(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178795
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】有底筒状体加工装置
(51)【国際特許分類】
B21D 51/26 20060101AFI20241218BHJP
B21D 43/14 20060101ALI20241218BHJP
B21D 43/12 20060101ALI20241218BHJP
B21D 43/18 20060101ALI20241218BHJP
B21D 43/16 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
B21D51/26 J
B21D51/26 Q
B21D43/14
B21D43/12
B21D43/18 Z
B21D43/16 A
B21D43/18 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097215
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100138254
【弁理士】
【氏名又は名称】澤井 容子
(72)【発明者】
【氏名】弓削 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 禎
(57)【要約】
【課題】設置スペースの極大化を伴うことなく有底筒状体に対して多数回のネック加工を施すことができ、しかも、高さの異なる有底筒状体について煩雑な設定行為なしに共通して使用することができる有底筒状体加工装置の提供。
【解決手段】有底筒状体加工装置100は、有底筒状体の開口端に複数回のネック加工を施すものであって、複数のネック加工ユニットが順に配置された多段階ネック加工部110と、下流側ネック加工ユニットから排出された有底筒状体を上流側ネック加工ユニットに再び供給する循環用コンベア131と、有底筒状体を保持して循環用コンベアと対向する受け渡し位置まで移動させる乗り換えターレット140と、受け渡し位置において有底筒状体を筒軸方向に循環用コンベアに向かって移動させる軸方向移動機構とを備えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状体を搬送経路に沿って搬送しながら当該有底筒状体の開口端に複数回のネック加工を施す有底筒状体加工装置であって、
複数のネック加工ユニットが搬送経路に沿って順に配置された多段階ネック加工部と、
前記多段階ネック加工部の下流側に設けられた下流側ネック加工ユニットから排出された有底筒状体を、前記多段階ネック加工部の上流側に設けられた上流側ネック加工ユニットに再び供給する循環用コンベアと、
複数のポケットが周方向に配置され、前記ポケットに前記下流側ネック加工ユニットから排出された有底筒状体を保持した状態で、前記循環用コンベアと対向する受け渡し位置まで移動させる乗り換えターレットと、を備え、
前記乗り換えターレットは、前記有底筒状体を保持した前記ポケットが前記循環用コンベアへの受け渡し位置にあるときに前記有底筒状体を筒軸方向に前記循環用コンベアに向かって移動させる軸方向移動機構を備えることを特徴とする有底筒状体加工装置。
【請求項2】
前記循環用コンベアは、搬送面を有し、当該搬送面が有底筒状体の底部と対面するように配設されており、
前記搬送面に有底筒状体の底部を吸着して搬送するものであることを特徴とする請求項1に記載の有底筒状体加工装置。
【請求項3】
前記軸方向移動機構は、気体の噴出により前記有底筒状体を筒軸方向に移動させるエアブロー機構によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の有底筒状体加工装置。
【請求項4】
前記多段階ネック加工部の各ネック加工ユニットは、水平な一方向に直列的に配置され、
前記循環用コンベアは、前記多段階ネック加工部の上方において前記一方向に沿って延び、
前記循環用コンベアの搬送経路の後端から前記上流側ネック加工ユニットに前記有底筒状体を下方に移動させて供給するシュートが備えられ、
前記シュートは、前記有底筒状体を筒軸方向に移動させるガイドを備えることを特徴とする請求項1に記載の有底筒状体加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有底筒状体を搬送経路に沿って搬送しながら当該有底筒状体の開口端に複数回のネック加工を施す有底筒状体加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲料缶等に用いられる缶は、円形状に打ち抜いた金属製の板材に対して絞り・しごき加工などを施して有底円筒形状の缶胴を成形し、さらに缶胴の開口端に所定のネッキング、トリミング、必要に応じてねじ部成形やカール部成形などの口部成形工程を行うことによって製造される。
いわゆるネッキングと称される絞り加工は、缶胴を構成する金属材料が過度のストレスを受けないように、通常、複数工程に分けて段階的に行われる。このような段階的に複数回のネック加工を行う装置としては、例えば加工ターレットを複数、直列的に連結し、缶胴を順次搬送しながら1つの加工ターレットにつき1段階のネック加工を行い、1巡で複数工程のネック加工を施す装置がある。
しかしながら、このような装置には、所望のネック加工数と同数の加工ターレットを設ける必要があるので、多数回のネック加工を要する缶胴を製造する場合には装置や設備が長大化、極大化してより多くの設置スペースが必要になる、という問題がある。
【0003】
このような問題を解決するために、例えば特許文献1には、複数の加工ターレットが直列的に配置され、一端側に缶胴が供給される供給位置が設けられるとともに他端側に缶胴が排出される排出位置が設けられた装置において、供給位置から搬送されて各加工ターレットにおいて1巡目の複数工程の加工が順に施され、排出位置から排出された半加工状態の缶胴を、循環コンベアによって供給位置まで戻して、再度、複数の加工ターレットに搬送されて2巡目の複数加工を施す装置が開示されている。
このような循環コンベアを利用した装置においては、水平方向に並設される加工ターレット数を減少させることができ、設置スペース当たり施すことができる加工数を増大させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、上記の循環コンベアを利用した装置においては、高さ(ハイト)が異なる飲料缶の製造に転用する、いわゆる型替えをする場合に、加工ターレットから循環コンベアへの移載が困難となる、という問題がある。
各加工ターレットは、缶胴の開口端を加工するものであるために缶胴の開口端が確実に加工に供されるように位置合わせされて順に搬送されるところ、循環コンベアはその担持および搬送のしやすさから缶胴の底部を吸着して搬送させる構造であるため、ある高さの缶胴のみに対応した装置であれば初期設計として循環コンベアの搬送面が缶胴の底部に近接して対向するような位置に循環コンベアを配設すればよいが、同じ装置を高さが異なる缶胴のネッキングにそのまま転用すると、1巡目の加工が終了した缶胴を循環コンベアに移載することができないという問題が生じる。このような場合には、循環コンベア自体を移動させて搬送面の位置をずらすことによって対応することになるが、循環コンベアの大きさ上、大掛かりな設定となるため現実的ではなく、また、設定行為自体が煩雑化してしまう。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するものであって、その目的は、設置スペースの極大化を伴うことなく有底筒状体に対して多数回のネック加工を施すことができ、しかも、簡単な構成で高さの異なる有底筒状体について煩雑な設定行為なしに共通して使用することができる有底筒状体加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の有底筒状体加工装置は、有底筒状体を搬送経路に沿って搬送しながら当該有底筒状体の開口端に複数回のネック加工を施す有底筒状体加工装置であって、
複数のネック加工ユニットが搬送経路に沿って順に配置された多段階ネック加工部と、
前記多段階ネック加工部の下流側に設けられた下流側ネック加工ユニットから排出された有底筒状体を、前記多段階ネック加工部の上流側に設けられた上流側ネック加工ユニットに再び供給する循環用コンベアと、
複数のポケットが周方向に配置され、前記ポケットに前記下流側ネック加工ユニットから排出された有底筒状体を保持した状態で、前記循環用コンベアと対向する受け渡し位置まで移動させる乗り換えターレットと、を備え、
前記乗り換えターレットは、前記有底筒状体を保持した前記ポケットが前記循環用コンベアへの受け渡し位置にあるときに前記有底筒状体を筒軸方向に前記循環用コンベアに向かって移動させる軸方向移動機構を備えることにより、前記課題を解決するものである。
【0008】
本発明の有底筒状体加工装置においては、前記循環用コンベアは、搬送面を有し、当該搬送面が有底筒状体の底部と対面するように配設されており、
前記搬送面に有底筒状体の底部を吸着して搬送する構成とすることができる。
【0009】
また、本発明の有底筒状体加工装置においては、前記軸方向移動機構は、気体の噴出により前記有底筒状体を筒軸方向に移動させるエアブロー機構によって構成することができる。
【0010】
また、本発明の有底筒状体加工装置においては、前記多段階ネック加工部の各ネック加工ユニットは、水平な一方向に直列的に配置され、
前記循環用コンベアは、前記多段階ネック加工部の上方において前記一方向に沿って延び、
前記循環用コンベアの搬送経路の後端から前記上流側ネック加工ユニットに前記有底筒状体を下方に移動させて供給するシュートが備えられ、
前記シュートは、前記有底筒状体を筒軸方向に移動させるガイドを備える構成とすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の有底筒状体加工装置によれば、下流側ネック加工ユニットから排出された有底筒状体を上流側ネック加工ユニットに再び供給する循環用コンベアを備えることにより、所期の一連の多数回のネック加工に対する加工ターレットの必要数を低減させることができるので、基本的に、設置スペースの極大化を伴うことなく有底筒状体に対して多数回のネック加工を施すことができる。しかも、乗り換えターレットによって有底筒状体が循環用コンベアと対向する受け渡し位置に搬送されたときに軸方向移動機構によって有底筒状体が筒軸方向に循環用コンベアに向かって移動される構成を有することにより、循環用コンベアと乗り換えターレットとの間の有底筒状体の筒軸方向の位置関係を、高さが相対的に高い有底筒状体を被処理体とした場合に合わせて初期設定しておけば、高さが相対的に低い有底筒状体のネッキングに転用(型替え)したとしても、何らの追加の煩雑な設定行為なしに、軸方向移動機構によって有底筒状体を自動的に循環用コンベアに移載することができる。従って本発明の有底筒状体加工装置によれば、高さの異なる有底筒状体について煩雑な設定行為なしに共通して使用することができ、高い利便性が得られる。
【0012】
また、本発明の有底筒状体加工装置によれば、循環用コンベアの搬送面に有底筒状体の底部を吸着して搬送するものであることにより、1巡目のネック加工が順に施されて排出位置から排出された半加工状態の有底筒状体であっても、底部の形状は変形されないために吸着による担持を確実に実現することができる。
【0013】
また、本発明の有底筒状体加工装置によれば、軸方向移動機構が気体の噴出により有底筒状体を筒軸方向に移動させるエアブロー機構によって構成されることにより、高さが異なる有底筒状体のネッキングに型替えする場合に、型替え後の有底筒状体の重量等に基づいて気体の噴出量を変更するだけで有底筒状体の最適な移載を実行することができ、また、非接触で筒軸方向に移動できるため、有底筒状体の疵付きを防止することができる。
【0014】
さらに、本発明の有底筒状体加工装置によれば、循環用コンベアの搬送経路の後端から上流側ネック加工ユニットに有底筒状体を下方に移動させて供給するシュートが備えられ、シュートには有底筒状体を筒軸方向に移動させるガイドを備えられていることにより、高さが異なる有底筒状体のネッキングに型替えした場合にも、何らの追加の煩雑な設定行為なしに、下方に移送される有底筒状体がガイドによって筒軸方向に開口端側に揃えられ、有底筒状体がネック加工可能な筒軸方向位置に戻されて上流側ネック加工ユニットに再供給されるので、高さの異なる有底筒状体について煩雑な設定行為なしに共通して使用することができ、高い利便性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る有底筒状体加工装置の構成を正面側から示す説明図である。
【
図2】
図1の有底筒状体加工装置を裏面側から示す説明図である。
【
図3】
図1の有底筒状体加工装置における乗り換えターレットおよび循環用コンベアの構成の一例を示す説明図である。
【
図4】
図3のA-A線断面図であって、高ハイト缶の移載時の状態を示す。
【
図5】
図3のA-A線断面図であって、低ハイト缶の移載時の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る有底筒状体加工装置の構成を正面側(缶胴Cの底部側)から見た状態を示す説明図であり、
図2は、
図1の有底筒状体加工装置を裏面側(缶胴Cの開口端側)から見た状態を示す説明図である。
本発明の一実施形態に係る有底筒状体加工装置100は、有底筒状体である缶胴Cを搬送経路に沿って巡回搬送させながら缶胴Cの開口端に複数回のネック加工を施すものである。有底筒状体加工装置100は、
図1および
図2に示すように、複数(
図1においては6つ)のネック加工ユニットが搬送経路に沿って順に配置された多段階ネック加工部110と、多段階ネック加工部110のうち搬送方向の下流側に設けられた下流側ネック加工ユニットから排出された缶胴Cを、多段階ネック加工部110のうち搬送方向の上流側に設けられた上流側ネック加工ユニットに再び供給する循環用コンベア131を有する再供給機構130と、下流側ネック加工ユニットから排出された缶胴Cを循環用コンベア131に移載するための乗り換えターレット140とを備える。
【0017】
ネック加工ユニットは、各々、外周部に缶胴Cを個別収容して搬送するポケットPが複数、周方向に略等間隔で設けられた回転可能な加工ターレット120と、ポケットPに収容された缶胴Cに対してネック加工を行う加工装置(図示せず)とを有する。
多段階ネック加工部110においては、ネック加工ユニットの加工ターレット120と、隣接する2つの加工ターレット120間において缶胴Cを搬送する搬送ターレット121とが交互に配置されている。加工ターレット120の各ポケットPに収容された缶胴Cは、搬送方向の下流側の搬送ターレット121に受け渡されるまでの間に1段階のネック加工が施される。
加工ターレット120のポケットPは、交互に、1巡目に保持される第1のポケットおよび2巡目に保持される第2のポケットとされており、第1のポケットに保持された缶胴Cには1巡目のn段階目のネック加工が施されるとともに、第2のポケットに保持された缶胴Cには2巡目のn段階目(すなわち通しでn+x段階目)のネック加工がそれぞれ施される。nは、上流側から数えたネック加工ユニットの配置順、xはネック加工ユニットの総数である。
搬送ターレット121も、各々、外周に缶胴Cを保持するポケットを複数有し、上流側に隣接配置されるネック加工ユニットによって加工された缶胴Cを受け取って下流側に隣接配置される加工ターレット120の同じ位相のポケットPに供給する回転可能なターレットよりなる。
【0018】
加工ターレット120のポケットPには、ネック加工を行うための加工装置(図示せず)が配置されており、加工ターレット120の回転と同期して移動する。加工装置は、例えば、缶胴Cの底部を支持するボトムツールと、缶胴Cの開口端部の外周部に嵌合して縮径させる環状のアウターツールと、缶胴Cの開口端部に挿入される缶胴Cの開口端部の外径よりも1~2mm程度小径のインナーツールとを備え、図示しない駆動機構によりボトムツールおよびインナーツールが缶胴Cの筒軸方向に往復動可能に構成され、ボトムツールおよびインナーツールが接近方向に駆動され、さらにボトムツールおよびインナーツールがアウターツール方向に駆動されることにより、インナーツールとアウターツールの間に缶胴Cの開口端が挿入されることで、缶胴Cの開口端に1段階のネック加工を行う構成とされている。
ネック加工装置の具体的構成は、上記構成に限定されず、公知の種々のネック加工装置の構成を採用することができる。
【0019】
本実施形態に係る有底筒状体加工装置100は、多段階ネック加工部110の各ネック加工ユニットの加工ターレット120が、これらの中心軸が水平方向(
図1において紙面に垂直な方向)に伸びる状態で互いに水平な一方向(
図1において左右方向)に並ぶように直列的に配置され、各搬送ターレット121も、これらの中心軸が加工ターレット120と同軸方向に伸びる状態で互いに水平な一方向に並ぶように直列的に配置されている。このように配置されることにより、鉛直方向(
図1において上下方向)に加工ターレット120同士が重なって配置されることが回避されるので、優れたメンテナンス性が得られる。
循環用コンベア131は、多段階ネック加工部110の上方空間において当該多段階ネック加工部110の設置方向と同じ一方向(
図1において左右方向)に沿って延びる平行路131bを有し、担持された缶胴Cが多段階ネック加工部110において缶胴Cが搬送される方向(
図1において右方向)とは逆の方向(
図1において左方向)に移動するように配置されている。具体的には、循環用コンベア131は、乗り換えターレット140から受け渡された缶胴Cを上方に移動させる上昇路131aと、循環方向に移動させる平行路131bとを有するように曲がり角を有して延びている。平行路131bおよび上昇路131aは、
図1に示されるような、それぞれ水平方向および垂直方向に直線的に延びた構成に限定されるものではなく、所定の角度を有して配置された構成や、曲線的に延びる構成であってもよい。また、平行路131bおよび上昇路131aの区別のない状態で曲線的に延びる構成であってもよい。循環用コンベア131が多段階ネック加工部110の上方空間において缶胴Cを再供給のために移動させる縦型の構成を有することにより、平面スペースの省スペース化を図ることができる。
【0020】
循環用コンベア131は、缶胴Cの底部Bを搬送面132に吸着して搬送するいわゆるバキュームコンベアである。缶胴Cがスチール製である場合は磁力で吸着するマグネットコンベアであってもよい。循環用コンベア131は、搬送面132が缶胴Cの筒軸と垂直な平面に一致するように、かつ、乗り換えターレット140で受け渡し位置まで搬送されてきた缶胴Cの底部Bと筒軸方向に対向するように、配設されている。なお、搬送面132は、缶胴Cの筒軸と完全に垂直な平面に一致するように配設されることに限定されるものではなく、受け渡し位置において缶胴Cの底部Bと対面して所定の移載が可能であれば、缶胴Cの筒軸と垂直な平面と多少の角度をなすように配設されていてもよい。
図1および
図2において、133は循環用コンベア131を支持して搬送経路を維持する支持部材であり、134は支持部材133を多段階ネック加工部110の上方空間において支持する橋脚である。
【0021】
乗り換えターレット140は、
図3に示すように、複数のポケットPが周方向に配置され、ポケットPは、下流側ネック加工ユニットから排出された缶胴Cを最下流に配置された搬送ターレット121および移送ターレット150を介して受け取る受け取り位置と、循環用コンベア131と対向する受け渡し位置とを回転によって通過するように構成されている。
缶胴Cの搬送経路において、多段階ネック加工部110に供給されてから循環用コンベア131に移載されるまでの間、具体的には搬送ターレット121、加工ターレット120、移送ターレット150および乗り換えターレット140においては、すべて缶胴Cの開口端の筒軸方向位置が同じになる状態で搬送される。
一方、循環用コンベア131の搬送面132は、
図4に示されるように、例えば高さの高い缶胴C(高ハイト缶)の底部Bに適合した、すなわち高ハイト缶の底部Bと僅かな隙間を介して対向する筒軸方向位置にあり、缶胴Cが低ハイト缶である場合には、
図5に示されるように、低ハイト缶の底部Bと循環用コンベア131の搬送面132との間に、ある程度の大きさの間隙Gが形成される。
循環用コンベア131の搬送面132と缶胴Cの底部Bとの間隙Gの許容範囲は、軸方向移動機構の構成によっても異なるが、例えば80mm以下である。間隙Gは、被処理体とできる缶胴Cの高さの自由度の範囲でもあるので、間隙Gの許容範囲が上記範囲であることにより、基準となる高ハイト缶と比較して十分に広い範囲の低ハイト缶にネッキングを施すことができ、有底筒状体加工装置100の適用対象に高い自由度が得られる。
【0022】
乗り換えターレット140は、缶胴Cを保持したポケットPが循環用コンベア131への受け渡し位置にあるときに、缶胴Cを筒軸方向に循環用コンベア131に向かう側(
図1において手前側)に移動させる軸方向移動機構(図示せず)を備える。
軸方向移動機構は、例えば、気体(エア)の噴出により缶胴Cを筒軸方向に移動させるエアブロー機構によって構成することができる。
エアブロー機構は、例えばブローノズル、空気圧縮機および配管を有し、ブローノズルが乗り換えターレット140の側方(缶胴Cの開口端側)に配置されて移載方向(缶胴Cの底部側に向かう方向)にエアを噴出させることが可能な構成のものである。エアは連続的に噴出させることが好ましい。エアの噴出を連続して行う状態としておくことにより、受け渡し位置に搬送されてきた缶胴Cと同期させて都度噴出させる必要が生じないため、容易にかつ確実に缶胴Cを循環用コンベア131に移載することができる。
軸方向移動機構は、筒軸方向底部側に缶胴Cを移動させることができるものであれば、エアブロー機構によって構成されることに限定されず、例えば板バネ等の物理的接触によって移動させる構成や、磁力によって移動させる構成とされていてもよい。
【0023】
循環用コンベア131を備える再供給機構130には、循環用コンベア131の搬送経路の後端から上流側ネック加工ユニットに缶胴Cを下方に移動させて供給するシュート135が備えられている。
シュート135は、高さの高い缶胴C(高ハイト缶)に適合した内部空間を有し、それよりも高さの低い缶胴Cがシュート135に投入されたときに、内部空間において缶胴Cを筒軸方向の開口端側(
図1において奥側)に寄るように移動させるガイド(図示せず)を備える。缶胴Cが低ハイト缶である場合にはシュート135にこのようなガイドを設置することにより、シュート135内を滑落する缶胴Cの筒軸方向の高さに関わらず、乗り換えターレット140の受け渡し位置において缶胴Cの開口端の筒軸方向位置を底部側にずらした分を、ネック加工に適した元の筒軸方向位置に復帰させることができる。この状態において缶胴Cが上流側ネック加工ユニットに再供給用ターレット群136および最上流側の搬送ターレット121を介して供給されることにより、別途筒軸方向の位置調整手段を設けることなく、2巡目のネック加工を行うことができる。
【0024】
上記の有底筒状体加工装置100においては、例えば、低ハイト缶である缶胴Cのネッキング時は、以下のように複数回のネック加工を施される。まず、供給機構160から多段階ネック加工部110に供給された未加工の缶胴Cは、最上流の搬送ターレット121を介して上流側ネック加工ユニットの第1のポケットPに受け渡され、搬送方向下流側に隣接する搬送ターレット121に受け渡されるまでの間に1段階のネック加工が行われる。同様に搬送ターレット121を介して順次下流側に隣接するネック加工ユニットのそれぞれ第1のポケットPにおいて段階的に1巡目の複数回(本実施形態においては6回)のネック加工が行われ、最下流の下流側ネック加工ユニットの排出位置まで移動すると、搬送ターレット121および移送ターレット150を介して乗り換えターレット140のポケットPに受け渡される。乗り換えターレット140の回転に伴って缶胴Cを保持したポケットPが受け渡し位置まで移動されると、エアブロー機構による連続的なエアの噴出によって、缶胴Cが開口端側から底部側に向かって飛ばされ循環用コンベア131の搬送面132に底部Bが吸着される。これにより、缶胴Cが乗り換えターレット140から循環用コンベア131に移載される。
循環用コンベア131に吸着された缶胴Cは、搬送経路に沿って上昇路131aおよび平行路131bを通って平行路131bの後端においてシュート135に投入される。シュート135内に投入された缶胴Cは、その内部空間においてガイドによって筒軸方向の開口端側に寄るように移動され、乗り換えターレット140の受け渡し位置において缶胴Cの開口端の筒軸方向位置を底部側にずらしたズレ分が戻される。この状態において缶胴Cが上流側ネック加工ユニットの加工ターレット120の第2のポケットPに再供給用ターレット群136および最上流側の搬送ターレット121を介して供給される。
上流側ネック加工ユニットの加工ターレット120の第2のポケットPに供給された缶胴Cは、搬送方向下流側に隣接する搬送ターレット121に受け渡されるまでの間に2巡目の1段階目(通しで7段階目)のネック加工が行われる。同様に搬送ターレット121を介して順次下流側に隣接するネック加工ユニットのそれぞれ第2のポケットPにおいて段階的に2巡目の複数回(本実施形態においては6回)のネック加工が行われ、最下流の下流側ネック加工ユニットの排出位置まで移動すると、最下流の搬送ターレット121および移送ターレット150を介して排出機構170に受け渡され、必要に応じて他の加工が行われ、有底筒状体加工装置100の外部に搬出されて次工程に供される。
供給機構160、多段階ネック加工部110、移送ターレット150、乗り換えターレット140および排出機構170を構成する各ターレットは、それぞれ、適宜の駆動源により直接あるいは機械的に伝動機構を介して回転駆動され、これらの回転速度すなわちポケットの移動速度、及び、各ポケットの連動タイミングは、各ターレット間で缶胴Cが円滑に受け渡されるように調整可能に設計されている。
【0025】
以上、本発明の一実施形態に係る有底筒状体加工装置100について説明したが、本発明の有底筒状体加工装置は上記の実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記の実施形態においては、多段階ネック加工部においては6つのネック加工ユニットを有して1巡目も2巡目も全てのネック加工ユニットを通過して12回のネック加工をするものとして説明したが、循環用コンベアの搬送開始点と搬送終了点がそれぞれ多段階ネック加工部の下流側および上流側にそれぞれ設定されていれば、上記構成に限定されるものではない。例えば、1巡目は5つ目の加工ユニットまでを通過して循環用コンベアで1つ目の加工ユニットに再供給され、2巡目で6つの加工ユニット全てを通過する構成や、1巡目は1つ目の加工ユニットから開始されて6つ目の加工ユニットまで通過して循環用コンベアで2つ目の加工ユニットに再供給され、2巡目で5つの加工ユニットを通過する構成、その他の構成とすることができる。
また例えば、上記の実施形態においては、ネック加工ユニットにおいてすべてネック加工を行うものとして説明したが、ネック加工の代わりに、他の工程を配することができる。他の工程としては、例えば缶蓋を巻き締めるためのフランジを成形するフランジング加工や、開口端において耳などの不要部分を切り落とすトリミング工程、キャップを巻き締めるネジ部を成形するネジ加工工程、開口端を丸めるカール工程などが挙げられる。また、加工ターレット120において通過するのみで無加工で搬送される構成としてもよい。
さらに例えば、巡回数は2として構成したが、3以上の巡回数として装置を構成することもできる。
【符号の説明】
【0026】
100 ・・・ 有底筒状体加工装置
110 ・・・ 多段階ネック加工部
120 ・・・ 加工ターレット
121 ・・・ 搬送ターレット
130 ・・・ 再供給機構
131 ・・・ 循環用コンベア
131a・・・ 上昇路
131b・・・ 平行路
132 ・・・ 搬送面
133 ・・・ 支持部材
134 ・・・ 橋脚
135 ・・・ シュート
136 ・・・ 再供給用ターレット群
140 ・・・ 乗り換えターレット
150 ・・・ 移送ターレット
160 ・・・ 供給機構
170 ・・・ 排出機構
B ・・・ 底部
C ・・・ 缶胴
G ・・・ 間隙
P ・・・ ポケット