(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178814
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】放射線撮像装置、放射線撮像システムおよび放射線撮像装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01T 7/00 20060101AFI20241218BHJP
【FI】
G01T7/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097243
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮下 魁人
(72)【発明者】
【氏名】権田 貴昭
(72)【発明者】
【氏名】保科 智啓
(72)【発明者】
【氏名】木田 曉
【テーマコード(参考)】
2G188
【Fターム(参考)】
2G188AA03
2G188BB02
2G188BB04
2G188BB05
2G188BB06
2G188CC22
2G188CC30
2G188DD11
2G188DD12
2G188DD42
2G188DD44
(57)【要約】
【課題】画質の低下を抑制するのに有利な技術を提供する。
【解決手段】画素アレイおよび電気接続部が配された第1面および前記第1面とは反対側の第2面を備えるセンサパネルと、前記電気接続部に接続された配線部材と、第1支持部材および第2支持部材を介して前記第2面を支持する支持基台と、を含む放射線撮像装置であって、前記第1面に対する正射影において、前記画素アレイに重なるように配された前記第1支持部材が配されている領域と前記センサパネルの外縁との間に、前記電気接続部が配され、かつ、前記電気接続部に重なるように、前記第2支持部材が配されており、前記第2支持部材は、前記第2面、前記支持基台および前記第1支持部材のうち少なくとも1つに対して固定され、前記第2面と前記支持基台との間には、前記第1面に対する正射影において前記第2支持部材に重ならずに、前記第1支持部材から前記外縁に達する通路が配されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素アレイおよび電気接続部が配された第1面および前記第1面とは反対側の第2面を備えるセンサパネルと、前記電気接続部に接続された配線部材と、第1支持部材および第2支持部材を介して前記第2面を支持する支持基台と、を含む放射線撮像装置であって、
前記第1面に対する正射影において、前記画素アレイに重なるように配された前記第1支持部材が配されている領域と前記センサパネルの外縁との間に、前記電気接続部が配され、かつ、前記電気接続部に重なるように、前記第2支持部材が配されており、
前記第2支持部材は、前記第2面、前記支持基台および前記第1支持部材のうち少なくとも1つに対して固定され、
前記第2面と前記支持基台との間には、前記第1面に対する正射影において前記第2支持部材に重ならずに、前記第1支持部材から前記外縁に達する通路が配されていることを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項2】
前記電気接続部に前記第1面から前記第2面に向かう方向に0.5MPaの圧力を印加した際に、前記外縁の変位量が、前記センサパネルの厚さ以下であることを特徴とする請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項3】
前記電気接続部に前記第1面から前記第2面に向かう方向に0.5MPaの圧力を印加した際に、前記外縁の変位量が、100μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項4】
前記第2支持部材の弾性率が、前記第1支持部材の弾性率以上であることを特徴とする請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項5】
前記第2支持部材を含む複数の第2支持部材が配されていることを特徴とする請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項6】
前記外縁のうち1つの辺に沿って、前記複数の第2支持部材のうち少なくとも2つの第2支持部材が断続的に配されていることを特徴とする請求項5に記載の放射線撮像装置。
【請求項7】
前記第1面に対する正射影において、前記複数の第2支持部材が、前記画素アレイを取り囲むように断続的に配されていることを特徴とする請求項5に記載の放射線撮像装置。
【請求項8】
前記第1面には、前記電気接続部を含む複数の電気接続部が配され、
前記複数の第2支持部材は、2つ以上の前記電気接続部を支持する1つの第2支持部材を含むことを特徴とする請求項5に記載の放射線撮像装置。
【請求項9】
前記第1面には、前記電気接続部を含む複数の電気接続部が配され、
前記第2支持部材が、前記複数の電気接続部のうち2つ以上の電気接続部を支持することを特徴とする請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項10】
前記第1面に対する正射影において、前記複数の電気接続部は、前記第2支持部材に重ならない位置に配された電気接続部を含むことを特徴とする請求項8に記載の放射線撮像装置。
【請求項11】
前記配線部材に、前記画素アレイを動作させるための回路が配されていることを特徴とする請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項12】
前記第1面を覆うようにシンチレータが配されていることを特徴とする請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか1項に記載の放射線撮像装置と、
前記放射線撮像装置から出力される信号を処理する処理装置と、
を備えることを特徴とする放射線撮像システム。
【請求項14】
画素アレイおよび電気接続部が配された第1面および前記第1面とは反対側の第2面を備えるセンサパネルを準備する第1工程と、
第1支持部材を介して前記第2面を支持する支持基台に前記センサパネルを固定する第2工程と、を含む放射線撮像装置の製造方法であって、
前記第1面に対する正射影において、前記画素アレイと重なるように配された前記第1支持部材が配されている領域と前記センサパネルの外縁との間に、前記電気接続部が配されており、
前記第2面と前記支持基台との間に、前記電気接続部を支持するために、前記電気接続部に重なるように第2支持部材を配する第3工程と、
前記電気接続部に配線部材を接続する第4工程と、
をさらに含み、
前記第2支持部材は、前記第2面、前記支持基台および前記第1支持部材のうち少なくとも1つに対して固定され、
前記第2面と前記支持基台との間には、前記第1面に対する正射影において前記第2支持部材に重ならずに、前記第1支持部材から前記外縁に達する通路が配されていることを特徴とする製造方法。
【請求項15】
前記第3工程の後に前記第4工程が行われ、
前記第1工程において、前記電気接続部には、前記配線部材とは別の配線部材が接続されており、
前記第2工程と前記第3工程との間に、前記別の配線部材を前記電気接続部から取り外す第5工程をさらに含むことを特徴とする請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記第2工程と前記第5工程との間に、前記放射線撮像装置を検査する第6工程をさらに含み、
前記第6工程の結果に基づいて、前記別の配線部材が取り外されることを特徴とする請求項15に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮像装置、放射線撮像システムおよび放射線撮像装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、画素アレイおよび画素アレイから信号を外部に読み出すための配線部材が接続される電気接続部が配されたセンサパネルを備える放射線検出装置が示されている。特許文献1によれば、電気接続部が枠状の支持部材で支持されることによって、配線部材を電気接続部に圧着する際にセンサパネルが破損、変形してしまうことが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示される構成において、環境温度が変化すると、枠状の支持部材、センサパネルおよび支持基板によって囲まれる空間と外部空間との間に気圧差が生じる可能性がある。気圧差によってセンサパネルに歪みが生じた場合、センサパネルによって得られる画像にアーチファクトが発生する可能性がある。
【0005】
本発明は、画質の低下を抑制するのに有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑みて、本発明の実施形態に係る放射線撮像装置は、画素アレイおよび電気接続部が配された第1面および前記第1面とは反対側の第2面を備えるセンサパネルと、前記電気接続部に接続された配線部材と、第1支持部材および第2支持部材を介して前記第2面を支持する支持基台と、を含む放射線撮像装置であって、前記第1面に対する正射影において、前記画素アレイに重なるように配された前記第1支持部材が配されている領域と前記センサパネルの外縁との間に、前記電気接続部が配され、かつ、前記電気接続部に重なるように、前記第2支持部材が配されており、前記第2支持部材は、前記第2面、前記支持基台および前記第1支持部材のうち少なくとも1つに対して固定され、前記第2面と前記支持基台との間には、前記第1面に対する正射影において前記第2支持部材に重ならずに、前記第1支持部材から前記外縁に達する通路が配されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、画質の低下を抑制するのに有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態の放射線撮像装置を含む放射線撮影システムの構成例を示す図。
【
図2】本実施形態の放射線撮像装置の構成例を示す図。
【
図3】本実施形態の放射線撮像装置の構成例を示す図。
【
図4】本実施形態の放射線撮像装置の構成例を示す図。
【
図5】本実施形態の放射線撮像装置の構成例を示す図。
【
図6】本実施形態の放射線撮像装置の構成例を示す図。
【
図7】本実施形態の放射線撮像装置の製造方法の例を示す図。
【
図8】本実施形態の放射線撮像装置の製造方法の例を示す図。
【
図9】本実施形態の放射線撮像装置の製造方法の例を示す図。
【
図10】本実施形態の放射線撮像装置の製造方法の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
また、本開示における放射線には、放射線崩壊によって放出される粒子(光子を含む)の作るビームであるα線、β線、γ線などの他に、同程度以上のエネルギを有するビーム、例えばX線や粒子線、宇宙線なども含みうる。
【0011】
図1~
図10(a)、10(b)を参照して、本開示の実施形態による放射線撮像装置について説明する。
図1は、本実施形態の放射線撮像装置150を用いた放射線撮像システムSYSの構成例を示す概略図である。放射線撮像システムSYSは、放射線撮像装置150、放射線発生装置152、処理装置153を含みうる。放射線撮像装置150および放射線発生装置152は、処理装置153に接続されている。処理装置153による制御に従って放射線発生装置152から放射線が照射される。放射線撮像装置150は、放射線発生装置152から照射され、被検者151を透過した放射線を検出する。放射線撮像装置150は、検出された放射線の情報を信号として処理装置153に送信し、処理装置153は、所望の演算処理を行う。処理装置153は、放射線撮像装置150によって検出された放射線の情報から、例えば、診断を行うための放射線画像を生成する。
図1では、放射線撮像装置150と処理装置153との間、および、放射線発生装置152と処理装置153との間は、それぞれ有線接続されているように図示されているが、これに限られることはなく、無線接続されていてもよい。
【0012】
図2(a)~2(c)は、本実施形態による放射線撮像装置150の構成例を示す概略図である。
図2(a)は、放射線撮像装置150の平面図である。
図2(b)は、
図2(a)に示されるA-A’間における断面図である。
図2(c)は、
図2(a)に示されるB-B’間における断面図である。
【0013】
放射線撮像装置150は、センサパネル100、配線部材110、支持基台300を含む。センサパネル100は、画素アレイ102および電気接続部111が配された面131および面131とは反対側の面132を備える。支持基台300は、支持部材301および支持部材401を介してセンサパネル100の面132を支持している。センサパネル100は、シリコンなどの半導体やガラス、プラスティックなどの基板101を備える。センサパネル100(基板101)の面131に、画素アレイ102が配されている。画素アレイ102には、放射線または光を電気信号に変換する変換素子とTFTなどのスイッチ素子とを含み構成された画素が、例えば、2次元状に配されている。
【0014】
画素アレイ102に配された変換素子には、放射線を直接電気信号に変換するアモルファスセレン(a-Se)などが用いられてもよい。また、例えば、画素アレイ102に配された変換素子には、
図2(b)に示されるように、シンチレータ200と、シンチレータ200によって放射線から変換された光を電気信号に変換するフォトダイオードやフォトコンデンサなどのフォトセンサ(光電変換素子)と、の組み合わせが用いられてもよい。光電変換素子には、アモルファスシリコンなどの半導体や、IGZOなどの酸化物半導体などによって構成されうる。
【0015】
電気接続部111は、センサパネル100の面131において、画素アレイ102の周辺に配されている。より具体的には、電気接続部111は、センサパネル100の面131に対する正射影において、画素アレイ102を支持する支持部材301が配されている領域とセンサパネル100の外縁133との間に配されている。センサパネル100の面131に配された電気接続部111には、配線部材110が接続されている。配線部材110および電気接続部111を介して、画素アレイ102を動作させるための信号や電力が供給され、画素アレイ102で生成された信号がセンサパネル100から外部へ出力される。
【0016】
配線部材110は、画素アレイ102の外側に位置し、上述のように、画素アレイ102と電気的に接続されている。本実施形態において、センサパネル100の面131には複数の電気接続部111が配され、それぞれの電気接続部111に対応するように複数の配線部材110が配されている。
図2(a)に示されるように、矩形状の画素アレイ102の4つの辺のそれぞれに電気接続部111および配線部材110が配されていてもよい。しかしながら、それに限られることはなく、電気接続部111および配線部材110は1つの辺のみに配されてもよいし、隣接または対向する2つの辺に配されてもよいし、3つの辺に配されてもよい。また、センサパネル100に配された電気接続部111のすべてに配線部材110が接続されていてもよい。しかしながら、センサパネル100の設計などに応じて、配線部材110が接続されていない電気接続部111が存在していてもよい。
【0017】
図2(a)~2(c)に示される例では、1枚のセンサチップによってセンサパネル100が構成されている。しかしながら、それに限られることはなく、複数のセンサチップによってセンサパネル100が構成されていてもよい。また、画素アレイ102は、酸化シリコンや窒化シリコンなどの無機膜を用いた保護層によって被覆されていてもよい。さらに、保護層の上にポリイミドなどの有機膜を用いたパッシベーション膜が配され、センサパネル100の表面が平坦化されていてもよい。
【0018】
配線部材110には、フレキシブル基板などが用いられうる。配線部材110は、例えばセンサパネル100の面132に配された、画素アレイ102を動作させるための電気回路が配された回路基板(不図示)に接続される。回路基板には、所望の回路を備える半導体チップが搭載されたプリント配線板などが用いられる。また、配線部材110に、画素アレイ102を動作させるための回路113が配されていてもよい。回路113は、例えば、画素アレイ102を駆動するための駆動回路や、画素アレイ102から読み出された電気信号の増幅など信号処理を行う信号処理回路を含みうる。配線部材110は、異方性導電フィルムなどの接合部材112(
図8に示される)によってセンサパネル100の面131に配された電気接続部111に接合され、画素アレイ102と電気的に接続される。
【0019】
本実施形態において、上述したように、変換素子の一部としてシンチレータ200が配されている。シンチレータ200は、複数の光電変換素子によって共用されうる。シンチレータ200は、センサパネル100の面131に配された画素アレイ102を覆うように、センサパネル100の面131の上に配される。しかしながら、それに限られることはなく、基板101が透明である場合など、
図3(a)、3(b)に示される構成のように、センサパネル100の面132の上にも配されていてもよい。センサパネル100の面131に対する正射影において、シンチレータ200は、センサパネル100の面131(および面132)上において、画素アレイ102を覆う位置に配される。
【0020】
シンチレータ200は、放射線撮像装置150に入射した放射線を画素アレイ102に配された光電変換素子が検出可能な波長の光(例えば、可視光)に変換する。シンチレータ200に、例えば、ヨウ化セシウム(CsI)にタリウム(Tl)をドープしたCsI:Tlに代表されるハロゲン化アルカリ系の材料が用いられてもよい。または、シンチレータ200に、金属酸硫化物(例えば、Gd2O2S)の母体に、発光中心としてテルビウムやユーロピウムといった3価の希土類を微量ドープした粉末蛍光体(GOSとも呼ばれうる)が用いられてもよい。上述のように、画素アレイ102に配された変換素子が放射線を直接電気信号に変換する場合には、シンチレータ200は省略される。
【0021】
シンチレータ200のセンサパネル100に接していない面は、シンチレータ保護層201で覆われていてもよい。シンチレータ保護層201は、シンチレータ200が吸湿することによって発光量や鮮鋭度が低下してしまうことを抑制するために配される。シンチレータ保護層201は、透湿性が低い樹脂や透湿性が低いシートを接着剤や粘着剤などの接合層を介してシンチレータ200の表面に貼り合わせることによって形成されうる。透湿性が低い樹脂として、ポリパラキシリレンやポリ塩化ビニリデンなどの塩素系樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレンやポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂が挙げられる。透湿性が低いシートとして、樹脂のシートの他に、アルミや銀、銅などの金属箔が挙げられる。
図2(b)、
図3(a)に示される構成では、粘着剤を用いてアルミシートをシンチレータ200に貼り合わせることによってシンチレータ保護層201が形成されている。
【0022】
支持部材301は、センサパネル100の面131に対する正射影において、画素アレイ102に重なるように配されている。
図2(b)に示されるように、画素アレイ102と支持部材301とは、同じ大きさであってもよい。支持部材301は、基板101のうち少なくとも画素アレイ102を含む領域を、センサパネル100の面132側から支持するための部材である。換言すると、支持基台300は、支持部材301を介してセンサパネル100の面132側から画素アレイ102を支持するともいえる。支持基台300には、ステンレス、アルミニウム、モリブデンなどの金属材料やガラス、セラミックなどが用いられうる。支持部材301は、支持基台300とセンサパネル100とを接合するための部材でもありうる。
【0023】
支持部材401は、センサパネル100に配された電気接続部111のうち少なくとも1つの電気接続部に重なるように配されている。支持部材401は、支持部材301が配されていない領域において、センサパネル100を面132側から支持する。支持部材401は、センサパネル100の面132、支持基台300および支持部材301のうち少なくとも1つに対して固定されている。
【0024】
図2(a)に示されるように、複数の支持部材401が配されていてもよい。例えば、センサパネル100の面131に対する正射影において、複数の支持部材401が、画素アレイ102を取り囲むように断続的に配されていてもよい。何れの場合においても、センサパネル100の面132と支持基台300との間には、センサパネル100の面131に対する正射影において支持部材301に重ならずに、支持部材301からセンサパネル100の外縁133に達する通路140が配されている。つまり、
図2(a)に示されるように、支持部材401が画素アレイ102を取り囲むように配されていた場合であっても、支持部材401が連続して画素アレイ102を取り囲むことはない。
【0025】
支持部材401が連続して画素アレイ102を取り囲む場合、環境温度が変化すると、支持部材401、センサパネル100および支持基台300によって囲まれる空間と外部空間との間に気圧差が生じる可能性がある。気圧差が生じると、センサパネル100が歪むなどして、得られる画像にアーチファクトが発生する可能性がある。また、例えば、支持部材401がセンサパネル100および支持基台300に固定されている場合、環境温度の変化があった際にセンサパネル100と支持基台300との膨張率差による歪みが生じ、アーチファクトの原因になりうる。このような機械的に歪みは、センサパネル100の破損や故障の原因にもなりうる。
【0026】
一方、本実施形態において、センサパネル100の面132と支持基台300との間には、支持部材401が配されていない、支持部材301からセンサパネル100の外縁133に達する通路140が配されている。この通路140によって、支持部材401、センサパネル100および支持基台300によって囲まれる空間と外部空間との間に気圧差が生じることはない。また、支持部材401がセンサパネル100および支持基台300に固定されている場合であっても、通路140が配されることによって、環境温度の変化によるセンサパネル100と支持基台300との膨張率差による歪みを緩和することができる。結果として、本実施形態の放射線撮像装置150は、アーチファクトの発生などによって画質が低下してしまうことを抑制することができる。また、放射線撮像装置150に配されたセンサパネル100の破損や故障を抑制することができる。
【0027】
支持部材401は、例えば、センサパネル100の面132と支持基台300とを接合する樹脂などであってもよい。また、例えば、支持部材401は、粘着面を持つシート状の部材であってもよい。さらに、例えば、支持部材401は、複数の部材から構成されていてもよい。例えば、電気接続部111に重なるように支持基台300の上に配された板状の部材と、板状の部材とセンサパネル100の面132とを接合する硬化性樹脂を用いた接合部材と、によって、支持部材401が構成されていてもよい。この場合に、支持部材401は、接合部材によってセンサパネル100の面132に固定される。そのため、支持部材401は、支持部材301および支持基台300のうち少なくとも1つに固定されていてもよいし、支持部材301および支持基台300に固定されていなくてもよい。
【0028】
図2(a)に示される構成では、支持部材401は、矩形状のセンサパネル100の1つの辺ごとに分割して配されている。しかしながら、それに限られることはない。例えば、
図4(a)~4(c)に示されるように、センサパネル100の外縁133のうち1つの辺に沿って、少なくとも2つの支持部材401が断続的に配されていてもよい。また、例えば、
図5(a)~5(c)に示されるように、センサパネル100の外縁133の2つの辺に跨るように配された支持部材401が配されていてもよい。また、1つの支持部材401が、1つの電気接続部111を支持するように配されていてもよいし、2つ以上の電気接続部111を支持するように配されていてもよい。通路140が配される位置は、何れの位置であってもよい。センサパネル100の面132と支持基台300との間に、支持部材401が配されずに、支持部材301からセンサパネル100の外縁133に達する通路140が配されていればよい。
【0029】
さらに、
図6(a)~6(c)に示されるように、すべての電気接続部111に重なるように、支持部材401が配されている必要はない。詳細は後述するが、少なくとも1つの電気接続部111に重なるように、支持部材401が配されていればよい。換言すると、センサパネル100の面131に対する正射影において、複数の電気接続部111は、支持部材401に重ならない位置に配された電気接続部111を含んでいてもよい。また、電気接続部111は、センサパネル100の外縁133の全ての辺に沿って配される必要はない。電気接続部111は、センサパネル100の設計に応じて、
図6(a)に示されるように2つの辺のみに沿って配されていてもよいし、1つの辺または3つの辺に沿って配されていてもよい。
【0030】
支持部材401の弾性率が、支持部材301の弾性率以上であってもよい。支持部材401が配されることによって、支持部材301が配されていないセンサパネル100の外縁133付近の耐衝撃性が向上し、センサパネル100の破損や変形を抑制することができる。例えば、支持部材401によって支持された電気接続部111に、センサパネル100の面131から面132に向かう方向に0.5MPaの圧力を印加した際に、センサパネル100の外縁の変位量が、センサパネル100(基板101)の厚さ以下になるように、支持部材401の材料が選択されてもよい。また、例えば、支持部材401によって支持された電気接続部111に、センサパネル100の面131から面132に向かう方向に0.5MPaの圧力を印加した際に、センサパネル100の外縁の変位量が、100μm以下になるように、支持部材401の材料が選択されてもよい。それによって、例えば、電気接続部111に配線部材110を圧着によって接続する際のセンサパネル100の破損を抑制することができる。
【0031】
次いで、放射線撮像装置150の製造方法の例を説明する。まず、
図7(a)~7(c)に示されるように、画素アレイ102および電気接続部111が配された面131および面131とは反対側の面132を備えるセンサパネル100が準備される。この工程は、既知の様々の手法を用いることが可能である。
【0032】
例えば、ガラスなどの基板101の上に、種々の半導体プロセスなどを用いて画素アレイ102や電気接続部111が形成される。次いで、画素アレイ102を覆うように、シンチレータ200が形成される。シンチレータ200は、例えば、CsIとTlIとを真空チャンバ内で同時に加熱し蒸着することによって形成される。シンチレータ200として粉末蛍光体を用いる場合、シンチレータ200は、例えば、GOSなどを塗布・乾燥することによって形成される。
【0033】
次に、シンチレータ200を覆うようにシンチレータ保護層201を形成する。例えば、粘着剤が貼り合わされたアルミシートを、ロールラミネータを用いてシンチレータ200を被覆するように貼り合わせることによってシンチレータ保護層201が形成される。シンチレータ保護層201として、CVD法を用いてポリパラキシリレンなどを形成してもよい。その場合、例えば、シンチレータ200が形成されたセンサパネル100をCVD用のチャンバに設置し、30Pa程度まで真空引きした後に、センサパネル100が設置されたステージを5rpmで回転させながらポリパラキシリレンの成膜を行う。
【0034】
シンチレータ200およびシンチレータ保護層201を形成した後に、配線部材110が、電気接続部111に接続される。例えば、
図8に示されるように、異方性導電フィルム(ACF)や金バンプなどの接合部材112を介して、センサパネル100の面131に配された電気接続部111に配線部材110を接続する。例えば、圧着装置600を用いて、温度100℃~200℃、圧力0.5MPa~5MPaの条件で5秒~5分熱圧着することによって、配線部材110は電気接続部111に接続される。配線部材110は、熱圧着を用いる代わりに、加熱や加圧を伴わない方法で電気接続部111に接続されてもよい。配線部材110は、シンチレータ200およびシンチレータ保護層201を形成する前に電気接続部111に接続されてもよい。
【0035】
次いで、支持部材301および支持部材401を介してセンサパネル100の面132を支持する支持基台300にセンサパネル100を固定する工程が行われる。支持部材301は、例えば、厚さ100μmのシリコーン系粘着剤であってもよい。支持部材301は、センサパネル100の面132のうち少なくとも画素アレイ102が配された部分と重なる領域に接するように配される。
【0036】
支持部材401は、支持部材301を介してセンサパネル100を支持基台300に固定する際に、支持部材401が支持基台300とセンサパネル100の面132との間に配されていてもよい。また、支持部材301を介して支持基台300にセンサパネル100を固定した後に、支持部材401が形成されてもよい。支持部材401は、上述のように、電気接続部111と重なる位置に配される。支持部材401は、例えば、2液を混合して硬化が促進される2液型のエポキシ樹脂を塗布するだけでもよいし、支持基台300の上に板材を配置し、板材の上にエポキシ樹脂を塗布してもよい。
【0037】
以上のような工程を用いて、放射線撮像装置150が製造される。支持部材401が配されることによって、センサパネル100の外縁133付近の剛性が高くなる。それによって、例えば、放射線撮像装置150の移動や使用中などにおいて衝撃が加わった場合であっても、センサパネル100の破損を抑制することができる。結果として、放射線撮像装置150の信頼性が向上する。また、
図6(a)に示されるように、直下に支持部材401が配されていない電気接続部111であっても、近接して支持部材401が配される。そのため、支持部材401が配されていない場合と比較してセンサパネル100の破損を抑制することが可能である。
【0038】
また、上述したように、センサパネル100の面132と支持基台300との間には、支持部材301からセンサパネル100の外縁133に達する通路140が配され、支持部材401が画素アレイ102を連続的に取り囲まない。そのため、環境温度の変化などによってセンサパネル100が歪むことが抑制され、アーチファクトの発生が抑制できる。つまり、放射線撮像装置150によって得られる画像の画質の低下が抑制できる。
【0039】
上述の製造方法では、センサパネル100を支持基台300に固定する際に、支持部材301と支持部材401とを同等のタイミングで配することを説明した。しかしながら、製造方法は、これに限られることはない。上述とは異なる放射線撮像装置150の製造方法の例について以下、説明する。
【0040】
センサパネル100を支持基台300に固定する工程の前までは、上述の製造方法と同様であってもよく、配線部材110が電気接続部111に接続されたセンサパネル100が準備される。次いで、支持部材301を介してセンサパネル100の面132を支持する支持基台300にセンサパネル100を固定する。このとき、支持部材401は、まだ、配されていない。
【0041】
その後、適当な工程を用いて放射線撮像装置150を製造し、放射線撮像装置150の完成検査が行われる。この検査において、例えば、配線部材110を介した接続の不良や配線部材110に配された回路113の不良が発見される場合がある。例えば、
図9に示される位置Rに配された電気接続部111に接続された配線部材110に不良が発見されたとする。その場合に、コストなどの面から不良が発見された配線部材110のみを交換することが求められる。そこで、この検査の工程の結果に基づいて、位置Rに配されている配線部材110が電気接続部111から取り外される。次いで、センサパネル100の面131上に残った接合部材112が、例えば、アセトン、メチル・エチル・ケトン(MEK)などの溶剤を用いて取り除かれる。
【0042】
次いで、位置Rに配された電気接続部111に取り外した配線部材110とは別の配線部材110を接続する。その際に、位置Rに配された電気接続部111と支持基台300との間には、画素アレイ102と重なるように配された支持部材301に起因して空間が生じている。そのため、位置Rに配された電気接続部111に対して配線部材110を接続すると、配線部材110を圧着する際の圧力によって、センサパネル100の位置R付近が破損してしまう可能性がある。
【0043】
そこで、電気接続部111に配線部材110を接続する前に、
図10に示されるように、センサパネル100の面131に対する正射影において、少なくとも位置Rに配された電気接続部111に重なる領域に、支持部材401を配置する。支持部材401は、例えば、エポキシ樹脂を塗布することによって形成してもよいし、支持基台300の上に板材を配置し、板材の上にエポキシ樹脂を塗布することによって形成してもよい。
【0044】
支持部材401を形成した後に、電気接続部111に新たな配線部材110を接続する。配線部材110を接続する工程は、
図8を用いて説明した工程と同様である。配線部材110を接続する際に、センサパネル100と支持基台300との間に支持部材401が配される。それによって、位置Rにおけるセンサパネル100(基板101)の剛性が確保され、電気接続部111と新たな配線部材110との接続不良や、センサパネル100の破損を抑制することができる。結果として、放射線撮像装置150の信頼性の向上や歩留まりの向上が実現できる。また、上述したように、センサパネル100の面132と支持基台300との間には通路140が配され、支持部材401が画素アレイ102を連続的に取り囲まない。そのため、環境温度の変化などによってセンサパネル100が歪むことが抑制され、アーチファクトの発生が抑制できる。
【0045】
本明細書の開示は、以下の放射線撮像装置、放射線撮像システムおよび放射線撮像装置の製造方法を含む。
【0046】
(項目1)
画素アレイおよび電気接続部が配された第1面および前記第1面とは反対側の第2面を備えるセンサパネルと、前記電気接続部に接続された配線部材と、第1支持部材および第2支持部材を介して前記第2面を支持する支持基台と、を含む放射線撮像装置であって、
前記第1面に対する正射影において、前記画素アレイに重なるように配された前記第1支持部材が配されている領域と前記センサパネルの外縁との間に、前記電気接続部が配され、かつ、前記電気接続部に重なるように、前記第2支持部材が配されており、
前記第2支持部材は、前記第2面、前記支持基台および前記第1支持部材のうち少なくとも1つに対して固定され、
前記第2面と前記支持基台との間には、前記第1面に対する正射影において前記第2支持部材に重ならずに、前記第1支持部材から前記外縁に達する通路が配されていることを特徴とする放射線撮像装置。
【0047】
(項目2)
前記電気接続部に前記第1面から前記第2面に向かう方向に0.5MPaの圧力を印加した際に、前記外縁の変位量が、前記センサパネルの厚さ以下であることを特徴とする項目1に記載の放射線撮像装置。
【0048】
(項目3)
前記電気接続部に前記第1面から前記第2面に向かう方向に0.5MPaの圧力を印加した際に、前記外縁の変位量が、100μm以下であることを特徴とする項目1または2に記載の放射線撮像装置。
【0049】
(項目4)
前記第2支持部材の弾性率が、前記第1支持部材の弾性率以上であることを特徴とする項目1乃至3の何れか1項目に記載の放射線撮像装置。
【0050】
(項目5)
前記第2支持部材を含む複数の第2支持部材が配されていることを特徴とする項目1乃至4の何れか1項目に記載の放射線撮像装置。
【0051】
(項目6)
前記外縁のうち1つの辺に沿って、前記複数の第2支持部材のうち少なくとも2つの第2支持部材が断続的に配されていることを特徴とする項目5に記載の放射線撮像装置。
【0052】
(項目7)
前記第1面に対する正射影において、前記複数の第2支持部材が、前記画素アレイを取り囲むように断続的に配されていることを特徴とする項目5または6に記載の放射線撮像装置。
【0053】
(項目8)
前記第1面には、前記電気接続部を含む複数の電気接続部が配され、
前記複数の第2支持部材は、2つ以上の前記電気接続部を支持する1つの第2支持部材を含むことを特徴とする項目5乃至7の何れか1項目に記載の放射線撮像装置。
【0054】
(項目9)
前記第1面には、前記電気接続部を含む複数の電気接続部が配され、
前記第2支持部材が、前記複数の電気接続部のうち2つ以上の電気接続部を支持することを特徴とする項目1乃至4の何れか1項目に記載の放射線撮像装置。
【0055】
(項目10)
前記第1面に対する正射影において、前記複数の電気接続部は、前記第2支持部材に重ならない位置に配された電気接続部を含むことを特徴とする項目8または9に記載の放射線撮像装置。
【0056】
(項目11)
前記配線部材に、前記画素アレイを動作させるための回路が配されていることを特徴とする項目1乃至10の何れか1項に記載の放射線撮像装置。
【0057】
(項目12)
前記第1面を覆うようにシンチレータが配されていることを特徴とする項目1乃至11の何れか1項目に記載の放射線撮像装置。
【0058】
(項目13)
項目1乃至12の何れか1項目に記載の放射線撮像装置と、
前記放射線撮像装置から出力される信号を処理する処理装置と、
を備えることを特徴とする放射線撮像システム。
【0059】
(項目14)
画素アレイおよび電気接続部が配された第1面および前記第1面とは反対側の第2面を備えるセンサパネルを準備する第1工程と、
第1支持部材を介して前記第2面を支持する支持基台に前記センサパネルを固定する第2工程と、を含む放射線撮像装置の製造方法であって、
前記第1面に対する正射影において、前記画素アレイと重なるように配された前記第1支持部材が配されている領域と前記センサパネルの外縁との間に、前記電気接続部が配されており、
前記第2面と前記支持基台との間に、前記電気接続部を支持するために、前記電気接続部に重なるように第2支持部材を配する第3工程と、
前記電気接続部に配線部材を接続する第4工程と、
をさらに含み、
前記第2支持部材は、前記第2面、前記支持基台および前記第1支持部材のうち少なくとも1つに対して固定され、
前記第2面と前記支持基台との間には、前記第1面に対する正射影において前記第2支持部材に重ならずに、前記第1支持部材から前記外縁に達する通路が配されていることを特徴とする製造方法。
【0060】
(項目15)
前記第3工程の後に前記第4工程が行われ、
前記第1工程において、前記電気接続部には、前記配線部材とは別の配線部材が接続されており、
前記第2工程と前記第3工程との間に、前記別の配線部材を前記電気接続部から取り外す第5工程をさらに含むことを特徴とする項目14に記載の製造方法。
【0061】
(項目16)
前記第2工程と前記第5工程との間に、前記放射線撮像装置を検査する第6工程をさらに含み、
前記第6工程の結果に基づいて、前記別の配線部材が取り外されることを特徴とする項目15に記載の製造方法。
【0062】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0063】
100:センサパネル、102:画素アレイ、110:配線部材、111:電気接続部、131,132:面、133:外縁、140:通路、150:放射線撮像装置、300:支持基台、301,401:支持部材