(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178818
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】放射線撮像装置、その制御方法及び放射線撮像システム
(51)【国際特許分類】
H04N 5/32 20230101AFI20241218BHJP
H04N 23/30 20230101ALI20241218BHJP
H04N 25/40 20230101ALI20241218BHJP
G01T 7/00 20060101ALI20241218BHJP
A61B 6/42 20240101ALI20241218BHJP
【FI】
H04N5/32 050
H04N23/30
H04N25/40
G01T7/00 C
A61B6/00 300S
A61B6/00 300W
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097247
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹中 克郎
【テーマコード(参考)】
2G188
4C093
5C024
【Fターム(参考)】
2G188AA03
2G188AA25
2G188BB02
2G188BB04
2G188BB05
2G188BB06
2G188CC22
2G188CC29
2G188CC32
2G188DD05
2G188EE07
2G188EE31
2G188FF02
4C093AA03
4C093CA06
4C093EB12
4C093EB17
4C093EB30
4C093FA33
5C024AX11
5C024CX32
5C024CX51
5C024GX07
5C024GY31
5C024HX29
5C024JX08
(57)【要約】
【課題】放射線画像のノイズを精度よく低減する。
【解決手段】放射線撮像装置は、複数の画素のうちの少なくとも第1の画素について、撮像の準備中に、第1の時間長にわたって第1の画素に蓄積された電荷に基づく第1のオフセット信号を読み出す第1の読出し動作と、第1の時間長よりも短い第2の時間長にわたって第1の画素に蓄積された電荷に基づく第2のオフセット信号を読み出す第2の読出し動作と、を交互に実行し、撮像の準備が終了した後に、放射線撮像装置に放射線が照射されている期間を含む第3の時間長にわたって第1の画素に蓄積された電荷に基づく放射線信号を読み出す第3の読出し動作と、放射線撮像装置に放射線が照射されている期間を含まず第3の時間長よりも短い第4の時間長にわたって第1の画素に蓄積された電荷に基づく第3のオフセット信号を読み出す第4の読出し動作と、を交互に実行する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線撮像装置であって、
複数の画素行及び複数の画素列を構成するように配置されており、電荷を生成し蓄積する複数の画素と、
前記複数の画素の何れかを選択するための駆動信号を前記複数の画素に供給する駆動回路と、
前記駆動信号によって選択された画素に蓄積された電荷に基づく信号を読み出す読出し回路と、
前記読出し回路及び前記駆動回路を制御する制御回路と、
放射線画像を生成する画像生成回路と、を備え、
前記制御回路は、前記複数の画素のうちの少なくとも第1の画素について、
撮像の準備中に、
第1の時間長にわたって前記第1の画素に蓄積された電荷に基づく第1のオフセット信号を読み出す第1の読出し動作と、
前記第1の時間長よりも短い第2の時間長にわたって前記第1の画素に蓄積された電荷に基づく第2のオフセット信号を読み出す第2の読出し動作と、
を交互に実行し、
撮像の準備が終了した後に、
前記放射線撮像装置に放射線が照射されている期間を含む第3の時間長にわたって前記第1の画素に蓄積された電荷に基づく放射線信号を読み出す第3の読出し動作と、
前記放射線撮像装置に放射線が照射されている期間を含まず前記第3の時間長よりも短い第4の時間長にわたって前記第1の画素に蓄積された電荷に基づく第3のオフセット信号を読み出す第4の読出し動作と、
を交互に実行するように前記読出し回路及び前記駆動回路を制御し、
前記画像生成回路は、前記第1のオフセット信号と、前記第2のオフセット信号と、前記第3のオフセット信号とを用いて前記放射線信号を補正することに基づいて、前記放射線画像を生成する、放射線撮像装置。
【請求項2】
前記複数の画素行は、前記第1の画素を含む第1の画素行と、第2の画素を含む第2の画素行とを含み、
前記駆動回路は、第1の選択期間に、前記第1の画素行と前記第2の画素行とを選択することによって、前記第1の画素に蓄積された電荷と前記第2の画素に蓄積された電荷とに基づく前記第3のオフセット信号を読み出す、請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項3】
前記駆動回路は、第2の選択期間に、前記第1の画素行を選択することによって、前記第1の画素に蓄積された電荷に基づく前記放射線画像を読み出し、
前記駆動回路は、前記第2の選択期間に、前記第2の画素行を選択しない、請求項2に記載の放射線撮像装置。
【請求項4】
前記複数の画素行は、第3の画素を含む第3の画素行をさらに含み、
前記駆動回路は、第3の選択期間に、前記第1の画素行と前記第3の画素行とを選択することによって、前記第1の画素に蓄積された電荷と前記第3の画素に蓄積された電荷とに基づく前記第3のオフセット信号を読み出し、
前記駆動回路は、前記第1の選択期間に、前記第3の画素行を選択せず、前記第3の選択期間に、前記第2の画素行を選択しない、請求項3に記載の放射線撮像装置。
【請求項5】
前記画像生成回路は、前記第1のオフセット信号と、前記第2のオフセット信号と、前記第1の選択期間に読み出された前記第3のオフセット信号と、前記第3の選択期間に読み出された前記第3のオフセット信号とを用いて、前記第2の選択期間に読み出された前記放射線信号を補正する、請求項4に記載の放射線撮像装置。
【請求項6】
前記放射線撮像装置による撮像は、撮像の準備が終了した後に、
前記放射線撮像装置に放射線が照射されている期間を含み、前記複数の画素が何れも選択されない第1の蓄積期間と、
少なくとも前記第1の蓄積期間に蓄積した電荷に基づく信号を読み出すために、前記複数の画素のそれぞれが選択される第1の読出し期間と、
前記放射線撮像装置に放射線が照射されている期間を含まず、前記複数の画素が何れも選択されない第2の蓄積期間と、
少なくとも前記第2の蓄積期間に蓄積した電荷に基づく信号を読み出すために、前記複数の画素のそれぞれが選択される第2の読出し期間と、
を含み、
前記第2の蓄積期間は、前記第1の蓄積期間よりも短い、請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項7】
前記駆動回路は、前記複数の画素行のそれぞれが選択される1つの読出し期間において、前記複数の画素行の両端に位置する2つの画素行よりも先に、前記複数の画素行の中央に位置する画素行を選択する、請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項8】
前記画像生成回路は、
撮像の準備中に、前記第1のオフセット信号及び前記第2のオフセット信号を用いて算出した補正値をメモリに記憶し、
撮像の準備が終了した後に、前記第3のオフセット信号と、前記メモリに記憶されている前記補正値とを用いて、前記放射線信号を補正する、請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項9】
前記画像生成回路は、前記第4の時間長に対する前記第3の時間長の比率をさらに用いて前記放射線信号を補正する、請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項10】
前記制御回路は、前記複数の画素のうちの第4の画素について、
撮像の準備中に、
第5の時間長にわたって前記第4の画素に蓄積された電荷に基づく第4のオフセット信号を読み出す第5の読出し動作と、
前記第5の時間長よりも短い第6の時間長にわたって前記第4の画素に蓄積された電荷に基づく第5のオフセット信号を読み出す第6の読出し動作と、
を交互に実行し、
撮像の準備が終了した後に、
前記放射線撮像装置に放射線が照射されている期間を含む第7の時間長にわたって前記第4の画素に蓄積された電荷に基づく第2の放射線信号を読み出す第7の読出し動作と、
前記放射線撮像装置に放射線が照射されている期間を含まず前記第7の時間長よりも短い第8の時間長にわたって前記第4の画素に蓄積された電荷に基づく第6のオフセット信号を読み出す第8の読出し動作と、
を実行するように前記読出し回路及び前記駆動回路を制御し、
前記画像生成回路は、前記第4のオフセット信号と、前記第5のオフセット信号と、前記第6のオフセット信号と、前記第8の時間長に対する前記第7の時間長の比率を用いて前記第2の放射線信号を補正することにさらに基づいて、前記放射線画像を生成し、
前記第8の時間長に対する前記第7の時間長の前記比率は、前記第4の時間長に対する前記第3の時間長の前記比率とは異なる、請求項9に記載の放射線撮像装置。
【請求項11】
前記画像生成回路は、前記放射線信号よりも後に取得された前記第3のオフセット信号を用いて前記放射線信号を補正する、請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項12】
前記第3の時間長は前記第1の時間長に等しく、前記第4の時間長は前記第2の時間長に等しい、請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか1項に記載の放射線撮像装置と、
前記放射線撮像装置によって得られた放射線画像を処理する信号処理手段と
を備えることを特徴とする放射線撮像システム。
【請求項14】
複数の画素行及び複数の画素列を構成するように配置されており、電荷を生成し蓄積する複数の画素を備える放射線撮像装置の制御方法であって、
前記複数の画素のうちの少なくとも第1の画素について、
撮像の準備中に、
第1の時間長にわたって前記第1の画素に蓄積された電荷に基づく第1のオフセット信号を読み出す第1の読出し動作と、
前記第1の時間長よりも短い第2の時間長にわたって前記第1の画素に蓄積された電荷に基づく第2のオフセット信号を読み出す第2の読出し動作と、
を交互に実行する工程と、
撮像の準備が終了した後に、
前記放射線撮像装置に放射線が照射されている期間を含む第3の時間長にわたって前記第1の画素に蓄積された電荷に基づく放射線信号を読み出す第3の読出し動作と、
前記放射線撮像装置に放射線が照射されている期間を含まず前記第3の時間長よりも短い第4の時間長にわたって前記第1の画素に蓄積された電荷に基づく第3のオフセット信号を読み出す第4の読出し動作と、
を交互に実行する工程と、
前記第1のオフセット信号と、前記第2のオフセット信号と、前記第3のオフセット信号とを用いて前記放射線信号を補正することに基づいて、放射線画像を生成する工程と、を有する制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮像装置、その制御方法及び放射線撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療画像診断や非破壊検査に用いる撮影装置として放射線撮像装置が実用化されている。放射線撮像装置によって生成される放射線画像は、フォトダイオードに流れる暗電流や、前回の放射線照射による残像などに起因するノイズを含む。このようなノイズを低減するために、放射線撮像装置に放射線が照射されていない状態で取得されたオフセット画像を用いて放射線画像が補正される。特許文献1には、高フレーム化及び低残像化を実現するために、撮影開始前に取得した一次オフセットデータ及び基準二次オフセットデータと、撮影開始後に取得した直前二次オフセットデータとを用いて放射線画像を補正する技術が記載されている。直前二次オフセットデータは、放射線画像よりも短い露光時間で取得される。一次オフセットデータは、放射線画像と同じ露光時間で取得される。基準二次オフセットデータは、直前二次オフセットデータと同じ露光時間で取得される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術では、一次オフセットデータの取得に対する基準二次オフセットデータの取得の時間的関係が、放射線画像の取得に対する直前二次オフセットデータの取得の時間的関係と異なる。そのため、放射線画像のノイズを精度よく低減することが困難である。本発明の一部の側面は、放射線画像のノイズを精度よく低減するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一部の実施形態によれば、放射線撮像装置であって、複数の画素行及び複数の画素列を構成するように配置されており、電荷を生成し蓄積する複数の画素と、前記複数の画素の何れかを選択するための駆動信号を前記複数の画素に供給する駆動回路と、前記駆動信号によって選択された画素に蓄積された電荷に基づく信号を読み出す読出し回路と、前記読出し回路及び前記駆動回路を制御する制御回路と、放射線画像を生成する画像生成回路と、を備え、前記制御回路は、前記複数の画素のうちの少なくとも第1の画素について、撮像の準備中に、第1の時間長にわたって前記第1の画素に蓄積された電荷に基づく第1のオフセット信号を読み出す第1の読出し動作と、前記第1の時間長よりも短い第2の時間長にわたって前記第1の画素に蓄積された電荷に基づく第2のオフセット信号を読み出す第2の読出し動作と、を交互に実行し、撮像の準備が終了した後に、前記放射線撮像装置に放射線が照射されている期間を含む第3の時間長にわたって前記第1の画素に蓄積された電荷に基づく放射線信号を読み出す第3の読出し動作と、前記放射線撮像装置に放射線が照射されている期間を含まず前記第3の時間長よりも短い第4の時間長にわたって前記第1の画素に蓄積された電荷に基づく第3のオフセット信号を読み出す第4の読出し動作と、を交互に実行するように前記読出し回路及び前記駆動回路を制御し、前記画像生成回路は、前記第1のオフセット信号と、前記第2のオフセット信号と、前記第3のオフセット信号とを用いて前記放射線信号を補正することに基づいて、前記放射線画像を生成する、放射線撮像装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
上記実施形態により、放射線画像のノイズを精度よく低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一部の実施形態の放射線撮像システムの構成例を説明するブロック図。
【
図2】一部の実施形態の放射線検出パネルの構成例を説明する等価回路図。
【
図3】一部の実施形態の画素の構造例を説明する模式図。
【
図4】一部の実施形態の放射線撮像システムの動作例を説明する図。
【
図5】一部の実施形態の放射線撮像システムの動作例を説明する図。
【
図6】一部の実施形態の放射線撮像システムの動作例を説明する図。
【
図7】一部の実施形態の放射線撮像システムの動作例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0009】
図1は、一部の実施形態に係る放射線撮像システム100の構成例を示す。放射線撮像システム100は、放射線で形成される光学像を電気的に撮像することによって、電気的な放射線画像を生成するように構成されている。放射線は、典型的にはX線であるが、α線、β線、γ線などであってもよい。放射線撮像システム100は、例えば、放射線撮像装置110、コンピュータ120、ディスプレイ114、曝射制御装置130及び放射線発生装置140を備える。
【0010】
放射線発生装置140は、曝射制御装置130からの曝射指令(放射指令)に従って放射線160の照射を開始する。放射線発生装置140から照射された放射線160は、被写体150を通って放射線撮像装置110に入射する。放射線発生装置140はまた、曝射制御装置130からの停止指令に従って放射線160の照射を停止する。
【0011】
放射線撮像装置110は、放射線検出パネル111と、制御回路112、画像生成回路113とを含む。放射線検出パネル111は、放射線撮像装置110に入射した放射線160に応じた放射線画像を生成し、コンピュータ120へ送信する。制御回路112は、放射線検出パネル111の動作を制御する。例えば、制御回路112は、放射線検出パネル111から得られる画像信号に基づいて、放射線発生装置140からの放射線160の照射を停止させるための停止信号を生成する。停止信号は、曝射制御装置130に供給される。曝射制御装置130は、停止信号に応答して、放射線発生装置140に対して停止指令を送る。
【0012】
制御回路112は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのPLD(Programmable Logic Device)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)のような専用回路で構成されてもよい。これに代えて、制御回路112は、プロセッサのような汎用処理回路とメモリのような記憶回路との組み合わせによって構成されてもよい。この場合に、記憶回路に格納されたプログラムを汎用処理回路が実行することによって、制御回路112の機能が実現されてもよい。
【0013】
画像生成回路113は、放射線検出パネル111から供給された信号をメモリに記憶し、この信号に基づいて放射線画像を生成する。放射線画像の生成方法の詳細については後述する。画像生成回路113は、生成した放射線画像をコンピュータ120へ送信する。
【0014】
コンピュータ120は、放射線撮像装置110及び曝射制御装置130を制御する制御部と、放射線撮像装置110から放射線画像を受信する受信部と、放射線撮像装置110によって得られた放射線画像を処理する信号処理部とを有する。制御部、受信部及び信号処理部はそれぞれ、制御回路112と同様に、専用回路によって構成されてもよいし、汎用処理回路と記憶回路との組み合わせによって構成されてもよい。一例において、曝射制御装置130は、曝射スイッチを有し、ユーザによって曝射スイッチがオンされると、曝射指令を放射線発生装置140に送るとともに、放射線の照射開始を示す開始通知をコンピュータ120に送る。開始通知を受けたコンピュータ120は、開始通知に応答して、放射線の照射開始を放射線撮像装置110の制御回路112に通知する。曝射制御装置130とコンピュータ120とが同期接続されていない場合に、放射線検出パネル111は、画素信号に基づいて放射線160の照射開始を検知してもよい。
【0015】
図2は、放射線検出パネル111の構成例を示す。放射線検出パネル111は、例えば、画素アレイ200、駆動回路210、読出し回路220、バッファ回路230及びアナログ・デジタル(AD)変換器240を備える。駆動回路210及び読出し回路220は、画素アレイ200の周辺回路として機能する。画素アレイ200は、例えば、複数の画素Pと、複数の駆動線Vg1~Vgmと、複数の信号線Sig1~Signと、バイアス線Bsとによって構成される。駆動線Vg1~Vgm及び信号線Sig1~Signを総称して、それぞれ駆動線Vg及び信号線Sigと表す。複数の画素Pは、複数の画素行及び複数の画素列を構成するように配置されている。画素行とは、
図2において横方向に並んだ複数の画素の集合のことである。画素列とは、
図2において縦方向に並んだ複数の画素の集合のことである。一例において、放射線検出パネル111は、17インチの寸法を有し、画素アレイ200は、約3000の画素行及び約3000の画素列を有する。
【0016】
画素アレイ200の各画素行を図面の上側から順に1行目からm行目(mは1以上の整数)と呼び、画素アレイ200の各画素列を図面の左側から順に1列目からn列目(nは1以上の整数)と呼ぶ。各画素Pは、1つの変換素子Cと1つのスイッチ素子Sとの組み合わせによって構成される。画素アレイ200のうちi行目かつj列目に位置する画素Pを画素P(i,j)と表す。画素P(i,j)に含まれる変換素子C及びスイッチ素子Sをそれぞれ変換素子C(i,j)及びスイッチ素子S(i,j)と表す。例えば、画素P(1、2)は、1行目かつ2列目に位置する画素Pを表す。
【0017】
変換素子Cは、画素Pに入射した放射線に応じた電荷を生成し、この電荷を蓄積する。変換素子Cは、放射線に応じた電荷だけでなく、暗電流によって発生した電荷も蓄積しうる。画素Pの変換素子Cが電荷を生成し蓄積することを、画素Pが電荷を生成し蓄積すると表す。
【0018】
スイッチ素子Sは、変換素子Cと、この変換素子Cに対応する信号線Sigとの間に接続されている。例えば、複数の変換素子C(1,1)~C(m,1)と信号線Sig1との間にスイッチ素子S(1,1)~S(m,1)がそれぞれ接続されている。スイッチ素子Sがオンになると、変換素子Cと信号線Sigとの間が導通状態となり、変換素子Cで得られた電荷(例えば、変換素子Cに蓄積された電荷)が信号線Sigに転送される。変換素子Cは、例えば、ガラス基板等の絶縁性基板上に配置されアモルファスシリコンを主材料とするMIS型フォトダイオードであってもよい。これに代えて、変換素子Cは、PIN型フォトダイオードであってもよい。変換素子Cは、放射線を直接に電荷に変換する直接型として構成されてもよいし、放射線を光に変換した後に、この光を検出する間接型として構成されてもよい。間接型では、シンチレータが複数の画素Pによって共有されてもよい。
【0019】
スイッチ素子Sは、例えば、制御端子(ゲート)と2つの主端子(ソース、ドレイン)とを有する薄膜トランジスタ(TFT)などのトランジスタで構成される。変換素子Cは、2つの主電極を有する。変換素子Cの一方の主電極は、スイッチ素子Sの2つの主端子のうちの一方に接続され、変換素子の他方の主電極は、共通のバイアス線Bsを介してバイアス電源Vsに接続されている。バイアス電源Vsは、バイアス電圧を生成する。
【0020】
1行目の画素Pのスイッチ素子Sの制御端子は駆動線Vg1に接続されている。2行目の画素Pのスイッチ素子Sの制御端子は駆動線Vg2に接続されている。3~m行目についても同様である。
【0021】
駆動回路210は、制御回路112から供給される駆動信号に従って、駆動線Vgを通じて各画素Pのスイッチ素子Sの制御端子に駆動信号を供給する。駆動信号は、スイッチ素子Sをオンにするためのオン信号(以下の説明ではハイレベルの電圧)と、スイッチ素子Sをオフにするためのオフ信号(以下の説明ではローレベルの電圧)とを含む。駆動回路210は、例えばシフトレジスタを含み、このシフトレジスタは、制御回路112から供給される制御信号(例えば、クロック信号)に従ってシフト動作を実行する。
【0022】
画素Pにオン信号(すなわち、ハイレベルの駆動信号)を供給することを、画素Pを選択すると表す。すなわち、駆動信号は、複数の画素Pの何れかを選択するための信号である。同一の画素行に含まれる複数の画素に同じ駆動信号が供給される。1つの画素行に含まれる複数の画素を選択することを、この画素行を選択すると表す。
【0023】
読出し回路220は、画素Pを選択することによって信号線Sigに現れた信号を増幅して読み出す。この信号は、変換素子Cに蓄積された電荷に基づく。画素Pの変換素子Cに蓄積された電荷に基づく信号を読み出すことを、画素Pに蓄積された電荷に基づく信号を読み出すと表す。
【0024】
読出し回路220は、1本の信号線Sigごとに1つの増幅回路221を含む。
図2の例では画素アレイ200がn本の信号線Sigを有するので、読出し回路220はn個の増幅回路221を含む。増幅回路221は、例えば、積分増幅器222、可変増幅器223、スイッチ素子224、容量225及びバッファ回路226を含む。スイッチ素子224及び容量225はサンプルホールド回路を構成する。積分増幅器222は、例えば、演算増幅器と、この演算増幅器の反転入力端子と出力端子との間に並列に接続された積分容量及びリセットスイッチとを含む。演算増幅器の非反転入力端子には、基準電源Vrefから基準電圧が供給される。制御回路112から供給される制御信号RC(リセットパルス)に応じてリセットスイッチがオンになると、積分容量がリセットされるとともに信号線Sigの電位が基準電位にリセットされる。可変増幅器223は、積分増幅器222からの信号を、設定された増幅率で増幅する。サンプルホールド回路は、可変増幅器223からの信号をサンプルホールドする。サンプルホールド回路を構成するスイッチ素子224のオンオフは、制御回路112から供給される制御信号SHによって制御される。バッファ回路226は、サンプルホールド回路からの信号をバッファリング(インピーダンス変換)して出力する。
【0025】
読出し回路220はまた、複数の増幅回路221からの信号を所定の順序で選択して出力するマルチプレクサ227を含む。マルチプレクサ227は、例えば、シフトレジスタを含み、このシフトレジスタは、制御回路112から供給される制御信号(例えば、クロック信号)に従ってシフト動作を実行する。このシフト動作によって、複数の増幅回路221からの1つの信号が選択される。
【0026】
バッファ回路230は、マルチプレクサ227から出力される信号をバッファリング(インピーダンス変換)する。AD変換器240は、バッファ回路230から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する。AD変換器240の出力、すなわち画素信号は、コンピュータ120に送信される。
【0027】
図3は、1つの画素Pの断面構造の一例を模式的に示す。画素Pは、ガラス基板等の絶縁性基板301の上に形成される。画素Pは、絶縁性基板301の上に、導電層302、絶縁層303、半導体層304、不純物半導体層305及び導電層306を有する。導電層302は、スイッチ素子Sを構成するトランジスタ(例えばTFT)のゲートを構成する。絶縁層303は、導電層302を覆うように配置される。半導体層304は、導電層302のうちゲートを構成する部分の上に絶縁層303を介して配置されている。不純物半導体層305は、スイッチ素子Sを構成するトランジスタの2つの主端子(ソース、ドレイン)を構成するように半導体層304の上に配置されている。導電層306は、スイッチ素子Sを構成するトランジスタの2つの主端子(ソース、ドレイン)にそれぞれ接続された配線パターンを構成している。導電層306の一部は信号線Sigを構成し、他の一部は変換素子Cとのスイッチ素子Sとを接続するための配線パターンを構成している。
【0028】
画素Pは、絶縁層303及び導電層306を覆う層間絶縁膜307を更に有する。層間絶縁膜307には、導電層306(スイッチ素子S)と接続するためのコンタクトプラグ308が設けられている。画素Pは、層間絶縁膜307の上に、導電層309、絶縁層310、半導体層311、不純物半導体層312、導電層313、保護層314、接着層315及びシンチレータ316をこの順に更に有する。これらの層によって、間接型の変換素子Cが構成される。導電層309及び導電層313は、変換素子Cを構成する光電変換素子の下部電極及び上部電極をそれぞれ構成する。導電層313は、例えば、透明材料で構成される。導電層309、絶縁層310、半導体層311、不純物半導体層312及び導電層313は、光電変換素子としてのMIS型センサを構成している。不純物半導体層312は、例えば、n型の不純物半導体層で形成される。シンチレータ316は、例えば、ガドリニウム系の材料、または、CsI(ヨウ化セシウム)の材料で構成され、放射線を光に変換する。
【0029】
上述の例にかえて、変換素子Cは、入射した放射線を直接に電荷に変換する直接型の変換素子として構成されてもよい。直接型の変換素子Cとして、例えば、アモルファスセレン、ガリウム砒素、ガリウムリン、ヨウ化鉛、ヨウ化水銀、CdTe、CdZnTe等を主材料とする変換素子がある。変換素子Cは、MIS型に限定されず、例えば、pn型やPIN型のフォトダイオードでもよい。
【0030】
図3に示された例では、画素アレイ200が形成された絶縁性基板301の面に対する正投影(平面視)において、複数の信号線Sigのそれぞれが変換素子Cの一部と重なっている。このような構成は、各画素Pの変換素子Cの面積を大きくできる点で有利である。
【0031】
図4を参照して、放射線撮像システム100の動作例を説明する。
図4の上側はタイミングチャートを示し、
図4の下側は信号処理のフローを示す。後述する
図5~
図7についても同様である。
図4に示される動作は、例えば、放射線撮像システム100のユーザが指示することによって開始される。放射線撮像システム100の動作は、コンピュータ120によって制御される。放射線撮像装置110の動作は、コンピュータ120による制御の下で、制御回路112によって実行される。具体的に、制御回路112は、駆動回路210及び読出し回路220を制御することによって、
図4の動作を実行する。以下の説明において、制御回路112が駆動回路210又は読出し回路220を制御することによって特定の動作を実行させることを、単に制御回路112が特定の動作を実行すると表すことがある。
【0032】
図4のタイミングチャートの「放射線」は、放射線撮像装置110に放射線160が照射されているかどうかを示す。ローレベルは放射線160が照射されていないことを示し、ハイレベルは放射線160が照射されていることを示す。
【0033】
図4のタイミングチャートの「Vg1」~「Vg8」は、駆動回路210から各駆動線Vg1~Vg8に供給される駆動信号のレベルを示す。
図4の例では画素アレイ200が8つの画素行を含む場合について説明するが、画素行の数はこれに限られない。
【0034】
図4のタイミングチャートの「期間」は、特定の動作が実行される期間を表す。放射線撮像装置110による撮像は、蓄積動作が実行される蓄積期間(
図4の「A」)と、読出し動作が実行される読出し期間(
図4の「R])とを含む。制御回路112は、蓄積期間に、画素アレイ200に含まれる複数の画素Pの何れも選択しない。具体的に、駆動回路210は、駆動線Vg1~Vg8のそれぞれにオフ信号が供給されている状態を維持する。これによって、各変換素子Cにおいて生成された電荷が変換素子Cに蓄積されると同時に、各変換素子Cに流れる暗電流に応じた電荷も蓄積される。
【0035】
制御回路112は、読出し期間に、画素アレイ200に含まれる複数の画素Pのそれぞれを選択し、選択した画素Pから信号を読み出す。具体的に、駆動回路210は、駆動線Vg1~Vg8に1つずつ順番にオン信号を供給する。まず、駆動回路210は、駆動線Vg1のみにオン信号を供給する。これにより、スイッチ素子S(1,j)(j=1,…,n)がオンとなり、変換素子C(1,j)と信号線Sigjとの間が導通状態になるため、変換素子C(1,j)に蓄積された電荷が信号線Sigjに読み出される。次に、駆動回路210は、駆動線Vg2のみにオン信号を供給する。これにより、スイッチ素子S(2,j)がオンとなり、変換素子C(2,j)と信号線Sigjとの間が導通状態になるため、変換素子C(2,j)に蓄積された電荷が信号線Sigjに読み出される。駆動回路210がこのような動作を駆動線Vg8まで繰り返すことによって、変換素子Cに蓄積された電荷に基づく電荷が信号線Sigjを通じて読出し回路220によって読み出される。以下の説明において、複数の画素Pに対して読出し動作を実行するとは、複数の画素Pのそれぞれに対して読出し動作を実行することを意味する。
【0036】
放射線撮像装置110による動作は、撮像の準備中に実行される動作と、撮像の準備が終了した後に実行される動作とを含む。撮像の準備が終了した後の期間は、放射線画像が撮像される期間を含んでもよく、さらに動画像が撮像される期間を含んでもよい。放射線画像が撮像される期間は撮像期間と呼ばれてもよい。後述するように、撮像期間中に、放射線160が常に放射線撮像装置110に照射されている必要はなく、放射線160は間欠的に照射されてもよい。
【0037】
撮像の準備中に、放射線撮像装置110に放射線160は照射されない。撮像の準備は、所定の条件を満たすことによって終了してもよい。所定の条件は、例えば後述するオフセット画像を所定の数だけ生成することであってもよい。撮像の準備が終了したことに応じて、放射線撮像装置110は、放射線の照射が可能であることをコンピュータ120に通知してもよい。
【0038】
撮像の準備が終了した後に、放射線撮像装置110に放射線160が照射され、放射線160に応じた放射線画像が生成される。
図4に示されるように、放射線160は、複数のパルスとして放射線撮像装置110に照射されてもよい。放射線撮像装置110は、パルスごとに放射線画像を生成してもよい。放射線撮像装置110が動画撮像を実行する場合に、パルスごとの放射線画像が動画のフレームを構成してもよい。
【0039】
制御回路112は、撮像の準備中に、蓄積動作と読出し動作とを交互に実行する。
図4に示されるように、蓄積期間411の間に蓄積動作を実行し、その後の読出し期間412の間に、複数の画素Pに蓄積された電荷に基づく信号を読み出す。蓄積期間413~読出し期間418についても同様に、制御回路112は、少なくとも蓄積期間に蓄積された電荷に基づく信号を、その後の読出し期間において読み出す。撮像の準備中に画素Pから読み出される信号は、オフセット画像を生成するために使用される。
【0040】
読出し期間412において、時間長401にわたって蓄積された電荷に基づく信号が画素Pから読み出される。時間長401は、画素Pの前回の読出し動作が終了してから(すなわち、駆動信号がローレベルに変化してから)画素Pの今回の読出し動作が終了するまで(すなわち、駆動信号が再びローレベルに変化するまで)の時間の長さである。電荷が蓄積される他の時間長についても同様である。時間長401は、蓄積期間411を含む。読出し期間414において、時間長402にわたって蓄積された電荷に基づく信号が画素Pから読み出される。時間長402は、蓄積期間413を含む。
【0041】
図4に示される例では、蓄積期間413は、蓄積期間411よりも短い。これに起因して、時間長402は、時間長401よりも短い。そこで、読出し期間412に画素Pから読み出された信号を長時間オフセット信号と表し、読出し期間414に画素Pから読み出された信号を短時間オフセット信号と表す。
【0042】
画像生成回路113は、画素アレイ200に含まれる複数の画素Pのそれぞれから読み出された長時間オフセット信号に基づいて、長期間オフセット画像Sを生成する。長期間オフセット画像Sはm行n列の行列として表され、画素P(i,j)から読み出された信号がこの行列の(i,j)成分となる。画像生成回路113は、画素アレイ200に含まれる複数の画素Pのそれぞれから読み出された短時間オフセット信号に基づいて、短期間オフセット画像Tを生成する。短期間オフセット画像Tは、m行n列の行列として表され、画素P(i,j)から読み出された信号がこの行列の(i,j)成分となる。
【0043】
制御回路112は、蓄積期間411~読出し期間414における動作を繰り返し実行する。すなわち、蓄積期間415~読出し期間418においても蓄積期間411~読出し期間414と同じ動作が実行される。このように、制御回路112は、撮像の準備中に、長時間オフセット信号を読み出す読出し動作と、短時間オフセット信号を読み出す読出し動作とを交互に実行する。
【0044】
制御回路112は、撮像の準備が終了した後に、動画像の撮像(すなわち、複数の放射線画像の撮像)を開始する。具体的に、制御回路112は、蓄積動作と読出し動作とを交互に実行する。
図4に示されるように、蓄積期間421の間に蓄積動作を実行し、その後の読出し期間422の間に、複数の画素Pに蓄積された電荷に基づく信号を読み出す。蓄積期間423~読出し期間428についても同様に、制御回路112は、少なくとも蓄積期間に蓄積された電荷に基づく信号を、その後の読出し期間において読み出す。撮像の準備が終了した後に画素Pから読み出される信号は、放射線画像及びオフセット画像を生成するために使用される。
【0045】
読出し期間422において、時間長403にわたって蓄積された電荷に基づく信号が画素Pから読み出される。時間長403は、蓄積期間421を含む。蓄積期間421は、放射線撮像装置110に放射線160が照射されている期間を含む。したがって、時間長403は、放射線撮像装置110に放射線160が照射されている期間を含む。時間長403は、時間長401に等しくてもよい。読出し期間424において、時間長404にわたって蓄積された電荷に基づく信号が画素Pから読み出される。時間長404は、蓄積期間423を含む。時間長404は、放射線撮像装置110に放射線160が照射されている期間を含まない。時間長404は、時間長402に等しくてもよい。
【0046】
図4に示される例では、蓄積期間423は、蓄積期間421よりも短い。これに起因して、時間長404は、時間長403よりも短い。読出し期間422に画素Pから読み出された信号を放射線信号と表し、読出し期間424に画素Pから読み出された信号を撮像時オフセット信号と表す。放射線信号は、蓄積期間421に放射線撮像装置110に照射された放射線160に応じた成分を含む。蓄積期間423を蓄積期間421よりも短くすることによって、放射線撮像装置110によって生成される動画像のフレームレートを向上できる。
【0047】
画像生成回路113は、画素アレイ200に含まれる複数の画素Pのそれぞれから読み出された放射線信号に基づいて、放射線画像Xを生成する。放射線画像Xはm行n列の行列として表され、画素P(i,j)から読み出された信号がこの行列の(i,j)成分となる。画像生成回路113は、画素アレイ200に含まれる複数の画素Pのそれぞれから読み出された撮像時オフセット信号に基づいて、撮像時オフセット画像Uを生成する。撮像時オフセット画像Uは、m行n列の行列として表され、画素P(i,j)から読み出された信号がこの行列の(i,j)成分となる。
【0048】
制御回路112は、蓄積期間421~読出し期間424における動作を繰り返し実行する。すなわち、蓄積期間425~読出し期間428においても蓄積期間421~読出し期間424と同じ動作が実行される。このように、制御回路112は、撮像の準備が終了した後に(例えば、動画像の撮像中に)、放射線信号を読み出す読出し動作と、撮像時オフセット信号を読み出す読出し動作とを交互に実行する。
【0049】
続いて、画像生成回路113が、長期間オフセット画像Sと、短期間オフセット画像Tと、撮像時オフセット画像Uとを用いて放射線画像Xを補正する方法について説明する。上述したように、長期間オフセット画像S、短期間オフセット画像T、撮像時オフセット画像U及び放射線画像Xの各成分は、長時間オフセット信号、短時間オフセット信号、撮像時オフセット信号及び放射線信号によってそれぞれ与えられる。以下の方法では、放射線信号が長時間オフセット信号、短時間オフセット信号及び撮像時オフセット信号を用いて補正される。
【0050】
上述したように、制御回路112は、撮像の準備中に、長期間オフセット画像Sの生成と短期間オフセット画像Tの生成とを交互に実行する。これによって、複数の長期間オフセット画像Sと複数の短期間オフセット画像Tとが生成される。画像生成回路113は、撮像の準備中に、複数の長期間オフセット画像Sを平均化することによって1つの長期間オフセット画像Sを作成し、後続の処理のために画像生成回路113のメモリに記憶する。同様に、画像生成回路113は、撮像の準備中に、複数の短期間オフセット画像Tを平均化することによって1つの短期間オフセット画像Tを作成し、後続の処理のために画像生成回路113のメモリに記憶する。このように複数のオフセット画像を平均化することによって、オフセット画像に含まれるノイズを低減できる。平均化に使用されるオフセット画像の数は、
図4に示されるように2つであってもよいし、3つ以上であってもよい。平均化に使用されるオフセット画像の数は、事前に設定されていてもよい。
【0051】
撮像の準備が終了した後に、画像生成回路113は、放射線画像Xと撮像時オフセット画像Uとを生成し、画像生成回路113のメモリに記憶する。画像生成回路113は、メモリから長時間オフセット画像Sを読み出し、放射線画像Xから長時間オフセット画像Sを減算することによって、放射線残像画像(図の「X-S」)を生成する。また、画像生成回路113は、メモリから短時間オフセット画像Tを読み出し、撮像時オフセット画像Uから短時間オフセット画像Tを減算することによって、オフセット残像画像(図の「U-T」)を生成する。
【0052】
放射線残像画像及びオフセット残像画像のそれぞれに含まれる残像成分は、画素Pに電荷が蓄積される時間長に比例する。そこで、画像生成回路113は、時間長404に対する時間長403の比率(すなわち、時間長403を時間長404で除算した値)に等しい係数kをオフセット残像画像の各要素に乗算することによって、調整残像画像(図の「k(U-T)」)を生成する。その後、画像生成回路113は、放射線残像画像から調整残像画像を減算することによって、放射線画像X’(=X-kU+(kT-S))を生成する。放射線画像X’は、長時間オフセット画像Sと、短時間オフセット画像Tと、撮像時オフセット画像Uと、係数kとを用いて放射線画像Xを補正することによって得られる画像である。画像生成回路113は、補正後の放射線画像X’をコンピュータ120へ送信する。
【0053】
上述の放射線画像X’を生成するための計算順序は一例であり、他の順序で計算されてもよい。放射線画像X’、すなわちX-S-k(U-T)は、X-kU+(kT-S)と変形される。そこで、画像生成回路113は、撮像の準備中に、長時間オフセット画像Sと、短時間オフセット画像Tと、係数kとを用いてkT-Sを算出し、この値を補正値として画像生成回路113のメモリに記憶してもよい。係数kは、駆動回路210が画素アレイ200にオン信号を供給するタイミングの事前の設定に基づいて決定されうる。画像生成回路113は、動画像の撮像中に、撮像時オフセット画像Uと、メモリに記憶されている補正値と、係数kとを用いて、放射線画像Xを補正してもよい。このように、長時間オフセット画像S及び短時間オフセット画像Tを記憶する代わりに補正値を記憶することによって、画像生成回路113のメモリ消費量を低減できる。
【0054】
続いて、長時間オフセット画像Sの取得と短時間オフセット画像Tの取得とを交互に実行することの技術的意義について説明する。駆動線Vg1~Vgmは、画素アレイ200内で、様々な容量結合を有する。例えば、駆動線Vg2は、信号線Sig1~Signと画素アレイ200の複数箇所で交差し、この交点で容量結合を有する。駆動線Vg2は、駆動線Vg3に平行に延在するため、駆動線Vg3とも容量結合を有する。駆動線Vg2は、バイアス線Bsの一部に平行に延在するため、バイアス線Bsとも容量結合を有する。さらに、駆動線Vg2は、スイッチ素子Sと変換素子Cとの接続部のノードと容量結合を有する。
【0055】
このような容量結合に起因して、駆動線Vgに供給される駆動信号のレベルを変化することに応じて、信号線Sigやバイアス配線Bs、他の駆動線Vg、スイッチ素子Sと変換素子Cとの接続部のノードの電位も変動してしまう。電位が変動した信号線Sig、バイアス配線Bs、駆動線Vg、スイッチ素子Sと変換素子Cとの接続部のノードは、時間の経過とともに元の電位に戻る。しかし、蓄積期間の長さによって戻る量が異なる。
【0056】
また、スイッチ素子Sは、オフ状態であったとしても、リーク電流が流れうる。スイッチ素子Sをオフした際に、制御端子(ゲート)からの電荷注入に起因して、変換素子Cとスイッチ素子Sとの間のノードがローレベル側に変化する。そのため、スイッチ素子Sをオフした直後に、主端子(ソース、ドレイン)間に電位差が発生し、リーク電流が流れる。リーク電流は、スイッチ素子の2つの主端子(ソース、ドレイン)間の電位差に依存する。蓄積期間にリーク電流が流れると、この電位差が小さくなるため、蓄積期間の長さに応じたリーク電流が異なる。また、スイッチ素子Sにリーク電流が流れると、信号線Sigやバイアス配線Bsにも電流が流れる。
【0057】
以上の理由から、長時間オフセット画像Sと短時間オフセット画像Tとをそれぞれ複数回連続して取得する場合と、長時間オフセット画像Sと短時間オフセット画像Tとを交互に取得する場合で、取得されるオフセット画像が異なりうる。上述の放射線撮像装置110の動作では、撮像の準備中に、長時間オフセット画像Sと短時間オフセット画像Tとが交互に取得され、撮像の準備が終了した後に、放射線画像Xと撮像時オフセット画像Uとが交互に取得される。それによって、撮像の準備中の画素アレイ200内の容量結合の状態と、放射線画像の撮像中の画素アレイ200内の容量結合の状態とを近づけることができるため、放射線画像Xに含まれるノイズを精度よく低減できる。
【0058】
図4の動作において、画像生成回路113は、放射線信号よりも後に取得された撮像時オフセット信号を用いてこの放射線信号を補正する。これに代えて、画像生成回路113は、放射線信号よりも前に取得された撮像時オフセット信号を用いてこの放射線信号を補正してもよい。
【0059】
上述の例では、時間長401は時間長403に等しい。これに代えて、これらの時間長は互いに異なってもよい。このように時間長が異なる場合に、画像生成回路113は、時間長401に対する時間長403の比率を長時間オフセット画像Sの各要素に乗算した後に、放射線画像Xから減算してもよい。上述の例では、時間長402は時間長404に等しい。これに代えて、これらの時間長は互いに異なってもよい。このように時間長が異なる場合に、画像生成回路113は、時間長402に対する時間長404の比率を短時間オフセット画像Tの各要素に乗算した後に、撮像時オフセット画像Uから減算してもよい。
【0060】
続いて、
図5を参照して、上述の
図4の動作とは異なる放射線撮像装置110の動作例を説明する。
図4の動作において、短時間オフセット画像T及び撮像時オフセット画像Uを生成するために、制御回路112は、複数の画素行を1つずつ選択する。
図5の動作において、短時間オフセット画像T及び撮像時オフセット画像Uを生成するために、制御回路112は、複数の画素行を2つずつ選択する。具体的に、制御回路112は、(2h-1)行目の画素行と2h行目の画素行とを同時に選択する(h=1,…,m/2)。このように複数の画素行を同時に選択する動作はビニング動作と呼ばれうる。
図5の例では2つの画素行が同時に選択されるが、3つ以上の画素行が同時に選択されてもよい。
【0061】
例えば、制御回路112は、読出し期間424において駆動線Vg1に供給される駆動信号がハイレベルになる期間(1行目の画素行の選択期間と呼ばれてもよい)に、1行目の画素行と2行目の画素行とを選択する。これによって、画素P(1,j)に蓄積された電荷と画素P(2,j)に蓄積された電荷とに基づく撮像時オフセット信号が読み出される。
【0062】
ビニング動作によって撮像時オフセット信号を読み出すことによって、撮像時オフセット信号を読み出すための読出し期間(例えば、読出し期間424)を短縮できる。その結果、動画像のフレームレートを向上できる。蓄積期間423は、蓄積期間421よりも短くてもよいし、蓄積期間421と同じ長さであってもよい。蓄積期間423が蓄積期間421と同じ長さであったとしても、撮像時オフセット信号をビニング動作によって読み出すことによって、動画像のフレームレートを向上できる。撮像時オフセット信号をビニング動作によって読み出すため、撮像時オフセット信号との差分に使用される短期間オブセット信号もビニング動作によって読み出されてもよい。これに代えて、短期間オブセット信号が通常の動作(1行ずつの選択)によって読み出されてもよい。この場合に画素Pに電荷が蓄積される時間長を調整するための係数が短期間オフセット信号に乗算されてもよい。
【0063】
図5の動作において、長時間オフセット画像S及び放射線画像Uを生成するために、制御回路112は、
図4の動作と同様に、複数の画素行を1つずつ選択してもよい。例えば、制御回路112は、読出し期間422において駆動線Vg1に供給される駆動信号がハイレベルになる期間(1行目の画素行の選択期間と呼ばれてもよい)に、1行目の画素行を選択し、他の行(例えば、2行目の画素行)を選択しない。これによって、画素P(1,j)に蓄積された電荷に基づく放射線信号が読み出される。
図5の動作に代えて、長時間オフセット画像S及び放射線画像Uを生成するために、ビニング動作が行われてもよい。
【0064】
続いて、
図5の動作における放射線画像の生成方法について説明する。画像生成回路113は、
図4の説明と同様にして、撮像の準備中に、長時間オフセット画像Sを生成する。また、画像生成回路113は、撮像の準備中に、画素アレイ200に含まれる複数の画素Pからビニング動作によって読み出された短時間オフセット信号に基づいて、短期間オフセット画像T’を生成する。短期間オフセット画像T’は(m/2)行n列の行列として表され、画素P(2i-1,j)及び画素P(2i,j)から読み出された信号がこの行列の(i,j)成分となる(i=1,…,m/2、j=1,…,n)。画像生成回路113は、複数の短期間オフセット画像T’を平均化することによって1つの短期間オフセット画像T’を生成してもよい。
【0065】
その後、画像生成回路113は、短期間オフセット画像T’を放射線画像Xと同じサイズにするために、短期間オフセット画像T’のサイズを調整することによって短期間オフセット画像Tを生成する。具体的に、画像生成回路113は、短期間オフセット画像T’の(Ceiling(i/2),j)成分を1/2倍した値を短期間オフセット画像Tの(i,j)成分とする(i=1,…,m、j=1,…,n)。ここで、Ceilingは天井関数、すなわち小数点の切り上げを表す。1/2倍にするのは、短期間オフセット画像T’の各成分が2つの画素の信号の合計を表すためである。
【0066】
その後、画像生成回路113は、
図4の説明と同様にして、撮像の準備が終了した後に、放射線画像Xを生成する。また、画像生成回路113は、撮像の準備が終了した後に、画素アレイ200に含まれる複数の画素Pからビニング動作によって読み出された撮像時オフセット信号に基づいて、撮像時オフセット画像U’を生成する。撮像時オフセット画像U’の生成方法は、短時間オフセット画像T’の生成方法と同様のため、説明を省略する。その後、画像生成回路113は、撮像時オフセット画像U’を放射線画像Xと同じサイズにするために、撮像時オフセット画像U’のサイズを調整することによって撮像時オフセット画像Uを生成する。撮像時オフセット画像Uの生成方法は、短時間オフセット画像Tの生成方法と同様のため、説明を省略する。
【0067】
画像生成回路113は、以上のように生成された長時間オフセット画像Sと、短時間オフセット画像Tと、撮像時オフセット画像Uとを用いて放射線画像Xを補正することによって、放射線画像X’を生成する。放射線画像Xの補正処理は、
図4の補正処理400と同様であってもよいため、説明を省略する。
【0068】
オフセット画像のサイズの調整は、他の順序で行われてもよい。例えば、画像生成回路113は、オフセット画像のサイズを調整せずに補正処理400の調整画像を生成し、この調整画像のサイズを調整してもよい。
【0069】
図5に示されるように、撮像時オフセット信号として読み出される電荷の蓄積時間の長さに対する、放射線信号として読み出される電荷の蓄積時間の長さの比率は、画素行ごとに異なる。この相違は、放射線信号を通常の動作(すなわち、1つの画素行ずつ)によって読出し、撮像時オフセット信号をビニング動作によって読み出すことに起因する。例えば、1行目の画素行では、時間長503にわたって画素Pに蓄積された電荷に基づく放射線信号が読み出され、時間長504にわたって画素Pに蓄積された電荷に基づく撮像時オフセット信号が読み出される。8行目の画素行では、時間長507にわたって画素Pに蓄積された電荷に基づく放射線信号が読み出され、時間長508にわたって画素Pに蓄積された電荷に基づく撮像時オフセット信号が読み出される。時間長507は時間長503と異なる。時間長508は時間長504と異なる。また、時間長507に対する時間長508の比率は、時間長504に対する時間長503の比率と異なる。
【0070】
そこで、画像生成回路113は、補正処理400において、画素行ごとに個別の係数kを使用してもよい。具体的に、画像生成回路113は、1行目の画素行に含まれる画素Pについて、時間長504に対する時間長503の比率を係数kとして使用してもよい。画像生成回路113は、8行目の画素行に含まれる画素Pについて、時間長508に対する時間長507の比率を係数kとして使用してもよい。
【0071】
複数の画素行のそれぞれについて、長時間オフセット信号として読み出される電荷の蓄積時間の長さは、放射線信号として読み出される電荷の蓄積時間の長さに等しくてもよい。例えば、1行目の画素行について、時間長501は時間長503に等しくてもよく、時間長502は時間長504に等しくてもよい。8行目の画素行について、時間長505は時間長507に等しくてもよく、時間長506は時間長508に等しくてもよい。
【0072】
続いて、
図6を参照して、上述の
図4の動作とは異なる放射線撮像装置110の動作例を説明する。
図6の動作では、
図5の動作と同様に、ビニング動作によって短時間オフセット信号及び撮像時オフセット信号を読み出す。
図6の動作では、画素アレイ200に含まれる複数の画素Pのそれぞれから信号を読み出すために、複数の画素行の中央から外側に向けて画素行を選択する。具体的に、
図5の例では、制御回路112は、長期間オフセット信号及び放射線信号を読み出すために、4行目、5行目、3行目、6行目、2行目、7行目、1行目、8行目の順に画素行を選択する。制御回路112は、短期間オフセット信号及び撮像時オフセット信号を読み出すために、3行目及び4行目、5行目及び6行目、1行目及び2行目、7行目及び8行目の順に画素行を選択する。このように、
図6の動作において、制御回路112は、複数の画素行の両端に位置する2つの画素行よりも先に、複数の画素行の中央に位置する画素行を選択する。
【0073】
図6の動作では、先に選択される画素行に対する係数kが、後に選択される画素行に対する係数kよりも小さくなる。係数kが大きいほど、短時間オフセット信号及び撮像時オフセット信号に含まれるノイズが拡大されうる。そのため、放射線画像の関心領域になる可能性が高い画像の中央に位置する画素Pに対する係数kが小さくなるように画素行を選択することによって、ノイズによる放射線画像の画質の低下をさらに低減できる。係数kは、大きいとノイズを増加させる場合がある。そのため、係数kは、残像の影響度合いに応じて、電荷の蓄積時間の長さの比率よりも小さい値に設定されてもよい。
【0074】
続いて、
図7を参照して、上述の
図4の動作とは異なる放射線撮像装置110の動作例を説明する。
図7の動作では、
図5の動作と同様に、ビニング動作によって短時間オフセット信号及び撮像時オフセット信号を読み出す。
図7の動作では、制御回路112は、ビニング動作によって撮像時オフセット信号を読み出すために選択する画素行の組み合わせを読出し期間ごとに切り替える。同様に、制御回路112は、ビニング動作によって撮像時オフセット信号を読み出すために選択する画素行の組み合わせを読出し期間ごとに切り替える。
【0075】
まず、撮像準備中の動作について説明する。蓄積期間711~読出し期間713の動作と、蓄積期間715~読出し期間717の動作とは、
図4の蓄積期間411~読出し期間413の動作と同様であってもよいため、説明を省略する。読出し期間714において、制御回路112は、制御回路112は、(2h-1)行目の画素行と2h行目の画素行とを同時に選択する(h=1,…,m/2)。これによって、画素P(2h-1,j)に蓄積された電荷と画素P(2h,j)に蓄積された電荷とに基づく撮像時オフセット信号が読み出される。読出し期間718において、制御回路112は、制御回路112は、2h行目の画素行と(2h+1)行目の画素行とを同時に選択する(h=1,…,m/2-1)。これによって、画素P(2h-1,j)に蓄積された電荷と画素P(2h,j)に蓄積された電荷とに基づく撮像時オフセット信号が読み出される。なお、複数の画素行の両端に位置する画素行(すなわち、1行目及びm行目)は1行ずつ選択される。
【0076】
画像生成回路113は、
図4の動作と同様にして、長時間オフセット画像Sを生成する。画像生成回路113は、読出し期間714に読み出された短時間オフセット信号を用いて短時間オフセット画像T1’を生成し、読出し期間718に読み出された短時間オフセット信号を用いて短時間オフセット画像T2’を生成する。画像生成回路113は、短時間オフセット画像T1’及び短時間オフセット画像T2’のサイズを調整することによって、短時間オフセット画像T1及び短時間オフセット画像T2をそれぞれ生成する。画像生成回路113は、短時間オフセット画像T1と短時間オフセット画像T2とを平均化することによって、短時間オフセット画像Tを生成する。このように異なる画素行の組み合わせを平均化することによって、短時間オフセット画像Tの列方向(図の縦方向)の解像度を向上できる。
図7の例では、1つの短時間オフセット画像T1’及び1つの短時間オフセット画像T2’のみを示している。短時間オフセット画像Tを生成するために、複数の短時間オフセット画像T1’及び短時間オフセット画像T2’が平均化されてもよい。
【0077】
続いて、撮像の準備が終了した後(例えば、動画像の撮像中)の動作について説明する。読出し期間721~読出し期間727の動作は、読出し期間712~読出し期間718の動作と同様であってもよいため、説明を省略する。
【0078】
画像生成回路113は、
図4の動作と同様にして、放射線画像Xを生成する。画像生成回路113は、読出し期間723に読み出された撮像時オフセット信号を用いて撮像時オフセット画像U1’を生成し、読出し期間727に読み出された撮像時オフセット信号を用いて撮像時オフセット画像U2’を生成する。画像生成回路113は、撮像時オフセット画像U1’及び撮像時オフセット画像U2’のサイズを調整することによって、撮像時オフセット画像U1及び撮像時オフセット画像U2をそれぞれ生成する。画像生成回路113は、撮像時オフセット画像U1と撮像時オフセット画像U2とを平均化することによって、撮像時オフセット画像Uを生成する。このように異なる画素行の組み合わせを平均化することによって、撮像時オフセット画像Uの列方向(図の縦方向)の解像度を向上できる。
【0079】
その後、画像生成回路113は、以上のように生成された長時間オフセット画像Sと、短時間オフセット画像Tと、撮像時オフセット画像Uとを用いて放射線画像Xを補正することによって、放射線画像X’を生成する。放射線画像Xの補正処理は、
図4の補正処理400と同様であってもよいため、説明を省略する。上述のように、撮像時オフセット画像Uは、放射線160が照射される蓄積期間724の前の読出し期間723に読み出された撮像時オフセット信号と、蓄積期間724の後の読出し期間727に読み出された撮像時オフセット信号とを用いて生成される。これによって、放射線画像Xのノイズをさらに精度よく低減できる。
【0080】
上述の実施形態では、画素アレイ200が放射線画像の生成に使用される画素Pのみを含む。これに代えて、画素アレイ200は、自動露出制御に使用される画素のように、放射線画像の生成以外のために使用される画素を含んでもよい。
【0081】
<実施形態のまとめ>
[項目1]
放射線撮像装置であって、
複数の画素行及び複数の画素列を構成するように配置されており、電荷を生成し蓄積する複数の画素と、
前記複数の画素の何れかを選択するための駆動信号を前記複数の画素に供給する駆動回路と、
前記駆動信号によって選択された画素に蓄積された電荷に基づく信号を読み出す読出し回路と、
前記読出し回路及び前記駆動回路を制御する制御回路と、
放射線画像を生成する画像生成回路と、を備え、
前記制御回路は、前記複数の画素のうちの少なくとも第1の画素について、
撮像の準備中に、
第1の時間長にわたって前記第1の画素に蓄積された電荷に基づく第1のオフセット信号を読み出す第1の読出し動作と、
前記第1の時間長よりも短い第2の時間長にわたって前記第1の画素に蓄積された電荷に基づく第2のオフセット信号を読み出す第2の読出し動作と、
を交互に実行し、
撮像の準備が終了した後に、
前記放射線撮像装置に放射線が照射されている期間を含む第3の時間長にわたって前記第1の画素に蓄積された電荷に基づく放射線信号を読み出す第3の読出し動作と、
前記放射線撮像装置に放射線が照射されている期間を含まず前記第3の時間長よりも短い第4の時間長にわたって前記第1の画素に蓄積された電荷に基づく第3のオフセット信号を読み出す第4の読出し動作と、
を交互に実行するように前記読出し回路及び前記駆動回路を制御し、
前記画像生成回路は、前記第1のオフセット信号と、前記第2のオフセット信号と、前記第3のオフセット信号とを用いて前記放射線信号を補正することに基づいて、前記放射線画像を生成する、放射線撮像装置。
[項目2]
前記複数の画素行は、前記第1の画素を含む第1の画素行と、第2の画素を含む第2の画素行とを含み、
前記駆動回路は、第1の選択期間に、前記第1の画素行と前記第2の画素行とを選択することによって、前記第1の画素に蓄積された電荷と前記第2の画素に蓄積された電荷とに基づく前記第3のオフセット信号を読み出す、項目1に記載の放射線撮像装置。
[項目3]
前記駆動回路は、第2の選択期間に、前記第1の画素行を選択することによって、前記第1の画素に蓄積された電荷に基づく前記放射線画像を読み出し、
前記駆動回路は、前記第2の選択期間に、前記第2の画素行を選択しない、項目2に記載の放射線撮像装置。
[項目4]
前記複数の画素行は、第3の画素を含む第3の画素行をさらに含み、
前記駆動回路は、第3の選択期間に、前記第1の画素行と前記第3の画素行とを選択することによって、前記第1の画素に蓄積された電荷と前記第3の画素に蓄積された電荷とに基づく前記第3のオフセット信号を読み出し、
前記駆動回路は、前記第1の選択期間に、前記第3の画素行を選択せず、前記第3の選択期間に、前記第2の画素行を選択しない、項目3に記載の放射線撮像装置。
[項目5]
前記画像生成回路は、前記第1のオフセット信号と、前記第2のオフセット信号と、前記第1の選択期間に読み出された前記第3のオフセット信号と、前記第3の選択期間に読み出された前記第3のオフセット信号とを用いて、前記第2の選択期間に読み出された前記放射線信号を補正する、項目4に記載の放射線撮像装置。
[項目6]
前記放射線撮像装置による撮像は、撮像の準備が終了した後に、
前記放射線撮像装置に放射線が照射されている期間を含み、前記複数の画素が何れも選択されない第1の蓄積期間と、
少なくとも前記第1の蓄積期間に蓄積した電荷に基づく信号を読み出すために、前記複数の画素のそれぞれが選択される第1の読出し期間と、
前記放射線撮像装置に放射線が照射されている期間を含まず、前記複数の画素が何れも選択されない第2の蓄積期間と、
少なくとも前記第2の蓄積期間に蓄積した電荷に基づく信号を読み出すために、前記複数の画素のそれぞれが選択される第2の読出し期間と、
を含み、
前記第2の蓄積期間は、前記第1の蓄積期間よりも短い、項目1乃至5の何れか1項に記載の放射線撮像装置。
[項目7]
前記駆動回路は、前記複数の画素行のそれぞれが選択される1つの読出し期間において、前記複数の画素行の両端に位置する2つの画素行よりも先に、前記複数の画素行の中央に位置する画素行を選択する、項目1乃至6の何れか1項に記載の放射線撮像装置。
[項目8]
前記画像生成回路は、
撮像の準備中に、前記第1のオフセット信号及び前記第2のオフセット信号を用いて算出した補正値をメモリに記憶し、
撮像の準備が終了した後に、前記第3のオフセット信号と、前記メモリに記憶されている前記補正値とを用いて、前記放射線信号を補正する、項目1乃至7の何れか1項に記載の放射線撮像装置。
[項目9]
前記画像生成回路は、前記第4の時間長に対する前記第3の時間長の比率をさらに用いて前記放射線信号を補正する、項目1乃至8の何れか1項に記載の放射線撮像装置。
[項目10]
前記制御回路は、前記複数の画素のうちの第4の画素について、
撮像の準備中に、
第5の時間長にわたって前記第4の画素に蓄積された電荷に基づく第4のオフセット信号を読み出す第5の読出し動作と、
前記第5の時間長よりも短い第6の時間長にわたって前記第4の画素に蓄積された電荷に基づく第5のオフセット信号を読み出す第6の読出し動作と、
を交互に実行し、
撮像の準備が終了した後に、
前記放射線撮像装置に放射線が照射されている期間を含む第7の時間長にわたって前記第4の画素に蓄積された電荷に基づく第2の放射線信号を読み出す第7の読出し動作と、
前記放射線撮像装置に放射線が照射されている期間を含まず前記第7の時間長よりも短い第8の時間長にわたって前記第4の画素に蓄積された電荷に基づく第6のオフセット信号を読み出す第8の読出し動作と、
を実行するように前記読出し回路及び前記駆動回路を制御し、
前記画像生成回路は、前記第4のオフセット信号と、前記第5のオフセット信号と、前記第6のオフセット信号と、前記第8の時間長に対する前記第7の時間長の比率を用いて前記第2の放射線信号を補正することにさらに基づいて、前記放射線画像を生成し、
前記第8の時間長に対する前記第7の時間長の前記比率は、前記第4の時間長に対する前記第3の時間長の前記比率とは異なる、項目9に記載の放射線撮像装置。
[項目11]
前記画像生成回路は、前記放射線信号よりも後に取得された前記第3のオフセット信号を用いて前記放射線信号を補正する、項目1乃至10の何れか1項に記載の放射線撮像装置。
[項目12]
前記第3の時間長は前記第1の時間長に等しく、前記第4の時間長は前記第2の時間長に等しい、項目1乃至11の何れか1項に記載の放射線撮像装置。
[項目13]
項目1乃至12の何れか1項に記載の放射線撮像装置と、
前記放射線撮像装置によって得られた放射線画像を処理する信号処理手段と
を備えることを特徴とする放射線撮像システム。
[項目14]
複数の画素行及び複数の画素列を構成するように配置されており、電荷を生成し蓄積する複数の画素を備える放射線撮像装置の制御方法であって、
前記複数の画素のうちの少なくとも第1の画素について、
撮像の準備中に、
第1の時間長にわたって前記第1の画素に蓄積された電荷に基づく第1のオフセット信号を読み出す第1の読出し動作と、
前記第1の時間長よりも短い第2の時間長にわたって前記第1の画素に蓄積された電荷に基づく第2のオフセット信号を読み出す第2の読出し動作と、
を交互に実行する工程と、
撮像の準備が終了した後に、
前記放射線撮像装置に放射線が照射されている期間を含む第3の時間長にわたって前記第1の画素に蓄積された電荷に基づく放射線信号を読み出す第3の読出し動作と、
前記放射線撮像装置に放射線が照射されている期間を含まず前記第3の時間長よりも短い第4の時間長にわたって前記第1の画素に蓄積された電荷に基づく第3のオフセット信号を読み出す第4の読出し動作と、
を交互に実行する工程と、
前記第1のオフセット信号と、前記第2のオフセット信号と、前記第3のオフセット信号とを用いて前記放射線信号を補正することに基づいて、放射線画像を生成する工程と、を有する制御方法。
【0082】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0083】
100 放射線撮像システム、110 放射線撮像装置、200 画素アレイ