材であって、下本プレートP11及び下添プレートP12の間に介在される。スペーサSは、上下に貫通するスペーサ孔を有し、ボルトによって下本プレートP11及び下添プレートP12に仮止めされる。
作業者は、まず、下本プレートP11を載置部材60の台座部61に載置する。そして、作業者は、下本プレートP11の上面にスペーサSを載せ、スペーサSの上に下添プレートP12を載置する。その後、作業者は、下本プレートP11及び下添プレートP12の各取付孔P11a,P12aと、スペーサ孔とにボルトを挿通させて、ナット締めする。
こうすることで、スペーサSによって下本プレートP11及び下添プレートP12の間隔を容易に維持することができる。
【0080】
「下部位置調整工程(S6)」では、作業者が、載置部材60によって下プレートP1の高さ位置又は水平位置を調整する。詳しく述べると、作業者は、下プレートP1を載置部材60の台座部61に載せた状態で、リフト部材50の昇降部53を動作させて、下プレートP1の高さ位置を調整する。具体的には、作業者は、下プレートP1が下部フランジF1と略同じ高さ位置になるように、昇降部53のペダル53dを踏んで油圧シリンダ53cを駆動し、脚部53bを回動させてテーブル部52を上昇させる。このように、作業者は、下プレートP1を台座部61に載せた状態のまま、下プレートP1の高さ位置を容易に調整することができる。
なお、下部位置調整工程(S6)において、下プレートP1の高さ位置を調整する必要がない場合には、下プレートP1の水平位置の調整のみ行うようにしてもよい。
【0081】
また、「下部位置調整工程(S6)」では、作業者は、下プレートP1の水平位置を調整し易い位置まで走行部材40によって基台2を移動させる。そして、作業者は、第一環状部54及び第二環状部63からロック部材70を引き抜いて、載置部材60をリフト部材50に対して移動可能にロックを解除する。なお、引き抜いたロック部材70は、収納部55の収納ボックス55aに収納してもよい。
図14に示すように、作業者は、下プレートP1を台座部61に載せた状態のまま、台座部61を動かし、下プレートP1の水平位置を調整する。具体的には、作業者は、下部フランジF1のフランジ孔F1aと上下に重なるように、下本プレートP11及び下添プレートP12の各取付孔P11a,P12aを配置する。作業者は、移動部62によって台座部61を移動させ、下プレートP1の水平位置を容易に調整することができる。
【0082】
このとき、作業者は、下本プレートP11及び下添プレートP12がスペーサSにより上下方向において離間した状態で、載置部材60を移動させて、下本プレートP11及び下添プレートP12の水平位置を調整する。このように、スペーサSを介して下本プレートP11及び下添プレートP12の水平位置を調整することで、下部フランジF1を挟み込む位置に下本プレートP11及び下添プレートP12を容易に配置することができる。
【0083】
「下プレート取付工程(S7)」では、図15に示すように、作業者が、梁材Bの下部フランジF1に下プレートP1を取り付ける。詳しく述べると、作業者は、下本プレートP11及び下添プレートP12の各取付孔P11a,P12aと、下部フランジF1のフランジ孔F1aとにボルト等の固定具Aを挿通させて、ナット締めすることによって、下部フランジF1に下プレートP1を取り付ける。
【0084】
このように、本発明のプレート取付装置1を用いたプレートPの取付方法では、上部調整ユニット4により、大掛かりなクレーン作業を不要とし、上部フランジF2に上プレートP2を効率よく取り付けることができる。また、下部調整ユニット3により、上部フランジF2に上プレートP2を取り付ける作業に続けて、下部フランジF1に対する下プレートP1の水平位置を調整可能とし、下部フランジF1に下プレートP1を効率よく取り付けることができる。
【0085】
また、下プレートP1及び上プレートP2を同時に取り付けるときには、図16に示すように、作業者は、「上部位置調整工程(S3)」の前に「載置工程(S5)」を行い、プレート取付装置1に、下プレートP1及び上プレートP2を保持させる。そして、作業者は基台2を移動させて、「上部位置調整工程(S3)」及び「上プレート取付工程(S4)」の作業と、「下部位置調整工程(S6)」及び「下プレート取付工程(S7)」の作業を同時に行う。
なお、作業者は、載置部材60に下プレートP1を載置した状態で上プレートP2を保持させてもよく、上プレートP2を保持させた状態で載置部材60に下プレートP1を載置してもよい。
【0086】
<その他の実施形態>
本発明のプレート取付装置及びプレート取付装置を用いたプレートの取付方法は、上記の実施形態に限定されるものではない。本実施形態では、プレートPとしてスプライスプレートを取り付ける場合を例示して説明を行った。しかしこれに限らず、スプライスプレート以外のプレート部材、又はプレート部材以外にも、柱部材、円筒部材等を取り付ける場合にも好適である。
【0087】
上記実施形態では、主として本発明に係るプレート取付装置及びプレート取付装置を用いたプレートの取付方法に関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0088】
1 プレート取付装置
2 基台
3 下部調整ユニット
4 上部調整ユニット
10 ベース部材
10a ベース後端部
20 支柱部材
20a 中間部分
21 右支柱部
22 左支柱部
23 電源支持部
23a 電源支持面
24 把持部
30 天井部材
30a 中間部
30b 前端部
31 被取付部
32 補強部
40 走行部材
50 リフト部材
51 固定部
51a 後端部
52 テーブル部
52a テーブル上面
52b 枠状ストッパ
53 昇降部
53a 支点軸
53b 脚部
53c 油圧シリンダ
53d ペダル
53e レバー
54 第一環状部
54a 第一貫通孔
55 収納部
55a 収納ボックス
55b 収納取付板
55c 収納支持部
60 載置部材
61 台座部
61a 後端面
62 移動部
63 第二環状部
63a 第二貫通孔
70 ロック部材
80 吊り部材
81 本体部
81a 駆動モータ
82 接続部
83 連結部
84 取付部
85 電源
86 ケーブル
90 保持部材
90a 連結板
90b 連結孔
91 挿通部
91a 連結リング
92 回動部
92a 回動軸
A 固定具
B 梁材
F フランジ
F1 下部フランジ
F1a フランジ孔
F2 上部フランジ
F2a フランジ孔
W ウェブ
P プレート
P1 下プレート
P11 下本プレート
P11a 取付孔
P12 下添プレート
P12a 取付孔
P2 上プレート
P21 上本プレート
P21a 取付孔
P22 上添プレート
P22a 取付孔
P3 ウェブプレート
S スペーサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16