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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178786
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】車両懸架装置用スプリングシート
(51)【国際特許分類】
   B60G 15/06 20060101AFI20241218BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20241218BHJP
   F16F 1/12 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
B60G15/06
F16F9/32 B
F16F1/12 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097203
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 航己
(72)【発明者】
【氏名】林 正雄
【テーマコード(参考)】
3D301
3J059
3J069
【Fターム(参考)】
3D301AA60
3D301AA69
3D301CA09
3D301DA08
3D301DA31
3D301DA45
3D301DA51
3D301DA86
3D301DB12
3D301DB15
3D301DB17
3J059AB02
3J059AB11
3J059BA01
3J059CC03
3J059GA02
3J069CC02
3J069DD39
(57)【要約】
【課題】高減衰材料を用いても低温時の亀裂や割れを抑制できる車両懸架装置用スプリングシートを提供する。
【解決手段】車体側部材と車輪側部材との間に配置されるコイルスプリング17の端部に設けられるスプリングシート2において、前記コイルスプリング17と当接する第1当接面212を有する弾性部材21と、少なくとも前記第1当接面212において前記弾性部材21に埋設され、前記弾性部材21より高剛性の剛性部材22と、を有し、前記弾性部材21は、前記第1当接面212の一部に第1穴部215を有し、前記剛性部材22は、前記第1穴部215の位置に設けられ、当該第1穴部215の開口縁より低い、前記コイルスプリング17に向かう第1凸部223を有する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側部材と車輪側部材との間に配置されるコイルスプリングの端部に設けられるスプリングシートにおいて、
前記コイルスプリングと当接する第1当接面を有する弾性部材と、
少なくとも前記第1当接面において前記弾性部材の前記コイルスプリングとは反対側に配置され、前記弾性部材より高剛性の剛性部材と、を有し、
前記弾性部材は、前記第1当接面の一部に第1穴部を有し、
前記剛性部材は、前記第1穴部の位置に設けられ、前記コイルスプリングに向かう第1凸部であって、当該第1凸部の頂面が前記第1穴部の開口縁より没入する没入位置にある第1凸部を有する車両懸架装置用スプリングシート。
【請求項2】
前記コイルスプリングが収縮した場合に、当該コイルスプリングが、前記第1穴部の位置において前記第1凸部に当接する請求項1に記載の車両懸架装置用スプリングシート。
【請求項3】
前記第1穴部及び前記第1凸部は、前記第1当接面の両端部に設けられている請求項1に記載の車両懸架装置用スプリングシート。
【請求項4】
前記第1穴部及び前記第1凸部は、前記第1当接面の両端部と、当該両端部の間とに設けられ、
前記両端部の間に設けられた第1凸部の頂面は、前記両端部に設けられた第1凸部の頂面より前記第1穴部の開口縁に近い請求項1に記載の車両懸架装置用スプリングシート。
【請求項5】
前記弾性部材の前記第1当接面の反対側の面に当接する台座部材をさらに備え、
前記弾性部材は、前記台座部材に当接する第2当接面の一部に第2穴部を有し、
前記剛性部材は、前記第2穴部の位置に設けられ、前記台座部材に向かう第2凸部であって、当該第2凸部の頂面が前記第2穴部の開口縁より没入する没入位置にある第2凸部を有する請求項1~4のいずれか一項に記載の車両懸架装置用スプリングシート。
【請求項6】
前記弾性部材は、前記第2当接面に、前記第2穴部が外気と連通する空気抜き孔を有する請求項5に記載の車両懸架装置用スプリングシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両懸架装置用スプリングシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
サスペンション用アッパサポートにおいて、サスペンションスプリング(70)の上端を支持するスプリング受金具(32)を設け、ロワ側支持金具(24)とスプリング受金具(32)との対向面に形成された上側当接ゴム層(30)及び下側当接ゴム層(40)が、サスペンションスプリング(70)の付勢力で相互に当接して重ね合わされるようにしたものが知られている(特許文献1参照)。サスペンションスプリング(70)が収縮するときの力は座面ゴム(42)に加わる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-196574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術の座面ゴムの減衰特性を向上させるために、座面ゴムにロスファクタが高い高減衰材料を採用することが検討されているが、この種の高減衰材料は低温時の剛性が高いので、大きな入力があると亀裂や割れが発生するおそれがある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、高減衰材料を用いても低温時の亀裂や割れを抑制できる車両懸架装置用スプリングシートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、コイルスプリングと当接する当接面を有する弾性部材は、当接面の一部に穴部を有し、前記弾性部材のコイルスプリングとは反対側に配置された高剛性の剛性部材は、穴部の位置において当該穴部の開口縁より没入する没入位置に凸部を有することによって、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、スプリングシートの弾性部材に高減衰材料を用いても、低温時の亀裂や割れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係るスプリングシートが用いられる車両懸架装置の一例を示す概略図である。
図2】本発明に係るスプリングシートの一実施の形態を示す半断面図である。
図3図2のスプリングシートを示す平面図及び断面図である。
図4図2のスプリングシートの作用を説明するための半断面図である。
図5】本発明に係るスプリングシートの他の実施の形態を示す半断面図である。
図6図5のスプリングシートを示す平面図である。
図7】本発明に係るスプリングシートのさらに他の実施の形態を示す半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態例を説明する。図1は、本発明に係るスプリングシート2が用いられる車両懸架装置1の一例を示す概略図である。図1において、符号11は車両、符号1は車両懸架装置を示し、車両懸架装置1において、符号12はタイヤ、符号13はドライブシャフト、符号14はロアリンク、符号15はアクスル、符号16はショックアブソーバ、符号17はコイルスプリングをそれぞれ示す。
【0010】
本発明に係るスプリングシート2は、車両懸架装置1のコイルスプリング17の上端部又は下端部に設けられる部品である。本発明に係るスプリングシート2は、コイルスプリング17の上端部と車体側部材(車両ボディなど)との間、又はコイルスプリング17の下端部と車輪側部材(ロアリンクなど)との間に配置される。図2は、本発明に係るスプリングシート2の一実施の形態を示す半断面図、図3は、図2のスプリングシート2を示す平面図及びA-A線,B-B線,C-C線のそれぞれに沿う断面図である。
【0011】
本実施形態のスプリングシート2は、ゴムなどの弾性材料で形成された弾性部材21の内部に、金属、プラスチック又はセラミックなどの高剛性を有する材料で形成された剛性部材22が埋設されてなる部品である。本実施形態のスプリングシート2は、図3の平面図に示すように、外周がコイルスプリング17の外径より大径の円形状とされ、コイルスプリング17の下端部と当接して受容するスプリング受容部211と、中央に形成された通孔に向かって立ち上がる環状隆起部214とを有する。
【0012】
図2に示すように、スプリング受容部211の上面がコイルスプリング17と当接する第1当接面212となり、スプリング受容部211の下面がロアリンク18などの車輪側部材3(後述する他の実施形態では台座部材23)に当接する第2当接面213となる。これら第1当接面212と第2当接面213はいずれも平面で構成されている。
【0013】
弾性部材21は、ゴムなどの弾性材料から構成されるが、減衰特性を向上させるために、ロスファクタLが0.2以上の高減衰特性を有する弾性材料を用いることがより好ましい。ここで、ロスファクタLとは、弾性体の一端に入力される加振振幅xと、弾性体の他端に伝達される伝達力Fとの位相差δの正接(tanδ)で表される減衰効をいい、減衰係数に比例する値である。こうしたロスファクタが高い高減衰特性を有する弾性材料としては、フッ化ビニリデン系(FKM)などのフッ素ゴム、ビニルメチルシリコーンゴム(VMQ)などのシリコーンゴム、ブチルゴム(IIR)などを例示することができる。このような高減衰特性を有する弾性材料で弾性部材21を成形すると、コイルスプリング17の振動がより早く収まるので、コイルスプリング17の共振をより一層吸収することができる。
【0014】
弾性部材21の第1当接面212において、コイルスプリング17とは反対側に配置される剛性部材22は、弾性部材21の強度を補填してスプリングシート2全体の剛性を確保するための部材である。本実施形態の剛性部材22は、弾性部材21より高剛性であれば特に限定されず、鋼材やアルミニウム材などの金属材料、繊維強化プラスチックなどの有機材料又はセラミックなどの無機材料等々、適宜の材料で構成することができる。本実施形態の剛性部材22は、図2の断面図に示すように、弾性部材21のスプリング受容部211の形状に倣って円板形状とされた外周部221と、同じく弾性部材21の環状隆起部214の形状に倣って環状の筒状とされた内周部222とを有する。
【0015】
なお、図2に示す本実施形態のスプリングシート2では、後述する第1凸部223及び第2凸部224以外、剛性部材22は弾性部材21の内部に埋設又は弾性部材21に被覆されているが、少なくとも剛性部材22の外周部221が弾性部材21のスプリング受容部211においてコイルスプリング17とは反対側に配置されていればよいので、その他の部分は弾性部材21から露出する構造であってもよい。図7は、本発明に係るスプリングシートの他の実施の形態を示す半断面図であり、剛性部材22の外周部221の上面は、弾性部材21のスプリング受容部211に被覆されているが、剛性部材22のその他の部分は弾性部材21から露出している。
【0016】
本実施形態のスプリングシート2では、図2及び図3に示すように、弾性部材21の第1当接面212の所定の3箇所のそれぞれに、第1穴部215が形成されている。この第1穴部215は、コイルスプリング17の外径と同等の穴径を有する円形の穴である。穴形状が矩形である場合のように鋭利なコーナー部があると、コイルスプリング17の荷重が作用した場合に鋭利なコーナー部から亀裂が発生するおそれがあるため、円形又は全周に鋭利なコーナー部がない曲線のみで構成された穴形状であることが好ましい。また、第1穴部215の穴径は、コイルスプリング17が収縮した場合に、後述する剛性部材22の第1凸部223に当接できる大きさがあればよい。逆に第1穴部215の穴径が大き過ぎると、第1穴部215以外の第1当接面212とコイルスプリング17との接触面積が減少し、高減衰特性が低下するので、コイルスプリング17の外径以下とすることが好ましい。
【0017】
本実施形態のスプリングシート2では、図2及び図3に示すように、剛性部材22は、第1穴部215が形成された3箇所のそれぞれに、コイルスプリング17に向かう第1凸部223が形成されている。この第1凸部223は、剛性部材22を製造する際に一体的に同時に形成してもよいし、剛性部材22の本体を製造したのち別部品として取り付けてもよい。
【0018】
本実施形態の第1凸部223は、その頂面223aが第1穴部215の開口縁215aより没入する没入位置とされ(図3のA-A断面,B-B断面、C-C断面を参照)、コイルスプリング17が伸縮していない非バウンド状態においては、図2に示すようにコイルスプリング17に当接せず、図4に示すようにコイルスプリング17が所定長以上に収縮した場合に、当該コイルスプリング17が第1凸部223の頂面223aに当接する高さとされている。図4は、スプリングシート2の作用を説明するための半断面図であり、コイルスプリング17が所定長以上に収縮した状態を示す図である。また、本実施形態の第1凸部223の径は、第1穴部215の穴径より小さく、且つコイルスプリング17に当接しても変形せずに受容できる径以上とされている。
【0019】
本実施形態のスプリングシート2では、図3に示すように、第1穴部215及び第1凸部223は、弾性部材21の第1当接面212の両端部と、当該両端部の間とに設けられている。コイルスプリング17は螺旋状の部材であることから、コイルスプリング17と弾性部材21のスプリング受容部211とが接する部分は、図3に符号17を付した太い点線で示すように、スプリング開始点171からスプリング離発着点172までとなる。スプリング開始点171がコイルスプリング17の最端部に相当し、スプリング離発着点172以降がコイルスプリング17の螺旋部分に相当する。
【0020】
本実施形態のスプリングシート2では、図3に示すように、第1穴部215及び第1凸部223は、スプリング開始点171の近傍の第1当接面212に1箇所設けられ、スプリング離発着点172の近傍の第1当接面212に1個所設けられ、さらにこれらの中間点又はその近傍の第1当接面212に1箇所設けられている。なお、第1穴部215及び第1凸部223の配置箇所は、図3に示す実施形態にのみ限定されず、2箇所又は4箇所以上設けてもよい。第1穴部215及び第1凸部223を2箇所設ける場合は、図3に示すように、スプリング開始点171の近傍の第1当接面212に1箇所設け、スプリング離発着点172の近傍の第1当接面212に1個所設けてもよいし、これ以外の箇所に設けてもよい。
【0021】
なお、図3に示すように、第1穴部215及び第1凸部223を3箇所に設ける場合に、C-C断面で示す両端部の間に設けられた第1凸部223の頂面223aは、A-A断面及びB-B断面で示す両端部に設けられた第1凸部223の頂面223aより第1穴部215の開口縁215aに近く設定することが好ましい。すなわち、図3において、3つの第1穴部215の開口縁215aの位置が同じとした場合に、第1穴部215の開口縁215aから第1凸部223の頂面223aまでの距離をそれぞれHa,Hb,Hcとすると、Hc<Ha,Hc<Hb(Hc<Ha=Hbでもよい。)とすることが好ましい。
【0022】
コイルスプリング17の下端部に当接する第1当接面212のうち、スプリング開始点171及びスプリング離発着点172に作用する力が最も大きく、それ以外の第1当接面212に作用する力はそれより小さい。そのため、3箇所に形成した第1凸部223の頂面223aの位置(頂面223aと開口縁215aとの距離H)を等しくすると、コイルスプリング17が収縮した場合に最初に両端部の第1凸部223に当接し、さらに収縮してから両端部の間の第1凸部223に当接することになる。しかしながら、両端部の間の第1凸部223の頂面223aを両端部の第1凸部223の頂面223aより第1穴部215の開口縁215aに近く設定しておくことで、コイルスプリング17が収縮した場合に、3箇所に設けた第1凸部223に同時に当接することになる。これにより、コイルスプリング17の共振を抑制することができる。
【0023】
次に作用を説明する。図4は、スプリングシート2の作用を説明するための半断面図であり、コイルスプリング17が所定長以上に収縮した状態を示す図である。コイルスプリング17に路面などから、所定閾値未満の振動が入力すると、コイルスプリング17の下端部(上端部にも本実施形態のスプリングシート2が設けられている場合は上端部も同様。以下同じ。)は、弾性部材21の第1穴部215以外の第1当接面212に当接しているので、当該弾性により入力した振動が吸収される。
【0024】
これに対し、コイルスプリング17の下端部に所定値以上の振動が入力すると、図4に示すように3箇所の第1穴部215においてコイルスプリング17の下端部が第1凸部223に当接する。これにより、コイルスプリング17から受ける力の大部分は剛性部材22で受容することになるので、弾性部材21に作用する過大な力を抑制することができる。その結果、スプリングシートの弾性部材21に、たとえばロスファクタLが0.2以上の高減衰材料を用いても、低温時の亀裂や割れを抑制することができる。
【0025】
また、本実施形態のスプリングシート2では、第1穴部215及び第1凸部223は、最も作用する力が大きいスプリング開始点171とスプリング離発着点172の近傍の、第1当接面212の両端部に設けられているので、弾性部材21に作用する過大な力をより一層抑制することができる。
【0026】
また、本実施形態のスプリングシート2では、第1穴部215及び第1凸部223は、最も作用する力が大きいスプリング開始点171とスプリング離発着点172の近傍の、第1当接面212の両端部に加え、当該両端部の間にも設けられ、両端部の間に設けられた第1凸部223の頂面223aは、両端部に設けられた第1凸部223の頂面223aより第1穴部215の開口縁215aに近く設定されているので、コイルスプリング17が収縮した場合に、3箇所に設けた第1凸部223に同時に当接することになる。これにより、コイルスプリング17の共振を抑制することができる。
【0027】
《他の実施形態》
図5は、本発明に係るスプリングシート2の他の実施の形態を示す半断面図、図6は、図5のスプリングシート2を示す平面透視図である。図6は、スプリングシート2の裏面に形成した第2穴部216及び第2凸部224を示すため、当該裏面を透視した平面図である。図2図4に示す実施形態では、コイルスプリング17との第1当接面212にのみ第1穴部215と第1凸部223を設けたが、弾性部材21のスプリング受容部211の反対側の面(図2の裏面)にも同様の構造を採用することができる。図5及び図6において、図2及び図3の構成と同じ構成には同じ符号を付し、その説明をここに援用することで詳細な説明を省略する。
【0028】
本実施形態のスプリングシート2では、図5及び図6に示すように、弾性部材21の第1当接面212の反対側の面である第2当接面213に当接する台座部材23をさらに備える。この台座部材23は、スプリングシート2と車輪側部材3との間に適宜介装される金属、プラスチック又はセラミックなどからなる部品である。
【0029】
本実施形態の弾性部材21は、台座部材23に当接する第2当接面213の所定の3箇所のそれぞれに第2穴部216が形成されている。この第2穴部216は、第1穴部215と同様、コイルスプリング17の外径と同等の穴径を有する円形の穴とすることが好ましい。穴形状が矩形である場合のように鋭利なコーナー部があると、コイルスプリング17の荷重が作用した場合に鋭利なコーナー部から亀裂が発生するおそれがあるため、円形又は全周に鋭利なコーナー部がない曲線のみで構成された穴形状であることが好ましい。また、第2穴部216の穴径は、コイルスプリング17が収縮した場合に、剛性部材22の第2凸部224が台座部材23に当接できる大きさがあればよい。逆に第2穴部216の穴径が大き過ぎると、第2穴部216以外の第2当接面213と台座部材23との接触面積が減少し、高減衰特性が低下するので、第1穴部215と同様、コイルスプリング17の外径以下とすることが好ましい。
【0030】
本実施形態のスプリングシート2では、図5及び図6に示すように、剛性部材22は、第2穴部216が形成された3箇所のそれぞれに、台座部材23に向かう第2凸部224が形成されている。この第2凸部224は、剛性部材22を製造する際に一体的に同時に形成してもよいし、剛性部材22の本体を製造したのち別部品として取り付けてもよい。
【0031】
本実施形態の第2凸部224は、その頂面224aが第2穴部216の開口縁216aより没入する没入位置とされ(図6のD-D断面を参照)、コイルスプリング17が伸縮していない非バウンド状態においては、図5に示すように台座部材23に当接せず、コイルスプリング17が所定長以上に収縮した場合に、台座部材23が第2凸部224に当接する高さとされている。また、本実施形態の第2凸部224の径は、第2穴部216の穴径より小さく、且つ台座部材23に当接しても変形せずに受容できる径以上とされている。
【0032】
本実施形態のスプリングシート2では、図6に示すように、第2穴部216及び第2凸部224は、弾性部材21の第1当接面212の両端部と、当該両端部の間とのそれぞれに対応する位置に設けられている。すなわち、第1穴部215及び第1凸部223が設けられた3箇所と同じ3箇所に設けられている。なお、第2穴部216及び第2凸部224の配置箇所は、図6に示す実施形態にのみ限定されず、2箇所又は4箇所以上設けてもよい。第2穴部216及び第2凸部224を2箇所設ける場合は、図6に示すように、スプリング開始点171の近傍の第2当接面213に1箇所設け、スプリング離発着点172の近傍の第2当接面213に1個所設けてもよいし、これ以外の箇所に設けてもよい。
【0033】
なお、図6に示すように、第2穴部216及び第2凸部224を3箇所に設ける場合に、両端部の間に設けられた第2凸部224の頂面224aは、両端部に設けられた第2凸部224の頂面224aより第2穴部216の開口縁216aに近く設定することが好ましい。図3にA-A断面、B-B断面及びC-C断面で示す3箇所の第1穴部215及び第1凸部223と同じ理由である。
【0034】
本実施形態のスプリングシート2では、図5及び図6に示すように、弾性部材21の第2当接面213に、第2穴部216が外気と連通する空気抜き孔217が形成されている。コイルスプリング17が収縮し、スプリングシート2が当該コイルスプリング17に押圧された場合に、第2穴部216と台座部材23とで仕切られた空間の空気を抜くためである。
【0035】
このように本実施形態のスプリングシート2では、弾性部材21の第1当接面212の反対側の第2当接面213に台座部材23を当接して設け、台座部材23に当接する第2当接面213に3つの第2穴部216を形成すると共に、剛性部材22については、第2穴部216が形成された位置に台座部材23に向かう第2凸部224を形成したので、コイルスプリング17の下端部に所定値以上の振動が入力すると、3箇所の第2穴部216において第2凸部224が台座部材23に当接する。これにより、コイルスプリング17から受ける力の大部分は剛性部材22で受容することになるので、弾性部材21に作用する過大な力を抑制することができる。その結果、スプリングシートの弾性部材21に、たとえばロスファクタLが0.2以上の高減衰材料を用いても、低温時の亀裂や割れを抑制することができる。
【0036】
また、本実施形態のスプリングシート2では、弾性部材21の第2当接面213に、第2穴部216が外気と連通する空気抜き孔217を形成したので、スプリングシート2がコイルスプリング17に押圧された場合に、第2穴部216と台座部材23とで仕切られた空間の空気を抜くことができる。
【符号の説明】
【0037】
1…車両懸架装置
11…車両
12…タイヤ
13…ドライブシャフト
14…ロアリンク
15…アクスル
16…ショックアブソーバ
17…コイルスプリング
171…スプリング開始点
172…スプリング離発着点
2…スプリングシート
21…弾性部材
211…スプリング受容部
212…第1当接面
213…第2当接面
214…環状隆起部
215…第1穴部
215a…開口縁
216…第2穴部
216a…開口縁
217…空気抜き孔
22…剛性部材
221…外周部
222…内周部
223…第1凸部
223a…頂面
224…第2凸部
224a…頂面
23…台座部材
3…車輪側部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7