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  • 特開-ラテックスフォーム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178783
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】ラテックスフォーム
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/30 20060101AFI20241218BHJP
【FI】
C08J9/30 CEQ
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097195
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】若松 洋平
(72)【発明者】
【氏名】川西 康之
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA12A
4F074AC10
4F074AD11
4F074AG02
4F074AG20
4F074AH04
4F074BB05
4F074BB06
4F074BB09
4F074CB52
4F074DA02
4F074DA17
4F074DA47
4F074DA59
(57)【要約】
【課題】磁性を有する発泡体において、製造時の作業性の向上と製造された発泡体の品質向上を実現し得る技術を提供すること。
【解決手段】本技術では、樹脂と、メジアン径50μm未満の磁性金属粉と、を含有するラテックスフォームを提供する。本技術に係るラテックスフォームには、前記樹脂100質量部に対して、前記磁性金属粉を200質量部以下含有させることもできる。本技術に係るラテックスフォームのアスカーC硬度は、50以下とすることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と、
メジアン径50μm未満の磁性金属粉と、
を含有するラテックスフォーム。
【請求項2】
前記樹脂100質量部に対して、前記磁性金属粉を200質量部以下含有する、請求項1に記載のラテックスフォーム。
【請求項3】
アスカーC硬度が50以下である、請求項1に記載のラテックスフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、ラテックスフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
磁性を有する金属粉を軟質材に分散した磁性エラストマーは、周りの磁場の影響を受けて、形状や硬さを変化させる、所謂、磁歪性を発揮することができる。磁性エラストマーの磁歪性効果を利用した様々な技術が開発されつつある。例えば、特許文献1には、芳香環を有するポリエーテル化合物と芳香環を有するポリイソシアネート化合物の中に磁性粒子が分散したポリウレタンエラストマー組成物を用いることにより、磁場の印加により弾性率が大きく変化する高弾性磁場応答性ソフトマテリアルを製造する技術が開示されている。
【0003】
一方、磁歪性とは逆の効果である、磁性体に歪みを与えることで磁性体の磁場に対する応答が変化する逆磁歪性効果を利用した技術も開発されている。例えば、特許文献2では、磁性粉体が分散された発泡エラストマーをコイル内部に配置して、磁性粉体を有する発泡エラストマーを弾性変形させることで発電する技術が開示されている。
【0004】
また、磁性体を有する発泡体に関する技術も開発されている。例えば、特許文献3では、ポリウレタンフォームからなる基材と、該基材中に配合され互いに連接して配向している複合粒子と、を有し、該複合粒子は、非磁性体からなる熱伝導性粒子と、金属酸化物からなる絶縁皮膜および磁性体を有し該熱伝導性粒子の表面を被覆する被覆層と、からなることにより、熱伝導性が高く、電気絶縁性を有するウレタン発泡成形体を製造する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-210311号公報
【特許文献2】特開2021-72677号公報
【特許文献3】特開2014-65159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
磁歪性効果を狙った磁性弾性体においては、磁場を印加したときに、形状や硬さをダイナミックに変化させられる材料が求められる。この磁歪性効果による変化幅を大きくするためには、磁性粉を多く混合する必要があるが、磁性粉を多く混合することで材料が硬くなり形状や硬度が変化しにくくなるといった問題がある。そこで、非発泡体よりも発泡体の方が内部に空間があるため、柔らかさを維持できる可能性が高いと考えられる。
【0007】
一方、逆磁歪性効果を狙った磁性弾性体においては、変形したときの発電量が多くなるような材料が求められている。発電量を多くするためには材料を圧縮したときに、横向きの変化がより小さい方が良いという事が分かっている。そこで、非発泡体のエラストマー材よりも内部に空間がありポアソン比が小さい発泡体の方が、逆磁歪性効果にも有利であると考えられる。
【0008】
このような背景の下、磁性粉を用いた発泡体の開発が進められているが、発泡体製造時に磁性粉が分散にしくかったり沈降したりする問題により、磁性粉の量を増やすことが難しかったり、磁性粉を多く配合することで、発泡倍率が低下してしまったりする問題があった。
【0009】
そこで、本技術では、磁性を有する発泡体において、製造時の作業性の向上と製造された発泡体の品質向上を実現し得る技術を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、磁性体として特定の粒径の磁性金属粉を用いて、発泡体としてラテックスフォームを採用することで、製造時の作業性の向上と製造された発泡体の品質を向上させることに成功し、本技術を完成させるに至った。
【0011】
即ち、本技術では、まず、樹脂と、
メジアン径50μm未満の磁性金属粉と、
を含有するラテックスフォームを提供する。
本技術に係るラテックスフォームには、前記樹脂100質量部に対して、前記磁性金属粉を200質量部以下含有させることもできる。
本技術に係るラテックスフォームのアスカーC硬度は、50以下とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】比較例1、実施例4、実施例6、及び実施例8のラテックスフォームの光学顕微鏡にて拡大倍率100倍で撮影した顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本技術を実施するための好適な形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、いずれの実施形態も組み合わせることが可能である。また、これらにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0014】
1.ラテックスフォーム製造用組成物
本技術に係るラテックスフォームは、ラテックスフォーム製造用組成物を用いて製造される。ラテックスフォーム製造用組成物は、樹脂ラテックスと、磁性金属粉と、を含有する。また、ラテックスフォーム製造用組成物には、架橋剤、架橋促進剤、架橋助剤、可塑剤、界面活性剤、ゲル化剤、及びその他目的に応じてラテックスフォームの製造に用いることが可能な各種成分を含有させることができる。以下、各成分について詳細に説明する。
【0015】
(1)樹脂ラテックス
本技術に用いることができる樹脂ラテックスは、樹脂の未架橋又は部分架橋ポリマー(以下、「樹脂ポリマー」と称する。)が、粒子として水中に分散されたものである。例えば、樹脂ポリマーが天然ゴムの場合、ゴム樹液、これを濃縮したもの、又はゴム樹液等に更に保存剤等を配合したものを用いることができる。樹脂ポリマーが合成ゴムの場合、乳化重合によって調製されたゴムラテックスや、溶液重合等の方法によって得られたポリマーを、界面活性剤と水によって乳化し、必要に応じて溶媒を除去して調製されたゴムラテックスを用いることができる。
【0016】
本技術に用いることができる樹脂ポリマーは、広義の樹脂ポリマーであり、広義の樹脂ポリマーとは、狭義の樹脂ポリマー加えて、ゴムポリマーやエラストマーも包含する。ゴムポリマーとしては、例えば、モノマー単位としてエチレン、プロピレン、スチレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリルアミド、アクリルアミド誘導体、ビニルエーテル、及びビニルピロリドン等を1種以上含むポリマーを使用することができる。より具体的には、例えば、ニトリルゴム(NBR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、シリコーンゴム、ウレタンゴム(U)、エチレンープロピレンゴム(EPM、EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2-ポリブタジエンゴム(1,2-BR)、ブチルゴム(IIR)、クロロスルホン化プリエチレンゴム(CSM)、アクリルゴム(ACM、ANM)、アクリレート-ブタジエンゴム、メチルメタクリレート-ブタジエンゴム(MBR)、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO)、多硫化ゴム(T)、フッ素ゴム(FKM)等が挙げられる。また、これらのゴムのラテックスに加えて、スチレン-ブタジエン-ビニルピリジン系ラテックス、DPL(解重合ラテックス)、クロロスルホン化ポリエチレンラテックス中のゴムポリマー等も用いることができる。エラストマーとしては、例えば、オレフィン系エラストマー(TPO)、スチレン系エラストマー(TPS)、ポリウレタン系エラストマー(TPU)、ポリエステル系エラストマー(TPEE)、ポリ塩化ビニル系エラストマー(TPVC)等が挙げられる。狭義の樹脂としては、例えば、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられ、具体的な一例としては、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)等が挙げられる。
【0017】
(2)磁性金属粉
本技術では、メジアン径50μm未満の磁性金属粉を用いる。メジアン径50μm未満の磁性金属粉を用いることで、ラテックスフォームの製造時の作業性が向上すると共に、発泡反応や架橋反応への影響も少ないため、発泡倍率の低下を抑制し、微細かつ均一なセル構造を有するラテックスフォームを製造することができる。
【0018】
本技術で用いる磁性金属粉のメジアン径の上限は、50μm未満であれば本技術の作用や効果を発揮することができるが、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下、更に好ましくは20μm以下である。また、本技術で用いる磁性金属粉のメジアン径の下限は、本技術の目的や作用効果を損なわない限り自由に設定することができるが、例えば0.5μm以上、好ましくは1μm以上、より好ましくは1.5μm以上、更に好ましくは2.0μm以上である。
【0019】
磁性金属粉として用いる磁性金属としては、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、一般的な磁性金属を、1種又は2種以上、自由に組み合わせて用いることができる。本技術では、磁性金属として、硬磁性金属や軟磁性金属のいずれも自由に組み合わせて用いることが可能である。硬磁性金属とは、外部磁界によって磁化された後、外部磁界を取り去っても磁力が残る金属であり、軟磁性金属とは、外部磁界を取り去ると磁力を失う金属である。本技術では、目的に応じて、硬磁性金属粉と軟磁性金属粉の使い分けをすることができる。
【0020】
本技術に用いることができる磁性金属の具体例としては、例えば、ネオジム磁石(NdFe14B)、ネオジム(Nd)、鉄、ケイ素鉄、カルボニル鉄、Fe-Ni合金(パーマロイ)、Fe-Si-Al合金(センダスト)、Fe-Co合金(パーメンジュール)、電磁ステンレス、Fe-Si合金、Fe-Al合金、Fe-Si-Cr合金、Fe-Ni-Co合金(ミューメタル)、Fe-Ni-Mo合金(スーパーマロイ)、Fe-Co合金、Fe-Si-Al-Cr合金、Fe-Si-B合金、Fe-Si-Co-B合金等が挙げられる。
【0021】
本技術のラテックスフォーム製造用組成物に用いる磁性金属粉の量は、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、ラテックスフォーム製造用組成物中の磁性金属粉の含有量の下限値は、樹脂ラテックス100質量部に対して、例えば10質量部以上、好ましくは15質量部以上、より好ましくは20質量部以上である。用いる磁性金属粉の量を、この範囲とすることにより、磁歪性効果を狙った磁性フォームにおいては、磁歪性効果による変化幅をより大きくすることができ、逆磁歪性効果を狙った磁性フォームにおいては、変形したときの発電量をより多くすることができる。
【0022】
本技術では、用いる磁性金属粉の量の上限値は、樹脂ラテックス100質量部に対して、例えば250質量部以下、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下、更に好ましくは100質量部以下である。用いる磁性金属粉の量を、この範囲とすることにより、製造時の作業性をより向上させると共に、発泡不良を防ぎ、成形性を向上させることができる。
【0023】
(3)架橋剤
本技術のラテックスフォーム製造用組成物には、架橋剤を用いることができる。本技術に用いることができる架橋剤としては、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、ラテックスフォームの製造に用いることができる架橋剤を、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。
【0024】
架橋剤としては、例えば、硫黄、有機過酸化物、又はフェノール化合物等が挙げられる。硫黄による架橋の場合、コロイド状硫黄及び微粉末硫黄の他;二塩化硫黄及びジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等の硫黄化合物等を用いることができる。有機過酸化物による架橋の場合、ヒドロペルオキシド、アシルペルオキシド、アルキルペルオキシド、ペルオキシエステル、ペルオキシケタール、ペルオキシカルボナート等の有機過酸化物を用いることができる。有機過酸化物は、そのまま配合してもよく、無機粉末に吸着させたり、炭化水素や可塑剤に溶解したり、ポリジメチルシロキサン等の不活性の液体に混和したりして安定化したものを、配合に使用してもよい。フェノール化合物による架橋の場合、アルキフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、硫化-p-第三ブチルフェノール樹脂及びアルキルフェノール・スルフィド樹脂等を用いることができる。
【0025】
本技術のラテックスフォーム製造用組成物に用いる架橋剤の量は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、ラテックスフォーム製造用組成物中の架橋剤の含有量の下限値は、樹脂ラテックス100質量部に対して、例えば、例えば、0.2質量部以上、好ましくは0.4質量部以上、より好ましくは0.6質量部以上である。用いる架橋剤の量を、この範囲とすることにより、発泡・架橋前の混合物の粘度を向上させて発泡性を向上させることができる。また、ラテックスフォームの機械的特性を向上させることができる。
【0026】
本技術では、用いる架橋剤の量の上限値は、樹脂ラテックス100質量部に対して、例えば、5.0質量部以下、好ましくは4.0質量部以下、より好ましくは3.0質量部以下である。用いる架橋剤の量を、この範囲とすることにより、発泡不良を防ぎ、成形性を向上させることができる。
【0027】
(4)架橋促進剤
本技術のラテックスフォーム製造用組成物には、架橋促進剤を用いることができる。本技術に用いることができる架橋促進剤としては、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、ラテックスフォームの製造に用いることができる架橋促進剤を、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。
【0028】
架橋促進剤としては、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール及びその塩(ナトリウム塩、亜鉛塩、シクロヘキシルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩等)、2-(4’-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、4-モルホリニル-2-ベンゾチアジルジスルフィド、2-(N,N-ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾールのようなチアゾール類;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ-n-ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、N-ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛のようなジチオカルバミン酸亜鉛類;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、N,N’-ジメチル-N,N’-ジフェニルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドのようなチウラム類;N,N-ジイソプロピル-2-ベンゾチアリルスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアリルスルフェンアミド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドのようなスルフェンアミド類;;並びにそれらの混合物等を挙げることができる。
【0029】
本技術のラテックスフォーム製造用組成物に用いる架橋促進剤の量は、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、ラテックスフォーム製造用組成物中の架橋促進剤の含有量の下限値は、樹脂ラテックス100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上である。用いる架橋促進剤の量を、この範囲とすることにより、架橋速度を上げてガス抜けを抑制し、製造時の発泡性を向上させることができる。また、ラテックスフォームの機械的特性を向上させることができる。
【0030】
本技術では、用いる架橋促進剤の量の上限値は、樹脂ラテックス100質量部に対して、例えば、10質量部以下、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。用いる架橋促進剤の量を、この範囲とすることにより、架橋速度が上がり過ぎることによって未発泡となることを防ぎ、ラテックスフォームの成形性を向上させることができる。
【0031】
(5)架橋助剤
本技術のラテックスフォーム製造用組成物には、架橋助剤を用いることができる。本技術に用いることができる架橋助剤としては、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、ラテックスフォームの製造に用いることができる架橋助剤を、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。
【0032】
架橋助剤としては、例えば、酸化亜鉛(滑性亜鉛華)、酸化マグネシウム等の金属酸化物が挙げられる。この中でも、本技術では、発泡速度と架橋速度のタイミング調整などの観点から、酸化亜鉛を用いることが好ましい。
【0033】
本技術のラテックスフォーム製造用組成物に用いる架橋助剤の量は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、ラテックスフォーム製造用組成物中の架橋助剤の含有量の下限値は、樹脂ラテックス100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。用いる架橋助剤の量を、この範囲とすることにより、架橋速度を上げてガス抜けを抑制し、製造時の発泡性を向上させることができる。また、ラテックスフォームの機械的特性を向上させることができる。
【0034】
本技術では、用いる架橋助剤の量の上限値は、樹脂ラテックス100質量部に対して、例えば、10質量部以下、好ましくは7質量部以下、より好ましくは4質量部以下である。用いる架橋助剤の量を、この範囲とすることにより、架橋速度が上がり過ぎることによって未発泡となることを防ぎ、ラテックスフォームの成形性を向上させることができる。
【0035】
(6)可塑剤
本技術のラテックスフォーム製造用組成物には、可塑剤を用いることができる。本技術に用いることができる可塑剤としては、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、ラテックスフォームの製造に用いることができる可塑剤を、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。
【0036】
可塑剤としては、例えば、オリーブ油、ひまし油、紅花油、綿実油、あまに油、菜種油、大豆油、落下生油、パーム油、やし油、コーン油等の植物油及び動物油、並びにそれらを脱水又は水素化して得られる脂肪酸エステル油等の生物起源脂肪酸エステル油、例えば脱水ひまし油等;パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等の炭化水素系プロセス油、スピンドル油、ペトロラタム及び流動パラフィンの等の炭化水素油;フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジ-(2-エチルヘキシル)、テトラヒドロフタル酸ジ(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジ-n-オクチル、アジピン酸ジ(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソデシル、リン酸トリクレジル、リン酸アルキルアリル、ブチルフタリルブチルグリコレート、セバシン酸ジ-n-ブチル、セバシン酸ジ(2-エチルヘキシル)、トリエチレングリコール・ジ(2-エチル・ヘキソエート)、クエン酸アセチル・トリ-n-ブチル等が挙げられる。
【0037】
本技術のラテックスフォーム製造用組成物に用いる可塑剤の量は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、ラテックスフォーム製造用組成物中の可塑剤の含有量の下限値は、樹脂ラテックス100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上である。用いる可塑剤の量を、この範囲とすることにより、ラテックスフォームの機械的特性を向上させることができる。
【0038】
本技術では、用いる可塑剤の量の上限値は、樹脂ラテックス100質量部に対して、例えば、8質量部以下、好ましくは7質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。用いる可塑剤の量を、この範囲とすることにより、ラテックスフォームの成形性を向上させることができる。
【0039】
(7)界面活性剤
本技術のラテックスフォーム製造用組成物には、界面活性剤を用いることができる。本技術に用いることができる界面活性剤としては、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、ラテックスフォームの製造に用いることができる界面活性剤を、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。
【0040】
(7-1)ノニオン性界面活性剤
本技術のラテックスフォーム製造用組成物には、界面活性剤としてノニオン性界面活性剤を用いることができる。ノニオン性界面活性剤は、親水基と疎水基とを有する界面活性剤であって、水に溶けたときにイオン化しない親水基を持つ(水中でイオン解離しない)界面活性剤である。
【0041】
本技術に用いることができるノニオン性界面活性剤としては、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、ラテックスフォームの製造に用いることができるノニオン性界面活性剤を、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。ノニオン性界面活性剤としては、例えば、親水基としてエーテル結合を有するポリアルキレングリコール型ノニオン性界面活性剤、親水基として水酸基を有する多価アルコール型ノニオン性界面活性剤等が挙げられる。疎水基としては、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂肪族の側鎖を有する芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0042】
本技術では、ノニオン性界面活性剤として、ポリアルキレングリコールの誘導体(ポリアルキレングリコール型ノニオン性界面活性剤)を用いることが好ましい。ポリアルキレングリコールの誘導体としては、例えば、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルやポリオキシアルキレンジアルキルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンモノアルケニルエーテルやポリオキシアルキレンジアルケニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンモノアリールエーテルやポリオキシアルキレンジアリールエーテル等のポリオキシアルキレンアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレングリコールモノ脂肪酸エステルやポリオキシアルキレングリコールジ脂肪酸エステル等のポリオキシアルキレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレンジアミン等が挙げられる。
【0043】
本技術のラテックスフォーム製造用組成物に用いるノニオン性界面活性剤の量は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、ラテックスフォーム製造用組成物中のノニオン性界面活性剤の含有量の下限値は、樹脂ラテックス100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上である。用いるノニオン性界面活性剤の量を、この範囲とすることにより、製造時の発泡性を向上させ、ラテックスフォームの成形性を向上させると共に、微細なセルを有するラテックスフォームを製造することができる。
【0044】
本技術では、用いるノニオン性界面活性剤の量の上限値は、樹脂ラテックス100質量部に対して、例えば、20質量部以下、好ましくは15質量部以下、より好ましくは12質量部以下である。用いるノニオン性界面活性剤の量をこの範囲とすることにより、ラテックスフォームの機械的特性を向上させることができる。
【0045】
(7-2)ノニオン性界面活性剤以外の界面活性剤
本技術のラテックスフォーム製造用組成物には、界面活性剤としてノニオン性界面活性剤以外の界面活性剤を用いることもできる。ノニオン性界面活性剤以外の界面活性剤としては、水に溶けたときに疎水基の部分がマイナス(負)イオンに電離するアニオン性界面活性剤、水に溶けたときに疎水基の部分がプラス(正)イオンに電離するカチオン性界面活性剤、水に溶けたときにアルカリ性領域ではアニオン界面活性剤の性質を示し、酸性領域ではカチオン界面活性剤の性質を示す両性界面活性剤が挙げられる。
【0046】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、カゼイン等の乳たん白質、アルキルベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、例えば、塩化ステアリルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム等が挙げられる。両性界面活性剤としては、例えば、アミノ酸型、ベタイン型、アミンオキシド型等の両性界面活性剤が挙げられる。
【0047】
本技術のラテックスフォーム製造用組成物に用いるノニオン性界面活性剤以外の界面活性剤の量は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、ラテックスフォーム製造用組成物中のノニオン性界面活性剤以外の界面活性剤の含有量の下限値は、樹脂ラテックス100質量部に対して、例えば、0.05質量部以上、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上である。用いるノニオン性界面活性剤以外の界面活性剤の量を、この範囲とすることにより、製造時における気泡膜を安定化させることができる。
【0048】
本技術では、用いるノニオン性界面活性剤以外の界面活性剤の量の上限値は、樹脂ラテックス100質量部に対して、例えば、5質量部以下、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下である。用いるノニオン性界面活性剤以外の界面活性剤の量をこの範囲とすることにより、製造時における気泡膜が安定化しすぎることによるゲル化障害を防止することができる。
【0049】
(8)ゲル化剤
本技術のラテックスフォーム製造用組成物には、ゲル化剤を用いることができる。ゲル化剤を用いることで、エマルジョン組成物中において、乳濁液の状態、すなわちエマルジョンの状態で存在するポリマー粒子の化学的安定性を低下させると共に、この粒子を凝集させて、所謂ゲル化状態とすることができる。本技術に用いることができるゲル化剤としては、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、ラテックスフォームの製造に用いることができるゲル化剤を、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。
【0050】
このゲル化剤としては、例えば、ケイフッ化ナトリウム、ケイフッ化カリウム、ケイフッ化カルシウムのようなヘキサフルオロケイ酸塩;又はシクロヘキシルアミンの酢酸塩、スルファミン酸塩のようなシクロヘキシルアミン塩等が挙げられる。
【0051】
本技術のラテックスフォーム製造用組成物に用いるゲル化剤の量は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、ラテックスフォーム製造用組成物中のゲル化剤の含有量の下限値は、樹脂ラテックス100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上である。用いるゲル化剤の量を、この範囲とすることにより、製造時の発泡性を向上させ、ラテックスフォームの成形性を向上させることができる。
【0052】
本技術では、用いるゲル化剤の量の上限値は、樹脂ラテックス100質量部に対して、例えば、15質量部以下、好ましくは12質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。用いるゲル化剤の量をこの範囲とすることにより、ラテックスフォームの機械的特性を向上させることができる。
【0053】
(9)その他
本技術のラテックスフォーム製造用組成物には、本技術の目的や効果を損なわない限り、その他の成分として、ラテックスフォームの製造に用いることができる各種成分を、目的に応じて1種又は2種以上自由に選択して用いることができる。
【0054】
本技術に係るラテックスフォーム製造用組成物に用いることができる成分としては、例えば、酸化防止剤、安定剤、着色剤、分散剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、防カビ剤、増粘剤等を挙げることができる。
【0055】
2.ラテックスフォーム
本技術に係るラテックスフォームは、前述したラテックスフォーム製造用組成物を用いて製造される。
【0056】
本技術に係るラテックスフォームは、後述する実施例の写真に示す通り、磁性金属を有するにも関わらず、微細かつ均一なセル構造を有する。また、本技術に係るラテックスフォームは、良好な柔らかさを有することを特徴とする。
【0057】
本技術に係るラテックスフォームの見かけ比重(実重量(g)/体積測定値(cm))は、本技術の目的や効果を損なわない限り、特に限定されない。本技術に係るラテックスフォームの見かけ比重の下限値は、例えば0.4g/cm以上、0.5g/cm以上、0.6g/cm以上である。本技術に係るラテックスフォームの見かけ比重の上限値は、例えば1.0g/cm以下、好ましくは0.9g/cm以下、より好ましくは0.8g/cm以下である。
【0058】
本技術に係るラテックスフォームのアスカーC硬度は、本技術の目的や効果を損なわない限り、特に限定されない。本技術に係るラテックスフォームのアスカーC硬度の下限値は、例えば5以上、10以上、15以上である。本技術に係るラテックスフォームのアスカーC硬度の上限値は、例えば60以下、好ましくは50以下、より好ましくは40以下、更に好ましくは30以下である。なお、本技術において、アスカーC硬度は、日本ゴム協会標準規格(SRIS 0101)に規定の方法に従って測定した値である。
【0059】
3.ラテックスフォームの用途
本技術に係るラテックスフォームは、磁性を有すること、及び微細かつ均一なセル構造であることを利用して、様々な用途に用いることができる。例えば、磁歪性効果や逆磁歪性効果を利用した用途に好適に用いることができる。より具体的には、例えば、振動制御、磁場配向による熱伝導制御、磁場配向による力学的異方性付与、磁性トナー用の転写ロール、磁場応答アクチュエーター、発電、及びセンシング等の用途に使用することができる。
【0060】
4.ラテックスフォームの製造方法
本技術に係るラテックスフォームは、前述した本技術に係るラテックスフォーム製造用組成物の各成分を混合して組成物を調製し、発泡、ゲル化させ、加熱架橋することにより製造することができる。ラテックスフォームの製造方法としては、ラテックスフォーム製造用組成物を物理的(機械的)に起泡させ、常温で凝固(ゲル化)させるダンロップ法と、起泡を化学的に行い、ゲル化を凍結で行うタラレイ法とが知られている。本技術ではどちらの製造方法を用いることも可能であるが、特に、ダンロップ法を採用することが好ましい。
【0061】
ダンロップ法は、組成物調製工程、発泡・ゲル化工程、架橋工程等を行う方法である。
以下、各工程について説明する。
【0062】
(1)組成物調製工程
組成物調製工程は、ラテックスフォーム製造用組成物を調製する工程である。具体的には、組成物調製工程では、樹脂ラテックスに、磁性金属粉、架橋剤、架橋促進剤、架橋助剤、可塑剤、界面活性剤等の各種添加剤を添加し、ミキサー等で十分に撹拌して混合することにより、ラテックスフォーム製造用組成物を調製する。
【0063】
(2)発泡・ゲル化工程
発泡・ゲル化工程は、調製されたラテックスフォーム製造用組成物に、ゲル化剤、及び気体を混入させ、十分に撹拌混合することで発泡させると共にゲル化させ、ゲル状物を得る工程である。
【0064】
本技術の発泡・ゲル化工程において、用いることができる気体としては、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、ラテックスフォームの製造に用いることができる気体を、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。例えば、空気、窒素、二酸化炭素、及び周囲温度で通常気体であるフルオロカーボン類が挙げられる。
【0065】
(3)架橋工程
架橋工程は、前記発泡・ゲル化工程で得られたゲル状物を、流延、注型、又は押出し成形等の方法により所望の形状に加工し、次いで、加熱して架橋反応を進行させる工程である。架橋工程における加熱の温度は、用いる架橋剤の種類等に応じて自由に設定することができる。
【0066】
架橋工程後、脱型、洗浄、乾燥、切断、研磨等のラテックスフォームの用途等に応じた所望の工程を加えて、所定形状のラテックスフォームを製造することができる。
【実施例0067】
以下、実施例に基づいて本技術を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本技術の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0068】
<実験例1>
(1)原料
ゴムラテックス:NBRラテックス
可塑剤:オリーブ油
ノニオン性界面活性剤兼泡沫補強剤:ポリアルキレングリコール誘導体(分子量:3069~4560、CO単位を有する)
架橋剤:硫黄
架橋助剤:酸化亜鉛
架橋促進剤:チアゾール系架橋促進剤
酸化防止剤1:フェノール系酸化防止剤
紫外線吸収剤・酸化防止剤2:ビスフェノール系紫外線吸収剤/酸化防止剤
アニオン性界面活性剤1:乳タンパク質
アニオン性界面活性剤2:ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ソーダ
磁性金属粉1:ネオジム磁石粉(マグネクエンチ社製「MQFP-089」)
磁性金属粉2:ネオジム磁石粉(マグネクエンチ社製「MQP-085」)
磁性金属粉3:カルボニル鉄粉(BASF社製「CIP CD」)
ゲル化剤:ケイフッ化ソーダ
沈殿防止剤:ベントナイト
分散剤:スルホン酸系分散剤
pH調整剤:水酸化カリウム
【0069】
(2)ラテックスフォームの製造
下記表1に示す原料を用いて、ダンロップ法に準じて、各ラテックスフォームを製造した。具体的には、まず、下記表1に示す原料のうち、磁性金属粉及びゲル化剤混合物以外の各成分を撹拌混合した後、各磁性金属粉を加えて更に撹拌混合して組成物を調製した。調製した組成物を、撹拌速度を上げて更に撹拌して起泡させた状態で、ゲル化剤混合物を加えて、撹拌速度を下げて撹拌した後、型枠に組成物を注いで、室温で放置した。型枠から取り出し、減圧乾燥及び恒温槽での加熱を行い、各ラテックスフォームを製造した。
【0070】
(3)評価
製造したラテックスフォームの重量及び体積を測定し、見かけ比重を算出した。また、製造したラテックスフォームについて、日本ゴム協会標準規格(SRIS 0101)に規定の方法に従って、アスカーC硬度の測定を行った。
【0071】
(4)結果
結果を下記の表1に示す。また、比較例1、実施例4、実施例6、及び実施例8のラテックスフォームの光学顕微鏡にて拡大倍率100倍で撮影した顕微鏡写真を、図1に示す。
【表1】
【0072】
(5)考察
表1、及び図1に示す通り、メジアン径50μm以上の磁性金属粉を用いた比較例2は混合不可によりラテックスフォームを製造することができなかったが、メジアン径50μm未満の磁性金属粉を用いた実施例1~8は、微細かつ均一なセル構造を有するラテックスフォームを製造することができた。
図1