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特開2024-178791塗料組成物および建築外装材の補修方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178791
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】塗料組成物および建築外装材の補修方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/06 20060101AFI20241218BHJP
   C09D 183/02 20060101ALI20241218BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20241218BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20241218BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20241218BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
C09D201/06
C09D183/02
C09D5/00 D
B05D7/00 L
B05D1/36 Z
B05D7/24 301U
B05D7/24 302Y
B05D7/24 302T
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097209
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003322
【氏名又は名称】大日本塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【弁理士】
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】山本 昌典
(72)【発明者】
【氏名】小川 将吾
(72)【発明者】
【氏名】常盤 勇斗
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 由佳
【テーマコード(参考)】
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AE03
4D075BB16X
4D075BB60Z
4D075CA03
4D075CA13
4D075CA17
4D075CA32
4D075CA44
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA06
4D075DA27
4D075DB11
4D075DC01
4D075EA06
4D075EB22
4D075EB38
4D075EB43
4D075EB45
4D075EB51
4D075EB56
4D075EC08
4D075EC33
4D075EC35
4D075EC37
4J038CG001
4J038DG111
4J038DG131
4J038DG191
4J038DG261
4J038EA001
4J038GA08
4J038JC30
4J038JC32
4J038JC35
4J038JC39
4J038KA03
4J038KA04
4J038KA08
4J038KA09
4J038KA10
4J038MA10
4J038MA14
4J038MA15
4J038NA05
4J038PA07
4J038PB05
4J038PC01
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】光触媒が存在している表面、無機系基材および無機系塗膜への付着性に優れるとともに、耐候性および耐凍害性にも優れる塗膜を形成可能な塗料組成物を提供する。
【解決手段】(A)主剤と(B)硬化剤を少なくとも含む2液型または多成分型の塗料組成物であって、(A)主剤は(A-1)シラノール基を有する樹脂を含み、(B)硬化剤は(B-1)一般式:Si(OR)で表されるオルガノシリケート〔式中、Rは、それぞれが同一であるか又は異なっており、炭素数1~8の有機基である。〕および/または該オルガノシリケートの部分縮合物を含み、前記塗料組成物から形成される塗膜について、塗膜を構成する樹脂に含まれるケイ素含有量が5.0~15.0質量%であり、前記塗料組成物から形成される塗膜について、23℃における伸び率が15%以上であることを特徴とする塗料組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)主剤と(B)硬化剤を少なくとも含む2液型または多成分型の塗料組成物であって、
(A)主剤は(A-1)シラノール基を有する樹脂を含み、
(B)硬化剤は(B-1)一般式:Si(OR)で表されるオルガノシリケート〔式中、Rは、それぞれが同一であるか又は異なっており、炭素数1~8の有機基である。〕および/または該オルガノシリケートの部分縮合物を含み、
前記塗料組成物から形成される塗膜について、塗膜を構成する樹脂に含まれるケイ素含有量が5.0~15.0質量%であり、
前記塗料組成物から形成される塗膜について、23℃における伸び率が15%以上であることを特徴とする塗料組成物。
【請求項2】
前記(A-1)シラノール基を有する樹脂が、ウレタン構造を有することを特徴とする請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
建築外装材の表面上の旧塗膜を剥離または除去することなく、該旧塗膜上の汚染物質を除去した後、該旧塗膜上に請求項1または2に記載の塗料組成物を塗布し、下塗り塗膜を形成する工程と、前記下塗り塗膜上に上塗塗料を塗布し、上塗り塗膜を形成する工程とを含むことを特徴とする建築外装材の補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物および該塗料組成物を用いた建築外装材の補修方法に関し、特には、光触媒が存在している表面、無機系基材および無機系塗膜への付着性に優れるとともに、耐候性および耐凍害性にも優れる塗膜を形成可能な塗料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、建築物の外装に用いられるサイディングボード等の外壁材は、高意匠化、高機能化が進んでおり、その表面を保護する塗料についても、耐候性や耐汚染性を目的に、ふっ素系塗料や無機系塗料、セラミック変性塗料、光触媒含有塗料等、幅広い塗料が検討、実用化されている。これら外壁材は、表面の塗膜が経年劣化すると塗膜の傷や剥れが生じるため、補修が必要となる。補修方法の一つとして、既存の意匠性の高い塗膜を生かすため、クリヤー塗料で補修する方法がある。クリヤー塗料で補修する方法としては、透明なシーラー(クリヤーシーラー)を塗装した後、透明な高耐候性塗料(トップクリヤー)を塗装する方法があり、補修に適した塗料が検討されている。
【0003】
特開2013-208546号公報(特許文献1)には、建築外装材を補修する方法であって、該建築外装材の表面上の旧塗膜を剥離又は除去することなく、該旧塗膜上の汚染物質を除去した後、該旧塗膜上に水分散液(A)と密着付与剤(C)を含有する水性下塗塗料を塗布し、下塗塗膜を形成する工程と、該下塗り塗膜上に水分散液(B)を含有する水性上塗塗料を塗布し、上塗塗膜を形成する工程と、を含むことを特徴とする建築外装材の補修方法が記載されている。ここで、水分散液(A)および水分散液(B)はアクリルシリコーン樹脂系エマルションを含むことが好ましく、密着付与剤(C)はエポキシ基含有シランカップリング剤を含むことが好ましいことが記載されている。
【0004】
特開2012-251094号公報(特許文献2)には、アニオン性またはカチオン性樹脂エマルション(A)、グリシジル基含有シランカップリング剤(B)、およびアミノ基含有シランカップリング剤(C)を特定の割合で含む、補修用水性下塗り塗料組成物が記載されている。
【0005】
特開2020-168595号公報(特許文献3)には、基材上に設けられた既存被膜面に対し、第1被覆材及び第2被覆材を塗付して新設被膜を形成する被膜形成方法であって、上記第1被覆材及び第2被覆材は、それぞれ、炭素数3以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A)を、樹脂構成成分中に20重量%以上含む樹脂成分を含有し、可視光透過性を有し、紫外線透過率が30%以下である被膜を形成するものであり、上記第1被覆材の樹脂成分は、樹脂構成成分中に、さらにエポキシ基含有モノマーを含むものであることを特徴とする被膜形成方法が記載されている。
【0006】
特許文献1に記載された水性下塗塗料、特許文献2に記載された水性下塗り塗料組成物および特許文献3に記載された第1被覆材は、有機系塗膜への付着性に優れたものであるといえるが、無機系塗膜への付着には課題があった。この点に関して、無機系塗膜への付着性にも優れる塗料組成物も知られている。
【0007】
特開2012-250233号公報(特許文献4)には、(I)アルコキシシリル基含有合成樹脂エマルション、(II)アルコキシシリル基の加水分解・縮合を促進する物質、および(III)オルガノシリケートおよび/またはその変性物を含有する硬化性組成物を無機系基材へ塗布する塗装方法が記載されている。
【0008】
特開2019-19260号公報(特許文献5)には、特許文献4に記載された成分(I)~(III)に加えて、(IV)イソシアネート化合物および(V)ケトイミノ基含有アルコキシシラン化合物をさらに含むプライマー組成物が記載されており、これによって、無機系塗膜への付着性は確保しつつ、ふっ素系、ウレタン系等の有機系塗膜への付着性を改良した水性のプライマーを提供することができるとしている。
【0009】
特許文献4および特許文献5に記載された発明は、無機系塗膜や無機系基材への付着性に関する課題を解決することを目的とするものである。しかしながら、特許文献4に記載された硬化性組成物および特許文献5に記載されたプライマー組成物は、光触媒が存在している表面に対して適用するには十分といえるものではなかった。光触媒が表面に存在している外壁材は、その基材上に配置された下塗り塗膜と、表層としての光触媒を含む光触媒層と、下塗り塗膜と光触媒層の間に光触媒作用から下塗り塗膜を保護するバリアー層を有していることが多い。光触媒層やバリアー層は無機成分を多く含むことに加え、その表層には光触媒が残存している場合がある。このため、特許文献4に記載された硬化性組成物や特許文献5に記載されたプライマー組成物のような組成物を用いて外壁材の補修を行うと、付着性に課題があった。特に、補修に用いる塗料がクリヤー塗料である場合には、光触媒が存在している表面に塗装された塗膜が屋外環境下に曝されることにより、該塗膜の下にある光触媒が活性化され、その光触媒作用や夜間の凍結の昼間の気温上昇によるサイクルが繰り返されることで、補修塗膜に割れや剥がれが生じる課題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2013-208546号公報
【特許文献2】特開2012-251094号公報
【特許文献3】特開2020-168595号公報
【特許文献4】特開2012-250233号公報
【特許文献5】特開2019-19260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明の目的は、光触媒が存在している表面、無機系基材および無機系塗膜への付着性に優れるとともに、耐候性および耐凍害性にも優れる塗膜を形成可能な塗料組成物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかる塗料組成物を用いた建築外装材の補修方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、主剤にシラノール基を有する樹脂を含み、硬化剤に一般式:Si(OR)で表されるオルガノシリケート〔式中、Rは、それぞれが同一であるか又は異なっており、炭素数1~8の有機基である。〕および/または該オルガノシリケートの部分縮合物を含む2液型または多成分型の塗料組成物から形成される塗膜について、当該塗膜を構成する樹脂に含まれるケイ素含有量が5.0~15.0質量%であり、当該塗膜の23℃における伸び率が15%以上であると、光触媒が存在している表面、無機系基材および無機系塗膜への付着性に優れるとともに、耐候性および耐凍害性にも優れる塗膜を形成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
従って、本発明の塗料組成物は、(A)主剤と(B)硬化剤を少なくとも含む2液型または多成分型の塗料組成物であって、
(A)主剤は(A-1)シラノール基を有する樹脂を含み、
(B)硬化剤は(B-1)一般式:Si(OR)で表されるオルガノシリケート〔式中、Rは、それぞれが同一であるか又は異なっており、炭素数1~8の有機基である。〕および/または該オルガノシリケートの部分縮合物を含み、
前記塗料組成物から形成される塗膜について、塗膜を構成する樹脂に含まれるケイ素含有量が5.0~15.0質量%であり、
前記塗料組成物から形成される塗膜について、23℃における伸び率が15%以上であることを特徴とする塗料組成物である。
【0014】
本発明の塗料組成物の好適例においては、前記(A-1)シラノール基を有する樹脂が、ウレタン構造を有する。
【0015】
また、本発明の建築外装材の補修方法は、建築外装材の表面上の旧塗膜を剥離または除去することなく、該旧塗膜上の汚染物質を除去した後、該旧塗膜上に上述の本発明の塗料組成物を塗布し、下塗り塗膜を形成する工程と、前記下塗り塗膜上に上塗塗料を塗布し、上塗り塗膜を形成する工程とを含むことを特徴とする建築外装材の補修方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の塗料組成物によれば、光触媒が存在している表面、無機系基材および無機系塗膜への付着性に優れるとともに、耐候性および耐凍害性にも優れる塗膜を形成可能な塗料組成物を提供することができる。また、本発明の建築外装材の補修方法によれば、かかる塗料組成物を用いた建築外装材の補修方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明は、塗料組成物および塗料組成物を用いた建築外装材の補修方法に関する。
【0018】
本発明の塗料組成物は、主剤と硬化剤を少なくとも含む2液型または多成分型の塗料組成物であって、主剤はシラノール基を有する樹脂を含み、硬化剤は一般式:Si(OR)で表されるオルガノシリケート〔式中、Rは、それぞれが同一であるか又は異なっており、炭素数1~8の有機基である。〕および/または該オルガノシリケートの部分縮合物を含む、塗料組成物である。
【0019】
本明細書では、本発明の塗料組成物に含まれる「主剤」を「(A)主剤」と称し、「硬化剤」を「(B)硬化剤」と称する場合がある。また、(A)主剤に含まれる「シラノール基を有する樹脂」を「(A-1)成分」または「(A-1)シラノール基を有する樹脂」と称し、(B)硬化剤に含まれる「一般式:Si(OR)で表されるオルガノシリケート〔式中、Rは、それぞれが同一であるか又は異なっており、炭素数1~8の有機基である。〕および/または該オルガノシリケートの部分縮合物」を「(B-1)成分」または「(B-1)一般式:Si(OR)で表されるオルガノシリケート〔式中、Rは、それぞれが同一であるか又は異なっており、炭素数1~8の有機基である。〕および/または該オルガノシリケートの部分縮合物」とも称する場合がある。
【0020】
本発明において、「2液型の塗料組成物」は、主剤と硬化剤とからなる塗料組成物を意味し、「多成分型の塗料組成物」は、主剤、硬化剤および1つ以上の添加剤からなる塗料組成物を意味する。
【0021】
(A)主剤は、シラノール基を有する樹脂を含む。ここで、シラノール基とは、ケイ素原子に結合した水酸基(SiOH基)を意味する。(A-1)成分は、シラノール基を介して、塗装時に(B-1)成分と反応することで、光触媒が存在している表面、無機系基材および無機系塗膜への付着性を向上させることができる。
【0022】
本明細書において、無機系塗膜とは、シリコーン樹脂やその変性樹脂(アクリルシリコーン樹脂等)のようにポリシロキサン構造を有する樹脂を含む塗膜を意味する。また、無機系基材とは、セメントやモルタル等の無機質基材、及びこれらの基材の材料と他の材料を組み合わせた複合基材を意味する。
【0023】
(A-1)シラノール基を有する樹脂は、ウレタン構造を有することが好ましい。本発明では、後述のとおり、得られる塗膜の伸び率や塗膜を構成する樹脂に含まれるケイ素含有量を調整することで、塗膜の耐凍害性を向上させるものであるが、ウレタン構造(NHCOO)を有する(A-1)成分を用いることで、得られる塗膜の耐凍害性を更に向上させることができる。また、ウレタン構造(NHCOO)を有する(A-1)成分は、塗膜の伸び率を大きくする効果が高い。
【0024】
ウレタン構造(NHCOO)を有する(A-1)成分は、親水性基含有ポリウレタンとビニル重合体とがポリシロキサンを介して結合してなる複合樹脂であることが好ましい。ここで、親水性基含有ポリウレタンは、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール及びポリエステルポリオールからなる群より選ばれる1種以上の親水性基含有ポリオールとポリイソシアネートを反応して得られるものであることが好ましい。親水性基含有ポリウレタンは特に限定されず、各種のものを使用することができるが、数平均分子量が3000~100000のもの、芳香族環を有しない又は含有量の少ないものが耐候性に優れた塗膜を形成する上で好ましい。
【0025】
(A-1)シラノール基を有する樹脂は、ケイ素含有量が5~15質量%であることが好ましい。
【0026】
本明細書において、(A-1)成分中のケイ素含有量は、(A-1)成分を構成するケイ素原子の割合であり、以下のように決定できる。
(0)樹脂分散体又は樹脂溶液を試料として用意する。
(i)恒量状態にある質量が既知の磁製るつぼに試料3gを計り取る。
(ii)上記磁製るつぼ中の試料を150℃にて30分間加熱し、その後、更に550℃にて2時間加熱し、該試料を灰化させる。
(iii)灰化した試料を室温まで放冷し、その後、該試料の質量を量る。以下の式に従い、灰分を算出する。
灰分(質量%)=灰化した試料の質量(g)/(加熱前の試料の質量(g)×樹脂の割合)×100
ここで、灰分は二酸化ケイ素の構造を取っているため、ケイ素原子の割合を以下のように求められる。
ケイ素原子の割合(質量%)=灰分(質量%)×28.1÷60.1
なお、ケイ素原子以外の無機成分が含まれる可能性があるため、得られた灰分について、蛍光X線などの元素分析を用い、ケイ素原子以外の無機成分の有無および比率を確認することができる。
【0027】
(A-1)シラノール基を有する樹脂は、水分散性樹脂であることが好ましい。本明細書において、水分散性樹脂とは、水中に分布して不均質な系(例えば乳濁液又は懸濁液)を形成することが可能な樹脂である。水分散性樹脂は、エマルション樹脂を含むことが好ましい。エマルション樹脂は、分子量を大きくすることが可能であり、また、分散安定性にも優れる水分散性樹脂である。
【0028】
本発明の塗料組成物において、(A-1)シラノール基を有する樹脂が水分散性樹脂である場合、(A-1)シラノール基を有する樹脂の平均粒子径は、20~150nmであることが好ましく、20~120nmであることがより好ましい。また、本発明の塗料組成物が平均粒子径の異なる複数の樹脂を含む場合、平均粒子径が20~100nm、好ましくは30~70nmである(A-1)成分の割合が樹脂全体の50質量%以上であることが好ましい。
【0029】
本明細書において、平均粒子径は、体積基準粒度分布の50%粒子径(D50)を指し、粒度分布測定装置(例えばレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置)を用いて測定される粒度分布から求めることができる。粒子径は、レーザ回折・散乱法による球相当径で表される。
【0030】
(A-1)シラノール基を有する樹脂は、親水性基含有ポリウレタンとビニル重合体とがポリシロキサンを介して結合してなる複合樹脂であることが好ましい。本明細書では、かかる複合樹脂を(a)成分または(a)複合樹脂と称し、(a)複合樹脂を構成する親水性基含有ポリウレタンを(a1)成分または(a1)親水性基含有ポリウレタンと称し、ビニル重合体を(a2)成分または(a2)ビニル重合体と称し、ポリシロキサンを(a3)成分または(a3)ポリシロキサンと称する場合がある。
【0031】
(a)複合樹脂は、シラノール基を有する。シラノール基は、主としてシラノール基含有ビニル重合体や加水分解性シリル基に由来するものであるが、ポリシロキサン中にシラノール基が存在していてもよい。
【0032】
また、(a)複合樹脂は、親水性基を有する。親水性基は、主として(a1)親水性基含有ポリウレタンに由来するものであるが、(a2)ビニル重合体中に親水性基が存在していてもよい。
【0033】
親水性基としては、アニオン性基、カチオン性基、およびノニオン性基が挙げられる。
【0034】
アニオン性基としては、例えば、カルボキシル基、カルボキシレート基、スルホン酸基、スルホネート基等が挙げられる。
【0035】
(a)複合樹脂のアニオン性基は、その一部または全部が塩基性化合物等によって中和されていてもよい。アニオン性基の中和に使用可能な塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、モルホリン等の有機アミンや、モノエタノールアミン等のアルカノールアミンや、Na、K、Li、Ca等を含む金属塩基化合物等が挙げられる。
【0036】
カチオン性基としては、例えば、3級アミノ基等が挙げられる。
【0037】
(a)複合樹脂の3級アミノ基は、その一部または全部が酸等によって中和されていてもよい。3級アミノ基の中和に使用可能な酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、乳酸、マレイン酸等の有機酸類、スルホン酸、メタンスルホン酸等の有機スルホン酸類、塩酸、硫酸、オルトリン酸、オルト亜リン酸等の無機酸等が挙げられる。
【0038】
(a)複合樹脂の3級アミノ基は、その一部または全部が4級化されていてもよい。4級化剤としては、例えば、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等のジアルキル硫酸類、メチルクロライド、エチルクロライド、ベンジルクロライド等のハロゲン化アルキル類、メタンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸メチル等のスルホン酸類、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロルヒドリン等のエポキシ類等が挙げられる。
【0039】
ノニオン性基としては、例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基、ポリ(オキシエチレン-オキシプロピレン)基、及びポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基等が挙げられる。
【0040】
(a)複合樹脂に含まれる新水性基は、(a)複合樹脂全体に対して50~1000mmol/kgであることが好ましい。
【0041】
(a)複合樹脂全体に対する(a3)ポリシロキサン由来の構造の割合は、15~55質量%であることが好ましく、20~55質量%であることがより好ましい。また、(a)複合樹脂について、(a1)親水性基含有ポリウレタンと(a2)ビニル重合体との質量比[(a2)/(a1)]は、20/1~1/20であることが好ましく、15/1~1/20であることがより好ましく、10/1~1/20であることが更に好ましく、5/1~1/20であることが特に好ましい。
【0042】
(a1)親水性基含有ポリウレタンと(a3)ポリシロキサンとの結合は、例えば(a1)親水性基含有ポリウレタンの加水分解性シリル基および/またはシラノール基と(a3)ポリシロキサンの加水分解性シリル基および/またはシラノール基との反応によって形成される結合であることが好ましい。また、(a2)ビニル重合体と(a3)ポリシロキサンとの結合は、例えば(a2)ビニル重合体の加水分解性シリル基および/またはシラノール基と(a3)ポリシロキサンの加水分解性シリル基および/またはシラノール基との反応によって形成される結合であることが好ましい。
【0043】
(a1)親水性基含有ポリウレタンは、数平均分子量が3000~100000であることが好ましい。
【0044】
本明細書において、数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した値であり、標準物質にはポリスチレンが使用され、移動相にはテトラヒドロフランが使用される。
【0045】
(a1)親水性基含有ポリウレタンに含まれる新水性基は、(a1)親水性基含有ポリウレタン全体に対して50~1000mmol/kgであることが好ましい。
【0046】
(a1)親水性基含有ポリウレタンとしては、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるポリウレタンを使用することができる。(a1)親水性基含有ポリウレタンの親水性基は、ポリオールの一部に親水性基含有ポリオールを使用することによって導入することができる。
【0047】
(a1)親水性基含有ポリウレタンの製造に使用可能なポリオールとしては、例えば、親水性基含有ポリオールとその他のポリオールを組み合わせて使用することができる。
【0048】
親水性基含有ポリオールとしては、例えば、2,2’-ジメチロールプロピオン酸、2,2’-ジメチロールブタン酸、2,2’-ジメチロール酪酸、2,2’-ジメチロール吉草酸等のカルボキシル基含有ポリオールや、5-スルホイソフタル酸、スルホテレフタルさん、4-スルホフタル酸、5[4-スルホフェノキシ]イソフタル酸等のスルホン酸基含有ポリオール等が挙げられる。また、親水性基含有ポリオールとしては、上述の低分子量の親水性基含有ポリオールと、例えばアジピン酸等の各種ポリカルボン酸とを反応させて得られる親水性基含有ポリエステルポリオール等を使用することもできる。
【0049】
親水性基含有ポリオールと組み合わせて使用可能なポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0050】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、活性水素原子を2個以上有する化合物の1種または2種以上を開始剤として、アルキレンオキサイドを付加重合させたものを使用することができる。
【0051】
開始剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0052】
アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0053】
また、ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、炭酸エステルとポリオールとを反応させて得られるものや、ホスゲンとビスフェノールA等とを反応させて得られるものを使用することができる。
【0054】
炭酸エステルとしては、メチルカーボネートや、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネ-ト等を使用することできる。
【0055】
炭酸エステルと反応しうるポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-ブチル-2-エチルプロパンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノール-A、ビスフェノール-F、4,4’-ビフェノール等の比較的低分子量のジヒドロキシ化合物や、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールや、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンサクシネート、ポリカプロラクトン等のポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0056】
ポリカーボネートポリオールとしては、ジメチルカーボネートと、1,6-ヘキサンジオールとを反応させて得られるものを使用することが好ましい。
【0057】
ポリカーボネートポリオールとしては、500~6000の範囲の数平均分子量を有するものを使用することが好ましい。
【0058】
また、ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子量のポリオールとポリカルボン酸とをエステル化反応して得られる脂肪族ポリエステルポリオールや芳香族ポリエステルポリオール、ε-カプロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステルや、これらの共重合ポリエステル等を使用することができる。
【0059】
低分子量のポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコ-ル等が挙げられる。
【0060】
ポリカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、及びこれらの無水物またはエステル形成性誘導体等を使用することができる。
【0061】
親水性基含有ポリオールと組み合わせて使用可能な他のポリオールとしては、例えば、シクロヘキサンジオール等の脂肪族環式構造含有ポリオールや芳香族環式構造含有ポリオール等を、上述の各種ポリオールと組み合わせ使用してもよい。
【0062】
また、(a1)親水性基含有ポリウレタンの製造に使用可能なポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族または脂肪族環式構造含有ジイソシアネート等が挙げられる。
【0063】
(a1)親水性基含有ポリウレタンは、親水性基の他に、必要に応じてさらなる官能基を有していてもよい。さらなる官能基としては、後述する(a3)ポリシロキサンと反応しうる加水分解性シリル基、シラノール基、アミノ基、イミノ基、水酸基等が挙げられる。
【0064】
加水分解性シリル基は、加水分解性基がケイ素原子に直接結合した官能基であり、例えば、一般式(I):
【化1】
で表される官能基が挙げられる。
【0065】
一般式(I)中、Rは、アルキル基、アリール基又はアラルキル基等の1価の有機基であり、Rは、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基、フェノキシ基、アリールオキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、イミノオキシ基又はアルケニルオキシ基であり、xは0~2の整数である。
【0066】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基等が挙げられる。
【0067】
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、2-メチルフェニル基等が挙げられる。
【0068】
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、ジフェニルメチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0069】
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0070】
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0071】
アシロキシ基としては、例えば、アセトキシ、プロパノイルオキシ、ブタノイルオキシ、フェニルアセトキシ、アセトアセトキシ等が挙げられる。
【0072】
アリールオキシ基としては、例えば、フェニルオキシ、ナフチルオキシ等が挙げられる。
【0073】
アルケニルオキシ基としては、例えば、アリルオキシ基、1-プロペニルオキシ基、イソプロペニルオキシ基等が挙げられる。
【0074】
一般式(I)のRは、加水分解によって生じうる一般式ROH等の脱離成分の除去が容易であることから、好ましくはそれぞれ独立してアルコキシ基であることが好ましい。
【0075】
シラノール基は、ケイ素原子に結合した水酸基(SiOH基)であって、主に(a1)親水性基含有ポリウレタンに含まれる加水分解性シリル基を加水分解して生じる官能基である。
【0076】
(a1)親水性基含有ポリウレタンについて、加水分解性シリル基及びシラノール基の総量は、(a1)親水性基含有ポリウレタンに対して10~400mmol/kgであることが好ましい。
【0077】
(a2)ビニル重合体は、数平均分子量が3000~100000であることが好ましい。
【0078】
(a2)ビニル重合体としては、例えば、各種ビニル単量体を重合開始剤の存在下で重合することによって製造したものを使用することができる。
【0079】
(a2)ビニル重合体の製造に使用可能なビニル単量体としては、ポリシロキサン(a3)の加水分解性シリル基等と反応しうる官能基を(a2)ビニル重合体中に導入する観点から、加水分解性シリル基含有ビニル単量体や水酸基含有ビニル単量体等を使用することが好ましい。
【0080】
加水分解性シリル基含有ビニル単量体としては、例えば、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0081】
水酸基含有ビニル単量体としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0082】
ビニル単量体としては、加水分解性シリル基含有ビニル単量体や水酸基含有ビニル単量体の他に、その他のビニル単量体を併用してもよい。
【0083】
加水分解性シリル基含有ビニル単量体や水酸基含有ビニル単量体以外のビニル単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の三級アミノ基含有ビニル単量体;N-メチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の二級アミノ基含有ビニル単量体;アミノメチルアクリレート等の一級アミノ基含有ビニル単量体等の塩基性窒素原子含有基含有ビニル単量体;2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート等のフッ素含有ビニル単量体;酢酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和カルボン酸のニトリル類;スチレン等の芳香族環を有するビニル化合物;イソプレン等のα-オレフィン類、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有ビニル単量体;(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有ビニル単量体;N-メチロール(メタ)アクリルアミド等のメチロールアミド基及びそのアルコキシ化物含有ビニル単量体;2-アジリジニルエチル(メタ)アクリレート等のアジリジニル基含有ビニル単量体;(メタ)アクリロイルイソシアナート等のイソシアナート基および/またはブロック化イソシアナート基含有ビニル単量体;2-イソプロペニル-2-オキサゾリン等のオキサゾリン基含有ビニル単量体;ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等のシクロペンテニル基含有ビニル単量体;アクロレイン等のカルボニル基含有ビニル単量体;アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等のアセトアセチル基含有ビニル単量体;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、もしくはこれらの半エステルまたはこれらの塩等のカルボキシル基含有単量体等が挙げられる。
【0084】
(a2)ビニル重合体の製造に使用可能な重合開始剤としては、例えば、過硫酸塩類、有機過酸化物類、過酸化水素等のラジカル重合開始剤、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩等のアゾ開始剤を使用することができる。また、ラジカル重合開始剤は、例えば、アスコルビン酸等の還元剤と併用したレドックス重合開始剤として使用してもよい。
【0085】
重合開始剤の代表的なものである過硫酸塩類としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられ、有機過酸化物類として、例えば、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル類、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類等が挙げられる。
【0086】
重合開始剤の使用量は、(a2)ビニル重合体の製造に使用されるビニル単量体の全量に対して10質量%以下であることが好ましい。
【0087】
(a3)ポリシロキサンは、ケイ素原子と酸素原子とからなる鎖状および/または網状構造を有しており、必要に応じて加水分解性シリル基やシラノール基等を有する。
【0088】
加水分解性シリル基は、加水分解性基がケイ素原子に直接結合した原子団であって、例えば、(a1)親水性基含有ポリウレタの説明において記載された一般式(I)で表される官能基が挙げられる。
【0089】
加水分解性基は、例えばハロゲン原子、アルコキシ基、置換アルコキシ基、アシロキシ基、フェノキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、イミノオキシ基、アルケニルオキシ基等が挙げられ、なかでもアルコキシ基や置換アルコキシ基であることが好ましい。
【0090】
シラノール基は、ケイ素原子に結合した水酸基(SiOH基)であって、主に(a3)ポリシロキサンに含まれる加水分解性シリル基を加水分解して生じる官能基である。
【0091】
(a3)ポリシロキサンは、メチル基等のアルキル基やフェニル基等を有していてもよい。例えば、(a3)ポリシロキサンを構成するケイ素原子に、フェニル基等の芳香族環式構造、炭素原子数が1~3個のアルキル基、および炭素原子数が1~3個のアルコキシ基からなる群より選ばれる1種以上が直接結合したものを使用することができる。
【0092】
(a3)ポリシロキサンとしては、例えば、シラン化合物を完全にまたは部分的に加水分解縮合して得られるものを使用することができる。
【0093】
(a3)ポリシロキサンの製造に使用可能なシラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ-n-ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、iso-ブチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等のオルガノトリアルコキシシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ-n-ブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン等のジオルガノジアルコキシシラン類;メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン等のクロロシラン類や、それらの部分加水分解縮合物等が挙げられる。
【0094】
(a3)ポリシロキサンとしては、一般式(II):
【化2】
で表される構造および一般式(III):
【化3】
で表される構造からなる群より選ばれる1種以上の構造を有するポリシロキサンと、アルキル基の炭素数が1~3であるアルキルトリアルコキシシランの縮合物とが、ケイ素原子と酸素原子の結合を介して結合したものであることが好ましい。本明細書では、一般式(II)および/または(III)で表される構造を有するポリシロキサンを(a3-1)ポリシロキサンと称し、アルキル基の炭素数が1~3であるアルキルトリアルコキシシランの縮合物を(a3-2)縮合物と称する場合がある。
【0095】
一般式(II)中、Rは、炭素数が4~12の有機基である。また、一般式(III)中、RおよびRは、それぞれ独立して、メチル基またはエチル基である。
【0096】
(a3-1)ポリシロキサンとしては、オルガノアルコキシシラン、好ましくはケイ素原子に結合した炭素数が4~12の有機基を有するモノオルガノトリアルコキシシラン、ケイ素原子に結合したメチル基を2個有するジオルガノジアルコキシシラン、および/またはケイ素原子に結合したエチル基を2個有するジオルガノジアルコキシシランを、加水分解縮合したものを使用することができる。(a3-1)ポリシロキサンは、線状、分岐状、環状のうちのいずれの構造を有するものであってもよい。
【0097】
炭素数4~12の有機基としては、例えば、炭素数が4~12の、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられ、例えば、n-ブチル基、iso-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ドデシル基、シクロヘキシルメチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、4-メチルフェニル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基が好ましく、なかでもフェニル基または炭素数4のアルキル基がより好ましい。
【0098】
(a3-2)縮合物としては、例えば、ケイ素原子に結合した水酸基(即ちシラノール基)とケイ素原子に結合したアルコキシ基とを有するものを使用することができる。
【0099】
(a3-2)縮合物としては、一般式(IV):
【化4】
で表される構造を有するものを使用することが好ましい。
【0100】
一般式(IV)中、Rは、炭素数が1~3個のアルキル基である。
【0101】
(a)複合樹脂の製造方法は、例えば、以下の工程(1)~工程(3)を含む。
【0102】
工程(1)は、有機溶剤中で、ビニル単量体を重合開始剤の存在下で重合することによって(a2)ビニル重合体の有機溶剤溶液を得る工程である。
【0103】
重合は、例えば、重合開始剤を含む有機溶剤中に、ビニル単量体を逐次供給または一括供給し、次いで、攪拌下、20~120℃の温度範囲で0.5~24時間程度行うことが好ましい。
【0104】
工程(2)は、工程(1)で得られた(a2)ビニル重合体の有機溶剤溶液中において、(a2)ビニル重合体の加水分解性シリル基等の反応性官能基と、シラン化合物の加水分解性シリル基またはシラノール基との反応と、当該シラン化合物間の加水分解縮合反応とを進行させることによって、(a2)ビニル重合体と(a3)ポリシロキサンとが結合してなる樹脂の有機溶剤溶液を得る工程である。本明細書では、(a2)ビニル重合体と(a3)ポリシロキサンとが結合してなる樹脂を(a4)樹脂と称する場合がある。
【0105】
工程(2)での反応は、例えば、工程(1)から連続して行うことができ、工程(1)で得られた(a2)ビニル重合体の有機溶剤溶液中に、(a3)ポリシロキサンを形成しうるシラン化合物を逐次供給または一括供給し、次いで、攪拌下、20~120℃の温度範囲で0.5~24時間程度行うことが好ましい。
【0106】
また、工程(2)は、2段階の反応工程を経ることが好ましい。具体的に、工程(2)は、(a2)ビニル重合体の加水分解性シリル基またはシラノール基と、フェニルトリメトキシシラン等の比較的低分子量のシラン化合物とを反応させる工程と、次いで、当該工程で得られる生成物と、メチルトリメトキシシランやエチルトリメトキシシラン等のメチルトリアルコキシシランおよびエチルトリアルコキシシランを予め縮合させた縮合物とを反応させる工程とを含むことが好ましい。
【0107】
工程(3)は、工程(2)で得られた(a4)樹脂と、(a1)親水性基含有ポリウレタンとを混合して加水分解縮合させることにより、(a)複合樹脂、即ち親水性基含有ポリウレタンとビニル重合体とがポリシロキサンを介して結合してなる複合樹脂の有機溶剤溶液を得る工程である。
【0108】
工程(3)での加水分解縮合反応は、例えば、工程(2)から連続して行うことができ、工程(2)で得られた(a4)樹脂の有機溶剤溶液中に、親水性基含有ポリオールを含むポリオールとポリイソシアネートとを反応させることによって得られる(a1)親水性基含有ポリウレタンを逐次供給または一括供給し、次いで、攪拌下、20~120℃の温度範囲で0.5~24時間程度行うことが好ましい。
【0109】
(a)複合樹脂の製造方法は、さらに、以下の工程(4)を含むことができる。
【0110】
工程(4)は、工程(3)で得られた(a)複合樹脂の有機溶剤溶液を水性化する工程である。工程(4)は、例えば、工程(3)から連続して行うことができ、(a)複合樹脂の有機溶剤溶液中において、(a)複合樹脂の親水性基を中和し、中和物である(a)複合樹脂を水系媒体中に分散または溶解する工程である。
【0111】
工程(4)での中和は、例えば、(a)複合樹脂の有機溶剤溶液中に、塩基性化合物等を逐次または一括供給し、攪拌することによって行うことができる。次いで、中和された(a)複合樹脂の有機溶剤溶液中に水系媒体を供給し、次いで、有機溶剤を除去することができる。有機溶剤の除去は、例えば、蒸留によって行うことができる。
【0112】
水系媒体としては、水、水と混和する有機溶剤およびこれらの混合物が挙げられる。水と混和する有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;ポリアルキレングリコールのアルキルエーテル類;N-メチル-2-ピロリドン等のラクタム類等が挙げられる。
【0113】
本発明の塗料組成物において、塗膜形成成分中の(A-1)シラノール基を有する樹脂の量は、20~98質量%であることが好ましい。(A-1)シラノール基を有する樹脂は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0114】
本発明の塗料組成物において、塗膜形成成分中の(a)複合樹脂の量は、20~98質量%であることが好ましい。(a)複合樹脂は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0115】
本明細書において、塗膜形成成分とは、溶媒等の揮発する成分を除いた成分を指し、最終的に塗膜を形成することになる成分であるが、本発明においては、塗料組成物を130℃で60分間乾燥させた際に残存する成分を塗膜形成成分として取り扱う。なお、本明細書では、溶媒等の揮発する成分を除いた成分であって、最終的に塗膜を形成することになる成分を「不揮発分」と称する場合もある。本発明の塗料組成物中において、塗膜形成成分の量は、30~80質量%であることが好ましい。
【0116】
(B)硬化剤は、(B-1)一般式:Si(OR)で表されるオルガノシリケート〔式中、Rは、それぞれが同一であるか又は異なっており、炭素数1~8の有機基である。〕および/または該オルガノシリケートの部分縮合物を含む。(A-1)成分の硬化剤として(B-1)成分を用いることで、光触媒が存在している表面、無機系基材および無機系塗膜への付着性を向上させることができる。
【0117】
(B-1)成分は、分子量200~3,000の範囲内であるシラン化合物(即ちオルガノシリケートおよび/またはオルガノシリケートの部分縮合物)を含むことが好ましく、分子量200~1,500の範囲内であるシラン化合物を含むことが更に好ましい。分子量200~3,000の範囲内であるシラン化合物を用いることで、光触媒が存在している表面、無機系基材および無機系塗膜への付着性をさらに向上させることができる。本発明の塗料組成物において、塗膜形成成分中の分子量200~3,000の範囲内である(B-1)成分の量は、2~7重量%であることが好ましい。
【0118】
一般式:Si(OR)において、Rは、それぞれが同一であるか又は異なっており、炭素数1~8の有機基である。ここで、炭素数1~8の有機基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられ、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル基、iso-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、シクロヘキシルメチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、4-メチルフェニル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキルが挙げられる。
【0119】
一般式:Si(OR)で表されるオルガノシリケートとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトラ-i-プロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトラ-i-ブトキシシラン、テトラ-t-ブトキシシラン等が挙げられる。
【0120】
オルガノシリケートは、エマルションに対する混和性が低いため、界面活性剤と併用することが好ましい。
【0121】
一般式:Si(OR)で表されるオルガノシリケートの部分縮合物とは、主に当該オルガノシリケートの部分加水分解縮合物である。
【0122】
本発明の塗料組成物において、塗膜形成成分中の(B-1)成分の量は、2~10質量%であることが好ましい。(B-1)成分は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0123】
(B)硬化剤は、(B-1)成分に加えて、さらなるシラン化合物を含んでいてもよい。さらなる化合物は、アルコキシシリル基を有する化合物が好ましく、後述するシラン化合物(B-2)~(B-5)よりなる群から選択される少なくとも1種のシラン化合物を含むことが更に好ましい。シラン化合物(B-2)~(B-5)は、分子量200~3,000の範囲内であるシラン化合物であることが好ましい。
シラン化合物(B-2)
シラン化合物(B-2)は、ケトイミノ基含有アルコキシシラン化合物である。
シラン化合物(B-3)
シラン化合物(B-3)は、アミノ基含有アルコキシシラン化合物である。
シラン化合物(B-4)
シラン化合物(B-4)は、エポキシ基含有アルコキシシラン化合物である。
シラン化合物(B-5)
シラン化合物(B-5)は、イソシアネート基含有アルコキシシラン化合物である。
【0124】
シラン化合物(B-2)は、ケトイミノ基含有アルコキシシラン化合物である。ケトイミノ基含有アルコキシシラン化合物は、分子中の一級アミノ基にケトンを反応させたケトイミノ基とアルコキシシリル基を有する化合物である。例えば、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、3-トリメトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミンが挙げられる。これらの市販品としては、信越化学工業(株)製KBE-9103、チッソ(株)製サラエースS340、東レ・ダウコーニング(株)製Z-6860等が挙げられる。
【0125】
シラン化合物(B-3)は、アミノ基含有アルコキシシラン化合物である。アミノ基含有アルコキシシラン化合物の具体例としては、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ビニルベンジル-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-8-アミノオクチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0126】
シラン化合物(B-4)は、エポキシ基含有アルコキシシラン化合物である。エポキシ基含有アルコキシシラン化合物の具体例としては、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピル(エチル)ジメトキシシラン、β-3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、β-3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシラン、8-グリシドキシオクチルトリメトキシシラン、8-グリシドキシオクチルメチルジメトキシシラン、8-グリシドキシオクチルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0127】
シラン化合物(B-5)は、イソシアネート基含有アルコキシシラン化合物である。イソシアネート基含有アルコキシシラン化合物の具体例としては、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0128】
本発明の塗料組成物において、塗膜形成成分中のさらなるシラン化合物の量は、2~10質量%であることが好ましい。さらなるシラン化合物は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0129】
本発明の塗料組成物は、アルコキシシリル基の加水分解・縮合を促進する物質を含むことが好ましい。アルコキシシリル基の加水分解・縮合を促進する物質は、主剤と硬化剤のいずれに含まれていてもよいが、硬化剤中に含まれることが好ましい。アルコキシシリル基の加水分解・縮合を促進する物質としては、有機金属化合物、酸性触媒、塩基性触媒が使用される。特に、有機錫化合物が好ましい。
【0130】
有機錫化合物の具体例としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート、ジブチル錫ジオレイルマレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジメトキサイド、ジブチル錫チオグリコレート、ジブチル錫ビスイソノニル3-メルカプトプロピオネート、ジブチル錫ビスイソオクチルチオグリコレート、ジブチル錫ビス2-エチルヘキシルチオグリコレート、ジメチル錫ビスドデシルメルカプチド、ジブチル錫ビスドデシルメルカプチド、ジオクチル錫ビスドデシルメルカプチド、ジブチル錫ビスラウリルメルカプチド、ジメチル錫ビス(オクチルチオグルコール酸エステル)塩、オクチル酸錫等が挙げられる。
【0131】
これらの中でも、水中での安定性の観点からジブチル錫チオグリコレート、ジブチル錫ビスイソノニル3-メルカプトプロピオネート、ジブチル錫ビスイソオクチルチオグリコレート、ジブチル錫ビス2-エチルヘキシルチオグリコレート、ジメチル錫ビスドデシルメルカプチド、ジブチル錫ビスドデシルメルカプチド、ジオクチル錫ビスドデシルメルカプチド、ジブチル錫ビスラウリルメルカプチド、ジメチル錫ビス(オクチルチオグルコール酸エステル)塩等のメルカプチド系のものが好ましい。
【0132】
アルコキシシリル基の加水分解・縮合を促進する物質は、界面活性剤と併用することが好ましい。
【0133】
本発明の塗料組成物において、塗膜形成成分中のアルコキシシリル基の加水分解・縮合を促進する物質の量は、0.01~10質量%であることが好ましい。アルコキシシリル基の加水分解・縮合を促進する物質は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0134】
本発明の塗料組成物は、紫外線吸収剤を含むことが好ましい。紫外線吸収剤は、紫外線を吸収し、紫外線による劣化を防止する作用を有する。紫外線吸収剤を用いることで、塗膜の耐候性を向上させることができる。紫外線吸収剤は、主剤と硬化剤のいずれに含まれていてもよいが、主剤中に含まれることが好ましい。
【0135】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤(特にヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤)、ベンジリデンカンファー系紫外線吸収剤等が挙げられる。紫外線吸収剤は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよいが、紫外線吸収剤は、吸収ピークの異なる2種以上の紫外線吸収剤を含むことが好ましい。紫外線吸収剤は、トリアジン系紫外線吸収剤を含むことが好ましく、トリアジン系紫外線吸収剤およびベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含むことが特に好ましい。
【0136】
紫外線吸収剤としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルフォニックアシッド、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ドデシロキシベンゾフェノン-2-ヒドロキシ-4-ベンジロキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノン、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’,5’-ビス(α,α-(ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレン-ビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2N-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、メチル-3-[3-t-ブチル-5-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル]プロピオネートとポリエチレングリコールとの縮合物、2-(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,6-ジ-t-ブチルフェニル-3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2’-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブチルオキシフェニル)-6-(2,4-ビス-ブチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、ヒドロキシフェニルトリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシ-3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
【0137】
本発明の塗料組成物において、塗膜形成成分中の紫外線吸収剤の量は、例えば0~9質量%である。
【0138】
本発明の塗料組成物は、ラジカル捕捉剤を含むことが好ましい。ラジカル捕捉剤は、フリーラジカル等を捕捉し、光安定性を向上させることができる。また、本発明においては、フリーラジカルと反応し、重合反応が起こることを防止する機能を有する物質(いわゆる重合禁止剤)も、ラジカル捕捉剤に含まれる。ラジカル捕捉剤を用いることで、塗膜の耐候性を向上させることができる。ラジカル捕捉剤は、主剤と硬化剤のいずれに含まれていてもよいが、主剤中に含まれることが好ましい。
【0139】
ラジカル捕捉剤としては、ヒンダードアミン系化合物、ハイドロキノン系化合物、フェノール系化合物、フェノチアジン系化合物、ニトロソ系化合物、N-オキシル系化合物等が挙げられ、特にヒンダードアミン系光安定化剤(HALS)が好ましい。
【0140】
ラジカル捕捉剤としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、1-{2-(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル}-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、8-アセチル-3-ドデシル-7,7,9,9-テトラメチル-1,3,8-トリアザスピロ{4.5}デカン-2,4-ジオン等のヒンダードアミン系化合物、フェノール、o-、m-又はp-クレゾール、2-t-ブチル-4-メチルフェノール、6-t-ブチル-2,4-ジメチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2-t-ブチルフェノール、4-t-ブチルフェノール、2,4-ジ-t-ブチルフェノール、2-メチル-4-t-ブチルフェノール、4-t-ブチル-2,6-ジメチルフェノール等のフェノール系化合物、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、メチルハイドロキノン、2,5-ジ-t-ブチルハイドロキノン、2-メチル-p-ハイドロキノン、2,3-ジメチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン4-メチルベンズカテキン、t-ブチルハイドロキノン、3-メチルベンズカテキン、2-メチル-p-ハイドロキノン、2,3-ジメチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、t-ブチルハイドロキノン、ベンゾキノン、t-ブチル-p-ベンゾキノン、2,5-ジフェニル-p-ベンゾキノン等のハイドロキノン系化合物、フェノチアジン等のフェノチアジン系化合物、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンアンモニウム、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等のニトロソ系化合物、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-N-オキシル、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-N-オキシル、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-N-オキシル等のN-オキシル系化合物等が挙げられる。
【0141】
本発明の塗料組成物において、塗膜形成成分中のラジカル捕捉剤の量は、例えば0~7質量%である。ラジカル捕捉剤は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0142】
本発明の塗料組成物は、界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤は、分子中に親水基と疎水基とを有する物質で、(B-1)成分等のシラン化合物やアルコキシシリル基の加水分解・縮合を促進する物質等を水中に分散させることができる物質である。界面活性剤は、必要に応じて主剤および/または硬化剤に使用される。界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等に分類される。本発明の塗料組成物中の界面活性剤の量は、10質量%以下であることが好ましく、0.2~8質量%であることがさらに好ましい。界面活性剤は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0143】
本発明の塗料組成物は、顔料を含まないクリヤー塗料であることが好ましいものの、着色顔料、体質顔料、メタリック顔料、光輝顔料、鱗片状顔料等の顔料を含んでもよい。顔料は、主剤と硬化剤のいずれに含まれていてもよいが、主剤中に含まれることが好ましい。着色顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック等の無機顔料やフタロシアニン系顔料、アゾ系顔料等の有機顔料が挙げられる。体質顔料としては、例えば、シリカ、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー等が挙げられる。その他の顔料としては、例えば、アルミニウム粉顔料、ニッケル粉顔料、金粉、銀粉、ブロンズ粉、銅粉、ステンレス粉顔料、マイカ(雲母)顔料、グラファイト顔料、ガラスフレーク顔料や、金属コーティングした硝子粉、金属コーティングしたマイカ粉、金属コーティングしたプラスチック粉、鱗片状酸化鉄顔料等が挙げられる。
【0144】
本発明の塗料組成物において、塗膜形成成分中の顔料の量は、30質量%以下であることが好ましい。顔料は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0145】
本発明の塗料組成物は、水性の塗料組成物であることが好ましい。本明細書において、水性塗料組成物とは、主溶媒として水を含有する塗料組成物である。ここで、塗料組成物に用いる水は、特に制限されるものではなく、イオン交換水や蒸留水等の純水等が好適に挙げられるが、地下水や水道水であってもよい。また、塗料組成物を長期保存する場合には、カビやバクテリアの発生を防止するため、紫外線照射等により滅菌処理した水を用いてもよい。本発明の塗料組成物中において、水の量は、20~70質量%であることが好ましい。また、本発明の塗料組成物は、完全に水系化することも可能であり、使用される溶媒中の水の割合は、好ましくは85質量%以上であり、最も好ましくは100質量%である。
【0146】
本発明の塗料組成物には、その他の成分として、他の樹脂、架橋剤、成膜助剤、凍結防止剤、表面調整剤、湿潤剤、分散剤、消泡剤、粘性調整剤、増粘剤、沈降防止剤、皮張り防止剤、たれ防止剤、色分かれ防止剤、ツヤ消剤、密着性付与剤、レベリング剤、乾燥剤、可塑剤、防カビ剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、防腐剤、殺虫剤、帯電防止剤及び導電性付与剤等を目的に応じて適宜配合することができる。これら成分は、市販品を好適に使用することができる。
【0147】
本発明においては、主剤と硬化剤とを予め用意しておき、これらを塗装時に混合することで塗料組成物を調製することができる。また、主剤と硬化剤とは別に添加剤を用意しておき、主剤と硬化剤との混合の際に添加剤をさらに加えてもよい。例えば、粘度の調整等の目的で水や希釈剤を添加剤としてさらに加えることが可能である。また、主剤および硬化剤は、必要に応じて適宜選択される各種成分を混合することによって調製することができる。
【0148】
本発明の塗料組成物は、クリヤー塗料であることが好ましい。本明細書において、クリヤー塗料とは、透明な塗膜を形成する塗料であり、厚さ30μmの膜を形成した際の可視光透過率が60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上である塗膜を形成する塗料である。
【0149】
本発明の塗料組成物は、厚さ30μmの膜を形成した際の可視光透過率が20%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることが更に好ましく、80%以上であることが特に好ましく、100%であることが最も好ましい。
【0150】
可視光透過率は、可視領域(360nm~750nm)における全光線透過率を意味し、JIS K 7375:2008に準拠して測定することができる。
【0151】
本発明の塗料組成物は、厚さ30μmの膜を形成した際の紫外線透過率が20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、0%であることが最も好ましい。
【0152】
本明細書において、紫外線透過率は、300nmから350nmまでの波長範囲の光の透過率を意味し、分光光度計を用いて測定することができる。
【0153】
本発明の塗料組成物は、せん断速度0.1(1/s)における粘度が1~1000(Pa・s、23℃)であり、せん断速度1000(1/s)における粘度が0.05~10(Pa・s、23℃)であることが好ましい。本明細書において、粘度は、レオメーター(例えば、TAインスツルメンツ社製レオメーターARES)を用い、液温を23℃に調整した後に測定される。
【0154】
本発明の塗料組成物の塗装手段は、特に限定されず、既知の塗装手段、例えば、刷毛塗装、ローラー塗装、コテ塗装、ヘラ塗装、フローコーター塗装、スプレー塗装(例えばエアースプレー塗装、エアレススプレー塗装)等が利用できる。
【0155】
本発明の塗料組成物の乾燥手段は、特に限定されず、周囲温度での自然乾燥や乾燥機等を用いた強制乾燥のいずれであってもよい。
【0156】
本発明の塗料組成物から形成される塗膜について、当該塗膜を構成する樹脂に含まれるケイ素含有量は、5.0~15.0質量%であり、5.0~12.0質量%であることが好ましく、6.0~10.0質量%であることがより好ましい。塗膜を構成する樹脂中のケイ素含有量が5.0質量%以上であると、光触媒活性への耐性が向上し、耐候性を向上させることができる。一方で、塗膜を構成する樹脂中のケイ素含有量が多すぎると、ガラス質のような塗膜となり、耐凍害性が低下する課題があることから、塗膜を構成する樹脂中のケイ素含有量は15.0質量%以下であることが好ましい。
【0157】
本発明の塗料組成物は主剤及び硬化剤を含むため、塗膜を構成する樹脂は、主剤に含まれる反応性成分(例えば(A-1)成分)と硬化剤に含まれる反応性成分(例えば(B-1)成分)との硬化反応により形成される樹脂である。また、塗料組成物中に非反応性の樹脂が含まれる場合は、当該非反応性の樹脂も塗膜を構成する樹脂に該当する。
【0158】
本明細書において、塗膜を構成する樹脂に含まれるケイ素含有量は、以下のように決定できる。
(0)塗膜形成成分、または、顔料が含有されている場合は顔料を取り除いた塗膜形成成分を試料とする。
(i)恒量状態にある質量が既知の磁製るつぼに試料3gを計り取る。
(ii)上記磁製るつぼ中の試料を150℃にて30分間加熱し、その後、更に550℃にて2時間加熱し、該試料を灰化させる。
(iii)灰化した試料を室温まで放冷し、その後、該試料の質量を量る。以下の式に従い、灰分を算出する。
灰分(質量%)=灰化した試料の質量(g)/(加熱前の試料の質量(g)×樹脂の割合)×100
ここで、灰分は二酸化ケイ素の構造を取っているため、ケイ素原子の割合を以下のように求められる。
ケイ素原子の割合(質量%)=灰分(質量%)×28.1÷60.1
なお、ケイ素原子以外の無機成分が含まれる可能性があるため、得られた灰分または、塗膜形成成分について、蛍光X線などの元素分析を用い、ケイ素原子以外の無機成分の有無および比率を確認することができる。
【0159】
本発明の塗料組成物から形成される塗膜は、23℃における伸び率が15%以上であり、30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。本発明の塗料組成物から形成される塗膜の23℃における伸び率を15%以上とすることで、塗膜の耐凍害性を向上させることができる。また、本発明の塗料組成物から形成される塗膜は、その伸び率の上限について特に制限はないものの、例えば、23℃における伸び率が200%以下である。
【0160】
本明細書において、塗膜の伸び率は、以下のように測定される。ポリプロピレン板上に乾燥膜厚が30~60μmとなるようにアプリケーターにて塗料組成物を塗布し、23℃で6時間、次いで50℃で3時間乾燥させて塗膜を形成させる。次いで、得られた塗膜を10×50mmの短冊状に切出し、試験片を用意する。次いで、23℃50%相対湿度環境下にて、チャック間距離30mm、荷重1kN、速度5mm/minの条件の引張試験を行い、試験片の破断伸び(%)を測定する。引張試験は5回行う。測定された5つの値のうち最小値と最大値を除いた3つの測定値の平均値を求め、これを塗膜の伸び率(%)とする。
【0161】
本発明の塗料組成物においては、ウレタン構造を有する(A-1)シラノール基を有する樹脂を用いることで、得られる塗膜の伸び率を高くすることができる。
また、芳香族環構造の割合が低く、直鎖や芳香族環以外の環構造の割合が多い構造を有する樹脂を用いること、塗膜を構成する樹脂が架橋構造を含む場合にはその架橋密度を低減すること、可塑剤を添加すること、そして、塗膜中のケイ素含有量を低減することにより、塗膜の伸び率を高くできる。
【0162】
本発明の塗料組成物から形成される塗膜の乾燥膜厚は、10~50μmであることが好ましい。本明細書では、乾燥膜厚を塗装膜厚とも称する。
【0163】
本発明の塗料組成物は、シーラー(下塗塗料)であることが好ましい。ただし、これに限定されるものではなく、本発明の塗料組成物を塗り重ねることも可能である。例えば、本発明の塗料組成物を下塗りと上塗りの両方の塗料として用いて、2回塗りを行うことも可能である。また、本発明の塗料組成物を下塗塗料として用いる場合、上塗塗料は、クリヤー塗料であってもよいし、有色不透明な塗料であってもよい。
【0164】
本発明の塗料組成物は、補修用塗料であることが好ましく、建築外装材の補修用塗料であることが特に好ましい。
【0165】
本発明の塗料組成物を用いた塗装方法としては、例えば、基材上に本発明の塗料組成物を下塗塗料として塗装し、次いで上塗塗料(例えば、クリヤー上塗塗料または有色不透明な塗料)を塗装する方法、基材上に本発明の塗料組成物を下塗塗料として塗装し、次いで意匠を施すために中塗塗料を塗装し、次いでクリヤー上塗塗料を塗装する方法、基材上に本発明の塗料組成物を下塗りと上塗りの両方の塗料として塗り重ねる方法等が挙げられる。また、本発明の塗料組成物の塗装の際に基材上には旧塗膜が存在してもよい。
【0166】
本明細書において、旧塗膜とは、塗装、特に補修を行う際に既に基材上に存在している塗膜を意味する。本発明の塗料組成物は、光触媒が存在している表面や無機系塗膜への付着性に優れる塗膜を形成可能であることから、旧塗膜が存在する場合、旧塗膜は光触媒を含有する塗膜または無機系塗膜であることが好ましい。
【0167】
基材としては、例えば、エポキシ樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリル樹脂、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリオレフィン、例えばポリプロピレン(PP)等のプラスチック基材、鉄鋼、亜鉛めっき鋼、錫めっき鋼、ステンレス鋼、マグネシウム合金、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金等の金属基材、セメント、モルタル、コンクリート、スレート、石膏、ケイ酸カルシウム、ガラス、セラミック、炭酸カルシウム、大理石、人工大理石等の金属以外の無機質基材、木材等の木質基材、これら基材の2種以上の材料を組み合わせたような複合基材等が挙げられる。また、複合基材としては、例えば、木繊維補強セメント板、繊維補強セメント板、繊維補強セメント・珪酸カルシウム板等の複合基材、各種表面処理、例えば酸化処理が施された金属基材、その表面が無機物で被覆されているようなプラスチック基材(例えば、ガラス質で被覆されたプラスチック基材)等が挙げられる。
【0168】
本発明の塗料組成物は、無機系基材への付着性に優れる塗膜を形成可能であることから、塗装対象は無機系基材であることが好ましい。
【0169】
基材は、様々な形状のものがあり、例えば、板状の基材等がある。基材の表面は、平滑であってもよいし、凹凸を有していてもよい。
【0170】
基材の具体例としては、建築物や構築物等の構造物、車両(自動車等)、家具、建具、電子機器(家電機器等)や、それらの部品が好適に挙げられる。本発明において、建築物とは、人間が居住又は滞在する目的で建築された構造物を意味し、例えば住宅(特には戸建や集合住宅)やビル、工場等が挙げられ、構築物とは、人間が居住又は滞在する目的以外のために建設された構造物を意味し、例えば橋梁、タンク、プラント配管、煙突等が挙げられる。また、構造物の部材としては、例えば屋根や壁(内壁や外壁など、特にはカーテンウォール)等が挙げられる。
【0171】
本発明の塗料組成物は、耐候性および耐凍害性に優れる塗膜を形成可能であることから、建築物等の構造物の外装用基材に対して塗装されることが好ましい。
【0172】
基材は、建材、特に建築板であることが好ましい。建築基材の具体例としては、例えば、単板、合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)等の木質建材;窯業系サイディングボード、フレキシブルボード、珪酸カルシウム板、石膏スラグバーライト板、木片セメント板、石綿セメント板、パルプセメント板、プレキャストコンクリート板、軽量気泡コンクリート(ALC)板またはALCパネル、石膏ボード等の窯業建材;金属サイディングボード、アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属建材等の各種建材(特に建築板)が好適に挙げられる。また、基材の具体例として、塩ビシート、ターポリン、プラダン(プラスチック製ダンボール)、アクリル板等のプラスチック基材、タイル、ガラス板等も挙げられる。
【0173】
基材は、その表面に、脱脂処理、化成処理、研磨等の前処理や、シーラー、プライマー塗装等が施されていてもよい。例えば、基材が、窯業建材等の塗料を過度に吸い込む可能性のある基材(特に多孔性基材)である場合、基材の表面がシーラーで塗装され、基材上にシーラー層が形成されている場合がある。また、基材が、金属建材等である場合には、基材の表面がプライマーで塗装され、基材上にプライマー層が形成されている場合がある。
【0174】
本発明の建築外装材の補修方法は、上述した本発明の塗料組成物を用いて建築外装材を補修するための方法である。本明細書では、この方法を「本発明の補修方法」とも称する場合がある。
【0175】
建築外装材とは、建築物や構築物等の構造物の外装(外壁や屋根等)に使用される建材である。建築外装材には、上述したような各種建築基材が使用される。本発明の塗料組成物は、無機系基材への付着性に優れる塗膜を形成可能であることから、補修の対象は無機系基材であることが好ましい。
【0176】
建築外装材は、その表面に旧塗膜を有していてもよい。旧塗膜は、建築外装材の表面の一部または全部を被覆している。本発明の補修方法の一実施形態では、建築外装材の表面上の旧塗膜を剥離または除去することなく、該旧塗膜上に本発明の塗料組成物を塗布することができる。例えば旧塗膜に意匠が施されている場合には、既存の意匠を活かすために旧塗膜を残したまま建築外装材の補修を行うことが好ましい場合も多い。
【0177】
本発明の補修方法においては、建築外装材の表面上の旧塗膜を剥離または除去することなく、該旧塗膜上の汚染物質を除去した後、該旧塗膜上に本発明の塗料組成物を塗布することが好ましい。建築外装材の旧塗膜上には、塵や埃等の汚染物質が付着していることから、汚染物質を除去することで、旧塗膜への新しい塗膜の密着性を向上させることができる。汚染物質の除去方法としては、高圧水洗浄や、カセイソーダ等のアルカリ洗浄、無機酸又は有機酸による酸性洗浄、過塩素酸等の漂白剤を用いた洗浄、ケレン及び布拭き等による洗浄が挙げられる。
【0178】
旧塗膜は、樹脂を含んでいることが好ましく、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ふっ素樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、セルロース樹脂、キシレン樹脂、アルキド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂、ビニル樹脂、アミン樹脂、ケチミン樹脂、およびこれらの樹脂を変性した樹脂(変性樹脂)等が挙げられる。樹脂は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明の塗料組成物は、無機系塗膜への付着性に優れる塗膜を形成可能であることから、旧塗膜は、無機系塗膜であることが好ましい。
【0179】
旧塗膜には、その他の成分として、光触媒、顔料、分散剤、表面調整剤、酸化防止剤、可塑剤、防錆剤、防腐剤、防カビ剤、溶剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、粘性調整剤、充填剤、消泡剤、荷電制御剤、応力緩和剤、浸透剤、導光材、光輝材、磁性材、蛍光体、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤等の各種添加剤が含まれていてもよい。本発明の塗料組成物は、光触媒が存在している表面への付着性に優れる塗膜を形成可能であることから、旧塗膜は、光触媒を含有する塗膜であることが好ましい。
【0180】
本発明の補修方法においては、本発明の塗料組成物の塗装により下塗り塗膜を形成することができ、ここで、下塗り塗膜の乾燥膜厚は10~50μmであることが好ましい。本発明の塗料組成物は、主剤と硬化剤とを混合して得られるが、旧塗膜が存在する場合は、旧塗膜上の汚染物質を除去した後に、主剤と硬化剤を混合すればよい。
【0181】
本発明の補修方法は、本発明の塗料組成物から形成される下塗り塗膜上に上塗塗料を塗布し、上塗り塗膜を形成する工程を更に含むことが好ましい。上塗塗料には、本発明の塗料組成物を用いてもよいが、他の塗料組成物を用いてもよい。
【0182】
上塗塗料は、主剤と硬化剤を含む2液型または多成分型の水性塗料組成物であることが好ましい。また、上塗塗料は、主溶媒として水を用いる水性塗料であることが好ましい。ここで、上塗塗料に用いる水は、特に制限されるものではなく、イオン交換水や蒸留水等の純水等が好適に挙げられるが、地下水や水道水であってもよい。また、上塗塗料を長期保存する場合には、カビやバクテリアの発生を防止するため、紫外線照射等により滅菌処理した水を用いてもよい。上塗塗料中において、水の量は、20~70質量%であることが好ましい。また、上塗塗料は、完全に水系化することも可能であり、使用される溶媒中の水の割合は、好ましくは85質量%以上であり、最も好ましくは100質量%である。また、上塗塗料中において、塗膜形成成分の量は、30~80質量%であることが好ましい。
【0183】
上塗塗料用の主剤は、通常、樹脂を含み、本発明においては、少なくともアクリル成分を含有する水分散性樹脂を含むことが好ましい。また、上塗塗料用の硬化剤は、通常、主剤に含まれる樹脂を硬化させるための成分、例えば架橋剤等の硬化成分を含み、本発明においては、少なくともカルボジイミドおよびイソシアネートより選ばれる少なくとも1種の硬化成分を含むことが好ましい。上塗塗料用の主剤にアクリル成分を含有する水分散性樹脂を用い、上塗塗料用の硬化剤にカルボジイミドおよびイソシアネートから選択される硬化成分を用いる構成によって、下塗り塗膜に対する上塗り塗膜の付着性を向上できるとともに、塗膜強度が向上し、良好な耐アルカリ性および耐汚染性を実現することができる。
【0184】
上塗塗料において、アクリル成分を含有する水分散性樹脂は、エマルション樹脂を含むことが好ましい。エマルション樹脂は、分子量を大きくすることが可能であり、また、分散安定性にも優れる水分散性樹脂である。また、アクリル成分とは、アクリル酸、メタクリル酸およびその誘導体(例えば、アクリル酸およびメタクリル酸のエステル、アミド等の(メタ)アクリロイル基を有する化合物やアクリル酸ニトリル、メタクリル酸ニトリル等)を指す。本明細書において、樹脂がアクリル成分を含有するとは、樹脂がその構造単位(繰り返し単位等)としてアクリル成分を含有することを意味する。また、アクリル成分を含有する樹脂を、アクリル成分に由来する構造単位を含有する樹脂と言い換えることも可能である。本明細書では、アクリル成分を含有する水分散性樹脂を「水分散性樹脂(X)」とも称する。水分散性樹脂(X)については、後で詳細に説明する。
【0185】
上塗塗料において、塗膜形成成分中の水分散性樹脂(X)の量は、50~98質量%であることが好ましい。水分散性樹脂(X)は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0186】
上塗塗料において、主剤は、アクリル成分を含有する水分散性樹脂以外の樹脂をさらに含むこともできる。他の樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ふっ素樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、セルロース樹脂、キシレン樹脂、アルキド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂、ビニル樹脂、アミン樹脂、ケチミン樹脂、およびこれらの樹脂を変性した樹脂(変性樹脂)等が挙げられる。
【0187】
上塗塗料において、硬化剤は、カルボジイミドおよびイソシアネートより選ばれる少なくとも1種の硬化成分を含むことが好ましい。硬化成分であるカルボジイミドおよびイソシアネートは、水分散性樹脂(X)と反応させることで、水分散性樹脂(X)を硬化させることができる。カルボジイミドおよびイソシアネートから選択される硬化成分を用いた硬化系であれば、上塗り塗膜の耐水性および耐アルカリ性を向上させることができる。また、硬化成分としては、カルボジイミドが好ましい。窯業建材のように基材に凹凸がある場合、膜厚が厚くなる部分が形成されることもあるが、このような基材に対して外観に優れる塗膜を形成させる観点からは、カルボジイミド硬化系が好ましい。また、カルボジイミドは、水分散タイプのカルボジイミドであることが好ましい。水分散タイプとすることで、主剤と混合時の分散安定性が向上する。
【0188】
硬化成分として使用し得るカルボジイミドとしては、例えば、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-N’-エチルカルボジイミド、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-N’-エチルカルボジイミドメチオジド、N-tert-ブチル-N’-エチルカルボジイミド、N-シクロヘキシル-N’-(2-モルホリノエチル)カルボジイミドメソ-p-トルエンスルホネート、N,N’-ジ-tert-ブチルカルボジイミド、N,N’-ジ-p-トリルカルボジイミド等のカルボジイミド化合物;カルボジイミド化触媒の存在下でポリイソシアネートの公知の縮合反応により得られるカルボジイミド化合物;ポリイソシアネートおよびポリアルキレンオキサイドを原料とするカルボジイミド化合物等が挙げられる。
【0189】
また、硬化成分として使用し得るカルボジイミドとしては、カルボジイミド基含有樹脂も知られている。カルボジイミド基含有樹脂は、カルボジイミド基含有樹脂エマルション、カルボジイミド基含有樹脂ディスパージョンおよび/またはカルボジイミド基含有樹脂水溶液の形態で配合されるのが好ましい。本明細書において、カルボジイミド基含有樹脂エマルションとは、カルボジイミド基含有樹脂が水を主成分とする水性媒体中で分散してなる乳濁液を意味し、カルボジイミド基含有樹脂ディスパージョンとは、カルボジイミド基含有樹脂が水を主成分とする水性媒体中で分散してなる分散液を意味する。
【0190】
硬化成分としてカルボジイミドを使用する場合、樹脂は、カルボキシル基含有樹脂であることが望ましい。
【0191】
硬化成分として使用し得るイソシアネートとしては、例えば、脂肪族、芳香族又は芳香脂肪族のイソシアネート化合物が挙げられ、イソシアネート基を2個以上有する化合物(ポリイソシアネートとも称される)であることが好ましく、その具体例としては、トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の他、これらイソシアネートの変性体が挙げられる。変性体の具体例としては、ビウレット変性体、イソシアヌレート変性体、アダクト変性体(例えばトリメチロールプロパン付加物)、アロファネート変性体、ウレトジオン変性体等が挙げられる。
【0192】
硬化成分としてイソシアネートを使用する場合、樹脂は、水酸基および/またはアミノ基含有樹脂であることが望ましく、中でも水酸基含有樹脂であることが好ましい。
【0193】
本明細書では、カルボジイミドおよびイソシアネートから選択される硬化成分を「硬化成分(Y)」とも称する。
【0194】
上塗塗料において、塗膜形成成分中の硬化成分(Y)の量は、1~30質量%であることが好ましい。硬化成分(Y)は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0195】
上塗塗料は、紫外線吸収剤を含むことが好ましい。紫外線吸収剤は、紫外線を吸収し、紫外線による劣化を防止する作用を有する。紫外線吸収剤を用いることで、塗膜の耐候性を向上させることができる。紫外線吸収剤は、主剤と硬化剤のいずれに含まれていてもよいが、主剤中に含まれることが好ましい。
【0196】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤(特にヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤)、ベンジリデンカンファー系紫外線吸収剤等が挙げられる。紫外線吸収剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよいが、紫外線吸収剤は、吸収ピークの異なる2種以上の紫外線吸収剤を含むことが好ましい。紫外線吸収剤は、トリアジン系紫外線吸収剤を含むことが好ましく、トリアジン系紫外線吸収剤およびベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含むことが特に好ましい。
【0197】
紫外線吸収剤としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルフォニックアシッド、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ドデシロキシベンゾフェノン-2-ヒドロキシ-4-ベンジロキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノン、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’,5’-ビス(α,α-(ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレン-ビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2N-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、メチル-3-[3-t-ブチル-5-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル]プロピオネートとポリエチレングリコールとの縮合物、2-(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,6-ジ-t-ブチルフェニル-3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2’-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブチルオキシフェニル)-6-(2,4-ビス-ブチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、ヒドロキシフェニルトリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシ-3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
【0198】
上塗塗料において、塗膜形成成分中の紫外線吸収剤の量は、例えば0~9質量%である。
【0199】
上塗塗料は、ラジカル捕捉剤を含むことが好ましい。ラジカル捕捉剤は、フリーラジカル等を捕捉し、光安定性を向上させることができる。また、本発明においては、フリーラジカルと反応し、重合反応が起こることを防止する機能を有する物質(いわゆる重合禁止剤)も、ラジカル捕捉剤に含まれる。ラジカル捕捉剤を用いることで、塗膜の耐候性を向上させることができる。ラジカル捕捉剤は、主剤と硬化剤のいずれに含まれていてもよいが、主剤中に含まれることが好ましい。
【0200】
ラジカル捕捉剤としては、ヒンダードアミン系化合物、ハイドロキノン系化合物、フェノール系化合物、フェノチアジン系化合物、ニトロソ系化合物、N-オキシル系化合物等が挙げられ、特にヒンダードアミン系光安定化剤(HALS)が好ましい。
【0201】
ラジカル捕捉剤としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、1-{2-(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル}-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、8-アセチル-3-ドデシル-7,7,9,9-テトラメチル-1,3,8-トリアザスピロ{4.5}デカン-2,4-ジオン等のヒンダードアミン系化合物、フェノール、o-、m-又はp-クレゾール、2-t-ブチル-4-メチルフェノール、6-t-ブチル-2,4-ジメチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2-t-ブチルフェノール、4-t-ブチルフェノール、2,4-ジ-t-ブチルフェノール、2-メチル-4-t-ブチルフェノール、4-t-ブチル-2,6-ジメチルフェノール等のフェノール系化合物、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、メチルハイドロキノン、2,5-ジ-t-ブチルハイドロキノン、2-メチル-p-ハイドロキノン、2,3-ジメチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン4-メチルベンズカテキン、t-ブチルハイドロキノン、3-メチルベンズカテキン、2-メチル-p-ハイドロキノン、2,3-ジメチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、t-ブチルハイドロキノン、ベンゾキノン、t-ブチル-p-ベンゾキノン、2,5-ジフェニル-p-ベンゾキノン等のハイドロキノン系化合物、フェノチアジン等のフェノチアジン系化合物、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンアンモニウム、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等のニトロソ系化合物、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-N-オキシル、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-N-オキシル、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-N-オキシル等のN-オキシル系化合物等が挙げられる。
【0202】
上塗塗料において、塗膜形成成分中のラジカル捕捉剤の量は、例えば0~7質量%である。ラジカル捕捉剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0203】
上塗塗料は、界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤は、必要に応じて主剤および/または硬化剤に使用される。界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等に分類される。上塗塗料中の界面活性剤の量は、10質量%以下であることが好ましく、0.2~8質量%であることがさらに好ましい。界面活性剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0204】
上塗塗料は、着色顔料、体質顔料、メタリック顔料、光輝顔料、鱗片状顔料等の顔料を含んでもよい。顔料は、主剤と硬化剤のいずれに含まれていてもよいが、主剤中に含まれることが好ましい。着色顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック等の無機顔料やフタロシアニン系顔料、アゾ系顔料等の有機顔料が挙げられる。体質顔料としては、例えば、シリカ、樹脂ビーズ、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー等が挙げられる。その他の顔料としては、例えば、アルミニウム粉顔料、ニッケル粉顔料、金粉、銀粉、ブロンズ粉、銅粉、ステンレス粉顔料、マイカ(雲母)顔料、グラファイト顔料、ガラスフレーク顔料や、金属コーティングした硝子粉、金属コーティングしたマイカ粉、金属コーティングしたプラスチック粉、鱗片状酸化鉄顔料等が挙げられる。
【0205】
上塗塗料において、塗膜形成成分中の顔料の量は、60質量%以下であることが好ましく、0~30質量%であることが更に好ましい。顔料は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0206】
上塗塗料には、その他の成分として、成膜助剤、凍結防止剤、湿潤剤、分散剤、消泡剤、粘性調整剤、増粘剤、沈降防止剤、皮張り防止剤、たれ防止剤、色分かれ防止剤、ツヤ消剤、密着性付与剤、レベリング剤、乾燥剤、触媒、可塑剤、防カビ剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、防腐剤、殺虫剤、帯電防止剤及び導電性付与剤等を目的に応じて適宜配合することができる。
【0207】
主剤および硬化剤は、必要に応じて適宜選択される各種成分を混合することによって調製することができる。上塗塗料は、主剤、硬化剤および必要に応じて添加剤を塗装時に混合することで調製することができる。
【0208】
上塗塗料は、クリヤー塗料であることが好ましい。
【0209】
上塗塗料は、せん断速度0.1(1/s)における粘度が1~1000(Pa・s、23℃)であり、せん断速度1000(1/s)における粘度が0.05~10(Pa・s、23℃)であることが好ましい。
【0210】
上塗塗料の塗装手段は、特に限定されず、既知の塗装手段、例えば、刷毛塗装、ローラー塗装、コテ塗装、ヘラ塗装、フローコーター塗装、スプレー塗装(例えばエアースプレー塗装、エアレススプレー塗装)等が利用できる。
【0211】
上塗塗料の乾燥手段は、特に限定されず、周囲温度での自然乾燥や乾燥機等を用いた強制乾燥のいずれであってもよい。
【0212】
上塗り塗膜の23℃における弾性率は、200N/mm~450N/mmであることが好ましく、250N/mm~400N/mmであることがより好ましい。上塗り塗膜の弾性率を上記特定した範囲とすることで、耐凍害性が向上するとともに、塗膜がワレにくくなり、耐アルカリ性の向上に繋がり、また、適度な弾性率であるため、汚染物質が付着しにくく、耐汚染性が向上する。弾性率は、樹脂を構成するモノマーの種類や架橋密度によって調整することができる。
【0213】
上塗り塗膜の弾性率を上記特定した範囲とすることで、耐凍害性試験で塗膜のワレが生じにくくなる。特に、本発明は光触媒塗膜の塗替え用にも用いられる塗料を得ることを目的とすることから、下塗り塗膜はケイ素含有量が高いといった特徴を有しており、上塗り塗膜は下塗り塗膜との付着性が確保されるとともにワレにくいことが求められる。さらに、基材や旧塗膜に無機成分が多い場合には耐アルカリ性にも優れることが好ましい。上塗り塗膜の弾性率を上記特定した範囲とすることで、このようなケイ素含有量の高い下塗り塗膜上に塗膜を形成した場合にも付着性が確保されるとともに塗膜がワレにくくなり、塗装体としての耐アルカリ性、耐凍害性の向上に繋がる。また、適度な弾性率であるため、汚染物質が付着しにくく、耐汚染性が向上する。弾性率は、樹脂を構成するモノマーの種類や架橋密度によって調整することができる。
【0214】
上塗り塗膜の弾性率は、引張試験により応力とひずみが比例する範囲内における傾き(比例定数)から算出することができる。
本明細書において、上塗り塗膜の弾性率は、ポリプロピレン板上に、乾燥膜厚が30~60μmとなるように塗料を塗布し、23℃で6時間、次いで50℃で3日間乾燥させた後、幅10mm、長さ50mmの平板状に切出した試験片について、23℃50%湿度の環境にて、チャック間距離30mm、荷重1.0kN、速度5mm/minの条件にて引張試験を行う。得られた応力-ひずみ曲線の結果より、荷重1.0~1.5kNにおける傾きを弾性率(N/mm)とする。
【0215】
上塗り塗膜の23℃における伸び率は、下塗り塗膜の23℃における伸び率より大きいことが好ましく、50%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。また、上塗り塗膜は、その伸び率の上限について特に制限はないものの、例えば、23℃における伸び率が250%以下である。
【0216】
上塗り塗膜の可視光透過率は、20%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることが更に好ましく、80%以上であることが特に好ましく、100%であることが最も好ましい。
【0217】
上塗り塗膜の紫外線透過率は、20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、0%であることが最も好ましい。
【0218】
上塗り塗膜を構成する樹脂に含まれるケイ素含有量は、下塗り塗膜を構成する樹脂に含まれるケイ素含有量と同じであるかまたは当該ケイ素含有量より少ないことが好ましく、0~0.4質量%であることが好ましい。
【0219】
上塗り塗膜は、ガラス転移温度が20~90℃の樹脂を好ましくは40~98質量%、より好ましくは50~95質量%含む。ガラス転移温度が20~90℃の樹脂が上記特定した量で含まれれば、耐汚染性に優れた塗膜が得られる。ガラス転移温度が20~90℃の樹脂は、アクリル成分を含有する水分散性樹脂であってもよいし、他の樹脂であってもよいが、アクリル成分を含有する水分散性樹脂であることが好ましい。
【0220】
本明細書において、樹脂のガラス転移温度(Tg)は、次のFOX式を用いて計算されるものをいう。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wi/Tgi+・・・+Wn/Tgn
FOX式において、Tgは、n種類のモノマーからなるポリマーのガラス転移温度(K)であり、Tg(1、2、i、n)は、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度(K)であり、W(1、2、i、n)は、各モノマーの質量分率であり、W1+W2+・・・+Wi+・・・+Wn=1である。
【0221】
ホモポリマーのガラス転移温度は技術常識であるが、ガラス転移温度が不明の単量体を用いる場合、その単量体のガラス転移温度は、示差走査熱量分析(DSC)、示差熱量分析(DTA)、熱機械分析(TMA)等によって求めることができる。
【0222】
上塗り塗膜は、最低造膜温度が20~60℃の樹脂を10~100質量%含むことが好ましい。最低造膜温度が20~60℃の樹脂は、アクリル成分を含有する水分散性樹脂であってもよいし、他の樹脂であってもよいが、アクリル成分を含有する水分散性樹脂であることが好ましい。
【0223】
本明細書において、樹脂の最低造膜温度とは、当該樹脂エマルションの最低造膜温度(MFT)であり、JIS K6828-2:2003に準じて測定される。
【0224】
上塗り塗膜の乾燥膜厚は、10~50μmであることが好ましい。
【0225】
上塗り塗膜は、乾燥膜厚が10~50μmであることが好ましい。また、上塗り塗膜は、可視光透過率が20%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることが更に好ましく、80%以上であることが特に好ましく、100%であることが最も好ましい。また、上塗り塗膜は、紫外線透過率が20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、0%であることが最も好ましい。
【0226】
本発明の補修方法は、下塗り塗膜上に中塗塗料を塗布し、中塗塗膜を形成する工程を含んでもよい。この場合、上塗塗料は、中塗り塗膜上に塗布され、上塗り塗膜を形成することになる。中塗り塗膜によって新しい意匠を建築外装材に施すことが可能である。中塗塗料には、本発明の塗料組成物を用いてもよいが、他の塗料組成物を用いてもよい。中塗塗料は、主溶媒として水を用いる水性塗料であることが好ましく、樹脂、架橋剤、顔料、表面調整剤、湿潤剤、分散剤、消泡剤、粘性調整剤、増粘剤、沈降防止剤、皮張り防止剤、たれ防止剤、色分かれ防止剤、ツヤ消剤、密着性付与剤、レベリング剤、乾燥剤、可塑剤、成膜助剤、防カビ剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、防腐剤、殺虫剤、荷電制御剤、応力緩和剤、浸透剤、導光材、光輝材、磁性材、蛍光体、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤、帯電防止剤及び導電性付与剤等を目的に応じて適宜配合することにより調製することができる。中塗塗膜は、乾燥膜厚が10~50μmであることが好ましい。
【0227】
本発明の補修方法の好ましい実施形態は、建築外装材の表面上の旧塗膜を剥離または除去することなく、旧塗膜上の汚染物質を除去した後、旧塗膜上に主剤と、硬化剤とを混合して得られる本発明の塗料組成物を塗布し、下塗り塗膜を形成する工程と、下塗り塗膜上に上塗塗料を塗布し、上塗り塗膜を形成する工程と、を含むことを特徴とする建築外装材の補修方法である。
【0228】
水分散性樹脂(X):アクリル成分を含有する水分散性樹脂
上塗塗料に使用できる水分散性樹脂(X)を以下に説明する。特段の記載がない場合、その水分散性樹脂(X)は、上塗塗料に使用できる水分散性樹脂(X)として説明される。
【0229】
水分散性樹脂(X)は、アクリル成分を含有する水分散性樹脂であり、アクリル成分の1種又は複数種を重合させて得られる重合体や、アクリル成分と、例えばスチレン等の非アクリル成分とを重合させて得られる重合体等が含まれる。水分散性樹脂(X)としては、例えば、アクリル樹脂の他、アクリルシリコーン樹脂、アクリルスチレン樹脂、ふっ素変性アクリル樹脂、脂肪酸変性アクリル樹脂、ウレタン変性アクリル樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂等の各種変性樹脂が挙げられる。
【0230】
アクリル成分としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系単量体や、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、2-アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、3-アミノプロピル(メタ)アクリレート、2-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等の官能基含有モノマー等が挙げられる。また、アクリル酸やメタクリル酸;アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド等のアミド系モノマー;γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、β-(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、β-(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシブチルフェニルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、及びγ-(メタ)アクリロキシプロピルジエチルメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有単量体等もアクリル成分に含まれる。
【0231】
水分散性樹脂(X)中に構造単位として含まれるアクリル成分の量は、例えば、40~100質量%である。アクリル成分は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0232】
本明細書において、(メタ)アクリレートの語は、メタクリレートまたはアクリレートを意味する。例えば、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートは、2-エチルヘキシルアクリレートまたは2-エチルヘキシルメタクリレートである。また、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート等のように、複数であることを示す接頭語が(メタ)アクリレートに付されている場合もあるが、この場合の各(メタ)アクリレートは、同一でも異なっていてもよい。
【0233】
非アクリル成分としては、例えば、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、ビニルバーサチック酸等のカルボキシル基含有単量体;スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、メトキシスチレン、ビニルトルエン等の芳香族系モノマー;エチレン、プロピレン等のオレフィン系モノマー;酢酸ビニル、塩化ビニル等のビニル系モノマー;マレイン酸アミド等のアミド系モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有単量体;ジアルキルフマレート、アリルアルコール、ビニルピリジン、ブタジエン等が挙げられる。
【0234】
水分散性樹脂(X)は、炭素数が4以上のアルキル基を有するモノマーを構造単位として含有することが好ましい。炭素数が4以上のアルキル基を有するモノマーは、疎水性が高いアルキル基を有することから耐水性が高く、更には柔軟性もあることから塗膜の耐凍害性を向上させることもできる。アルキル基の炭素数が大きくなるほど、耐水性や耐凍害性の向上効果が高くなるため、アルキル基の炭素数は4以上であれば特に制限されないが、アルキル基の炭素数の上限値としては、他のモノマーとの共重合性、水への溶解性の観点から、例えば12以下とすることができる。また、アルキル基は、環状の場合(シクロヘキシル基等の環状アルキル基の場合)よりも、線状または分岐状のアルキル基である方が、耐水性や耐凍害性の向上効果は高い。
【0235】
炭素数が4以上のアルキル基を有するモノマーは、アクリル成分でも非アクリル成分でもよいが、炭素数が4以上のアルキル基を有するアクリル成分であることが好ましく、炭素数が4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリレートであることが更に好ましい。炭素数が4以上のアルキル基を有するモノマーとしては、例えば、イソブチル(メタ)アクリレート、1-エチルプロピル(メタ)アクリレート、t-ペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-メチルブチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、3-メチルブチル(メタ)アクリレート、2-エチルブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、2-メチルペンチル(メタ)アクリレート、4-メチルペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、n-ウンデシル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0236】
水分散性樹脂(X)中に構造単位として含まれる炭素数が4以上のアルキル基を有するモノマーの量は、50~75質量%であることが好ましく、55~70質量%であることが更に好ましい。ただし、ここでの炭素数が4以上のアルキル基を有するモノマーは、環状構造を有するモノマーを除いた炭素数が4以上のアルキル基を有するモノマーである。水分散性樹脂(X)中に構造単位として含まれる炭素数が4以上のアルキル基を有するモノマー(ただし、環状構造を有するモノマーを除く)の量が50質量%以上であれば、塗膜の耐水性および耐凍害性を向上させることができる。また、水分散性樹脂(X)中に構造単位として含まれる炭素数が4以上のアルキル基を有するモノマー(ただし、環状構造を有するモノマーを除く)の量が75質量%を超えると、カルボジイミド、イソシアネート、シラン化合物等の硬化成分と硬化させた際に、塗膜硬度と基材付着性のバランスが悪くなり、塗膜の耐凍害性が低下する場合がある。
【0237】
水分散性樹脂(X)は、SP値9.5未満のモノマーを構造単位として含むことが好ましい。SP値9.5未満のモノマーは疎水性が高いため、塗膜の耐水性を向上させ、更には塗膜の耐凍害性を向上させることもできる。モノマーのSP値は8.50~9.40であることが好ましい。
【0238】
SP値9.5未満のモノマーは、アクリル成分でも非アクリル成分でもよいが、アクリル成分であることが好ましい。SP値9.5未満のモノマーとしては、例えば、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0239】
水分散性樹脂(X)中に構造単位として含まれるSP値9.5未満のモノマーの量は、10~90質量%であることが好ましく、20~85質量%であることがより好ましい。SP値9.5未満のモノマーは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0240】
SP値(溶解パラメーター)とは、相溶性を判断する際の目安となるもので、種々の計算方法や実測方法があるが、本明細書において、モノマーのSP値は、Hoyの提唱した蒸気圧法によるSP値を用いて求めた分子引力定数を使用し、文献〔K. L. Hoy, J. Paint Technology, 42, [541], 76(1970)〕に記載された方法に準拠して計算した値を意味する。具体的には、SP値は、δ=(dΣG)/Mで表され、dはポリマーの密度、Mはポリマーの基本構造単位の分子量、ΣGは該基本構造単位中に存在する原子(団)に対応する分子引力定数Gの総和である。
【0241】
水分散性樹脂(X)は、重合性の紫外線吸収剤を構造単位として含むことが好ましい。水分散性樹脂の原料モノマーと一緒に紫外線吸収剤を重合させることで、紫外線吸収剤の塗膜からの流出を防ぎ、耐候性を長期に亘って維持することが可能である。重合性の紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収性モノマー、ベンゾフェノン系紫外線吸収性モノマー等の紫外線吸収性モノマーが挙げられる。
【0242】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収性モノマーとしては、例えば、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニル]-5-tert-ブチル-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルアミノメチル-5’-tert-オクチルフェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシヘキシルフェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-tert-ブチル-3’-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]-5-シアノ-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]-5-tert-ブチル-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(β-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)-3’-tert-ブチルフェニル]-4-tert-ブチル-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]-5-メトキシ-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2'-ヒドロキシ-5'-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]-5-ニトロ-2H-ベンゾトリアゾール、3-(メタ)アクリロイル-2-ヒドロキシプロピル-3-[3-(2-ベンゾトリアゾリル)-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチル]フェニルプロピオネート等が挙げられる。
【0243】
ベンゾフェノン系紫外線吸収性モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシ-4-(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシ]プロポキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-[2-(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-[3-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ]ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-4-[2-(メタ)アクリロイルオキシ]ブトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-[3-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ]ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0244】
水分散性樹脂(X)中に構造単位として含まれる重合性の紫外線吸収剤の量は、例えば0~9.0質量%である。重合性の紫外線吸収剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0245】
水分散性樹脂(X)は、重合性のラジカル捕捉剤を構造単位として含むことが好ましい。水分散性樹脂の原料モノマーと一緒にラジカル捕捉剤を重合させることで、ラジカル捕捉剤の塗膜からの流出を防ぎ、耐候性を長期に亘って維持することも可能である。重合性のラジカル捕捉剤としては、例えば、重合性光安定性モノマー等が挙げられる。重合性光安定性モノマーは、重合性基と、光安定化作用を有する官能基とを有する化合物である。重合性基としては、例えば、アルケニル基(ビニル基、アリル基等)、アルケニルカルボニル基(例えば、(メタ)アクリロイル基、クロトノイル基等)等の重合性不飽和基等が挙げられる。
【0246】
重合性光安定性モノマーとしては、例えば、後述するヒンダードアミン系重合性光安定性モノマーの他、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステルと1,1-ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンとの反応生成物、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケートとメチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケートとの混合物等が挙げられる。
【0247】
ヒンダードアミン系重合性光安定性モノマーとしては、例えば、ピペラジン骨格(特に、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン骨格)を有する重合性化合物(ピペラジン骨格及び重合性基を有する化合物)等が挙げられる。
【0248】
代表的なヒンダードアミン系重合性光安定性モノマーとしては、下記構造式(1)で表される化合物等が挙げられる。
【化5】
構造式(1)において、RおよびRは、水素原子またはアルキル基であり、R、R、RおよびRは、アルキル基であり、Xは、酸素原子(-O-)またはイミノ基(-NH-)であり、YおよびZは、水素原子または置換基である。
【0249】
構造式(1)のR~Rにおいて、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基等のC1-20アルキル基、好ましくはC1-10アルキル基、さらに好ましくはC1-4アルキル基、特に好ましくはメチル基等が挙げられる。代表的なRおよびRは、水素原子またはメチル基であり、特にRが水素原子、Rが水素原子またはメチル基であることが好ましい。代表的なR~Rは、メチル基である。
【0250】
構造式(1)のYおよびZにおける置換基としては、炭化水素基[例えば、アルキル基{例えば、メチル基等の前述のアルキル基(例えば、C1-20アルキル基、好ましくはC1-4アルキル基)}]、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基等のC1-20アルコキシ基、好ましくはC1-10アルコキシ基、さらに好ましくはC1-4アルコキシ基、特に好ましくはメトキシ基)、アシル基(例えば、アセチル基等のC1-10アシル基)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ヒドロキシル基、重合性基(例えば、(メタ)アクリロイル基、クロトノイル基)等が挙げられる。
【0251】
構造式(1)において、代表的なYとしては、水素原子、アルキル基(例えば、メチル基等のC1-4アルキル基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基等のC1-4アルコキシ基)、アシル基(例えば、アセチル基等のC1-4アシル基)、(メタ)アクリルロイル基、クロトノイル基等が挙げられ、特に、水素原子またはメチル基が好ましい。代表的なZとしては、水素原子またはシアノ基が挙げられ、特に水素原子が好ましい。
【0252】
ヒンダードアミン系重合性光安定性モノマーとしては、例えば、4-(メタ)アクリルロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、置換基を有する4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン{例えば、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-アルキルピペリジン[例えば、4-(メタ)アクリロイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン等の4-(メタ)アクリロイルオキシ-1-C1-4アルキル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン]、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-アルコキシピペリジン[例えば、4-(メタ)アクリロイル-1-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等の4-(メタ)アクリロイルオキシ-1-C1-4アルコキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン]等のN-置換(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等の4-置換-4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等}等の4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン類;4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等の4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン類;4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、置換基を有する4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン{例えば、4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチル-1-アルキルピペリジン[例えば、4-(メタ)アクリロイルアミノ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン等の4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチル-1-C1-4アルキルピペリジン]等のN-置換(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等の4-置換-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等}等の4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン類;4-クロトノイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等の4-クロトノイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン類;1-(メタ)アクリロイル-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等の1-(メタ)アクリロイル-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン類;1-クロトノイル-4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等の1-クロトノイル-4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン類等が挙げられる。
【0253】
水分散性樹脂(X)中に構造単位として含まれる重合性のラジカル捕捉剤の量は、例えば0~7質量%である。重合性のラジカル捕捉剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0254】
特に、上塗塗料に使用される水分散性樹脂(X)は、耐候性を向上させる観点から、重合性の紫外線吸収剤および/または重合性のラジカル捕捉剤を構造単位として含むことが好ましい。
【0255】
水分散性樹脂(X)は、反応性乳化剤を構造単位として含むことが好ましい。反応性乳化剤を構造単位として含むことで、塗膜からの乳化剤の溶出が抑えられ、塗膜の耐水性および耐凍害性を向上させることができる。
【0256】
反応性乳化剤としては、例えば、アニオン性の反応性乳化剤、ノニオン性の反応性乳化剤が挙げられる。水分散性樹脂(X)は、アニオン性の反応性乳化剤とノニオン性の反応性乳化剤の両方を構造単位として含むことが好ましい。
【0257】
反応性乳化剤は、乳濁液の安定性の観点から、ポリアルキレングリコール鎖を有することが好ましい。ポリアルキレングリコール鎖としては、例えばポリエチレングリコール鎖やポリプロピレングリコール鎖等が挙げられる。また、反応性乳化剤は、耐水性及び乳濁液の安定性の観点から、分子量が200~3,500の範囲内であることが好ましい。
【0258】
反応性乳化剤としては、例えば、分子中にビニル基等の重合性の不飽和結合を有する乳化剤が挙げられる。こうした反応性乳化剤は、乳化機能を有するだけでなく、分子中にビニル基等の重合性の不飽和結合、及び、親水性基を持つ重合性モノマーでもある。通常の乳化剤が生成粒子表面に吸着するだけであるのに対し、反応性乳化剤は、重合体の重合過程において、全てではないが、重合体の一成分として重合体に組み込まれることがあるため、塗膜形成後、例えば水蒸気等の外的な要因によって乳化剤が重合体から遊離しない、あるいは、遊離しにくいといった特徴を有する。また、ポリアルキレングリコール鎖を含む反応性乳化剤が水分散性樹脂の表面に結合した保護層が形成されることで、耐凍害性の向上に繋がる。
【0259】
アニオン性の反応性乳化剤としては、例えば、アルキルエーテル型(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製のアクアロンKH-05、KH-10、株式会社ADEKA製のアデカリアソープSR-10、SR-1025、SR-20、R-3025、花王株式会社製のラテムルPD-104等)、スルフォコハク酸エステル型(市販品としては、例えば、花王株式会社製のラテムルS-120、S-120A、S-180P、S-180A、三洋化成株式会社製のエレミノールJS-20等)、アルキルフェニルエーテル型もしくはアルキルフェニルエステル型(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製のアクアロンHS-10、HS-1025、AR-10、AR-1025、AR-20、AR-2020、BC-10、BC-1025、BC-20、BC-2020、株式会社ADEKA製のアデカリアソープSE-10N、SE-1025A等)、(メタ)アクリレート硫酸エステル型(市販品としては、例えば、日本乳化剤株式会社製のアントックスMS-60、SAD、MS-2N、三洋化成工業株式会社製のエレミノールRS-3000等)、リン酸エステル型(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製のH-3330PL、株式会社ADEKA製のアデカリアソープPP-70等)等が挙げられる。
【0260】
ノニオン性の反応性乳化剤としては、例えば、アルキルエーテル型(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製のアクアロンKN-10、KN-20、KN-30、KN-5065、株式会社ADEKA製のアデカリアソープER-10、ER-20、ER-30、ER-40、花王株式会社製のラテムルPD-420、PD-430、PD-450等)、アルキルフェニルエーテル型もしくはアルキルフェニルエステル型(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製のアクアロンRN-10、RN-20、RN-30、RN-50、AN-10、AN-20、AN-30、AN-5065、株式会社ADEKA製のアデカリアソープNE-10、NE-20、NE-30等)、(メタ)アクリレートエステル型(市販品としては、例えば、日本乳化剤株式会社製のMA-50A、MA-100A、MPG-130MA、日油株式会社製のブレンマーPE-90、PP-1000、50PEP-300、AE-200、AP-400等)等が挙げられる。
【0261】
水分散性樹脂(X)中に構造単位として含まれる反応性乳化剤の量は、0.1~10質量%であることが好ましい。反応性乳化剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0262】
上塗塗料において、水分散性樹脂(X)は、重量平均分子量が300,000を超える又は重量平均分子量が測定できない水分散性樹脂であることが好ましい。本明細書において「重量平均分子量が測定できない水分散性樹脂」とは、架橋構造を有することで、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって重量平均分子量が測定できない水分散性樹脂を指す。本発明においては、「重量平均分子量が測定できない水分散性樹脂」も「重量平均分子量が300,000を超える水分散性樹脂」と同様に高分子量の樹脂として扱う。
【0263】
本明細書において、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した値であり、標準物質にはポリスチレンが使用され、移動相にはテトラヒドロフランが使用される。
【0264】
水分散性樹脂(X)は、エマルションの形態で塗料中に分散していることが好ましい。このため、上塗塗料を調製する際には、水分散性樹脂(X)のエマルションを用いることが好ましい。水分散性樹脂(X)のエマルションは、水分散性樹脂(X)が水中に安定して分散している乳濁液を意味し、必要に応じて乳化剤等の添加剤が含まれる。なお、このように樹脂がエマルションの形態で分散している塗料は、エマルション塗料とも称される。
【0265】
水分散性樹脂(X)エマルションは、例えば、水を媒体とし、水中で乳化重合を行うことによって調製できる。より好ましくは、乳化重合によって得られる均一構造を有する水分散性樹脂(X)エマルション、多段階の乳化重合法によって得られる異相構造を有する水分散性樹脂(X)エマルション等が挙げられ、これらの両方を一緒に用いてもよい。あるいは、水分散性樹脂(X)エマルションを以下のように調製することもできる。例えば、高速攪拌機等を使用することにより強制的なせん断力を加えながら、水分散性樹脂(X)を水中で乳化させることによって水分散性樹脂(X)エマルションを調製してもよい。また、有機溶剤媒体中にて重合してなる水分散性樹脂(X)に対して、水中への相転換を行うことによって水分散性樹脂(X)エマルションを調製することもでき、必要に応じて蒸留等によって水分散性樹脂(X)エマルション中に含まれる有機溶剤を除去してもよい。
【0266】
更に、得られる塗膜の機能を向上させるため、水分散性樹脂(X)に架橋構造を導入することも可能である。一般的に架橋構造は、“粒子内部架橋構造”と“粒子間架橋構造”の2種に大別される。
【0267】
この“粒子内架橋構造”や“粒子間架橋構造”を水分散性樹脂(X)に導入することで、塗膜とした時の強靱性、耐水性、耐凍害性等の塗膜性能を向上させることができる。
【0268】
粒子内架橋及び粒子間架橋構造を得るためには、例えば、以下に示す方法を用いればよい。
【0269】
粒子内架橋:分子中に重合性不飽和二重結合を2個以上有するモノマーを用いる。
ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等を使用する方法;乳化重合反応時の温度にて相互に反応する官能基を持つモノマーを用いる方法、例えば、カルボキシル基とグリシジル基や、水酸基とイソシアネート基等の官能基の組み合わせを持つモノマーを用いる方法;(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の加水分解縮合反応する加水分解性シリル基含有モノマーを用いる方法等が挙げられる。
【0270】
粒子間架橋:カルボニル基を有するモノマーを共重合させ、その後、分子中に2個以上のヒドラジド基を有する化合物を混合する方法が最も代表的な方法として挙げられる。
カルボニル基含有モノマーとしては、例えば、アクロレイン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ホルミルスチロール、(メタ)アクリルオキシアルキルプロパナール、ジアセトン(メタ)アクリレート、アセトニル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート-アセチルアセテート、ブタンジオール-1,4-アクリレート-アセチルアクリレート、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン等が挙げられる。特に、アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド及びビニルエチルケトンが好ましい。一方、上記カルボニル基の対となる、分子中に2個以上のヒドラジド基を有する化合物としては、例えば、カルボヒドラジドや、蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン2酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、1,2,4-ベンゼントリヒドラジド、及びチオカルボジヒドラジド等が挙げられる。これらの中でも、エマルションへの分散性や耐水性のバランスからカルボヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド及びコハク酸ジヒドラジドが好ましい。
【0271】
乳化重合には、一般的に乳化重合で使用される界面活性剤を乳化剤として使用することができる。例えば、ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪酸塩や、高級アルコール硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシノニルフェニルエーテルスルホン酸アンモニウム、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム塩、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレングリコールエーテル硫酸塩、スルホン酸基又は硫酸エステル基と重合性の炭素-炭素不飽和二重結合を分子中に有する、いわゆる反応性乳化剤等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテルや、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、又は前述の骨格と重合性の炭素-炭素不飽和二重結合を分子中に有する反応性ノニオン性界面活性剤等のノニオン性界面活性剤;アルキルアミン塩や、第4級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも、アンモニウム塩であるアニオン性界面活性剤は、耐水性の効果が高く好ましい。
【0272】
水分散性樹脂(X)の調製には、反応性乳化剤と非反応性乳化剤を併用してもよい。
【0273】
水分散性樹脂(X)エマルションは、pHが7~10であることが好ましい。例えば中和剤を用いて水分散性樹脂(X)エマルションのpHを上記特定した範囲内に調整することができる。水分散性樹脂(X)エマルションのpHが7未満では、貯蔵時の安定性、塗料の機械的安定性等の種々の安定性が低下する恐れがあり、一方、10を超えると、乾燥が遅くなる場合もある。ここで使用できる中和剤としては、アンモニアや、アルカリ性の無機化合物および沸点260℃超のアルカリ性の有機化合物よりなる群から選ばれる中和剤であることが好ましい。
【0274】
水分散性樹脂(X)エマルションには、水分散性樹脂(X)の原料として使用したアクリル成分や非アクリル成分が重合せずに残留し得る。また、水分散性樹脂(X)エマルションの原料がアンモニアやVOC化合物を含んでいる場合もある。このように残留している未反応モノマーやアンモニアやVOC化合物は、臭気の発生を抑制する観点から、除去することが好ましい。このため、水分散性樹脂(X)エマルションの調製中または調製後に減圧下でこれらを除去することが好ましい。
【0275】
水分散性樹脂(X)は、その平均粒子径が50~200nmであることが好ましく、60~150nmであることがより好ましく、70~120nmであることが特に好ましい。
【実施例0276】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例中の「部」や「%」は特に断りがない限り、質量基準で示す。
【0277】
後述の主剤の調製に用いられる樹脂1~5は、合成樹脂エマルションであり、その詳細は以下の通りである。
樹脂1:シラノール基およびウレタン基含有アクリル樹脂分散体(樹脂中のケイ素含有量11.7%、樹脂の平均粒子径50nm、分散体中の不揮発分40%)
樹脂2:シラノール基含有アクリル樹脂分散体(樹脂中のケイ素含有量11.7%、樹脂の平均粒子径50nm、分散体中の不揮発分40%)
樹脂3:シラノール基含有アクリル樹脂分散体(樹脂中のケイ素含有量0.4%、平均粒子径100nm、不揮発分40%)
樹脂4:アクリル樹脂分散体(樹脂中のケイ素含有量0%、樹脂の平均粒子径100nm、分散体中の不揮発分40%)
樹脂5:脂肪族型ポリウレタン分散体(樹脂中のケイ素含有量0%、樹脂の平均粒子径40nm、分散体中の不揮発分30%)
樹脂4及び樹脂5の合成樹脂エマルションには、(A-1)成分であるシラノール基を有する樹脂が含まれていない。
【0278】
<主剤の調製>
表2に示す配合処方に従い、材料を配合し、よく混合、攪拌することで各主剤を得た。表2に示される添加剤は以下の通りである。
「成膜助剤」はダワノールDPnB(ダウ・ケミカル日本株式会社)である。
「UVA/HALS」はTinuvin 1130/Tinuvin 292(BASFジャパン株式会社)である。
「防腐剤」はPROXEL DAC(ロンザジャパン株式会社)である。
「消泡剤」はデフォーマー1316(サンノプコ株式会社)である。
「粘性調整剤」はアデカノールUH-420(株式会社ADEKA)である。
【0279】
<硬化剤の調製>
表1に示す配合処方に従い、材料を配合し、よく混合、攪拌することで硬化剤1~3を得た。表1に示される成分は以下の通りである。
「シリケート40」はテトラエトキシシラン部分縮合物(シリカ残存比率40%)(多摩化学工業株式会社)である。
「KR500」はシリコーンオリゴマー KR-500(信越化学工業株式会社)である。
「界面活性剤」はEnviroGem AD01(エボニックジャパン株式会社)である。
「水系架橋剤」はカルボジライト V-04B(日清紡ケミカル株式会社)である。
「成膜助剤」はダワノールDPnB(ダウ・ケミカル日本株式会社)である。
表1に示すシラン化合物のうち、シリケート40が(B-1)成分に該当する。
【0280】
【表1】
【0281】
表1中、「塗膜形成成分(質量%)」には、硬化剤に含まれる塗膜形成成分の量(質量%)を示し、「硬化剤塗膜形成成分中のケイ素含有量(質量%)」には、硬化剤に含まれる塗膜形成成分中のケイ素含有量(質量%)を示す。
【0282】
<塗料の調製>
上記主剤と硬化剤を表2に示すような混合比(質量割合)で混合、攪拌し、各塗料を得た。
【0283】
【表2】
【0284】
<上塗塗料の調整>
樹脂6〔アクリルシリコーン樹脂分散体(樹脂中のケイ素含有量0.09%、樹脂の平均粒子径110nm、酸価16.8mgKOH/g、分散体中の不揮発分45%)〕85部、イオン交換水4.9部、成膜助剤8.0部、UVA/HALS1.0部、防腐剤0.1部、消泡剤0.5部、粘性調整剤0.5部を混合し作製した主剤と、カルボジライトE-05(日清紡ケミカル株式会社、不揮発分40%)100部を硬化剤とし、使用直後に主剤と硬化剤を95/5の比率(重量)で混合し、上塗塗料1を得た。
なお、上塗塗料1の調製に用いた成膜助剤、UVA/HALS、防腐剤、消泡剤及び粘性調整剤は、上記<主剤の調製>で説明したとおりである。
また、上塗塗料1の樹脂6を樹脂7(アクリル樹脂分散体:樹脂中のケイ素含有量0%、樹脂の平均粒子径100nm、酸価16.8mgKOH/g、水酸基価酸価16.8mgKOH/g、分散体中の不揮発分45%)、硬化剤をデュラネートWT20-100(旭化成株式会社、不揮発分100%)に変更して上塗塗料2を得た。
また、上塗塗料1の主剤を上塗塗料3とした。
【0285】
<試験板の作製>
(実施例1~7及び比較例1~7)
上記<塗料の調製>で調製した塗料を下記サイディングボード上に塗布量が0.08kg/mとなるように塗布(下塗)し、標準状態(気温23℃、相対湿度50%)で一晩乾燥させ、次いで塗布量0.10kg/mとなるように上塗塗料1を塗布(上塗)し、標準状態で7日間乾燥させ、試験板を作製した。
(実施例8)
上塗塗料1から上塗塗料2に変更した以外は実施例2と同様に試験板を作製した。
(実施例9)
上塗塗料1から上塗塗料3に変更した以外は実施例2と同様に試験板を作製した。
(基材:サイディングボード)
光触媒系基材:光触媒含有塗膜形成サイディングボード(ケイミュー株式会社製エクセレージ光セラ15)
無機系塗膜付き基材:無機樹脂系塗膜形成サイディングボード(ケイミュー株式会社製エクセレージ親水セラ15)
【0286】
<評価方法および、試験結果>
下記のように、伸び率、基材付着性、耐凍害性、耐候性の評価を行った。評価結果を表2及び表3に示す。なお、光触媒系基材への付着性または無機系塗膜付き基材への付着性が不十分なものについては、試験板上の複層膜が光触媒系基材または無機系塗膜付き基材への塗装に適していないものと判断し、他の評価を行わなかった。
【0287】
<伸び率>
上記<塗料の調製>で調製した塗料から形成される塗膜の伸び率を求めた。具体的には、ポリプロピレン板の上に乾燥膜厚が30~60μmとなるようにアプリケーターにて塗料を塗布し、23℃6時間、50℃3日間乾燥させ、塗膜を形成させた。次いで、幅10mm、長さ50mmの短冊状に切出し、試験片を得た。得られた試験片について、23℃50%相対湿度環境下にて、チャック間距離30mm、荷重1kN、速度5mm/minの条件の引張試験を行い、試験片の破断伸び(%)を測定した。引張試験を5回行った。測定された5つの値のうち最小値と最大値を除いた3つの測定値の平均値を求め、これを塗膜の伸び率(%)とした。結果を表2に示す。
【0288】
<基材付着性>
JIS K 5600-5-6(クロスカット法)に準拠して、上記<試験板の作製>に従い、光触媒系基材および無機系基材上に作製された直後の試験板の塗膜を2mm間隔で5×5の碁盤目にカットし、粘着テープ貼付後の剥離試験を実施して、以下の判定基準で基材付着性を評価した。結果を表2及び表3に示す。基材付着性の評価結果が○又は△である場合、その塗膜は基材への付着性に優れる。
基材付着性の判定基準
〇・・・剥離面積が5%以下
△・・・剥離面積が5%超え15%以下
×・・・剥離面積が15%を超過
【0289】
<耐凍害性>
光触媒系基材上に作製された試験板を凍結融解試験機に設置し、[気中凍結(-20℃)2時間]-[水中融解(+20℃)1時間]を1サイクルとした凍結溶解試験を300サイクル行い、試験機から取り出してから3時間後の試験板について、塗膜外観を観察し、以下の判定基準に従い耐凍害性を評価した。結果を表2及び表3に示す。耐凍害性の評価結果が○又は△である場合、その塗膜は耐凍害性に優れる。
耐凍害性の判定基準
〇・・・目視および10倍拡大して視認できる割れ又は剥がれがない
△・・・目視で視認できる割れ又は剥がれはないが、10倍拡大してようやく視認できる僅かな割れがある
×・・・目視にて視認できる割れ又は剥がれがある
【0290】
<耐候性>
光触媒系基材上に作製された試験板をスーパーUVテスターに設置し、[紫外線照射6時間]-[結露2時間]-[シャワー30秒]を1サイクルとした促進耐候性試験を38サイクル(約300時間)行い、試験機から取出し後の試験板について、塗膜外観を観察し、以下の判定基準に従い耐候性を評価した。結果を表2及び表3に示す。耐候性の評価結果が○又は△である場合、その塗膜は耐候性に優れる。
〇・・・目視および10倍拡大して視認できる割れ又は剥がれがない
△・・・目視で視認できる割れ又は剥がれはないが、10倍拡大してようやく視認できる僅かな割れがある
×・・・目視にて視認できる割れ又は剥がれがある
【0291】
<上塗の弾性率>
ポリプロピレン板の上に乾燥膜厚が30~60μmとなるようにアプリケーターにて上塗塗料を塗布し、23℃6時間、50℃3日間乾燥させ、塗膜を形成させた。次いで、幅10mm、長さ50mmの短冊状に切出し、試験片を得た。得られた試験片について、23℃50%湿度の環境にて、チャック間距離30mm、荷重1kN、速度5mm/minの条件の引張試験を行い、得られた応力-ひずみ曲線の結果より、荷重1.0~1.5Nにおける傾きを求め、これを弾性率(N/mm)とした。結果を表3に示す。
【0292】
<耐アルカリ性>
光触媒系基材上に作製された試験板を飽和水酸化カルシウム水溶液中に500時間浸漬し、取出し直後に水洗の後、取出してから3時間後の試験板について付着性を確認し、以下の判定基準で耐アルカリ性を評価した。結果を表3に示す。
〇・・・剥離面積が15%以下
×・・・剥離面積が15%を超える
【0293】
【表3】
【手続補正書】
【提出日】2024-10-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)主剤と(B)硬化剤を少なくとも含む2液型または多成分型の塗料組成物であって、
(A)主剤は(A-1)シラノール基を有する樹脂を含み、前記(A-1)シラノール基を有する樹脂は、加水分解性シリル基および/またはシラノール基を有するアクリル樹脂と、加水分解性シリル基および/またはシラノール基を有するポリシロキサンとが結合してなる樹脂であって、前記加水分解性シリル基は、下記一般式(I)で表される官能基であり、
【化1】
(式中、R は、各々、アルキル基、アリール基又はアラルキル基である1価の有機基であり、R は、加水分解性基であって、各々、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基、フェノキシ基、アリールオキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、イミノオキシ基又はアルケニルオキシ基であり、xは0~2の整数である。)
(B)硬化剤は(B-1)一般式:Si(OR)で表されるオルガノシリケート〔式中、Rは、それぞれが同一であるか又は異なっており、炭素数1~8の有機基である。〕および/または該オルガノシリケートの部分縮合物を含み、
前記塗料組成物から形成される塗膜について、塗膜を構成する樹脂に含まれるケイ素含有量が5.0~15.0質量%であり、
前記塗料組成物から形成される塗膜について、23℃における伸び率が15%以上であることを特徴とする塗料組成物。
【請求項2】
前記(A-1)シラノール基を有する樹脂が、加水分解性シリル基および/またはシラノール基を有する親水性基含有ポリウレタンと、加水分解性シリル基および/またはシラノール基を有するアクリル樹脂とが、加水分解性シリル基および/またはシラノール基を有するポリシロキサンを介して結合してなる複合樹脂であって、前記加水分解性シリル基は、前記一般式(I)で表される官能基である、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
建築外装材の表面上の旧塗膜を剥離または除去することなく、該旧塗膜上の汚染物質を除去した後、該旧塗膜上に請求項1または2に記載の塗料組成物を塗布し、下塗り塗膜を形成する工程と、前記下塗り塗膜上に上塗塗料を塗布し、上塗り塗膜を形成する工程とを含むことを特徴とする建築外装材の補修方法。