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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178824
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】打撃装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/24 20060101AFI20241218BHJP
【FI】
G01N29/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097262
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】597165618
【氏名又は名称】株式会社ネクスコ東日本エンジニアリング
(71)【出願人】
【識別番号】500293434
【氏名又は名称】インダストリーネットワーク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山下 知之
(72)【発明者】
【氏名】尾辻 聡
(72)【発明者】
【氏名】大橋 俊夫
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA05
2G047AB01
2G047BC07
2G047CA03
2G047GD02
(57)【要約】
【課題】外壁の表面からわずかな隙間しか設けられていない場所でも検査対象物を打撃して打音検査を行うことが可能で、かつ、その場合であっても打音を減衰させ難い打撃装置を提供する。
【解決手段】検査対象物を打撃して所定の検査を行うための打撃装置であって、モータ11を有する本体部10と、モータ11から延びるシャフト12に取り付けられたカム20と、カム20と隣接した位置に設けられた接触子であるトリガー部33、及び、検査対象物を打撃するハンマー部32を有し、本体部10から延びる連結軸17を中心に回転可能に設けられたハンマーブロック30と、ハンマーブロック30に付勢力を与える弾性部材40と、検査対象物を打撃するときに、ハンマーブロック30と弾性部材40との係合を解除する係合解除機構50とを備える打撃装置1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物を打撃して所定の検査を行うための打撃装置であって、
モータを有する本体部と、
前記モータから延びるシャフトに取り付けられたカムと、
前記カムと隣接した位置に設けられた接触子であるトリガー部、及び、検査対象物を打撃するハンマー部を有し、前記本体部から延びる連結軸を中心に回転可能に設けられたハンマーブロックと、
前記ハンマーブロックに付勢力を与える弾性部材と、
検査対象物を打撃するときに、前記ハンマーブロックと前記弾性部材との係合を解除する係合解除機構とを備えることを特徴とする打撃装置。
【請求項2】
前記トリガー部は、前記ハンマーブロック側から前記本体部側に向かって突出した凸部であり、
前記カムが回転することにより前記連結軸から遠ざかる方向へ前記トリガー部が押され前記ハンマーブロックを傾けるとともに、前記弾性部材によって前記ハンマーブロックに付勢力を与えることを特徴とする請求項1に記載の打撃装置。
【請求項3】
前記弾性部材は、コイル部と、前記コイル部から延びる第1腕部及び第2腕部とを有し、前記第1腕部は固定されているねじりばねであり、
前記係合解除機構は、
前記本体部側から前記ハンマーブロック側に向かって延びるストッパーピンと、
前記ハンマーブロック側から前記本体部側に向かって延びる付勢力伝達ピンとで構成されており、
前記カムの回転により前記ハンマーブロックが傾くときには、前記第2腕部を前記付勢力伝達ピンが持ち上げ、
検査対象物を打撃するときには、前記ストッパーピンで前記第2腕部を受けることで前記ハンマーブロックと前記弾性部材との係合を解除することを特徴とする請求項2に記載の打撃装置。
【請求項4】
前記本体部側から見て、前記ハンマーブロックの重心は、前記カムが配置されている領域と重なることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の打撃装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打撃装置に関する。
【背景技術】
【0002】
過去に建造された道路や鉄道の橋梁及びトンネルなどの土木構造物、並びにビルやマンションなどの大型構造物の外壁は、経年劣化や老朽化が進行してきており、これらの構造物の維持管理が急務となってきている。従来から、これら土木構造物や大型構造物の点検は、構造物のコンクリートの表面をハンマーなどで叩き、発生する打音の変化を作業者が聞き取って健全であるか否かを判定していた。
【0003】
例えば特許文献1には、ソレノイドを用いた打音検査用打撃装置が記載されている。特許文献1に記載の打音検査用打撃装置においては、ハンマーヘッドを備えたハンマーシャフトをフレームへスライド自在に装着し、ソレノイドのアクチュエータシャフトにハンマーシャフトを一定範囲スライド自在に連結して、アクチュエータシャフトの前進時にハンマーシャフト及びハンマーヘッドが一体に前進し、かつ、アクチュエータシャフトが前進端に達した後に、ハンマーシャフトとハンマーヘッドがさらに前進して打音検査対象物へ衝突することで検査対象物を叩き、発生する打音によって打音検査を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-201676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで近年、鉄道の橋梁及びトンネルなどの土木構造物、並びにビルやマンションなどの大型構造物の外壁には、外壁の表面からわずかな隙間を空けて雨樋、排水管、水道管、電線管、ガス管、エアコン管などの構造物が配置されていることがある。このような場合には、当該隙間を打撃装置が通過する必要がある。従って、特許文献1に記載の打音検査用打撃装置はソレノイドによってハンマーヘッドをスライドさせる構造を有するため、壁面から所定の高さを確保する必要があり、当該隙間を打撃装置が通過させることは難しく、当該隙間において特許文献1に記載の打音検査用打撃装置を用いて打音を発生させることは困難である、という課題がある。
【0006】
また、仮に特許文献1に記載の打音検査用打撃装置が当該隙間を通過することができたとしても、このようなわずかな隙間しか設けられていない場合、付勢されたハンマーで打撃を与えた後、バネなどの弾性体が自然長まで戻らず、ハンマーヘッドを検査対象物に押し付けた状態となり、打音を減衰させてしまうおそれがある、という課題もある。
【0007】
そこで、本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、外壁の表面からわずかな隙間しか設けられていない場所でも検査対象物を打撃して打音検査を行うことが可能で、かつ、その場合であっても打音を減衰させ難い打撃装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の打撃装置は、検査対象物を打撃して所定の検査を行うための打撃装置であって、モータを有する本体部と、モータから延びるシャフトに取り付けられたカムと、検査対象物を打撃するハンマー部を有し、前記本体部から延びる連結軸を中心に回転可能に設けられたハンマーブロックと、前記ハンマーブロックに付勢力を与える弾性部材と、検査対象物を打撃するときに、前記ハンマーブロックと前記弾性部材との係合を解除する係合解除機構とを備えることを特徴とする。
【0009】
なお、本明細書中、「ハンマーブロックと弾性部材との係合を解除する」とは、弾性部材の弾性力による圧力を開放することをいう。言い換えると、ハンマーブロックが弾性部材から弾性力を受けない状態になることをいう。なお、「ハンマーブロックと弾性部材との係合を解除する」とは、ハンマーブロックと弾性部材とが離隔している場合のみならず、弾性部材の弾性力による圧力が解放されているのであれば、ハンマーブロックと弾性部材とが接触していている場合も含む概念である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の打撃装置によれば、モータから延びるシャフトに取り付けられたカムと、カムと隣接した位置に設けられた接触子であるトリガー部、及び、検査対象物を打撃するハンマー部を有し、本体部から延びる連結軸を中心に回転可能に設けられたハンマーブロックと、を備えるため、トリガー部を介してカムの回転をハンマーブロックに伝達し、ハンマー部で検査対象物を打撃することができる。従って、特許文献1の場合のようなソレノイドによってハンマーヘッドをスライドさせる領域を確保しなくてもよいため、打撃装置の高さを低くすることができる。よって、外壁の表面からわずかな隙間を設けて雨樋、排水管などの構造物が配置されている場合でも、当該隙間を通過することができ、検査対象物を打撃することができる。
【0011】
また、本発明の打撃装置によれば、検査対象物を打撃するときに、ハンマーブロックと弾性部材との係合を解除する係合解除機構を備えるため、外壁の表面と構造物との間にわずかな隙間しか設けられていない場合に使用しても、検査対象物を打撃した後にハンマー部を検査対象物に押し付けた状態とならず、打音が減衰することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る打撃装置1を示す斜視図である。
図2】実施形態に係る打撃装置1を示す側面図及び上面図である。
図3】実施形態におけるカム20、ハンマーブロック30及び弾性部材40の関係を説明するために示す図である。
図4】実施形態に係る打撃装置1の動作を説明するために示す図である。
図5】実施形態に係る打撃装置1を自動走行装置100に実装したときの様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の打撃装置について、図に示す実施形態に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0014】
[実施形態]
1.実施形態に係る打撃装置1の構成
図1は、実施形態に係る打撃装置1を示す斜視図である。図1(a)はハンマーブロック30の斜め上方から見た打撃装置1の斜視図であり、図1(b)はハンマーブロック30の斜め下方から見た打撃装置1の斜視図である。なお、符号36は、連結軸17を構成する部材(例えば、ネジ)の頭であり、連結軸17を構成するとともに、ハンマーブロック30を本体部10と連結する。図2は、実施形態に係る打撃装置1を示す側面図及び上面図である。図2(a)は打撃装置1の側面図であり、図2(b)は打撃装置1の上面図である。図3は、実施形態におけるカム20、ハンマーブロック30及び弾性部材40の関係を説明するために示す図である。
【0015】
実施形態に係る打撃装置1は、図1~3に示すように、本体部10と、カム20と、ハンマーブロック30と、弾性部材40と、係合解除機構50とを備える。打撃装置1は、検査対象物を打撃して所定の検査を行うためのものである。
【0016】
本体部10は、モータ11と、シャフト12と、電源13と、載置部14と、ストッパーピン15と、車輪部16と、連結軸17と、固定ピン18とを有する。
【0017】
モータ11は、適宜のモータを用いることができるが、例えば壁面を走行する走行装置に取り付けることができるように、重量が軽く、かつ、小型であることが好ましい。シャフト12は、モータ11から延びており、モータ11からの回転運動を伝達する。シャフト12の先端には、カム20が取り付けられている。電源13は、モータ11に電力を供給する。
【0018】
載置部14は、モータ11及び電源13を載置する載置板を有し、載置板の一方側(ハンマーブロック側)には、側壁が立設されている。側壁からはストッパーピン15と、連結軸17、固定ピン18とが外側に向かって設けられており、所定の位置にシャフト12が貫通するための穴を有する。載置板の下側には、4つの車輪部16が設けられており、載置部14を安定的に移動が可能となるように設けられている。
【0019】
ストッパーピン15は、本体部10からハンマーブロック30に向かって延びている。ストッパーピン15は、本体部10側から見て側壁における連結軸17とは反対側の位置で側壁から突出されている。連結軸17は、側壁から突出してハンマーブロック30と連結されており、ハンマーブロック30が回動可能に構成されている。連結軸17の外周部には弾性部材40であるねじりばねが取り付けられている。
【0020】
固定ピン18は、連結軸17,ストッパーピン15とで、例えば二等辺三角形となる位置に設けられており、弾性部材40であるねじりばねから延在する第1腕部42を引っかけて固定することができる。なお、実施形態においては、固定ピン18を用いて第1腕部42を固定するが、クリップその他適宜の部材を用いて第1腕部42を固定してもよい。
【0021】
カム20は、モータ11から延びるシャフト12に取り付けられている。カム20は、板カムであり、シャフト12から外周面22までの長さが徐々に大きくなっていくように構成されており、当該長さが急激に短くなる段差部21を有する。
【0022】
ハンマーブロック30は、ハンマーブロック本体31と、ハンマー部32と、トリガー部33と、付勢力伝達ピン34と、ウェイトピン35とを有する。ハンマーブロック30は、本体部10側の面において、連結軸17を介して本体部10と連結されている。ハンマーブロック30において、トリガー部33と、付勢力伝達ピン34とは、本体部10側の面から突出しており、ハンマー部32は、下面に設けられており、ウェイトピン35及びピン36は、本体部10側とは反対側の面に設けられている。
【0023】
ハンマーブロック本体31は、図3に示すように、本体部10側から見ると上辺が斜めになっている略多角形の角柱となっている。ハンマーブロック30本体の上面の傾斜は、カム20の回転によってハンマーブロック30が傾いたときに、上辺の傾斜が略水平になるように構成されている(図4(b)参照)。
【0024】
ハンマー部32は、連結軸17から所定の間隔以上に離れた位置でハンマーブロック30の下方に設けられている。
【0025】
トリガー部33は、カム20と隣接した位置に設けられた接触子である。トリガー部33は、ハンマーブロック30側から本体部10側に向かって突出する略直方体形状の凸部であり、カム20の回転によってカム20の外周面22と接触し、押されることでハンマーブロック30が傾くこととなる。
【0026】
付勢力伝達ピン34は、連結軸17から見てストッパーピン15の内周側の位置でハンマーブロック30側から本体部10側に向かって延びるピンである。付勢力伝達ピン34は、カム20の回転によりハンマーブロック30が傾くときには、弾性部材40の第2腕部43を付勢力伝達ピン34が持ち上げる。なお、実施形態においては固定ピン18、付勢力伝達ピン34及びストッパーピン15の先端に弾性部材40が外れることを防ぐための構成(実施形態においてはネジ頭のような形状をしているが、その他先端を折り曲げる、爪のような形状とする、部材を取り付ける等適宜の構成)を加えてもよい。
【0027】
ウェイトピン35は、本体部10側とは反対側の面に設けられており、ハンマー部32が検査対象面を打撃する際に所定以上の衝撃力となり、発生する打音が所定以上の音量となるように所定の重量を有する。
【0028】
弾性部材40は、コイル部41と、コイル部41から延びる第1腕部42及び第2腕部43とを有するねじりばねである。なお、ねじりばねとは、コイル部と2本の腕部が設けられているバネのことをいい、コイルばねやL字バネを含む概念である。コイル部41は、連結軸17に巻回されている。第1腕部42は、固定ピン18に掛けられて固定されている。第2腕部43は、ストッパーピン15に掛けられ、カム20の回転によりハンマーブロック30が傾くときには付勢力伝達ピン34を持ち上げ、検査対象物を打撃するときには、付勢力伝達ピン34をストッパーピン15で受けることでハンマーブロック30と弾性部材40との係合を解除する。
【0029】
係合解除機構50は、ストッパーピン15と付勢力伝達ピン34とで構成されており、カム20の回転によりハンマーブロック30が傾くときには、第2腕部43を付勢力伝達ピン34が持ち上げることで弾性部材40に付勢力を付与し、カム20がトリガー部33から外れて検査対象物を打撃するときには、第2腕部43をストッパーピン15で受けることでハンマーブロック30と弾性部材40との係合を解除する。
【0030】
具体的には、以下のような状態となる。付勢力伝達ピン34が第2腕部43を持ち上げて弾性部材40が縮んだ後、カム20の段差によって弾性部材40を縮めていた力が解放されると、弾性部材40には弾性力が働き、元に戻ろう(自然長に戻ろう)とする。従って、ハンマーブロック30は,弾性部材40から弾性力を受けており、弾性力による圧力を開放するには至っていない。そして、弾性部材40がストッパーピン15によって弾性部材40が受け止められ、ハンマーブロック30が弾性部材40から自由になると、ハンマーブロック30は弾性部材40から弾性力を受けない状態となり、ハンマーブロック30と弾性部材40との係合を解除した状態となる。
【0031】
2.実施形態に係る打撃装置1の動作
次に、実施形態に係る打撃装置1の動作を説明する。図4は、実施形態1に係る打撃装置の動作を説明するために示す図である。図4(a)はハンマーブロック30が傾いていないときのカム20、ハンマーブロック30、弾性部材40及び係合解除機構50の様子を示し、図4(b)はハンマーブロック30が傾いているときのカム20、ハンマーブロック30、弾性部材40及び係合解除機構50の様子を示し、図4(c)はハンマーブロック30が検査対象物を打撃するときのカム20、ハンマーブロック30、弾性部材40及び係合解除機構50の様子を示す。なお、図4(a)~図4(c)は、本体部10とハンマーブロック30との間の所定位置の断面を本体部10側から見た断面図である。
【0032】
まず、図4(a)に示すように、カム20とトリガー部33とが接触していないときは、ハンマーブロック30は傾いていない。弾性部材40の第1腕部42は固定ピン18に掛けられたまま固定されており、第2腕部43はストッパーピン15に掛けられている。
【0033】
次に、図4(b)に示すように、カム20が回転し、カム20の外周面22によってトリガー部33を押すようになると、ハンマーブロック30が連結軸17を中心に(図4(b)においては時計周りに)回転して傾く。このとき、ハンマーブロック30に固定されている付勢力伝達ピン34が第2腕部43を持ち上げる。これにより、弾性部材40に付勢力を付与する。
【0034】
次に、図4(c)に示すように、カム20がさらに回転し、段差部21がトリガー部33の端部を超えると、ハンマーブロック30の傾きが解消されるとともに、弾性部材40に付与された付勢力によってハンマーブロック30が回転(図4(b)の反時計回りに回転)し、検査対象面にハンマー部32が衝突する。これにより、発生する打音によって打音検査を行うことができる。
【0035】
このとき、第2腕部43は、ストッパーピン15で受けることで、付勢力伝達ピン34と弾性部材40とは離隔した状態となり、ハンマーブロック30と弾性部材40との係合を解除した状態となる。このため、検査対象物に打撃を与えたハンマーブロック30は、検査対象面から跳ね返り、ハンマー部32と検査対象面とはわずかに隙間ができる状態とすることができる。従って、検査対象物を打撃した後にハンマーブロック30(ハンマー部32)を検査対象面に押し付けた状態にはならない。
【0036】
これを繰り返すことで、検査対象物の複数の領域を検査することができる。
【0037】
図5は、自動走行装置100に実装したときの様子を示す図である。例えば、鉄道の橋梁及びトンネルなどの土木構造物、並びにビルやマンションなどの大型構造物の外壁などの壁面を自在に移動できる自動走行装置100に実施形態1に係る打撃装置1を搭載すれば、作業者の手が届かない場所でも打音検査を行うことができる。
【0038】
自動走行装置100は、適宜の装置を用いることができるが、以下のものを用いることができる。すなわち、自動走行装置100は、吸着駆動部111と、従動輪及び駆動輪に懸架されて駆動される無体走行帯112を有する移動体本体110を備え、吸着駆動部111で壁面Sに吸着しながら壁面S上を走行することができる。この自動走行装置100の後部に打撃装置1及び集音部(例えば、マイク。図示せず)を取り付けることで、壁面Sを移動させながら打音検査を行う。
【0039】
例えば、雨樋、排水管、水道管、電線管、ガス管、エアコン管などの構造物Aがあった場合には、自動走行装置100を打撃装置1側から構造物Aと壁面Sとの間に接近し、打撃装置1を構造物Aと壁面Sとの間の隙間を通過させる。そして、ハンマーブロック30を傾け、ハンマー部で壁面を打撃することができる。これにより、従来の打撃装置では行うことができなかった構造物Aの近傍などの打音検査を行うことができる。
【0040】
3.実施形態に係る打撃装置1の効果
実施形態に係る打撃装置1によれば、モータ11から延びるシャフト12に取り付けられたカム20と、カム20と隣接した位置に設けられた接触子であるトリガー部33、及び、検査対象物を打撃するハンマー部32を有し、本体部10から延びる連結軸17を中心に回転可能に設けられたハンマーブロック30と、を備えるため、トリガー部33を介してカム20の回転をハンマーブロック30に伝達し、ハンマー部32で検査対象物を打撃することができる。従って、特許文献1の場合のようなソレノイドによってハンマーヘッドをスライドさせる領域を確保しなくてもよいため、打撃装置の高さを低くすることができる。よって、外壁の表面からわずかな隙間を設けて雨樋、排水管などの構造物が配置されている場合でも、当該隙間を通過することができ、検査対象物を打撃することができる。
【0041】
また、実施形態に係る打撃装置1によれば、検査対象物を打撃するときに、ハンマーブロック30と弾性部材40との係合を解除する係合解除機構50を備えるため、外壁の表面と構造物との間にわずかな隙間しか設けられていない場合に使用しても、検査対象物を打撃した後にハンマー部32を検査対象物に押し付けた状態とならず、打音が減衰することを防ぐことができる。
【0042】
また、実施形態に係る打撃装置1によれば、トリガー部33は、ハンマーブロック30から本体部10側に向かって突出した凸部であり、カム20が回転することにより連結軸17を中心とした外周方向へトリガー部33が押されハンマーブロック30を傾けるとともに、弾性部材40によってハンマーブロック30に付勢力を与えるため、ハンマーヘッドをスライドさせる場合と比較して打撃装置の高さをより低くすることができる。
【0043】
また、実施形態に係る打撃装置1は、係合解除機構50は、本体部10側からハンマーブロック30に向かって延びるストッパーピン15と、ハンマーブロック30から本体部10側に向かって延びる付勢力伝達ピン34とで構成されており、カム20の回転によりハンマーブロック30が傾くときには、第2腕部43を付勢力伝達ピン34が持ち上げ、検査対象物を打撃するときには、第2腕部43をストッパーピン15で受けることでハンマーブロック30と弾性部材40との係合を解除する構成を有する。このような構成を有することにより、検査対象物を打撃するときにハンマー部32が検査対象物に押し付けられることを確実に防ぐことができる。また、検査対象面から跳ね返り、検査対象面とハンマー部との間に隙間を形成することができるため、打音検査に最適な打音を生じさせることができる。
【0044】
また、実施形態に係る打撃装置1は、本体部10側から見て、ハンマーブロック30の重心は、カム20が配置されている領域と重なるため、打撃音を発生させるために十分な付勢力を維持しつつ、カム20及びハンマーブロック30の構成をコンパクトなものとすることができる。従って、ハンマーブロック30に付勢力を付与するために打撃装置の高さを高くしなくてもよくなる。
【0045】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0046】
(1)上記実施形態において記載した位置、接続、個数等は例示であり、本発明の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。
【0047】
(2)上記実施形態においては、打撃装置1を自動走行装置100に取り付けて検査対象面に打撃を与えることとしたが、本発明はこれに限定するものではない。打撃装置1を、例えば、ドローンなどの無人飛行体に取り付けて検査対象面に打撃を与えてもよいし、柄に取り付けて作業者が壁面などに押し付けて検査対象面に打撃を与えてもよいし、その他適宜の方法で検査対象面に打撃を与えてもよい。
【0048】
(3)上記実施形態においては、弾性部材としてねじりばねを用いたが、本発明はこれに限定するものではない。ハンマーブロックに付勢力をあたるものであれば、ねじりばね以外のバネを用いてもよいし、ゴムなどの他の弾性部材を用いてもよい。
【0049】
(4)上記実施形態においては、本体側から見てトリガー部をハンマーブロックの右下に設けたが、本発明はこれに限定するものではない。トリガー部を本体側から見て左下に設けてもよい。この場合、連結軸の位置がハンマーブロックの左下、ハンマー部の位置がハンマーブロックの右下になる。また、トリガー部をハンマーブロックの上側に設けてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…打撃装置、10…本体部、11…モータ、12…シャフト、13…電源、14…載置部、15…ストッパーピン、16…車輪部、17…連結軸、18…固定ピン、20…カム、21…段差部、22…外周面、30…ハンマーブロック、31…ハンマーブロック本体、32…ハンマー部、33…トリガー部、34…付勢力伝達ピン、35…ウェイトピン、36…ピン、40…弾性部材(ねじりばね)、41…コイル部、42…第1腕部、43…第2腕部、50…係合解除機構、100…自動走行装置、110…移動体本体、111…吸着駆動部、112…無体走行帯、A…構造物、S…壁面
図1
図2
図3
図4
図5