(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178827
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】プログラム、情報処理方法、及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G01S 5/02 20100101AFI20241218BHJP
G01S 19/14 20100101ALI20241218BHJP
G06T 17/05 20110101ALI20241218BHJP
【FI】
G01S5/02 A
G01S19/14
G06T17/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097267
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】小和田 真也
【テーマコード(参考)】
5B050
5J062
【Fターム(参考)】
5B050BA09
5B050BA13
5B050BA17
5B050DA07
5B050DA10
5B050EA06
5B050EA07
5B050EA12
5B050EA18
5B050EA19
5B050EA28
5B050FA02
5B050GA08
5J062AA09
5J062BB08
5J062CC07
5J062FF07
5J062HH00
(57)【要約】
【課題】受信機の周囲に存在する建造物の詳細な輪郭を把握することが可能なプログラム等を提供する。
【解決手段】本開示の一実施形態に係るプログラムは、受信機が人工衛星から受信した信号の観測量に基づく観測量情報を取得し、観測量情報を入力した場合に、前記受信機と前記人工衛星との間の建造物の有無に関する情報を出力するように学習された第1学習モデルに、取得した前記観測量情報を入力することにより、建造物の有無に関する情報を出力する処理をコンピュータに実行させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信機が人工衛星から受信した信号の観測量に基づく観測量情報を取得し、
観測量情報を入力した場合に、前記受信機と前記人工衛星との間の建造物の有無に関する情報を出力するように学習された第1学習モデルに、取得した前記観測量情報を入力することにより、建造物の有無に関する情報を出力する
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項2】
前記観測量情報には、前記信号の強度、前記受信機と前記人工衛星との疑似距離残差、または前記信号のドップラー周波数残差を含む
請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記建造物の有無に関する情報は、前記受信機からの仰角及び方位角によって特定される座標における建造物が存在する確率である
請求項1または2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記受信機からの仰角及び方位角によって特定される複数の座標における建造物の有無に関する情報を入力した場合に、前記受信機からの仰角を第1軸、方位角を第2軸とする、建造物の輪郭が投影されたシルエット図を出力する第2学習モデルに、複数の前記座標における前記建造物の有無に関する情報を入力し、前記受信機の周囲に存在する建造物の輪郭が投影されたシルエット図を出力する
請求項1または2に記載のプログラム。
【請求項5】
複数の前記受信機にかかる前記シルエット図に基づいて、前記建造物の立体形状、前記建造物の位置、及び前記建造物の高さを示す3次元地図を生成する
請求項4に記載のプログラム。
【請求項6】
複数の前記受信機の位置、及び複数の前記受信機から前記建造物の輪郭に対する方位角に基づき、前記建造物の位置を特定する
請求項5に記載のプログラム。
【請求項7】
前記建造物の位置、及び複数の前記受信機から前記建造物の輪郭に対する仰角に基づき、前記建造物の高さを特定する
請求項5に記載のプログラム。
【請求項8】
前記受信機は、移動体に搭載されている
請求項1または2に記載のプログラム。
【請求項9】
受信機が人工衛星から受信した信号の観測量に基づく観測量情報を取得し、
観測量情報を入力した場合に、前記受信機と前記人工衛星との間の建造物の有無に関する情報を出力するように学習された第1学習モデルに、取得した前記観測量情報を入力することにより、建造物の有無に関する情報を出力する
情報処理方法。
【請求項10】
受信機が人工衛星から受信した信号の観測量に基づく観測量情報を取得し、
観測量情報を入力した場合に、前記受信機と前記人工衛星との間の建造物の有無に関する情報を出力するように学習された第1学習モデルに、取得した前記観測量情報を入力することにより、建造物の有無に関する情報を出力する
処理部
を備える情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、プログラム、情報処理方法、及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人工衛星から受信した信号に基づき、信号を受信する受信機の周囲の環境を把握する技術が提案されている。例えば、特許文献1に記載の探索支援装置は、仰角及び方位
角で区分した区画ごとに各衛星の位置を把握し、各衛星ごとに、仰角に応じた第1の指標及び電波強度に応じた第2の指標に基づいて、把握されている各衛星の位置からの衛星電波の受信状況と本来あるべき衛星電波の受信状況とを比較し、比較結果として周囲の対象物を表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の探索支援装置は、区画ごとに対象物(建造物)を表示するため、建造物の詳細な輪郭を把握することができない。
【0005】
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、受信機の周囲に存在する建造物の詳細な輪郭を把握することが可能なプログラム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係るプログラムは、受信機が人工衛星から受信した信号の観測量に基づく観測量情報を取得し、観測量情報を入力した場合に、前記受信機と前記人工衛星との間の建造物の有無に関する情報を出力するように学習された第1学習モデルに、取得した前記観測量情報を入力することにより、建造物の有無に関する情報を出力する処理をコンピュータに実行させる。
【0007】
本開示の一実施形態に係る情報処理方法は、受信機が人工衛星から受信した信号の観測量に基づく観測量情報を取得し、観測量情報を入力した場合に、前記受信機と前記人工衛星との間の建造物の有無に関する情報を出力するように学習された第1学習モデルに、取得した前記観測量情報を入力することにより、建造物の有無に関する情報を出力する。
【0008】
本開示の一実施形態に係る情報処理装置は、受信機が人工衛星から受信した信号の観測量に基づく観測量情報を取得し、観測量情報を入力した場合に、前記受信機と前記人工衛星との間の建造物の有無に関する情報を出力するように学習された第1学習モデルに、取得した前記観測量情報を入力することにより、建造物の有無に関する情報を出力する処理部を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一実施形態に係るプログラムにあっては、受信機の周囲に存在する建造物の詳細な輪郭を把握することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】情報処理装置の構成例を示すブロック図である。
【
図7】3次元地図生成モジュールの一例を示す説明図である。
【
図8】3次元地図生成モジュールの一例を示す説明図である。
【
図9】建造物位置の特定方法を説明する説明図である。
【
図10】建造物高さの特定方法を説明する説明図である。
【
図11】情報処理装置による処理の一例を示す説明図である。
【
図12】実施形態2に係る情報処理装置システムの概略図である。
【
図13】実施形態2に係る受信機テーブルの一例を示す説明図である。
【
図14】実施形態2に係る観測量テーブルの一例を示す説明図である。
【
図15】実施形態2に係る情報処理装置による処理の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
以下、実施形態1に係る本発明について、図面に基づいて説明する。
図1は、情報処理システムSの概略図である。情報処理システムSは、情報処理装置1と、複数の受信機2(1)~2(n)と、複数の人工衛星3(1)~3(n)とを備える。情報処理装置1は、例えばサーバコンピュータであり、例えば広域無線通信によるネットワークNを介して受信機2と互いに通信可能である。情報処理装置1は、受信機2から取得した情報に基づき、受信機2周辺の3次元地図を生成する。受信機2は、人工衛星から受信した信号に関する情報(観測量情報)を情報処理装置1に送信(出力)する。人工衛星3は、例えば、GPS(Global Positioning System)衛星、GLONASS(Global Navigation Satellite System)衛星、Galileo衛星、BeiDou衛星、QZSS(Quasi-Zenith Satellite System)、またはGAGAN(GPS Aided GEO Augmented Navigation)衛星等を含むNSS(Navigation Satellite System)衛星であり、航法メッセージ(人工衛星3の緯度、経度、高度、速度、及び加速度)を含めた信号を発信する。
【0012】
図2は、情報処理装置1の構成例を示すブロック図である。情報処理装置1は、処理部11と、記憶部12と、通信部13とを備える。処理部11はCPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等により構成されており、記憶部12に予め記憶されたプログラムP(プログラム製品)及びデータベースを読み出して実行することにより、種々の制御処理、演算処理等を行う。なお情報処理装置1の外部にデータベースサーバ等を設け、該データベースサーバ等からデータベースを読み出してもよい。また、情報処理装置1は、複数のサーバ装置またはコンピュータによりその機能が実現されるものであってもよい。
【0013】
情報処理装置1の記憶部12は、例えば、揮発性メモリ及び不揮発性メモリである。記憶部12には、プログラムP、受信機テーブル121、観測量テーブル122、第1学習モデルM1、第2学習モデルM2、及び3次元地図生成モジュールM3が記憶されている。なお、プログラムPは、コンピュータが読み取り可能に記憶した記憶媒体12aを用いて情報処理装置1に提供されてもよい。記憶媒体12aは、例えば可搬型メモリである。可搬型メモリの例として、CD-ROM、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SDカード、マイクロSDカード又はコンパクトフラッシュメモリ(登録商標)等が挙げられる。記憶媒体12aが可搬型メモリである場合、処理部11の処理素子は、図示しない読取装置を用いて記憶媒体12aからプログラムPを読み取ってもよい。読み取ったプログラムPは記憶部12に書き込まれる。更に、プログラムPは、通信部13が外部装置と通信することによって、情報処理装置1に提供されてもよい。受信機テーブル121、観測量テーブル122、第1学習モデルM1、第2学習モデルM2、及び3次元地図生成モジュールM3の詳細については後述する。
【0014】
通信部13は、有線又は無線により受信機2と通信を行うための通信モジュール又は通信インターフェイスであり、例えばLTE(登録商標)、4G、または5G等の広域無線通信モジュールである。処理部11は、通信部13を介し、例えばインターネットなどの外部のネットワークNを通じて、受信機2と通信を行う。
【0015】
図3は、受信機テーブル121の一例を示す説明図である。受信機テーブル121には、各受信機2が設置されている箇所の緯度、及び経度が格納されている。受信機テーブル121の管理項目(フィールド)は、例えば、受信機番号フィールド、緯度フィールド、及び経度フィールドを含む。受信機番号フィールドには、各受信機2に割り振られた番号(受信機番号)が格納される。なお、受信機2(n)には、受信機番号Rnが割り振られている。すなわち、受信機2(1)に割り振られる受信機番号はR1である。緯度フィールドには、受信機2が設置されている箇所の緯度が格納される。経度フィールドには、受信機2が設置されている箇所の経度が格納される。
【0016】
図4は、観測量テーブル122の一例を示す説明図である。観測量テーブル122には、各受信機2における、受信機2が人工衛星3から受信した信号に関する情報(観測量)が格納される。情報処理装置1の記憶部12は、受信機2と人工衛星3の組み合わせごとに観測量テーブル122を記憶する。観測量テーブル122には、複数の観測量テーブル122を区別するための属性情報が付与される。属性情報には、各受信機2に割り振られた受信機番号、及び各人工衛星3に割り振られた人工衛星番号が含まれる。人工衛星3(n)には、人工衛星番号Snが割り振られている。すなわち、人工衛星3(1)に割り振られる人工衛星番号はS1である。
【0017】
観測量テーブル122の管理項目(フィールド)は、例えば、時刻フィールド、仰角フィールド、方位角フィールド、信号強度フィールド、疑似距離残差フィールド、ドップラー周波数残差フィールド、及び建造物存在確率フィールドを含む。時刻フィールドには、受信機2が人工衛星3から信号を受信した時刻が格納される。仰角フィールドには、受信機2が信号を受信した際の、受信機2に対する人工衛星3の仰角が格納される。方位角フィールドには、受信機2が信号を受信した際の、受信機2に対する人工衛星3の方位角が格納される。なお、受信機2に対する人工衛星3の仰角及び方位角は、信号に含まれる航法メッセージ(緯度、経度、及び高度)と受信機の緯度及び経度とに基づいて算出される。また、仰角及び方位角は、受信機2に対する座標を定義する。
【0018】
観測量テーブル122の信号強度フィールドには、受信機2が人工衛星3から受信した信号の強度が格納される。疑似距離残差フィールドには、人工衛星3から発信された信号が受信機2によって受信されるまでの所要時間に基づいて算出される受信機2及び人工衛星3間の実測距離から、航法メッセージ(緯度、経度、及び高度)と受信機2の緯度及び経度に基づいて算出される受信機2及び人工衛星3間の理論距離を差し引いた残差が格納される。例えば、受信機2と人工衛星3とを結ぶ直線上に建築物等の遮蔽物がある場合、受信機2が受信する信号は他の建築物または山斜面等に反射して受信機2に到達した信号であるため実測距離は長くなり、疑似距離残差は正の値となる。また、例えば、信号が建築物の角に当たって回折した後に受信機2に到達した場合、実測距離は短くなり、疑似距離残差は負の値となる。
【0019】
観測量テーブル122のドップラー周波数残差フィールドには、受信機2に到達した信号の実測周波数から、信号に含まれる航法メッセージ(速度及び加速度)に基づいて算出される理論周波数を差し引いた残差が格納される。
【0020】
建造物存在確率フィールドには、後述する第1学習モデルM1によって出力された、受信機2からの仰角及び方位角によって特定される座標における建造物が存在する確率が格納される。すなわち、建造物存在確率フィールドには、第1学習モデルM1に観測量情報を入力することにより出力された建造物の有無に関する情報が格納される。なお、観測量テーブル122は、建造物存在確率フィールドに代えて、受信機2と人工衛星3との間に建造物が存在するか否かの判定結果を格納するフィールドを備えてもよい。
【0021】
図5は、第1学習モデルM1の一例を示す説明図である。第1学習モデルM1は、観測量テーブル122に格納された座標における観測量(信号強度、疑似距離残差、及びドップラー周波数残差)が入力された場合、該座標に建造物が存在する確率を出力する。本実施形態に係る第1学習モデルM1は、例えば、RNN(Recurrent Neural Network)により構成される。なお、第1学習モデルM1は、例えばTransformer、BERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)、GPT(Generative Pre-trained Transformer)、CNN(Convolution Neural Network)、DNN(Deep Neural Network)、またはLSTM(Long Short Term Memory)等の他のニューラルネットワークであってもよく、決定木、サポートベクタマシン、ロジスティクス回帰、ランダムフォレスト、またはXGBoost(eXtreme Gradient Boosting )等の他の学習アルゴリズムであってもよい。
【0022】
第1学習モデルM1の入力層は、信号を受信した時刻順に観測量の入力を受け付ける。なお、入力層は、例えば、直近10回分の観測量の入力を時刻順に受け付けてもよい。第1学習モデルM1の中間層は、入力データの特徴量を抽出する複数のニューロンを有し、抽出した特徴量を出力層に受け渡す。なお、中間層のニューロンには、一つ前の時刻について入力された観測量から中間層が抽出した特徴量も入力(再帰入力)される。出力層は、観測量が入力された座標における建造物が存在する確率を出力するニューロンを有し、中間層から出力された特徴量に基づいて、建造物が存在する確率を出力する。情報処理装置1の処理部11は、出力された建造物が存在する確率を、観測量が入力された座標に紐づけて観測量テーブル122の、建造物存在確率フィールドに格納する。
【0023】
第1学習モデルM1は、各座標における観測量と建造物が存在する確率の正解値ラベルとを紐づけた訓練データを用いて学習される。正解値ラベルは、例えば、受信機2が設置されている箇所において撮影された全方位写真に基づくものである。各座標において、建造物が存在すると認められる場合には、正解値ラベルとして確率1が観測量に紐づけられる。また、各座標において、建造物が存在すると認められない場合には、正解値ラベルとして確率0が観測量に紐づけられる。第1学習モデルM1は、観測量が入力された場合に正解値ラベルと同値を出力するように、誤差逆伝播によって重み及びバイアスを修正して学習される。第1学習モデルM1は、多数の訓練データについて同様の処理が行われることによって学習(構築)される。
【0024】
図6は、第2学習モデルM2の一例を示す説明図である。第2学習モデルM2は、受信機2に対する各座標における建造物が存在する確率(建造物の有無に関する情報)を示す複数の二次元配列データ(配列データ群)が入力された場合、受信機2の周囲に存在する建造物の輪郭が投影されたシルエット図を出力する。第2学習モデルM2は、例えば、U―netにより構成される。なお、第2学習モデルM2は、CNN、GAN(Generative Adversarial Network)、またはVAE(Variational AutoEncoder)等の、画像生成が可能な学習アルゴリズムであってもよい。
【0025】
第2学習モデルM2に入力される二次元配列データは、特定の受信機2に対する座標における建造物の存在確率を示すデータである。以下では、受信機2(1)に係るシルエット図を生成する場合について説明する。なお、情報処理装置1の処理部11は、受信機2(2)~2(n)について同様の処理を行う。処理部11は、記憶部12が記憶している複数の観測量テーブル122から、属性情報に含まれる受信機番号がR1である観測量テーブル122を読み出す。処理部11は、読み出した観測量テーブル122に格納されている仰角、方位角、及び確率に基づき、二次元配列データk[x][y]=p(x:仰角、y:方位角、p:確率)を生成する。例えば、
図4に示す観測量テーブル122の最上レコードに基づき生成された二次元配列データは、k[x][y]=pとなる。処理部11は、読み出された複数の観測量テーブル122の全てのレコードについて二次元配列データを生成し、配列データ群を生成する。
【0026】
第2学習モデルM2の入力層は、配列データ群の入力を受け付ける。第2学習モデルM2の中間層は、入力データの特徴量を抽出する複数のニューロンを有し、抽出した特徴量を出力層に受け渡す。出力層は、受信機2の周囲に存在する建造物の輪郭が投影されたシルエット図を出力するニューロンを有し、中間層から出力された特徴量に基づいて、受信機2(1)の周囲に存在する建造物の輪郭が投影されたシルエット図を出力する。該シルエット図は、受信機2(1)からの仰角を第1軸とし、方位角を第2軸として出力される。仰角は、受信機2(1)の地点における地面からの角度を示す。方位角は、受信機2(1)からの方位を示し、北方を0°(360°)、東方を90°、南方を180°、西方を270°として示す。
【0027】
第2学習モデルM2は、各受信機2における配列データ群と正解シルエット図とを紐づけた訓練データを用いて学習される。正解シルエット図は、例えば、受信機2が設置されている箇所において撮影された全方位写真に基づいて目視またはコンピュータにより作成されたものである。第2学習モデルM2は、配列データ群が入力された場合正解シルエット図と同図を出力するように、誤差逆伝播によって重み及びバイアスを修正して学習される。第2学習モデルM2は、多数の訓練データについて同様の処理が行われることによって学習(構築)される。
【0028】
図7及び
図8は、3次元地図生成モジュールM3の一例を示す説明図である。3次元地図生成モジュールM3は、第3学習モデルM31と、ステレオビジョンモジュールM32により構成される。第3学習モデルM31は、入力された複数の受信機2に係るシルエット図において、同じ建造物を示す領域を検出し、各シルエット図において同じ建物を示す領域を紐づけて出力する。ステレオビジョンモジュールM32は、各受信機2の緯度及び経度と、同じ建物を示す領域が示されたシルエット図に基づき、3次元地図を生成して出力する。なお、3次元地図生成モジュールM3は、CNN、GAN、VAE、U―net、NV(Neural Volumes)、SRN(Scene Representation Networks)、LLFF(Local Light Field Fusion)、またはNeRF(Neural Radiance Fields)等の、3次元画像を生成することが可能な学習アルゴリズムであってもよい。
【0029】
図7は、3次元地図生成モジュールM3の第3学習モデルM31を示す。第3学習モデルM31は、例えば、RCNN(RegionsCNN)などの、セグメンテーションの機能を有するNN(Neural Network)により構成される。なお、第3学習モデルM31は、FastRCNN、FasterRCNN、YOLO(You Look Only Once)、またはSSD(Single Shot Multibox Detector)等の学習アルゴリズムでもよい。
【0030】
第3学習モデルM31の入力層は、受信機2の緯度及び経度が紐づけられた複数のシルエット図の入力を受け付ける。第3学習モデルM31の中間層は、入力されたシルエット図の特徴量を抽出する複数のニューロンを有し、抽出した特徴量を出力層に受け渡す。出力層は、シルエット図において建造物が示される領域を検出するニューロンを有し、中間層から出力された特徴量に基づいて、建造物が存在する領域を出力する。なお、このとき、出力層は、複数のシルエット図において同じ建造物が含まれると推論される場合、該同じ建造物を同じ種類のバウンディングボックスによって囲むことで領域を出力する。
図7に示す例においては、各シルエット図に、バウンディングボックスA~Hが出力される。例えば、受信機2(1)に係るシルエット図において出力されたバウンディングボックスAに含まれる建造物と、受信機2(2)に係るシルエット図において出力されたバウンディングボックスAに含まれる建造物とは、同じ建造物と推論されたものである。バウンディングボックスA~Hのそれぞれに含まれる建造物をb(A)~b(H)とする。
【0031】
第3学習モデルM31は、複数のシルエット図と、複数のシルエット図において同じ建造物が含まれる領域が紐づけられた訓練データを用いて学習される。第3学習モデルM31は、複数のシルエット図が入力された場合、各シルエット図において、訓練データにおいて紐づけられる領域と同じ領域を、同じ建造物が含まれる領域を紐づけて出力するように、誤差逆伝播によって重み及びバイアスを修正して学習される。第3学習モデルM31は、多数の訓練データについて同様の処理が行われることによって学習(構築)される。
【0032】
図8は、3次元地図生成モジュールM3のステレオビジョンモジュールM32を示す。ステレオビジョンモジュールM32は、ステレオビジョン法により、建造物の三次元輪郭をプロットすることにより、建造物の形状、位置、及び高さを示す3次元地図を生成するプログラムモジュールである。ステレオビジョンモジュールM32は、第3学習モデルM31によって出力された、建造物が含まれる領域が示されるシルエット図と、各シルエット図に係る受信機2の緯度及び経度とに基づき、3次元地図を生成する。具体的には、ステレオビジョンモジュールM32は、複数の受信機2の緯度及び経度に基づいて複数の受信機2間の視差を算出し、複数のシルエット図に示される同一種類のバウンディングボックスに含まれる建造物をランドマークとする。ステレオビジョンモジュールM32は、算出した視差とランドマークとに基づき、建造物が存在する箇所を3次元空間上にプロットする。また、ステレオビジョンモジュールM32は、建造物の位置及び高さを算出し、プロットされた建造物に、算出された位置及び高さの情報を付与することにより、建造物の形状、位置、及び高さを示す3次元地図を生成することが可能である。なお、
図8の3次元地図において示す各建造物の緯度及び経度について、度を省略し、分及び秒のみを記載しているが、
図8に示す例において各建造物の位置の北緯は34度であり、東経は135度である。また、
図8の3次元地図においては、受信機2(1)~2(3)の位置が示されるが、受信機2の位置の表示は省略されてもよい。建造物の位置及び高さの算出方法の詳細については後述する。なお、ステレオビジョンモジュールM32は、建造物の位置及び高さを算出し、算出した位置及び高さの情報に基づいて、建造物が存在する箇所を3次元空間上にプロットしてもよい。
【0033】
図9は、建造物位置の特定方法を説明する説明図である。本図においては、受信機2(1)及び受信機2(2)の緯度及び経度に基づいて、建造物b(A)の位置を算出する例を示す。なお、建造物b(A)は、
図7に示すバウンディングボックスAに含まれる建造物である。情報処理装置1の処理部11は、受信機2(1)及び受信機2(2)の緯度及び経度に基づき、受信機2(1)及び受信機2(2)の距離daを算出する。
【0034】
情報処理装置1の処理部11は、
図7において示される受信機2(1)に係るシルエット図において建造物b(A)(バウンディングボックスA)が存在する方位角を特定する。また、処理部11は、受信機2(1)及び受信機2(2)の緯度及び経度に基づき、受信機2(1)に対する受信機2(2)の方位角を算出する。処理部11は、受信機2(1)に対する建造物b(A)の方位角及び受信機2(2)の方位角に基づいて、受信機2(1)に対する受信機2(2)及び建造物b(A)間の角度θ1を算出する。
【0035】
情報処理装置1の処理部11は、
図7において示される受信機2(2)に係るシルエット図において建造物b(A)(バウンディングボックスA)が存在する方位角を特定する。また、処理部11は、受信機2(1)及び受信機2(2)の緯度及び経度に基づき、受信機2(2)に対する受信機2(1)の方位角を算出する。処理部11は、受信機2(2)に対する建造物b(A)の方位角及び受信機2(1)の方位角に基づいて、受信機2(2)に対する受信機2(1)及び建造物b(A)間の角度θ2を算出する。
【0036】
情報処理装置1の処理部11は、角度θ1及び角度θ2に基づき、建造物b(A)に対する受信機2(1)及び受信機2(2)間の角度θ3を算出する。処理部11は、正弦定理により、距離da、角度θ1、角度θ2、及び角度θ3に基づいて、受信機2(1)及び建造物b(A)間の距離dbと、受信機2(2)及び建造物b(A)間の距離dcとを算出する。処理部11は、受信機2(1)の緯度及び経度、受信機2(1)に対する建造物b(A)の方位角、及び距離dbに基づき、建造物b(A)の緯度及び経度を特定して、建造物b(A)の位置を算出する。なお、処理部11は、受信機2(2)の緯度及び経度、受信機2(2)に対する建造物b(A)の方位角、及び距離dbに基づき、建造物b(A)の緯度及び経度を補正してもよい。この場合、建造物b(A)の緯度及び経度をより高い精度で特定することが可能である。
【0037】
図10は、建造物高さの特定方法を説明する説明図である。本図においては、受信機2(1)からの建造物b(A)の最高点に対する仰角と、
図7において説明した距離dbに基づいて建造物の高さを算出する例を示す。受信機2(1)からの建造物b(A)の最高点に対する仰角を角度θ4とすると、建造物b(A)の高さhは、h=db*tanθ4によって算出される。
【0038】
図11は、情報処理装置1による処理の一例を示す説明図である。情報処理装置1の処理部11は、所定のタイミング(例えば、所定曜日の所定時刻)になると、以下の処理を実行する。なお、処理部11は、以下の処理の実行を指示する情報が入力された場合、処理を開始してもよい。処理部11は、受信機2から、人工衛星3に関する観測量を取得し(S1)、取得した観測量を観測量テーブル122に格納する(S2)。処理部11は、観測量テーブル122から各座標(仰角及び方位角)の観測量を読み出す(S3)。処理部11は、読み出した観測量を第1学習モデルM1に入力し(S4)、各座標における建造物が存在する確率を出力する(S5)。処理部11は、第1学習モデルM1が出力した確率を、観測量テーブル122の確率フィールドに格納する(S6)。なお、処理部11は、一の受信機2に対する複数の人工衛星3について、S1~S6を実行する。
【0039】
情報処理装置1の処理部11は、属性情報に特定の受信機2の受信機番号が格納されている観測量テーブル122から座標(仰角及び方位角)及び座標における確率を読み出す(S7)。処理部11は、読み出した座標及び確率に基づいて複数の二次元配列データ(配列データ群)を作成する(S8)。処理部11は、作成された配列データ群を第2学習モデルM2に入力し(S9)、特定の受信機2に係るシルエット図を出力する(S10)。なお、処理部11は、複数の受信機2について、S1~S10を実行する。
【0040】
情報処理装置1の処理部11は、複数の受信機2に係るシルエット図を、3次元地図生成モジュールM3の第3学習モデルM31に入力し(S11)、建造物が含まれる領域を出力する(S12)。処理部11は、建造物が含まれる領域が出力された複数の受信機2に係るシルエット図を3次元地図生成モジュールM3のステレオビジョンモジュールM32に入力し(S13)、建造物が存在する箇所を3次元空間上にプロットする(S14)。また、処理部11はステレオビジョンモジュールM32によって建造物の位置及び高さを算出する(S15)。処理部11は、算出した位置及び高さをプロットされた建造物に付与し(S16)、3次元地図を生成する(S17)。なお、処理部11は、生成された3次元地図を、例えば情報処理装置1に接続される表示装置に表示する、または端末装置に送信し、該端末装置において表示すること等が可能である。
【0041】
以上の構成及び処理によれば、受信機2が人工衛星3から取得した信号に基づいて、受信機の周囲に存在する建造物の詳細な輪郭を把握することが可能である。また、建造物の輪郭に基づいて、高精度な3次元地図を生成することが可能である。なお、情報処理装置1の処理部11は、受信機2に対する人工衛星3の仰角及び方位角を、第1学習モデルM1に入力する入力データに含めてもよい。また、処理部11は、各座標における観測量を第2学習モデルM2に入力することにより、シルエット図を出力してもよい。
【0042】
(実施形態2)
以下、実施形態1に係る本発明について、図面に基づいて説明する。実施形態2の構成の内、実施形態1と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。実施形態2に係る受信機2は、例えば車両または船舶などの移動体に搭載されている。なお、受信機2は、人物が所有するスマートフォンまたはタブレット端末等に搭載されている位置情報取得機能により、その機能が実現されるものであってもよい。情報処理装置1は、特定の地点を通過した受信機2が人工衛星3から受信した信号の観測量に基づき、該特定の地点におけるシルエット図を出力する。
【0043】
図12は、実施形態2に係る情報処理システムSの概略図である。本実施形態に係る受信機2は、移動体に搭載されている。本実施形態においては、移動体を車両Cとする例について説明する。受信機2(n)は、車両C(n)に搭載される。なお、受信機2(n)が搭載される車両Cの車両番号をCnとする。
【0044】
図13は、実施形態2に係る受信機テーブル121の一例を示す説明図である。実施形態2に係る受信機テーブル121の管理項目(フィールド)は、受信機番号フィールド及び車両番号フィールドを含む。受信機番号フィールドには、受信機2の受信機番号が格納される。車両番号フィールドには、受信機2が搭載される車両Cの車両番号が格納される。
【0045】
図14は、実施形態2に係る観測量テーブル122の一例を示す説明図である。実施形態2に係る観測量テーブル122の管理項目(フィールド)は、受信機緯度フィールド及び受信機経度フィールドを含む。受信機緯度フィールドには、受信機2が人工衛星3から信号を受信した際に受信機2が位置した地点の緯度が格納されている。経度フィールドには、信号を受信した際に受信機2が位置した地点の経度が格納されている。受信機2は、複数の人工衛星3から受信した信号に基づき、受信機2が位置した地点の緯度及び経度を取得することが可能である。
【0046】
図15は、実施形態2に係る情報処理装置1による処理の一例を示す説明図である。情報処理装置1の処理部11は、受信機2から、人工衛星3から受信した信号の観測量、並びに受信機2が人工衛星3から信号を受信した際に位置した地点の緯度及び経度を取得する(S21)。処理部11は、取得した観測量並びに受信機2が位置した地点の緯度及び経度を観測量テーブル122に格納する(S22)。処理部11は、処理部11は、観測量テーブル122から各座標(仰角及び方位角)の観測量を読み出す(S23)。処理部11は、読み出した観測量を第1学習モデルM1に入力し(S24)、各座標における建造物が存在する確率を出力する(S25)。処理部11は、第1学習モデルM1が出力した確率を、観測量テーブル122の確率フィールドに格納する(S26)。なお、処理部11は、一の受信機2に対する複数の人工衛星3について、S21~S26を実行し、また、複数の受信機2について、S21~S26を実行する。
【0047】
情報処理装置1の処理部11は、属性情報に格納されている受信機番号及び人工衛星番号を問わず、複数の観測量テーブル122から、受信機2が位置した地点(緯度及び経度)が同一であるレコードの座標(仰角及び方位角)及び座標における確率を読み出す(S27)。なお、処理部11は、所定の誤差範囲内である緯度及び経度を同一の地点として、座標及び座標における確率を読み出してもよい。処理部11は、読み出した座標及び確率に基づいて特定の地点に対する複数の二次元配列データ(配列データ群)を作成する(S28)。処理部11は、作成された配列データ群を第2学習モデルM2に入力し(S29)、特定の地点に係るシルエット図を出力する(S30)。なお、処理部11は、複数の地点について、S27~S30を実行する。
【0048】
情報処理装置1の処理部11は、複数の地点に係るシルエット図を、3次元地図生成モジュールM3の第3学習モデルM31に入力し(S31)、建造物が含まれる領域を出力する(S32)。処理部11は、建造物が含まれる領域が出力された複数の受信機2に係るシルエット図を3次元地図生成モジュールM3のステレオビジョンモジュールM32に入力し(S33)、建造物が存在する箇所を3次元空間上にプロットする(S34)。また、処理部11はステレオビジョンモジュールM32によって建造物の位置及び高さを算出する(S35)。処理部11は、算出した位置及び高さをプロットされた建造物に付与し(S36)、3次元地図を生成する(S37)。
【0049】
以上の構成及び処理によれば、車両またはスマートフォンなどの移動体に搭載される、人工衛星3からの信号の受信機または受信機能を用いて、建造物の詳細な輪郭を把握することが可能である。また、建造物の輪郭に基づいて、高精度な3次元地図を生成することが可能である。なお、なお、情報処理装置1の処理部11は、受信機2が位置した地点の緯度及び経度、または受信機2に対する人工衛星3の仰角及び方位角を、第1学習モデルM1に入力する入力データに含めてもよい。
【0050】
(変形例)
上述の各実施形態において、情報処理装置1の処理部11は、配列データ群を第2学習モデルM2に入力することによってシルエット図を出力するが、これに限られない。処理部11は、建造物の存在確率が所定確率以上である座標をプロットし、プロットされた座標に基づいて線形補間処理を実行することによってシルエット図を出力してもよい。
【0051】
今回開示した実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。各実施例にて記載されている技術的特徴は互いに組み合わせることができ、本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。また、特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載しても良い。
【符号の説明】
【0052】
1 情報処理装置
11 処理部
12 記憶部
12a 記憶媒体
13 通信部
121 受信機テーブル
122 観測量テーブル
M1 第1学習モデル
M2 第2学習モデル
M3 3次元地図生成モジュール
M31 第3学習モデル
M32 ステレオビジョンモジュール
2 受信機
3 人工衛星
11 処理部
12 記憶部
12a 記憶媒体
13 通信部
121 受信機テーブル
122 観測量テーブル
M1 第1学習モデル
M2 第2学習モデル
M3 3次元地図生成モジュール
M31 第3学習モデル
M32 ステレオビジョンモジュール
P プログラム
S 情報処理システム