(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178812
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】記録装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体
(51)【国際特許分類】
B41J 2/18 20060101AFI20241218BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241218BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
B41J2/18
B41J2/01 401
B41J2/165 211
B41J2/165
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097241
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨田 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】弾塚 俊光
(72)【発明者】
【氏名】竹腰 里枝
(72)【発明者】
【氏名】石見 啓太
(72)【発明者】
【氏名】愛知 晶子
(72)【発明者】
【氏名】寒河 裕人
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB58
2C056EC15
2C056EC28
2C056EC65
2C056JA01
2C056JC06
2C056KB16
(57)【要約】
【課題】インクの濃縮がインクの吐出に与える影響を抑制する。
【解決手段】複数種類のインクをそれぞれ吐出する複数の吐出口と、複数の吐出口と複数種類のインクをそれぞれ収容する複数の液室との間でインクを循環させるための複数の循環経路と、を備えるインク吐出ヘッドと、複数の循環経路においてインクを循環させる循環手段と、記録データに基づいて、循環手段により、複数の循環経路のうちのいずれの循環経路においてインクを循環させるかを制御する。
【選択図】
図25
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類のインクをそれぞれ吐出する複数の吐出口と、前記複数の吐出口と前記複数種類のインクをそれぞれ収容する複数の液室との間でインクを循環させるための複数の循環経路と、を備えるインク吐出ヘッドと、
前記複数の循環経路においてインクを循環させる循環手段と、
記録データに基づいて、前記循環手段により、前記複数の循環経路のうちのいずれの循環経路においてインクを循環させるかを制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記記録データに基づいて、記録に使用するインクを選択する選択手段をさらに備え、前記制御手段は、前記選択手段により選択されたインクに応じて、前記複数の循環経路のうちのいずれの循環経路においてインクを循環させるかを制御することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記選択手段により選択されたインクに対応する循環経路においてインクを循環させるように、前記循環手段を制御することを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記インク吐出ヘッドは、前記複数の吐出口が分けて配列された複数のチップを有し、前記制御手段は、前記記録に使用するインクの吐出口と同じチップに吐出口が配置されたインクに対応する循環経路においてインクを循環させるように、前記循環手段を制御することを特徴とする請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記記録装置の記録動作中に、インクの循環が行われない循環経路の経過時間を計測する計測手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項6】
前記吐出口からインクを吸引する吸引手段をさらに備え、前記制御手段は、前記経過時間が第1の閾値を超えた場合に、前記インクの循環が行われていない循環経路に対応するインクを前記吐出口から吸引するように前記吸引手段を制御することを特徴とする請求項5に記載の記録装置。
【請求項7】
前記吸引手段による吸引は、次の記録動作が開始される前に実行されることを特徴とする請求項6に記載の記録装置。
【請求項8】
前記吸引手段は、前記吐出口を覆うキャップと、キャップの内部を負圧にするポンプとを備えることを特徴とする請求項6に記載の記録装置。
【請求項9】
前記循環手段により循環が行われるインクの前記循環経路内の濃縮度を予測する予測手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記濃縮度が第2の閾値より大きくなった場合に、インクを前記吐出口から吐出させるように制御することを特徴とする請求項9に記載の記録装置。
【請求項11】
前記吐出口からのインクの吐出は、次の記録動作が開始される前に実行されることを特徴とする請求項10に記載の記録装置。
【請求項12】
前記制御手段は、前の記録動作において使用されず、記録動作中に循環が行われていない時間が第3の閾値を超えるインクについて、次の記録動作が開始される前にインクの排出動作を実行するように制御することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項13】
複数種類のインクをそれぞれ吐出する複数の吐出口と、前記複数の吐出口と前記複数種類のインクをそれぞれ収容する複数の液室との間でインクを循環させるための複数の循環経路と、を有するインク吐出ヘッドを備える記録装置を制御する方法であって、
前記複数の循環経路においてインクを循環させる循環工程と、
記録データに基づいて、前記循環工程において、前記複数の循環経路のうちのいずれの循環経路においてインクを循環させるかを制御する制御工程と、
を有することを特徴とする記録装置の制御方法。
【請求項14】
請求項13に記載の制御方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項15】
請求項13に記載の制御方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶したコンピュータが読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドを含む循環経路でインクを循環させる記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水性インクを用いたインクジェット記録装置では、プリントヘッドのノズルからインク中の水分が蒸発すると、吐出口近傍のインクの粘度が上昇し、ノズルからインクを吐出する際に諸々の問題が発生する課題がある。
【0003】
この課題の対策として、ノズル内に2つの流路を形成し、ヘッド内の液室とノズルとの間でインクを循環させることで、ノズル近傍で水分蒸発により増粘したインクを除去し、蒸発していないインクに置換する方法が知られている。しかしながら、循環流路全体で考えた場合、ノズルからの水分蒸発は進むため、徐々に循環流路内の水分量は低下し、インクの濃縮が発生する問題がある。
【0004】
そこで、特許文献1では、画像形成でインクを吐出する色に対してのみ、インクの循環を行う技術が記載されている。具体的には、モノクロモードの記録時にはブラックインクのみ循環させ、カラーインクは循環させないように制御することで、カラーインクの水分蒸発に伴う濃縮を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、画像形成で使用しないインクを循環させないように制御する場合、ノズル近傍の水分蒸発が進むことでインクの粘度が上昇し、循環を再度行おうとしても増粘したインクがノズルから流れない場合がある。特に、画像形成で使用するノズル列と同一チップ内にある未使用のノズル列では、保温制御や吐出による温度上昇により、インクの温度が上昇する。そのため、水分蒸発が促進され、粘度上昇が早期に起こる。そのような場合、インクの吐出不良が発生するだけでなく、循環を行おうとしても、ノズル内の増粘したインクを再循環させることができなくなる場合がある。
【0007】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、インクの濃縮がインクの吐出に与える影響を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係わる記録装置は、複数種類のインクをそれぞれ吐出する複数の吐出口と、前記複数の吐出口と前記複数種類のインクをそれぞれ収容する複数の液室との間でインクを循環させるための複数の循環経路と、を備えるインク吐出ヘッドと、前記複数の循環経路においてインクを循環させる循環手段と、記録データに基づいて、前記循環手段により、前記複数の循環経路のうちのいずれの循環経路においてインクを循環させるかを制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、インクの濃縮がインクの吐出に与える影響を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図5】液体吐出ヘッドの縦断面及び吐出モジュールの拡大断面図である。
【
図11】
図8(a)に示した循環ポンプのIX-IX線断面図である。
【
図12】液体吐出ヘッド内のインクの流れを説明する図である。
【
図13】吐出ユニットにおける循環経路を示した模式図である。
【
図16】吐出ユニットのインク流れを示した断面図である。
【
図18】吐出口の近傍の比較例を示す断面図である。
【
図20】液体吐出ヘッドの流路構成を示した図である。
【
図21】ノズル近傍のインク濃縮状態の模式図である。
【
図22】記録動作の経過時間に対する循環流路内のインク濃縮のグラフである。
【
図24】記録条件と使用するインクの対応表である。
【
図25】記録動作中の循環判定フローチャートである。
【
図26】記録動作開始前の回復判定フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本開示の好適な実施の形態を詳しく説明する。尚、以下の実施の形態は本開示事項を限定するものでなく、また本実施の形態で説明されている特徴の組み合わせすべてが本開示の解決手段に必須のものとは限らない。尚、同一の構成要素には同一の参照番号を付す。本実施形態では、液体を吐出する吐出素子として、電熱変換素子により気泡を発生させて液体を吐出するサーマル方式を採用した例を用いて説明するが、これに限られない。圧電素子(ピエゾ)を用いて液体を吐出する吐出方式、または、他の吐出方式が採用された液体吐出ヘッドにも適用することができる。さらに、以下に説明するポンプ及び圧力調整手段等も、実施形態及び図面に記載されている構成自体に限定されるものではなく、同等の機能を有するものを適用することも可能である。
【0012】
<液体吐出装置>
図1は、液体吐出装置を説明する図である。まず、本実施形態における液体吐出装置50の概略構成を、
図1を参照しつつ説明する。
図1(a)は、液体吐出ヘッド1を用いる液体吐出装置を模式的に示す斜視図である。本実施形態の液体吐出装置50は、液体吐出ヘッド1を走査しつつ液体としてのインクを吐出して記録媒体Pへの記録を行うシリアル型のインクジェット記録装置を構成している。
【0013】
図1を用いてこのインクジェット記録装置の構成および記録時の動作の概略を説明する。まず、搬送モータ104によりギヤを介して駆動される搬送ローラによって、記録媒体Pを保持しているスプール106から記録媒体PがY方向に搬送される。一方、所定の搬送位置において、キャリッジモータ103(
図1(b)参照)によりキャリッジ60をX方向に延在するガイドシャフト108に沿ってX方向に往復走査(往復移動)させる。
【0014】
記録媒体Pは、搬送ローラによって、主走査方向と交差(本例の場合は、直交)する副走査方向(Y方向)に搬送される。尚、以下で参照する各図において、Z方向は鉛直方向を示しており、X方向及びY方向によって規定されるX-Y平面と交差(本例の場合は、直交)している。液体吐出ヘッド1は、ユーザによって、キャリッジ60に対し取り外し及び取り付けが可能に構成されている。
【0015】
キャリッジ60の走査の過程で、エンコーダ107によって得られる位置信号に基づいたタイミングで、液体吐出ヘッド1のノズルから吐出動作を行わせ、ノズルの配列範囲に対応した一定のバンド幅を記録する。その後、記録媒体Pの搬送を行い、さらに次のバンド幅について記録を行う構成となっている。
【0016】
送給された記録媒体Pは、給紙ローラとピンチローラとに挟持搬送されて、プラテン57上の記録位置(液体吐出ヘッド1の走査領域)に導かれる。通常、休止状態では回復ユニット23(
図2参照)に具備されるキャップ61により液体吐出ヘッド1のフェイス面にはキャッピングが施されているため、記録に先立ってキャップを開放して液体吐出ヘッド1ないしキャリッジ60を走査可能状態にする。その後、1走査分のデータがバッファに蓄積されたらキャリッジモータ103によりキャリッジ60を走査させ、上述のように記録を行う。
【0017】
なお、キャリッジモータ103からキャリッジ60への駆動力の伝達には、キャリッジベルト(不図示)を用いることができる。しかしキャリッジベルトの代わりに、例えばキャリッジモータ103により回転駆動され、X方向に延在するリードスクリュと、キャリッジ60に設けられ、リードスクリュの溝に係合する係合部とを具えたものなど、他の駆動方式を用いることも可能である。
【0018】
また、液体吐出ヘッド1に供給されるインクは、本体内、あるいは外付けユニットに搭載されたインクタンク2(
図8参照)からインク供給チューブ59によりキャリッジ60を経由して供給される。インクは加圧ユニットを用いてインクタンク2から液体吐出ヘッド1に供給しても良いし、回復ユニット23のキャップを用いて液体吐出ヘッド1のノズル面をキャッピングし、吸引ポンプによりキャップ内に負圧を掛けて吸引することにより供給しても良い。
【0019】
また、液体吐出ヘッド1は1つ、あるいは複数色のインクを吐出可能なものを複数個キャリッジに搭載しても良く、複数色のインクを吐出可能な一つの液体吐出ヘッド1をキャリッジに搭載する形態であってもよい。
【0020】
なお、本実施形態の説明においては、非記録動作時に液体吐出ヘッド1をキャッピングするX方向位置を基準側と呼び、それに対して記録動作時にキャップ位置から移動する方向を非基準側と呼ぶ。
【0021】
液体吐出ヘッド1は、循環ユニット54と、後述する吐出ユニット3(
図4参照)とを含み構成されている。具体的な構成については後述するが、吐出ユニット3には、複数の吐出口と、各吐出口から液体を吐出するための吐出エネルギーを発するエネルギー発生素子(以下、吐出素子と称す)とが設けられている。
【0022】
また、液体吐出装置50には、インクの供給源であるインクタンク2及び外部ポンプ21が設けられており、インクタンク2に貯留されたインクは、外部ポンプ21の駆動力によってインク供給チューブ59を介して循環ユニット54に供給される。
【0023】
液体吐出ヘッド1には、吐出する液体の種類に応じた循環ユニット54が備えられている。同種類の液体に対して複数の循環ユニット54が備えられていてもよい。即ち、液体吐出ヘッド1は、1つ以上の循環ユニットを備える構成とすることができる。また、
図1(a)に示す液体吐出ヘッド1は、主走査方向へ移動しつつインクを吐出する、いわゆるシリアル型の液体吐出ヘッドを例に挙げて示しているが、この限りでない。記録媒体Pの幅方向全般にわたって吐出口が形成されており、主走査方向への移動を伴わずに記録媒体Pの幅方向全域に吐出が可能な、いわゆるフルライン型の液体吐出ヘッドであってもよい。
【0024】
図1(b)は、液体吐出装置50の制御系を示すブロック図である。CPU100は、ROM101に格納された処理手順等のプログラムに基づいて液体吐出装置50の各部の動作を制御する制御手段としての機能を果す。また、ROM101は中間生成物の多値階調データ、マルチパスマスクを格納する。RAM102は、CPU100が処理を実行する際のワークエリア等として用いられる。CPU100は、液体吐出装置50の外部のホスト装置400からの画像データを受信してヘッドドライバ1Aを制御し、液体吐出ヘッド1に設けられた吐出素子の駆動を制御する。また、CPU100は、液体吐出装置50に設けられた種々のアクチュエータのドライバの制御も行う。例えば、CPU100は、キャリッジ60を移動させるためのキャリッジモータ103のモータドライバ103A、及び、記録媒体Pを搬送させるための搬送モータ104のモータドライバ104A等の制御を行う。さらに、CPU100は、後述の循環ポンプ500の駆動を行うポンプドライバ500A、及び、外部ポンプ21のポンプドライバ21A、回復ユニットモータ22のモータドライバ22A等の制御を行う。回復ユニットモータ22は、回復ユニット23に搭載されるモータであり、カムシャフトにより駆動するユニットを切り替え、ワイパガイド223や吸引ポンプ213を動作させる。尚、
図1(b)では、ホスト装置400からの画像データを受信した処理を行う形態を示しているが、ホスト装置400からのデータに拠らずに液体吐出装置50で処理が行われてもよい。
【0025】
<回復ユニット>
図2は、本実施形態における回復ユニット23の模式図である。キャップ61は、不図示の昇降機構によって昇降可能に支持されており、上昇位置と下降位置との間を移動する。キャップ61は、上昇位置では、液体吐出ヘッド1と当接し液体吐出ヘッド1のノズル面を覆う(キャッピングする)。キャップ61は、液体吐出ヘッド1のノズル面を覆うことにより、非記録動作時に液体吐出ヘッド1のノズルが乾燥しインクが蒸発することを抑制する。あるいは、後述する吸引ポンプ213を駆動することで液体吐出ヘッド1からインクを吸引する場合に用いられる。また、キャップ61は、記録動作時には、キャリッジ60と共に移動する液体吐出ヘッド1との干渉を避けるため、下降位置に位置する。キャップ61が下降位置に位置した状態において、液体吐出ヘッド1は、キャップ61と対向した位置に移動したときに、キャップ61に対して予備吐出を行うことができる。
【0026】
ワイパ(ワイパブレード)221,222は、ゴム等の弾性部材から構成されている。本実施形態では、それぞれ2つのチップのノズル面をワイピングする2つのワイパ221と、ノズル列を含むノズル口面全体をワイピングするワイパ222とが設けられている。ワイパ221,222は、ワイパホルダ220に固定されている。ワイパホルダ220は、ワイパガイド223に沿って、矢印Wで示す図の前後方向(液体吐出ヘッド1におけるノズルの配列方向)に移動可能である。液体吐出ヘッド1が待機位置に位置したときに、ワイパホルダ220が矢印W方向(片方向)に移動することによって、ワイパ221,222がノズル面と当接しながらノズル面をワイピングするワイピング動作を行うことができる。ワイピング動作が終了すると、キャリッジ60を当該ワイピング動作が行われる領域から移動させ退避させてから、ワイパホルダ220を移動させワイパ221,222を元の位置(ワイピング動作前の位置)に戻す。
【0027】
なお、本実施形態では、ワイパはゴムなどの弾性部材から構成されているが、インクを吸収する多孔質の材料から構成される部材であっても良い。また、ノズル面を吸引可能なバキュームワイパ構成でも良い。また、本実施形態では、ワイピングはワイパが片方向に移動するときにのみ行う構成であるが、ワイパが往復双方向に移動するときにワイピングを行う構成であっても良い。また、本実施形態では、ワイピング方向は液体吐出ヘッド1におけるノズルの配列方向であったが、当該方向と交差(直交)する方向(ノズル列の配置方向と交差する方向)に移動する構成であっても良い。また、当該構成において、ワイパを固定し、キャリッジ60が走査方向に移動することでノズル面を払拭する構成であってもよい。また、複数のワイピング部材、あるいは異なるワイピング方向で払拭する構成において、各回復ユニットの位置が分かれて配置されていても良い。その場合、回復ユニットがキャリッジユニットの待機位置付近と、記録媒体を挟んだ反対側に分割されて配置されていても良い。
【0028】
吸引ポンプ213は、キャップ61が液体吐出ヘッド1のノズル面を覆いその内部を略密閉空間にした状態において駆動され、その内部に負圧を発生させることにより液体吐出ヘッド1からインクを吸引する吸引動作を行う。この吸引動作は、インクタンク2から液体吐出ヘッド1内にインクを充填する際(初期充填時)や、ノズル内部の塵埃、固着物、気泡等を吸引除去する際(吸引回復時)に行われる。キャップ61は可撓性のチューブ58を介して不図示の廃インク吸収体と接続されている。
【0029】
本実施形態では、吸引ポンプ213としてチューブポンプを用いている。チューブポンプは、チューブ58(の少なくとも一部)を沿わせて保持する曲面部が形成された保持部と、保持されたチューブ58を押圧可能なローラと、ローラを回転可能に支持するローラ支持部とを有する。チューブポンプは、ローラ支持部を所定方向に回転させることにより、チューブ58を押しつぶしながらローラを回転させる。これにより、キャップ61の内部に負圧を発生させ、液体吐出ヘッド1からインクを吸引する。吸引されたインクは、チューブ58を介して廃インク吸収体に排出される。また、吸引動作は、液体吐出ヘッド1によりキャップ61に対して予備吐出が行われた場合、当該予備吐出によりキャップ61に受容されたインクを排出する際にも行われる。即ち、予備吐出されてキャップ61に保持されたインクが所定量に達したときに吸引ポンプ213を駆動することで、キャップ61内に保持されていたインクを、チューブ58を介して廃インク吸収体に排出することができる。
【0030】
<液体吐出ヘッドの基本構成>
図3は、本実施形態における液体吐出ヘッド1の構成を示す図である。本実施形態においては、6色のインク(複数種類のインク)を記録可能な液体吐出ヘッド110が1個、3色のインク(複数種類のインク)を記録可能な液体吐出ヘッド111が2個の合計3個の液体吐出ヘッドで構成される。本実施形態の液体吐出ヘッドの並びは、走査方向基準側から液体吐出ヘッド111、110、111のように配置される。なお、ここでは区別のために、走査方向基準側の液体吐出ヘッドを111R、非基準側の液体吐出ヘッドを111Lと記載する。
【0031】
また、インクの配列は、液体吐出ヘッド111Lは3色分に全てプライマーが配置され、そのバッファタンク401PRが3つ備えられる。中央の液体吐出ヘッド110には基準側からライトマゼンタ、ライトシアン、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの順に色インクが配置され、6色のインクに対して独立したバッファタンク401LM、401LC、401Y、401M、401C、401BKが備えられる。液体吐出ヘッド111Rにおいては、基準側からグレー、グリーン、オレンジの3色のインクに対してそれぞれのバッファタンク401GY、401GR、401ORが備えられる。なお、
図3では説明のためにバッファタンクを視認できるように示しているが、バッファタンクは液体吐出ヘッドの内部に格納されるものである。また、液体吐出ヘッドやインクの配列は制限されるものではなく、1つの液体吐出ヘッドに配置するインク色数は3でなくてもよく、色の並びも本実施形態で示す例のようでなくても良い。
【0032】
液体吐出ヘッド110および111の下面にはそれぞれのインクに対応したノズル列が形成されるチップ403が配置される。チップ403には1色あたり1200dpiの間隔で1024個のノズル402が2列ずつ並んで形成され、1つのチップで3色を吐出することが可能となっている。液体吐出ヘッド110は、チップ403を2つ配置することで6色の記録が可能であり、液体吐出ヘッド111は1つのチップ403を配置し3色の記録が可能である。なお、1色のノズル列は同一直線上に配置される必要は無く、1つずつ互い違いに配置され、600dpiの間隔で512個のノズル列が合計で4列配置されても良い。
【0033】
図4は、本実施形態の液体吐出ヘッド1を示す分解斜視図である。
図5は、液体吐出ヘッド1の縦断面図である。
図5(a)は液体吐出ヘッド1の全体的な縦断面図、
図5(b)は
図5(a)に示す吐出モジュールの拡大図である。以下、
図4及び
図5を中心に、
図1を適宜参照しつつ、本実施形態における液体吐出ヘッド1を説明する。
【0034】
図4に示すように、液体吐出ヘッド1は、循環ユニット54と、循環ユニット54から供給されたインクを記録媒体Pに吐出するための吐出ユニット3とを含み構成されている。本実施形態における液体吐出ヘッド1は、液体吐出装置50のキャリッジ60に設けられている不図示の位置決め手段及び電気的接点によってキャリッジ60に固定支持される。そして、液体吐出ヘッド1は、キャリッジ60と共に
図1に示す主走査方向(X方向)に移動しつつインクを吐出し、記録媒体Pへの記録を行う。
【0035】
インクの供給源となるインクタンク2に接続された外部ポンプ21には、インク供給チューブ59が設けられている(
図1参照)。このインク供給チューブ59の先端には、不図示の液体コネクタが設けられている。液体吐出装置50に液体吐出ヘッド1が搭載された際、インク供給チューブ59の先端に設けられた液体コネクタが、液体吐出ヘッド1におけるヘッド筐体53に設けられた不図示の液体コネクタ挿入口に気密接続される。これにより、インクタンク2から外部ポンプ21を経て液体吐出ヘッド1に至るインク供給路が形成される。本実施形態では、4種類のインクを用いるため、インクタンク2、外部ポンプ21、インク供給チューブ59、及び循環ユニット54が、それぞれのインクに対応して4組設けられており、各インクに対応した4本のインク供給路が独立して形成されている。このように、本実施形態の液体吐出装置50には、液体吐出ヘッド1の外部に設けられたインクタンク2からインクが供給されるインク供給系が備えられている。尚、本実施形態の液体吐出装置50には、液体吐出ヘッド1内のインクをインクタンク2に回収するようなインク回収系は備えられていない。
【0036】
図5において、54Bはブラックインク用の循環ユニットを、54Cはシアンインク用の循環ユニットを、54Mはマゼンタインク用の循環ユニットを、54Yはイエローインク用のインク循環ユニットを、それぞれ示している。各循環ユニットは略同様の構成を有しており、本実施形態において各循環ユニットを特に区別しない場合には、循環ユニット54と表記する。
【0037】
図4及び
図5(a)において、吐出ユニット3は、2つの吐出モジュール300、第1支持部材4、第2支持部材7、電気配線部材(電気配線テープ)5、及び電気コンタクト基板6を備える。
図5(b)に示すように、吐出モジュール300は、厚さ0.5~1mmのシリコン基板310と、シリコン基板310の片面に設けられた複数の吐出素子15とを備えている。本実施形態における吐出素子15は、液体を吐出するための吐出エネルギーとして熱エネルギーを発生する電気熱変換素子(ヒータ)により構成されている。各吐出素子15には、シリコン基板310上に成膜技術によって形成された電気配線を介して電力が供給される。
【0038】
また、シリコン基板310の表面(
図5(b)において下面)には、吐出口形成部材320が形成されている。吐出口形成部材320には、複数の吐出素子15に対応する複数の圧力室12と、インクを吐出する複数の吐出口13とがフォトリソグラフィ技術によってそれぞれ形成されている。さらに、シリコン基板310には、各圧力室12に連通する個別供給流路18と個別回収流路19とが形成されている。本実施形態では、1つの吐出モジュール300が、2種類のインクの吐出を行うように構成されている。すなわち、
図5(a)に示す2つの吐出モジュールのうち、図中の左側に位置する吐出モジュール300は、ブラックインクとシアンインクの吐出を行い、図中の右側に位置する吐出モジュール300は、マゼンタインクとイエローインクの吐出を行う。さらに、
図5に示す例では、1色のインクに対して、Y方向に延在する2つの吐出口列が形成されている。各吐出口列を構成する複数の吐出口13の各々に対し、圧力室12、個別供給流路18及び個別回収流路19がそれぞれ形成されている。
【0039】
シリコン基板310の裏面(
図5(b)において上面)には、後述するインク供給口及びインク回収口が形成されている。インク供給口は複数の個別供給流路18にインク供給流路48からインクを供給し、インク回収口は複数の個別回収流路19からインク回収流路49にインクを回収する。
【0040】
尚、ここでいうインク供給口及びインク回収口は、後述する順方向のインク循環時においてインクの供給及び回収を行う開口を指す。すなわち、順方向へのインク循環時にはインク供給口から各個別供給流路18にインクが供給されると共に、各個別回収流路19からインク回収口へとインクが回収される。但し、順方向とは逆方向へインクを流すインク循環時には、上記で説明したインク回収口から個別回収流路19にインクが供給されると共に、個別供給流路18からインク供給口へとインクが回収されることになる。
【0041】
図5(a)に示すように、吐出モジュール300は、その裏面(
図5(a)における上面)が、第1支持部材4の一方の面(
図5(a)において下面)に接着固定されている。第1支持部材4には、その一方の面から他方の面に亘って貫通するインク供給流路48とインク回収流路49が形成されている。インク供給流路48の一方の開口はシリコン基板310における前述のインク供給口に、インク回収流路49の一方の開口はシリコン基板310における前述のインク回収口に、それぞれ連通している。尚、インク供給流路48及びインク回収流路49は、インクの種類毎に独立して設けられている。
【0042】
また、第1支持部材4の他方の面(
図5(a)における上面)には、吐出モジュール300を挿通させる開口7a(
図4参照)を有する第2支持部材7が接着固定されている。第2支持部材7には、吐出モジュール300に対して電気的に接続される電気配線部材5が保持されている。電気配線部材5は、インクを吐出するための電気信号を吐出モジュール300に印加するための部材である。吐出モジュール300と電気配線部材5との電気接続部分は、封止材により封止され、インクによる腐食や外的衝撃から保護されている。
【0043】
また、電気配線部材5の端部5a(
図4参照)には、電気コンタクト基板6が、不図示の異方性導電フィルムを用いて熱圧着され、電気配線部材5と電気コンタクト基板6とは互いに電気的に接続されている。電気コンタクト基板6は、液体吐出装置50からの電気信号を受け取るための外部信号入力端子(不図示)を有している。
【0044】
さらに、第1支持部材4と循環ユニット54との間にはジョイント部材8(
図5(a))が設けられている。ジョイント部材8には、供給口88と回収口89とがインクの種類毎に形成されている。供給口88及び回収口89は、第1支持部材4のインク供給流路48及びインク回収流路49と循環ユニット54に形成される流路とを連通させる役割を果す。尚、
図5(a)において、供給口88B及び回収口89Bはブラックインクに対応し、供給口88C及び回収口89Cはシアンインクに対応する。また、供給口88M及び回収口89Mはマゼンタインクに対応し、供給口88Y及び回収口89Yはイエローインクに対応している。
【0045】
尚、第1支持部材4のインク供給流路48及びインク回収流路49の一端部の開口は、シリコン基板310におけるインク供給口及びインク回収口に合わせた小さな開口面積を有している。これに対し、第1支持部材4のインク供給流路48及びインク回収流路49の他端部の開口の開口面積は、循環ユニット54の流路に合わせて形成されたジョイント部材8の大きな開口面積と同一の開口面積にまで拡大させた形状を有している。このような構成を採ることにより、各回収流路から集められたインクに対する流路抵抗の上昇を抑制することができる。
【0046】
上記構成を有する液体吐出ヘッド1において、循環ユニット54に供給されたインクは、ジョイント部材8の供給口88及び第1支持部材4の供給流路48を経て、吐出モジュール300のインク供給口から個別供給流路18に流入する。続いてインクは、個別供給流路18から圧力室12に流入し、圧力室12に流入したインクの一部は、吐出素子15の駆動によって吐出口13から吐出される。吐出されなかった残りのインクは、圧力室12から個別回収流路19を経てインク回収口から第1支持部材4の回収流路49に流入する。そして、回収流路49に流入したインクは、ジョイント部材8の回収口89を経て循環ユニット54へと流入し、回収される。
【0047】
<循環ユニットの構成要素>
図6は、本実施形態の記録装置に適用される1種類のインクに対応する1つの循環ユニット54の外観概略図である。循環ユニット54には、フィルタ110、第1圧力調整手段120、第2圧力調整手段150、及び循環ポンプ500が配置されている。これらの構成要素は、
図7及び
図8に示すように各流路によって接続され、吐出モジュール300に対してインクの供給及び回収を行う循環経路を液体吐出ヘッド1内に構成している。
【0048】
<液体吐出ヘッド内の循環経路>
図7は、液体吐出ヘッド1内に構成される1種類のインク(1色のインク)の循環経路を模式的に示す縦断面図である。
図8は、
図7に示した循環経路を模式的に示すブロック図である。
図7および
図8に示すように、第1圧力調整手段120は、第1バルブ室121及び第1圧力制御室122を備えている。第2圧力調整手段150は、第2バルブ室151及び第2圧力制御室152を備えている。第1圧力調整手段120は、第2圧力調整手段150よりも相対的に制御圧力が高くなるように構成されている。本実施形態では、この二つの圧力調整手段120、150を用いることで、循環経路内において一定の圧力範囲での循環を実現している。また、第1圧力調整手段120と第2圧力調整手段150との圧力差に応じた流量で圧力室12(吐出素子15)近傍でインクが流れるように構成されている。以下、
図7及び
図8を参照しつつ、液体吐出ヘッド1における循環経路及び循環経路内におけるインクの流れを説明する。尚、各図中の矢印はインクの流れる方向を示している。
【0049】
まず、液体吐出ヘッド1における各構成要素の接続状態を説明する。
液体吐出ヘッド1の外部に設けられたインクタンク2(
図8)に収容されたインクを液体吐出ヘッド1へ送る外部ポンプ21は、インク供給チューブ59(
図1)を介して循環ユニット54と接続されている。循環ユニット54の上流側に位置するインク流路にはフィルタ110が設けられている。フィルタ110の下流側に位置するインク供給路は、第1圧力調整手段120の第1バルブ室121に接続されている。第1バルブ室121は、
図7に示すバルブ190Aにより開閉する連通口191Aを介して第1圧力制御室122に連通している。
【0050】
第1圧力制御室122は、供給流路130、バイパス流路160、及び循環ポンプ500のポンプ出口流路180に接続されている。供給流路130は、吐出モジュール300に設けられた前述のインク供給口を介して個別供給流路18に接続されている。また、バイパス流路160は、第2圧力調整手段150に設けられた第2バルブ室151に接続されている。第2バルブ室151は、
図7に示すバルブ190Bによって開閉する連通口191Bを介して第2圧力制御室152に連通している。
【0051】
第2圧力制御室152は、回収流路140に接続されている。回収流路140は、吐出モジュール300に設けられた前述のインク回収口を介して個別回収流路19に接続されている。さらに、第2圧力制御室152は、ポンプ入口流路170を介して循環ポンプ500に接続されている。尚、
図7において、170aはポンプ入口流路170の流入口を示している。
【0052】
次に、上記構成を有する液体吐出ヘッド1におけるインクの流れについて説明する。
図8に示すように、インクタンク2に収容されているインクは、液体吐出装置50に設けられた外部ポンプ21によって加圧され、正圧のインク流となって液体吐出ヘッド1の循環ユニット54に供給される。
【0053】
循環ユニット54に供給されたインクは、フィルタ110を通過することにより塵埃などの異物が除去された後、第1圧力調整手段120に設けられた第1バルブ室121に流入する。この際、インクは正圧から負圧へと減圧される。
【0054】
次に、循環経路内におけるインクの流れを説明する。循環ポンプ500は、その上流側となるポンプ入口流路170から吸引したインクを下流側となるポンプ出口流路180へと送り出すように動作する。従って、ポンプが駆動されることにより、第1圧力制御室122に供給されたインクは、ポンプ出口流路180から送液されたインクと共に、供給流路130及びバイパス流路160に流入する。尚、詳細は後述するが、本実施形態では循環ポンプとして、ダイヤフラムに貼り付けた圧電素子を駆動源とする圧電ダイヤフラムポンプを用いている。圧電ダイヤフラムポンプは、圧電素子に駆動電圧を入力することでポンプ室内の容積を変化させ、圧力変動によって2つの逆止弁が交互に動くことにより送液を行うポンプである。
【0055】
供給流路130に流入したインクは、吐出モジュール300のインク供給口から個別供給流路18を介して圧力室12に流入し、その一部のインクは吐出口13に供給され、吐出素子15の駆動(発熱)によって吐出口13から吐出される。また、吐出に使用されない残りのインクは、圧力室12を流動し、個別回収流路19を通過した後、吐出モジュール300に接続されている回収流路140に流入する。回収流路140に流入したインクは、第2圧力調整手段150の第2圧力制御室152に流入する。
【0056】
一方、バイパス流路160に流入したインクは、第2バルブ室151に流入した後、連通口191Bを通過して第2圧力制御室152に流入する。バイパス流路160を経由して第2圧力制御室152に流入したインクと回収流路140から回収されたインクとは、循環ポンプ500の駆動によってポンプ入口流路170を経て循環ポンプ500内に吸引される。そして、循環ポンプ500内に吸引されたインクは、ポンプ出口流路180へと送られ、第1圧力制御室122に再び流入する。以降では、第1圧力制御室122から供給流路130を介して吐出モジュール300を経て第2圧力制御室152に流入したインクと、バイパス流路160を介して第2圧力制御室152に流入したインクとが、循環ポンプ500に流入する。そして、循環ポンプ500から第1圧力制御室122に送られる。このようにして循環経路内でのインクの循環が行われることになる。
【0057】
以上のように、液体吐出ヘッド1内に設けた循環ポンプ500によって、吐出モジュール300を含む循環経路に沿って液体を循環させることが可能になる。このため、吐出モジュール300内でのインクの増粘や色材のインクの沈降成分の堆積を抑制することが可能となり、吐出モジュール300におけるインクの流動性および吐出口における吐出特性を良好な状態に保つことが可能になる。また、液体吐出ヘッド1外を循環させる必要がないため、循環ポンプ500として、小型のポンプを用いることが可能となり、装置の小型化を実現することができる。
【0058】
<圧力調整手段>
図9は、圧力調整手段の例を示す図である。
図9を参照して、上述の液体吐出ヘッド1に内蔵される圧力調整手段(第1圧力調整手段120、第2圧力調整手段150)の構成及び作用を、より詳細に説明する。尚、第1圧力調整手段120と第2圧力調整手段150とは、同一の構成を有しているため、以下では、第1圧力調整手段120を例に採り説明し、第2圧力調整手段150については、
図9において第1圧力調整手段に対応する部分の符号を併記するにとどめる。第2圧力調整手段150の場合には、以下で説明する第1バルブ室121を第2バルブ室151と読み替え、第1圧力制御室122を第2圧力制御室152と読み替えることとする。
【0059】
第1圧力調整手段120は、円筒状の筐体125内に形成された第1バルブ室121と第1圧力制御室122とを有する。第1バルブ室121と第1圧力制御室122とは、円筒状の筐体125内に設けられた隔壁123によって隔てられている。但し、第1バルブ室121は、隔壁123に形成された連通口191を介して第1圧力制御室122に連通している。第1バルブ室121には、連通口191における第1バルブ室121と第1圧力制御室122との連通及び遮断を切り替えるバルブ190が設けられている。バルブ190は、バルブばね200によって、連通口191に対向する位置に保持されており、バルブばね200の付勢力によって隔壁123と密接可能な構成を有している。バルブ190が隔壁123に密接することにより、連通口191におけるインクの流通は遮断される。尚、隔壁123との密接性を高めるため、バルブ190の隔壁123との接触部分は弾性部材によって形成されることが好ましい。また、バルブ190の中央部には連通口191に挿通されるバルブシャフト190aが突設されている。このバルブシャフト190aをバルブばね200の付勢力に抗して押圧することにより、バルブ190は隔壁123から離間し、連通口191におけるインクの流通が可能になる。以下、バルブ190によって連通口191におけるインクの流通が遮断される状態を「閉状態」、連通口191におけるインクの流通が可能な状態を「開状態」と称す。
【0060】
円筒状の筐体125の開口部は、可撓性部材230と圧力板210とにより閉塞されている。この可撓性部材230と、圧力板210と、筐体125の周壁と、隔壁123とにより、第1圧力制御室122が形成されている。圧力板210は、可撓性部材230の変位に伴って変位可能に構成されている。圧力板210及び可撓性部材230の材質は、特に限定されないが、例えば、圧力板210を樹脂成形部品で構成し、可撓性部材230を樹脂フィルムで構成することが可能である。この場合、圧力板210は可撓性部材230に熱溶着によって固定することができる。
【0061】
圧力板210と隔壁123との間には、圧力調整ばね220が設けられている。圧力調整ばね220の付勢力によって、圧力板210及び可撓性部材230は、第1圧力制御室122の内容積が広がる方向に付勢されている。また、第1圧力制御室122内の圧力が減少すると、圧力板210及び可撓性部材230は、圧力調整ばね220の圧力に抗して、第1圧力制御室122の内容積が減少する方向に変位する。そして、第1圧力制御室122の内容積が一定量まで減少すると、圧力板210がバルブ190のバルブシャフト190aに当接する。その後、さらに第1圧力制御室122の内容積が減少すると、バルブばね200の付勢力に抗してバルブシャフト190aと共にバルブ190が移動し、隔壁123から離間する。これにより、連通口191が開状態となる。
【0062】
本実施形態では、連通口191が開状態となったときの第1バルブ室121の圧力を第1圧力制御室122の圧力よりも高くなるように、循環経路内における接続設定をする。これにより、連通口191が開状態となると、第1バルブ室121から第1圧力制御室122へとインクが流入する。このインク流入により、第1圧力制御室122の内容積が増加する方向へ可撓性部材230及び圧力板210が変位する。その結果、圧力板210がバルブ190のバルブシャフト190aから離間し、連通口191はバルブばね200の付勢力によって隔壁123に密接し、連通口191は閉状態となる。
【0063】
このように、本実施形態における第1圧力調整手段120では、第1圧力制御室122内の圧力が一定圧力以下まで減少すると(例えば負圧が強くなると)、第1バルブ室121から連通口191を介してインクが流入する。これにより、第1圧力制御室122の圧力がそれ以上減少しないように構成されている。従って、第1圧力制御室122は一定範囲内の圧力に保たれるよう制御される。
【0064】
次に、第1圧力制御室122の圧力についてより詳細に説明する。
前述のように第1圧力制御室122の圧力に応じて可撓性部材230及び圧力板210が変位し、圧力板210がバルブシャフト190aに当接して連通口191が開状態となった状態(
図9(b)の状態)を考える。このとき、圧力板210に働く力の関係は、次の式1によって表される。
【0065】
P2×S2+F2+(P1-P2)×S1+F1=0・・・式1
さらに、式1をP2について整理すると、
P2=-(F1+F2+P1×S1)/(S2-S1)・・・式2
となる。
【0066】
P1:第1バルブ室121の圧力(ゲージ圧)
P2:第1圧力制御室122の圧力(ゲージ圧)
F1:バルブばね200のばね力
F2:圧力調整ばね220のばね力
S1:バルブ190の受圧面積
S2:圧力板210の受圧面積
ここで、バルブばね200のばね力F1及び圧力調整ばね220のばね力F2は、バルブ190及び圧力板210を押す方向を正(
図9において右方向)とする。また、第1バルブ室121の圧力P1および第1圧力制御室122の圧力P2に関し、P1が、P1≧P2の関係となるように構成する。
【0067】
連通口191が開状態となるときの第1圧力制御室122の圧力P2は、式2によって決定され、連通口191が開状態となると、P1≧P2の関係に構成したことにより、第1バルブ室121から第1圧力制御室122へインクが流入する。その結果、第1圧力制御室122の圧力P2はそれ以上減少せず、P2は一定範囲内の圧力に保たれる。
【0068】
一方、
図9(c)に示すように、圧力板210がバルブシャフト190aと非当接状態となり、連通口191が閉状態となったときの圧力板210に働く力の関係は、式3のようになる。
【0069】
P3×S3+F3=0・・・式3
ここで、式3をP3について整理すると
P3=-F3/S3・・・式4
となる。
【0070】
F3:圧力板210とバルブシャフト190aとが非当接状態にあるときの圧力調整ばね220のばね力
P3:圧力板210とバルブシャフト190aとが非当接状態にあるときの第1圧力制御室122の圧力(ゲージ圧)
S3:圧力板210とバルブ190が非当接状態にあるときの圧力板210の受圧面積
ここで
図9(c)では、圧力板210及び可撓性部材230が変位可能な限界まで図右方向へ変位した状態を表している。圧力板210及び可撓性部材230が
図9(c)の状態へと変位する間の変位量に応じて、第1圧力制御室122の圧力P3、圧力調整ばね220のばね力F3、圧力板210の受圧面積S3は変化する。具体的には、
図9(c)よりも圧力板210及び可撓性部材230が
図9において左方向にあるとき、圧力板210の受圧面積S3は小さくなり、圧力調整ばね220のばね力F3は大きくなる。その結果、式4の関係により第1圧力制御室122の圧力P3は小さくなる。従って、式2及び式4により、
図9(b)の状態から
図9(c)の状態になるまでの間に、第1圧力制御室122の圧力は徐々に上昇していく(つまり、負圧が弱くなり、正圧側に近づく値になる)。すなわち、連通口191が開状態となっている状態から、圧力板210及び可撓性部材230が右方向に徐々に変位していき、最終的に第1圧力制御室122の内容積が変位可能な限界に達するまでの間に、第1圧力制御室の圧力は徐々に上昇していく。つまり、負圧が弱まっていくことになる。
【0071】
<循環ポンプ>
次に、
図10及び
図11を参照して、上述の液体吐出ヘッド1に内蔵される循環ポンプ500の構成及び作用を詳細に説明する。
【0072】
図10は、循環ポンプ500の外観斜視図である。
図10(a)は循環ポンプ500の正面側を示す外観斜視図、
図10(b)は循環ポンプ500の背面側を示す外観斜視図である。循環ポンプ500の外殻は、ポンプ筐体505と、ポンプ筐体505に固定されたカバー507とにより構成されている。ポンプ筐体505は、筐体部本体505aと、筐体部本体505aの外面に接着固定された流路接続部材505bとにより構成されている。筐体部本体505aと流路接続部材505bとの各々には、互いに連通する一対の貫通孔が異なる2つの位置に設けられている。一方の位置に設けられた一対の貫通孔はポンプ供給孔501を形成し、他方の位置に設けられた一対の貫通孔はポンプ排出孔502を形成している。ポンプ供給孔501は、第2圧力制御室152に接続されたポンプ入口流路170に接続され、ポンプ排出孔502は、第1圧力制御室122に接続されたポンプ出口流路180に接続されている。ポンプ供給孔501から供給されたインクは、後述のポンプ室503(
図11参照)を通過してポンプ排出孔502から排出される。
【0073】
図11は、
図10(a)に示した循環ポンプ500のIX-IX線断面図である。ポンプ筐体505の内面にはダイヤフラム506が接合されており、このダイヤフラム506とポンプ筐体505の内面に形成された凹部との間にポンプ室503が形成されている。ポンプ室503は、ポンプ筐体505に形成されたポンプ供給孔501及びポンプ排出孔502に連通している。また、ポンプ供給孔501の中間部分には、逆止弁504aが設けられ、ポンプ排出孔502の中間部分には、逆止弁504bが設けられている。具体的には、逆止弁504aは、ポンプ供給孔501の中間部分に形成されている空間512aにおいて逆止弁504aの一部が図中の左方へと移動可能に配置されている。また、逆止弁504bは、ポンプ排出孔502の中間部分に形成されている空間512bにおいて逆止弁504bの一部が図中の右方へと移動可能に配置されている。
【0074】
ダイヤフラム506が変位してポンプ室503の容積が増加することでポンプ室503が減圧されると、逆止弁504aは空間512a内のポンプ供給孔501の開口から離間する(つまり、図中の左方へと移動する)。弁504aが空間512a内のポンプ供給孔501の開口から離間することで、ポンプ供給孔501におけるインクの流通を可能とする開状態となる。また、ダイヤフラム506が変位してポンプ室503の容積が減少することでポンプ室503が加圧されると、逆止弁504aはポンプ供給孔501の開口の周囲の壁面に密接して、ポンプ供給孔501におけるインクの流通を遮断する閉状態となる。
【0075】
一方、逆止弁504bは、ポンプ室503が減圧されると、ポンプ筐体505の開口の周囲の壁面に密接して、ポンプ排出孔502におけるインクの流通を遮断する閉状態となる。また、ポンプ室503が加圧されると、逆止弁504bは、ポンプ筐体505の開口から離間して空間512b側に移動し(つまり、図中の右方へと移動し)、ポンプ排出孔502におけるインクの流通を可能とする。
【0076】
尚、各逆止弁504a、504bの材質は、ポンプ室503内の圧力に応じて変形可能なものであればよく、例えば、EPDMやエラストマ等の弾性部材やポリプロピレン等のフィルムや薄板で形成することが可能である。但し、これらに限定されるものではない。
【0077】
前述のように、ポンプ室503はポンプ筐体505とダイヤフラム506との接合によって形成されている。従って、ダイヤフラム506が変形することによりポンプ室503の圧力は変化する。例えば、ダイヤフラム506がポンプ筐体505側に変位して(図中、右側に変位して)ポンプ室503の容積が減少すると、ポンプ室503内の圧力は上昇する。これによりポンプ排出孔502に対向して配置した逆止弁504bが開状態となり、ポンプ室503のインクが排出される。このとき、ポンプ供給孔501に対向して配置された逆止弁504aは、ポンプ供給孔501の周囲の壁面に密接するためポンプ室503からポンプ供給孔501へのインクの逆流は抑制される。
【0078】
また逆に、ダイヤフラム506がポンプ室503が広がる方向に変位した場合にはポンプ室503の圧力は減少する。これにより、ポンプ供給孔501に対向して配置された逆止弁504aが開状態となり、ポンプ室503にインクが供給される。このとき、ポンプ排出孔502に配置された逆止弁504bはポンプ筐体505に形成された開口の周囲の壁面に密接して当該開口を閉塞するため、ポンプ排出孔502からポンプ室503へのインクの逆流は抑制される。
【0079】
このように循環ポンプ500では、ダイヤフラム506が変形し、ポンプ室503内の圧力を変化させることにより、インクの吸引と排出を行う。この際、ポンプ室503内に泡が混入すると、ダイヤフラム506が変位しても、泡の膨張・収縮によってポンプ室503内の圧力変化が小さくなり送液量が低下する。そこでポンプ室503を重力と平行に配置してポンプ室503に混入した泡をポンプ室503の上方に集まりやすくすると共に、ポンプ排出孔502をポンプ室503の中心よりも上方に配置する。これにより、ポンプ内の泡の排出性を向上させることが可能となり、流量の安定化を図ることができる。
【0080】
<液体吐出ヘッド内のインクの流れ>
図12は、液体吐出ヘッド内のインクの流れを説明する図である。
図12を参照しつつ液体吐出ヘッド1内で行われるインクの循環について説明する。
図12(a)は記録動作を行っているときのインクの流れを模式的に示したものである。尚、図中の矢印はインクの流れを示している。本実施形態において、記録動作を行う際には外部ポンプ21及び循環ポンプ500の両方が駆動を開始する。尚、記録動作に関わらず、外部ポンプ21及び循環ポンプ500が駆動していてもよい。また、外部ポンプ21と循環ポンプ500との駆動は、連動して行われなくてもよく、別個に独立して駆動されてもよい。
【0081】
記録動作中は循環ポンプ500がONの状態(駆動状態)となっており、第1圧力制御室122から流出したインクは供給流路130及びバイパス流路160に流入する。供給流路130に流入したインクは、吐出モジュール300を通過した後、回収流路140に流入し、その後、第2圧力制御室152に供給される。
【0082】
一方、第1圧力制御室122からバイパス流路160に流入したインクは、第2バルブ室151を経て第2圧力制御室152に流入する。第2圧力制御室152に流入したインクは、ポンプ入口流路170、循環ポンプ500、及びポンプ出口流路180を通過した後、再び第1圧力制御室122に流入する。このとき、第1バルブ室121による制御圧力は、前述した式2の関係に基づいて、第1圧力制御室122の制御圧力よりも高く設定されている。従って、第1圧力制御室122内のインクは、第1バルブ室121に流れずに再度供給流路130を介して吐出モジュール300に供給される。吐出モジュール300に流入したインクは、回収流路140、第2圧力制御室152、ポンプ入口流路170、循環ポンプ500、及びポンプ出口流路180を経て、再び第1圧力制御室122に流入する。以上により液体吐出ヘッド1内で完結するインク循環が行われる。
【0083】
以上のインク循環において、吐出モジュール300内のインクの循環量(流量)は第1圧力制御室122及び第2圧力制御室152の制御圧力の差圧によって決定される。そして、この差圧は、吐出モジュール300内の吐出口近傍のインクの増粘を抑制可能な循環量となるように設定される。また、記録によって消費された分のインクは、インクタンク2からフィルタ110、第1バルブ室121を介して第1圧力制御室122に供給される。消費されたインクが供給される仕組みを、詳細に説明する。記録によって消費されたインクの分だけ循環経路内からインクが減ることで、第1圧力制御室122内のインクも減少する。第1圧力制御室122内のインクの減少に伴い、第1圧力制御室122の内容積が減少する。この第1圧力制御室122の内容積の減少により、連通口191Aが開状態となり、第1バルブ室121から第1圧力制御室122にインクが供給される。この供給されるインクには、第1バルブ室121から連通口191Aを通過する際に圧力損失が発生し、第1圧力制御室122に流入することで、正圧のインクは、負圧の状態に切り替わる。そして、第1圧力制御室122に第1バルブ室121からインクが流入することで、第1圧力制御室の内容積が増加し、連通口191Aが閉状態となる。このように、インクの消費に応じて連通口191Aは、開状態と閉状態とを繰り返すことになる。また、インクが消費されない場合には、連通口191Aは、閉状態に維持される。
【0084】
図12(b)は、記録動作が終了し、循環ポンプ500がOFFの状態(停止状態)となった直後のインクの流れを模式的に示したものである。記録動作が終了し、循環ポンプ500がOFFとなった時点では、第1圧力制御室122の圧力及び第2圧力制御室152の圧力は、いずれも記録動作中の制御圧となっている。このため、第1圧力制御室122の圧力と第2圧力制御室152の圧力との差圧に応じて、
図12(b)に示すようなインクの移動が生じる。具体的には第1圧力制御室122から供給流路130を介して吐出モジュール300に供給され、その後、回収流路140を経て第2圧力制御室152に至るインクの流れが引き続き発生する。また、第1圧力制御室122からバイパス流路160及び第2バルブ室151を経て第2圧力制御室152に至るインクの流れも引き続き発生する。
【0085】
これらのインクの流れによって第1圧力制御室122から第2圧力制御室152へ移動したインク量が、インクタンク2からフィルタ110及び第1バルブ室121を経て第1圧力制御室122に供給される。このため第1圧力制御室122内の内容量は一定に保たれる。前述した式2の関係から、第1圧力制御室122の内容量が一定の時は、バルブばね200のばね力F1、圧力調整ばね220のばね力F2、バルブ190の受圧面積S1、圧力板210の受圧面積S2は一定に保たれる。このため、第1バルブ室121の圧力(ゲージ圧)P1の変化に応じて第1圧力制御室122の圧力が決定される。よって第1バルブ室121の圧力P1の変化がない場合には、第1圧力制御室122の圧力P2は記録動作中の制御圧と同じ圧力に保たれる。
【0086】
一方、第2圧力制御室152の圧力は、第1圧力制御室122からのインクの流入に伴う内容量の変化に応じて経時的に変化する。具体的には、
図12(b)の状態から、
図12(c)に示すように、連通口191が閉状態となって第2バルブ室151と第2圧力制御室152とが非連通状態となるまでの間は、式2に従って第2圧力制御室152の圧力は変化する。その後、圧力板210とバルブシャフト190aとが非当接状態となって連通口191が閉状態となる。そして、
図12(d)に示すように、回収流路140から第2圧力制御室152へインクが流入する。このインク流入によって圧力板210及び可撓性部材230が変位し、第2圧力制御室152の内容積が最大に達するまでの間は、式4に従って第2圧力制御室152の圧力は変化する。即ち上昇する。
【0087】
尚、
図12(c)の状態になると、第1圧力制御室122からバイパス流路160及び第2バルブ室151を経て第2圧力制御室152に至るインクの流れは発生しない。従って、第1圧力制御室122内のインクが、供給流路130を介して吐出モジュール300に供給された後、回収流路140を経て第2圧力制御室152に至る流れのみが生じる。前述のように、第1圧力制御室122から第2圧力制御室152へのインクの移動は、第1圧力制御室122内の圧力と第2圧力制御室152内の圧力との差圧に応じて生じる。このため、第2圧力制御室152内の圧力が第1圧力制御室122内の圧力と等しくなるとインクの移動は停止する。
【0088】
また、第2圧力制御室152内の圧力が第1圧力制御室122内の圧力と等しくなる状態においては、第2圧力制御室152が、
図12(d)に示す状態まで拡張する。
図12(d)に示すように第2圧力制御室152が拡張した場合、第2圧力制御室152には、インクを貯留できる貯留部が形成される。尚、循環ポンプ500の停止から
図12(d)の状態に移行するまでは、流路の形状及びサイズ並びにインクの性質に応じて変わり得るが、概ね1~2分程度の時間で移行する。貯留部にインクを貯留した
図12(d)に示す状態から循環ポンプ500を駆動すると、貯留部のインクは循環ポンプ500によって第1圧力制御室122に供給される。これにより
図12(e)に示すように第1圧力制御室122のインク量は増加し、可撓性部材230及び圧力板210は拡張方向へと変位する。そして、循環ポンプ500の駆動が引き続き行われると、
図12(a)に示すように、循環経路内の状態が変化することになる。
【0089】
尚、上記説明においては、
図12(a)は、記録動作時の例として説明したが、前述したように、記録動作を伴わずにインクの循環が行われてもよい。この場合であっても、循環ポンプ500の駆動及び停止に応じて、
図12(a)~(e)に示すようなインクの流れが生じることになる。
【0090】
また上述したように、本実施形態では、第2圧力調整手段150における連通口191Bは、循環ポンプ500が駆動されてインクの循環が行われる場合に開状態になり、インクの循環が停止すると、閉状態になる例を用いるが、これに限られない。第2圧力調整手段150における連通口191Bは、循環ポンプ500が駆動されてインクの循環が行われている場合であっても、閉状態であるように制御圧力を設定してもよい。以下、具体的に説明する。第1圧力調整手段120と第2圧力調整手段とを接続するバイパス流路160は、例えば循環経路内に生じた負圧が既定値よりも強まる場合に、その影響を吐出モジュール300に及ぼさないようにするために設けられている。環境温度の変化によりインクの特性(例えば粘度)が変化すると、循環経路内の圧力損失も変化する。例えば、インクの粘性が下がると、循環経路内の圧力損失分が減少することで、循環経路内の負圧が、既定値よりも強まる場合がある。吐出モジュール300における負圧が既定値よりも強まると、吐出口13から外部の空気が循環経路内に引き込まれて吐出口13のメニスカスが破壊されてしまい、正常な吐出が行えなくなる虞がある。このため、本実施形態では、バイパス流路160を循環経路内に形成している。バイパス流路160を設けることで、負圧が既定値よりも強まる場合には、バイパス流路160にもインクが流れるため、吐出モジュール300の圧力を一定に保つことができる。従って、例えば第2圧力調整手段150における連通口191は、循環ポンプ500を駆動中の場合であっても、閉状態を維持するような制御圧力で構成してもよい。そして、既定値よりも負圧が強まる場合に、第2圧力調整手段150における連通口191が開状態となるように、第2圧力調整手段における制御圧力を設定してもよい。
【0091】
また、循環経路内の圧力変動は、吐出素子15による吐出動作によっても生じ得る。吐出動作に伴い、圧力室にインクを引き込む力が生じるからである。従って、例えば、循環ポンプ500を駆動中の場合に第2圧力調整手段150における連通口191が閉状態となるように構成されている場合であっても、吐出動作に伴い連通口191が開状態となることもある。例えば、記録デューティが高デューティの記録を続ける場合、圧力室の負圧が上昇する。圧力室の負圧が上昇すると、回収流路140側からもインクが圧力室(吐出口13)に逆流する。この逆流により第2圧力制御室152のインクが減少することで第2圧力制御室152が縮小する。この結果、第2圧力調整手段150における連通口191が開状態となる。この場合、圧力室には、供給流路130のインク及び回収流路140のインクが充填されて、吐出されることになる。尚、この記録デューティが高デューティの場合に生じるインクの逆流は、バイパス流路160を設けていることで生じる現象である。また、上記では、インクの逆流に応じて第2圧力調整手段における連通口191が開状態となる例を説明したが、第2圧力調整手段における連通口191が開状態となっている状態においてインクの逆流が生じることもある。また、第2圧力調整手段を設けない構成においても、バイパス流路160を設けていることで、上記のインクの逆流は発生し得るものである。
【0092】
<吐出ユニットの構成>
図13は、本実施形態の吐出ユニット3におけるインク1色分の循環経路を示した模式図である。
図13(a)は、吐出ユニット3を第1支持部材4側から見た分解斜視図であり、
図13(b)は、吐出ユニット3を吐出モジュール300側から見た分解斜視図である。尚、図中のIN、OUTで示した矢印はインクの流れを示しており、インクの流れは1色分のみ説明するが、他の色も同様の流れである。また、
図13では見易いように第2支持部材7と電気配線部材5との記載を省略し、以下の吐出ユニットの構成の説明においてもその省略している。また、
図13(a)における第1支持部材4については、
図5のXI-XIにおける断面を示している。吐出モジュール300は、吐出素子基板340と開口プレート330とを備えている。
図14は、開口プレート330を示した図であり、
図15は、吐出素子基板340を示した図である。
【0093】
吐出ユニット3には、循環ユニット54からジョイント部材8(
図5参照)を介してインクが供給される。インクがジョイント部材8を通過した後から、ジョイント部材8に戻るまでのインクの経路について説明する。尚、以下の図面では、ジョイント部材8の記載を省略する。
【0094】
吐出モジュール300は、吐出素子基板340と開口プレート330とを備えており、各インクの流路が連通するように重なり接合されることで吐出モジュール300となり、第1支持部材4に支持される。吐出モジュール300が第1支持部材4に支持されることで、吐出ユニット3が形成される。吐出素子基板340は、吐出口形成部材320を備えており、吐出口形成部材320は、複数の吐出口13が列を成した複数の吐出口列を備えており、吐出モジュール300内のインク流路を介して供給されたインクの一部を吐出口13から吐出する。吐出されなかったインクは、吐出モジュール300内のインク流路を介して回収される。
【0095】
図13及び
図14に示すように、開口プレート330は、複数の配列されたインク供給口311と複数の配列されたインク回収口312とを備えている。
図15及び
図16に示すように、吐出素子基板340は、複数の配列された供給接続流路323と、複数の配列された回収接続流路324とを備えている。更に吐出素子基板340は、複数の供給接続流路323と連通する個別供給流路18と、複数の回収接続流路324と連通する個別回収流路19とを備えている。吐出ユニット3内のインク流路は、第1支持部材4に設けられたインク供給流路48、インク回収流路49(
図5参照)と、吐出モジュール300に設けられた流路と、を連通させることで形成されている。支持部材供給口211は、インク供給流路48を形成している断面開口であり、支持部材回収口212は、インク回収流路49を形成している断面開口である。
【0096】
吐出ユニット3に供給されるインクは、循環ユニット54(
図5(a)参照)側から第1支持部材4のインク供給流路48(
図5(a)参照)に供給される。インク供給流路48内の支持部材供給口211を経て流れたインクは、インク供給流路48(
図5(a)参照)と開口プレート330のインク供給口311とを介して吐出素子基板340の個別供給流路18に供給され、供給接続流路323に入る。ここまでが供給側流路となる。その後、インクは、吐出口形成部材320の圧力室12(
図5(b)参照)を経て回収側流路の回収接続流路324へと流れる。圧力室12におけるインクの流れの詳細は後述する。
【0097】
回収側流路において、回収接続流路324に入ったインクは、個別回収流路19に流れる。その後、インクは、個別回収流路19から開口プレート330のインク回収口312を介して第1支持部材4のインク回収流路49に流れ、支持部材回収口212を経て、循環ユニット54に回収される。
【0098】
開口プレート330におけるインク供給口311やインク回収口312が無い領域は、第1支持部材4において支持部材供給口211及び支持部材回収口212を仕切るための領域と対応している。また、当該領域は、第1支持部材4も開口を有さない。そのような領域は、吐出モジュール300と第1支持部材4とを接着する場合の接着領域として使用される。
【0099】
図14において開口プレート330は、X方向に配列された複数の開口の列が、Y方向に複数列設けられており、供給用(IN)の開口と回収用(OUT)の開口とが、X方向に半ピッチずれるように、Y方向に交互に配列されている。
図15において吐出素子基板340は、Y方向に配列された複数の供給接続流路323と連通する個別供給流路18と、Y方向に配列された複数の回収接続流路324と連通する個別回収流路19と、がX方向に交互に配列されている。個別供給流路18、個別回収流路19はインクの種類毎に分かれており、更に、各色の吐出口列の数に応じて個別供給流路18および個別回収流路19の配置数が決まる。また、供給接続流路323および回収接続流路324も吐出口13に対応した数だけ配置される。尚、必ずしも1対1対応していなくてもよく、複数の吐出口13に対して一つの供給接続流路323および回収接続流路324が対応してもよい。
【0100】
このような開口プレート330と、吐出素子基板340とが各インクの流路が連通するように重なり接合されることで吐出モジュール300となり、第1支持部材4に支持されることで、上記のような供給流路と回収流路とを備えたインク流路が形成される。
【0101】
図16(a)から(c)は、吐出ユニット3の異なる部分におけるインク流れを示した断面図である。
図16(a)は、吐出ユニット3におけるインク供給流路48とインク供給口311とが連通した部分の断面を示しており、
図16(b)は、吐出ユニット3におけるインク回収流路49とインク回収口312とが連通した部分の断面を示している。また、
図16(c)は、インク供給口311とインク回収口312とが第1支持部材4の流路と連通していない部分の断面を示している。
【0102】
インクを供給する供給流路では、
図16(a)のように、第1支持部材4のインク供給流路48と開口プレート330のインク供給口311とが重なり連通した部分からインクが供給される。また、インクを回収する回収流路では、
図16(b)のように、第1支持部材4のインク回収流路49と開口プレート330のインク回収口312とが重なり連通した部分からインクが回収される。また、
図16(c)のように、吐出ユニット3では、部分的に開口プレート330に開口が設けられていない領域もある。そのような領域では、インクの供給や回収は成されず、
図16(a)のようにインク供給口311が設けられた領域でインクの供給が成され、
図16(b)のようにインク回収口312が設けられた領域でインクの回収が成される。尚、本実施形態では、開口プレート330を用いた構成を例に説明したが、開口プレート330を用いない形態としてもよい。例えば、インク供給流路48およびインク回収流路49に対応した流路を第1支持部材4に形成し、第1支持部材4に吐出素子基板340を接合する構成であってもよい。
【0103】
図17(a)、(b)は、吐出モジュール300における吐出口13の近傍を示した断面図であり、
図18は、比較例として個別供給流路18と個別回収流路19とをX方向に広げた構成の吐出モジュールを示した断面図である。尚、
図17、
図18における個別供給流路18、個別回収流路19内に示した太矢印は、シリアル型の液体吐出装置50を用いる形態におけるインクの揺動を示すものである。個別供給流路18、供給接続流路323を経て圧力室12に供給されたインクは、吐出素子15が駆動されることで吐出口13から吐出される。吐出素子15が駆動されない場合は、インクは、圧力室12から回収流路である回収接続流路324を経て個別回収流路19へと回収される。
【0104】
シリアル型の液体吐出装置50を用いる形態において、このように循環するインクから吐出を行う場合、インクの吐出は、少なからず液体吐出ヘッド1の走査によるインク流路内におけるインクの揺動の影響を受ける。具体的には、インク流路内のインクの揺動の影響は、インクの吐出量の違いや吐出方向のずれとなって現れることがある。
図18のように、個別供給流路18と個別回収流路19とが、走査方向であるX方向に幅広の断面形状を備えている場合、個別供給流路18、個別回収流路19内のインクは、走査方向に慣性力を受け易くなりインクに大きな揺動が生じる。その結果、インクの揺動が吐出口13からのインクの吐出に影響を及ぼす虞がある。また、個別供給流路18と個別回収流路19とをX方向に広げてしまうと、色同士の距離を広げることとなり、印刷効率が落ちる可能性がある。
【0105】
そこで、本実施形態の個別供給流路18および個別回収流路19は、
図17に示す断面において共に、Y方向に延在しているが、走査方向であるX方向に対して垂直であるZ方向にも延在する構成としている。このような構成とすることで、個別供給流路18および個別回収流路19の走査方向における各流路幅を小さくすることができる。個別供給流路18および個別回収流路19の走査方向における各流路幅を小さくすることで、走査中における個別供給流路18および個別回収流路19内のインクに作用する走査方向と反対側に働く慣性力(図中黒太矢印)によるインクの揺動を少なくしている。これによって、インクの揺動によるインクの吐出への影響を抑制することができる。また、個別供給流路18および個別回収流路19をZ方向に延在させることでの断面積を増やし、流路圧損を低減させている。
【0106】
上述の通り、個別供給流路18および個別回収流路19の走査方向における各流路幅を小さくすることで、走査時の個別供給流路18および個別回収流路19内のインクの揺動が少なくなるように構成されているが、揺動が無くなるわけではない。そこで、少なくなった揺動によってもなお生じ得るインク種類ごとの吐出に差が生じることを抑制すべく、本実施形態では、個別供給流路18と個別回収流路19とは、X方向に対して重なる位置に配置されるよう構成されている。
【0107】
前述した通り本実施形態では、供給接続流路323及び回収接続流路324は吐出口13に対応して設けられ、かつ供給接続流路323と回収接続流路324とは吐出口13を挟んでX方向に並んで配置される対応関係となっている。そのため、個別供給流路18と個別回収流路19とがX方向において重ならない部分があり、X方向における供給接続流路323と回収接続流路324との対応関係が崩れると、圧力室12におけるX方向へのインクの流れや吐出に影響を及ぼす。そこにインクの揺動の影響が加わることで、更に、吐出口毎のインクの吐出に影響を及ぼす虞がある。
【0108】
そのため、個別供給流路18と個別回収流路19とをX方向に対して重なる位置に配置することで、吐出口13が配列されるY方向におけるどの位置においても、個別供給流路18と個別回収流路19とにおける走査時のインク揺動がほぼ同等となる。その結果、圧力室12内で生じる個別供給流路18側と個別回収流路19側との圧力差が大きくばらつくことは無く、安定した吐出を行うことができる。
【0109】
また、インクを循環させる液体吐出ヘッドでは、液体吐出ヘッドへインクを供給する流路と回収する流路とが同じ流路で構成されているものもあるが、本実施形態においては、個別供給流路18と個別回収流路19とがそれぞれ別流路になっている。そして、供給接続流路323と圧力室12とが連通しており、圧力室12と回収接続流路324とが連通しており、圧力室12の吐出口13からインクが吐出される。つまり供給接続流路323と回収接続流路324とをつなぐ経路である圧力室12が、吐出口13を備えた構成となっている。そのため圧力室12には供給接続流路323側から回収接続流路324側へ流れるインク流れが発生しており、圧力室12内のインクは効率よく循環されている。圧力室12内のインクが効率よく循環されることで、吐出口13からのインクの蒸発による影響を受けやすい圧力室12のインクをフレッシュな状態に保つことができる。
【0110】
また、個別供給流路18および個別回収流路19の2つ流路が、圧力室12と連通していることで、もし高流量で吐出を行うことが必要になった場合には、両方の流路からインクを供給することも可能となる。つまり、インクの供給と回収とを1流路だけで構成する構成と比べて、本実施形態における構成は、循環を効率的に行えるだけでなく、高流量の吐出にも対応することができるというメリットがある。
【0111】
また、個別供給流路18と個別回収流路19とは、X方向において近い位置に配置された方が、よりインクの揺動による影響が生じにくい。望ましくは、流路間が75μm~100μmで構成されているとよい。
【0112】
図19は、比較例としての吐出素子基板340を示した図である。尚、
図19では、供給接続流路323と回収接続流路324との記載を省略している。個別回収流路19には、圧力室12で吐出素子15による熱エネルギーを受けたインクが流れ込むため、個別供給流路18内のインクの温度に対して、比較的温度の高いインクが流れる。このとき、比較例では、
図19の一点鎖線で囲んだα部のように、吐出素子基板340のX方向における一部分において、個別回収流路19だけが存在している部分がある。この場合、その部分で局所的に温度が高まり、吐出モジュール300内に温度ムラが生じ、吐出に影響を与える可能性がある。
【0113】
個別供給流路18には、個別回収流路19に対して比較的低い温度のインクが流れている。そのため、個別供給流路18と個別回収流路19とが隣接していると、その近傍では、個別供給流路18と個別回収流路19とで一部の温度が相殺されることから、温度上昇が抑えられる。よって、個別供給流路18と個別回収流路19とは、略同じ長さで互いにX方向において重なり合う位置に存在し、隣接していることが好ましい。
【0114】
図20(a)、(b)は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の3色のインクに対応した液体吐出ヘッド1の流路構成を示した図である。液体吐出ヘッド1には、
図20(a)のようにインクの種類ごとに循環流路が設けられている。圧力室12は、液体吐出ヘッド1の走査方向であるX方向に沿って設けられている。また、
図20(b)のように、個別供給流路18と個別回収流路19とは、吐出口13が配列された吐出口列に沿って設けられており、個別供給流路18と個別回収流路19とで吐出口列を挟むようにY方向に延在して設けられている。
【0115】
次に、本実施形態における、入力画像および記録条件によって画像形成に使用するインク、使用しないインクを決定する方法、および記録動作中の循環実施を判断する方法について説明する。これにより、画像形成で未使用となるインクのノズル内の増粘を抑制し、再度画像記録に使用する際の吐出不良を抑制することが可能となる。
【0116】
まず、記録動作中におけるノズル内インクの濃縮について説明する。記録動作が始まるとインク吐出ヘッド1に当接していたキャップ61が外され、ノズル402(
図3参照)が大気に開放される。そのため、画像形成中にノズル内のインクの水分は徐々に大気中に蒸発していき濃縮が進む。水分蒸発により濃縮されたインクは、初期状態から相対的に水以外の含有物である色材や樹脂、溶剤の比率が上がることになり、ノズル近傍にあるインクの粘度が上昇する。
【0117】
図21(a)はノズル402を大気開放して循環している状態の濃縮を表した模式図である。インクの流れを矢印で示していて、インクの濃縮度を濃さで表している。記録動作中にノズル内のインクを循環させる場合、ノズルのインク液面(メニスカス)から水分蒸発が進むと、表層部分はインクが濃縮される。しかしながら、その奥側は循環によりインクが流れているため濃縮していない状態のインクが供給され続ける。表層部分は循環の流速が小さく滞留するインクがあるため、時間経過と共に表層の濃縮インクの蒸発がさらに進む。しかし、下層を流れる非濃縮インクと境界部で混ざり合いながら水分が供給されるため、表層部のインクから完全に水分が失われる訳では無い。そのため、ノズルのヒータ駆動により下層部の非濃縮インクが発泡すると、そのエネルギーにより表層部の濃縮したインクはノズル外に吐出される。非吐出状態で長時間循環のみ行われると、表層部のインクの濃縮が進んだ状態で吐出されることになり、その粘度上昇の影響により、吐出速度の低下や、吐出方向の曲がりなどの吐出不良が起こり得る。そのような場合、画像形成領域外で微量の予備吐出をすることで、表層の濃縮したインクを排出し、吐出性能を回復することが可能である。
【0118】
循環流路内のインクは、ノズル近傍で濃縮されたインクと一部混ざり合いながら循環流路を流れる間に均一化され、徐々に水分比率が減少し濃縮が進んでいく。
図22は記録動作中の循環流路内インクの水分蒸発率の推移を示したグラフである。水分蒸発率が高いほど、インクの濃縮が進んでいることを表している。濃縮の速度はノズルからの水分蒸発速度だけでなく、ノズルの開口面積やノズルの数、循環の流速、循環流路のインク容量にも依存する。特に記録動作中はノズル近傍をヒータで一定の温度に温めることでインク粘度を下げて吐出特性を安定化させるため、ノズル内の温まったインクの蒸発速度はそうで無い場合と比較して速くなる。
【0119】
画像形成でインクを使用する場合は、ノズルから吐出した分のインクが新たに液体吐出ヘッド1に供給されるため、
図22の点線で示すグラフのように、インクの濃縮度はインクの消費速度と循環流路内の水分蒸発速度が均衡するところで飽和する。しかしながら、画像形成に未使用のインクである場合、
図22の実線で示すグラフのように、微量の予備吐出をする程度では循環流路内のインクの濃縮速度を抑制することはできず、循環流路内のインク濃度は経過時間と共に大きく上昇していくことになる。
【0120】
循環流路内のインク濃縮度が上昇していくと、粘度上昇による吐出特性の悪化や色材の濃度上昇による色変動により画像形成に影響が生じる。その場合、濃縮したインクを排出して新しいインクを供給し、循環流路内のインクを均一化することで循環流路内のインク濃縮度を下げる必要がある。よって、インクの濃縮度が許容範囲を超える場合は、該当するインクのノズルからキャップ61を用いてインクを吸引する、あるいはノズルからインクを吐出させることで、新たなインクを循環流路内に入れて濃縮度を低下させる。
【0121】
図22の実線で示した画像形成に使用していないインクの例では、水分蒸発率が10%以上になると排出動作を行ってインクの濃縮度を下げるように排出動作を行う制御を行っている。なお、この動作において全ての濃縮したインクを排出する必要は無く、吐出特性や画像形成に影響しない範囲まで濃縮度が低下するのに十分な排出量であればよい。本実施形態の液体吐出ヘッド1では約10mlの循環流路内容量であるため、5ml以上を濃縮度低下時に排出する量と設定する。
図23のグラフで(a)にその消費量を示す。
【0122】
一方、記録動作中にノズル内のインクを循環させない場合、記録動作中はノズル内のインクから水分が徐々に蒸発していくが、循環流路内のインクは移動しないため、ノズルに近いほどインクが濃縮された状態になる。
図21(b)がノズルを大気開放した状態で循環させていない状態のインク濃縮状態を表した模式図である。大気開放されている時間が短く、ノズル内インクの濃縮度が小さい状態であれば吐出により濃縮したインクを排出することは可能である。しかし、長時間大気開放されノズル内インクの濃縮度が大きい場合は、ノズル内のインク全体の粘度が上昇し、ヒータ駆動により吐出しようとしても濃縮したインクを排出するのに十分な発泡エネルギーが発生しない状態になり得る。しかしながら、ノズルから離れた位置のインクはノズル近傍の蒸発影響は微小であり、循環流路全体で見たときの水分蒸発率は小さい。
【0123】
図21(b)に示した濃縮状態の例では、インクの濃縮が進んでいるのは流入口421と流出口422までであり、共通流路431より奥側のインクは濃縮が進んでいない状態である。そのため、未使用インクが濃縮により吐出できない状態になった場合には、キャップ61による吸引動作によりノズル近傍の濃縮インクを吸い出すことで、微量のインク消費のみで吐出性能を回復することができる。
【0124】
ノズル周囲の流路および共通流路431の体積は約20μlであるが、本実施形態ではキャップで安定的に吸引するため、0.5ml程度の吸引量とし、
図23の(b)にその消費量を示している。また、循環流路内の濃縮度は低い状態を維持していることになる。もし吸引動作で濃縮インクが完全に除去できなかったとしても、循環できる状態まで回復できていれば、残留していた微小な濃縮インクは循環流路内のインクに均一化される。そのため、循環流路内のインクに対する濃縮度の影響は小さく、吐出特性や画像形成への影響も抑制される。
【0125】
ところが、温度が上昇する場合にノズル内インクを循環させないと、水分蒸発速度が速く濃縮が進みやすいだけでなく、温度影響によるインク物性の変化が発生する可能性がある。例えば、濃縮したインク内の顔料や樹脂の凝集が進むことで、ノズル内の固形分が分離した状態になり、その塊が大きくなることでノズルを塞いでしまうことが起こり得る。これを防止するには、固形分の凝集が始まる前にノズル内のインクを排出するか、循環によりノズル内の濃縮を抑制する必要がある。濃縮が進んだ状態での吐出によるインクの排出は難しく、キャップによる吸引では他のノズルも合わせて排出するためインク消費量が大きくなる。よって、ノズル内インクを循環可能な本実施形態の構成においては、記録動作中に温度が上昇する条件でインクを循環させるのが好適である。
【0126】
以上のことから、記録動作中に温度が上昇する可能性があるインクでは、ノズル内の循環を継続する必要がある。よって、記録動作中に使用するインクだけでなく、その同一チップ内にあるインクは循環させることで、インク物性変化の弊害を抑制する。また、温度上昇する可能性が無いインクは可能な限り循環させず、使用再開する際にノズル内の濃縮インクを吸引することで廃棄するインク量を抑制しつつ、循環流路内のインク濃縮を抑制することが可能となる。
【0127】
本実施形態では、記録動作中に各インクに対して循環を実施するかどうかを記録条件によって判断する例を示す。
【0128】
図24は、入力画像データの記録条件に対する画像形成に使用するインクの対応を示す表である。表の「●」印がある記録品位のインクは画像形成で使用し、それ以外は不使用であることを示す。また、「△」印があるインクは画像形成では使用しないが、循環をさせる必要があるインクであることを示している。
【0129】
図24に示すように、タックシートやフィルムなど非吸収性の記録媒体においては、記録媒体上に着弾したカラーインクの水分や溶剤が記録媒体内に吸収されない。そのため、インクの付与量が多くなると、記録媒体とインク間の表面張力では移動を抑制しきれず滲みが発生してしまう。そのため、非吸収性の記録媒体では、インクと反応させることで粘度上昇を起こし移動を抑制するプライマーを使用する。一方で、インクジェット用紙のようにインク受容層が記録媒体の表面に形成されているような記録媒体の場合は、水分や溶剤が受容層内に吸収されるため、プライマーを使用する必要がない。
【0130】
また、画像の記録速度を重視する記録モードにおいては、入力画像データからインク色ごとの記録データを生成する処理量を抑制して記録速度の低下を防止するため、基本色であるシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のみを使用する。一方、画質を重視する記録モードにおいては、発色性の向上や粒状感の低減のため、淡インクのライトシアン、ライトマゼンタ、グレーや、特色のグリーン、オレンジを使用する。その中間の記録モードでは、例えば基本色とライトシアン、ライトマゼンタを使用するインクとして選択する。
【0131】
なお、本実施形態のインク構成では、淡色のグレーや特色のグリーン、オレンジを用いる構成としている。しかし、他の特色としてレッド、ブルー、バイオレットを用いても良く、光沢制御に使用するクリアインク、透明フィルムなどで白表現に使用する白インクを用いても良い。また、各ヘッドのインク色の割り当てや並び順も、本実施形態で示すものに限るものでは無い。また、本実施形態では、印字モードに対応して使用するインクを選択する構成を例として挙げているが、画像データがインクに対応したデータとして入力される形式の場合は、そのデータ有無によって使用するインクを判断してもよい。
【0132】
以上のようにして選択された使用インクに対して、チップ403ごとにインク使用の有無を判定する。基本色はどの記録条件においても使用するため、液体吐出ヘッド110の2つのチップ403は常に使用することになる。プライマーのみを使用する液体吐出ヘッド111Lのチップ403はインクジェット用紙では使用せず、それ以外の記録媒体では使用する。液体吐出ヘッド111Rは高画質の記録モードのみ使用することになる。
【0133】
【0134】
図25において、まず、ステップS1101で画像形成に使用するインクであるか否かを判断し、ステップS1102で不使用であると判断されたインクの中で、同一チップで使用するインクがあるかを判定する。ステップS1101とS1102で使用すると判定されたインクはステップS1105で循環ポンプを駆動する。また、本実施形態おいて循環させない状態でキャップを開けてノズル内インクの濃縮が進行している時間を計測するタイマTcを用意する。なお、循環ポンプを駆動している間は、タイマTcは0とする。例えば、以前の記録動作で不使用であり循環していないインクでは、記録動作開始時点でタイマが0でないケースが有り得る。その場合、再度画像形成で使用する際は循環させ、ノズル内の濃縮インクが除去されるため、ステップS1106でタイマTcをリセットする。
【0135】
一方、画像形成に使用せず、同一チップに使用色が無いインクに対しては、循環ポンプを駆動せず、ステップS1103においてタイマTcは初期化せずに現在のカウント値に累積加算する。これは、複数回の記録動作を行う場合に全ての記録動作で循環を実施しないことが選択されると、循環されることなくノズル内のインクは濃縮されたままとなるためである。なお、タイマTcはキャップ吸引による回復動作が実施され、ノズル内の増粘インクが排出された場合にもリセットを行う。
【0136】
以上のようにして記録動作中の循環を行うか否かを判定するが、最後に記録動作中に循環していたか否かに基づいて、次回の記録動作開始前に必要な回復処理に対するフラグ処理を行う。
【0137】
記録動作中に循環していない場合、長時間循環せずにノズル内の濃縮が進んだ場合は吸引による濃縮インクの排出が必要である。そのため、ステップS1104で吸引動作の実施判定フラグをONにする。一方、記録動作中に循環している場合、循環流路内のインクの濃縮が進んだ場合に、濃縮インクを排出するための吐出動作を行う必要がある。そのため、ステップS1107で濃縮解消フラグをONにする。
【0138】
以上のようにして記録動作中の循環とその後の回復動作フラグを設定した後、記録動作を実行する。記録動作終了後は再度キャップによりノズルを覆うことでノズル内インクの乾燥を防止して本体動作を休止する。
【0139】
記録動作中に循環流路内やノズル内のインクの濃縮が進んでいるが、次の記録画像データや記録条件によって使用する色が異なるため、本実施形態では、記録動作開始時に濃縮インクの回復処理を実施する。もし同じインクのみ使用する場合、画像形成に使用しないインクの回復処理をスキップできる可能性があるため、記録動作間の回復動作時間を短縮する効果が得られる。
【0140】
次に、
図26は、本実施形態での記録動作開始前の回復処理の判定、および回復動作を示したフローチャートある。
【0141】
まず、ステップS1201で画像形成に使用する色か否かを判断する。判断方法は上述の通りである。ここで、使用しないと判断されたインクに対しては、画像形成で使用しないため、循環流路内のインクが濃縮していても、濃縮したインクが循環できない状態であっても画像には影響しない。ただし、ノズル内インクの濃縮が固形分の凝集が進んで吸引による除去ができない状態にならないようにする必要がある。そのため、ステップS1202において、タイマTcのカウント時間が吸引による回復が必要な時間の閾値T0よりも長い場合、吸引動作を実行し、ノズル内の濃縮インクを除去する。なお、T0は濃縮時の粘度上昇がインクに依って異なるため、インクによって異なる閾値を設定しても良い。吸引動作を実行した後は、ノズル内の濃縮インクが除去されるため、タイマTcはリセットする。
【0142】
ステップS1201で画像形成に使用する色であると判定された場合、続いてステップS1211で吸引判定フラグをチェックする。前回の記録動作で吸引判定フラグがONになっている場合は、ノズル内のインクが循環されず濃縮している可能性がある。そのため、ノズルが大気開放された状態で経過した時間から画像形成に影響する濃縮度になっていると予測される場合は、吸引により濃縮インクを除去する。具体的には、ステップS1212においてタイマTcが閾値T1よりも長いか否かを比較し、閾値を超えている場合は吸引動作を実行する。
【0143】
閾値T1は画像影響、すなわちインクの濃度や吐出性能に影響する濃縮度の閾値であるため、固形分の凝集物が発生するかを判断する閾値T0よりも短い時間が設定される。また、T1はインクによって濃縮による画像影響度が異なるため、インクによって異なる閾値を設定しても良い。吸引動作実行後は、ステップS1214でタイマTcをリセットする。
【0144】
ステップS1212で閾値を超えていないと判断された場合は、ノズル内のインク濃縮は進んでおらず、画像形成への影響が無い状態であるため、吸引動作は実行しない。なお、吸引判定フラグONの条件では、前回の記録動作でノズル内のインクを循環していないため、循環流路全体のインクは濃縮が進まず、循環流路内インクの濃縮を解消する必要がない。よって、濃縮解消動作は実行しない。
【0145】
ステップS1211で吸引判定フラグがOFFである場合、続いてステップS1221で濃縮解消フラグのチェックを行う。前回の記録動作で濃縮解消フラグがONになっている場合は、ノズル内のインクを循環させているため、循環流路全体の濃縮が進んでいる可能性がある。そのため、ステップS1222において、インクの濃縮度が画像形成に影響する濃縮度の閾値Dthを超えているかを判定する。具体的には、ノズルからの水分蒸発による濃縮とインク消費に伴い新しいインクと混ざることに依る濃縮解消から予測される濃縮度Dhを閾値Dthと比較する。本実施形態では、例えばDth=10%と設定する。濃縮度Dh>閾値Dthである場合、ステップS1223で濃縮インクを排出するための吐出動作を行う。濃縮度Dh≦閾値Dthである場合は、濃縮を解消する必要がないため、濃縮解消動作は実施せず、記録動作前の回復処理を終了する。
【0146】
以上説明したように、本実施形態では、画像形成で不使用となるインクの記録動作中の循環要否を判断し、ノズル内、および循環流路内の濃縮状態に基づいて適宜排出させる。これにより、未使用だったインクを再度画像形成に使用する場合においても、画質劣化が発生するような濃度変動や吐出不良が発生しない状態を維持することが可能となる。
【0147】
本明細書の開示は、以下の記録装置、方法、プログラムおよび記憶媒体を含む。
【0148】
(項目1)
複数種類のインクをそれぞれ吐出する複数の吐出口と、前記複数の吐出口と前記複数種類のインクをそれぞれ収容する複数の液室との間でインクを循環させるための複数の循環経路と、を備えるインク吐出ヘッドと、
前記複数の循環経路においてインクを循環させる循環手段と、
記録データに基づいて、前記循環手段により、前記複数の循環経路のうちのいずれの循環経路においてインクを循環させるかを制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする記録装置。
【0149】
(項目2)
前記記録データに基づいて、記録に使用するインクを選択する選択手段をさらに備え、前記制御手段は、前記選択手段により選択されたインクに応じて、前記複数の循環経路のうちのいずれの循環経路においてインクを循環させるかを制御することを特徴とする項目1に記載の記録装置。
【0150】
(項目3)
前記制御手段は、前記選択手段により選択されたインクに対応する循環経路においてインクを循環させるように、前記循環手段を制御することを特徴とする項目2に記載の記録装置。
【0151】
(項目4)
前記インク吐出ヘッドは、前記複数の吐出口が分けて配列された複数のチップを有し、前記制御手段は、前記記録に使用するインクの吐出口と同じチップに吐出口が配置されたインクに対応する循環経路においてインクを循環させるように、前記循環手段を制御することを特徴とする項目3に記載の記録装置。
【0152】
(項目5)
前記記録装置の記録動作中に、インクの循環が行われない循環経路の経過時間を計測する計測手段をさらに備えることを特徴とする項目1乃至4のいずれか1項目に記載の記録装置。
【0153】
(項目6)
前記吐出口からインクを吸引する吸引手段をさらに備え、前記制御手段は、前記経過時間が第1の閾値を超えた場合に、前記インクの循環が行われていない循環経路に対応するインクを前記吐出口から吸引するように前記吸引手段を制御することを特徴とする項目5に記載の記録装置。
【0154】
(項目7)
前記吸引手段による吸引は、次の記録動作が開始される前に実行されることを特徴とする項目6に記載の記録装置。
【0155】
(項目8)
前記吸引手段は、前記吐出口を覆うキャップと、キャップの内部を負圧にするポンプとを備えることを特徴とする項目6または7に記載の記録装置。
【0156】
(項目9)
前記循環手段により循環が行われるインクの前記循環経路内の濃縮度を予測する予測手段をさらに備えることを特徴とする項目1乃至8のいずれか1項目に記載の記録装置。
【0157】
(項目10)
前記制御手段は、前記濃縮度が第2の閾値より大きくなった場合に、インクを前記吐出口から吐出させるように制御することを特徴とする項目9に記載の記録装置。
【0158】
(項目11)
前記吐出口からのインクの吐出は、次の記録動作が開始される前に実行されることを特徴とする項目10に記載の記録装置。
【0159】
(項目12)
前記制御手段は、前の記録動作において使用されず、記録動作中に循環が行われていない時間が第3の閾値を超えるインクについて、次の記録動作が開始される前にインクの排出動作を実行するように制御することを特徴とする項目1乃至11のいずれか1項目に記載の記録装置。
【0160】
(項目13)
複数種類のインクをそれぞれ吐出する複数の吐出口と、前記複数の吐出口と前記複数種類のインクをそれぞれ収容する複数の液室との間でインクを循環させるための複数の循環経路と、を有するインク吐出ヘッドを備える記録装置を制御する方法であって、
前記複数の循環経路においてインクを循環させる循環工程と、
記録データに基づいて、前記循環工程において、前記複数の循環経路のうちのいずれの循環経路においてインクを循環させるかを制御する制御工程と、
を有することを特徴とする記録装置の制御方法。
【0161】
(項目14)
項目13に記載の制御方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【0162】
(項目15)
項目13に記載の制御方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶したコンピュータが読み取り可能な記憶媒体。
【0163】
(他の実施形態)
また本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現できる。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現できる。
【0164】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0165】
110:液体吐出ヘッド、23:回復ユニット、54:循環ユニット、61:キャップ、402:ノズル