(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178822
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】ブッシュの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 65/44 20060101AFI20241218BHJP
F16F 1/38 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
B29C65/44
F16F1/38 F
F16F1/38 G
F16F1/38 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097258
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】522297236
【氏名又は名称】株式会社プロスパイラ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(74)【代理人】
【識別番号】100179947
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 晃太郎
(72)【発明者】
【氏名】大津 一高
【テーマコード(参考)】
3J059
4F211
【Fターム(参考)】
3J059AD04
3J059BA42
3J059BC06
3J059BD05
3J059BD06
3J059EA12
3J059GA02
4F211AA29
4F211AD03
4F211AG08
4F211AH17
4F211AR06
4F211AR07
4F211AR12
4F211TA01
4F211TC07
4F211TH17
4F211TH21
4F211TN16
4F211TW15
(57)【要約】
【課題】芯金に樹脂層を設けるに際して厳しい寸法精度が要求されることがなく、さらに、後加工を要する余剰樹脂層の発生が抑制される、ブッシュの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、芯金2の外周面F2が樹脂層3によって被覆された内側部材4が弾性層5を介して外筒6の内側に配置されたブッシュを得るための、ブッシュの製造方法である。樹脂層3として、樹脂製の樹脂筒13を準備する樹脂筒準備工程と、芯金2を準備する、芯金準備工程と、芯金2を加熱する、芯金加熱工程と、前記芯金加熱工程後の芯金2を、樹脂筒13の軸線方向端13aに形成された開口部A13から当該樹脂筒13の内部に差し込むことによって、当該芯金2と樹脂筒13とを結合させる、結合工程と、を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金の外周面が樹脂層によって被覆された内側部材が弾性層を介して外筒の内側に配置されたブッシュを得るための、ブッシュの製造方法であって、
前記樹脂層として、樹脂製の樹脂筒を準備する樹脂筒準備工程と、
前記芯金を準備する、芯金準備工程と、
前記芯金を加熱する、芯金加熱工程と、
前記芯金加熱工程後の前記芯金を、前記樹脂筒準備工程において準備された前記樹脂筒の軸線方向端に形成された開口部から当該樹脂筒の内部に差し込むことによって、当該芯金と前記樹脂筒とを結合させる、結合工程と、を含む、ブッシュの製造方法。
【請求項2】
前記芯金は、同一の軸線上で互いに突き当てることによって1つの芯金に形作られる、2つの芯金部品によって形成されるものであり、
前記芯金準備工程は、前記2つの芯金部品を準備する工程であり、
前記芯金加熱工程は、前記2つの芯金部品のそれぞれを加熱する工程であり、
前記結合工程は、前記加熱工程後の前記2つの芯金部品のそれぞれを、当該2つの芯金部品の突き当て端が前記同一の軸線上で互いに突き当たるまで、前記樹脂筒の軸線方向端に形成された開口部から当該樹脂筒の内部に差し込むことによって、当該2つの芯金部品と前記樹脂筒とを結合させる工程である、請求項1に記載された、ブッシュの製造方法。
【請求項3】
前記芯金の外周面は、前記芯金部品の外周面であり、さらに、前記芯金部品の外周面は、当該芯金部品の前記突き当て端に向かうにしたがって径方向内側に先細るテーパ面を含んでいる、請求項2に記載された、ブッシュの製造方法。
【請求項4】
前記芯金加熱工程は、巻き線を用いた誘導加熱によって前記芯金を加熱する工程である、請求項1に記載された、ブッシュの製造方法。
【請求項5】
前記芯金加熱工程において準備される前記芯金は、当該芯金の外周面のうちの前記樹脂層によって被覆される外周面の少なくとも一部に凹凸を有する、芯金である、請求項1に記載された、ブッシュの製造方法。
【請求項6】
前記芯金準備工程は、前記芯金の外周面に粗さ加工を行う粗さ加工工程を含み、前記凹凸は、前記粗さ加工工程によって形成されるものである、請求項5に記載された、ブッシュの製造方法。
【請求項7】
前記粗さ加工に、レーザー加工を用いる、請求項6に記載された、ブッシュの製造方法。
【請求項8】
前記弾性層は、前記芯金の外周面に結合する弾性層であり、
前記粗さ加工工程は、前記芯金の外周面の、前記樹脂筒と結合する領域とともに、当該芯金の外周面の、前記弾性層と結合する領域にレーザー加工を行う工程である、請求項6に記載された、ブッシュの製造方法。
【請求項9】
前記芯金準備工程は、前記樹脂筒として、当該樹脂筒の外周側に、前記弾性層及び前記外筒が一体的に結合された樹脂筒を準備する工程である、請求項1に記載された、ブッシュの製造方法。
【請求項10】
前記結合工程の後に、前記樹脂筒の外周側に、前記弾性層及び前記外筒を一体に結合する、一体化工程をさらに含む、請求項1に記載された、ブッシュの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブッシュの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芯金の外周面が樹脂層によって被覆された内側部材が弾性層を介して外筒の内側に配置されたブッシュを得るための、従来のブッシュの製造方法としては、芯金をインサート品として樹脂層を射出成形する、いわゆる、インサート成形が知られている(例えば、特許文献1参照。)。インサート成形によれば、金型の合わせ面に芯金を嵌め込んだ後、当該合わせ面に形成されたキャビティ内に樹脂材料を射出することによって、樹脂層を有する芯金を製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、金型を用いた成形の場合、金型の合わせ面からの樹脂材料の漏出を防止するため、インサート品(芯金)と金型とのそれぞれの寸法精度を高める必要がある。加えて、金型の合わせ面から樹脂材料が漏出した場合、成形品に生じた余剰樹脂層を除去する等の、後加工が必要となる。
【0005】
本発明の目的は、芯金に樹脂層を設けるに際して厳しい寸法精度が要求されることがなく、さらに、後加工を要する余剰樹脂層の発生が抑制される、ブッシュの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る、ブッシュの製造方法は、芯金の外周面が樹脂層によって被覆された内側部材が弾性層を介して外筒の内側に配置されたブッシュを得るための、ブッシュの製造方法であって、前記樹脂層として、樹脂製の樹脂筒を準備する樹脂筒準備工程と、前記芯金を準備する、芯金準備工程と、前記芯金を加熱する、芯金加熱工程と、前記芯金加熱工程後の前記芯金を、前記樹脂筒準備工程において準備された前記樹脂筒の軸線方向端に形成された開口部から当該樹脂筒の内部に差し込むことによって、当該芯金と前記樹脂筒とを結合させる、結合工程と、を含む。本発明に係る、ブッシュの製造方法によれば、芯金に樹脂層を設けるに際して厳しい寸法精度が要求されることがなく、さらに、後加工を要する余剰樹脂層の発生が抑制される。
【0007】
(2)上記(1)の、ブッシュの製造方法において、前記芯金は、同一の軸線上で互いに突き当てることによって1つの芯金に形作られる、2つの芯金部品によって形成されるものであり、前記芯金準備工程は、前記2つの芯金部品を準備する工程であり、前記芯金加熱工程は、前記2つの芯金部品のそれぞれを加熱する工程であり、前記結合工程は、前記加熱工程後の前記2つの芯金部品のそれぞれを、当該2つの芯金部品の突き当て端が前記同一の軸線上で互いに突き当たるまで、前記樹脂筒の軸線方向端に形成された開口部から当該樹脂筒の内部に差し込むことによって、当該2つの芯金部品と前記樹脂筒とを結合させる工程であることが好ましい。この場合、寸法精度の高いブッシュを製造することができる。
【0008】
(3)上記(2)の、ブッシュの製造方法において、前記芯金の外周面は、前記芯金部品の外周面であり、さらに、前記芯金部品の外周面は、当該芯金部品の前記突き当て端に向かうにしたがって径方向内側に先細るテーパ面を含んでいることが好ましい。この場合、耐久性の高いブッシュを製造することができる。
【0009】
(4)上記(1)~(3)のいずれか1つの、ブッシュの製造方法において、前記芯金加熱工程は、巻き線を用いた誘導加熱によって前記芯金を加熱する工程であることが好ましい。この場合、芯金の外周面全体を簡易かつ容易に加熱することができる。
【0010】
(5)上記(1)~(3)のいずれか1つの、ブッシュの製造方法において、前記芯金加熱工程において準備される前記芯金は、当該芯金の外周面のうちの前記樹脂層によって被覆される外周面の少なくとも一部に凹凸を有する、芯金であることが好ましい。この場合、芯金の外周面に樹脂層をより強固に固定することができる。
【0011】
(6)上記(1)~(5)のいずれか1つの、ブッシュの製造方法において、前記芯金準備工程は、前記芯金の外周面に粗さ加工を行う粗さ加工工程を含み、前記凹凸は、前記粗さ加工工程によって形成されるものであることが好ましい。この場合、芯金の外周面に樹脂層をより強固に固定することができる。
【0012】
(7)上記(6)の、ブッシュの製造方法において、前記粗さ加工に、レーザー加工を用いることが好ましい。この場合、容易且つ安価に、芯金の外周面に凹凸を設けることができる。
【0013】
(8)上記(7)の、ブッシュの製造方法において、前記弾性層は、前記芯金の外周面に結合する弾性層であり、前記粗さ加工工程は、前記芯金の外周面の、前記樹脂筒と結合する領域とともに、当該芯金の外周面の、前記弾性層と結合する領域にレーザー加工を行う工程であることが好ましい。この場合、前記樹脂筒と結合する領域とともに前記弾性層と結合する領域に、簡易かつ容易に凹凸を形成することができる。
【0014】
(9)上記(1)~(8)のいずれか1つの、ブッシュの製造方法において、前記芯金準備工程は、前記樹脂筒として、当該樹脂筒の外周側に、前記弾性層及び前記外筒が一体的に結合された樹脂筒を準備する工程とすることができる。この場合、予め樹脂層、弾性層及び外筒が一体的に結合された状態で、ブッシュを製造することができる。
【0015】
(10)上記(1)~(8)のいずれか1つの、ブッシュの製造方法において、前記結合工程の後に、前記樹脂筒の外周側に、前記弾性層及び前記外筒を一体に結合する、一体化工程をさらに含ませることができる。この場合、内側部材の製造後に別途、前記弾性層及び前記外筒を一体に結合することによって、ブッシュを製造することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、芯金に樹脂層を設けるに際して厳しい寸法精度が要求されることがなく、さらに、後加工を要する余剰樹脂層の発生が抑制される、ブッシュの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明である、ブッシュの製造方法を用いることによって製造可能な、ブッシュの一例を概略的に示す断面図である。
【
図2】
図1に示すブッシュの動作の一例を概略的に示す断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態である、ブッシュの製造方法を概略的に説明するための断面図である。
【
図4】
図3に示す芯金部品を概略的に示す断面図である。
【
図5】外形がストレートの芯金部品を用いた場合に生じ得る現象を概略的に示す断面図である。
【
図6】本発明である、ブッシュの製造方法を用いることによって製造可能な、ブッシュの他の例を概略的に示す断面図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態である、ブッシュの製造方法を概略的に説明するための断面図である。
【
図8】
図7に示す芯金部品を概略的に示す断面図である。
【
図9】
図6に示す内側部材を概略的に示す断面図である。
【
図10】ブッシュの内側部材の他の例を概略的に示す断面図である。
【
図11】
図10に示す内側部材をインサート成形するために使用可能な芯金の一例を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明に係る、いくつかの例示的な実施形態である、ブッシュの製造方法について説明をする。
【0019】
図1には、本発明である、ブッシュの製造方法を用いることによって製造可能な、ブッシュの一例が概略的に示されている。
【0020】
図1中、符号О1は、ブッシュの中心軸線である。
図1には、例示的なブッシュ1Aが当該ブッシュ1Aの中心軸線O1(以下、単に、「軸線O1」ともいう。)を含む断面で概略的に示されている。
【0021】
本開示において、軸線О1が延在する方向を「軸線方向」ともいう。また、本開示において、軸線O1に対して直交する方向を「軸直方向」又は「径方向」ともいう。特に、径方向のうち、軸線O1に近い側を「径方向内側」ともいい、また、軸線O1から遠い側を「径方向外側」ともいう。また、本開示において、軸線O1の周りで周方向に延在する方向を単に「周方向」ともいう。
【0022】
図1に示すように、前記ブッシュは、芯金2の外周面F2が樹脂層3によって被覆された内側部材4が弾性層5を介して外筒6の内側に配置されている。即ち、前記ブッシュは、内側部材4の外周面(F2)を被覆する樹脂層3と、樹脂層3の外周側に配置された弾性層5と、弾性層5の外周側に配置された外筒6とを備えている。
【0023】
ブッシュ1Aは、
図1に示すように、芯金2の外周面F2に結合する樹脂層3と、当該樹脂層3の外周面F3に結合する弾性層5と、当該弾性層5の外周面F5に結合する外筒6とを備えている。ブッシュ1Aにおいて、内側部材4は、振動発生側及び振動受側のいずれか一方側に取り付けられる、筒状部材(内筒)である。ブッシュ1Aにおいて、芯金2及び樹脂層3は、1つの内側部材4として形成されている。
【0024】
芯金2は、金属製の芯金である。本開示において、芯金2は、円筒状の芯金である。ただし、芯金2は、筒状の芯金であれば、多角形の筒状の芯金であってもよい。また、芯金2は、筒状の芯金に限定されるものではない。例えば、芯金2は、中実の芯金であってもよい。芯金2を形成する金属としては、例えば、アルミニウム合金、鉄が挙げられる。
【0025】
樹脂層3は、樹脂製の樹脂筒13である。本開示において、樹脂筒13は、円筒状の樹脂筒である。ただし、樹脂筒13は、筒状の樹脂筒であれば、多角形の筒状の樹脂筒であってもよい。樹脂筒13は、後述のように、芯金2の外周面F2に溶着されている。樹脂筒13を形成する樹脂としては、当該樹脂の溶融温度が所定温度(例えば、120°C~176°C)の樹脂にあって、例えば、前記耐摩耗性、耐薬品性が高い樹脂が好ましい。樹脂筒13を形成する樹脂としては、例えば、ポリアミド(ガラス繊維補強を含む。)が挙げられる。
【0026】
ブッシュ1Aにおいて、樹脂層3は、バルジ形状部31と、バルジ形状部31に連なる、2つの軸部32と、を備えている。本実施形態において、バルジ形状部31と、2つの軸部32とは、一体に形成されている。ここで、バルジ形状とは、例えば、樹脂層3の外周面の一部を局所的に球状に膨出させた形状をいう。
図1に示すように、ブッシュ1Aにおいて、バルジ形状部31は、軸線方向において、ブッシュ1Aの軸線方向中心P1を中心とする位置に配置されている。ただし、バルジ形状部31は、ブッシュ1Aの軸線方向中心P1よりも、当該ブッシュ1Aの2つの軸線方向端1eのうちのいずれか一方に片寄らせるように配置することができる。また、ここでは、ブッシュ1Aの軸線方向中心P1は、内側部材4(芯金2)の軸線方向中心と一致するものとする。
【0027】
弾性層5は、弾性材料によって形成された筒状の形状を有している。本開示において、弾性層5は、円筒状の形状を有している。ただし、弾性層5は、筒状の形状であれば、多角形の筒状の形状であってもよい。弾性層5を形成する弾性材料としては、例えば、ゴムが挙げられる。
【0028】
ブッシュ1Aにおいて、弾性層5は、樹脂層3のバルジ形状部31を被覆する被覆部51と、当該被覆部51に連なる、2つの支持部52と、を備えている。ブッシュ1Aにおいて、被覆部51と、2つの支持部52とは、一体に形成されている。被覆部51は、軸線O1の周りで周方向に環状に延在している、環状の被覆部である。2つの支持部52もまた、軸線O1の周りで周方向に環状に延在している、環状の支持部である。さらに、ブッシュ1Aにおいて、弾性層5の支持部52と、樹脂層3の軸部32との間には、支持部52と軸部32を結合させた環状結合部7が形成されている。環状結合部7は、軸線O1の周りで周方向に環状に延在している。その一方で、弾性層5の被覆部51と、樹脂層3のバルジ形状部31との間には、被覆部51とバルジ形状部31とを結合させない環状非結合部8が形成されている。環状非結合部8もまた、軸線O1の周りで周方向に環状に延在している。環状非結合部8は、弾性層5の被覆部51と、樹脂層3のバルジ形状部31との間に形成された、2つの環状結合部7によって閉じられた環状の密閉隙間である。ブッシュ1Aにおいて、環状非結合部8には、潤滑用流体11が充填されている。
【0029】
外筒6は、振動発生側及び振動受側のいずれか他方側に取り付けられる、筒状部材である。外筒6は、弾性層5の外周面に結合している。内側部材4と外筒6との間は、主として弾性層5の支持部52によって支持されている。また、ブッシュ1Aにおいて、樹脂層3のバルジ形状部31の領域は、弾性層5の被覆部51と潤滑用流体11とによって支持されている。
【0030】
外筒6は、金属製の外筒である。外筒6は、弾性層5の外周面F5に結合している。本開示において、外筒6は、円筒状の外筒である。ただし、外筒6は、筒状の外筒であれば、多角形の筒状の外筒であってもよい。外筒6を形成する金属としては、例えば、アルミニウム合金、鉄が挙げられる。また、外筒6は、樹脂製の外筒とすることもできる。
【0031】
図2には、ブッシュ1Aの動作の一例が
図1の断面相当で概略的に示されている。以下の説明では、ブッシュ1Aは、車両のサスペンション装置に採用されているものとして説明をする。
【0032】
外筒6は、
図2に示すように、サスペンションアーム100に設けられた固定スリーブ101の内側に嵌合させることで、サスペンションアーム100に対して固定されている。これに対し、内側部材4は、例えば、当該内側部材4の内部に形成された貫通孔А1にボルト及びナット等の締結要素を貫通させることによって、当該締結要素を介して車体(図示省略。)に固定されている。ただし、ブッシュ1Aは、前記車体に設けた固定スリーブ101に対して外筒6を固定する一方で、ボルト及びナット等の締結要素を介してサスペンションアーム100に対して内側部材4を固定することもできる。
【0033】
ブッシュ1Aは、外筒6に対する内側部材4のこじりを吸収することができる。
図2には、内側部材4が弾性層5を介して外筒6の内部をこじっている状態が例示的に示されている。
【0034】
ブッシュ1Aをサスペンション装置に採用した場合、ブッシュ1Aの内部には、内側部材4からの三次元的な入力によって、例えば、ねじり、こじりを生じる場合がある。ここで、「ねじり」とは、内側部材4と外筒6とが軸線O1の周りを周方向に角度θ1で相対移動(相対回転)することをいう。また、「こじり」とは、
図2に示すように、内側部材4と外筒6との少なくともいずれか一方が軸線O1に対して角度α1で傾斜した状態で軸線O1の周りを周方向に角度θ1で相対移動(相対回転)することをいう。ただし、本開示において、「こじり」には、
図2に示すように、内側部材4と外筒6との少なくともいずれか一方が、軸線O1の周りを周方向に相対移動(相対回転)することなく、軸線O1に対して傾斜した移動を含む。
【0035】
図2に示すように、ブッシュ1Aにこじりが生じるような入力がなされたとき、弾性層5と内側部材4とは、非結合部8の領域において、互いに剥離するように相対的に変位する。これによって、ブッシュ1Aは、防振性能を維持しつつ、外筒6に対する内側部材4のこじりを吸収することができる。ブッシュ1Aでは、潤滑用流体11が環状被結合部8の内部に充填されていることで、外筒6に対する内側部材4のこじりをより円滑に吸収することができる。ただし、潤滑用流体11は、省略することもできる。
【0036】
ブッシュ1Aの製造方法としては、例えば、従来技術として、芯金2をインサート品として樹脂層3を射出成形する、いわゆる、インサート成形が知られている。
【0037】
しかしながら、金型を用いた成形の場合、金型の合わせ面からの樹脂材料の漏出を防止するため、インサート品(芯金)と金型とのそれぞれの寸法精度を高める必要がある。加えて、金型の合わせ面から樹脂材料が漏出した場合、成形品に生じた余剰樹脂層を除去する等の、後加工が必要となる。
【0038】
これに対し、
図3には、内側部材4の製造時において金型の使用を必要としない、本発明の第1の実施形態である、ブッシュの製造方法が概略的に示されている。本実施形態の、ブッシュの製造方法は、以下の工程を含む方法によって、ブッシュ1Aを得ることができる。
【0039】
本実施形態の、ブッシュの製造方法は、樹脂層3として、樹脂製の樹脂筒13を準備する樹脂筒準備工程と、芯金2を準備する、芯金準備工程と、芯金2を加熱する、芯金加熱工程と、前記芯金加熱工程後の芯金2を、前記樹脂筒準備工程において準備された樹脂筒13の軸線方向端13aに形成された開口部A13から当該樹脂筒13の内部に差し込むことによって、当該芯金2と樹脂筒13とを結合させる、結合工程と、を含んでいる。
【0040】
前記樹脂筒準備工程では、樹脂筒13を準備する。
図3に示すように、本実施形態において、樹脂筒13の内周面F32は、2つのテーパ面F321によって形成されている。具体的には、
図3に示すように、テーパ面F321は、当該樹脂筒13の軸線方向端13aに形成された開口部A13から当該樹脂筒13の軸線方向中心(P1)に向かうにしたがって径方向内側に先細るテーパ面である。本実施形態において、テーパ面F321は、後述する芯金部品12のテーパ面F121に対応するように形成されている。
【0041】
前記芯金準備工程では、芯金2を準備する。本実施形態の、ブッシュの製造方法において、前記芯金準備工程では、2つの芯金部品12を準備する。より詳細には、本実施形態において、芯金2は、同一の軸線O1上で互いに突き当てることによって1つの芯金2に形作られる、2つの芯金部品12によって形成されている。
【0042】
図4には、
図1に示す芯金部品12が軸線O1を含む断面で概略的に示されている。
【0043】
ブッシュ1Aにおいて、芯金2の外周面F2は、2つの芯金部品12の外周面F12である。芯金部品12の外周面F12は、当該芯金部品12の突き当て端12aに向かうにしたがって径方向内側に先細るテーパ面F121を含んでいる。本実施形態において、テーパ面F121は、軸線O1に対してなす角度のうち、鋭角側の角度α2は、2度としている。ただし、角度α2は、0度を含まない角度であればよい。例えば、角度α2は、2度以上とすることができる。なお、ブッシュ1Aにおいて、芯金2(芯金部品12)の中心軸線は、軸線O1と一致しているものとする。
【0044】
図1に示すように、ブッシュ1Aにおいて、2つの芯金部品12は、同一の形状としている。これによって、ブッシュ1Aにおいて、2つの芯金部品12の突き当り位置は、
図1に示すように、ブッシュ1Aの軸線方向中心P1の位置に位置している。2つの芯金部品12の突き当り位置をブッシュ1Aの軸線方向中心P1の位置とすれば、ブッシュ1Aにように、芯金2を形成する芯金部品12の部品を共通化することができる。
【0045】
ただし、2つの芯金部品12の形状は、異ならせることができる。例えば、2つの芯金部品12の一方の軸線方向長さと、当該2つの芯金部品12の他方の軸線方向長さとは、異ならせることができる。2つの芯金部品12の一方の軸線方向長さと、当該2つの芯金部品12の他方の軸線方向長さと、を異ならせれば、例えば、2つの芯金部品12の突き当り位置をブッシュ1Aの軸線方向中心P1のから、ブッシュ1Aの2つの軸線方向端1eのうちのいずれか一方に片寄らせることができる。
【0046】
前記芯金加熱工程は、芯金2を加熱する工程である。本実施形態において、前記芯金加熱工程は、2つの芯金部品12のそれぞれを加熱する工程である。
【0047】
図3を参照すれば、2つの芯金部品12は、それぞれ、様々な加熱方法を用いて加熱することができる。本実施形態において、2つの芯金部品12は、それぞれ、後述の、巻き線10を用いた誘導加熱によって加熱される。なお、芯金部品12の加熱温度は、樹脂筒13を溶融させる温度以上とする。また、芯金部品12の加熱温度は、樹脂筒13を変形させない温度、例えば、樹脂筒13の軸部32を変形させない温度に抑える。好ましくは、芯金部品12の加熱温度は、加熱後の芯金部品12を樹脂筒13の内周面に押し込んだとき、当該樹脂筒13の内周面の表層部分のみを溶融するような温度とする。
【0048】
前記結合工程では、樹脂筒13の軸線方向端13aに形成された開口部A13から当該樹脂筒13の内部に差し込むことによって、当該芯金2と樹脂筒13とを結合させる。
図3に示すように、本実施形態において、前記結合工程は、前記加熱工程後の2つの芯金部品12のそれぞれを、当該2つの芯金部品12の突き当て端12aが同一の軸線O1上で互いに突き当たるまで、樹脂筒13の軸線方向端13aに形成された開口部A13から当該樹脂筒13の内部に差し込むことによって、当該2つの芯金部品12と樹脂筒13とを結合させる。これによって、2つの芯金部品12は、当該芯金部品12の冷却によって、樹脂筒13と一体化する。
【0049】
本実施形態の、ブッシュの製造方法によれば、芯金2を樹脂筒13の軸線方向端13aに形成された開口部A13に差し込むことによって、当該芯金2と樹脂筒13とを結合させることができる。したがって、本実施形態の、ブッシュの製造方法によれば、加熱した芯金2を樹脂筒13に差し込むだけの作業によって、内側部材4を製造することができる。また、本実施形態の、ブッシュの製造方法によれば、金型を用いることなく、内側部材4を製造できるため、後加工を要する余剰樹脂層の発生が抑制される。
【0050】
したがって、本実施形態の、ブッシュの製造方法によれば、芯金2に樹脂層3を設けるに際して厳しい寸法精度が要求されることがなく、さらに、後加工を要する余剰樹脂層の発生が抑制される。
【0051】
ところで、本発明に係る、ブッシュの製造方法によれば、芯金2は、単一の芯金のみとし、当該単一の芯金2を樹脂筒13の軸線方向端13aに形成された一方の開口部A13のみに差し込むことによって、当該単一の芯金2と樹脂筒13とを結合させることができる。
【0052】
しかしながら、単一の芯金2を樹脂筒13の軸線方向端13aに形成された一方の開口部A13のみ差し込む場合、樹脂筒13に形状的な崩れを生じる虞がある。
【0053】
これに対し、本実施形態の、ブッシュの製造方法のように、2つの芯金部品12を用いることによって、当該2つの芯金部品12の突き当て端12aが同一の軸線O1上で互いに突き当たるまで、樹脂筒13の軸線方向端13aに形成された開口部A13から当該樹脂筒13の内部に差し込む場合、樹脂筒13に形状的な崩れを生じ難い。したがって、本実施形態の、ブッシュの製造方法のように、2つの芯金部品12を用いる場合、寸法精度の高いブッシュ1Aを製造することができる。
【0054】
また、
図3に示すように、本実施形態の、ブッシュの製造方法において、前記芯金準備工程は、樹脂筒13として、当該樹脂筒13の外周側に、弾性層5及び外筒6が一体的に結合された樹脂筒13を準備する工程である。弾性層5及び外筒6が一体的に結合された樹脂筒13は、例えば、当該樹脂筒13と外筒6とをインサート品として金型の内部に配置し、当該金型の内部に弾性材料を射出することによって成形することができる。
【0055】
前記芯金準備工程において、樹脂筒13として、当該樹脂筒13の外周側に、弾性層5及び外筒6が一体的に結合された樹脂筒13を準備すれば、予め樹脂層3、弾性層5及び外筒6が一体的に結合された状態で、ブッシュ1Aを製造することができる。また、樹脂筒13として、
図3に示すような、弾性層5及び外筒6が一体的に結合された樹脂筒を準備すれば、前記樹脂筒準備工程と前記芯金準備工程とは、一度に行われることとなる。
【0056】
ところで、本発明に係る、ブッシュの製造方法によれば、芯金部品12の外形形状は、軸線O1に対して平行なストレートな形状とすることができる。即ち、芯金部品12の外周面F12は、軸線方向において、同一の直径とすることができる。
【0057】
ここで、
図5には、本実施形態の、ブッシュの製造方法において、芯金部品12として、外形形状がストレートな芯金部品12を用いた場合に生じ得る現象が概略的に示されている。
【0058】
本発明に係る、ブッシュの製造方法によれば、樹脂筒13は、芯金部品12から発せられる熱によって溶融する。その一方で、
図5に示すように、芯金部品12の外周面F12を軸線O1に対して平行にストレートに延在するストレート面F122とした場合、当該芯金部品12を押し込んだときに、芯金部品12の突き当て端12aが、
図5に示すように、樹脂筒13の溶融部分13pを掻き出して押し込むことがある。
【0059】
2つの芯金部品12の突き当て端12aが、それぞれ、樹脂筒13の溶融部分13pを掻き出しして樹脂筒13の内部に押し込んだ場合、
図5に示すように、当該樹脂筒13の溶融部分13pが2つの芯金部品12の突き当て端12aの間に詰まることが考えられる。
【0060】
樹脂筒13の溶融部分13pが2つの芯金部品12の突き当て端12aの間に詰まった場合、当該2つの芯金部品12の突き当て端12aは、完全には突き当たらず、当該2つの芯金部品12の突き当て端12aの間には隙間が生じることになる。
【0061】
2つの芯金部品12の突き当て端12aの間に隙間が生じる場合、内側部材4としての、2つの芯金部品12の突き当て端12aの間は、樹脂層3のみ、或いは、ブッシュ1A全体としてみれば、樹脂層3、弾性層5及び外筒6のみによって支持されることになる。この場合、ブッシュには、時間経過とともに、2つの芯金部品12の突き当て端12aの間でへたり(永久変形)を生じる虞がある。
【0062】
これに対し、本実施形態の、ブッシュの製造方法において、芯金部品12の外周面F12のうち、当該芯金部品12の突き当て端12a側先端部の外周面は、例えば、
図3を参照すれば、当該芯金部品12の突き当て端12aに向かうにしたがって径方向内側に先細るテーパ面F121によって形成されている。この場合、芯金部品12から発せられる熱によって溶融した樹脂筒13の溶融部分13pを、芯金部品12のテーパ面F121に沿って、当該芯金部品12の押し込み側とは反対側に逃がすことができる。これによって、樹脂筒13の溶融部分13pが2つの芯金部品12の突き当て端12aの間に詰まる現象の発生が抑制される。したがって、芯金部品12の外周面F12のうち、突き当て端12a側先端部をテーパ面F121とすれば、耐久性の高いブッシュ1Aを製造することができる。
【0063】
ところで、本発明に係る、ブッシュの製造方法において、芯金部品12(芯金2)を加熱する方法には、特に限定はない。芯金部品12(芯金2)は、例えば、ヒーター、加熱炉によって加熱することができる。
【0064】
これに対し、
図3に示すように、本実施形態の、ブッシュの製造方法において、前記芯金加熱工程は、巻き線10を用いた誘導加熱によって、芯金部品12を加熱する工程である。
【0065】
本実施形態において、芯金部品12は、巻き線10の内部に配置されることによって加熱される。巻き線10は、例えば、導電性を有している線材、具体的には、金属線とすることができる。本実施形態の、ブッシュの製造方法によれば、芯金部品12は、巻き線10に電気を通すことによって、当該芯金部品12の電気抵抗によって発熱する。これによって、芯金部品12は、巻き線10の内部に配置された状態で、当該巻き線10への通電時間に応じて加熱される。したがって、芯金部品12の加熱に誘導加熱を用いれば、芯金部品12の外周面F12の全体を簡易かつ容易に加熱することができる。
【0066】
特に、本実施形態において、巻き線10は、樹脂筒13と同一の軸線O1上に配置されている。このように、樹脂筒13と巻き線10とを同一の軸線O1上に配置すれば、巻き線10の内部で加熱された芯金部品12をそのまま、
図3の矢印に示すように、樹脂筒13の軸線方向端13aに形成された開口部A13から当該樹脂筒13の内部に差し込むことができる。この場合、例えば、加熱された芯金部品12は、自動機を用いることによって、自動的に、樹脂筒13に押し込むことができる。したがって、芯金部品12を誘導加熱によって加熱すれば、ブッシュ1Aの製造時における作業効率を向上させることができる。
【0067】
ところで、本実施形態の、ブッシュの製造方法において、当該芯金部品12の外周面F12のうちの樹脂層3によって被覆される外周面F12の少なくとも一部に凹凸を有する、芯金部品である。
【0068】
図4を参照すれば、本実施形態において、前記凹凸は、符号12bで示す斜線領域に形成されている。本実施形態において、前記凹凸は、テーパ面F121に形成されている。
【0069】
芯金部品12の外周面F12のうち、樹脂層3によって被覆される外周面F12の少なくとも一部が凹凸を有していれば、芯金部品12の熱によって溶融した樹脂筒13は、芯金部品12の外周面F12に設けられた前記凹凸に食い込むことによって(いわゆるアンカー効果によって)、芯金部品12の外周面F12に対して強固に結合する。したがって、芯金部品12の外周面F12のうち、樹脂層3が結合する領域の少なくとも一部に凹凸を形成すれば、芯金部品12の外周面F12に樹脂層3をより強固に固定することができる。
【0070】
なお、芯金部品12の外周面F12に形成された前記凹凸は、溶融した樹脂材料が当該凹凸の隙間に入り込むことによって、当該樹脂材料が硬化した後に、いわゆるアンカー効果を生じさせる、微小な凹凸であればよい。このため、例えば、芯金部品12が鋳造によって形成された場合、当該芯金部品12をそのまま使用することができるときがある。
【0071】
その一方で、本実施形態の、ブッシュの製造方法において、前記芯金準備工程は、芯金2の外周面F2に粗さ加工を行う粗さ加工工程を含み、前記凹凸は、前記粗さ加工工程によって形成されている。
【0072】
芯金2の外周面F2が平滑な面である場合、アンカー効果を得られ難いことが考えられる。この場合、芯金2の外周面F2と樹脂層3との間の結合力を高める必要がある。そこで、本実施形態の、ブッシュの製造方法では、芯金2を加熱する芯金加熱工程の前に、芯金2の外周面F2に対して積極的に粗さ加工を行う。本実施形態のように、前記芯金加熱工程の前に、芯金2の外周面F2に対して粗さ加工を行えば、芯金2の外周面F2に樹脂層3をより強固に固定することができる。本実施形態では、
図3に示すように、芯金部品12を巻き線10の内部に配置する前に、当該芯金部品12の外周面F12に粗さ加工を行う。
【0073】
前記粗さ加工としては、例えば、レーザー加工、切削加工、ブラスト加工、化成処理を採用することができる。ただし、上記の表面加工は、あくまでも例示的なものである。このため、芯金部品12の外周面F12(芯金2の外周面F2)に前記凹凸を形成方法としては、上記のもの以外の方法を用いることができる。
【0074】
本実施形態の、ブッシュの製造方法において、前記粗さ加工には、レーザー加工が用いられている。レーザー加工を用いる場合、切削加工等を用いるときに比べて、容易且つ安価に、芯金部品12の外周面F12(芯金2の外周面F2)に、溶融した樹脂材料に対してアンカー効果を発揮できる程度の微小な凹凸を設けることができる。
【0075】
図1を参照すれば、前記粗さ加工が行われる領域、即ち、前記凹凸が形成される領域12bは、芯金部品12の外周面F12のうちの、樹脂筒13と結合する領域全体である。ただし、領域12bは、樹脂筒13と結合する領域のうちの、少なくとも一部に形成すればよい。また、本実施形態において、領域12bは、軸線О1の周りで周方向に全周にわたって形成されている。ただし、領域12bは、軸線О1の周りで周方向に断続的に又は1か所のみの局所的に形成すればよい。
【0076】
ところで、ブッシュ1Aにおいて、弾性層5は、樹脂層3の外周面F13に結合させているが、芯金2の外周面F2に結合させることもできる。
【0077】
図6には、本発明である、ブッシュの製造方法を用いることによって製造可能な、ブッシュの他の例が概略的に示されている。
【0078】
図6中、符号1Bは、ブッシュの製造方法を用いることによって製造可能な、他の例としての、ブッシュである。ブッシュ1Bにおいて、弾性層5は、芯金2の外周面F2に結合する弾性層である。この例では、樹脂筒13は、バルジ形状部31のみを構成している。
【0079】
図6に示すように、ブッシュ1Bにおいて、樹脂層3は、芯金部品12の外周面F12(芯金2の外周面F2)のうちのテーパ面F121に結合している。テーパ面F121には、前記凹凸が形成されている。この例では、前記凹凸が形成される領域12b1は、テーパ面F121が存在する領域と一致している。ただし、領域12b1は、前述したことと同様に、テーパ面F121の少なくとも一部であればよい。また、ブッシュ1Bにおいて、弾性層5は、芯金部品12の外周面F12(芯金2の外周面F2)のうちのストレート面F122に結合している。この例では、前記凹凸が形成される領域12b2は、ストレート面F122のうちの、弾性層5との結合領域と一致している。ただし、領域12b2もまた、前述したことと同様に、弾性層5との結合領域の少なくとも一部であればよい。
【0080】
図7は、本発明の第2の実施形態である、ブッシュの製造方法を概略的に説明するための断面図である。ここでは、ブッシュ1Bを製造する方法として説明する。
【0081】
図7に示すように、本実施形態の、ブッシュの製造方法においても、芯金2は、同一の軸線O1上で互いに突き当てることによって1つの芯金2に形作られる、2つの芯金部品12によって形成されている。本実施形態において、芯金部品12の外周面F12は、テーパ面F121と、ストレート面F122とによって形成されている。また、本実施形態においても、樹脂筒13の内周面F32は、2つのテーパ面F321によって形成されている。
【0082】
本実施形態である、ブッシュの製造方法は、第1の実施形態である、ブッシュの製造方法と基本的に同様の工程を含んでいる。即ち、本実施形態の、ブッシュの製造方法は、前記樹脂筒準備工程、前記芯金準備工程、前記芯金加熱工程及び前記結合工程を含んでいる。また、本実施形態において、前記芯金準備工程は、前記粗さ加工工程を含んでいる。
【0083】
ただし、本実施形態である、ブッシュの製造方法において、前記粗さ加工工程は、芯金2の外周面F2の、樹脂筒13と結合する領域とともに、当該芯金2の外周面F2の、弾性層5と結合する領域にレーザー加工を行う工程である。本実施形態において、前記粗さ加工工程は、芯金部品12の外周面F12の、樹脂筒13と結合する領域とともに、当該芯金部品12の外周面F12の、弾性層5と結合する領域にレーザー加工を行う工程である。
【0084】
図8には、
図7に示す芯金部品12が概略的に示されている。
【0085】
芯金部品12の外周面F12に、樹脂層3とともに、弾性層5を結合させる場合、前記粗さ加工工程は、樹脂筒13と結合する領域(本実施形態では、テーパ面F121)とともに、弾性層5と結合する領域(本実施形態では、ストレート面F122)にレーザー加工を行う。レーザー加工によれば、レーザー出力を変えることによって、個々の粗さを調整することができる。したがって、芯金部品12の外周面F12の粗さ加工にレーザー加工を用いれば、
図8に示すように、樹脂筒13と結合する領域を、前記凹凸が形成される領域12b1とすることができ、さらに、弾性層5と結合する領域を、前記凹凸が形成される領域12b2とすることができる。したがって、本実施形態のように、芯金部品12の外周面F12の、樹脂筒13と結合する領域とともに、当該芯金部品12の外周面F12の、弾性層5と結合する領域にレーザー加工を行えば、樹脂筒13と結合する領域と弾性層5と結合する領域との粗さを、一連の工程によって、簡易かつ容易に形成することができる。
【0086】
したがって、本実施形態のように、芯金部品12の外周面F12の、樹脂筒13と結合する領域とともに、当該芯金部品12の外周面F12の、弾性層5と結合する領域にレーザー加工を行えば、一度にレーザー加工を行うことによって、即ち、1回的なレーザー加工によって、樹脂筒13と結合する領域とともに弾性層5と結合する領域に、簡易かつ容易に凹凸を形成することができる。なお、
図7において、芯金部品12は、前記粗さ加工工程の後に、誘導加熱用の巻き線10の内部に配置された状態で示されている。
【0087】
また、本実施形態の、ブッシュの製造方法は、前記結合工程の後に、樹脂筒13の外周側に、弾性層5及び外筒6を一体に結合する、一体化工程をさらに含んでいる。
【0088】
図9には、前記結合工程の後の、
図6に示す内側部材4が概略的に示されている。
【0089】
前記一体化工程では、
図9に示す内側部材4を、樹脂層3によって被覆された芯金2として、当該内側部材4と外筒6とをインサート品として金型の内部に配置し、当該金型の内部に弾性材料を射出することによって、
図6に示すように、内側部材4、弾性層5及び外筒6を一体的に成形することができる。
【0090】
本実施形態の、ブッシュの製造方法のように、前記結合工程の後に、前記一体化工程を行えば、内側部材4の製造後に別途、弾性層5及び外筒6を一体に結合することによって、ブッシュを製造することができる。
【0091】
ところで、先の説明のとおり、樹脂層3の外周面F13に弾性層5を結合させる場合、前記粗さ加工工程は、芯金2の外周面F2の、樹脂層3と結合する領域とともに、当該芯金2の外周面F2の、弾性層5と結合する領域にレーザー加工を行う工程とすることができる。この場合、内側部材4としての、樹脂層3を備えた芯金2は、芯金2をインサート品として成形することができる。
【0092】
図10には、ブッシュの内側部材4のさらに他の例が概略的に示されている。また、
図11には、
図10に示す内側部材4をインサート成形するために使用可能な芯金の一例が概略的に示されている。
【0093】
図10の内側部材4において、芯金2は、その外周面F2が軸線O1に対して平行なストレートな形状である、1つの芯金である。この芯金2の外周面F2に、樹脂層3とともに、弾性層5を強固に結合させる場合もまた、当該芯金2の外周面F2に凹凸を形成するための粗さ加工として、樹脂層3と結合する領域とともに、弾性層5と結合する領域にレーザー加工を行うことができる。これによって、
図11に示すように、樹脂層3と結合する領域を、前記凹凸が形成される領域12b1とすることができ、さらに、弾性層5と結合する領域を、前記凹凸が形成される領域12b2とすることができる。先に述べたように。レーザー加工によれば、レーザー出力を変えることによって、樹脂層3と結合する領域と弾性層5と結合する領域との粗さを簡易かつ容易に調整することができる。
【0094】
また、
図10の芯金2を用いる場合、
図11の内側部材4は、インサート成形によって製造することができる。
図10の内側部材4は、前記粗さ加工の後に、
図11に示す芯金2をインサート品として金型の内部に配置し、当該金型の内部に樹脂材料を射出することによって、樹脂層3によって被覆された芯金2、即ち、内側部材4を一体的に成形することができる。この場合、芯金2の粗さ加工後に別途、芯金2及び樹脂層3を一体に結合することによって、内側部材4を製造することができる。
【0095】
さらに、
図10の内側部材4には、当該内側部材4と外筒6とをインサート品として金型の内部に配置し、当該金型の内部に弾性材料を射出することによって弾性層5及び外筒6を一体的に成形することができる。
【0096】
上述したところは、本発明に係る、ブッシュの製造方法の例示的な実施形態を開示したにすぎず、特許請求の範囲に従えば、様々な変更が可能となる。例えば、上述したブッシュはいずれも、当該ブッシュの軸線方向に締結されるため、2つの芯金部品12の突き当て端12aは、互いに突き当てのみで固定することができる。ただし、2つの芯金部品12の突き当て端12aは、接着させてもよい。また、樹脂層3は、バルジ形状部を備える樹脂層として説明したが、樹脂層3の形状は、バルジ形状を有するものに限定されない。また、本発明に係る、ブッシュの製造方法に得られる、ブッシュは、サスペンション装置用ブッシュとして説明したが、内側部材4と外筒6の少なくともいずれか一方に三次元的な入力がなされるブッシュであれば、ブッシュをサスペンション装置用ブッシュに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0097】
1A:ブッシュ, 1B:ブッシュ, 1e:ブッシュの軸線方向端, 2:芯金, 12:芯金部品, 12a:芯金部品の突き当て端, 3:樹脂層, 13:樹脂筒, 13a:樹脂筒の軸線方向端, 31:樹脂層のバルジ形状部, 32:樹脂層の軸部, 4:内側部材, 5:弾性層, 51:弾性層の被覆部, 52:弾性層の支持部, 6:外筒, 7:環状結合部, 8:環状非結合部, 11:潤滑用流体, 100:サスペンションアーム, 101:サスペンションアームに設けられた固定スリーブ, A13:樹脂筒の軸線方向端に形成された開口部, F2:芯金の外周面, F12:芯金部品の外周面, F121:芯金部品の外周面のテーパ面, F122:芯金部品の外周面のストレート面, F32:樹脂筒の内周面,F321:樹脂筒の内周面のテーパ面, O1:軸線(ブッシュの中心軸線), P1:ブッシュの軸線方向中心