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特開2024-178794フェニルプロパノイドの2官能基化モノマー、ポリマー、フェニルプロパノイドの2官能基化モノマーの製造方法、ポリマーの製造方法、及び、ビスフェノールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178794
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】フェニルプロパノイドの2官能基化モノマー、ポリマー、フェニルプロパノイドの2官能基化モノマーの製造方法、ポリマーの製造方法、及び、ビスフェノールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/02 20060101AFI20241218BHJP
   C07F 7/18 20060101ALI20241218BHJP
   C07F 9/40 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
C08G61/02
C07F7/18 C CSP
C07F7/18 G
C07F7/18 J
C07F9/40 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097213
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】信田 尚毅
(72)【発明者】
【氏名】跡部 真人
(72)【発明者】
【氏名】瀬古 達矢
(72)【発明者】
【氏名】長屋 亮
【テーマコード(参考)】
4H049
4H050
4J032
【Fターム(参考)】
4H049VN01
4H049VP01
4H049VR22
4H049VR42
4H049VU20
4H049VW02
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB46
4H050WA15
4H050WA23
4J032CA04
4J032CA68
4J032CB01
4J032CD01
4J032CE03
4J032CE11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】バイオマス由来成分を原料として、単独重合による高分子化が可能なモノマーを提供する。
【解決手段】式(1a)、(1b)または(1c)で表されるフェニルプロパノイドの2官能基化モノマー。

(式(1a)、(1b)及び(1c)中、R1~R5は、それぞれ、互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ホルミル基、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基またはアリール基を表し、Lはリンカー基を表す。)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1a)、(1b)または(1c)で表されるフェニルプロパノイドの2官能基化モノマー。
【化1】
(式(1a)、(1b)及び(1c)中、R1~R5は、それぞれ、互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ホルミル基、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基またはアリール基を表し、
Lはリンカー基を表す。)
【請求項2】
前記式(1a)、(1b)及び(1c)中のLは、式(2a)で表されるシロキサン骨格を有するリンカー基、式(2b)で表されるホスホネート骨格を有するリンカー基、>C=O、-S-、-SO-、-SO2-、-Se-、-Te-、または、式(2c)~(2n)のいずれかで表されるリンカー基である、請求項1に記載のフェニルプロパノイドの2官能基化モノマー。
【化2】
【化3】
【化4】
(式(2a)~(2n)中、R20~R29、R34~R60は、それぞれ、互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ホルミル基、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基またはアリール基を表し、
式(2b)中、Eは、O、SまたはSeを表し、
式(2m)、(2n)中、nは自然数を表す。)
【請求項3】
式(4)~(6)のいずれかで表されるポリマー。
【化5】
(式(4)~(6)中、R1、R2、R18は、それぞれ、互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ホルミル基、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基またはアリール基を表し、
Lはリンカー基を表し、
nは自然数を表す。)
【請求項4】
前記式(4)~(6)中のLは、式(2a)で表されるシロキサン骨格を有するリンカー基、式(2b)で表されるホスホネート骨格を有するリンカー基、>C=O、-S-、-SO-、-SO2-、-Se-、-Te-、または、式(2c)~(2n)のいずれかで表されるリンカー基である、請求項3に記載のポリマー。
【化6】
【化7】
【化8】
(式(2a)~(2n)中、R20~R29、R34~R60は、それぞれ、互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ホルミル基、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基またはアリール基を表し、
式(2b)中、Eは、O、SまたはSeを表し、
式(2m)、(2n)中、nは自然数を表す。)
【請求項5】
式(7a)、(7b)または(7c)で表されるフェニルプロパノイドの水酸基とリンカーとを反応させることで、請求項1に記載のフェニルプロパノイドの2官能基化モノマーを製造する方法。
【化9】
(式(7a)、(7b)及び(7c)中、R1~R5は、それぞれ、互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ホルミル基、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基またはアリール基を表す。)
【請求項6】
前記リンカーは、式(8)で表されるシロキサン骨格を有するリンカー、または、式(9)で表されるホスホネート骨格を有するリンカーである、請求項5に記載のフェニルプロパノイドの2官能基化モノマーを製造する方法。
【化10】
(式(8)中、R20、R21、R30及びR31はそれぞれ、互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ホルミル基、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基またはアリール基を表す。
式(9)中、Eは、O、SまたはSeを表し、
22、R32及びR33はそれぞれ、互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ホルミル基、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基またはアリール基を表す。)
【請求項7】
請求項1に記載のフェニルプロパノイドの2官能基化モノマーを、環化付加重合またはメタセシス重合させることで、請求項3に記載のポリマーを製造する方法。
【請求項8】
請求項3に記載の、前記式(4)で表されるポリマーを分解して式(10)で表されるビスフェノールを製造する、
前記式(5)で表されるポリマーを分解して式(11)で表されるビスフェノールを製造する、または、
前記式(6)で表されるポリマーを分解して式(12)で表されるビスフェノールを製造する方法。
【化11】
(式(10)~(12)中、R1、R2、R18は、それぞれ、互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ホルミル基、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基またはアリール基を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェニルプロパノイドの2官能基化モノマー、ポリマー、フェニルプロパノイドの2官能基化モノマーの製造方法、ポリマーの製造方法、及び、ビスフェノールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーボンニュートラル実現の観点から、化石資源に依存しないプラスチック製造が望まれている。リグニン由来バイオマスは、地球上に最も豊富に存在する含芳香族化合物であり、プラスチック製造における石油の代替原料として期待されている。リグニン由来バイオマスの中でも、フェニルプロパノイドはスチレン型の構造を有するものが多く、高分子化に適している。フェニルプロパノイドは精油の主成分であり、その抽出・精製技術は確立されていることから、プラスチック原料としての大量利用も担い得る原料化合物群である。精油に含まれるフェニルプロパノイドとしては、アネトールやイソオイゲノール等が知られている。
【0003】
フェニルプロパノイドの重合反応としては、これまでにもカチオン重合による共重合(非特許文献1)や、ラジカル重合による共重合(非特許文献2)が報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】JACS, 2007, 129, 9586; Polymer Journal, 2015, 47, 527
【非特許文献2】Herk, Jena et al. Polym. Chem. 2020, 11, 5630
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フェニルプロパノイドの重合反応として、非特許文献1、2に開示されているように、アネトールを原料とする高分子合成は報告例があるものの、多くが二重結合部位における付加重合(カチオン重合、ラジカル重合)である。アネトールのようなフェニルプロパノイドは、β置換スチレン骨格を有し、付加重合による単独重合が難しい。そのため、従来、アネトールは単独重合されておらず、他のモノマーとの共重合のみが報告されている。
【0006】
しかしながら、フェニルプロパノイドの共重合による高分子化は、単独重合による高分子化と比べて、高分子中のフェニルプロパノイド含有割合、すなわちバイオマス含有割合を低減させてしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題を解決すべく、バイオマス由来成分を原料として製造可能であり、且つ、単独重合による高分子化が可能なモノマーを提供することを課題とする。また、本発明は、当該モノマーを単独重合させて得られるポリマー、モノマーの製造方法、ポリマーの製造方法、及び、ビスフェノールの製造方法を提供することをそれぞれ別の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下のように特定される本発明によって解決される。
1.式(1a)、(1b)または(1c)で表されるフェニルプロパノイドの2官能基化モノマー。
【化1】
(式(1a)、(1b)及び(1c)中、R1~R5は、それぞれ、互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ホルミル基、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基またはアリール基を表し、
Lはリンカー基を表す。)
2.前記式(1a)、(1b)及び(1c)中のLは、式(2a)で表されるシロキサン骨格を有するリンカー基、式(2b)で表されるホスホネート骨格を有するリンカー基、>C=O、-S-、-SO-、-SO2-、-Se-、-Te-、または、式(2c)~(2n)のいずれかで表されるリンカー基である、前記1に記載のフェニルプロパノイドの2官能基化モノマー。
【化2】
【化3】
【化4】
(式(2a)~(2n)中、R20~R29、R34~R60は、それぞれ、互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ホルミル基、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基またはアリール基を表し、
式(2b)中、Eは、O、SまたはSeを表し、
式(2m)、(2n)中、nは自然数を表す。)
3.式(4)~(6)のいずれかで表されるポリマー。
【化5】
(式(4)~(6)中、R1、R2、R18は、それぞれ、互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ホルミル基、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基またはアリール基を表し、
Lはリンカー基を表し、
nは自然数を表す。)
4.前記式(4)~(6)中のLは、式(2a)で表されるシロキサン骨格を有するリンカー基、式(2b)で表されるホスホネート骨格を有するリンカー基、>C=O、-S-、-SO-、-SO2-、-Se-、-Te-、または、式(2c)~(2n)のいずれかで表されるリンカー基である、前記3に記載のポリマー。
【化6】
【化7】
【化8】
(式(2a)~(2n)中、R20~R29、R34~R60は、それぞれ、互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ホルミル基、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基またはアリール基を表し、
式(2b)中、Eは、O、SまたはSeを表し、
式(2m)、(2n)中、nは自然数を表す。)
5.式(7a)、(7b)または(7c)で表されるフェニルプロパノイドの水酸基とリンカーとを反応させることで、前記1に記載のフェニルプロパノイドの2官能基化モノマーを製造する方法。
【化9】
(式(7a)、(7b)及び(7c)中、R1~R5は、それぞれ、互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ホルミル基、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基またはアリール基を表す。)
6.前記リンカーは、式(8)で表されるシロキサン骨格を有するリンカー、または、式(9)で表されるホスホネート骨格を有するリンカーである、前記5に記載のフェニルプロパノイドの2官能基化モノマーを製造する方法。
【化10】
(式(8)中、R20、R21、R30及びR31はそれぞれ、互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ホルミル基、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基またはアリール基を表す。
式(9)中、Eは、O、SまたはSeを表し、
22、R32及びR33はそれぞれ、互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ホルミル基、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基またはアリール基を表す。)
7.前記1に記載のフェニルプロパノイドの2官能基化モノマーを、環化付加重合またはメタセシス重合させることで、前記3に記載のポリマーを製造する方法。
8.前記3に記載の、前記式(4)で表されるポリマーを分解して式(10)で表されるビスフェノールを製造する、
前記式(5)で表されるポリマーを分解して式(11)で表されるビスフェノールを製造する、または、
前記式(6)で表されるポリマーを分解して式(12)で表されるビスフェノールを製造する方法。
【化11】
(式(10)~(12)中、R1、R2、R18は、それぞれ、互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ホルミル基、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基またはアリール基を表す。)
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バイオマス由来成分を原料として製造可能であり、且つ、単独重合による高分子化が可能なモノマーを提供することができる。また、本発明によれば、当該モノマーを単独重合させて得られるポリマー、モノマーの製造方法、ポリマーの製造方法、及び、ビスフェノールの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例5のTG測定の結果を示すグラフである。
図2】実施例6のTG測定の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0012】
<フェニルプロパノイドの2官能基化モノマー>
本実施形態に係るフェニルプロパノイドの2官能基化モノマーは、式(1a)、(1b)または(1c)で表される。
【化12】
(式(1a)、(1b)及び(1c)中、R1~R5は、それぞれ、互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ホルミル基、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基またはアリール基を表し、
Lはリンカー基を表す。)
【0013】
本実施形態に係るフェニルプロパノイドの2官能基化モノマーは、フェニルプロパノイドを主成分として製造されるため、バイオマス由来成分を原料として製造可能である。また、当該モノマーは、式(1a)、(1b)及び(1c)に示すように、2つのフェニルプロパノイドがリンカー基で結合された構成を有している。このため、モノマー中のフェニルプロパノイドの含有割合が多い。また、当該モノマーは、詳細は後述するが、オレフィン部位での付加重合ではなく、環化付加重合またはメタセシス重合を用いることでβ-置換スチレン骨格でも十分に高い反応性が実現でき、単独重合による高分子化が可能となる。このため、ポリマー中のフェニルプロパノイド含有割合が高くなる。その結果、バイオマス含有割合の高いポリマーを製造することができる。
【0014】
本実施形態に係るフェニルプロパノイドの2官能基化モノマーのR1~R4は、リグニン由来フェニルプロパノイドを利用し得るため、それぞれ、互いに独立して水素基、アルコール基またはアルコキシ基(特にメトキシ基)であるのが好ましい。R5は、水素基、エステル基、エーテル基、カルボニル基であるのが好ましい。
【0015】
本実施形態に係るフェニルプロパノイドの2官能基化モノマーのリンカー基(L)は、後述のリンカーがフェニルプロパノイドの水酸基と反応して生成したものであり、その構造は原料のリンカーの構造による。当該リンカー基(L)としては、式(2a)で表されるシロキサン骨格を有するリンカー基、または、式(2b)で表されるホスホネート骨格を有するリンカー基が好ましい。シロキサン骨格は毒性が低いため、生体適合性が高いプラスチック材料の創出が期待できる。また、ホスホネート骨格を有するポリマーは、難燃性材料となることが期待される。また、ホスホネート骨格を有するポリマーは、高い複屈折率を示し、機能性の光学プラスチック材料の創出が期待される。また、リンカー基(L)は、>C=O、-S-、-SO-、-SO2-、-Se-、-Te-、または、式(2c)~(2n)のいずれかで表されるリンカー基であってもよい。
【化13】
【化14】
【化15】
(式(2a)~(2n)中、R20~R29、R34~R60は、それぞれ、互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ホルミル基、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基またはアリール基を表し、
式(2b)中、Eは、O、SまたはSeを表し、
式(2m)、(2n)中、nは自然数を表す。)
【0016】
式(2a)のリンカー基(L)のR20及びR21は、モノマーの安定性及び合成反応のしやすさという観点から、それぞれ、互いに独立してイソプロピル基であるのが好ましい。
【0017】
<フェニルプロパノイドの2官能基化モノマーの製造方法>
本実施形態に係るフェニルプロパノイドの2官能基化モノマーは、式(7a)、(7b)または(7c)で表されるフェニルプロパノイドとリンカーとを塩基性溶媒中で加熱処理を行い、フェニルプロパノイドの水酸基とリンカーとを反応させることで製造することができる。このような構成によれば、精油由来のフェニルプロパノイドを短工程でモノマーへと誘導することができる。
【化16】
(式(7a)、(7b)及び(7c)中、R1~R5は、それぞれ、互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ホルミル基、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基またはアリール基を表す。)
【0018】
当該塩基性溶媒としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム、トリエチルアミン、N,N-ジメチルアミノピリジン等の塩基を、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)、酢酸エチル、ジエチルエーテル等の有機溶媒に添加したものを用いることができる。
【0019】
当該加熱処理は、使用する原料によって適宜調整することができる。処理温度としては、室温でおこなってもよく、適宜加熱してもよい。処理時間としては、12~48時間程度とすることができる。
【0020】
本実施形態に係るフェニルプロパノイドの2官能基化モノマーの製造に用いるリンカーは、フェニルプロパノイドの水酸基と反応することで2つのフェニルプロパノイドを結合可能なリンカーであれば特に限定されない。当該リンカーとしては、式(8)で表されるシロキサン骨格を有するリンカー、または、式(9)で表されるホスホネート骨格を有するリンカーを用いることができる。
【化17】
(式(8)中、R20、R21、R30及びR31はそれぞれ、互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ホルミル基、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基またはアリール基を表す。
式(9)中、Eは、O、SまたはSeを表し、
22、R32及びR33はそれぞれ、互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ホルミル基、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基またはアリール基を表す。)
【0021】
式(8)で表されるシロキサン骨格を有するリンカーのR30及びR31は、前駆体の入手容易さ、反応性、及び、試薬との安定性の観点から、それぞれ、互いに独立して塩素原子であるのが好ましい。また、式(13a)、(13b)、(13c)に、それぞれリンカーとしてジクロロシランを用いたフェニルプロパノイドの2官能基化モノマーの合成に係る反応式を示す。
【化18】
【化19】
【化20】
【0022】
式(9)で表されるホスホネート骨格を有するリンカーのR32及びR33は、前駆体の入手容易さ、反応性、及び、試薬との安定性の観点から、それぞれ、互いに独立して塩素原子であるのが好ましい。また、式(14a)、(14b)、(14c)に、それぞれリンカーとして(チオ)ホスホン酸ジクロリドを用いたフェニルプロパノイドの2官能基化モノマーの合成に係る反応式を示す。
【化21】
【化22】
【化23】
【0023】
<ポリマー>
本実施形態に係るポリマーは、式(4)~(6)のいずれかで表される。
【化24】
式(4)~(6)中、R1、R2、R18、及び、リンカー基(L)は、それぞれ上述のフェニルプロパノイドの2官能基化モノマーにおけるR1~R3、及び、リンカー基(L)と同様である。また、nは自然数を表し、例えば、2~1000の整数であってもよい。
【0024】
本実施形態に係るポリマーは、フェニルプロパノイドの2官能基化モノマーの単独重合によって製造されたものであり、ポリマー中のフェニルプロパノイド含有割合が高い。このように、本実施形態に係るポリマーはバイオマス含有割合の高いポリマーとすることができる。
【0025】
本実施形態に係るポリマーは、芳香環に由来する熱安定性、脂環式構造を主鎖に有することに由来する構造特異性、元素に由来する電子的特異性を特徴として有しているため、特にエンジニアリングプラスチック、光学フィルム、ガス透過性フィルム等の用途に適している。
【0026】
<ポリマーの製造方法>
本実施形態に係るポリマーは、フェニルプロパノイドの2官能基化モノマーを環化付加重合またはメタセシス重合させることで製造することができる。例として、式(1d)に示すフェニルプロパノイドの2官能基化モノマーを用いた本実施形態に係るポリマーの合成反応式を式(15)に示す。
【化25】
【0027】
このように、オレフィン部位での付加重合ではなく、環化付加重合またはメタセシス重合を用いることでβ-置換スチレン骨格でも十分に高い反応性が実現でき、単独重合による高分子化が可能となる。ここで、本発明における環化付加重合及びメタセシス重合の定義を以下に示す。
・環化付加重合:電子移動やエネルギー移動によって誘起され、2つの不飽和結合(二重結合)がσ結合を形成する反応。結合形成の原型と生成系を比較して酸化還元を伴わず、また脱離成分も無い反応。
・メタセシス重合:2つの二重結合部位がオレフィンメタセシス機構で組み替えを起こし、脱離成分を伴いながら新たな二重結合を形成する反応。
【0028】
フェニルプロパノイドの2官能基化モノマーの環化付加重合は、以下の条件によって選択的に行うことができる。すなわち、まず、反応容器にフェニルプロパノイドの2官能基化モノマーと重合開始剤とを投入し、有機溶媒を添加して-10℃から室温の条件で反応を実施することにより環化付加重合させる。重合開始剤としては、酸化剤を触媒量使用(例えば、トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロリドアンチモナート、ヨードベンゼンジアセテート、塩化鉄(III)、過塩素酸鉄(III)など)する。また、光レドックス触媒の添加と光照射によっても実施可能である。光レドックス触媒としては、例えばイリジウム(III)ビス[2-(2,4-ジフルオロフェニル)-5-メチルピリジン-N,C20]-4,40-ジ-tert-ブチル-2,20-ビピリジンヘキサフルオロホスフェートなどが挙げられる。有機溶媒としては、トルエン、ジクロロメタンやアセトニトリル等が挙げられる。
【0029】
フェニルプロパノイドの2官能基化モノマーのメタセシス重合は、以下の条件によって選択的に行うことができる。すなわち、まず、反応容器にフェニルプロパノイドの2官能基化モノマーと触媒とを投入し、有機溶媒を添加して室温から100℃で反応させることによりメタセシス重合させる。触媒としては、例えばGrubbs触媒(登録商標)M204やM300などが挙げられる有機溶媒としては、トルエン、ジクロロメタンやアセトニトリル等が挙げられる。
【0030】
本実施形態に係るポリマーの製造方法によれば、合成した新規モノマーが触媒量の重合開始剤の添加により迅速に重合するため、ポリマーが良好な収率で得られる。
【0031】
<ビスフェノールの製造方法>
本実施形態に係るビスフェノールの製造方法においては、上記式(4)で表されるポリマーを分解して式(10)で表されるビスフェノールを製造する。または、上記式(5)で表されるポリマーを分解して式(11)で表されるビスフェノールを製造する。または、上記式(6)で表されるポリマーを分解して式(12)で表されるビスフェノールを製造する。これらの分解反応式を式(16)に示す。このような構成によれば、酸や塩基によるポリマーの主鎖分解が可能となり、ビスフェノールを効率的に製造することができる。また、このようにして得られたビスフェノールは、新たなモノマーとして利用(アップサイクリング)が可能となる。
【化26】
式(10)~(12)におけるR1、R2、R18は、それぞれ、式(4)~(6)におけるR1、R2、R18と同様である。
【0032】
式(16)に示す分解反応は、酸または塩基を添加した有機溶媒または水に、式(4)~(6)で表されるポリマーを添加して室温(20~25℃)で行うことができる。また、分解反応の温度は、室温よりも高温であってもよい。酸としては、塩酸や臭化水素等を用いることができる。塩基としては、NaOH、KOH、Bu4NF、NH4F、ピリジン等を用いることができる。有機溶媒としては、アセトン、アセトニトリル、DMSO、THF等を用いることができる。水も単体の溶媒または有機溶媒との混合溶媒として利用可能である。本実施形態に係るビスフェノールの製造方法によれば、室温で分解が可能であるため温和な条件でポリマーの分解が可能となり、簡便にビスフェノールを製造することができる。
【実施例0033】
以下に本発明を実施例でさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
<実施例1>
・モノマーの合成(1)
trans-アネトール:5.9032g(39.829mmol)、トリ(ペンタ-フルオロフェニル)ボラン:0.178g(0.374mmol)、ジクロロメタン:55mLを二口フラスコに加えた。溶液を0℃に冷却した後、トリエチルシラン:7.6mL(48mmol)を滴下し、室温に戻しながら30分反応させた。1MのテトラブチルアンモニウムフルオリドのTHF溶液:40mLを加えた後、ジクロロメタンで抽出し、ヘキサンと酢酸エチルでグラジエントカラムを行ったところ、淡黄色固体の目的生成物:3.945g(29.40mmol、収率73%)を得た。生成物の化学式は、ガスクロマトグラフィー/質量分析計(GCMS)および核磁気共鳴(NMR)装置で確認した。当該反応式を式(17)に示す。
【化27】
【0035】
次に、得られたtrans-アネトールの脱メチル化体:1.80g(13.4mmol)を二口フラスコに加えた後、窒素置換を行った。そして、ジエチルエーテル:30mL、TEA(トリエチルアミン):1.5022g(14.845mmol)、DMAP(4-ジメチルアミノピリジン):51.8mg(0.423mmol)をこの順に加えた。続いて、ジクロロジイソプロピルシラン:1.2786g(6.905mmol)を滴下し、室温(RT)で18時間の反応を行った。その後、ジクロロメタンで抽出し、ヘキサンと酢酸エチルでグラジエントカラムを行ったところ、透明液体状のモノマーを1.9794g(5.20mmol、収率75%)得ることができた。生成物の化学式は、ガスクロマトグラフィー/質量分析計(GCMS)および核磁気共鳴(NMR)装置で確認した。当該反応式を式(18)に示す。
【化28】
【0036】
<実施例2>
・モノマーの合成(2)
イソオイゲノール:3.0392g(18.509mmol)を二口フラスコに加えた後、窒素置換を行った。そして、ジエチルエーテル:40mL、TEA:1.8826g(18.604mmol)、DMAP:40.5mg(0.331mmol)をこの順に加えた。続いて、ジクロロジイソプロピルシラン:1.2339g(6.6639mmol)を滴下し、室温で112時間の反応を行った。その後、酢酸エチルで抽出し、ヘキサンと酢酸エチルでグラジエントカラムを行ったところ、透明液体状のモノマーを2.7424g(6.2233mmol、収率93%)得ることができた。生成物の化学式は、ガスクロマトグラフィー/質量分析計(GCMS)および核磁気共鳴(NMR)装置で確認した。当該反応式を式(19)に示す。
【化29】
【0037】
<実施例3>
・モノマーの合成(3)
4-ヒドロキシ-3-メトキシ桂皮酸エチル:1.0421g(4.6890mmol)を二口フラスコに加えた後、窒素置換を行った。ジエチルエーテル:25mL、TEA:0.5404g(5.340mmol)、DMAP:31.7mg(0.259mmol)をこの順に加えた後、ジクロロジイソプロピルシラン:0.3968g(2.143mmol)を滴下し、反応を行った。反応後、ジクロロメタンで抽出し、トルエンと酢酸エチルでグラジエントカラムを行ったところ、白色固体のモノマー:0.9652g(1.733mmol、収率80%)を得た。生成物の化学式は、ガスクロマトグラフィー/質量分析計(GCMS)および核磁気共鳴(NMR)装置で確認した。当該反応式を式(20)に示す。
【化30】
【0038】
<実施例4>
・モノマーの合成(4)
trans-p-クマル酸メチル:1.9029g(10.68mmol)を二口フラスコに加えた後、窒素置換を行った。そして、ジエチルエーテル:40mL、TEA:1.4914g(14.73mmol)、DMAP:119.9mg(0.98mmol)をこの順に加えた。続いて、ジクロロジイソプロピルシラン:653.2g(3.53mmol)を滴下し、室温で84時間の反応を行った。その後、ジクロロメタンで抽出し、トルエンと酢酸エチルでグラジエントカラムを行ったところ、白色固体のモノマーを1.2232g(2.61mmol、収率74%)得ることができた。生成物の化学式は、ガスクロマトグラフィー/質量分析計(GCMS)および核磁気共鳴(NMR)装置で確認した。当該反応式を式(21)に示す。
【化31】
【0039】
<実施例5>
・ポリマーの合成(1)
ジクロロメタン:1.3mLにモノマー:94.3mg(0.247mmol)を溶解させて0.192Mの溶液にした。窒素を簡易的に封入しながら5mol%のMagic Blueを添加し、重合を開始した。60分重合反応を進行させた後、ジクロロメタン1mLに反応混合物を溶解させ、20mLのメタノールにゆっくりと滴下し再沈殿操作を行ったところ、4員環含有ポリマー:81.1mg(収率86%)を得た。ポリマーの物性は、Mn(数平均分子量)=6700、Mw(重量平均分子量)=73600、PDI(ポリディスパースインデックス)=10.99であった。生成物(ポリマー)の化学式は、ガスクロマトグラフィー/質量分析計(GCMS)および核磁気共鳴(NMR)装置で確認した。当該反応式を式(22)に示す。
また、当該ポリマーの熱重量示差熱分析装置(Seiko Instruments Inc.製 EXSTAR TG/DTA6200、及び、日立ハイテク社製 STA7200RV)を用いて熱重量測定(TG測定)を行った。図1に当該TG測定の結果を示す。図1によれば、当該ポリマーの耐熱性が良好であることがわかる。
【化32】
【0040】
<実施例6>
・ポリマーの合成(2)
アセトニトリル:0.65mLにモノマー:110.7mg(0.2512mmol)を溶解させて0.384Mの溶液にした。窒素を簡易的に封入しながら10mol%のMagic Blueを添加し、重合を開始した。60分重合反応を進行させた後、ジクロロメタン:1mLに反応混合物を溶解させ、20mLのメタノールにゆっくりと滴下し再沈殿操作を行ったところ、5員環含有ポリマー:41.2mg(収率37%)を得た。ポリマーの物性は、Mn(数平均分子量)=6800、Mw(重量平均分子量)=42200、PDI(ポリディスパースインデックス)=6.23であった。生成物(ポリマー)の化学式は、ガスクロマトグラフィー/質量分析計(GCMS)および核磁気共鳴(NMR)装置で確認した。当該反応式を式(23)に示す。
また、当該ポリマーの熱重量示差熱分析装置(Seiko Instruments Inc.製 EXSTAR TG/DTA6200、及び、日立ハイテク社製 STA7200RV)を用いて熱重量測定(TG測定)を行った。図2に当該TG測定の結果を示す。図2によれば、当該ポリマーの耐熱性が良好であることがわかる。
【化33】
【0041】
<実施例7>
・ビスフェノールの合成(1)
ポリマー([重合条件]モノマー濃度:0.096M、ジクロロメタン:2.60mL、Magic Blue:5mol%、反応時間60分、室温):88.5mgをTHF(テトラヒドロフラン):23mLに溶解させ、10mMのポリマー溶液を調製した。そこへポリマー中のシロキサン結合の個数に対して2当量のTBAF(フッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム)の1M溶液:0.930mLと、プロトン源として2当量の酢酸:0.027mLとを添加し、分解反応を行った。室温で23時間反応させた後、1Mの塩酸と酢酸エチルとで分液し、ヘキサンと酢酸エチルを展開溶媒とするカラム操作を行った。その結果、4員環含有ダイマー(ビスフェノール)を単離収率33%(繰り返し単位比)で得ることができた。当該ダイマーの化学式は、ガスクロマトグラフィー/質量分析計(GCMS)および核磁気共鳴(NMR)装置で確認した。
また、ポリマー([重合条件]モノマー濃度:0.096M、HFIP(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール):2.60mL、PIDA((ジアセトキシヨード)ベンゼン):10mol%、反応時間60分、室温):72.1mgをTHF:19mLに溶解させ、10mMのポリマー溶液を調製した。そこへポリマー中のシロキサン結合の個数に対して2当量のTBAF(1M溶液:0.757mL)と2当量の酢酸(0.043mL)を添加し、2時間の分解反応を行った。結果、NMR収率62%(ポリマーの繰り返し単位比)の4員環含有ダイマー(ビスフェノール)を得た。当該ダイマーの化学式は、ガスクロマトグラフィー/質量分析計(GCMS)および核磁気共鳴(NMR)装置で確認した。当該反応式を式(24)に示す。
【化34】
【0042】
<実施例8>
・ビスフェノールの合成(2)
ポリマー(重合条件:モノマー濃度0.096M、HFIP:2.60mL、PIDA:10mol%、反応時間60分、室温):72.1mgをTHF:19mLに溶解させ、10mMのポリマー溶液を調製した。そこへポリマー中のシロキサン結合の個数に対して2当量のTBAFの1M溶液:0.757mLと、プロトン源として2当量の酢酸:0.043mLとを添加し、分解反応を行った。室温で2時間反応させた後、繰り返し単位に対して1当量の1,3,5-トリメトキシベンゼンを標準物質として添加し、NMR測定を行った。その結果、ダイマー(ビスフェノール)をNMR収率62%で確認することができた。当該反応式は上記式(24)と反応時間以外は同様である。
【0043】
<実施例9>
・ビスフェノールの合成(3)
ポリマー(重合条件:モノマー濃度0.384M、アセトニトリル:1.95mL、Magic Blue:10mol%、反応時間60分、室温):40.3mgをTHF:9mLに溶解させ、10mMのポリマー溶液を調製した。そこへポリマー中のシロキサン結合の個数に対して2当量のTBAFの1M溶液:0.360mLと、プロトン源として2当量の酢酸:0.023mLとを添加し、分解反応を行った。室温で25時間反応させた後、ヘキサンと酢酸エチルを展開溶媒とするカラム操作を行った。その結果、ダイマー(ビスフェノール)を単離収率88%(繰り返し単位比)で得ることができた。当該ダイマーの化学式は、ガスクロマトグラフィー/質量分析計(GCMS)および核磁気共鳴(NMR)装置で確認した。当該反応式を式(25)に示す。
【化35】
【0044】
<実施例10>
・モノマーの合成(5)
窒素置換を行った200mL二口フラスコにイソオイゲノール:6.1575g(37.5mmol)、TEA:5.23mL(37.5mmol)、酢酸エチル:50mLをこの順に加えた。続いて二塩化フェニルホスホン酸:2.437g(12.5mmol)を滴下し、室温で48時間の反応を行った。その後、飽和NaHCO3水溶液:約100mLでクエンチを行い、酢酸エチルで抽出し、ヘキサンと酢酸エチルによるグラジエントカラムを行ったところ、白色固体のモノマーAを5.0680g(11.3mmol、収率90%)得ることができた。当該モノマーAの化学式は、ガスクロマトグラフィー/質量分析計(GCMS)および核磁気共鳴(NMR)装置で確認した。当該反応式を式(26)に示す。
【化36】
【0045】
<実施例11>
・モノマーの合成(6)
窒素置換を行った50mL二口フラスコに4-プロペニルフェノール:0.6709g(5mmol)、TEA:0.693mL(5mmol)、酢酸エチル:10mLをこの順に加えた。続いて0℃で氷浴をしながら二塩化フェニルホスホン酸:0.355mL(2.5mmol)を滴下し、室温で48時間の反応を行った。その後、飽和NaHCO3水溶液:約20mLでクエンチを行い、酢酸エチルで抽出し、ヘキサンと酢酸エチルによるグラジエントカラムを行ったところ、白色固体のモノマーBを0.2903g(0.744mmol、収率21%)得ることができた。当該モノマーBの化学式は、ガスクロマトグラフィー/質量分析計(GCMS)および核磁気共鳴(NMR)装置で確認した。当該反応式を式(27)に示す。
【化37】
【0046】
<実施例12>
・モノマーの合成(7)
窒素置換を行った200mL二口フラスコにイソオイゲノール:4.18mL(27.5mmol)、TEA:3.82mL(27.5mmol)、酢酸エチル:25mLをこの順に加えた。続いて0℃で氷浴をしながら酢酸エチル:25mLに溶解した二塩化メチルホスホン酸:1.661g(12.5mmol)を滴下し、室温で48時間の反応を行った。その後、飽和NaHCO3水溶液:約100mLでクエンチを行い、酢酸エチルで抽出し、ヘキサンと酢酸エチルによるグラジエントカラムを行ったところ、淡黄色透明液体のモノマーCを4.0668g(10.47mmol、収率84%)得ることができた。当該モノマーCの化学式は、ガスクロマトグラフィー/質量分析計(GCMS)および核磁気共鳴(NMR)装置で確認した。当該反応式を式(28)に示す。
【化38】
【0047】
<実施例13>
・モノマーの合成(8)
窒素置換を行った50mL二口フラスコに4-プロペニルフェノール:0.7179g(5.35mmol)、TEA:0.742mL(5.35mmol)、酢酸エチル:6mLをこの順に加えた。続いて0℃で氷浴をしながら酢酸エチル:6mLに溶解した二塩化メチルホスホン酸:0.3845g(2.89mmol)を滴下し、室温で48時間の反応を行った。その後、飽和NaHCO3水溶液:約30mLでクエンチを行い、酢酸エチルで抽出し、ヘキサンと酢酸エチルによるグラジエントカラムを行ったところ、白色固体のモノマーDを0.2581g(0.786mmol、収率29%)得ることができた。当該モノマーDの化学式は、ガスクロマトグラフィー/質量分析計(GCMS)および核磁気共鳴(NMR)装置で確認した。当該反応式を式(29)に示す。
【化39】
【0048】
<実施例14>
・モノマーの合成(9)
窒素置換を行った50mL二口フラスコにイソオイゲノール:0.821mL(5mmol)、TEA:0.693mL(5mmol)、酢酸エチル:10mLをこの順に加えた。続いて0℃で氷浴をしながら二塩化パラメトキシフェニルホスホン酸:396μL(2.5mmol)を滴下し、室温で48時間の反応を行った。その後、飽和NaHCO3水溶液:約20mLでクエンチを行い、酢酸エチルで抽出し、ヘキサンと酢酸エチルによるグラジエントカラムを行ったところ、淡黄色透明液体のモノマーEを0.7069g(1.47mmol、収率59%)得ることができた。当該モノマーEの化学式は、ガスクロマトグラフィー/質量分析計(GCMS)および核磁気共鳴(NMR)装置で確認した。当該反応式を式(30)に示す。
【化40】
【0049】
<実施例15>
・モノマーの重合(1)
5mLバイアル瓶にモノマーA:90.1mg(0.2mmol)、CH3CN:0.5mLを投入し、簡易的に窒素を封入しながらCH3CN:0.5mLに溶解させたFe(ClO43・6H2O:9.2mg(0.02mmol、10mol%)を添加し、室温で重合を開始した。開始から1時間後、溶媒を揮発し再沈殿操作を行った。ジクロロメタン:1mLに反応混合物を溶解し、20mLのジエチルエーテル中にゆっくりと滴下したところ、二量体と見られる化合物の生成が確認された。得られた化合物はMn=850、Mw=960であった。当該反応式を式(31)に示す。
【化41】
【0050】
<実施例16>
・ポリマーの合成(3)
5mLバイアル瓶にモノマーA、Grubs第二世代触媒(Grubbs II、4.2mg、1mol%)を入れ、約30分間の窒素フローを行った。続いてトルエン:0.5mLを投入して、モノマーAの濃度を0.25M(0.25mmol/1mL)とし、80℃で2時間の反応を行った。その後、溶媒を揮発し再沈殿操作を行った。ジクロロメタン:1mLに反応混合物を溶解し、20mLのジエチルエーテル中にゆっくりと滴下したところ、オリゴマーと見られる化合物(ポリマー)の生成が確認された。得られた化合物はMn=3800、Mw=7200であり、収率は60%であった。当該ポリマーの化学式は、ガスクロマトグラフィー/質量分析計(GCMS)および核磁気共鳴(NMR)装置で確認した。当該反応式を式(32)に示す。
【化42】
【0051】
<実施例17>
・モノマーの合成(10)
(E)-4-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-3-ブテン-2-one:2.8949g(15.061mmol)を二口フラスコに加えた後、窒素置換を行った。ジエチルエーテル:50mL、TEA:1.7851g(17.641mmol)、DMAP:79.4mg(0.649mmol)をこの順に加えた後、ジクロロジイソプロピルシラン:1.1458g(17.641mmol)を滴下し、反応を行った。反応後、酢酸エチルで抽出し、クロロホルムと酢酸エチルでグラジエントカラムを行った。結果、無色透明かつ高粘性の液体状モノマー2.0468g(4.1209mmol、収率66%)を得た。当該モノマーの化学式は、ガスクロマトグラフィー/質量分析計(GCMS)および核磁気共鳴(NMR)装置で確認した。当該反応式を式(33)に示す。
【化43】
【0052】
<実施例18>
・モノマーの合成(11)
4-(4-ヒドロキシフェニル)-3-ブテン-2-one:0.9392g(5.790mmol)を二口フラスコに加えた後、窒素置換を行った。ジエチルエーテル:25mL、TEA:0.6336g(6.261mmol)、DMAP:32.6mg(0.266mmol)をこの順に加えた後、ジクロロジイソプロピルシラン:0.4665g(2.519mmol)を滴下し、反応を行った。反応後、ジクロロメタンで抽出し、トルエンと酢酸エチルでグラジエントカラムを行った。結果、淡黄色固体のモノマー:0.7620g(1.746mmol、収率69%)を得た。当該モノマーの化学式は、ガスクロマトグラフィー/質量分析計(GCMS)および核磁気共鳴(NMR)装置で確認した。当該反応式を式(34)に示す。
【化44】
【0053】
<実施例19>
・モノマーの合成(12)
イソオイゲノール:2.9607g(18.031mmol)を二口フラスコに加えた後、窒素置換を行った。ジエチルエーテル:40mL、TEA:1.9437g(19.208mmol)、DMAP:45.3mg(0.370mmol)をこの順に加えた後、ジクロロジイソプロピルシラン:1.1885g(7.5647mmol)を滴下し、21時間の反応を行った。反応後、酢酸エチルで抽出し、ヘキサンと酢酸エチルでグラジエントカラムを行った。結果、透明液体状のモノマー:2.5263g(6.1228mmol、収率80%)を得た。当該モノマーの化学式は、ガスクロマトグラフィー/質量分析計(GCMS)および核磁気共鳴(NMR)装置で確認した。当該反応式を式(35)に示す。
【化45】
【0054】
<実施例20>
・ポリマーの合成(4)
アセトニトリル:0.65mLにモノマー:122.3mg(0.2462mmol)を溶解させ0.384Mの溶液にした。窒素を簡易的に封入しながら1mol%の(Ir[dF(CF3)ppy]2(dtbpy))PF6を添加し、ブルーライトを照射することで重合を開始した。重合反応を12時間進行させた後、ジクロロメタン:1mLに反応混合物を溶解させ、20mLのヘキサンにゆっくりと滴下し再沈殿操作を行った。結果、4員環含有ポリマー:86.2mg(収率70%)を得た。ポリマーの物性は、Mn=2600、Mw=4200、PDI=1.61であった。当該ポリマーの化学式は、ガスクロマトグラフィー/質量分析計(GCMS)および核磁気共鳴(NMR)装置で確認した。当該反応式を式(36)に示す。
【化46】
【0055】
<実施例21>
・ポリマーの合成(5)
アセトニトリル:1.3mLにモノマー:118.1mg(0.2520mmol)を溶解させ0.192Mの溶液にした。窒素を簡易的に封入しながら1mol%の(Ir[dF(CF3)ppy]2(dtbpy))PF6を添加し、ブルーライトを照射することで重合を開始した。重合反応を60時間進行させた後、ジクロロメタン:1mLに反応混合物を溶解させ、20mLのヘキサンにゆっくりと滴下し再沈殿操作を行った。結果、4員環含有ポリマー:73.2mg(収率61%)を得た。ポリマーの物性は、Mn=7600、Mw=17400、PDI=2.27であった。当該ポリマーの化学式は、ガスクロマトグラフィー/質量分析計(GCMS)および核磁気共鳴(NMR)装置で確認した。当該反応式を式(37)に示す。
【化47】
【0056】
<実施例22>
・ポリマーの合成(6)
アセトニトリル:0.65mLにモノマー:110.4mg(0.2530mmol)を溶解させ0.384Mの溶液にした。窒素を簡易的に封入しながら1mol%の(Ir[dF(CF3)ppy]2(dtbpy))PF6を添加し、Blue Lightを照射することで重合を開始した。重合反応を12時間進行させた後、ジクロロメタン:1mLに反応混合物を溶解させ、20mLのヘキサンにゆっくりと滴下し再沈殿操作を行った。結果、4員環含有ポリマー39.7mg(収率35%)を得た。ポリマーの物性は、Mn=1200、Mw=1957、PDI=1.57であった。当該ポリマーの化学式は、ガスクロマトグラフィー/質量分析計(GCMS)および核磁気共鳴(NMR)装置で確認した。当該反応式を式(38)に示す。
【化48】
【0057】
<実施例22>
・ポリマーの合成(7)
アセトニトリル:1.3mLにモノマー140.7mg(0.2527mmol)を溶解させ0.192Mの溶液にした。窒素を簡易的に封入しながら1mol%の(Ir[dF(CF3)ppy]2(dtbpy))PF6を添加し、Blue Lightを照射することで重合を開始した。重合反応を12時間進行させた後、ジクロロメタン:1mLに反応混合物を溶解させ、20mLのヘキサンにゆっくりと滴下し再沈殿操作を行った。結果、4員環含有ポリマー58.1mg(収率41%)を得た。ポリマーの物性は、Mn=3700、Mw=9400、PDI=2.49であった。当該ポリマーの化学式は、ガスクロマトグラフィー/質量分析計(GCMS)および核磁気共鳴(NMR)装置で確認した。当該反応式を式(39)に示す。
【化49】
【0058】
<実施例23>
・ビスフェノールの合成(4)
ポリマー([重合条件]モノマー濃度:0.192M、アセトニトリル:1.3mL、(Ir[dF(CF3)ppy]2(dtbpy))PF6:1mol%、反応時間60時間、室温):73.2mgをTHF:19mLに溶解させ、10mMのポリマー溶液を調製した。そこへポリマー中のシロキサン結合の個数に対して2当量のTBAF(1M溶液、0.792mL)と2当量の酢酸(0.045mL)を添加し、分解反応を行った。結果、ほぼ完全に分解し、4員環含有ダイマーが確認された。当該ダイマーの化学式は、ガスクロマトグラフィー/質量分析計(GCMS)および核磁気共鳴(NMR)装置で確認した。当該反応式を式(40)に示す。
【化50】
【0059】
<実施例24>
・モノマーの合成(13)
窒素雰囲気下、30mL二口フラスコ内で4-プロペニルフェノール:0.8138g(6.06mmol)とTEA:0.836mL(6mmol)を酢酸エチル:12mLに溶解し、4-メトキシフェニルホスホン酸ジクロリド:0.450g(2mmol)を滴下して室温で48時間の反応を行った。その後、飽和NaHCO3 aq.:約30mLでクエンチを行い、酢酸エチルで抽出し、ヘキサンと酢酸エチルでのグラジエントカラムを行い、無色オイル状のモノマーFを0.3324g(0.79mmol、収率40%)得ることができた。当該モノマーFの化学式は、ガスクロマトグラフィー/質量分析計(GCMS)および核磁気共鳴(NMR)装置で確認した。当該反応式を式(41)に示す。
【化51】
【0060】
<実施例25>
・モノマーの合成(14)
窒素雰囲気下、100mL二口フラスコ内でイソオイゲノール:2.0525g(12.5mmol)とTEA:1.74mL(12.5mmol)を酢酸エチル:20mLに溶解し、エチルホスホニルジクロリド:0.7371g(5.0mmol)を滴下して室温で48時間の反応を行った。その後、飽和NaHCO3 aq.:約50mLでクエンチを行い、酢酸エチルで抽出し、ヘキサンと酢酸エチルによるグラジエントカラムを行ったところ、淡黄色オイル状のモノマーGを1.7617g(4.38mmol、収率87%)得た。当該モノマーGの化学式は、ガスクロマトグラフィー/質量分析計(GCMS)および核磁気共鳴(NMR)装置で確認した。当該反応式を式(42)に示す。
【化52】
【0061】
<実施例26>
・モノマーの合成(15)
窒素雰囲気下、50mL二口フラスコ内で4-プロペニルフェノール:1.0064g(7.5mmol)とTEA:1.05mL(7.5mmol)を酢酸エチル:12mLに溶解し、エチルホスホニルジクロリド:0.4407g(3.0mmol)を滴下して室温で48時間の反応を行った。その後飽和NaHCO3 aq.:約30mLでクエンチした後、酢酸エチルで抽出し、ヘキサンと酢酸エチルでのグラジエントカラムを行い、淡黄色オイル状のモノマーHを0.7784g(2.27mmol、収率76%)得ることができた。当該モノマーHの化学式は、ガスクロマトグラフィー/質量分析計(GCMS)および核磁気共鳴(NMR)装置で確認した。当該反応式を式(43)に示す。
【化53】
【0062】
<実施例27>
・モノマーの合成(16)
窒素雰囲気下、200mL二口フラスコ内でイソオイゲノール:6.1575g(37.5mmol)とTEA:5.23mL(37.5mmol)を酢酸エチル:50mLに溶解し、フェニルホスホノチオ酸ジクロリド:2.6218g(12.4mmol)を滴下して室温で48時間の反応を行った。その後、飽和NaHCO3 aq.:約100mLでクエンチを行い、酢酸エチルで抽出し、トルエンによるカラムを行ったところ、白色固体のモノマーIを4.6640g(10.0mmol、収率80%)得ることができた。当該モノマーIの化学式は、ガスクロマトグラフィー/質量分析計(GCMS)および核磁気共鳴(NMR)装置で確認した。当該反応式を式(44)に示す。
【化54】
【0063】
<実施例28>
・モノマーの合成(17)
窒素雰囲気下、50mL二口フラスコ内で4-プロペニルフェノール:1.2076g(9mmol)とTEA:1.25mL(9mmol)を酢酸エチル:12mLに溶解し、フェニルホスホノチオ酸ジクロリド:0.6312g(3.0mmol)を滴下して室温で48時間の反応を行った。その後、飽和NaHCO3 aq.:約100mLでクエンチを行い、酢酸エチルで抽出し、ヘキサンと酢酸エチルによるグラジエントカラムを行ったところ、淡黄色オイル状のモノマーJを1.0196g(2.51mmol、収率84%)得た。当該モノマーJの化学式は、ガスクロマトグラフィー/質量分析計(GCMS)および核磁気共鳴(NMR)装置で確認した。当該反応式を式(45)に示す。
【化55】
【0064】
<実施例29>
・モノマーの合成(18)
窒素雰囲気下、30mL二口フラスコ内で(E)-4-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-3-ブテン-2-one:0.7208g(3.75mmol)とTEA:0.53mL(3.75mmol)を酢酸エチル:6mLに溶解し、フェニルホスホノチオ酸ジクロリド:0.2950g(1.51mmol)を滴下して室温で48時間の反応を行った。その後飽和NaHCO3 aq.:約50mLでクエンチし、酢酸エチルで抽出後、ヘキサンと酢酸エチルでのグラジエントカラムを行うことで、白色固体のモノマーKを0.5990g(1.18mmol、収率78%)得た。当該モノマーKの化学式は、ガスクロマトグラフィー/質量分析計(GCMS)および核磁気共鳴(NMR)装置で確認した。当該反応式を式(46)に示す。
【化56】
【0065】
<実施例30>
・モノマーの合成(19)
窒素雰囲気下、50mL二口フラスコ内で4-(4-ヒドロキシフェニル)-3-ブテン-2-one:1.2164g(7.5mmol)とTEA:1.05mL(7.5mmol)を酢酸エチル:12mLに溶解し、フェニルホスホノチオ酸ジクロリド:0.5833g(2.99mmol)を滴下して室温で48時間の反応を行った。その後飽和NaHCO3 aq.:約100mLでクエンチし、酢酸エチルで抽出後、ヘキサンと酢酸エチルでのグラジエントカラムを行うことで、淡黄色固体のモノマーLを1.0117g(2.27mmol、収率76%)得た。当該モノマーLの化学式は、ガスクロマトグラフィー/質量分析計(GCMS)および核磁気共鳴(NMR)装置で確認した。当該反応式を式(47)に示す。
【化57】
【0066】
<実施例31>
・モノマーの合成(20)
窒素雰囲気下、50mL二口フラスコ内でtrans-p-クマル酸メチル:1.3364g(7.5mmol)とTEA:1.05mL(7.5mmol)を酢酸エチル:12mLに溶解し、フェニルホスホノチオ酸ジクロリド:0.5822g(2.99mmol)を滴下して室温で48時間の反応を行った。その後、飽和NaHCO3 aq.:約100mLでクエンチし、酢酸エチルで抽出後、ヘキサンと酢酸エチルでのグラジエントカラムを行ったところ、白色固体のモノマーMを1.1745g(2.45mmol、収率82%)得た。当該モノマーMの化学式は、ガスクロマトグラフィー/質量分析計(GCMS)および核磁気共鳴(NMR)装置で確認した。当該反応式を式(48)に示す。
【化58】
【0067】
<実施例32>
・モノマーの合成(21)
窒素雰囲気下、30mL二口フラスコ内で(E)-4-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-3-ブテン-2-one:0.6727g(3.5mmol)とTEA:0.488mL(3.5mmol)を酢酸エチル:6mLに溶解し、フェニルホスホノチオ酸ジクロリド:0.2945g(1.40mmol)を滴下して室温で48時間の反応を行った。その後飽和NaHCO3 aq.:約60mLでクエンチし、酢酸エチルで抽出後、トルエンとメタノールでのカラムを行うことで、白色固体のモノマーNを49mg(0.938mmol、収率7%)得た。当該モノマーNの化学式は、ガスクロマトグラフィー/質量分析計(GCMS)および核磁気共鳴(NMR)装置で確認した。当該反応式を式(49)に示す。
【化59】
【0068】
<実施例33>
・モノマーの合成(22)
窒素雰囲気下、30mL二口フラスコ内で4-(4-ヒドロキシフェニル)-3-ブテン-2-one:0.8110g(5mmol)とTEA:0.697mL(5mmol)を酢酸エチル:8mLに溶解し、フェニルホスホノチオ酸ジクロリド:0.4226g(2.0mmol)を滴下して室温で48時間の反応を行った。その後、飽和NaHCO3 aq.:約50mLでクエンチし、酢酸エチルで抽出後、トルエンと酢酸エチルによるカラムを行ったところ、淡黄色オイル状のモノマーOを0.7559g(1.63mmol、収率82%)得た。当該モノマーOの化学式は、ガスクロマトグラフィー/質量分析計(GCMS)および核磁気共鳴(NMR)装置で確認した。当該反応式を式(50)に示す。
【化60】
【0069】
<実施例34>
・モノマーの合成(23)
窒素雰囲気下、30mL二口フラスコ内でtrans-p-クマル酸メチル:0.8910g(5mmol)とTEA:0.697mL(5mmol)を酢酸エチル:8mLに溶解し、フェニルホスホノチオ酸ジクロリド:0.4216g(2.0mmol)を滴下して室温で48時間の反応を行った。その後、飽和NaHCO3 aq.:約50mLでクエンチを行い、酢酸エチルで抽出し、トルエンと酢酸エチルによるカラムを行ったところ、無色オイル状のモノマーPを0.7703g(1.56mmol、収率78%)得た。当該モノマーPの化学式は、ガスクロマトグラフィー/質量分析計(GCMS)および核磁気共鳴(NMR)装置で確認した。当該反応式を式(51)に示す。
【化61】
【0070】
<実施例35>
・ポリマーの合成(8)
5mLバイアル瓶内でモノマーI:96.7mg(0.21mmol)をジクロロメタン:0.5mLに溶解した。窒素をフローしながらジクロロメタン:0.5mLに溶解したトリス(4-ブロモフェニル)アンモニウムイルヘキサクロロアンチモナート(magic blue:16.33mg(0.02mmol、0.1equiv.))を添加し室温で1時間の反応を行った。メタノールでクエンチ後、溶媒を揮発し再沈殿操作(ジクロロメタン/メタノール(v/v=1/20))を行ったところポリマーが82.3mg(収率85%)得られた。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によってポリマーの分子量を評価したところ、Mn=2242、Mw=5443であった。
【0071】
<実施例36>
・ポリマーの合成(9)
5mLバイアル瓶内でモノマーI:95.9mg(0.21mmol)をHFIP:0.5mLに溶解した。窒素をフローしながらHFIP:0.5mLに溶解したPIDA:6.44mg(0.02mmol、0.1equiv.)を添加し、室温で1時間の反応を行った。メタノールでクエンチ後、溶媒を揮発し再沈殿操作(ジクロロメタン/メタノール(v/v=1/20))を行ったところ、ポリマーとモノマーのクルードが49.4mg(収率52%)得られた。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によってポリマーの分子量を評価したところ、Mn=1333、Mw=1498であった。
【0072】
<実施例37>
・ポリマーの合成(10)
5mLバイアル瓶内でモノマーJ:80.8mg(0.20mmol)をジクロロメタン:0.5mLに溶解した。窒素をフローしながらジクロロメタン:0.5mLに溶解したmagic blue:16.33mg(0.02mmol、0.1equiv.)を添加し、室温で1時間の反応を行った。メタノールでクエンチ後、溶媒を揮発し再沈殿操作(ジクロロメタン/メタノール(v/v=1/20))を行ったところポリマーとモノマーのクルードが32.5mg(収率40%)得られた。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって分子量を評価したところ、Mn=1515、Mw=2022であった。
【0073】
<実施例38>
・ビスフェノールの合成(5)
ポリマー([重合条件]モノマー濃度:0.384M、アセトニトリル:0.650mL、(Ir[dF(CF3)ppy]2(dtbpy))PF6:1mol%、反応時間12時間、室温):86.2mgをTHF:17mLに溶解させ、10mMのポリマー溶液を調製した。そこへポリマー中のシロキサン結合の個数に対して2当量のTBAF(1M溶液、0.694mL)と2当量の酢酸(0.039mL)を添加し、分解反応を行った。結果、ほぼ完全に分解し、単離収率59%(ポリマーの繰り返し単位比)の4員環含有ダイマーが確認された。当該ダイマーの化学式は、ガスクロマトグラフィー/質量分析計(GCMS)および核磁気共鳴(NMR)装置で確認した。当該反応式を式(52)に示す。
【化62】
図1
図2